(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752040
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】対チャープFMCWコヒーレントレーザレーダー用の小型の光ファイバ配置
(51)【国際特許分類】
G01S 17/32 20060101AFI20150702BHJP
【FI】
G01S17/32
【請求項の数】23
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-526995(P2011-526995)
(86)(22)【出願日】2009年9月11日
(65)【公表番号】特表2012-502301(P2012-502301A)
(43)【公表日】2012年1月26日
(86)【国際出願番号】US2009056667
(87)【国際公開番号】WO2010030884
(87)【国際公開日】20100318
【審査請求日】2012年7月26日
(31)【優先権主張番号】61/096,261
(32)【優先日】2008年9月11日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511054444
【氏名又は名称】ニコン・メトロロジー・エヌヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミナ・レツク
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・スロットヴィンスキー
【審査官】
岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−513145(JP,A)
【文献】
特表2008−531993(JP,A)
【文献】
特開平04−234710(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/087301(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48−7/51
G01S 17/00−17/95
G01B 9/00−9/10
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置の出力部と物体との間の測定距離を決定する方法であって、
第1のレーザ光源からの第1の周波数を有する第1の光ビームと、第2のレーザ光源からの第2の周波数を有する第2の光ビームとを生成するステップと、
前記第2の周波数が第2の率でチャープダウンされるときに前記第1の周波数を、前記第2の率とは異なる第1の率でチャープアップするステップと、
前記第1の周波数が前記第1の率でチャープダウンされるときに前記第2の周波数を前記第2の率でチャープアップするステップと、
前記第1の光ビームと前記第2の光ビームとを結合器で結合するステップと、
前記第1の光ビームと前記第2の光ビームとが結合された光ビームを前記物体の方に向けるステップと、
前記第1の光ビームと前記第2の光ビームとに対応する参照経路光ビームを受光するステップと、
前記結合された光ビームの前記物体で反射した反射ビームを受光するステップと、
前記参照経路光ビームと前記物体で反射された反射ビームとを光ファイバの単一の経路を通して単一の検出器に送るステップと、
前記参照経路光ビームと前記物体で反射した反射ビームとを混合し、前記測定距離に比例する異なる2つのビート周波数を前記単一の検出器で検出するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の光ビーム及び前記第2の光ビームを偏光維持ファイバピッグテールレーザダイオードによって生成するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の光ビームおよび前記第2の光ビームの前記単一の検出器までの経路での後方反射光が前記第1の光ビーム及び前記第2の光ビームの同調特性を損なわないようにするステップを更に含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記損なわないようにするステップが、前記後方反射光を前記第1のレーザ光源及び第2のレーザ光源それぞれから光学的に分離するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の光ビームと前記第2の光ビームとが結合される経路を前記物体の測定領域に集光させるステップを更に含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記集光させるステップは、焦点が固定されたシステム、もしくは焦点を調整可能なシステムから、焦点調節手段が選択されるステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
参照する基準は、絶対距離計測を行うステップを更に含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記参照する基準は、Michaelson型の光ファイバ干渉計を用いた干渉計である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
端部に角度の付けられたファイバ、4分の1波長板、及び部分反射体を使用することによって、後方散乱された光によるノイズを抑制するステップを更に含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
測定装置と物体との間の測定距離を決定するシステムであって、
第1の波形及び第1の周波数を有する第1の光ビームを生成する第1のレーザ光源と、
第2の波形及び第2の周波数を有する第2の光ビームを生成する第2のレーザ光源と、
前記第1の光ビームと前記第2の光ビームとを受光し、前記第1の光ビームと前記第2の光ビームとを光学的に結合し、結合光ビームを形成する結合器と、
前記第1の光ビーム及び前記第2の光ビームに対応する参照経路光ビームと前記結合光ビームの前記物体で反射した光ビームとを混合し、前記測定距離に比例する2つの異なるビート周波数を検出する単一の検出器と、を含み、
前記参照経路光ビームと前記結合光ビームの前記物体で反射した光ビームとが、前記単一の検出器まで光ファイバの単一の経路を進み、
