(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752034
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】多孔質部を固定するための構造を備えたインプラント
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20150702BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
【請求項の数】37
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-516607(P2011-516607)
(86)(22)【出願日】2009年6月24日
(65)【公表番号】特表2011-526809(P2011-526809A)
(43)【公表日】2011年10月20日
(86)【国際出願番号】US2009048469
(87)【国際公開番号】WO2010002663
(87)【国際公開日】20100107
【審査請求日】2012年6月11日
(31)【優先権主張番号】12/167,060
(32)【優先日】2008年7月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507385637
【氏名又は名称】ジマー デンタル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダムストラ, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】サルヴィ, ジョセフ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ザマニ, シャーラム
(72)【発明者】
【氏名】エスファハニ, モジタバ
【審査官】
胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第89/000410(WO,A1)
【文献】
特開平07−255832(JP,A)
【文献】
特開平02−149267(JP,A)
【文献】
特開平05−305132(JP,A)
【文献】
特開2006−187447(JP,A)
【文献】
特開平02−241461(JP,A)
【文献】
特開昭63−143057(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0050699(US,A1)
【文献】
国際公開第2008/052300(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/108411(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/027794(WO,A1)
【文献】
国際公開第97/021393(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びているインプラントであって、
骨と係合するための第一のネジ切りされた外面を有するヘッド部と、
金属製で多孔質の中間部と、
ステム部とを備えており、
前記中間部は、軸方向に貫通する孔と、前記中間部の多孔質の外面から前記中間部の多孔質の内面へと延びる多孔質の壁とを有し、
前記多孔質の内面は、前記孔の外周を形成し、
前記外周は、軸方向において実質的に一定である前記孔の直径を定義し、
前記ステム部は、前記中間部が前記ヘッド部および前記ステム部と結合されることなく、少なくとも前記ヘッド部および前記ステム部が協働して前記中間部を前記インプラント上に狭持するよう、前記ヘッド部と係合するように構成されており、
前記ステム部は、骨と係合するための第二のネジ切りされた外面と、
前記孔の直径にほぼ等しい直径を有するコアとを有し、
前記コアは、前記ヘッド部および前記ステム部の両方のうちの少なくとも1つから軸方向に延びている、インプラント。
【請求項2】
前記中間部が、骨を内部へと成長させるために多孔性となっている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記中間部がタンタルで構成されてなる、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記中間部が、少なくとも部分的に充填材料で充填される孔を有してなる、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記充填材料が再吸収可能材料である、請求項4に記載のインプラント。
【請求項6】
前記充填材料が、再吸収可能ポリマーおよび再吸収不可能ポリマーのうちの少なくとも1つである、請求項4に記載のインプラント。
【請求項7】
