(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るスプリンクラヘッド100の概要構成を説明するための断面図である。
図2は、
図1に図示されるスプリンクラヘッド100の分解斜視図である。
図3は、
図1に図示されるスプリンクラヘッド100のリンク機構40の分解斜視図である。
図4は、
図1に図示されるスプリンクラヘッド100の動作説明図である。
【0011】
図1〜
図4を参照して、スプリンクラヘッド100の構成及び動作について説明する。なお、
図1を含め、以下の図面においては、各構成部材同士の大きさの関係を限定するものではなく、実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面における上下は、紙面から見た上下と対応している。さらに、以下の説明において、スプリンクラヘッドが放水動作をしないときを通常時又は監視状態時と称するものとする。
【0012】
[スプリンクラヘッド100の構成]
スプリンクラヘッド100は、ヘッド本体1、フレーム10、弁体20、アームガイド30、バランサー35、リンク機構40、カバー61、及び、感熱板63を備えている。
【0013】
(ヘッド本体1)
ヘッド本体1は、外周に設けられた第1のねじ部2と、第1のねじ部2の下端部に第1のねじ部2と一体に設けられたフランジ部3と、フランジ部3の下端側外周にフランジ部3と一体に形成された第2のねじ部4と、からなり、中心部にはこれら第1のねじ部2、フランジ部3及び第2のねじ部4を貫通して放水口5が設けられている。そして、放水口5の下部は、拡径されて後述の弁体20が収容される凹部6が形成されており、放水口5と凹部6との間には弁座7が設けられている。なお、フランジ部3の平面形状をたとえば六角形や円形にするとよい。フランジ部3の平面形状を円形にした場合、締付工具が係止する係止部を設けてもよい。
【0014】
(フレーム10)
フレーム10は、有底円筒状であり、上部にはヘッド本体1の第2のねじ部4に螺合されるねじ部11が設けられており、ねじ部11の下方(高さ方向の中央部よりやや下方)には係止段部12が形成されている。フレーム10の係止段部12の下方には、散水口15が形成されている。この散水口15は、
図2に図示されるように、係止段部12と底部14との間に放射状かつ等間隔に形成され、周壁13と底部14の周縁部とに開口するようになっている。また、フレーム10の底部14には開口部16が設けられている。
なお、係止段部12の幅(中心側への突出長さ)は、リンク機構40の分解時に弁体20の落下を妨げないように、後述するアーム41a及びアーム41bの先端部が係止できるだけの必要最小限の幅になっている。
【0015】
(弁体20)
弁体20は、ヘッド本体1の放水口5を開閉するものであり、放水口5より小径で放水口5内に挿入される弁本体20aと、放水口5の下端部より大径で弁本体20aと一体に構成され、凹部6内に収容されるフランジ部20bと、このフランジ部20bの下面に突設された突起部21と、突起部21の外周にこれと同心的に設けられたかしめ片20cとからなっている。なお、弁体20の上面23には、たとえば銅などの金属材料で構成されるパッキン23aが設けられている。
【0016】
(アームガイド30)
アームガイド30は、
図2に図示されるように、1枚の金属板を曲げ加工して形成されたものであり、水平面に平行に設けられる基板(図示省略)と、この基板の長辺側の両縁部を下方に折曲げた板状の側壁32a、側壁32bとにより構成され、ほぼコ字状に形成されたものである。
【0017】
(リンク機構40)
リンク機構40は、一対のアーム(アーム41a、アーム41b)、アーム支持板46、シリンダー50、第1のピストン54、リンク押え板55、第2のピストン59などからなる。
【0018】
アーム41a及びアーム41bは、上部が円弧状に折曲げられ、当該上部から下部にかけて後述のシリンダーから離れる方向に折曲げられて(傾斜して)形成されたものであり、ほぼ逆J字形状をしている。アーム41a及びアーム41bの下部には、下から順番に第1の係止穴44と第2の係止穴45が設けられている。また、アーム41a及びアーム41bに設けられた第1の係止穴44の下面は、外側から内側に向って下り斜面に形成されている。
【0019】
アーム支持板46は、
図3に図示されるように、先端部が斜め下方に折曲げられた係止片49a、係止片49bを有し、アーム41a、アーム41bの間に配設されて係止片49a、係止片49bがアーム41a、アーム41bの第1の係止穴44に係止される。
【0020】
シリンダー50は、
図3に図示されるように、つば部51が当接するまでアーム支持板46の貫通穴48に挿入され、その位置でアーム支持板46と一体に固定される。このシリンダー50の内部には、たとえばコンプレッション半田からなる半田99が収容されている。第1のピストン54は、半田99を押圧して設けられ、シリンダー50内において上下方向に移動可能なように収容されている。すなわち、シリンダー50内に第1のピストン54を収容した状態において、シリンダー50の内周面と第1のピストン54の外周面との間には半田99が流出するための流出路となる隙間95が形成される。
