特許第5752118号(P5752118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5752118ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、金属複合部品、及び金属複合部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752118
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、金属複合部品、及び金属複合部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20150702BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20150702BHJP
   C08K 5/5313 20060101ALI20150702BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20150702BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20150702BHJP
   B29C 45/78 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   C08L67/02
   C08K5/3492
   C08K5/5313
   C08L27/12
   B29C45/14
   B29C45/78
【請求項の数】16
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-519315(P2012-519315)
(86)(22)【出願日】2011年5月13日
(86)【国際出願番号】JP2011061060
(87)【国際公開番号】WO2011155287
(87)【国際公開日】20111215
【審査請求日】2014年4月15日
(31)【優先権主張番号】特願2010-132466(P2010-132466)
(32)【優先日】2010年6月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501183161
【氏名又は名称】ウィンテックポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】若塚 聖
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−091865(JP,A)
【文献】 特開2009−149018(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/011398(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/016458(WO,A1)
【文献】 特開2005−273058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00−67/03
27/00−27/24
B29C 45/00−45/84
C08K 5/00−5/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂と、フォスフィン酸塩、ジフォスフィン酸塩、及び、3量体以上のフォスフィン酸縮合物の塩からなる群より選択される1種以上の(C)リン系難燃剤とを含み、
前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量が、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、
前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるテレフタロイル単位及びエチレンジオキシ単位の他の繰り返し単位の量が、前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の全繰り返し単位中2モル%以下であり、
前記(C)リン系難燃剤の含有量が、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して10質量部以上100質量部以下である、金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)リン系難燃剤が、下記一般式(1)で表されるフォスフィン酸塩、及び/又は、下記一般式(2)で表されるジフォスフィン酸塩である、請求項1記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)、(2)中、R、Rは、フェニル基、水素、1個のヒドロキシル基を含有してよい直鎖又は分枝鎖のC1−6−アルキル基であり、Rは、直鎖又は分枝鎖のC1−10−アルキレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基又はアリールアルキレン基であり、Mは、アルカリ土類金属、アルカリ金属、Zn、Al、Fe、ホウ素であり、mは、1から3の整数であり、nは、1又は3の整数であり、xは、1又は2である。)
【請求項3】
前記(C)リン系難燃剤が、ジエチルフォスフィン酸アルミニウムである、請求項2記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、下記一般式(3)で表されるトリアジン系化合物とシアヌール酸又はイソシアヌール酸との塩である(D)含窒素難燃助剤を含有し、
(D)含窒素難燃助剤の含有量が、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して1質量部以上50質量部以下である、請求項1から3いずれか記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【化2】
(式中、R、Rは水素原子、アミノ基、アリール基、又は炭素数1から3のオキシアルキル基であり、R、Rは同一でもまた異なっていてもよい。)
【請求項5】
前記(D)含窒素難燃助剤がメラミンシアヌレートである、請求項4記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、(E)充填材を含有し、
(E)充填材の含有量が、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して5質量部以上120質量部以下である、請求項1から5いずれか記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、(F)フッ素系樹脂を含有し、
(F)フッ素系樹脂の含有量が、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下である、請求項1から6いずれか記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、(G)エラストマーを含有し、
(G)エラストマーの含有量が、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して1質量部以上100質量部以下である、請求項1から7いずれか記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1から8いずれか記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物と、金属部品とからなる金属複合部品。
【請求項10】
前記金属部品が表面粗化処理されたものである、請求項9記載の金属複合部品。
【請求項11】
パーソナルコンピュータ部品、携帯端末部品、又はOA機器部品である、請求項9又は10記載の金属複合部品。
【請求項12】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂と、フォスフィン酸塩、ジフォスフィン酸塩、及び、3量体以上のフォスフィン酸縮合物の塩からなる群より選択される1種以上の(C)リン系難燃剤とを含み、
前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量が、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、
前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるテレフタロイル単位及びエチレンジオキシ単位の他の繰り返し単位の量が、前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の全繰り返し単位中2モル%以下であり、
前記(C)リン系難燃剤の含有量が、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して10質量部以上100質量部以下である成形材料を、成形機により金属部品が載置された金型に供給する、金属複合部品の製造方法。
【請求項13】
前記成形材料が、請求項1から8いずれか記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物である、請求項12記載の金属複合部品の製造方法。
【請求項14】
前記金属部品が、表面粗化処理されたものである請求項12又は13記載の金属複合部品の製造方法。
【請求項15】
前記金型の温度が100℃以下である、請求項12から14いずれか記載の金属複合部品の製造方法。
【請求項16】