前記中間部が、再吸収可能ポリマー、再吸収不可能ポリマー、合成骨素材およびコラーゲンのうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
前記ヘッド部を前記ステム部に固定するように構成されたロック機構をさらに備えてなる、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
前記ロック機構が、少なくとも圧入により、前記ヘッド部を前記ステム部へ固定するように構成されてなる、請求項8に記載のインプラント。
【請求項10】
前記ロック機構が、相互に噛み合うネジ山を前記ヘッド部および前記ステム部上に有してなる、請求項8に記載のインプラント。
【請求項11】
前記中間部がスリーブ部を含んでなる、請求項8に記載のインプラント。
【請求項12】
前記ロック機構が前記コア上に形成され、前記コアが前記スリーブ部の中へ少なくとも部分的に延びてなる、請求項11に記載のインプラント。
【請求項13】
前記コアが、前記ヘッド部および前記ステム部のうちの少なくとも1つに一体式に形成されてなる、請求項12に記載のインプラント。
【請求項14】
前記コアが、前記ヘッド部から延びている冠部と、前記ステム部から延びる尖部とを有し、前記冠部および前記尖部の各々が、係合する遠位端部を有し、これらの係合する遠位端部がロック機構を形成してなる、請求項12に記載のインプラント。
【請求項15】
前記コアが、反対側に位置する2つの長手方向の端部を有し、各端部が前記ヘッド部および前記ステム部のうちの対応する一つと係合してなる、請求項12に記載のインプラント。
【請求項16】
長手方向の軸線を通常有しており、前記ヘッド部および前記ステム部の各々が前記軸線に対して前記コアから半径方向外側に向けて延びる保持用の肩部を有し、これら2つの肩部が相互に対向し、前記スリーブ部が、前記コアに取り付けられ、前記2つの肩部の間で保持されるようになっている、請求項12に記載のインプラント。
【請求項17】
前記ロック機構が、前記ヘッド部および前記ステム部のうちの一方に、軸方向に延びている少なくとも1つのポストを有し、前記ヘッド部および前記ステム部のうちの他方に、軸方向に延びている前記ポストを受ける少なくとも1つの孔を有してなる、請求項8に記載のインプラント。
【請求項18】
前記ロック機構が、前記ヘッド部および前記ステム部のうちの一方から軸方向に延びる複数のロック部材を有し、各ロック部材が前記ヘッド部および前記ステム部のうちの他方と係合する端部を有してなる、請求項8に記載のインプラント。
【請求項19】
各ロック部材が、前記ヘッド部および前記ステム部のうちの他方と少なくとも圧入により係合してなる、請求項18に記載のインプラント。
【請求項20】
各ロック部材が、前記ヘッド部および前記ステム部のうちの他方とネジ接続により係合してなる、請求項18に記載のインプラント。
【請求項21】
前記多孔質の中間部が、前記ロック部材を受けるための少なくとも1つの長手方向に延びている溝を具備する外面を有してなる、請求項18に記載のインプラント。
【請求項22】
前記外面には、各ロック部材に対する溝が形成されてなる、請求項21に記載のインプラント。
【請求項23】
前記多孔質の中間部が、前記ロック部材を除いて、前記ヘッド部を前記ステム部から分離してなる、請求項18に記載のインプラント。
【請求項24】
前記ヘッド部が、支台コネクタを受けるように構成された内面を有している環状部材と、前記ロック部材と係合するように構成された尖部の方に面する環状の側面とを有してなる、請求項18に記載のインプラント。
【請求項25】
前記ロック部材が、円周方向に間隔をおいて互に均一に並べられてなる、請求項18に記載のインプラント。
【請求項26】
前記ロック部材が冠部に向けて延びるにつれて、半径方向外側に向けて延びてなる、請求項18に記載のインプラント。
【請求項27】
少なくとも1つのロック部材が反対側に位置する2つの長手方向の端部を有しており、各端部が前記ヘッド部および前記ステム部のうちの対応する方と係合してなる、請求項18に記載のインプラント。
【請求項28】
前記ヘッド部上に取り付けられる環状部材をさらに備えており、該環状部材が軟組織の付着を促進するように構成された外面を有してなる、請求項1に記載のインプラント。
【請求項29】
前記ステム部が、前記インプラントを骨の中へネジ止めする際、前記骨を受けるための開口部を有してなる、請求項1に記載のインプラント。
【請求項30】
前記インプラントが歯科インプラントであり、前記中間部が下顎または上顎と係合するように構成されてなる、請求項1に記載のインプラント。
【請求項31】
前記中間部が非円形状の外周面を有してなる、請求項1に記載のインプラント。
【請求項32】
前記ヘッド部および前記ステム部の各々が、ある形状を有した外周面を有しており、前記中間部が少なくとも前記ヘッド部または前記ステム部の形状とは異なる形状を有した外周面を有してなる、請求項1に記載のインプラント。