なお、シリンダー50及び第1のピストン54の水平断面形状は、特に限定されるものではないが、実施の形態1では共に底面円形状であるものとして説明する。
【0021】
また、半田99の上面には、隙間95を塞がないように断熱部材90が設けられている。この断熱部材90については後段で詳細に説明する。なお、実施の形態1で説明する隙間95は、上方に向かって開放されるようになっている。
【0022】
リンク押え板55は、
図3に図示されるように、中心部にねじ穴57を有しアーム支持板46の本体47の幅より若干狭い幅の四角形の本体56と、その両側に突設された嵌合片58a、嵌合片58bからなり、アーム41a、アーム41bの間に配設されて嵌合片58a、嵌合片58bがアーム41a、アーム41bの第2の係止穴45に遊嵌する。第2のピストン59は、一端に設けたねじ部60がリンク押え板55のねじ穴57に螺入され、他端が第1のピストン54に当接する。
【0023】
(カバー61)
カバー61は、受熱板を兼ね、リンク機構40などを下側から覆うものである。このカバー61は、中心部に突出しているねじ部52の感熱板63の中心部に螺合することにより、フレーム10やリンク機構40の下面を覆って固定される。また、カバー61の中心部には、ねじ部52が螺合するねじ部62が設けられている。カバー61で受熱した熱はシリンダー50に伝わり、その後に半田99まで伝わる。
【0024】
(感熱板63)
感熱板63は、カバー61を固定するようにカバー61の下側に設けられる。感熱板63で受熱した熱はシリンダー50に伝わり、その後に半田99まで伝わる。
【0025】
[スプリンクラヘッド100の動作]
火災が発生して受熱板を兼ねたカバー61及び感熱板63が加熱され、その熱及び周辺からの熱気流により半田99が加熱される。半田99が溶融し始めると、溶融した半田99の一部はシリンダー50と第1のピストン54との間に形成された隙間95から流出する。そのため、シリンダー50及びこれに固定されたアーム支持板46がアームガイド30の側壁32a、側壁32bの切除部33a、切除部33b内を上昇し、両アーム41a、アーム41b又は少なくとも一方のアーム41a(又はアーム41b)が、フレーム10の係止段部12との係止部を支点として外方に回動する。
【0026】
この結果、アーム41a、アーム41b又は一方のアーム41a(又は41b)の第1の係止穴44と、アーム支持板46の係止片49a、係止片49b(又はその一方)との係合が外れ、リンク機構40は分解する。これにより、カバー61を含むリンク機構40及びバランサー35は、フレーム10の底部14に設けた開口部16から外部に落下する(
図4(a)の状態)。
【0027】
同時に、弁体20と一体化されたアームガイド30は、自重と消火水の圧力によりその側壁32a、側壁32bがフレーム10の開口部16の両側縁に沿って下降し、弁体20のフランジ部がフレーム10の底部14に着座して開口部16を閉塞する(
図4(b)の状態)。これにより、放水口5が開口され、消火水は、フレーム10内を通って散水口15から散水される。このとき、消火水の一部はフレーム10の底部14に当って跳ね上り、係止段部12の下面に当って直下方向に散水される。
【0028】
図5は、
図1に図示されるスプリンクラヘッド100の断熱部材90の近傍の拡大図である。
図5を参照して、スプリンクラヘッド100の断熱部材90について説明する。なお、
図5中の矢印は、溶融した半田99が隙間95(第1の隙間)から流出することを示すものである。
断熱部材90は、半田99に伝達された熱が第1のピストン54に逃げてしまうことを抑制するものである。断熱部材90は、その下面が半田99の上面に接触するように設けられ、その上面が第1のピストン54の下面に接触するように設けられている。つまり、断熱部材90は、半田99と第1のピストン54との間に挟まれている。
図5に図示される断熱部材90は、板状部材であり、その平面形状がたとえば第1のピストン54の底面形状に対応するように形成されるものである。すなわち、第1のピストン54の底面形状が円形である場合には、断熱部材90の形状は直径が当該円と同じである円板形状とするということである。そして、断熱部材90の大きさは、第1のピストン54の大きさとほぼ同径か、それより小さくなっている。
【0029】
また、断熱部材90は、隙間95を塞がないように設けられている。すなわち、断熱部材90は、その外周面とシリンダー50の内周面との間に、隙間95と連通する隙間95a(第2の隙間)が形成されている。これにより、半田99は溶融すると、隙間95aを介して隙間95から確実に流出する。
【0030】
この断熱部材90は、熱伝導率が低い金属又は樹脂などによって構成するとよい。たとえば、断熱部材90は、エンジニアリングプラスチックで構成するとよく、そのようなものとして、たとえばポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂などを採用するとよい。また、この断熱部材90の厚みは、特に限定されるものではないが、たとえば2mm程度に設定するとよい。
