特許第5752123号(P5752123)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752123
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】キトサン組織被覆材
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/16 20060101AFI20150702BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   A61L15/01
   A61L15/03
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-525885(P2012-525885)
(86)(22)【出願日】2009年9月1日
(65)【公表番号】特表2013-503654(P2013-503654A)
(43)【公表日】2013年2月4日
(86)【国際出願番号】EP2009006323
(87)【国際公開番号】WO2011026498
(87)【国際公開日】20110310
【審査請求日】2012年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】512050645
【氏名又は名称】メドヴェント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】モンテネグロ,リヴェリーノ
(72)【発明者】
【氏名】フライアー,トーマス
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−347999(JP,A)
【文献】 特開2008−161502(JP,A)
【文献】 特表2005−517043(JP,A)
【文献】 特開昭59−088424(JP,A)
【文献】 特開平11−146909(JP,A)
【文献】 Carbohydrate Polymers, Vol.67 p.640-644 (2007)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の組織(1)に接触して適用されるための組織被覆材料(6)であって、
前記組織被覆材料の少なくとも50重量%がアセチル化度が2.5%未満の天然キトサンであり、
前記組織被覆材料(6)の固体相の水分取込み能が、100重量%未満であることを特徴とする、組織被覆材料(6)。
【請求項2】
前記組織被覆材料(6)が、固体またはゲル様フィルムの形態で存在することを特徴とする、請求項1に記載の組織被覆材料(6)。
【請求項3】
前記組織被覆材料(6)の少なくとも70重量%が、脱アセチル化天然キトサンであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の組織被覆材料(6)。
【請求項4】
前記天然キトサンのアセチル化度が、2%以下であることを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の組織被覆材料(6)。
【請求項5】
前記脱アセチル化天然キトサンが、少なくとも部分的にキトサン塩の形態で存在することを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の組織被覆材料(6)。
【請求項6】
前記組織被覆材料(6)が、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の組織被覆材料(6)。
【請求項7】
前記組織被覆材料(6)のpHが、6.3よりも低いことを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の組織被覆材料(6)。
【請求項8】
前記組織被覆材料(6)が透明であることを特徴とする、請求項1〜請求項のいずれかに記載の組織被覆材料(6)。
【請求項9】
前記組織被覆材(9、11)が第1の層を含み、その層が請求項1〜請求項のいずれかに記載の組織被覆材料(6)で形成され、もう一つの層(10)が別の材料で形成されることを特徴とする、組織被覆材(9、11)。
【請求項10】
前記もう一方の層(10)が、支持体の働きをすることができることを特徴とする、請求項に記載の組織被覆材(9、11)。
【請求項11】
前記もう一方の層(10)が、少なくとも部分的な防湿層の働きをすることができることを特徴とする、請求項または請求項10に記載の組織被覆材(9、11)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の組織に接触して適用されるための組織被覆材料に関する。本発明はさらに、組織被覆材料、特に液体または固体相のものに関する。さらに、本発明は患者の組織を処置する方法、組織被覆材料を含むキット、および抗細菌特性をもつポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多糖キトサンは、キチンの少なくとも部分的なN−脱アセチル化誘導体である。キチンは、節足動物の外骨格、殻、甲殻類および昆虫の外殻において広く見出すことができる。キチンは通常そのような天然の源に由来する。キトサンは、一般に、キチンの加水分解による合成によって調製されるが、それは直接的に、例えばキトサンが生じるある種の真菌から天然に導くこともできる。これら2つの多糖を区別するために、希酸中のキチンとキトサンの溶解性の違いがよく使用される。キトサンの可溶型は、0%〜約60%の間のアセチル化度(DA)を有することができ、その上限は加工条件、分子量、および溶媒特性などのパラメータによって決まる。酸性の水性媒体に可溶性であるものの、キトサンは、6.3よりも高いpHで沈殿する。