【請求項33】
ネジ切りされていないコアをさらに備え、
前記多孔質の中間部が前記ネジ切りされていないコアの周囲に配設されている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項34】
前記ネジ切りされた外面がセルフタッピングネジである、請求項1に記載のインプラント。
【請求項35】
前記多孔質の中間部が前記コアに摩擦嵌めによってされている、請求項34に記載のインプラント。
【請求項36】
前記ヘッド部および前記ステム部によって形成されるロック機構が前記コアと前記多孔質の中間部を保持している、請求項35に記載のインプラント。
【請求項37】
歯科インプラントを組み立てる方法であって、
ヘッド部およびそれとは別個になっているステム部のうちの少なくとも1つから延びているコア上に金属製の多孔性スリーブを、尖部から冠部方向に配設することと、
前記ヘッド部および前記ステム部が協働して、前記金属製の多孔性スリーブが前記ヘッド部および前記ステム部と結合されることなく、前記金属製の多孔性スリーブを前記インプラント上に狭持するように、前記ステム部を前記ヘッド部と前記ヘッド部の前記保持用の肩部と前記ステム部の前記保持用の肩部との間で係合させることとを含み、
前記ヘッド部および前記ステム部は、いずれも係合及び前記インプラントを骨にネジ止めするためネジ切りされた外面を有し、
前記金属製の多孔性スリーブは、外面から内面へと延びる多孔質の壁を有し、
前記内面は、前記ヘッド部および別個になっている前記ステム部の少なくとの一方の上に配置されるように構成された孔の外周を形成し、
前記ヘッド部および前記ステム部の各々が、取り付けられた歯科インプラントの長手方向の軸線から半径方向外側に向けて延びる保持用の肩部を有し、
前記孔の外周は、前記コアの直径にほほ等しい直径を有し、
前記コアの直径は、前記金属製の多孔性スリーブが前記ヘッド部の前記保持用の肩部と係合する第1の部位、および前記金属製の多孔性スリーブが前記ステム部の前記保持用の肩部と係合する第2の部位において実質的に同じであり、
前記外周は、軸方向において実質的に一定である前記孔の直径を定義する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、本明細書で参照することにより援用する、2008年7月2日に出願された米国特許出願第12/167,060号の継続出願である。
【0002】
本発明は、骨インプラントに関するものであり、とくにインプラントに多孔質部を固定するための構造を備えた歯科インプラントに関するものである。
【背景技術】
【0003】
歯科インプラントは、元の歯を失ったまたは破損した患者の歯列内の1つ以上の歯欠損部位に義歯を提供する歯修復用固定部材として一般的に用いられている。公知のインプラントシステムとしては、チタンの如き適切な生物学的適合材料から作られる歯科インプラントが挙げられる。歯科インプラントは、患者の下顎または上顎のうちの歯欠損部位の位置にドリルで形成される孔の中にネジ止めまたは圧入されるようになっている。インプラントは、歯の支台となる固定部材を提供し、これは、インプラントと修復歯との間の接合部分となる。典型的には、修復歯は、公知の方法で形成される陶歯冠(porcelain crown)である。
【0004】
現在の歯科インプラント手術のほとんどは2段階で行なわれている。最初のまたは第一の段階では、患者の歯欠損部位の歯肉が切開され、患者の下顎または上顎の歯欠損部位に孔がドリルで形成され、その後、適切なドライバを用いて、歯科インプラントが孔の中にネジ止めまたは詰め込まれる。次に、キャップがインプラント上に嵌合されてインプラントの支台結合構造が閉じられ、歯肉がインプラント上に縫合される。数か月の期間にわたって、インプラントのまわりに患者の骨が成長してインプラントをしっかりと固定するようになる。このプロセスは、骨一体化(osseointegration)として知られている。
【0005】
骨一体化に続く第二の段階では、歯科医は、インプラントの部位の歯肉を切開し、支台および、任意選択的に、仮義歯または仮治癒部材をインプラントへ固定させる。その後、支台ならびに周囲の歯肉組織および生歯から得られる1つ以上の型から、適切な本義歯またはクラウンが形成される。最後の段階では、仮義歯または治癒部材が取り除かれ、本義歯と取り替えられる。本義歯はたとえばセメントまたは締結部材で支台に取り付けられる。インプラントにアクセスするために歯肉を再切開する必要がないように、移行歯肉層を通って延びる他の単一の段階インプラントが用いられてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インプラント上への骨の一体化、しいてはインプラントの長期安定性を改善させる一つの方法は、骨が成長できる多孔性材料をインプラントに設けることである。