請求項12から15いずれか記載の成形方法により得られた、金属複合部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物とを複合化して金属複合部品を製造する際に、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性に優れ、且つ難燃性に優れる金属複合部品を与えるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に関する。また、本発明は、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物とからなり、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性に優れ、且つ難燃性に優れる金属複合部品の製造方法に関する。さらに、本発明は、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物とからなり、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性に優れ、且つ難燃性に優れる金属複合部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インサート成形、アウトサート成形、フープ成形等の成形方法により、熱可塑性樹脂と金属部品とを複合化して製造した金属複合部品が、家電製品、情報通信機器、自動車部品等に幅広く利用されている。
【0003】
また、熱可塑性樹脂と金属部品とを複合化した金属複合部品の中では、例えば、金属板の表面の一部又は全面に熱可塑性樹脂を積層した金属複合積層部品が、強度等の機能性や、軽量性、意匠性等の点から、携帯電話機やノート型パーソナルコンピュータ等の小型の情報・通信機器の筐体として注目されている。
【0004】
かかる金属複合部品に用いる熱可塑性樹脂には、外部からの種々の刺激に対する耐久性が求められるため、機械的特性、耐熱性、電気的特性、耐候性、耐水性、耐薬品性、耐溶剤等の種々の特性が優れていることが望まれ、製造効率の点から射出成形等の方法により溶融成形可能であることが望まれる。このため、これらの諸物性及び成形性に優れるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の金属複合部品への使用が検討されている。
【0005】
しかし、ポリブチレンテレフタレート樹脂又はポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いて射出成形等の方法により金属複合部品を製造する場合には、樹脂の線膨張率が金属と比較すると大きいことや、低温の金属部品と、高い加工温度になっている樹脂とで成形後の収縮率が大きく異なることから、金型内では金属部品と樹脂とが良好に密着していても、成形後に金属部品と樹脂との密着性が低下してしまう問題がある。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂は加工温度が高いため、溶融状態の熱可塑性樹脂と低温の金属板とが金型内で接触することにより金属部品表面の熱可塑性樹脂が急速に固化してしまい、通常の製造方法では、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性に優れた金属複合部品の製造が難しい問題がある。
【0006】
このため、ポリブチレンテレフタレート樹脂又はポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いて金属複合積層部品を製造する場合、金属部品と樹脂との密着性の問題から射出成形等の成形方法を適用することができず、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂の成形品とを粘着テープや接着剤を用いて積層する煩雑な作業が必要である。
【0007】
かかる事情から、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂又はポリブチレンテレフタレート樹脂組成物とから金属複合部品を射出成形等の方法により成形する際に、金属部品と樹脂との密着性を改良する方法の開発が望まれている。
【0008】
ポリブチレンテレフタレート樹脂又はポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いた金属複合部品における金属部品と樹脂との密着性の改良の方法としては、例えば、アルミニウム合金からなる金属部品に対して、以下の順で、陽極酸化処理、酸化物層皮膜の機械的な除去処理、酸性水溶液によるエッチング処理、及びヒドラジン等による接触処理を施して微細エッチングを行い、微細エッチングされた金属部品と、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物とを射出成形により複合化して金属複合部品を製造する方法(特許文献1)や、微細エッチングされた金属部品を水溶性アルコールの水溶液に浸漬した後に、金属部品とポリエチレンテレフタレート樹脂を含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物とを射出成形により複合化して金属複合部品を製造する方法(特許文献2)等が知られている。
【0009】
また、携帯電話機やノート型パーソナルコンピュータ等の小型の情報・通信機器の筐体等に使用される金属複合部品には高度な難燃性も要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−001216号公報
【特許文献2】特開2006−027018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1及び2に記載の方法によれば、金属部品表面に形成された凹部にポリブチレンテレフタレート樹脂組成物がいくらか浸入するため、アンカー効果によって金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性はある程度改善されるが、得られる金属複合部品は、依然として金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物とが接触面において剥離しやすいものである。
【0012】
また、特許文献1及び2に記載の方法では、金属部品表面に形成された凹部に十分にポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を浸入させるためには、金型内で高温の溶融樹脂が低温の金属部品と接触することによる樹脂の急速な固化を防ぐために、金型温度が100℃を超える高温に設定する必要がある。
【0013】
このため、特許文献1及び2に記載の方法では一般的に使用されている温水を循環させる金型の温度調節装置が使用できず、高沸点のオイルを熱媒体として用いる温度調節装置を使用する必要があり、熱媒体の管理の手間や、設備費用の点等で問題がある。また、金型が高温である場合、金属複合部品の製造時の作業性の点でも問題である。
【0014】
さらに、引用文献1及び2では、金属複合部品の難燃化について検討されておらず、ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いた金属複合部品の難燃化の課題は未だ解決されていない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、ポリブチレンテレフタレート樹脂に、特定量のポリエチレンテレフタレート樹脂及びリン系難燃剤を配合して金属複合部品を製造した場合、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性に優れ、且つ高度に難燃化された金属複合部品を、100℃以下の低い金型温度でも製造可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0016】
(1) (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂と、フォスフィン酸塩、ジフォスフィン酸塩、及び、3量体以上のフォスフィン酸縮合物の塩からなる群より選択される1種以上の(C)リン系難燃剤とを含み、
前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量が、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、
前記(C)リン系難燃剤の含有量が、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して10質量部以上100質量部以下である、金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【0017】
(2) 前記(C)リン系難燃剤が、下記一般式(1)で表されるフォスフィン酸塩、及び/又は、下記一般式(2)で表されるジフォスフィン酸塩である、(1)記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)、(2)中、R、Rは、フェニル基、水素、1個のヒドロキシル基を含有してよい直鎖又は分枝鎖のC1−6−アルキル基であり、Rは、直鎖又は分枝鎖のC1−10−アルキレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基又はアリールアルキレン基であり、Mは、アルカリ土類金属、アルカリ金属、Zn、Al、Fe、ホウ素であり、mは、1から3の整数であり、nは、1又は3の整数であり、xは、1又は2である。)
【0018】
(3) 前記(C)リン系難燃剤が、ジエチルフォスフィン酸アルミニウムである、(2)記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【0019】
(4) さらに、下記一般式(3)で表されるトリアジン系化合物とシアヌール酸又はイソシアヌール酸との塩である(D)含窒素難燃助剤を含有し、
(D)含窒素難燃助剤の含有量が、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して1質量部以上50質量部以下である、(1)から(3)いずれか記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【化2】
(式中、R、Rは水素原子、アミノ基、アリール基、又は炭素数1から3のオキシアルキル基であり、R、Rは同一でもまた異なっていてもよい。)
【0020】
(5) 前記(D)含窒素難燃助剤がメラミンシアヌレートである、(4)記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【0021】