【0003】
キチンもキトサンも、その生体適合性、生分解性およびグリコサミノグリカンとの構造的類似性のために、生物医学的応用に有望なポリマーである。キチンおよびキトサンの潜在的応用の包括的概説には、例えば、Shigemasa and Minami,「Applications of chitin and chitosan for biomaterials」,Biotech.Genetic.Eng.Rev.1996,13,383;Kumar,「A review of chitin and chitosan applications」,React.Funct.Polym.2000,46(1),1;およびSingh and Ray,「Biomedical applications of chitin,chitosan and their derivatives」,J.Macromol.Sci.2000,C40(1),69を参照されたい。
【0004】
キチンおよびキトサンは、創傷治癒への適用において特に有望であると考えられていて、この対象に関する初期の科学報告書は、Prudden et.al.が、「The discovery of a potent pure chemical wound−healing accelerator」,Am.J.Surg.1970,119,560において、キチン粉末のヒト創傷への適用の成功を記載した1970年にさかのぼる。創傷治癒の加速の主な要因は、新しい創傷および回復期創傷の治癒において豊富に利用することのできる、リゾチームによる酵素分解に起因してキチンから放出される(D−グルコサミンとは対照的に)N−アセチル−D−グルコサミンの存在であると報告された。
【0005】
ポリ(N−アセチル−D−グルコサミン)、すなわちキチンの創傷治癒促進物質としての使用は、米国特許第US3,632,754号に開示されている。米国特許第US4,532,134号は、キトサン溶液、粉末、フィルムおよびマットの創傷への適用を開示する。特許請求された方法は、42%〜100%の間で脱アセチル化したキトサンを求める。該材料がイヌの創傷に適用される場合に許容される結果を示すが、該材料がラットの創傷を覆うために使用される場合に早期の創傷治癒の妨害が観察される、78%〜92%脱アセチル化キトサンを用いる動物実験が開示される。
【0006】
米国特許第5,902,798号および米国特許出願第2001/0056079号では、25%未満のアセチル化度が求められる。16%アセチル化キトサンを適用する実験では、キトサン/ヘパリン材料と比較して、ヒト皮膚を用いるインビトロモデルにおいて、低い刺激の細胞増殖および創傷治癒が見出された。
【0007】
英国特許第2358354号は、12%〜30%の間のアセチル化度をもつ、少なくとも80重量%のキトサンを含む可撓性ポリマーフィルムを教示する。非処置の創傷と比較してわずかに高い率の創傷治癒が見出された。エピクロロヒドリン架橋剤またはシリコンコーティングの使用を必要とする、相対的に弱い機械的性質が、この先行技術材料の欠点をなす可能性がある。この文書はまた、創傷の治癒後に生理食塩水溶液中でフィルムを洗い落とすことも示唆する。
【0008】
Azad et.al.,「Chitosan membranes as a wound−healing dressing:Characterization and clinical application」,J.Biomed.Mater.Res.2004,69B,216は、25%アセチル化キトサンのフィルムおよびメッシュ(有孔フィルム)の加工のための使用を開示する。著者らは、キトサンフィルムが、皮膚移植を受けている患者においてフィルムの下の血餅形成の結果として創傷治癒障害を引き起こし、一方、メッシュの使用が、より効果的な血液の除去をもたらし、その結果良好な上皮化を伴う、瘢痕形成のない、より迅速な治癒をもたらしたことを見出した。
【0009】
米国特許第US7,482,503号では、重度の出血の出血制御創傷被覆材として使用するためのキトサン酢酸塩形態(a chitosan acetate foam)が記載されている。キトサンは、少なくとも70%脱アセチル化していることが求められ、実施例では、85%〜93%の間の脱アセチル化度が使用されている。
【0010】
米国特許出願第2005/042265号は、皮膚修復のためのヒドロゲルを開示し、該ヒドロゲルは最大5%のキトサンを含有する。キトサンのアセチル化度は、40%以下、特に2%〜6%の間であることが求められる。最後に、国際特許出願国際公報第2008/128567号は、少なくとも部分的にキトサンでできている創傷被覆材を含む医療用品を開示している。開示される最も低いアセチル化度は、3%である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、患者の組織に接触して適用されるための改良された組織被覆材料、改良された液体の組織被覆材料、および改良された組織被覆材を提供することである。本発明は、患者の組織を処置するための改良された方法、組織被覆材料を含む新規なキット、および抗細菌特性をもつポリマーの新規な使用を提供することをさらに目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この問題は、患者の組織に接触して適用されるための組織被覆材料を提供することによって解決され、この際、組織被覆材料の主成分は、脱アセチル化天然キトサンである。さらに、この問題は、患者の組織に接触して適用されるための液体の組織被覆材料を提供することによって解決され、該組織被覆材料は、水性混合物であり得、この際、水以外の混合物の構成成分(群)の主成分は、脱アセチル化天然キトサンである。