【0031】
断熱部材90は、表面に凹みを形成したり、表面が粗くなるように形成したりするとよい。これにより、断熱部材90と第1のピストン54との接触面積が少なくなり、半田99から第1のピストン54に熱が移動することを抑制する効果をより大きくすることができる。なお、凹みや粗くする面は、第1のピストン54と接触する側の面(断熱部材90の上面)でもよいし、半田99と接触する側の面(断熱部材90の下面)でもよいし、両面でもよい。また、第1のピストン54の半田99と接する面の表面を粗くしたり、凹みを設けても良い。
また、断熱部材90は、板状部材に限定されるものではなく、開口形成されたものであってもよい。すなわち、断熱部材90は、リング形状などであってもよいということである。断熱部材90がリング形状であっても、半田99と第1のピストン54とを直に接触させることを防止することができ、半田99から第1のピストン54に熱が移動することを抑制することができる。
【0032】
[実施の形態1に係るスプリンクラヘッド100の有する効果]
実施の形態1に係るスプリンクラヘッド100によれば、第1のピストン54と半田99との間に断熱部材90が設けられているので、半田99の受け取った熱が第1のピストン54に逃げてしまうことが抑制され、半田99を高効率(高感度)に溶融させることができる。これにより、火災発生時などにおけるスプリンクラヘッド100の動作を迅速にすることができる。
【0033】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2に係るスプリンクラヘッド100の断熱部材91の近傍の拡大図である。以下、本実施の形態2では、実施の形態1との相違点を中心に説明するものとする。
断熱部材91は、第1のピストン54と接触する側に突起91aが形成されたものである。なお、断熱部材91に形成された突起91aは、半田99と接触する側に形成されていてもよいし、両側に形成されていてもよい。これにより、断熱部材91と第1のピストン54との接触面積が小さくなるため、半田99に伝達された熱が、半田99から第1のピストン54に逃げてしまうことを抑制することができる。また、断熱部材91ではなく、第1ピストン54の半田99と接する面の表面に突起を設けても良い。
なお、断熱部材91に形成される突起91aの形成位置は、
図6に図示されるように、断熱部材91の中央部及び周縁部とし、全ての突起91aの高さを同程度とするとよい。これにより、第1のピストン54と突起91aとの接触が安定し、半田99を確実に押圧することができる。
【0034】
[実施の形態2に係るスプリンクラヘッドの有する効果]
実施の形態2に係るスプリンクラヘッドは、断熱部材91に突起91aが形成されており、断熱部材91と第1のピストン54との接触面積が小さくしている。これにより、実施の形態2に係るスプリンクラヘッドは、実施の形態1に係るスプリンクラヘッド100の奏する効果に加え、半田99に伝達された熱が、半田99から第1のピストン54に逃げてしまうことを、さらに抑制することができる。
【0035】
実施の形態3.
図7は、実施の形態3に係るスプリンクラヘッドの断熱部材92の近傍の拡大図である。
図7(a)は、断熱部材92の近傍の断面図である。また、
図7(b)は、
図7(a)に図示される断熱部材92の上面図である。
図7(c)は、
図7(b)の点線Tにおける断面図である。
図7(d)は、
図7(a)に図示される断熱部材92の下面図である。
なお、
図7における点線T1の間隔は断熱部材92の直径に対応し、点線T2の間隔は断熱部材92に形成された開口92bの直径に対応している。また、
図7(a)中の矢印は、溶融した半田99が、断熱部材92を介して隙間95から流出することを示すものである。
【0036】
半田99は、シリンダー50から受熱するが、全体が均一に暖められる訳ではない。すなわち、半田99は、シリンダー50との接触面付近のものほど温度上昇が早く、シリンダー50から遠いものほど遅くなる。そのため、半田99の流出位置がシリンダー50の近傍にあると、シリンダー50との接触面付近の半田99から徐々に流出してき、結果として半田99の全てが流出するのに数秒程度要していた。そこで、本実施の形態3では、半田99の流出位置を、シリンダー50の近傍から離す改良が加えられている。以下、実施の形態3では、実施の形態1、2との相違点を中心に説明するものとする。
【0037】
断熱部材92は、円板形状の部材の中央部に開口92b(第1の開口)が形成され、第1のピストン54と接触する側の面において開口92bから周縁まで溝部92aが形成されたものである。すなわち、