また、このような多孔性材料は、周囲の骨との摩擦係数が大きいため、即時装着のための短期安定性を向上させることが可能となる。しかしながら、歯科インプラントへ多孔性材料を固定させることは、装置のサイズの小ささおよびその幾何学的形状のため、困難なことである。一般的に、歯科インプラントは、直径が3mm〜6mmであり、長さが4mm〜16mmである。多孔性材料がインプラントの一部分しかカバーせず、その他の部分が、たとえば強化部材、初期段階における安定性を補助するためのネジ山、または義歯を固定するための界面幾何学形状から形成されている場合には、多孔性部分は、ネジ山または他の固定用の幾何学形状を有するには現実問題として小さすぎる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、多孔性材料を適切な位置に経済的に固定させるためのロック部材を有し、それと同時に、ネジ山、支台界面幾何学形状または補強部材の如き他の特徴をも実現できるようなインプラントが望まれている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る多孔性材料を備えた歯科インプラントを示す斜視図である。
【
図2】
図1の歯科インプラントを示す分解組立図である。
【
図3】本明細書における本発明に係る実施形態のうちのいずれかのタンタル製多孔質部を示す部拡大図である。
【
図4】本発明の歯科インプラントに係る第二の実施形態を示す斜視図である。
【
図5】
図4の歯科インプラントを示す分解組立図である。
【
図6】本発明の歯科インプラントに係る第三の実施形態を示す斜視図である。
【
図7】
図6の歯科インプラントを示す分解組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照すると、骨の中に設けられる1つの実施形態に係るインプラント10は、下顎または上顎の中へ挿入される歯科インプラントである。インプラント10は、少なくとも3つの部分を備えているが、これよりも多い数の部分を備えていてもよい。インプラント10は、橋脚歯または他の義歯を固定させるために用いられ、冠部またはヘッド部12と、下記にさらに詳細に説明するようにインプラント10の骨への一体化を向上させるための中間部または多孔質部14と、分離されているステムまたは尖部16とを備えている。ステム部16は、少なくともヘッド部12とステム部16が協働して金属製多孔質部14をインプラント10へ固定するようヘッド部12と係合するように構成されている。
【0010】
ヘッド部12およびステム部16は、骨と係合するための雄ネジ山15をさらに有していてもよい。患者が、最初の手術後、ある程度回復してから退院することを好んでおり、また、手術後にインプラントを装着すると、軟組織および硬組織の回復を改善することが可能となる。手術後に装着させる場合、噛合せが最大負荷(full load)未満であっても、インプラントを変位させるのに十分である。したがって、初期の段階における安定を達成するためにセルフタッピンネジが用いられる。骨の一体化が生じる時点まで、インプラントに加えられる引張負荷、ねじり負荷または曲げ負荷にネジによって耐えるようになっている。さらに、ステム部16は、インプラント10を骨の中へネジ止めする際に骨細片を受けるための開口部17を有していてもよい。これに代えて、インプラントは、ネジ山を有しないで、ドライバにより骨の中へ圧入されるようになっていてもよい。このことについては下記にさらに説明する。
【0011】
1つの実施形態では、インプラント10は、約3.0mm〜6.0mmの外径を有し、約8mm〜16mmの長さを有したものであってもよい。インプラント10は、おおむねシリンダ形状の外面を有したものであってもよいが、インプラントを受け入れる孔の中で骨との摩擦を増大させるために冠部に進む従って直径が大きくなるように先細になっていてもよい。
【0012】
図1〜
図2を参照すると、図示された実施形態では、多孔質部14は、インプラント10のコア20を受け入れ嵌合するおおむねシリンダ形状のスリーブ部18を有している。スリーブ部18は、約0.020インチ〜0.050インチの厚みを有しており、また、テーパが存在する場合には、インプラントのテーパ部と一致するように先細となっていてもよい。これに代えて、インプラントの安定性を高めるために、スリーブ部18は、図示されている円形の外面21ではなく非シリンダ形状または非円形(断面視において)の外周または外面23(点線により表示)を有していてもよい。この場合、スリーブ部18の外面23は、インプラントのテーパまたは外周と通常一致せず、それが設けられる孔の形状と一致しない。この場合、インプラントと顎骨の孔との間の嵌め合いをさらに強くするために、中間部またはスリーブ部の外周面23は孔の直径よりもわずかに大きな最大幅を備えてもよい。このように構成すると、インプラントデバイスを孔の中へ差し込むにつれて、多孔性材料によって粗くなっている大きい方の外周面は、インプラントデバイスが設けられようとしている孔の側壁から骨片をすりおろし、削り取りおよび/またははぎ取りながら、骨の中に食い込んでいくことになる。インプラントが孔の中へネジ止めされるのではなく、孔の中へ圧入される場合、この「こすり合わせ」行為により、インプラントデバイスが設けられる孔の側壁内に僅かな凹部またはへこみが形成される。このことは孔内のインプラントデバイスの回転運動またはねじれ運動をさらに制限することになる。というのは、インプラントデバイスが孔内においてへこみから抜け出して回転する隙間を有していないからである。