【0013】
この問題はまた、本発明に従う組織被覆材料で形成される層である第1の層、および別の材料で形成されるもう一つの層を含む組織被覆材を提供することによって解決される。さらに、この問題は、患者の組織を処置する方法によって解決され、この際、組織被覆材料は、患者の組織に接触して適用され、該組織被覆材料の主成分は、脱アセチル化天然キトサンである。この問題は、患者の組織を処置する方法を提供することによってさらに解決され、この際、液体の組織被覆材料は、患者の組織に接触して適用され、該組織被覆材料は水性混合物であり、また、水以外の混合物の構成成分(群)の主成分は脱アセチル化天然キトサンである。
【0014】
この問題はまた、患者の組織を処置する方法によっても解決され、該方法は、該組織被覆材料が脱アセチル化キトサンを含む、組織被覆材料を組織に接触させる段階、および分離溶媒を組織被覆材料に適用する段階を含む。さらに、この問題は、組織被覆材料、キトサンを含む該組織被覆材料、および分離溶媒を含むキットを提供することによって解決される。
【0015】
最後に、この問題は、患者の組織の局所に限定される抗細菌処置のための抗細菌特性をもつポリマーの使用によって解決される。
【0016】
本発明の状況において、組織被覆材料およびキトサンの種類(例えば一般的なキトサン、脱アセチル化キトサン、天然キトサンまたは脱アセチル化天然キトサン)に関して「主成分」という表現は、それぞれの種類のキトサンが、組織被覆材料の少なくとも50重量%を構成することを意味する。したがって、例えば組織被覆材料が組織に適用される固体またはゲル様のフィルムとして提供される場合、このフィルムは、少なくとも50重量%のそれぞれの種類のキトサンで構成されていることが必要とされる。液体の組織被覆材料の場合、水性混合物中の水以外の構成成分(群)に関して「主成分」という表現は、水以外の全ての構成成分の組合せの少なくとも50重量%が、それぞれの種類のキトサンでなければならないことを意味する。また、以下でさらに考察されるように、組織被覆材は、組織被覆材料で形成される第1の層、および別の材料で形成されるもう一つの層を含むことができ、このもう一方の層は、支持体の働きをする。そのような場合、上記定義によれば、少なくとも50重量%がそれぞれの種類のキトサンで構成されていることが必要とされるのは、第1の層であって支持体層ではない。組織被覆材料が組織から吸収する物質、例えば創傷からの浸出液などは、組織被覆材料の成分とみなされないことに注意されたい。
【0017】
本発明の状況において、用語「天然キトサン」とは、ポリ(N−アセチル−D−グルコサミン−コ−D−グルコサミン)共重合体またはポリ(D−グルコサミン)ホモポリマーである、定義済みの化学物質であるキトサンをさす。あらゆる架橋されたかまたは別の方法で化学修飾されたキトサンが、天然キトサンとは異なる特性を有するキトサン誘導体とみなされる。本発明の状況において、用語「天然キトサン」には、キトサン塩基と、溶解されたかまたは溶解されていないキトサン塩の形態のキトサンの両方が含まれる。本発明の状況において、「キトサン」と呼ばれる場合、一般に、これは天然キトサン、あるいは架橋された、および/または別の方法で修飾されたポリ(N−アセチル−D−グルコサミン−コ−D−グルコサミン)共重合体またはポリ(D−グルコサミン)ホモポリマーのあらゆる誘導体であり得る。
【0018】
本発明の状況において、用語「脱アセチル化キトサン」とは、キトサンのアセチル化度(DA)が2.5%未満であることを意味する。DAは、例えば、Lavertu et al.,「A validated H NMR method for the determination of the degree of deacetylation of chitosan」,J Pharm Biomed Anal 2003,32,1149に開示されるH NMR分光法を用いて得ることができる。本発明の状況において「脱アセチル化天然キトサン」とは、天然であり、上記定義に従って脱アセチル化されてもいるキトサンをさす。
【0019】
本発明に従う組織被覆材料は、創傷被覆材料として有利に用いることができる。特定の態様では、本発明は、有意に加速された創傷治癒の速度は、脱アセチル化した、すなわち、N−アセチル−D−グルコサミンサブユニットを本質的に含まない天然キトサン材料を適用することにより実現することができるという本発明者らの発見を利用する。例えば米国特許第3,632,754号(前掲)に記載されるような、創傷治癒への適用におけるD−グルコサミンのN−アセチル化形態に起因する重要性を考えると、この知見は意外である。さらに、例えば、Izume et.al.,「A novel cell culture matrix composed of chitosan and collagen complex」,in:Chitin and chitosan,Amsterdam 1989,653において、非常に低いアセチル化度のキトサンは、非常に高い細胞接着に起因して細胞増殖を阻害するので、細胞増殖抑制特性を有し得ることが示唆されている。
【0020】
したがって、本発明によって、創傷治癒の加速などの改良された創傷治癒特性を実現することができる。本発明のその他の達成できる利点としては、創傷部位での十分な湿度の維持、浸出液および毒素の吸収、適切なガス交換、および断熱が挙げられる。
【0021】