図7(c)に図示されるように、断熱部材92は、開口92bを通る直線上に十字状の溝部92aが形成される。そして、断熱部材92は、貫通形成されるとともに、隙間95と当該貫通形成位置とを接続するように、水平面と平行に形成された溝を有している。これにより、断熱部材92は、半田99のうち、シリンダー50の内側面から遠い位置のものから隙間95に流出可能となっている。具体的には、シリンダー50の内側面から近い半田99は溶融しても、シリンダー50から遠い位置にある半田99が溶融していないときには、開口92bから流出できず、断熱材92に押圧されたままとなる。そして、シリンダー50から遠い位置の半田99が溶融すると、全ての半田99は開口92b及び溝部92aを介して隙間95から流出する。
【0038】
なお、
図7では、開口92bが断熱部材92の中央部に形成されているものを一例として図示しているが、それに限定されるものではなく、中央部から若干ずれた位置に形成されていてもよい。また、
図7では、開口92bが1つ形成されたものを一例として図示しているが、それに限定されるものではなく複数形成されていてもよい。
また、
図7では、溝部92aが、開口92bから周縁に向かって直線的に形成されている例を図示しているが、それに限定されるものではない。すなわち、溝部92aは、開口92bと隙間95とを接続するのであれば曲線的に形成されていてもよい。また、溝部92aが4つ形成されたものを一例として図示しているが、それに限定されるものではない。
【0039】
[実施の形態3に係るスプリンクラヘッドの有する効果]
実施の形態3に係るスプリンクラヘッドは、実施の形態1に係るスプリンクラヘッド100と同様の効果に加え、以下の効果を奏する。
実施の形態3に係るスプリンクラヘッドは、シリンダー50の内側面から遠い位置の半田99から隙間95に流出するように、断熱部材92が設けられたものである。これにより、弁体20(
図1参照)が放水口5を徐々に開放することを抑制することができる。言い換えれば、弁体20が放水口5を開放する動作が一気に行われるということである。
したがって、実施の形態3に係るスプリンクラヘッドは、放水口5が徐々に開放されて漏れた水により、半田99に伝達された熱が奪われて溶融が妨げられることを抑制することができる。すなわち、実施の形態3に係るスプリンクラヘッドは、スプリンクラヘッドの作動が遅くなってしまう可能性を低減させることができる。
【0040】
実施の形態4.
実施の形態1〜3に係るスプリンクラヘッドはアーム41a、41bなどの作用によって、弁体20が放水口5を塞ぐように構成したものである。また、実施の形態1〜3に係るスプリンクラヘッドは、第1のピストン54及び第2のピストン59を有し、シリンダー54に収容された半田99を押圧する構成であった。
一方、実施の形態4に係るスプリンクラヘッド200は、弁体支持機構150の作用によって、弁体130が開口部111を塞ぐように構成したものである。また、実施の形態4に係るスプリンクラヘッド200は、ピストン152(別のピストン)を有し、シリンダー153内に収容された半田155を押圧する構成となっている。
図8は、実施の形態4に係るスプリンクラヘッド200の概要構成を説明するための断面図である。
図8を参照して、スプリンクラヘッド200の構成及び動作について説明する。以下、実施の形態4では、実施の形態1〜3の相違点を中心に説明するものとする。
【0041】
[スプリンクラヘッド200の構成]
スプリンクラヘッド200は、スプリンクラヘッド200に供給される消火水が流れる配管に接続されるヘッド本体110、ヘッド本体110に接続されるフレーム120、ヘッド本体110を塞ぐ弁体130、スプリンクラヘッド200から放出される消火水を拡散する散水部140及び放水動作しないときに弁体130を支持する弁体支持機構150を備えている。
【0042】
(ヘッド本体110)
ヘッド本体110は、消火水が流れる給水管に接続され、当該給水管からヘッド本体110を介してスプリンクラヘッド200内に消火水が供給されるものである。ヘッド本体110は、消火水を放水するための放水口112を有している。この放水口112は、ヘッド本体110の中心部に形成された開口部111、及びヘッド本体110の内側の下方に突出して形成された円筒状の放水筒116によって構成されている。
ヘッド本体110の外周部にはフランジ113が形成されており、フランジ113の上側のヘッド本体110の外周部には給水管に接続されるねじ部114が形成されており、また、フランジ113の下側の内周部には、フレーム120が取り付けられるためのねじ部115が形成されている。
ヘッド本体110の内側には上述の放水筒116が下方に突出して形成されている。また、放水筒116の下端部には、後述の弁体130が設けられる平らな弁座117が形成されている。なお、ヘッド本体110は、フランジ113の下側の内周部と放水筒116との間に略リング状の空間118が形成されており、この空間118には後述のガイドロッド142が収納される。
【0043】
(フレーム120)
フレーム120は、円筒状に形成され、ヘッド本体110に接続されるものである。フレーム120の上部の外周部にはねじ部121が形成され、ヘッド本体110の下部側に形成されたねじ部115に取付けられる。フレーム120の下部には、内側に突出した係止段部122が設けられ、係止段部122には後述のボール161が係止される。
