(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752013
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】アセタール化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 41/56 20060101AFI20150702BHJP
C07C 43/307 20060101ALI20150702BHJP
C07C 43/303 20060101ALI20150702BHJP
C07C 43/315 20060101ALI20150702BHJP
C07D 317/12 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
C07C41/56
C07C43/307
C07C43/303
C07C43/315
C07D317/12
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-251932(P2011-251932)
(22)【出願日】2011年11月17日
(65)【公開番号】特開2013-107831(P2013-107831A)
(43)【公開日】2013年6月6日
【審査請求日】2014年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JX日鉱日石エネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103285
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 順之
(72)【発明者】
【氏名】本九町 卓
(72)【発明者】
【氏名】井上 敏夫
【審査官】
小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−022160(JP,A)
【文献】
特開2010−070718(JP,A)
【文献】
特開平11−217346(JP,A)
【文献】
Tetrahedron,Vol.62, No.42,p.9846-9854 (2006).
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 41/56
C07C 43/303
C07C 43/307
C07C 43/315
C07D 317/12
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
JCHEM(JDreamII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるカルボニル基を有する有機化合物(以下、「カルボニル化合物」という。)と
式(2)で表される化合物、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセリンから選ばれるヒドロキシ基を含む有機化合物(以下、「ヒドロキシ化合物」という。)とを含む混合液(以下、「混合液」という。)からアセタール化合物を製造する方法
であって、「混合液」を、「ヒドロキシ化合物」の臨界温度未満に保持しながら、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素と接触させ
、「カルボニル化合物」中のカルボニル基と「ヒドロキシ化合物」中のヒドロキシ基の反応でアセタール基を生成させることを特徴とするアセタール化合物の製造方法。
【化1】
(式(1)中、R1およびR2は、それぞれ個別に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(シクロアルキル基を含む)、または炭素数6〜10のアリール基を示す。ただし、R1とR2が同時に水素原子とはならない。)
【化2】
(式(2)中、R3は、炭素数1〜20のアルキル基(シクロアルキル基を含む)または炭素数6〜10のアリール基を示す。)
【請求項2】
「混合液」を、「カルボニル化合物」の臨界温度未満に保持しながら、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素と接触させることを特徴とする請求項1に記載のアセタール化合物の製造方法。
【請求項3】
「混合液」を、「ヒドロキシ化合物」の常圧下で測定される沸点未満に保持しながら、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素と接触させることを特徴とする請求項1または2に記載のアセタール化合物の製造方法。
【請求項4】
「混合液」を、「カルボニル化合物」の常圧下で測定される沸点未満に保持しながら、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素と接触させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のアセタール化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセタール化合物の製造方法に関する。詳細には、カルボニル基を有する有機化合物と水酸基を有する有機化合物とを、超臨界二酸化炭素の存在下に反応させて、アセタール化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アセタール化合物の製造は、カルボニル基を有するアルデヒド、ケトン等の有機化合物と低級アルコール類を原料とし、触媒添加、あるいは、特定の固定触媒との接触により行われるのが通常で、触媒除去や特定の触媒製造が必須となる問題があった。
これら問題を解決する方法として、カルボニル基を有する有機化合物および/または低級アルコールを超臨界状態とする製造方法(特許文献1)が提案されているが、アセタール化合物の収率、選択率の両面において、改善の余地が大きい。また、カルボニル化合物等を超臨界状態とするために、反応系を極めて高温高圧とする問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−217346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、触媒添加、触媒除去、触媒製造を必要とせず、かつ高選択性、高収率でアセタール化合物を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、カルボニル基を有する有機化合物とヒドロキシ基を含む有機化合物とを含む混合液を、これら化合物の臨界温度未満、好ましくは沸点温度未満に保持しながら、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素と接触させることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0006】