【0013】
また、こすり合わせ行為により、細孔の中への骨の圧密化(compaction)に起因するインプラントデバイス上および多孔性材料の細孔の中への骨の一体化が加速されることになる。第一に、骨構造体をすりおろすことにより、骨が出血し、このことが、骨芽細胞および破骨細胞の如き有益な細胞の生産を誘発して、骨の成長を促進する。第二に、多孔性材料の孔の中へ落下する骨片は、骨の再形成に役立つ。骨の再形成過程において、骨芽細胞は、骨片を足場(scaffolding)として用い、骨片のまわりに新しい骨材料を形成する。その間、破骨細胞は、骨を破壊し、骨片からカルシウムの如きミネラルを放出し、血液循環の中へと戻す再吸収によって骨片を取り除く。骨芽細胞は、孔からのおよびインプラントデバイスのまわりのすりおろされた骨片を抜歯部(extraction site)の内側およびそのまわりの新しく健康な骨と取り替え続ける。このように、多孔性材料を用いることで、インプラントデバイスは、ねじれまたは回転に対する抵抗を増し、即時または非常に早い時点での装着(loading)を可能とし、骨の一体化の改善によって長期的安定性を増すことができる。
【0014】
スリーブ部の外面の横断面図は、平坦な側面を有した多角形状であってもよいし、または、楕円形の如き湾曲した側面であってもよいし、または、規則的な形状であるなしに関わらず、それらの任意の組み合わせもしくは変形であってもよい。このようなインプラントを受ける孔は、シリンダ形状であってもよいし、または、前もって決められた他のいかなる所望な形状であってもよい。このことは、本明細書に記載されている中間部のうちのいずれに対しても当てはまる。例示の外周面23は、誇張されているが、楕円形状であることが示されている。
【0015】
組み立てられると、コア20は、ヘッド部12から、ステム部16から、またはヘッド部12およびステム部16の両方から軸線に沿って延びるようになっている。また、コア20は、ヘッド部12もしくはステム部16と一体式に形成されていてもよいし、または、他の方法で固定されていてもよい。それに代えて、コア20は、ヘッド部12から一体式に延設されている冠部22、およびステム部16から一体式に延設されている尖部24の両方を含んでいてもよい。この場合、冠部22および尖部24は、ヘッド部12をステム部16へ固定するように構成されたロック機構30を形成する係合遠位端部26、28を有しうる。しかしながら他の実施形態では、コア20が、ヘッド部12およびステム部16のうちの一方と一体式に形成される長手方向の端部32と、その反対側の長手方向の端部34とを有し、これらの端部が、ヘッド部12およびステム部16のうちの他方と係合するためのロック機構30を形成するようになっていてもよい。
【0016】
さらに他の実施形態では、コア20は、ヘッド部12およびステム部16から分離されている(すなわち、別個の部分を有している)。この実施形態では、ロック機構30は、コアの長手方向の両方の端部32、34に(すなわち、コアに沿った2つの他の中間位置で)形成されている。
【0017】
コア2上にスリーブ部18を固定するために、ヘッド部12およびステム部16の各々がインプラント10の軸線L1に対してコア20から半径方向外側に向けて延びる保持用肩部36もしくは38を有するように、ヘッド部12およびステム部16はコア20より大きな直径を有している。肩部36および38が相互に対向しているので、スリーブ部18がコア20上に取り付けられると、スリーブ部18は、肩部36と肩部38との間に保持されることになる。
【0018】
1つの実施形態では、ヘッド部12、ステム部16およびコア20(分離されているか否かに関係なく)は、チタン、チタン合金、ステンレススチール、ジルコニウム、コバルト・クロム・モリブデン合金、ポリエーテル・ケトン・ケトン(PEKK)などのようなポリマー、セラミックおよび/または複合材料の如き適切な生物学的適合性材料からなっている。
【0019】