また、一部の態様において、本発明は、キトサンが酸性の水性媒体に溶解可能であるという事実を利用する。用語「溶解可能な」および「溶解」とは、水性環境での溶解度に起因して分子量が減少することのない(すなわちポリマー鎖長が減少することのない)固体のキトサン形態の質量減少のプロセスをさす。これは、キトサンの解重合に起因する分子量減少のプロセスである「分解」と区別されるものである。有利には、溶解は、組織被覆材料の除去を促進することができる。本発明によって、組織被覆材料が部分的に、またはさらに完全に溶解可能であることを実現することができる。
【0022】
有利には、本発明に従う組織被覆材料は、特に脱アセチル化天然キトサンの使用によって、高い生体適合性および生物活性を有することができる。対照的に、非共有的または共有的なキトサンの架橋は、生体材料、つまりアミン基の活性のある官能基の封鎖をもたらし得る。したがって、架橋されたかまたは化学修飾された先行技術のキトサンは、制限された生体適合性ならびに機能性の喪失、例えば細胞接着および増殖、抗細菌特性、止血特性、ならびに部分的または完全に生物溶解する(biodissolve)かまたは生物分解して無毒の成分となる能力の喪失の危険性を有する。
【0023】
さらに有利には、本発明によって、有毒な化合物を本質的に含まない組織被覆材料を提供することができる。本発明は、全身作用がなく局所作用だけを伴う天然のポリマー抗生物質として、脱アセチル化天然キトサンの抗生物質の性質を利用することにより、創傷感染の危険性を低下することができる。さらに、脱アセチル化天然キトサンの低いDAのおかげで、組織被覆材料を、組織の内殖およびポリマーマトリックスの成長する組織への望ましくない接着の防止に寄与し得る、実際的に非リゾチーム生分解性の形態で適用することができる。また、組織被覆材の除去を促進することができ、創傷被覆材への接着が除去されることに起因する再生組織の刺激または損傷を回避することができる。
【0024】
本発明に従う液体の組織被覆材料は、有利には、脱アセチル化天然キトサンがかかる酸性の水性媒体に可溶性であるという事実を利用することができる。
【0025】
有利には、本発明に従う分離溶媒を適用することにより、組織被覆材を付着させる組織の刺激または損傷を回避することができる。
【0026】
本発明に従う抗細菌特性をもつポリマーの使用の達成可能な利点は、全身の抗細菌作用を回避することができる、すなわち、かかる処置が必要でない、および/または望ましくない患者の身体の領域の抗細菌処置を回避することができることである。したがって、本発明は、副作用を低下させ、患者の迅速な回復に寄与することができる。
【0027】
単独でまたは組み合わせて適用することのできる本発明の好ましい特徴は、従属クレームおよび以下の説明において考察される。
【0028】
好ましくは、組織被覆材料は、固体フィルムまたはゲル様フィルムの形態で存在する。好ましいフィルムは、滑らかな表面を有し、好ましくは平均粗さRは1μm(マイクロメートル)以下、より好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。有利には、滑らかな表面は、組織への機械的定着(mechanical anchoring)の形成を減らすことができ、それにより、被覆材の除去を容易にする。一般に、フィルムは、5μm〜500μm(マイクロメートル)の間の厚さ、好ましくは10μm〜100μmの間の厚さである。それは、処置する組織、例えば創傷などと、好ましくは一部の周囲組織も同様に覆うために十分な表面積を有する。
【0029】
好ましくは、少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の組織被覆材料は、脱アセチル化キトサン、好ましくは脱アセチル化天然キトサンである。好ましい組織被覆材料は、脱アセチル化キトサン、好ましくは脱アセチル化天然キトサンから完全になる。
【0030】
本発明のある種の実施形態では、組織被覆材料は、液体の水性混合物として存在する。好ましくは、水以外の混合物の構成成分(群)の少なくとも70重量%は、脱アセチル化キトサン、好ましくは脱アセチル化天然キトサンである。特に好ましい混合物は、本質的に脱アセチル化キトサン、好ましくは脱アセチル化天然キトサン、および水のみからなる。好ましい混合物は酸性である。脱アセチル化天然キトサンの濃度は、好ましくは15重量%未満、より好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満である。適用には、液体分散体を組織に噴霧するかまたはブラシで塗り、その後に分散媒を蒸発させることが好ましい。結果として、固体またはゲル様フィルムが生じる。一般に、フィルムは1μm〜50μm(マイクロメートル)の間の厚さ、好ましくは10μm〜20μmの間の厚さである。それは、処置する組織、例えば創傷などと、好ましくは一部の周囲組織も同様に覆うために十分な表面積を有する。
【0031】