(6) さらに、(E)充填材を含有し、
(E)充填材の含有量が、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して5質量部以上120質量部以下である、(1)から(5)いずれか記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【0022】
(7) さらに、(F)フッ素系樹脂を含有し、
(F)フッ素系樹脂の含有量が、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下である、(1)から(6)いずれか記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【0023】
(8) さらに、(G)エラストマーを含有し、
(G)エラストマーの含有量が、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して1質量部以上100質量部以下である、(1)から(7)いずれか記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【0024】
(9) (1)から(8)いずれか記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物と、金属部品とからなる金属複合部品。
【0025】
(10) 前記金属部品が表面粗化処理されたものである、(9)記載の金属複合部品。
【0026】
(11) パーソナルコンピュータ部品、携帯端末部品、又はOA機器部品である、(9)又は(10)記載の金属複合部品。
【0027】
(12) (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂と、フォスフィン酸塩、ジフォスフィン酸塩、及び、3量体以上のフォスフィン酸縮合物の塩からなる群より選択される1種以上の(C)リン系難燃剤とを含み、
前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量が、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、
前記(C)リン系難燃剤の含有量が、前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び前記(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して10質量部以上100質量部以下である成形材料を、成形機により金属部品が載置された金型に供給する、金属複合部品の製造方法。
【0028】
(13) 前記成形材料が、(1)から(8)いずれか記載の金属複合部品成形用のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物である、(12)記載の金属複合部品の製造方法。
【0029】
(14) 前記金属部品が、表面粗化処理されたものである(12)又は(13)記載の金属複合部品の製造方法。
【0030】
(15) 前記金型の温度が100℃以下である、(12)から(14)いずれか記載の金属複合部品の製造方法。
【0031】
(16) (12)から(15)いずれか記載の成形方法により得られた、金属複合部品。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性に優れ、且つ難燃性に優れる金属複合部品を、100℃以下の金型温度であっても成形可能なポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が提供される。また、本発明によれば、金属複合部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性に優れ、且つ難燃性に優れる金属複合部品を、100℃以下の金型温度であっても製造可能な金属複合部品の製造方法が提供される。さらに、本発明によれば、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性に優れ、且つ難燃性に優れる金属複合部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施例において金属密着性の評価に用いた試験片の上面から見た模式図である。
図2】実施例における金属密着性の評価方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0035】
以下、金属複合部品の成形材料、金属複合部品の製造方法、及び金属複合部品について順に説明する。
【0036】
[金属複合部品の成形材料]
まず、金属複合部品の成形材料について説明する。本発明において金属複合部品の製造に使用される成形材料は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂、及び(C)リン系難燃剤に対して、所望により(D)含窒素難燃助剤、(E)充填材、(F)テトラフルオロエチレン重合体、(G)エラストマー、及び(H)その他の添加剤からなる群より選択される1種以上の成分を配合されたものである。
【0037】
本発明において用いる金属複合部品の成形材料は、所定の量の(A)〜(H)の成分を含有していれば、その混合形態は特に限定されない。金属複合部品の成形材料の形態の具体例としては、(i)成形材料に含まれる全成分を溶融混練して得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の、ペレット、フレーク、又は粉末や、(ii)(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、又は(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と所望の成分とからなるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレット、フレーク又は粉末、並びに、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂、又は(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂と所望の成分とからなる(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のペレット、フレーク、又は粉末の混合物が挙げられる。
【0038】
なお、本出願の明細書及び特許請求の範囲において、成形材料中の全成分が、溶融混練、又は溶融成形等の方法により一体化された材料を「ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物」と称し、成形材料中の少なくとも1つの成分が、他の成分と一体化されていない材料を「ポリブチレンテレフタレート樹脂混合物」と称する。
【0039】
これらの形態の中では、成形材料中で各成分の均一な混合が容易であり、均質な金属複合部品を成形しやすいことから、(i)成形材料に含まれる全成分を溶融混練して得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の、ペレット、フレーク、又は粉末が好ましい。また、成形材料が、全成分を溶融混練して得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物である場合、成形時の操作性に優れることから、その形状はペレット状であるのが好ましい。
【0040】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂、及び(C)リン系難燃剤、(D)含窒素難燃助剤、(E)充填材、(F)テトラフルオロエチレン重合体、(G)エラストマー、及び(H)その他の添加剤からなる群より選択される1種以上の成分を配合し、これらの成分を溶融混練してポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を得る方法は、従来知られる、樹脂組成物の製造方法に従えばよい。溶融混練によりポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を製造する好適な方法としては、1軸又は2軸押出機等の溶融混練装置を用いる方法が挙げられる。
【0041】
以下、金属複合部品の成形材料の成分である(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂、(C)リン系難燃剤、(D)含窒素難燃助剤、(E)充填材、(F)テトラフルオロエチレン重合体、(G)エラストマー、及び(H)その他の添加剤について順に説明する。
【0042】
〔(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂〕
本発明において用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、少なくともテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4−ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート系樹脂である。ポリブチレンテレフタレート樹脂はホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上(特に75モル%以上95モル%以下)含有する共重合体であってもよい。
【0043】
本発明において用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本発明において用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、30meq/kg以下が好ましく、25meq/kg以下がより好ましい。かかる範囲の末端カルボキルシル基量のポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、得られる金属複合部品が湿熱環境下での加水分解による強度低下を受けにくくなる。