【0044】
(弁体130)
弁体130は、通常時にヘッド本体110の開口部111から消火水が放出されることを防止するものである。弁体130の下部の中央部には、後述のセットスクリュー165の頭部が設けられる凹部130bが形成される。この弁体130は、弁体支持機構150によって支えられている。
【0045】
(散水部140)
散水部140は、弁体130の下部に固定されるデフレクタ141、デフレクタ141に接続されるガイドロッド142、及びガイドロッド142に接続され、放水動作時に係止段部122に引っかかるまで下降するストッパリング143を備えている。
デフレクタ141は、中央に開口部を有する円板によって構成されており、その開口部に弁体130の下部が挿入された状態で、弁体130の弁体フランジ130a下面に取り付けられている(固定されている)。また、デフレクタ141には、ガイドロッド142(たとえば3本)が挿入される挿入穴(たとえば3個)が設けられており、ガイドロッド142の下端は、その挿入穴から突出した状態でデフレクタ141に固着されている。したがって、これらの弁体130、デフレクタ141及びガイドロッド142は一体的に構成されている。
【0046】
(弁体支持機構150)
弁体支持機構150は、通常時において弁体130がヘッド本体110の開口部111を塞ぐように、弁体130を支持するものである。弁体支持機構150は、熱を半田155に伝達する感熱部151、フレーム120の下部に設けられるボール保持機構160、各種部品同士を固定するものであるセットスクリュー165を備えている。
【0047】
次に、
図9を参照して、スプリンクラヘッド200の感熱部151の概要構成について説明する。
図9は、
図8に図示されるスプリンクラヘッド200の感熱部151の近傍の拡大図である。
感熱部151は、熱により溶融する半田155、半田155を押圧するピストン152、スプリンクラヘッド200が設置される空間の熱を半田155に伝達させる感熱板172、感熱板172の熱がバランサ163側に逃げることを防ぐことで効率的に半田155に伝達させるための断熱材154、半田155が収容され、感熱板としても機能するシリンダー153、及び半田155の熱がピストン152に逃げてしまうことを抑制する断熱部材193を備えている。
半田155は、火災時に発生する熱により溶融する。半田155はドーナツ形状などに形成されているものとして説明するが、それに限定されるものではない。この半田155は、ピストン152の上部から挿入され、断熱部材193の上に設置される。
【0048】
ピストン152は、後述のボール保持機構160のバランサー163とともに、半田155を押圧するものである。このピストン152は、円筒状に形成された円筒部152aと、円筒部152aの下部に形成されたフランジ152bとから構成されている。また、円筒部152aの内面には、雌ねじ152cが形成され、セットスクリュー165の脚部にある雄ねじ165aがねじ込まれ、ピストン152とセットスクリュー165とが結合している。
なお、ピストン152は、セットスクリュー165と結合して固定されている一方で、フランジ152bは、断熱部材154、感熱板172、シリンダー153、半田155、及び断熱部材193を介してバランサー163に押圧されている。そのため、半田155は、ピストン152のフランジ152bと、シリンダー153とによって押圧されている。
【0049】
感熱板172は、スプリンクラヘッド200が設置される空間の熱を半田155に伝達させるものである。感熱板172は、略ドーナツ形状をしており、ピストン152の円筒部152aが挿入されて設けられている。この感熱板172は、上面が断熱材154と接し、下面がシリンダー153と接して設けられている。
また、感熱板172は、断熱材154を介してバランサー163に押圧されているため、感熱板172はシリンダー153の上部を押圧する。これにより、感熱板172は、半田155が溶融するとシリンダー153とともに下降し、ピストン152のフランジ152bで半田155を押圧する。
【0050】
断熱材154は、感熱板172の熱がボール保持機構160のバランサー163側に逃げないようにするものである。この断熱材154は、略ドーナツ形状をしており、上部がバランサー163の段部163aにはめられ、下部が感熱板172と接して設けられている。また、この断熱材154は、ピストン152の円筒部152aに挿入されて設けられている。断熱材154は、バランサー163によって押圧されているため、感熱板172を押圧する。
【0051】