図3を参照すると、多孔質部14は、金属を含んでおり、1つの実施形態では、代用骨としてならびに/または細胞および組織の受け入れ材料として有用な非常に多孔性の生態材料であるタンタル製の多孔質部40である。このような材料の一例は、インディアナ州のワルシャワにあるジマー社(Zimmer、Inc.)から通常利用可能な柱状金属(Trabecular Metal(登録商標))技術を用いて生産される。柱状金属(Trabecular Metal(登録商標)はジマー・テクノロジー社(Zimmer Technology、Inc.)の商標である。このような材料は、ここで参照することにより本明細書に援用される米国特許第5,282,861号に詳細に記載されている手法で化学蒸着(「CVD」)法を用いて、タンタルなどの如き生物学的適合性金属により浸透および被膜される網状に形成されたガラス状炭素発泡基材から形成されてもよい。ニオブ、タンタルとニオブとの合金、または、タンタルとニオブと他の金属との合金の如き他の金属が用いられてもよい。
【0020】
図3に示されているように、タンタル製の多孔性構造体40は、開口空間を形成する多数の靱帯42を有し、各靱帯42は、たとえばタンタルの如き薄い膜状の金属48により被膜されている炭素製の芯46を通常有している。靱帯42間の開口空間44は、終端のない連続するチャネルからなるマトリックスを形成するので、タンタル製の多孔性構造体40を貫通する海綿質骨の成長が妨げられることはない。タンタル製の多孔性構造体は、75%〜85%またはそれ以上の隙間を有することが可能である。このように、タンタル製の多孔性構造体は、軽量で強靱な多孔性構造体を有し、組成が実質的に均一かつ恒常的であり、自然な海綿質骨の構造と非常に類似しているため、患者の顎の周囲の骨の中へインプラント10を固定させて安定性を向上させるために海綿質骨が成長するマトリクスを提供している。このような多孔性金属部の荒い外面は、隣接する骨に対して比較的高い摩擦係数を有しているため、上述のように、インプラントを受ける孔を形成してさらに初期段階の安定性を向上させるようになっている。この構造は、インプラントの移動を制限することにより優れた審美的な結果を生みだすことができる。これらのインプラントは、骨の移植の如き補足的な外科的処置を必要とすることなしに取り付けることができ、たとえば減弱したまたは朽ち果てた歯槽部の如き従来のインプラントがそれほど成功していない領域に取り付けることができる。
【0021】
タンタル製の多孔性構造体40は、個々の用途に合った構造を選択して製作すべくさまざまな密度で造られる。具体的にいえば、先に援用された米国特許第5,282,861号に記載されているように、タンタル製の多孔性構造体の場合、均一なものであろうと変化するものであろうと、実質的にいかなる所望の孔隙率および孔径に合わせて製作することができ、また、骨の成長および鉱化作用に対してマトリックスを向上されるため、周囲の自然な骨と適合させることができる。このことは、海綿質の骨と適合させるために尖端部で孔径がより大きくなり、皮質骨と適合させるためにまたは軟組織の内部成長を受け入れるために冠端部で小さくなるように、単一のインプラントにおいて孔径を漸次変化させることを含んでいる。また、高機械的ストレス領域において孔の数が少ないタンタル製の多孔性構造体が製作されてもよい。このことは、タンタル内の小さな孔に代えて、下記にさらに詳細に記載する固形物ですべての孔または一部の孔を充填することによって達成することもできる。
【0022】
多孔質構造体にさらなる初期段階における機械的強度および安定性を付与するため、多孔質構造に、再吸収不可能ポリマーまたは再吸収可能ポリマーの如き充填剤を侵入させるようにしてもよい。多孔質構造体への浸入のための再吸収不可能ポリマーとしては、ポリエーテル・ケトン・ケトン(PEKK)、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)、ポリエーテル・ケトン・エーテル・ケトン・ケトン(PEKEKK)、ポリメチルアクリレート(PMMA)、ポリエーテルイミド、ポリスルホンおよびポリフェニルスルホンの如きポリアリール・エーテル・ケトン(PAEK)を挙げることができる。
【0023】
再吸収可能ポリマーとしては、ポリ乳酸・グリコール酸(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシバレレート(PHV)、それらの共重合体、ポリカプロラクトン、ポリアンヒドリドおよびポリオルトエステルを挙げることができる。充填剤を用いてさらなる初期段階における機械的強度および安定性を提供することにより、チタン強化インプラントコアを必要としなくなる場合もある。再吸収可能材料は、骨がその中へ成長していき、それに取って代わるにつれて、再吸収され、このことにより、インプラントの強度および安定性が維持される。
【0024】
図1〜