本発明に従う好ましい組織被覆材料において、脱アセチル化キトサンの、または脱アセチル化天然キトサンのDAは、2%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下である。有利には、そのような極めて低いアセチル化度は、本発明の創傷治癒特性をさらに改良することができる。また、生分解をさらに抑制することができ、組織の内殖および組織被覆材料の過剰な接着が回避される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、それぞれの種類のキトサン、好ましくは脱アセチル化天然キトサンは、少なくとも部分的にキトサン塩の形態で存在する。本発明のこの実施形態の達成可能な利点は、組織被覆材料が組織にうまく付着することである。それによって、組織被覆材料が尚早に組織から剥離することを避けることができる。本発明のこの実施形態は、有利には、キトサン塩が中性のpHの水性溶媒に可溶性であるという事実を利用する。したがって、湿ったまたは事前に湿らせた組織は、組織被覆材料の表面を液化することができ、組織との耐久性のある接触をもたらす。好ましい塩は、塩酸などの無機酸中、ならびに、2個〜12個の炭素原子および1〜5の間の第一pKa値を有する一塩基または多塩基有機酸、例えば酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、マンデル酸、シュウ酸、酒石酸、アスコルビン酸などの群から選択される有機酸中のキトサンの溶解から生じるものである。本発明の代替実施形態では、それぞれの種類のキトサン、好ましくは脱アセチル化天然キトサンは、キトサン塩基の形態で存在する。
【0033】
組織被覆材料は、本発明の一部の実施形態において、それぞれの種類のキトサン、好ましくは脱アセチル化天然キトサンに加えてその他の成分を含む、混合物または化合物材料である。好ましい実施形態では、組織被覆材料は、少なくとも1つの薬剤活性のある、および/または生物活性のあるさらなる成分を含む。適した生物活性のあるさらなる成分は、例えば、タンパク質、ペプチドまたはその誘導体、核酸またはその誘導体、薬物、例えば抗生物質または抗炎症剤などとして活性のある低分子量化合物、または自然免疫系のアゴニストもしくはアンタゴニスト、または細胞の少なくとも1つのサブタイプの増殖を刺激または分化させるための刺激もしくは分化増殖因子、または創面から抽出される特定の成分に対する親和性をもつ樹脂、あるいは、光吸収性、蛍光性または燐光色素もしくは光反射性粒子などの装飾的機能をもつ、溶解もしくは分散した化合物もしくはポリマーであり得る。あるいは、またはそれに加えて、組織被覆材料は、生体細胞を含み得る。
【0034】
好ましい組織被覆材料の水分取込み能は、100重量%未満、より好ましくは80重量%未満である。それによって、創傷治癒に好ましい湿度を創傷部位で維持することが有利に達成可能である。好ましくは、組織被覆材料の水分取込み能は、25%よりも大きい、より好ましくは50%よりも大きい。有利には、本発明のこの実施形態は、浸出液および毒素を吸収するのに適している。発明の特に好ましい実施形態では、組織被覆材料の水分取込み能は、65%〜75%の間である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、組織被覆材料のpHは、6.3よりも低く、好ましくは6よりも低く、特に好ましくは5〜5.5前後である。好ましいpHは、4.0よりも高く、より好ましくは4.5よりも高い。本発明のこの実施形態の達成可能な利点は、pHが健康な皮膚の表面のそれに近く、それによって組織被覆材料が付着している組織の刺激または損傷が回避される。本発明のこの実施形態は、好ましくは組織被覆材料の外用にあてはまる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、組織被覆材料のpHは、8.5よりも低く、好ましくは8よりも低く、特に好ましくは7〜7.5前後である。好ましいpHは、6.0よりも高く、より好ましくは6.5よりも高い。本発明のこの実施形態の達成可能な利点は、pHが健康な組織のそれに近く、それによって組織被覆材料が付着している組織の刺激または損傷が回避される。本発明のこの実施形態は、好ましくは組織被覆材料の内服用にあてはまる。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、組織被覆材料は透明である。有利には、これにより、医師による組織被覆材料で処置される創傷の検査をより容易にすることができる。一部の実施形態では、材料は、透明な固体フィルムである。その他では、材料は、組織に適用すると透明なフィルムを形成する分散体である。
【0038】
本発明に従う好ましい組織被覆材は、第1の層を含み、その層は、組織被覆材料、および別の材料から形成されるもう一つの層で形成され、このもう一方の層は支持体の働きをする。特に、支持体は、有利には組織被覆材料の組織からの早すぎる分離を防ぐのに役立ち得る。支持体は、好ましくは組織と接触している面と反対の、組織被覆材料の層の面に位置する。好ましくは、支持体は組織被覆材料に隣接している。キトサン塩基は、一般にキトサン塩含有組織被覆材料ほどうまく組織に付着しないので、本発明に従う支持体は、それぞれの種類のキトサン、好ましくは脱アセチル化天然キトサンが、組織被覆材料中にキトサン塩基の形態で提供される場合に特に有利である。支持体は、例えば織物であり得る。支持体は、例えば綿などの天然材料または天然もしくは合成ポリマーであり得る。適したポリマーとしては、生分解性ポリマー、例えばポリエステル、ポリオルソエステル、ポリカーボネート、ポリ酸無水物、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリリン酸エステル、多糖、ポリペプチド、ならびにこれらのポリマーに基づく誘導体、共重合体、およびブレンドが挙げられる。また、適したポリマーとしては、生体溶解性(biodissolvable)ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、多糖、ポリペプチド、ならびにこれらのポリマーに基づく誘導体、共重合体、およびブレンドが挙げられる。さらに、支持体は、非生分解性/非生体溶解性ポリマー、例えばシリコーン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタラート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、多糖、ポリペプチド、ならびにこれらのポリマーに基づく誘導体、共重合体、およびブレンドからなってよい。