前記第2の周波数が第2の率でチャープダウンされるときに前記第1の周波数は前記第2の率と異なる第1の率でチャープアップされ、かつ前記第1の周波数が前記第1の率でチャープダウンされるときに前記第2の周波数は前記第2の率でチャープアップされる、
システム。
【請求項11】
前記第1の光ビーム及び前記第2の光ビームを生成する偏光維持ファイバピッグテールレーザダイオードを更に含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の光ビームおよび前記第2の光ビームの前記単一の検出器までの経路での後方反射光を前記第1のレーザ光源及び第2のレーザ光源それぞれから光学的に分離する光アイソレータを更に含む、請求項10または請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の光ビームと前記第2の光ビームとが結合される経路を前記物体の測定領域に集光させるレンズ系を更に含む、請求項10から請求項12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記レンズ系は、焦点が固定されたシステム、もしくは焦点を調整可能なシステムから選択される焦点調節手段を更に含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
測定絶対距離を生成するために参照する基準を更に含む、請求項10から請求項14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記参照する基準は、Michaelson型の光ファイバ干渉計を用いた干渉計である、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
端部に角度の付けられたファイバ;
4分の1波長板;及び
部分反射体、
を更に含み、前記端部に角度の付けられたファイバ、前記4分の1波長板、及び前記部分反射体を組み合わせることによって、後方散乱された光によるノイズを抑制する、請求項10から請求項16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
少なくとも1つの偏光維持結合器を含む、請求項10から請求項17のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項19】
前記偏光維持結合器からの入力を、反対方向に偏光された出力に分割する偏光スプリッタを更に含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
複数の出力ビームをもたらす複数の結合器を更に含む、請求項10から請求項18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
ファイバ遅延を有する複数の出力ファイバを更に含む、請求項10から請求項20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記物体上の測定領域において可視スポットをもたらす可視レーザ周波数を更に含む、請求項10から請求項21のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項23】
可視レーザダイオードからの可視光と、偏光スプリッタからの赤外光とを出力ファイバに結合させる波長ディプレックス結合器を更に含む、請求項10から請求項20のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は一般的に、物体(ターゲット)までの距離を測定するための光センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを通して光を伝送することが知られているが、ファイバ自体に対して環境が影響を与えるために、精度は低下し得る。これらの環境影響は、光路長及びファイバにおける光の偏光を変化させ、測定精度に悪影響を与え得る。光ヘテロダイン検出を使用することによって、量子雑音レベルでの光学的放射検出が可能となる。そのようなものとして、コヒーレント光学系は距離、精度、信頼性、走査範囲、作動被写界深度、及び周辺光条件での動作を改善できる。さらに、コヒーレント系は、ターゲット位置の特徴について十分な情報を迅速に得ることができる。
【0003】
光ヘテロダイン検出は、ターゲットに向けられてそこから反射する光源光ビームを含む。その後、戻り光ビームは、光検出器で局部発振器の光ビームと混合されて、ターゲットに関する詳細な情報を提供するように処理され得る光学干渉パターンをもたらす。光ヘテロダイン技術は光源と反射光ビームの相互関係性を利用し得る。例えば、これらの光ビームは実質的に同じ波長とすることができ、同じ光学軸に向けられる。この場合、信号対雑音比(SNR)は十分に高いので、小さな受光開口、例えば、限定されたアクセス領域に挿入可能な非常に小さなレンズを使用し得る。小さな受光開口はターゲットに関する詳細な情報を提供できるため、コヒーレント系の光学部品を非常に小さくし得る。
【0004】
精密FMレーザレーダーは、単一のチャープレーザ光源と、別個の局部発振器(LO)経路及び信号経路を備える偏光維持光ファイバの配置とを組み込む場合がある。正確なドップラー補正による距離誤差によって誘発された振動に反応しないようにされた対チャープ(counter−chirp)構成が必要とされる。さらに、2つのレーザのためのLO経路と信号経路とを単一のファイバに結合して、光ファイバ回路を、構成部品をより少数にすることにより、構成の複雑化をより低減し、安価にし、かつ、温度変化などの環境要因から生じるLO及び信号経路長における変化に起因する誤差に影響されないようにする必要がある。例えば、暗振動及び環境条件の変化の双方が存在する製造業が、このレーザ構成のユーザの候補となり得る。LO経路と信号経路とを結合することによって、ユニットのセンサのヘッド部分を、体積が制限されている領域に配置できるという追加的な利点をもたらし得る。なぜなら、ヘッド部分をユニットの残りの部分から任意に離した位置に配置できるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