図2をさらに参照すると、ロック機構30は、ネジ止め、圧入またはそれらと同様の機構によって、ヘッド部12およびステム部16を相互に固定することが可能となっている。このように、ロック機構30は、ヘッド部12のコア部22またはステム部16のコア部24の軸方向に延びている少なくとも1つのポスト50を有しうる。軸方向に延びている孔52(点線により図示)は、他方のコア部22またはコア部24のポスト50を受けるようになっている。記載の実施形態では、ポスト50は、孔52内の雌ネジ山に適合するネジ山54を有しうる。そうでない場合、ポスト50は、孔52の中へ圧入され適切な摩擦嵌めをするための対応した直径を有するようになっていてもよい。
【0025】
このように構成すると、ヘッド部12とステム部16とが、他のデバイスを必要とすることなく、スリーブ部18をコア20上で挟持することができる。しかしながら、いうまでもなく、スリーブ部18は、当該スリーブ部18がコア20上でさらに軸方向に沿って運動することおよび/または回転運動をすることに対して抵抗すべくコア20に摩擦嵌めをするような寸法に形成されてもよい。スリーブ部18をコア20へ固定するために、接着、溶接、拡散接合、焼結、締結などの如き他の機構が用いられてもよい。
【0026】
また、いうまでもなく、ヘッド部12が冠表面上に雄型支台コネクタを有し、別個の支台コネクタへ接続するようになっていてもよい。それに代えて、ヘッド部12が支台および/または支台アンカーを受けるための孔を有し、この孔がさらにコア20の中に延びるようになっていてもよい。
【0027】
ここで
図4〜
図5を参照すると、インプラント60が、インプラント10に類似した基本構造を有し、ヘッド部62と、ステム部64とを備えており、これらヘッド部62とステム部64とが、協働して、多孔質部66をインプラント60へ取り付けるようになっている。多孔質部66は、インプラント10上の多孔質部14と同一のまたは同様の材料で形成されている。ロック機構68がヘッド部62をステム部64へ固定している。しかしながら、ここでいうロック機構68は、ヘッド部62およびステム部64から軸方向に延びている複数のロック部材70、72、74を有している。各ロック部材70、72、74は、ヘッド部62と係合する対応する端部76、78、80と、ステム部端部64と係合している端部82、84、86とを有している。1つの実施形態では、端部76、78、80または端部82、84、86がヘッド部62またはステム部64と一体式に形成されており、自由端部である残りの端部が、圧入によりまたはネジ山88(点線で図示)を用いたネジ式接続によりにヘッド部62またはステム部64と係合するようになっている。この場合、これらの自由端部は、圧入式に接続されるようにまたはネジ式に接続されるように構成されているか否かとは関係なく、それぞれ対応する孔90、92、94で受けられる。しかしながら、いうまでもなく、端部76、78、80および端部82、84、86のすべてがヘッド部62およびステム部64の両方の中へ嵌め込まれるようになっていてもよい。ネジ式接続を用いる場合、孔90、92、94は、ロック部材70、72、74が回転により独立して適切な位置に位置決めされてステム64へ固定されるような(または、その逆であるような)、貫通孔であってもよい。
【0028】
記載の実施形態では、3つのロック部材70、72、74が長手方向の中心軸線L2を中心として円周方向に均一に間隔をおいて並べられており、また、多孔質部66は、ロック部材が多孔質部66の側方向の運動を抑制するように、ロック部材70、72、74の間の中心に位置しており、ヘッド部62およびステム部64の内面96および98はそれぞれ対応する多孔質部66の長手方向の端部100および102に対面または当接して多孔質部66の軸方向の移動を抑制するようになっている。
【0029】
多孔質部66の回転運動および側方向運動をさらに抑制するために、多孔質部66は、ロック部材70、72、74を受けるための少なくとも1つの長手方向に延びる溝106を形成する外面104を有しうる。図示されているように、外面104は、各ロック部材70、72、74に対して溝106を形成している。
【0030】
多孔質部66は、ロック部材70、72および74を除いてステム部64からヘッド部62を分離するようになっている。多孔質部66は実質的に多孔性のバルクピース(bulk piece)であってもよい。インプラント60がテーパを有している場合、外面104および/またはロック部材70、72、74は、テーパの傾斜と一致するように傾いている。この目的のために、ロック部材70、72および74が冠部の方向に延びるにつれて、ロック部材70、72および74はさらに半径方向外側に向けて延びるようになっていてもよい。いうまでもなく、それに代えて、ロック部材70、72、74が軸線L2に対して平行なままで、外面104がテーパを有しているようになっていてもよいし、また、その逆であってもよい。
【0031】
いうまでもなく、ロック機構68は、長手方向の軸線L2からおよび/またはそれを中心として均一に間隔をおいて並べられるか否かとは関係なく、中心から外れたロック部材を一つしか有していなくともよいし、または、3を超える数のロック部材を有していてもよい。