シリンダー153は、ピストン152の一部、半田155、及び断熱部材193を収容するとともに、感熱板としての機能を有するものである。このシリンダー153は、円板形状部材の中央部が上方に突出し、該中央部にピストン152の円筒部152aが挿入されるように開口形成された形状をしているものである。具体的には、このシリンダー153は、略ドーナツ形状でありシリンダー153の上部を構成するシリンダー上部153aと、略円筒形状であり一方がシリンダー上部153aに接続された立設部153bと、略ドーナツ形状であり立設部153bの他方に接続されたシリンダー下部153cとが一体に形成されたものである。なお、以下の説明において、シリンダー上部153a、立設部153b、及びシリンダー下部153cは一体であるものとして説明するが、別体でもよい。通常時においては、このシリンダー153のシリンダー上部153a及び立設部153bと、ピストン152の円筒部152a及びフランジ152bとによって形成される空間に半田155が設置される。
【0052】
シリンダー上部153aは、略ドーナツ形状であり、シリンダー153の上部を構成するものであり、下面が半田155の上面と接するように設けられている。また、シリンダー上部153aの上には感熱板172が設けられており、シリンダー上部153aはこの感熱板172及び断熱材154を介してバランサー163に押圧されている。シリンダー上部153aの外周は、立設部153bに接続されている。また、シリンダー上部153aの中央部には、円筒部152aが挿入可能なように開口が形成されている。
【0053】
立設部153bは、略円筒形状であり、一方がシリンダー上部153aに接続され、他方がシリンダー下部153cに接続されたものである。この立設部153bの内側に半田155が設けられている。すなわち、この立設部153bは、半田155の側面部を覆っている。ここで、この立設部153bの内面と、ピストン152のフランジ152bとの間には、溶融した半田155が流出する隙間153d(第3の隙間)が形成されている。すなわち、溶融した半田155は、隙間153dから流出可能となっている。
【0054】
シリンダー下部153cは、略ドーナツ形状であり、立設部153bの他方に接続されたものである。シリンダー下部153cは、シリンダー153の中で、スプリンクラヘッド200が設置される空間に対して特に露出面積が大きくなっている。したがって、シリンダー下部153cは、その分、半田155を溶融させるための熱を多く受け取ることができる。すなわち、シリンダー153は、半田155を収容するだけでなく、感熱板としての機能も有している。
【0055】
断熱部材193は、半田155の熱がピストン152に逃げてしまうことを抑制するものである。断熱部材193の下面がピストン152のフランジ152b上に接触しながら設けられ、断熱部材193の上面が半田155に接触しながら設けられている。
図9に図示される断熱部材193は、平面形状がたとえばフランジ152bの上面形状に対応する形状とするとよい。すなわち、フランジ152bの上面の形状がリング形状である場合には、断熱部材193の形状もそれに対応してリング形状とするとよい。なお、断熱部材193の形状は、リング形状に限定されるものではなく、断熱部材193の一部が切断されたものでもよい。
【0056】
また、断熱部材193は、断熱部材193の外径が、立設部153bの内径より小さくなるように設定している。これにより、隙間153dが塞がれてしまうことを抑制し、溶融した半田155を、隙間153dから確実に流出させることができる。なお、断熱部材193の外形が立設部153の内径と略一致するように設定してもよいが、その場合には、隙間153dの位置に適宜開口などを形成し、溶融した半田155が流出できるようにする。
【0057】
(ボール保持機構160)
再び、
図8を参照して、スプリンクラヘッド200のボール保持機構160の概要構成について説明する。
ボール保持機構160(保持部)は、ボール161、外周側下部にボール161と接する凹部162aが形成されたスライダー162、スライダー162と弁体130の間に設けられる皿ばね132、及び半田155を押圧するバランサー163を備えている。なお、バランサー163は、断熱材154及び感熱板172を介してシリンダー153を押圧している。このため、バランサー163は、シリンダー153及びピストン152によって半田155を押圧させるものとして機能する。
【0058】
ボール161は、その下部が、フレーム120の係止段部122及びバランサー163に接触して係止されている。また、この状態において、ボール161は、スライダー162によって上から押さえられているためスライダー162からボール161に力がかかり、ボール161には内側に入り込む方向に力が作用する。すなわち、ボール161には、皿ばね132のばね力がスライダー162を介して伝達され、常に内側に移動するように力がかかっている。その結果、ボール161は、バランサー163を下方に移動させるように力が作用している。
【0059】
ここで、半田155が溶融して流出した際のボール保持機構160の動きについて説明する。半田155が溶融するとバランサー163が下方に移動し、それに伴って、ボール161が内側に入り込む。これにより、バランサー163は、フレーム120の係止段部122との係止状態が解除され、ボール保持機構160は感熱部151と共に落下する。ボール保持機構160が落下すれば、それに伴って、散水部140を構成する弁体130、ストッパリング143などが落下して、放水が行われる。