要約すると、非常に正確で、測定時間が短く、狭いスペースにもアクセスでき、柔軟性及び信頼性があることを可能にする実用的な光学的精密測定システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述のニーズ、ならびに別の及び他のニーズ及び利点を、以下説明する実施形態で取り上げる。
【0007】
本実施形態は、第1の光ビームを生成する第1のレーザ光源、第2の光ビームを生成する第2のレーザ光源、第1の光ビームと第2の光ビームを結合して結合光ビームにし、かつ結合光ビームのいずれの戻り部分も第3の光ビームに分割する第1の光学素子、及び第3の光ビームを受光する第1の検出器を含むことができ、第1の光ビーム及び第2の光ビームの波形は、第2の光ビームがチャープダウンされるときに第1の光ビームはチャープアップされ、及びその逆が行われるように、互いに180度位相がずれている構成であるが、この構成に限定されない光学距離測定装置に関する。別の実施形態では、離れた物体との距離を決定する方法は、第1のレーザ光源からの第1の光ビームと、第2の光源からの第2の光ビームとを生成するステップ、光源から出射した光が物体の方に向けられるステップ、各光源の、反射したLO経路及びターゲットで反射した信号経路を受光するステップ、各光源のLO経路及び信号経路を検出するステップ、及び各光源の経路のヘテロダインを行って、2つの経路間の距離差に比例するビート周波数を生成するステップを含むことができ、ここで、第1の光ビーム及び第2の光ビームの波形は、第2の光ビームがチャープダウンされるときに第1の光ビームはチャープアップされ、及びその逆が行われるように、互いに180度位相がずれており、かつLO経路と、対応する信号経路との間の経路長差は測定距離に等しい方法が考慮される。
【0008】
本実施形態の、測定装置の出力部と物体との間の測定距離を決定する方法は、第1のレーザ光源からの第1の周波数を有する第1の光ビームと、第2のレーザ光源からの第2の周波数を有する第2の光ビームとを生成するステップ、第2の周波数が第2の率でチャープダウンされるときに第1の周波数を第1の率でチャープアップするステップ、第1の周波数が第1の率でチャープダウンされるときに第2の周波数を第2の率でチャープアップするステップ、第1の光ビームと第2の光ビームを結合するステップ、結合光ビーム経路を物体の方に向けるステップ、結合光ビーム経路に関連する、反射した局部発振器(LO)経路光ビームを受光するステップ、結合光ビーム経路に関連する、ターゲットで反射した信号経路光ビームを受光するステップ、及びLO経路光ビームとターゲットで反射した信号経路光ビームとのヘテロダインを行って、測定距離に比例する2つの異なるビート周波数を生成するステップであって、2つのビート周波数が単一の検出器によって検出されるステップを含み得るが、これに限定されない。
【0009】
測定装置と物体との間の測定距離を決定するシステムは、第1の波形及び第1の周波数を有する第1の光ビームを生成する第1のレーザ光源、第2の周波数及び第2の波形を有する第2の光ビームを生成する第2のレーザ光源、第1の光ビームと第2の光ビームを結合して結合光ビーム経路に入力させる光学素子であって、結合光ビームの戻り部分を第3の光ビーム経路に分割する光学素子、及び測定距離に比例する2つの異なるビート周波数を含む第3の光ビームを受光する単一の検出器を含み得るが、これに限定されず、ここで、第2の周波数が第2の率でチャープダウンされるときに第1の周波数は第1の率でチャープアップされ、第1の周波数が第1の率でチャープダウンされるときに第2の周波数は第2の率でチャープアップされる。
【0010】
あまり一般的ではない用語において、本実施形態は、第1のチャープ変調信号によって変調された第1の放射周波数を有する第1のコヒーレント光ビームを放射する第1の周波数変調レーザと、第2のチャープ変調信号によって変調された第2の放射周波数を有する第2のコヒーレント光ビームを放射する第2の周波数変調レーザとを含む、精密絶対距離測定のためのディプレックス二重チャープレーザ装置である。第2のチャープ変調信号は、第1のチャープ変調信号から一定の位相差で、好ましくは180度の位相差でチャープするように定められている。さらに、第2のレーザのチャープ率は、第1のレーザのチャープ率と十分に異なり、2つの極めて測定可能なビート周波数が検出器において生成される。本実施形態はさらに、第1の周波数変調レーザに光学的に接続された光ファイバ結合器を含むことができ、ここで、第1のコヒーレント光ビームは名目上50%の2つの部分に分割される。加えて、光ファイバ結合器は、第2の周波数変調レーザに光学的に接続され、第2のコヒーレント光ビームは、名目上50%の2つの部分に分割される。
【0011】
直線偏光維持ファイバのビームの出射端部には境界面があり、それにより、第1のコヒーレント光ビーム及び第2のコヒーレント光ビームのそれぞれからの透過光の一部が反射して光ファイバ結合器に向かって戻り、かつそこから光検出器を透過し、それにより、透過光の相補部分がターゲットに透過し、ターゲットから境界面に戻される;光ファイバ結合器に光学的に接続された光学的検出器があり;それにより、第1のコヒーレント光ビームからの透過光の反射部分と、ターゲットからの第1のコヒーレント光ビームの戻りとの間に第1の干渉が生じ、それにより、光学的検出器が、第1の干渉からの第1のビート周波数及び第2の干渉からの第2のビート周波数を検出し、それにより、第2のコヒーレント光ビームからの透過光の反射部分と第2のコヒーレント光ビームの戻りとの間に第2の干渉が生じる。その後、ビート周波数信号が、第1の測定ビート周波数及び第2の測定ビート周波数を生成するように構成されたデジタル信号処理装置に送信される。本実施形態では、較正された参照アーム標準は光ファイバ結合器に光学的に接続でき、かつ第1のコヒーレント光ビームの名目上50%の2つの部分の一方を受光でき、さらに、第1の参照アーム出力を生成できる;この参照アームはまた、第2のコヒーレント光ビームの名目上50%の2つの部分の一方を受光でき、さらに、第2の出力周波数を生成する。コンピュータ装置は、第1の測定ビート周波数を第1の参照アーム出力と結合させて第1の測定絶対距離を生成し、さらに第2の測定ビート周波数を第2の参照アーム出力と結合して第2の測定絶対距離を生成する。コンピュータ装置はさらに、第1の測定絶対距離を第2の測定絶対距離と結合して複合測定絶対距離を生成し、複合測定絶対距離の不確実性を実質的に低減する。
【0012】