[1] カルボニル基を有する有機化合物(以下、「カルボニル化合物」という。)とヒドロキシ基を含む有機化合物(以下、「ヒドロキシ化合物」という。)とを含む混合液(以下、「混合液」という。)からアセタールを製造する方法において、「混合液」を、「ヒドロキシ化合物」の臨界温度未満に保持しながら、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素と接触させることを特徴とするアセタール化合物の製造方法。
【0007】
[2] 「混合液」を、「カルボニル化合物」の臨界温度未満に保持しながら、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素と接触させることを特徴とする前記[1]に記載のアセタール化合物の製造方法。
【0008】
[3] 「混合液」を、「ヒドロキシ化合物」の常圧下で測定される沸点未満に保持しながら、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素と接触させることを特徴とする前記[1]または[2]に記載のアセタール化合物の製造方法。
【0009】
[4] 「混合液」を、「カルボニル化合物」の常圧下で測定される沸点未満に保持しながら、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素と接触させることを特徴とする前記[1]ないし[3]のいずかに記載のアセタール化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法により、触媒添加、触媒除去、触媒製造を必要とせず、かつ高選択性、高収率でアセタール化合物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ベンズアルデヒドとメタノールのアセタール反応液の
1H−NMRスペクトル分析図である。
【
図2】ベンズアルデヒドとエチレングリコールのアセタール反応液の
1H−NMRスペクトル分析図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳述する。
本発明で使用するカルボニル基を有する有機化合物(以下、「カルボニル化合物」という。)は、一般式(1)に示されるものである。また、カルボニル基を有する有機化合物として、反応条件下でカルボニル基を生じる有機化合物を用いても良い。環状ヘミアセタールも、反応条件下でカルボニル基を生じるので、「カルボニル化合物」である。
【0014】
式(1)中、R
1およびR
2は、それぞれ個別に、水素原子、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、または炭素数6〜10のアリール基を示す。ただし、R
1とR
2が同時に水素原子とはならない。
【0015】
R
1、R
2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。これらアルキル基の一部は、任意の官能基に置換されていてもよい。
【0016】
また、R
1、R
2で示されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。これらアルキル基の一部は、任意の官能基に置換されていてもよい。
【0017】
上記式(1)で表わされる「カルボニル化合物」は、分子内に2つ以上のカルボニル基を有する有機化合物でもよく、カルボニル基の他に、反応に関与しない官能基を置換基として有していても良い。また、R
1とR
2の一部原子が結合した環状構造を有していても良い。
【0018】
「カルボニル化合物」としての環状ヘミアセタールとしては、単糖類が挙げられる。例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース等のアルドヘキソース、フルクトース等のケトースが挙げられる。
【0019】
本発明で使用するヒドロキシ基を有する有機化合物(以下、「ヒドロキシ化合物」という。)は、一般式(2)に示されるものである。
【0021】
式(2)中、R
3は、アルキル基(シクロアルキル基を含む)またはアリール基を示す。
【0022】
R
3で示されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。これらアルキル基の一部は、任意の官能基に置換されていてもよい。
【0023】
また、R
3で示されるアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。これらアリール基の任意の一部は、任意の官能基に置換されていてもよい。
【0024】
上記式(2)で表わされる「ヒドロキシ化合物」は、分子内に2つ以上のヒドロキシ基を有する有機化合物でもよい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のジオール類、グリセリン等のトリオール類である。ヒドロキシ基の他に、反応に関与しない官能基を置換基として有していても良い。
【0025】
「混合液」中での、「カルボニル化合物」と「ヒドロキシ化合物」との割合については特に制限は無いが、一般に「カルボニル化合物」1モルに対して「ヒドロキシ化合物」が2〜500モルであり、好ましくは2〜100モルである。
【0026】
「混合液」中での、「カルボニル化合物」および「ヒドロキシ化合物」は、少なくとも一方が液相であるのが好ましい。両者が均一相を構成していることがさらに好ましい。すなわち、液体同士で混合しているか、どちらか一方が他方に溶解しているか、任意に加えられる溶媒に両者が溶解していることが好ましい。
【0027】
超臨界二酸化炭素とは、7.4MPa以上、かつ31℃以上にある二酸化炭素を指し、亜臨界二酸化炭素とは、この両条件を充足しないが、この近傍条件にある二酸化炭素のことである。
【0028】
本発明者らは、本発明において、超臨界二酸化炭素または亜超臨界二酸化炭素は、以下の機能を果たしていると考えている。
すなわち、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素が、「混合液」中に溶解して、「ヒドロキシ化合物」との相互作用により、下記式(3)で示される「H