【0060】
[スプリンクラヘッド200の動作]
図10は、
図8に図示されるスプリンクラヘッド200の動作説明図である。
図8及び
図10を参照してスプリンクラヘッド200の動作について説明する。
【0061】
スプリンクラヘッド200は、監視状態時において、ヘッド本体110の放水口112には加圧された消火水が供給されており、弁体130には消火水の圧力が加えられている(
図8参照)。火災が発生し、その熱気流が感熱板172及びシリンダー153に当たると加熱され、感熱板172及びシリンダー153の熱は半田155へ伝達する。このとき、半田155に伝達された熱は、断熱部材193により、ピストン152へ逃げてしまうことが抑制されており、感度が高くなっている。
【0062】
そして、半田155が周囲から加熱されて溶融し始めると、断熱材154、感熱板172及びシリンダー153はバランサー163によって押圧されているため、断熱材154、感熱板172及びシリンダー153が一緒に下降する。したがって、半田155が溶融し始めると、半田155はシリンダー153のシリンダー上部153aの下面と、ピストン152のフランジ152bの上面とによって押圧されることとなる。すなわち、シリンダー上部153aの下面と、フランジ152bの上面との対向間隔については小さくなる。そして、溶融した半田155は押圧されて、シリンダー153の立設部153bとピストン152のフランジ152bとによって形成される隙間153dから流出する。
【0063】
半田155が溶融して隙間153dから流出すると、感熱板172及びシリンダー153は半田155の流出量に対応して降下する。感熱板172及びシリンダー153が降下すると、感熱板172の上に取り付けられている断熱材154及びバランサー163が降下する。バランサー163が降下すると、バランサー163とスライダー162との間の間隙が広がり、内側に付勢されているボール161がバランサー163の傾斜部163bを越えて内側に移動する。これにより、フレーム120の係止段部122とボール161との係合が解かれ、弁体支持機構150は降下する。
【0064】
弁体支持機構150が降下すると、弁体130が降下する。また、弁体130の降下に伴って、弁体130に取り付けられているデフレクタ141、デフレクタ141に取り付けられているガイドロッド142、及びストッパリング143が降下する。ガイドロッド142が降下すると、ストッパリング143はフレーム120の係止段部122に係止され、弁体130及びデフレクタ141がガイドロッド142によりフレーム120から吊り下げられた状態になる。弁体130が降下すると放水口112は開放され、加圧された消火水がデフレクタ141から散水されて火災を消火する。
【0065】
[実施の形態4に係るスプリンクラヘッド200の有する効果]
本実施の形態4に係るスプリンクラヘッド200においても、実施の形態1と同様の効果を奏する。すなわち、本実施の形態4にかかるスプリンクラヘッド200は、フランジ152b(ピストン152)と半田155との間に断熱部材193が設けられているので、半田155の受け取った熱がフランジ152bに逃げてしまうことが抑制され、半田155を高効率(高感度)に溶融させることができる。これにより、火災発生時などにおけるスプリンクラヘッド200の動作が遅くなることを抑制することができる。
【0066】
実施の形態5.
図11は、実施の形態5に係るスプリンクラヘッドの感熱部151の近傍の拡大図である。以下、本実施の形態5では、実施の形態1〜4との相違点を中心に説明するものとする。
断熱部材194は、半田155の熱が、フランジ152bだけでなく、円筒部152aにも逃げないようにするものである。断熱部材194は、ピストン152のフランジ152bと接触して設けられる下部194aと、ピストン152の円筒部152aと接触して設けられる円筒部194bとから構成されている。この断熱部材194は、半田155の熱が、ピストン152のフランジ152bから逃げしまうことを抑制するだけでなく、ピストン152の円筒部152aから逃げてしまうことを抑制することができる。
なお、円筒部194bの高さ方向の長さは、
図11に図示されるように、円筒部194bの上端が、シリンダー153のシリンダー上部153aよりも上側となるように設定する。なお、
図11において、円筒部194bの高さ方向の長さは、円筒部194bの上端が、断熱材154の中間程度の位置となるように設定された例を図示している。この場合には、円筒部194bの厚みの分だけ、感熱板172及び断熱材154の内径を大きくすればよい。
【0067】
[実施の形態5に係るスプリンクラヘッドの有する効果]
実施の形態5に係るスプリンクラヘッドは、断熱部材194に円筒部194bが形成されている。これにより、実施の形態5に係るスプリンクラヘッドは、実施の形態4に係るスプリンクラヘッド200の奏する効果に加え、半田155に伝達された熱が、フランジ152b、円筒部152aに逃げてしまうことを、さらに抑制することができる。
【0068】
実施の形態6.