【0039】
本発明に従う好ましい組織被覆材は、第1の層を含み、その層は、組織被覆材料、および別の材料から形成されるもう一つの層で形成され、このもう一方の層は少なくとも部分的な防湿層の働きをする。言い換えれば、もう一方の層は、本発明に従う組織被覆材料での組織の処置の間に組織被覆材料中の水分の蒸発を防ぐか、または少なくとも遅延させることができる。もう一方の層は、好ましくは組織と接触している面と反対の、組織被覆材料の層の面に位置する。好ましくは、もう一方の層は、組織被覆材料に隣接している。本発明はまた、支持体層と、少なくとも部分的な防湿層の働きをするもう一つの層の両方を有する組織被覆材も包含する。当然、両方の機能、つまり支持体の機能と少なくとも部分的な防湿層の機能は、単一のその他の層で実現することもできる。もう一方の層は、例えばシリコーンまたは上に列挙されるポリマーの群からの別のポリマーまたはポリマー組成物でできていてよい。一般に、もう一方の層は、10μm〜1000μmの間、好ましくは50μm〜500μmの間の厚さである。本発明の一部の実施形態では、もう一方の層は孔が開いている。穿孔の穴は、一般に直径が10μm〜1500μmの間、好ましくは50μm〜1000μmの間である。
【0040】
本発明に従う組織を処置する好ましい方法では、組織被覆材料は、処置する組織だけでなく処置する組織の周囲の組織にも接触する。組織被覆材料は、外傷に使用することが好ましいが、それは体内の創傷(internal wound)にも適用することができる。好ましい方法では、創傷被覆材は、外科手術の間の出血を制御するための止血薬として内部に使用されるか、または内出血を引き起こす傷害または疾患の処置において適用される。別の好ましい方法では、創傷被覆材は、ポリマー抗生物質としての脱アセチル化天然キトサンの能力を利用することにより感染を予防または制限するために内部に使用される。別の好ましい方法では、創傷被覆材は、到達または処置の困難な身体の領域、例えば開口部、生殖器部位、または空気への曝露が制限されるために創傷治癒を遅延することのできる身体の部分に使用される。特に好ましい方法では、創傷被覆材は、異物材料および従来の創傷被覆材の適用に感受性の高い部位、例えば粘膜などに適用される。材料は、創傷の中または上に適用することができる。
【0041】
第1段階で組織被覆材料を組織に接触させ、第2段階で分離溶媒を組織被覆材料に適用して少なくとも部分的に組織被覆材料を溶解させる、患者の組織を処置する本発明に従う方法においてキトサンの溶解度が利用される。有利には、分離溶媒を組織被覆材料に適用することにより、少なくとも一部の組織被覆材料を溶解させることができる。それによって、組織被覆材料を組織から除去することが容易となり得る。組織被覆材料を少なくとも部分的に溶解させる段階では、組織被覆材料の少なくとも一部のキトサン成分が溶解されることが好ましい。
【0042】
分離溶媒と一緒に使用されるキトサンは、たとえ本発明が、キトサンがキトサン誘導体である方法も包含するとしても、好ましくは脱アセチル化天然キトサンである。好ましくは、脱アセチル化キトサン、より好ましくは脱アセチル化天然キトサンは、組織被覆材料の主成分であり、より好ましくは組織被覆材料は、上記の実施形態の1つに記載される材料である。
【0043】
本発明に従う好ましいキットは、患者の組織に接触して適用されるための組織被覆材料を含み、組織被覆材料はキトサンを含む。好ましくは、組織被覆材料中のキトサンは、脱アセチル化キトサンである。好ましくは、組織被覆材料中のキトサンは、天然キトサン、より好ましくは脱アセチル化天然キトサンである。好ましくは、キトサン、より好ましくは脱アセチル化キトサン、より好ましくは脱アセチル化天然キトサンは、組織被覆材料の主成分であり、より好ましくは組織被覆材料は、上記の実施形態の1つに記載される材料である。本発明に従うキットの一部の実施形態では、組織被覆材料の層に加えて、例えば支持体として、または少なくとも部分的な防湿層として、上記のようなもう一つの層が提供され得る。さらに、本発明に従う好ましいキットは、組織被覆材料を少なくとも部分的に組織から剥離させるために、少なくとも部分的に組織被覆材料を溶解させるための分離溶媒を含む。キットに提供される分離溶媒の量は、キットに提供されるキトサンの量の1重量あたり少なくとも5倍、より好ましくはキットに提供されるキトサンの量の1重量あたり少なくとも50倍である。十分な量の分離溶媒を提供することにより、組織被覆材料溶液のpHが特定の閾値に入ることを回避することができる。分離溶媒は、例えば密封瓶または使い捨てのピペット中に、あるいは分離溶媒を浸したガーゼ、スポンジまたはゲルを用いて提供することができる。
【0044】
好ましい分離溶媒としては、蒸留水、塩化ナトリウム水溶液などのイオン化合物の水溶液、酢酸/酢酸塩緩衝溶液などの緩衝溶液、ならびにグルコース水溶液などの非イオン化合物の水溶液である。分離溶媒の好ましいpHは、7前後またはそれよりも低く、より好ましくは6.5よりも低く、より好ましくは6よりも低い。分離溶媒の好ましいpHは、好ましくは3.5より高く、より好ましくは4よりも高く、より好ましくは4.5よりも高い。
【0045】