【0032】
また、いうまでもなく、ロック機構68が多孔質部66をインプラント60へ単独で固定することが可能であるが、多孔質部66とロック部材70、72、74、ヘッド部62および/またはステム部64との間で、接着剤、溶接、拡散接合、焼結、締結部材などが用いられるようになっていてもよい。
【0033】
インプラント60のヘッド部62は環状部材108を有していてもよい。環状部材108は尖部に面する環状の側面として表面96を形成している。環状部材108により形成されている内面110は、表面96から環状に延びており、支台コネクタを受けるように構成されている。多孔質部66は、別個の支台および/または支台コネクタの一部を受けるために内面110と一直線に並ぶ、対応する孔112(点線により図示)を有している。孔112は、ネジ切りされていてもよいし、されていなくともよい。それに代えて、ヘッド部12が、別個の支台を取り付けるための雄型構造を有していてもよい。
【0034】
インプラント60は、圧入式インプラントではなくむしろ雄ネジが切られているインプラントであってもよい。この場合、ステム部64は、ネジ切りおよびセルフタッピングに関して、インプラント10上のステム部16の構造と同様の構造を有するようになっていてもよい。環状部材108が雄ネジ山ないものとして示されているが、いうまでもなく、そのようなネジ山が設けられるようになっていてもよい。
【0035】
また、いうまでもなく、多孔質部14、66には、ヘッド部および/またはステム部のネジ山と続く雄ネジ山が形成されるようになっていてもよい。インプラント60の場合、ロック部材70、72、74は、ネジ山に適合するような形状を有していてもよいし有していなくともよい。
【0036】
また、いうまでもなく、本明細書に記載の構成のうちのいずれでの構成あっても、中間スリーブまたはバルクピースが、骨成長を促進するまたはインプラントの強度を高める多孔性タンタル以外の材料からなっていてもよいしまたはそれを含んでいてもよい。このような材料としては、有機的骨移植片(たとえば、自家移植片、同種移植片、異種移植片)、再吸収可能ポリマー(たとえば、ポリ乳酸・グリコール酸(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)およびポリヒドロキシバレレート(PHV))、再吸収性不可能ポリマー、ハイドロキシアパタイト(HA)の如き合成骨物質、または、コラーゲンなどが挙げられる。
【0037】
図6および
図7を参照すると、環状部材120がインプラント122に任意選択的に用いられてもよい。インプラント122が
図1のインプラント10、
図4のインプラント60に類似しているかもしれないが、ここでは、インプラント122は移行歯肉領域124を備えた単段式外科インプラント(single−stage surgery implant)である。その他の点に関しては、同様の部品には他のインプラントと同様の番号が付与されている。環状部材120は、圧入、ネジ止め、接着剤、溶接、コネクタなどによりヘッド部126へ取り付けられるようになっていてもよい。また、環状部材120はヘッド部126とは別個の構成部品であってもよいし、または、環状部材120は表面処理によるものであってもよい。また、環状部材120は、ヘッド部126に内蔵されるようになっていてもよい、すなわちヘッド部126全体が環状部品120と同一材料からなっていてもよい。また、環状部材120は、軟組織の付着を促進するように構成された外面128を有し、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエステル、ジルコニウム、セラミック、または他の同様の表面処理材からなっていてもよい。
【0038】
いうまでもなく、本明細書に記載のインプラントのうちのいずれの構造であっても、例示の目的で点線により
図1に示されているような移行歯肉領域130を備えた単段式外科インプラントに、または一体式の支台132を備えたインプラントに対して適用することができる。
【0039】
記載の実施形態として歯科インプラントが示されているが、いうまでもなく、多孔性金属部または多孔性タンタル部が尖部と冠部とが協働して狭持されるようになっているこのような構造は、インプラントが骨の中へ差し込まれるようになっているか否かとは関係なく、人体または動物の体の他の部位に適用されてもよい。
【0040】
本発明は好ましい設計を有したものとして記載されているが、本発明をその技術思想および技術範囲から逸脱することなくさらに変更することができる。したがって、本出願は、その一般的な原理を用いた本発明のいかなる変形、用途または変更をも含むことを意図したものである。さらに、本出願は、本発明が属する技術分野において公知になっているもしくは慣用技術でありかつ添付の特許請求の範囲に含まれる本発明からの変形をカバーするように意図されたものである。