図12は、実施の形態6に係るスプリンクラヘッドの感熱部151の近傍の拡大図である。以下、本実施の形態6では、実施の形態1〜5との相違点を中心に説明するものとする。
実施の形態6に係るスプリンクラヘッドは、通常時において、ピストン152のフランジ152bと、シリンダー153の立設部153b及びシリンダー下部153cの接続部153tとが近接して設けられている。そして、フランジ152bと接続部153tとの間に、断熱部材195が延出して設けられている。
すなわち、実施の形態6に係るスプリンクラヘッドは、半田155の熱がピストン152に逃げてしまうことを抑制するだけでなく、シリンダー153(接続部153t)から半田155に伝達される熱が、ピストン152(フランジ152b)に逃げてしまうことを抑制することも考慮したものである。
【0069】
断熱部材195は、フランジ152bの上面に接触して設けられる平坦部195aと、傾斜面を有する傾斜部195bとから構成される。なお、平坦部195aと傾斜部195bとは一体であるものとして説明するが、別体であってもよい。
平坦部195aは、半田155の熱がピストン152のフランジ152bに逃げてしまうことを抑制するものである。平坦部195aは、略ドーナツ形状をしており、フランジ152b上に設けられている。
傾斜部195bは、シリンダー153(接続部153t)から半田155に伝達される熱が、ピストン152(フランジ152b)に逃げてしまうことを抑制するものである。この傾斜部195bは、略ドーナツ形状をしており、半径方向であって中心から外側に向かう方向において下に傾斜している。
傾斜部195bは、隙間153dに設けられ、フランジ152bと接続部153tとの間の熱伝達を遮断している。なお、傾斜部195bの厚みは、傾斜部195bによって隙間153dが塞がれてしまわないように設定するものとする。
【0070】
[実施の形態6に係るスプリンクラヘッドの有する効果]
実施の形態6に係るスプリンクラヘッドも、実施の形態4、5に係るスプリンクラヘッド200と同様の効果に加え、シリンダー153(接続部153t)から半田155に伝達される熱が、ピストン152(フランジ152b)に逃げてしまうことを抑制することができる。
【0071】
実施の形態7.
図13は、実施の形態7に係るスプリンクラヘッドの感熱部151の近傍の拡大図である。以下、本実施の形態7では、実施の形態1〜6との相違点を中心に説明するものとする。
図13(a)は、断熱部材196の近傍の断面図である。また、
図13(b)は、
図13(a)に図示される断熱部材196の下面図である。
図13(c)は、
図13(b)の点線Pにおける断面図である。なお、
図13中におけるRは、断熱部材196の内径に対応し、rはピストン152の円筒部152aの外径に対応している。
【0072】
半田155は、シリンダー153との接触面付近のものほど温度上昇が早く、シリンダー153から遠いものほど遅くなる。そこで、実施の形態7も実施の形態3と同様に、半田155の流出位置を、シリンダー153から離す改良が加えられている。
【0073】
断熱部材196は、中央部に開口196bが形成され、フランジ152bと接触する側の面において開口196bから周縁まで溝部196aが形成されたものである。この断熱部材196の外径は、シリンダー153の立設部153bの内周面の断面形状に対応している。また、断熱部材196の内径(開口196bの直径)は、円筒部152aの直径より若干大きくなっており、溶融した半田155が通ることができるようになっている。すなわち、断熱部材196と円筒部152aとの間には、隙間196c(第4の隙間)が形成されている。これにより、断熱部材196は、シリンダー153から遠い位置の半田155から隙間153dに流出可能となっている。
具体的には、溶融した半田155は、隙間196c及び溝部196aを介して隙間153dから流出する。なお、
図13では、溝部196aが、開口196bから周縁に向かって直線的に形成されている例を図示しているが、それに限定されるものではない。すなわち、溝部196aは、開口196bと隙間153dとを接続するのであれば曲線的に形成されていてもよい。また、溝部196aが4つ形成されたものを一例として図示しているが、それに限定されるものではない。
【0074】
[実施の形態7に係るスプリンクラヘッドの有する効果]
実施の形態7に係るスプリンクラヘッドは、シリンダー153の内側面から遠い位置の半田155から隙間153dに流出するように、断熱部材196が設けられたものである。これにより、弁体130(
図8参照)が放水口111を徐々に開放することを抑制することができる。言い換えれば、弁体130が放水口111を開放する動作が一気に行われるということである。
したがって、実施の形態7に係るスプリンクラヘッドは、放水口111が徐々に開放されて漏れた水により、半田155の熱が奪われて溶融が妨げられることを抑制することができる。すなわち、実施の形態7に係るスプリンクラヘッドは、スプリンクラヘッドの作動が遅くなってしまう可能性を低減させることができる。なお、実施の形態7に係るスプリンクラヘッドは、実施の形態4〜6に係るスプリンクラヘッド200と同様の効果を奏することは言うまでもない。