抗細菌特性をもつポリマーの本発明に従う使用では、ポリマーは、本発明に従う組織被覆材料の形態で提供されることが好ましい。好ましくは、該材料は、固体またはゲル様であるか、または組織に適用した場合に固体またはゲル様の稠度をとる。本発明のこの実施形態は、ポリマーが存在する、したがって抗生物質活性が起こる部位が、抗生物質活性が局所にちょうど存在するために、よく制御され得るという事実を利用する。
【0046】
本発明に従う組織被覆材料は、有利には、急性創傷、慢性創傷、および熱傷またはその他の種類の創傷に適用することができる。また、本発明に従う組織被覆材料は、皮膚病、例えば足白癬病および乾癬に罹患している組織に適用することもできる。組織被覆材料は、創傷を覆うもの(wound coverings)、例えばバンドエイド、ガーゼ、フィルムおよびフォームに、ならびに支持を助けるもの(support aids)、例えば包帯、サポートタイツおよびギプス包帯に適用することができる。本発明に従う組織被覆材料および組織被覆材は、一般に、切り傷および擦り傷、鼻出血、重度の出血している創傷、ならびに外傷および体内の創傷を処置するために有利に適用することができる。したがって、本発明は、外科手術が患者に行われている場合に役立ち得る。また、本発明は、挫蒼、剃刀負けおよび虫刺されを処置するために、ならびにフェイスマスクおよびピーリングなどの化粧品用途において、有利に適用することもできる。
【0047】
本発明に従う組織被覆材料は、特に、以下の有利な特性:透明性;適用する組織への接着性;ガス、特に酸素透過性;局所に限定される抗生物質特性;湿度調節;および中程度のpHでの溶解性のうちの1つまたは組合せを提示することができる。該材料は、処置される組織の細胞増殖を阻害するか、あるいは、促進することができる。また該材料は、処置した組織の内部および外部からの細菌感染を防ぐための障壁としての、ならびに、機械的保護としての働きをすることもできる。特に、該材料は表在性の創傷、病変、感染のリスクのある擦過傷、および熱傷を保護し覆うことができる。本発明に従う組織被覆材料および組織被覆材は、従来の創傷被覆材の効果がないと分かるか、または少なくとも効果が低いと分かる場合に、例えば潰瘍組織、潰瘍性となりやすいウイルスに起因する創傷、粘膜組織、生殖器部位、および体腔の治療に、保護をもたらすことができる。
【0048】
本発明を、以下の概略図を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】購入時の天然キトサンのH NMRスペクトルを示す図である。
図2】さらなる加水分解段階の後に本質的に脱アセチル化した天然キトサンのH NMRスペクトルを示す図である。
図3】組織培養ポリスチレン対照(PS=100%)に対する、様々なアセチル化度のキトサン材料上でのケラチノサイトの細胞生存力を説明する図である。
図4】酢酸塩緩衝溶液に浸したガーゼを適用することによる、本発明に従う組織被覆材料の制御された溶解を説明する図である。
図5】本発明に従う液体の組織被覆材料を適用した創傷を概略的に説明する図である。
図6】本発明に従う固体の組織被覆材料を適用した創傷を概略的に説明する図である。
図7】本発明に従う無孔創傷被覆材を適用した創傷を概略的に説明する図である。
図8】本発明に従う有孔創傷被覆材を適用した創傷を概略的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
H NMR分光法>
以下の実施例で出発物質として用いるキトサンは、Cognis(ドイツ国)より細かいフレークの形態で入手した。アセチル化度(DA)は、H NMR分光法により決定した。図1は、この市販のキトサンから得たH NMRスペクトルを示す。図2は、以下にさらに説明されるように、市販の製品に適用したさらなる加水分解段階の後に脱アセチル化したキトサンから得た対応するH NMRスペクトルを示す。いずれの場合も、キトサンは、約0.5%(w/v)のキトサン濃度のDO中0.25%DClの混合物中で分析した。Bruker AC200スペクトロメーターを用いてスペクトルを記録した。NMR化学シフト(δ、単位はppm)は、HDOのシグナル(δ=4.8ppm)を基準とした。D−グルコサミンサブユニットのH2−H6に関連するピーク下の積分面積と、メチル基のそれをと比較することにより計算されるDAは、購入時の天然キトサンについて14.5%、および脱アセチル化天然キトサンについて1.5%と決定した。
【0051】
<低DAキトサンの合成>
さらなる加水分解のために、供給業者であるCognisから入手した50g(グラム)のキトサンフレークをガラス容器に入れ、500gの45%水酸化ナトリウム水溶液を添加した。ガラス容器をよく振盪して成分を混合し、100℃のオーブンの中に2時間入れた。次に、それをオーブンから取り出し、500ml(ミリリットル)の蒸留水を添加した。混合物をガラスフリットで濾過した。次に、キトサンを蒸留水で濾液のpHが6.5に達するまで洗浄し、100℃で4h(時間)乾燥させた。次に、この加水分解処理を反復し、H NMR分光法で測定して1.5%のDAを有する、42gの脱アセチル化天然キトサンを得た。
【0052】
<低DAキトサンでの細胞生存度>
ヒトHaCaTケラチノサイトを、0.2ng/ml(ナノグラム/ミリリットル)rEGFおよび25μg/ml(マイクログラム/ミリリットル)ウシ下垂体抽出物を添加した血清フリー培地(Gibco)中で培養した。カルシウム濃度を0.02mMに調節し、pHを7.2〜7.4に調節した。細胞を、20ml培地あたり1×10細胞の密度で播種し、10%COを含有する空気中で37℃にてインキュベートした。細胞を週に1回継代し、継代20〜25を分析に用いた。
【0053】