+」と「R−O
−」を生成させる機能である。
なお、式(3)中、scCO
2は、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素を示す。この反応を進行させるためには、超臨界二酸化炭素がより好ましい。
【0030】
二酸化炭素は反応性に乏しい化合物として知られているが、超臨界二酸化炭素または亜超臨界二酸化炭素は、他の化合物と反応あるいは相互作用を有することが経験的に知られている。本発明者らは、本発明において、この式(3)により生成する「H
+」が、「カルボニル化合物」中の酸素に付加することで、アセタール反応が開始すると考えている。
【0031】
本発明においては、反応系内の「H
+」生成ルートを、実質的に式(3)経由のみに制御して、系内で進行する反応をアセタール反応とし、アセタール化合物合成にかかる高選択率、高収率を確保する。
【0032】
本発明においては、これを達成する具体的手段として、「混合液」を、「ヒドロキシ化合物」の臨界温度未満に保持したまま、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素に接触させる。さらに、好ましくは、「混合液」を、「ヒドロキシ化合物」の温度を常温下で測定される沸点未満に保持したまま、すなわち、「ヒドロキシ化合物」が高圧下でも超臨界状態に到達し得ない温度に保持したまま、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素に接触させる。
【0033】
さらには、必要に応じて、「カルボニル化合物」由来の各種イオンの発生を回避するため、「混合液」を、「カルボニル化合物」の臨界温度未満、または、常温で測定される沸点未満に保持したまま、超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素に接触させる。
【0034】
反応時間については特に限定は無く、アセタール化合物が製造されるに足る時間であり、例えば、通常1時間以上、好ましく10時間以上、より好ましくは20時間以上、さらに好ましくは30時間以上である。通常は経済性の観点から240時間以下が好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
[実施例1]
「カルボニル化合物」としてベンズアルデヒド(沸点179℃)1.06g(10.0mmol)、「ヒドロキシ化合物」として所定量のメタノール(臨界温度240℃、臨界圧力=8.0MPa、沸点65℃)、必要に応じて水(沸点100℃)を、ガラス容器内へ入れ、ガラス製スタラーチップとともにオートクレーブ反応容器(耐圧硝子工業製TVS−N2−200型ポータブルリアクター。ステンレス製。内部容積200ml。)内にガラス容器ごと置いた。
【0037】
ボンベから容器内へ液化二酸化炭素の注入を開始し、バンドヒーターを熱源として、系内を、45℃、7.5MPaとして二酸化炭素を超臨界二酸化炭素とした後、所定時間加熱撹拌を継続した。反応終了後、反応容器を室温まで冷却し、二酸化炭素を反応容器外へ開放して常圧に戻した。
【0038】
各反応液を少量取り、
1H−NMRスペクトル分析を実施、検出各物質に帰属されるプロトンのケミカルシフトをもとに、面積百分率法を用いてベンズアルデヒドのアセタール化率を算出した。結果を表1に示す。
また、反応液中には、未反応のメタノール、未反応ベンズアルデヒド、ベンズアルデヒドのアセタール化物のみが含まれており、極めて、高選択率でアセタール反応が進行していることを確認した。表1の実験番号3に対応する
1H−NMRスペクトル分析を
図1に示す。
【0039】
1H−NMRスペクトル分析用サンプル採取後の反応液をエバポレーターで余剰のメタノール、ベンズアルデヒドを留去後、さらに、真空ポンプを用いて減圧下、残存のベンズアルデヒドを除去した。残渣をクロロホルムに溶解、不溶物を炉別し、炉液にヘキサンを加えて、アセタールを析出回収した。この回収量を収率として表1に記載した。収率は、ほぼ転化率に一致した。
これらの結果は、本発明の方法が、高選択率、高収率で、下記式(4)に従ってアセタール化合物を製造できることを示す。
【0040】
【化4】
【0041】
【表1】
【0042】
[実施例2]
「カルボニル化合物」としてベンズアルデヒド1.06g(10.0mmol)、「ヒドロキシ化合物」としてエチレングリコール(沸点197℃)12.00g (200mmol)を、45℃、7.5MPa、96時間加熱撹拌を継続した以外は、実施例1と同様にアセタール化合物の合成を行った。
取り出した反応混合物を少量取り、
1H−NMRスペクトル分析装置を用いて検出した各物質に帰属されるプロトンのケミカルシフトをもとに、面積百分率法を用いて転化率が75%であることを確認した。組成比を算出した。
また、反応液中には、未反応のエチレングリコール、未反応ベンズアルデヒド、2種のアセタール化合物のみが含まれており、極めて、高選択率でアセタール反応が進行していることを確認した。これらの結果を
図2に示す。
なお、2種のアセタール化合物は、1モルのベンズアルデヒドに対して、1モルのエチレングリコールが付加したアセタール化合物と、2モルのエチレングリコールが付加したアセタール化合物であり、その割合は約2:3であった。
これらの結果は、本発明の方法が、高選択率、高収率で、下記式(5)に従ってアセタール化合物を製造できることを示す。
【0043】
【化5】
【0044】
[実施例3]
「カルボニル化合物」としてアセトン(沸点56℃)0.129g(10.0mmol)、「ヒドロキシ化合物」としてメタノール5.39g (200mmol)とし、45℃、7.9MPa、96時間加熱撹拌を継続した以外は、実施例1と同様にアセタール化合物の合成を行った。
取り出した反応混合物を少量取り、
1H−NMRスペクトル分析装置を用いて検出した各物質に帰属されるプロトンのケミカルシフトをもとに、面積百分率法を用いて転化率が44%であることを確認した。
また、反応液中には、未反応のメタノール、未反応アセトン、アセタール化合物(2,2−ジメトキシプロパン)のみが含まれており、極めて、高選択率でアセタール反応が進行していることを確認した。
これらの結果は、本発明の方法が、高選択率、高収率で、下記式(6)に従ってアセタール化合物を製造できることを示す。
【0045】
【化6】
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明により、多様なアセタール化合物を簡便な方法で容易に製造することができるため、工業的利用価値は極めて高い。