任意であるが、較正された参照アーム標準は光ファイバ干渉計である。同様に任意であるが、光ファイバ干渉計は、第2の光ファイバ結合器に光学的に接続されていて、入来光を2つの部分に分割することができる第1の光ファイバ結合器;較正された光路長差を有し、及び第1の光ファイバ結合器からの入来光の部分をそれぞれ受光する異なる光路長の2つの光ファイバ;各ファイバの端部に設けられていて、光をファイバ結合器で反射させて戻し、それにより、2つの光ファイバからの2つの光の部分を再結合させ、それにより、干渉及び結果としてビート周波数を生じさせる終端結合器;ビート周波数を検出する検出器を含むことができる。それぞれの結果は、各レーザの測定ビート周波数を生成するように構成されたデジタル信号処理装置に進み、かつ各レーザの前記測定ビート周波数は、参照アーム標準用の参照アーム出力を含む。
【0013】
本実施形態は、飛行機及び自動車工場などに存在する不安定な環境における非接触型の精密距離測定への応用において、例えば、組立時に部品を一列に測定するために、適用できる。
【0014】
本実施形態をより理解するために、他の及びさらなる実施形態と共に、添付の図面及び詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】コヒーレントレーザレーダーのレーザ光周波数及びヘテロダインされた無線周波数(RF)信号のグラフである。
【
図2】線形周波数変調すなわち「チャープ」、及び、ターゲットの相対運動がある場合に第1のレーザ光源13及び第2のレーザ光源11のためのLO光信号とターゲット光信号との結合から生じた対応する「ビート」周波数のグラフである。
【
図3】対チャープ構成において2つのレーザ光源を有する構成の概略図である。
【
図4】後方反射を最小にしかつ回路を平面光波回路で実施しやすくする代替的な実施形態の概略図である。
【
図5A】3×3偏光維持結合器を有する別の代替的な実施形態の概略図であり、本実施形態は、出力ファイバに沿って後方散乱する光によって生成された雑音の量を低減することによって、システムの感度を高めることができる。
【
図5B】2×2偏光維持結合器を有する別の代替的な実施形態の概略図であり、本実施形態もまた、出力ファイバに沿って後方散乱する光によって生成された雑音の量を低減することによって、システムの感度を高めることができる。
【
図6】複数の出力ビームを有する別の代替的な実施形態の概略図である。
【
図7】遅延線を使用して様々な出力信号を1つの検出器上で多重化し、それゆえレーダーのコストを削減し及び複雑性を低減する配置の概略図である。
【
図8】マルチビーム概念の構成の代替的な実施形態の概略図である。
【
図9】別の代替的なマルチ出力の実施形態の概略図である。
【
図10】ファイバピッグテール可視レーザダイオードからの光を出力ファイバに結合する概略図である。
【
図11】局部発振器経路及び信号経路の生成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態を説明する前に、説明の特定の装置、方法及び構成要素は変更することが可能であるため、本開示はそれらに限定されないことを理解されたい。本願明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、本開示の範囲を限定するものではないことも理解されたい。以下の構成の説明は、例示目的として提示されるにすぎない。本願明細書で説明する条件を満たすいずれの構成及びアーキテクチャも本実施形態のシステム及び方法を実施するのに好適とし得る。
【0017】
さらに、本願明細書及び独立請求項で使用される、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈において明示しない限り複数形も含むことを理解されたい。それゆえ、例えば、「アイソレータ」は複数のそのようなアイソレータを含み、「レンズ系」は1つ以上のレンズ及び当業者に公知のその等価物を含む。別段の定義がない限り、本願明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、一般に当業者が理解しているものと同じ意味を有する。
【0018】
図1を参照すると、光源としてダイオードレーザを使用するコヒーレント又はFMレーザレーダーでは、レーザの注入電流を変調させることによってレーザの周波数を直接変調させる。一般に、周波数を、直線変調をもたらすために波形によって変調させる。このタイプの変調はチャープと呼ばれることが多い。2つのレーザにそれらの出力波長を変調させるために送信される2つのチャープ変調入力信号又は波形は同じではない。各レーザは、同調の仕方は一意であり、それゆえ、各レーザに一意の波形が生成される必要がある。波形の形状及び振幅の双方ともレーザ毎に異なる。チャープ期間中は、波長に所与の変化をもたらす線形チャープを生じさせる入力注入電流波形を生成することが重要である。このタイプの応用のための変調の一般的な形態では、注入電流変調信号の形状は各レーザに一意であり、注入電流変調信号は、レーザの出力に対して線形の鋸歯状周波数変調エンベロープをもたらすようにされた歪曲鋸歯状波である。コヒーレントFMCW反射率測定の基礎は、同じ線形チャープ光源に由来する2つの信号のヘテロダイン式混合である(一方の信号は局部発振器「LO」経路を辿る一方、他方の信号はターゲットから反射して戻る)。試験経路に沿ったサイト(site)から反射した信号と、参照反射部からの信号との間でのいずれの時間遅延も、混合出力にビート周波数を生じさせる。ビート周波数の値は時間遅延に比例する一方、ビート周波数における信号のサイズは、対応する反射率に比例する。それゆえ、この出力のスペクトル解析は、(参照経路長に対する)位置と、試験経路に沿ったいずれかのサイトからの反射強度とを明らかにする。
【0019】
ここで
図1を参照すると、第1のレーザ光源13及び第2のレーザ光源11のそれぞれのLO光及び信号光の周波数が波形32、34、36、及び38としてグラフに示されている。レーダーとターゲット21(ここでは物体21と同じ意味で使用される)との間に相対運動がない場合には、ドップラーシフトがなく、及びLO光と信号光との混合によって生じたビート周波数は、第1のレーザ光源13及び第2のレーザ光源11のそれぞれの上向き曲線及び下向き曲線で同じである。第1のレーザ光源13ではビート周波数はf
133であり、及び第2のレーザ光源11ではビート周波数f