【0044】
本発明において用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されない。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)は0.60dL/g以上1.2dL/g以下であるのが好ましい。さらに好ましくは0.65dL/g以上0.9dL/g以下である。かかる範囲の固有粘度のポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が特に成形性に優れたものとなる。また、異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度1.0dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂と固有粘度0.7dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.9dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂を調製することができる。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)は、例えば、o−クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定することができる。
【0045】
本発明において用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂において、テレフタル酸及びそのエステル形成性誘導体以外のジカルボン酸成分(コモノマー成分)としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル等のC8−14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC4−16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC5−10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0046】
これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC8−12の芳香族ジカルボン酸、及び、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC6−12のアルカンジカルボン酸がより好ましい。
【0047】
本発明において用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂において、1,4−ブタンジオール以外のグリコール成分(コモノマー成分)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール等のC2−10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC2−4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)が挙げられる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0048】
これらのグリコール成分の中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のC2−6のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、又は、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等がより好ましい。
【0049】
ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に使用できるコモノマー成分としては、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−カルボキシ−4’−ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε−カプロラクトン等)等のC3−12ラクトン;これらのコモノマー成分のエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。
【0050】
以上説明したコモノマー成分を共重合したポリブチレンテレフタレート共重合体は、いずれも(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂として好適に使用できる。また、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂として、ホモポリブチレンテレフタレート重合体とポリブチレンテレフタレート共重合体とを組み合わせて使用してもよい。
【0051】
〔(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂〕
本発明において用いる(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1−6アルキルエステルや酸ハロゲン化物等)、及び、エチレングリコール又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を、公知の方法に従って重縮合して得られるポリエステル樹脂である。
【0052】
本発明における、金属複合部品における、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性の改良効果の一因は、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂を(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に配合することによって、成形時のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性が改良され、且つ、結晶化速度の低下により収縮率が低下することによるものと推測される。
【0053】
つまり、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の流動性が改良されることにより、金属部品表面の微細な凹部に樹脂組成物が容易に浸入しやすくなり、且つ、収縮率の低下によって、冷却後に凹部で固化した樹脂が容易に凹部から脱離し難くなることにより、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性が改良されると推測される。
【0054】
(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂は、本発明の目的を阻害しない範囲で、テレフタロイル単位及びエチレンジオキシ単位の他の繰り返し単位を与える変性成分を少量共重合して変性されたものであってもよい。(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるテレフタロイル単位及びエチレンジオキシ単位の他の繰り返し単位の量は、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の全繰り返し単位中、4モル%未満が好ましく、3モル%以下がより好ましく、2モル%以下が特に好ましい。
【0055】
変性成分に含まれるジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体として好適な化合物としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル等のC8−14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC4−16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC5−10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)が挙げられる。これらのジカルボン酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0056】
変性成分に含まれるグリコール成分としては、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオール等のC2−10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC2−4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)が挙げられる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0057】
変性成分に含まれるヒドロキシカルボン酸成分としては、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−カルボキシ−4’−ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;又はこれらのヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体(C1−6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。これらのヒドロキシカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0058】
変性成分に含まれるラクトン成分としては、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε−カプロラクトン等)等のC3−12ラクトンが挙げられる。これらのラクトン成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0059】