それぞれ1.5%、4.0%、および14.5%のDAを有するキトサンフィルムを、24ウェル細胞培養プレートに入れ、HaCaTケラチノサイトを5×10細胞/cmの密度で播種し、2日間培養した。MTSアッセイ(Promega)を用いて細胞生存力を決定した。細胞でのMTSインキュベーションの4時間後、490nmでの吸光度をELISAプレートリーダーにより測定し、対照(細胞を含まない)のそれから減算して補正した吸光度を得た。各々のDAの5つのサンプルを試験した。図3は、3つのサンプルおよびポリスチレン(PS)を用いる対照についての490nmでの相対吸光度α(PS=100%)を示す。
【0054】
<組織被覆材料の溶液の調製>
7.5gの、このようにして得たDAが1.5%の天然キトサンを、24時間穏やかに振盪することによって500mlの0.5%酢酸水溶液に溶解した。溶液の一部を、最初にガラス繊維フィルタ(孔径約1μm)に通し、次に滅菌用の0.22μmフィルタに通して濾過し、その結果本質的に脱アセチル化天然キトサンから完全になる組織被覆材料の溶液を得た。以下、この材料を組織被覆材料Aと呼ぶ。
【0055】
<固体フィルム型組織被覆材料の第1の実施例の調製>
2部の各々144mlの、上で調製した脱アセチル化天然キトサンの濾過していない溶液を、24×24cm(平方センチメートル)のサイズの2つの正方形の型に注入し、室温で乾燥させるためにダストフリーの環境においたままにした。得られるフィルムを最初の型から取り出し、10kGy(キログレイ)の電子線を用いて滅菌した。完全に脱アセチル化天然キトサン酢酸塩から本質的になる組織被覆材料の約80μm厚さの透明フィルムを得た。以下、この材料を組織被覆材料Bと呼ぶ。
【0056】
<固体フィルム型組織被覆材料の第2の実施例の調製>
第2の型から乾燥したフィルムを、メタノール/水 90/10(v/v)中1.5%アンモニアの溶液を含有する浴中に2時間入れた。次に、フィルムを浴から取り出し、室温貯蔵により乾燥させた。フィルムを10kGyの電子線を用いて滅菌した。完全に脱アセチル化天然キトサン塩基から本質的になる組織被覆材料の厚さ約80μmの透明なフィルムを得た。以下、この材料を組織被覆材料Cと呼ぶ。
【0057】
<組織被覆材料の水分取込み>
上記実施例に記載される通り作製された組織被覆材料Cを秤量し、次に蒸留水の中に15分間入れた。湿ったフィルムの重量を乾燥したフィルムの重量と比較し、水分取込みを72重量%と決定した。
【0058】
<組織被覆材料の適用>
下の表1中に、3つの実施例の組織被覆材料による患者の処置の結果が詳述されている。材料Aは、創傷の上に直接噴霧した後、覆いをせずに静置して溶媒を空気中に容易に蒸発できるようにした。材料BおよびCは、創傷に直接接触しているフィルムのような材料の小さな切れ目(small cuts)として適用した。材料Bの場合、皮膚を予め湿らせた後、材料を適用した。全ての実験において、材料は適用後に覆いをせずに静置された。
【0059】
【表1】
【0060】
<キトサン組織被覆材の溶解>
組織被覆材料BおよびCの制御溶解を、蒸留水、0.9%塩化ナトリウム水溶液、および0.5%酢酸/酢酸塩緩衝溶液をそれぞれ用いる溶解実験で試験した。適切な量の1N塩酸または水酸化ナトリウム溶液を用いて、溶液のpHを表2に示される値に調節した。材料Bおよび材料Cを、各々5〜10mgの間の乾燥重量を有する長方形のサンプルに切断した。フィルムの乾燥重量に対して、容積当たり100倍過剰のそれぞれの溶液に浸したガーゼを各々のサンプルフィルムに適用し、完全なフィルムの溶解のための時間を記録した。
【0061】
【表2】
【0062】
組織被覆材料Cおよび0.5%酢酸/酢酸ナトリウム(表2の右の列)の混合物での制御溶解実験を、図4に説明する。材料は、より良い視覚化のために0.01%インジゴカルミン水溶液中で1時間貯蔵することにより染色した。完全な溶解は、pH4.0および4.5で30分後に、pH5.0で2時間後に、pH5.5で4時間後にそれぞれ観察された。
【0063】
図5では、創傷2を含む組織1が概略的に示される。より良く説明するために、図5図8は縮尺どおりに描かれていない。本発明に従う液体の組織被覆材料を組織2に適用し、構成成分の水を蒸発させ、創傷3を含む組織2を手当てするフィルム3を後に残した。一般に、フィルム3は約10μm〜20μmの厚さである。有利には、フィルム3は、創傷表面5を含む組織表面4にぴったりと寄り添う。
【0064】
図6は、創傷2を含む組織1に適用される固体フィルム6の形態の組織被覆材料を概略的に示す。固体フィルムは、約80μmの厚さである。組織1と組織被覆材料6との間の空洞7、8は、水または浸出液で満たされ得る。
【0065】
図7では、第1の層として図6の組織被覆材料6および第2の層としてシリコンフィルム10を含む組織被覆材9を、創傷2を含む組織1に適用する。シリコンフィルム10は、約50μmの厚さ(tick)である。この場合もやはり、組織1と組織被覆材料6との間の空洞7、8は、水または浸出液で満たされ得る。最後に、図8は、創傷2を含む組織1に適用された組織被覆材11を示し、組織被覆材11は、シリコンフィルム10に穿孔があり、創傷被覆材料6を通して(though)組織1と周囲との間の空気の交換を可能にするという点で図7の組織被覆材9とは異なっている。穿孔は、50μm〜100μmの間の直径を有する。
【0066】
上記の説明、特許請求の範囲および図に記載される特徴は、どんな組合せでも、本発明に関連し得る。特許請求の範囲の参照番号は、単に特許請求の範囲の解釈を促進するために導入されたものであり、決して制限するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8