235である。変調周期42、T
modは、第1のレーザ光源13及び第2のレーザ光源11の双方に対して同一であり、及び第1のレーザ光源13は第2のレーザ光源11と180°位相がずれている。第1のレーザ光源13の上向き曲線は、第2のレーザ光源11の下向き曲線中に発生する。両レーザはほぼ同じ公称周波数の曲線となるが、第1のレーザ光源13は、第2のレーザΔf
246よりも大きな曲線Δf
144となる。この場合、f
133対f
235の比はΔf
144対Δf
246の比と同じである。2つの異なる率で第1のレーザ光源13及び第2のレーザ光源11を調整することにより、単一の検出器23を使用して2つの混合信号を検出できるため、必要な構成部品数を削減できる。2つの信号は異なる周波数にあり、それぞれ、デジタル信号処理技術を使用して測定できる。
【0020】
ここで
図2を参照すると、線形周波数変調すなわち「チャープ」が、ターゲットの相対運動がある場合に第1のレーザ光源13及び第2のレーザ光源11のLO光信号とターゲット光信号との結合から生じる対応する「ビート」周波数と一緒にグラフで示されている。例示的な
図2では、レーザベースの周波数は約200テラヘルツであり、「ビート」周波数は1MHz範囲にある。被測定表面が第1のレーザ光源13に対して動く場合、レーザ上向き曲線に対応するビート周波数は、ドップラー周波数シフトのために、下向き曲線に対応するビート周波数とは異なる。信号間の周波数差の測定は、速度の決定を可能にする。1変調周期中のターゲットの距離及び速度が一定である場合、f
1up及びf
1downを
【数1】
(式中、f
1は、距離による周波数であり、及びf
dはドップラーシフトによる周波数である)
で表すことができる。f
1>f
dの場合、
【数2】
であり、距離及び速度を
【数3】
(式中、λは光学波長であり、及びνは相対速度である)
で表すことができる。
【0022】
引き続き
図2を参照すると、被測定表面がレーザ光源に対して動いている場合、レーザ上向き曲線に対応するビート周波数は、ドップラー周波数シフトのために、下向き曲線に対応するビート周波数とは異なる。これらの信号間の周波数差を測定することにより、速度の決定が可能となる。単一のレーザからのアップチャープ及びダウンチャープの処理によって、ターゲットの距離及び速度を別個に検出することが可能になる一方、ターゲットが振動する場合に発生し得るような、チャープ内(intrachirp)速度に何らかの変動があると、距離データは損なわれ得る。対チャープレーザを2つ用いることによって、距離誤差によって誘発されたこれらの速度を補償できる。次いで、得られる信号を処理して、速度誤差からの影響をより確実に受けないようにすることができる。上述の式(5)及び(7)にあるように、ドップラー補正された距離を判断するために単一のレーザからのアップチャープ及びダウンチャープを使用するのではなく、以下の式(9)に示すように、一方のレーザの上向き曲線及び他方のレーザの対応する下向き曲線のみを使用して補正距離を、ドップラー補償できる。
【数5】
【0023】
この方法はドップラー誤差を著しく低減させるのみならず、測定速度を効果的に2倍にして、単一の測定時間をT
modからT
modの2分の1に低減する。
【0024】
計測間隔にわたる周波数変調の直線性によって距離測定の精度が限定され、例えば、ターゲットが1メートルの距離にある場合、千分の一の直線性は1mmの精度をもたらす。直線性からのリアルタイム変化を検出及び補償できる場合、1桁のミクロン精度での距離測定を行うことができる。FMレーザを周辺光条件及び表面反射率変化に影響されないようにできる。これは、FMレーザレーダーが距離を計算するために、信号振幅に依存しないビート周波数に依存し得るためである。これにより、FMコヒーレント系は、非常に少量の、例えば、1ピコワットの、戻りレーザエネルギーで、又は9桁のダイナミックレンジの感度で、信頼できる測定を行うことが可能となる。
【0025】
コヒーレントFMCW反射率測定の基本は、同じ線形チャープ光源に由来する2つの信号のヘテロダイン式の混合である(一方の信号は局部発振器「LO」経路を辿る一方、他方の信号はターゲットから反射して戻る)。試験経路に沿ったサイトから反射された信号と、参照反射部からの信号との間でのいずれの時間遅延も、混合出力にビート周波数を生じさせる。ビート周波数の値は時間遅延に比例する一方、ビート周波数における信号のサイズは、対応する反射率に比例する。それゆえ、この出力のスペクトル解析は、(参照経路長に対する)位置と、試験経路に沿ったいずれかのサイトからの反射強度とを明らかにする。
【0026】
ここで
図3を参照すると、システム100は、レーザレーダーの光学的配置をもたらす対チャープ構成において2つのレーザ光源を有する構成を示す。レーザは、ヘテロダイン式の混合スキームにおいて2つの異なる同調率で同調され、かつ、平面光波回路(PLC)で実行できて環境影響の影響を受けない二重チャープコヒーレントレーザレーダーの実施形態を構成する。本実施形態では、レーザ光を、2つの偏光維持(PM)ファイバピッグテールレーザダイオードLD1 13及びLD2 11によって生成できるが、これに限定はされない。レーザLD1 13からの光は、LD2 11の同調率に応じた率で周波数が変調される。各レーザからの光は、光ファイバの光アイソレータ12を通過して、後方反射光がレーザの同調特性を損なわないようにする。各レーザからの光を、例えば、可能な6つのポートのうちの5つを使用して3×3PM結合器15で結合するが、これに限定はされない。次いで、光は結合光ビーム経路17(ここではファイバ17と同じ意味で使用される)を下って進み、形状に柔軟性のある間隙18を通って測定サイトまで達することができる。ファイバ17の端部では、光は結合光ビーム経路17から出射され、出力部19においてファイバから出力し、かつファイバ端部において一部分反射してファイバに戻される。反射光経路は各レーザレーダーの局部発振器(LO)経路となる。ファイバ17から出射し、ターゲット21で反射してファイバ17に戻る光は、レーザレーダーの信号経路を画成する。任意ではあるが、レンズ系(lensing system)27を使用して、関心の測定領域に集光し、ファイバ17へ戻る光の量を最大にする。レンズ系27を、例えば、必要な光学的被写界深度に依存して固定焦点システム又は調整可能な焦点システムとし得る。