金属複合部品の成形材料における、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の使用量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計質量に対して、10質量%以上50質量%以下が好ましく、15質量%以上45質量%以下がより好ましく、20質量部以上45質量%以下が特に好ましい。(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の使用量が多すぎる場合には、金属複合部品の成形時の離型性が損なわれる場合や、得られる金属複合部品の機械的特性や耐薬品性等が損なわれる場合があり、使用量が少なすぎる場合には所望の密着性の改良効果が得られない場合がある。
【0060】
〔(C)リン系難燃剤〕
本発明において金属複合部品の成形材料は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、及び(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂に加えて、(C)リン系難燃剤を含む。本発明では、(C)リン系難燃剤として、フォスフィン酸塩、ジフォスフィン酸塩、及び3量体以上のフォスフィン酸縮合物の塩から選択される1種以上が好ましく、本発明で用いる(C)リン系難燃剤の中としては、フォスフィン酸塩、及び/又は、ジフォスフィン酸塩がより好ましい。
【0061】
フォスフィン酸塩、ジフォスフィン酸塩、又は3量体以上のフォスフィン酸縮合物の塩を形成する金属としては、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)、遷移金属(鉄、コバルト、ニッケル、銅等)、周期表第12族金属(亜鉛等)、周期表第13族金属(アルミニウム等)等が挙げられる。前記金属塩は、これらの金属を一種含有してもよく、二種以上組み合わせて含有してもよい。前記金属のうち、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)及び周期表第13族金属(アルミニウム等)が好ましい。
【0062】
塩を形成する金属の価数は特に制限されず、1以上4以下が好ましく、2以上4以下がより好ましく、2又は3が特に好ましい。
【0063】
本発明において(C)リン系難燃剤として利用するフォスフィン酸塩としては下記の一般式(1)で表される化合物が好ましく、ジフォスフィン酸塩としては式(2)で表される化合物が好ましい。
【化3】
【0064】
上記一般式(1)、(2)中、R、Rは、フェニル基、水素、1個のヒドロキシル基を含有してよい直鎖又は分枝鎖のC1−6−アルキル基である。R、Rはともにエチル基であることが好ましい。
また、Rは、直鎖又は分枝鎖のC1−10−アルキレン基、アリーレン基、アルキルアリーレン基又はアリールアルキレン基である。
また、Mは、アルカリ土類金属、アルカリ金属、Zn、Al、Fe、ホウ素である。これらの中でもAlが好ましい。
mは、1から3の整数であり、nは、1又は3の整数であり、且つ、xは、1又は2である。
【0065】
本発明において好適に使用できるフォスフィン酸塩の具体例としては、ジメチルフォスフィン酸カルシウム、ジメチルフォスフィン酸マグネシウム、ジメチルフォスフィン酸アルミニウム、ジメチルフォスフィン酸亜鉛、エチルメチルフォスフィン酸カルシウム、エチルメチルフォスフィン酸マグネシウム、エチルメチルフォスフィン酸アルミニウム、エチルメチルフォスフィン酸亜鉛、ジエチルフォスフィン酸カルシウム、ジエチルフォスフィン酸マグネシウム、ジエチルフォスフィン酸アルミニウム、ジエチルフォスフィン酸亜鉛、メチル−n−プロピルフォスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルフォスフィン酸マグネシウム、メチル−n−プロピルフォスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルフォスフィン酸亜鉛等が挙げられる。
【0066】
本発明において好適に使用できるジフォスフィン酸塩の具体例としては、メタンジ(メチルフォスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルフォスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルフォスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルフォスフィン酸)亜鉛、ベンゼン−1,4−(ジメチルフォスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−(ジメチルフォスフィン酸)マグネシウム等が挙げられる。
【0067】
上記のフォスフィン酸塩、及び/又は、ジフォスフィン酸塩の中でも特にジエチルフォスフィン酸アルミニウムの使用が好ましい。
【0068】
本発明における(C)リン系難燃剤の使用量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対し、10質量部以上100質量部以下が好ましく、10質量部以上80質量部以下がより好ましく、15質量部以上60質量部以下が特に好ましい。(C)リン系難燃剤の使用量が多すぎる場合には、機械的特性や成形性が損なわれる場合があり、使用量が少なすぎる場合には良好な難燃性が得られない場合がある。
【0069】
〔(D)含窒素難燃助剤〕
本発明において、金属複合部品の成形材料は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂、及び(C)リン系難燃剤に加え、(D)含窒素難燃助剤を含むのが好ましい。(D)含窒素難燃助剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されず、従来から熱可塑性樹脂用の難燃剤として使用される種々の(D)含窒素難燃助剤を選択して使用できる。
【0070】
本発明において好適に使用される(D)含窒素難燃助剤の例としては、トリアジン系化合物とシアヌール酸もしくはイソシアヌール酸との塩、アミノ基を含有する窒素化合物とポリリン酸との複塩等が挙げられる。これらの(D)含窒素難燃助剤は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
本発明において用いる(D)含窒素難燃助剤としては、(C)リン系難燃剤と組み合わせた場合に難燃効果が優れることから、トリアジン系化合物とシアヌール酸もしくはイソシアヌール酸との塩、及び/又は、アミノ基を含有する窒素化合物とポリリン酸との複塩がより好ましい。
【0072】
上記トリアジン系化合物とシアヌール酸又はイソシアヌール酸との塩としては、下記一般式(3)で表されるトリアジン系化合物とシアヌール酸又はイソシアヌール酸との塩が好ましいものとして例示される。
【0073】
【化4】
式中、R、Rは水素原子、アミノ基、アリール基、又はC1−3のオキシアルキル基であり、R、Rは同一でもまた異なっていてもよい。
【0074】
本発明において用いる(D)含窒素難燃助剤としては、上記一般式(3)で表されるトリアジン系化合物とシアヌール酸又はイソシアヌール酸との塩の中でも特にメラミンシアヌレートが特に好ましい。
【0075】
また、アミノ基を含有する窒素化合物とポリリン酸との複塩に含まれるアミノ基を含有する窒素化合物には、少なくとも1つのアミノ基と、少なくとも1つの窒素原子を環のヘテロ原子として有するヘテロ環状化合物が含まれ、ヘテロ環は、窒素以外にイオウ、酸素等の他のヘテロ原子を有していてもよい。このような窒素含有ヘテロ環には、イミダゾール、チアジアゾール、チアジアゾリン、フラザン、トリアゾール、チアジアジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、プリン等の複数の窒素原子を環の構成原子として有する5又は6員不飽和窒素含有ヘテロ環等が含まれる。このような窒素含有環のうち、複数の窒素原子を環の構成原子として有する5又は6員不飽和窒素含有環が好ましく、特に、トリアゾール及びトリアジンが好ましい。そして、アミノ基を含有する窒素化合物とポリリン酸との複塩の中では、ポリリン酸メラムが好ましい。
【0076】
金属複合部品の成形材料における、(D)含窒素難燃助剤の使用量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂との合計量100質量部に対し、1質量部以上50質量部以下が好ましく、1質量部以上40質量部以下がより好ましく、1質量部以上30質量部以下が特に好ましい。かかる範囲の量で(D)含窒素難燃助剤を(C)難燃剤とともに用いることにより、難燃性に優れた金属複合部品が得られる。
【0077】
〔(E)充填材〕
本発明において、金属複合部品の成形材料は、金属複合部品の機械的特性の改良の目的で、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂、及び(C)リン系難燃剤に加えて、(E)充填材を含むのが好ましい。本発明において用いる(E)充填材の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来から高分子材料の充填材として使用される種々の充填材を使用することができ、無機充填材及び有機充填材のいずれも使用できる。また、本発明で用いる(E)充填材の形状は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されず、繊維状充填材、粉粒状充填材、及び板状充填材のいずれも好適に使用できる。
【0078】
本発明において用いる好適な繊維状充填材として、例えば、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物等の無機質繊維状物質が挙げられる。
【0079】
本発明において用いる好適な粉粒状充填材としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如き珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。また、好適な板状充填材としては、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等が挙げられる。