加えて、光はレンズ系27から出射後、任意選択の走査ミラー(図示せず)によってターゲット21の異なる部分に向けて、2D又は3D測定を行うことができる。出力部19から出射すると、レーザLD1 13及びLD2 11からの光は、一方向に直線偏光される。ターゲット21から反射されると、各レーザからの光は、同じ偏光軸の結合光ビーム経路17を有するファイバに再び入力して戻される。LO経路及び信号経路双方における光は結合器15を通って、光学的検出器23まで戻り、そこで、2つの経路からの光は混合されて、2つの経路間の距離差に比例するRF信号を形成する。RF信号は、各レーザの同調率に対応し得る2つの周波数を含み得る。LO経路及び信号経路は、結合光ビーム経路17を有するファイバ、及びファイバ24を進むため、LO信号を生成する境界面20において干渉が発生すると考えることができ、それゆえ、LO経路とその個々の信号経路との間の経路長差は、測定距離と等しい。それゆえ、結合光ビーム経路17を有するファイバ、及び結合光ビーム経路を有するファイバ24における、温度変化などの環境影響による光路の変化は、測定信号には何ら影響を及ぼさない。それゆえ、結合光ビーム経路17を有するファイバの、結合器15から出力部19までの長さは、測定を低下させずに任意の長さとし得る。これにより、限定はされないが出力部19、レンズ系27、及び走査機構を含み得るセンサのヘッドを、体積が制限された領域に配置できる一方、限定はされないが他の光学素子、エレクトロニクス、及び電源装置を含むシステム100の残りの構成部分を、センサのヘッドから離して配置できる。加えて、全ての光ファイバ構成は、浮遊物によるミスアライメント又は劣化に耐えることのできる耐久性の高いユニットを提供できる。
【0027】
引き続き
図3を参照すると、精密測定では、参照標準器41/42を、絶対測距の精度に含めることができ、かつ、レーザのチャープ波形を直線にすること及びチャープ波形の監視を支援する。参照標準器41/42は、Michaelson構成の光ファイバ干渉計の形態をとり得るが、これに限定されない。参照アームのファイバの長さを較正する場合、参照標準器41/42は、システム100のための絶対的な長さの標準としての機能を果たすと共に、第1のレーザ光源13及び第2のレーザ光源11波形の線形化に有用な信号を提供する。同じような方法で、参照検出器29は、両レーザの線形化に有用な信号を提供できる。参照標準器41/42の別の有用な使用法は、所与の瞬間にレーザの正確な同調を検出することである。それを用いて、差動ドップラーを判断することができる。アイソレータ25は、信号光検出器23を参照標準器41/42からの光から分離できる。2×2結合器41とファイバ42との組み合わせは、以下の通り動作するMichaelson参照アームである:光はアイソレータ25から2×2結合器41に入射し、複数の出力ファイバ42に分割される。ファイバ42の端部において空気/ガラス境界面に入射すると、光の一部分は、各ファイバで反射して、2×2結合器41まで、及び参照検出器29まで戻る。得られる混合信号は、各レーザの同調率及びファイバ42間の長さの差に関連する。
【0028】
引き続き主に
図3を参照して、測定装置20Aの境界面20と物体21との間の測定距離を決定するための方法は、第1のレーザ光源13からの第1の周波数を有する第1の光ビーム13Aと、第2のレーザ光源11からの第2の周波数を有する第2の光ビーム11Aとを生成するステップ、第2の周波数が第2の率でチャープダウンされるときに第1の周波数を第1の率でチャープアップするステップ、第1の周波数が第1の率でチャープダウンされるときに第2の周波数を第2の率でチャープアップするステップ、第1の光ビーム13Aと第2の光ビーム11Aを結合するステップ、結合光ビーム経路17を物体21の方に向けるステップ、結合光ビーム経路17に関連する、反射した局部発振器(LO)経路光ビーム461(
図11)を受光するステップ、結合光ビーム経路17に関連する、ターゲットで反射した信号経路光ビーム469(
図11)を受光するステップ、及びLO経路光ビーム461(
図11)とターゲットで反射した信号経路光ビーム469(
図11)とのヘテロダインを行って、測定距離に比例する2つの異なるビート周波数を生成するステップであって、この2つのビート周波数は単一の検出器23によって検出されるステップを含むが、これに限定はされない。
【0029】
引き続き、さらに主に
図3を参照して、測定装置20Aと物体21との間の測定距離を決定するためのシステム100は、第1の波形32及び第1の周波数を有する第1の光ビーム13Aを生成する第1のレーザ光源13と、第2の周波数を有しかつ第2の波形36を有する第2の光ビーム11Aを生成する第2のレーザ光源11とを含み得るが、これに限定されず、ここで、第2の周波数が第2の率でチャープダウンされるときに第1の周波数は第1の率でチャープアップされ、及び第1の周波数が第1の率でチャープダウンされるときに第2の周波数は第2の率でチャープアップされる。システム100はさらに、第1の光ビーム13Aと第2の光ビーム11Aを結合して結合光ビーム経路17に入力させるための光学素子15を含み得る。光学素子15は、結合光ビーム経路17からの戻り部分を第3の光ビーム24(ここではファイバ24と同じ意味で使用される)に分割でき、及び第3の光ビーム24を受光する単一の検出器23は、測定距離に比例する2つの異なるビート周波数を含む。
【0030】
ここで主に
図4を参照すると、システム150は代替的な実施形態を示す。この構成は、後方反射を最小にし、かつまた回路を、平面光波回路で実施しやすくする。3×2結合器15(
図3)を3つの2×1結合器43、45、及び47で置き換え、及び2×2結合器41(
図3)を2つの2×1結合器49及び51で置き換える。第1のレーザ光源13/第2のレーザ光源11と2×1結合器47との間のアイソレータ12は図示しないが、システム150の一部であることに留意されたい。
【0031】
ここで
図5A及び
図11を参照すると、システム200は別の代替的な実施形態を示す。この構成は、出力ファイバに沿って後方散乱される光によって生成された雑音の量を低減することによりシステムの感度を高めることができる偏光ディプレックススキームに基づく。この配置では、各レーザからの光は3×3偏光維持結合器15で結合される。次いで、光は図中上部に示すファイバを通って偏光スプリッタ57まで下って進む。ファイバ61を下って進む光は、アイソレータ63によって消される。次いでファイバ55からの出力光はファイバ55を出射してレンズ系27に入射する。この場合、境界面20から反射されてファイバ55に戻る光がないように、ファイバ端部に角度が付けられる。4分の1波長板463(