【0080】
これらの(E)充填材の中では、コストと得られる金属複合部品の物性とのバランスに優れることからガラス繊維を用いるのが特に好ましい。
【0081】
ガラス繊維としては、公知のガラス繊維がいずれも好ましく用いられ、ガラス繊維径や、円筒、繭形断面、長円断面等の断面形状、あるいはチョップドストランドやロービング等の製造に用いる際の長さやガラスカットの方法にはよらない。本発明において、ガラス繊維の原料となるガラスの種類は特に限定されないが、品質上、Eガラスや、組成中にジルコニウム元素を含む耐腐食ガラスが好ましく用いられる。
【0082】
また、(E)充填材と、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、及び(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる樹脂マトリックスとの界面特性を向上させる目的で、シラン化合物やエポキシ化合物等の有機処理剤で表面処理された充填材が好ましく用いられる。かかる充填材に用いられるシラン化合物やエポキシ化合物としては公知のものがいずれも好ましく用いることができ、本発明で充填材の表面処理に用いられるシラン化合物、エポキシ化合物の種類には依存しない。
【0083】
本発明における(E)充填材の使用量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)ポリエチレンテレフタレートとの合計量100質量部に対して5質量部以上120質量部以下が好ましく、10質量部以上100質量部以下がより好ましく、15質量部以上80質量部以下が特に好ましい。(E)充填材の使用量が多すぎる場合、成形時の樹脂組成物の流動性が損なわれる場合がある。
【0084】
〔(F)フッ素系樹脂〕
本発明において、金属複合部品の成形材料は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂、及び(C)リン系難燃剤に加えて、(F)フッ素系樹脂を含むのが好ましい。(F)フッ素系樹脂を用いることにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が火炎に触れる際の溶融樹脂の滴下が抑制され、より難燃性に優れる金属複合部品を得ることができる。
【0085】
好適な(F)フッ素系樹脂としては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル等のフッ素含有モノマーの単独又は共重合体や、前記フッ素含有モノマーとエチレン、プロピレン、(メタ)アクリレート等の共重合性モノマーとの共重合体が挙げられる。これらの(F)フッ素系樹脂は1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0086】
このような(F)フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等の単独重合体や、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体等の共重合体が例示される。また、(F)フッ素系樹脂は、メタクリル酸メチル・アクリル酸ブチル共重合物等の(メタ)アクリレート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、あるいは、ポリアミド6等のポリアミド系樹脂等の他の樹脂との混合物として使用してもよい。
【0087】
本発明における(F)フッ素系樹脂の使用量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、及び(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下が好ましく、0.2質量部以上1.5質量部以下が特に好ましい。
【0088】
〔(G)エラストマー〕
本発明において、金属複合部品の成形材料は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、及び(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂に加えて、(G)エラストマーを含むのが好ましい。(G)エラストマーを用いることにより、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性が特に優れたものとなる。
【0089】
本発明において使用できる好適な(G)エラストマーとしては、ポリエステル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、ウレタン系エラストマー、アミド系エラストマー、アクリレート系エラストマー、スチレン系エラストマー、フッ素系エラストマー、ブタジエン系エラストマー等が挙げられる。さらには、ブチルアクリレート等のゴム状架橋体からなるコア部とメチルアクリレート等のガラス状重合体のシェル部からなるコアシェルタイプのポリマーも用いられる。これらのエラストマーは、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基等の反応性基の導入や、架橋、グラフト等公知の方法で変性されたものであってもよい。
【0090】
本発明における、(G)エラストマーの使用量は本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されない。(G)エラストマーの使用量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、及び(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して1質量部以上100質量部以下が好ましく、3質量部以上50質量部以下がより好ましく、5質量部以上30質量部以下が特に好ましい。(G)エラストマーの使用量をかかる範囲とすることで、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性を特に優れたものとすることができる。
【0091】
本発明において好ましく用いられる(G)エラストマーはオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、コアシェル系エラストマー、及びポリエステル系エラストマーである。以下、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、コアシェル系エラストマー、及びポリエステル系エラストマーについて順に説明する。
【0092】
<オレフィン系エラストマー>
オレフィン系エラストマーとして好ましいものは、エチレン及び/又はプロピレンを成分として含む共重合体であり、具体的にはエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらには、オレフィン系エラストマーの中でも、(I)エチレン−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体又は(II)α−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルからなるオレフィン系共重合体に、下記一般式(4)で示される繰返し単位で構成された重合体又は共重合体の一種又は二種以上が分岐又は架橋構造的に化学結合したグラフト共重合体も利用することができる。(但し、Rは水素又は低級アルキル基、Xは−COOCH、−COOC、−COOC、−COOCHCH(C)C、−C、−CNから選ばれた一種又は二種以上の基を示す)
【化5】
【0093】
<スチレン系エラストマー>
本発明において(G)エラストマーとして用いるスチレン系エラストマーとしては、ポリスチレンブロックとポリオレフィン構造のエラストマーブロックとで構成されたブロック共重合体が好適に用いられる。スチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)等が挙げられる。
【0094】
<コアシェル系エラストマー>
本発明において(G)エラストマーとして用いるコアシェル系エラストマーは、コア層(コア部)と、このコア層の表面の少なくとも一部を被覆するシェル層とで構成される多層構造を有する。コアシェル系エラストマーのコア層は、ゴム成分(軟質成分)で構成されるのが好ましく、ゴム成分としてはアクリル系ゴムが好適に用いられる。コア層に用いるゴム成分は、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満(例えば−10℃以下)であるのが好ましく、−20℃以下(例えば−180℃以上−25℃以下)であるのがより好ましく、−30℃以下(例えば−150℃以上−40℃以下)であるのが特に好ましい。
【0095】
ゴム成分として用いるアクリル系ゴムは、アルキルアクリレート等のアクリル系モノマーを主成分として重合して得られる重合体が好ましい。アクリル系ゴムのモノマーとして用いるアルキルアクリレートは、ブチルアクリレート等のアクリル酸のC〜C12のアルキルエステルが好ましく、アクリル酸のC〜Cのアルキルエステルがより好ましい。
【0096】
アクリル系ゴムは、アクリル系モノマーの単独重合体でもよく、共重合体でもよい。アクリル系ゴムがアクリル系モノマーの共重合体である場合、アクリル系モノマー同士の共重合体でも、アクリル系モノマーと他の不飽和結合含有モノマーとの共重合体であってもよい。アクリル系ゴムが共重合体である場合、アクリル系ゴムは架橋性モノマーを共重合したものであってもよい。
【0097】
<ポリエステル系エラストマー>
本発明において(G)エラストマーとして用いるポリエステル系エラストマーは、曲げ弾性率が1000MPa以下、好ましくは700MPa以下のものであれば特に制限されず、種々のものを使用でき、ポリエーテル型、又はポリエステル型のいずれも使用できる。
【0098】
ポリエーテル型のポリエステル系エラストマーとは、芳香族ポリエステル単位をハードセグメントとし、オキシアルキレングリコールの重合体とジカルボン酸からなるポリエステルをソフトセグメントとするポリエステルエラストマーである。