図11)は、光学偏光を、円偏光に変換できる。空気/ガラス境界面から反射されてファイバ55に戻る光がないように、ファイバ端部に角度が付けられる。部分反射体465(
図11)は、少量の光を反射して4分の1波長板463(
図11)を通して出力ファイバ55の直交偏光軸へと戻す。この光は局部発振器(LO)としての機能を果たす。レンズ系27から出射し、ターゲット21で反射し、4分の1波長板463(
図11)を通ってファイバ55に戻る光は、レーザレーダーの信号経路を画成する。この光もまた直交偏光軸にある。LO経路及び信号経路の双方にある光は、偏光スプリッタ57を通って戻って進み、第2のファイバ62に沿ってアイソレータ63を通って結合器15まで、その後、光学的検出器23まで向けられ、そこで、2つの経路からの光は混合されて、2つの経路間の距離差に比例するRF信号を形成する。RF信号は、各レーザの同調率に対応する2つの周波数を含む。この配置では、出力ファイバの後方散乱光は、LOビームに対して直交偏光状態にあり、コヒーレントに混合されず、それゆえ雑音信号を生成しない。
【0032】
ここで主に
図5Bを参照すると、システム450は別の代替的な実施形態を示す。この構成は、出力ファイバに沿って後方散乱される光によって生成された雑音の量を低減することによってシステムの感度を高めることができる偏光ディプレックススキームに基づいている。この配置では、各レーザからの光はアイソレータ12を通過し、2×2偏光維持結合器41で結合される。次いで、光は偏光スプリッタ57まで進む。そこから、出力光はファイバ17Aを下って進んでファイバ出力部19から出射する。ファイバ出力端部に角度が付けられて、光が後方反射されてファイバ17Aに戻らないようにする。全ての構成要素は偏光を維持しているため、光は、直線偏光にされてファイバ出力部19から出射する。次いで光は、直線偏光にされた光を、円偏光、例えば、右円偏光にされた光に変換する4分の1波長板463(
図11)を通過する。部分反射体465(
図11)は、少量の光を反射して、4分の1波長板463(
図11)を通して出力ファイバ19の直交偏光軸へと戻すことができる。この光は局部発振器(LO)としての機能を果たす。レンズ系27を通過し、レンズ系27から出射し、ターゲット21で反射し、4分の1波長板463を通してファイバ17Aに戻る光の残部は、レーザレーダーの信号経路を画成できる。この光もまた直交偏光軸にある。LO経路及び信号経路の双方にある光は、偏光スプリッタ57を通って戻って進み、光学的検出器23に向かって進められ、そこで、2つの経路からの光は混合されて、2つの経路間の距離差に比例するRF信号を形成する。RF信号は、各レーザの同調率に対応する2つの周波数を含み得る。この配置では、出力ファイバ19において後方散乱光は、LOビームに対して直交偏光状態にあり、コヒーレントに混合されず、それゆえ雑音信号を生成しない。
【0033】
図5B及び
図3を主に参照して、この配置の代替形態は、角度の付けられたファイバ/4分の1波長板/部分反射体のレンズ構成の配置を、
図3のファイバの配置と使用する。この配置は、後方散乱光による雑音を回避でき、ならびに構成部品数を削減できる。部分反射体は、少量の光を反射して4分の1波長板463(
図11)を通して出力ファイバ17の直交偏光軸へと戻すことができる。この光は局部発振器としての機能を果たす。レンズ系27から出射し、ターゲット21で反射し、4分の1波長板463(
図11)を通ってファイバ17に戻る光は、レーザレーダーの信号経路を画成する。この光もまた直交偏光軸にある。レーザ光は、PMファイバピッグテールレーザダイオードLD1 13及びLD2 11によって生成される。レーザLD1 13からの光は、LD2 11の率とは異なる率で周波数が変調されている。各レーザからの光は、光ファイバの光アイソレータ12を通過して、後方反射光がレーザの同調特性を損なわないようにする。各レーザからの光を3×3偏光維持結合器15で結合する。次いで、光はファイバ17を下って進んで、配置的に柔軟性を有した測定サイトまで達し得る。ファイバ17の端部では、光はファイバから出射し、4分の1波長板463(
図11)を通過してから、部分反射体465(
図11)で部分的に反射される。反射光経路は各レーザレーダーの局部発振器(LO)経路となる。ファイバ17から出射し、ターゲット21で反射し、及びファイバ17に戻る光は、レーザレーダーの信号経路を画成する。任意に、レンズ系27を使用して、関心の測定領域に集光させて、光ファイバ17に戻る光の量を最大にできる。レンズ系27は、例えば、必要な光学的被写界深度に依存して固定焦点システム又は調整可能な焦点システムとし得る。さらに、任意に、レンズ系27から出射後、光を走査ミラーによってターゲット21の異なる部分に向けて、2D又は3D測定を行うことができる。
【0034】
ここで
図6を参照すると、複数の出力ビームを有することによる利益を享受し得るこの技術の応用を示す。システム250は、本開示の主要な概念に基づいた別の代替的な実施形態である。システム250では、2つのレーザの出力が一緒に2×2結合器65で混合される。結合器65の出力67及び69を、複数の出力チャネルをそれぞれ提供する結合器71及び73に供給する。この場合、1×3結合器71及び73を使用して5つの出力ビーム75、77、79、81、及び85、及び参照アーム83をもたらす。各出力チャネルは、レンズ系75A、77A、79A、81A、及び83Aに光を向ける1×2結合器と、LOを生成するファイバ/ガラス境界面と、2つの信号周波数を検出する検出器とからなる。また、2×2結合器91と、長さがオフセットされた2つのファイバ93及び95と、参照検出器97とで構成されるMichaelson参照アームが示されている。他の参照アーム、例えば、限定されないが、Mach Zehnder構成の参照アームを使用することもできる。
【0035】
ここで
図7を参照すると、システム300は、遅延線を使用して様々な出力信号を1つの検出器上で多重化し、それゆえレーダーのコストを削減しかつ複雑性を低減する配置を示す。この場合、レーザは2×2結合器101で結合される。結合器101の出力103は、参照アーム結合器105に供給される。この場合、参照アームを、例えば、Michaelson構成で示すが、それに限定されない。出力107は2×2結合器109に向けられ、この2×2結合器109は、この出力を1×3結合器111及び113を経由して複数の出力ファイバに供給する。この場合、出力115を使用して、空気/ガラス境界面での反射によってLOを生成する。出力117、119、121、123、及び125は、様々な量のファイバ遅延(D1、D2、D3、D4、及びD5)のあるファイバである。これらのファイバの端部には角度が付けられて、あまり多くのLOが生成されないようにする。様々な遅延があるため、ターゲットで反射する光によって生成された信号は、検出器23では異なる周波数で戻る。レーザは異なる率で同調されるため、レーザからの信号も周波数が別にされる。
【0036】
ここで
図8を参照すると、システム350は、マルチビーム概念の構成の代替的な実施形態を提示する。システム350は後方反射を最小にし、回路を平面光波回路で実施しやすいようにする。システム350では、光は2×1結合器201で結合されてから、2×1結合器203で分割され、ファイバ207は参照アームに至り、ファイバ205は信号アームに至る。ファイバ205をスプリッタ2×(n+1)209(nはビーム数である)に向ける。ファイバ211はLO経路を有し、ファイバ213A、213B・・・213nは、異なるファイバ長の出力ビームを有し、そのため、光検出器23は、異なる遅延に依存して伝播し得る全ての信号を有する。
【0037】
ここで
図9を参照すると、システム400は、別の代替的なマルチ出力の実施形態を提示する。システム400では、レーザ光は、2つのPMファイバピッグテールレーザダイオード401及び403によって生成される。低速レーザとして示すレーザ401からの光は、PMファイバの遅軸と位置合わせされる。高速レーザとして示すレーザ403からの光は、PMファイバの速軸と位置合わせされる。システム400では、レーザL1 401及びL2 403からの光は、それぞれアイソレータ405及び407を通過後、偏光スプリッタ409によって結合される。偏光スプリッタ409はファイバ411遅軸の光とファイバ413の速軸の光を、ファイバ415の対応する軸に結合する。レーザL1 401及びL2 403からの光は、1×2光ファイバ結合器421によってファイバ417及び419に分割されて、それらの直交偏光が回避される。次いで光は1×3結合器423及び425によって複数の出力に分割される。各出力チャネルは、LOを生成するファイバ/ガラス境界面であるレンズ系27に光を向けることができる1×2結合器と、各レーザによって生成された2つの信号を分離する偏光スプリッタ427と、信号の周波数を検出する検出器429とを含み得る。遅軸にあったレーザL1 401からの光は、反射されて遅軸に戻され、速軸にあったレーザL2 403からの光は、反射されて速軸に戻される。これらの反射光経路は各レーザレーダーの局部発振器(LO)経路になる。ファイバから出射し、ターゲットで反射し、かつファイバへと戻る光は、各レーザレーダーの信号経路を画成する。出力ファイバから出射すると、レーザL1 401からの光は一方向に直線偏光され、レーザL2 403からの光は、レーザL1 401の光に対して直交する方向に直線偏光される。各レーザからの光は、ターゲットから反射されると、その元の軸においてファイバに再び入力されて戻る。LO経路及び信号経路の双方におけるレーザL1の光は、1×2結合器431及び偏光スプリッタ427を通って光学的検出器428まで戻り、そこで、2つの経路からの光は混合されて、2つの経路間の距離差に比例するRF信号を形成する。同じような方法で、LO経路及び信号経路からのレーザL2の光はL2検出器429まで進む。2つのレーザからの光は常に直交偏光状態にあるため、それらは互いに干渉せず、2つの得られるレーザレーダー信号はそれら自体の検出器にのみ出現する。同様に、ファイバ437の長さがオフセットされた1×2結合器435と、2つの参照アーム信号を分離する偏光スプリッタ439と、2つの検出器とで構成されたMach Zehnder参照アームを示す。Michaelson構成の参照アームも使用できた。一般にこの応用で使用された光源レーザは、出力波長の中心が1550nm付近(近赤外)のダイオードレーザである。この波長は人間の視覚では見えないため、第2の、可視レーザ周波数を光ファイバ回路に追加して、IR測定スポットと同じ箇所のターゲット上に可視スポットをもたらすことによってユーザを支援する。
【0038】
ここで
図10を参照すると、ファイバピッグテール可視レーザダイオード451からの光は、波長ディプレックス結合器455によって出力ファイバ453に結合され得る。結合器455は、可視レーザダイオード451からの可視光と、偏光スプリッタ457からのIR光とを出力ファイバ453に結合させる。
【0039】
ここで
図11を参照すると、ファイバ出力部19の端部に角度が付けられている。これは、空気とファイバのガラスとの間の境界面である。これに角度が付けられていない場合、ファイバに沿って戻る反射が生じる。これは、
図5AのLO経路が生成される方法である。光は、ファイバ19から出射して4分の1波長板463に至り、その一部が部分反射体465で反射される。反射光の一部は4分の1波長板463を通って戻り、ファイバ19に再入射する。これがLO経路である。ここで光は、4分の1波長板463を二度通過するために直交偏光状態にある。4分の1波長板463は角度を付けられ、スプリアス反射がファイバに再入射しないようにしている。任意に、部分反射体465の側面465Aにも角度を付け得るか又は反射防止被覆し得る。
【0040】
それゆえ、上述の説明は本教示の原理の例示にすぎないと考慮されるべきである。さらに、当業者は多くの修正形態及び変更形態を容易に考えることができ、本教示を、図示及び説明した正確な構成及び動作に限定することは望ましくなく、従って、本教示の範囲内にある全ての好適な修正形態及び等価物を用いてもよい。
【符号の説明】
【0041】
11 ・・・第2のレーザ光源
11A・・・第2の光ビーム
13 ・・・第1のレーザ光源
13A・・・第1の光ビーム
17 ・・・結合光ビーム経路
19 ・・・出力部
20A・・・測定装置
21 ・・・ターゲット
461・・・局部発振器(LO)経路光ビーム
469・・・信号経路光ビーム