【0099】
ハードセグメント中の芳香族ポリエステル単位は、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物との重縮合物、オキシカルボン酸化合物の重縮合物、又は、ジカルボン酸化合物とジヒドロキシ化合物とオキシカルボン酸化合物との重縮合物に由来する単位である。ハードセグメントの具体例としてはポリブチレンテレフタレートに由来する単位が挙げられる。
【0100】
ソフトセグメントは、ポリアルキレンエーテルとジカルボン酸化合物の重縮合により生成した化合物によりポリエステル系エラストマー中に導入される。ソフトセグメントの具体例としては、例えば、テトラヒドロフランから誘導されるポリオキシテトラメチレングリコールのエステル化合物に由来する単位が挙げられる。
【0101】
ポリエーテル型エラストマーは、合成したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。ポリエーテル型のエラストマーの市販品としては、例えば、東洋紡績(株)製のペルプレンP−30B、P−70B、p−90B、P−208B;東レ・デュポン(株)製のハイトレル4057、4767、6347、7247;チコナ(株)製のライトフレックス655が挙げられる。
【0102】
ポリエステル型エラストマーとは、芳香族ポリエステル単位をハードセグメントし、非晶性ポリエステル単位をソフトセグメントとするポリエステルエラストマーである。ハードセグメント中の芳香族ポリエステル単位は、ポリエーテル型エラストマーと同様である。ソフトセグメント中の非晶性ポリエステル単位としては、ラクトンの開環重合体、又は、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの重縮合物に由来する単位が挙げられる。
【0103】
ポリエステル型エラストマーは、合成したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。ポリエステル型エラストマーの市販品としては、例えば、東洋紡績(株)製のペルプレンS−1002、S−2002等が挙げられる。
【0104】
〔(H)その他の添加剤〕
本発明において、金属複合部品の成形材料には、目的に応じて(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂、及び(C)リン系難燃剤とともに、(D)含窒素難燃助剤、(E)充填材、(F)フッ素系樹脂、及び(G)エラストマーの他の添加剤を含んでいてもよい。
【0105】
(H)その他の添加剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来、種々の樹脂に対して使用されている、種々の添加剤を用いることができる。(H)その他の添加剤の具体例としては、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、染料、顔料、潤滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤等が挙げられる。
【0106】
本発明における(H)その他の添加剤として、熱安定性向上、及びポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂とのエステル交換抑制の目的で特にリン系安定剤を添加することが好ましい。リン系安定剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、高分子材料用の安定剤として使用される公知の種々のリン含有化合物を使用することができる。本発明において好適に使用されるリン系安定剤の例としては、リン酸エステル化合物、亜リン酸エステル化合物、及びホスホン酸エステル化合物、リン酸金属塩化合物等が挙げられる。これらのリン系安定剤は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0107】
本発明において、金属複合部品の成形材料中での(A)から(G)の成分の含有量の合計量は、成形材料中70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、99質量%以上が最も好ましい。(A)から(G)の成分の含有量の合計量をかかる範囲とすることにより、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性に特に優れる金属複合部品を得やすい。
【0108】
[金属複合部品の製造方法]
次いで、金属複合部品の製造方法について、金属部品、成形方法の順に説明する。
【0109】
〔金属部品〕
本発明で使用する金属部品の材料は特に制限されず、例えば、アルミニウム、銅、鉄、マグネシウム、ニッケル、チタン等の金属;アルミニウム合金、燐青銅、ステンレス等の合金;異種の金属の貼合わせ体等が挙げられる。また、金属部品を構成する材料は金属に限定されず、表面に金属層を有する部品であればよい。表面に金属層を有する部品の例としては、ニッケル、クロム、金等の金属によりメッキ処理された部品等が挙げられる。
【0110】
金属部品の形状は、金属部品と金属複合部品の成形材料とを複合化できれば特に制限されず、板状、筒状、棒状等の種々の形状の部品を使用できる。本発明において用いる金属部品は、ネジ止めするためのボスや、補強のためのリブ、歯車等の部品を取り付けるための挿入孔等、電気・電子製品等の最終製品を組み立てるために必要な種々の構成要素を有していてもよい。金属部品と金属複合部品の成形材料とが接触する部分の形状は特に制限されず、四角形、円形、楕円形等の任意の形状を選択すればよい。また、金属部品と金属複合部品の成形材料とが接触する面の形状は特に制限されず、平面でも曲面であってもよい。金属部品と金属複合部品の成形材料とが接触する面は、単一の平面又は曲面には制限されず、金属板の平面又は曲面の内部に凸部や凹部を有していてもよい。金属部品と金属複合部品の成形材料とが接触する部分の面積は特に制限されない。
【0111】
金属部品は、金属複合部品の成形材料と接触する部分の少なくとも一部を予め粗化処理するのが好ましい。
【0112】
本発明において用いる金属部品の表面に微細な凹凸を形成する粗化処理の方法は特に限定されず、金属の材質や形状、要求特性等に応じて、従来から行われている金属粗化処理方法から適宜選択できる。金属表面に微細凹凸を形成する処理としては、例えばケミカルエッチングやアルミニウムへのアルマイト処理、液体ホーニングやサンドブラスト等の物理処理の他、無電解メッキ等による加工が挙げられる。ケミカルエッチングは、金属表面を化学薬品等で処理する方法であり、金属の種類や処理する目的に応じて種々の方法が知られ、様々な産業分野で利用されている。金属部品の粗化処理方法としてケミカルエッチングを行う場合、ケミカルエッチング方法は特に限定されず、従来の方法から何れも選択できる。ケミカルエッチング方法の具体例としては、例えば特開平10−96088号公報や特開平10−56263号公報に記載されている方法等が挙げられる。
【0113】
例えば金属部品の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金である場合、(1)酸性水溶液及び/又は塩基性水溶液による微細エッチング、又は(2)、金属部品表面に酸化皮膜を形成した後、酸化皮膜を除去し、次いでアンモニア、ヒドラジン、水溶性アミン化合物等により金属部品表面を処理する方法が好ましい。具体的には、特開2006−001216号公報記載の方法によって処理されたものを用いることができる。
【0114】
また、アルミニウムに対して施す一般的な表面処理法であるアルマイト処理によれば、酸を用いてアルミニウムを陽極で電気分解させることにより、数十nm〜数十μmオーダーの多孔質を形成することが可能である。また、表面に凹部を形成するばかりではなく、逆に凸部を形成する方法としてTRI処理等が知られている。
【0115】
このように、化学的、あるいは物理的、電気的な手法等を用いて、あるいはこれらを組み合わせることにより、金属部品の表面に数十nm〜数十μmサイズの凹凸を形成することで、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性をより優れたものとできる。
【0116】
〔成形方法〕
以上説明した金属部品を金型に載置した後、成形機により金属複合部品の成形材料を供給することにより、本発明の金属複合部品が製造される。金属複合部品の製造に用いる成形機は、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との複合成形体が形成できれば特に限定されず、射出成形機、押出し成形機、圧縮成形機等の、従来、金属複合部品の成形に使用される種々の成形機を使用できる。金属部品の金型への設置の容易さや装置の簡便さ、生産性に優れる点で射出成形機を用いるのが好ましい。
【0117】
金属複合部品を成形する際の金型の温度は特に制限されない。金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性を向上させるためには高温、例えば100℃を超える温度が好ましい。金属複合部品を量産する場合には、冷却時間が短く成形サイクルを短縮できることから、金型温度は、100℃以下が好ましく、50℃以上100℃以下がより好ましい。金型温度を100℃以下とする場合、一般的に金型の温度調節装置として使用される、温水を加熱媒体とする温度調節装置により金型の温度調節が可能となり、特別な温度調節装置の準備が不要となるとともに、金属複合部品の製造作業が安全となるという利点もある。
【0118】
金属複合部品の成形材料は、所定の量の(A)〜(H)の材料を含んでいれば特に制限されず、ポリブチレンテレフタレート樹脂混合物、及び、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のいずれも使用できる。ポリブチレンテレフタレート樹脂混合物の好適な例としては、(1)(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と所定の量の(C)〜(H)の成分を溶融混練して得たポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットと、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂のペレットとの混合物、(2)(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂のペレットと、(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂と所定の量の(C)〜(H)の成分を溶融混練して得たポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットとの混合物が挙げられる。
【0119】
本発明において用いる、金属複合部品の成形材料としては、均質な金属複合部品を製造しやすいことからポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いるのがより好ましい。
【0120】
[金属複合部品]
以上説明した材料及び方法により得られる本発明の金属複合部品は、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂との密着性に優れ、且つ難燃性に優れるものである。このため、本発明の金属複合部品は、例えば、種々の電気・電子製品の部品として好適に使用される。本発明の方法により得られた金属複合部品を用いる好適な電気・電子製品の例としては、携帯電話機、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム端末、電子書籍リーダー等の携帯端末、ノート型パーソナルコンピュータ、卓上型パーソナルコンピュータ等のコンピュータ、複写機、プリンタ、ファクシミリ等のOA機器が挙げられる。本発明の金属複合部品は、金属とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物とが複合化され、強度、軽量性、及び意匠性等に優れるための、携帯端末、コンピュータ、OA機器等の筐体として特に好適に使用される。
【実施例】
【0121】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0122】
<実施例1から5、及び比較例1から6>
実施例1から5、及び比較例1から6において、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の成分として、以下の材料を用いた。
【0123】
〔(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂〕
A1:固有粘度0.69dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂(ウィンテックポリマー株式会社製)
〔(B)ポリエチレンテレフタレート樹脂〕
B1:ポリエチレンテレフタレート樹脂(SKケミカル社製、融点258℃、固有粘度0.76dL/g)
なお、融点はJIS K7121に従い測定した。
〔(C)リン系難燃剤〕
C1:ジエチルフォスフィン酸アルミニウム(リン系難燃剤、Clariant社製、Exolit OP 1230)
〔(C’)難燃剤〕
C’1:リン酸エステル(大八科学株式会社製、PX−200)
C’2:臭素化ポリカーボネート(臭素系難燃剤、帝人化成株式会社製、FG−7500)
〔(D)含窒素難燃助剤〕
D1:メラミンシアヌレート(窒素系難燃助剤、DSM社製、Melapure50)
〔(D’)難燃助剤〕
D’1:三酸化アンチモン(アンチモン化合物、日本精鉱株式会社製、PATOX−M)
〔(E)充填材〕
E1:ガラス繊維(日東紡績株式会社製、CS3J648S)
〔(F)フッ素系樹脂〕
F1:テトラフルオロエチレン重合体(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、PTFE850A)
〔(G)エラストマー〕
G1:コアシェル系エラストマー(ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製、パラロイド ELX2311)
【0124】
表1に示す成分を、表1に示す含量(質量部)の比率でドライブレンドし、2軸押出機((株)日本製鋼所製TEX−30α)を用いて、シリンダー温度260℃、吐出量12kg/hr、スクリュー回転数130rpmの条件で溶融混練してポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを作成した。実施例及び比較例で得られたペレットを用いて試験片を作製し、以下の方法に従い密着性及び難燃性について試験した。実施例及び比較例のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の密着性及び難燃性に関する試験結果を表1に記す。
【0125】
<密着性>
〔試験片作成〕
以下、密着性の評価方法について図1及び図2を参照しながら説明する。射出成形機(ソディック社製、TR−40VR)を用いて、温水を加熱媒体に用いる温度調節装置により金型温度を80℃に設定して、金型内に金属部品を載置した後に、以下の条件にて、密着性評価用の試験片を射出成形した。なお、金属部品は、ケミカルエッチングの類として知られる“大成プラス社のNMT処理”を施し表面を粗化されたアルミニウム(A1050)の板を用いた。密着性評価用の試験片の形状は、図1に示す通りであり、20mm×50mm×厚さ1.6mmのアルミニウム板2とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物1とが、10mm×5mmの長方形の接触面を介して複合化されたものを用いた。
【0126】
【表1】
【0127】
〔密着性評価〕
まず、試験片の、アルミニウム板2とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物1との接触面の周囲のバリを除去した後、図2に示すように、試験片固定用治具4の凹部に試験片のアルミニウム板2部分を固定した。次いで、押し治具3を1mm/分の速度で降下させて試験のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物1を押し下げ、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物1とアルミニウム板2とを剥離させた時の最大荷重(N)を測定し、破壊の形態を観察した。また、密着性の評価には、(株)オリエンテック社製、テンシロンUTA−50KNを用いた。
【0128】
なお、比較例2及び4では、金属部品と樹脂とが密着しなかったため、密着性を評価できなかった。また、比較例6では、試験片を作成した際に離型不良を生じたため、密着性を評価できなかった。
【0129】
<難燃性>
試験片(0.8mm厚み)について、アンダーライターズ・ラボラトリーズのUL94規格垂直燃焼試験により実施した。
【0130】
【表2】
【0131】
実施例1から5により、成形材料における、ポリエチレンテレフタレート樹脂の含有量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂の合計質量に対して10質量%以上50質量%以下であり、リン系難燃剤(フォスフィン酸塩)の含有量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して10質量部以上100質量部以下である場合には、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性、及び難燃性に優れる金属複合部品が得られることが分かる。また、実施例4より、成形材料がエラストマーを含む場合、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性が特に優れる金属複合部品が得られることが分かる。
【0132】
比較例1によれば、ポリブチレンテレフタレート樹脂に対して、ポリエチレンテレフタレート樹脂を加えなければ、得られる金属部品は、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性、及び難燃性に劣るものであることが分かる。また、比較例2によれば、ポリブチレンテレフタレート樹脂に対してリン系難燃剤のみを加えても、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性が改良されないことが分かる。
【0133】
比較例3によれば、ポリブチレンテレフタレート樹脂に対して、好適な量のポリエチレンテレフタレート樹脂を用いても、リン系難燃剤の使用量がポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂の合計量100質量部に対して100質量部を超える場合には、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性に優れる金属複合部品が得られないことが分かる。また、比較例6によれば、ポリブチレンテレフタレート樹脂に対して、好適な量のリン系難燃剤を用いても、ポリエチレンテレフタレート樹脂の使用量がポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂の合計質量に対して50質量%を超える場合には離型性の問題から、良好な品質の金属複合部品が得られないことが分かる。
【0134】
比較例4及び5によれば、ポリブチレンテレフタレート樹脂に対して、好適な量のポリエチレンテレフタレート樹脂を用いても、リン酸エステル(難燃剤)を用いたり、臭素系難燃剤とアンチモン化合物(難燃助剤)とを組み合わせて用いたりした場合には、金属部品とポリブチレンテレフタレート樹脂組成物との密着性に優れる金属複合部品が得られないことが分かる。
【符号の説明】
【0135】
1 ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物
2 アルミニウム板
3 押し治具
4 試験片固定用治具
図1
図2