(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
硬化性接着剤組成物、及び、この硬化性接着剤組成物の反応生成物である硬化済み接着剤組成物が記載される。より具体的には、硬化性接着剤組成物は、a)エポキシ樹脂と、b)硬化剤と、c)反応性液体改質剤と、d)強靭化剤と、e)油変位液と、を含有する。硬化済み接着剤組成物は、例えば、2つの表面と一緒に接合するための構造用接着剤として、使用することができる。これらの界面活性剤は、きれいであり得るか、あるいは、1つ以上の油又は潤滑剤などの炭化水素含有物質で少なくとも部分的に汚染され得る。構造用接着剤は、例えば、様々な表面を一緒に接合する際に、溶接体又は機械的締結具などの従来の接合手段と置き換えて、又はこれを補完して用いることができる。
【0011】
硬化性接着剤組成物は、多くの場合、二液型組成物の形態である。エポキシ樹脂は、典型的には、硬化性接着剤組成物の使用に先立って、硬化剤から分離されている。すなわち、エポキシ樹脂は典型的には硬化性接着剤組成物の第一部分にあり、硬化剤は典型的には第二部分にある。第一部分は、エポキシ樹脂と反応しないか又はエポキシ樹脂の一部のみとしか反応しない他の構成成分を含むことができる。同様に、第二部分は、硬化剤と反応しないか又は硬化剤の一部のみとしか反応しない他の構成成分を含むことができる。反応性液体改質剤は、典型的には、硬化剤との尚早な反応を回避するために第一部分に添加される。強靭化剤及び変位液は、第一部分、第二部分、又は、第一部分と第二部分の両方に含むことができる。第一部分及び第二部分が一緒に混合されると、様々な構成成分が反応して、硬化済み接着剤組成物を形成する。
【0012】
第一部分に含まれるエポキシ樹脂は、分子当たり少なくとも1個のエポキシ官能基(すなわち、オキシラン基)を含有する。本明細書で使用するとき、用語「オキシラン基」は、以下の二価基を指す。
【化4】
【0013】
アスタリスクは、このオキシラン基の、別の基との結合部位を示す。オキシラン基がエポキシ樹脂の末端位置にある場合、オキシラン基は典型的には水素原子に結合している。
【化5】
【0014】
この末端オキシラン基は、多くの場合、グリシジル基の部分である。
【化6】
【0015】
エポキシ樹脂は、多くの場合、分子当たり少なくとも1個のオキシラン基を有し、多くの場合、分子当たり少なくとも2個のオキシラン基を有する。例えば、エポキシ樹脂は、分子当たり1〜10個、2〜10個、1〜6個、2〜6個、1〜4個、又は2〜4個のオキシラン基を有することができる。オキシラン基は、通常、グリシジル基の一部である。
【0016】
エポキシ樹脂は、硬化前に所望の粘度特性をもたらし、硬化後に所望の機械的特性をもたらすように選択される単一材料又は複数の材料の混合物であることができる。エポキシ樹脂が複数の材料の混合物である場合、混合物中のエポキシ樹脂のうちの少なくとも1つは、典型的には、分子当たり少なくとも2個のオキシラン基を有するように選択される。例えば、混合物中の第一エポキシ樹脂は2〜4個のオキシラン基を有することができ、混合物中の第二エポキシ樹脂は1〜4個のオキシラン基を有することができる。これらの例のうちのいくつかでは、第一エポキシ樹脂は2〜4個のグリシジル基を有する第一グリシジルエーテルであり、第二エポキシ樹脂は1〜4個のグリシジル基を有する第二グリシジルエーテルである。
【0017】
オキシラン基ではないエポキシ樹脂分子の部分(すなわち、エポキシ樹脂分子からオキシラン基を除いたもの)は、芳香族、脂肪族又はこれらの組み合わせであることができ、直鎖、分枝鎖、環状又はこれらの組み合わせであることができる。エポキシ樹脂の芳香族及び脂肪族部分は、ヘテロ原子又は、オキシラン基と反応性ではない他の基を含むことができる。すなわち、エポキシ樹脂は、ハロ基、エーテル結合基中のようなオキシ基、チオエーテル結合基中のようなチオ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基、ホスホノ基、スルホノ基、ニトロ基、ニトリル基及びこれらに類するものを含むことができる。エポキシ樹脂はまた、ポリジオルガノシロキサン系材料などのシリコーン系材料であることができる。
【0018】
エポキシ樹脂は任意の好適な分子量を有することができるが、重量平均分子量は、通常、少なくとも100グラム/モル、少なくとも150グラム/モル、少なくとも175グラム/モル、少なくとも200グラム/モル、少なくとも250グラム/モル又は少なくとも300グラム/モルである。重量平均分子量は、最大50,000グラム/モルであることができ、又は高分子エポキシ樹脂については更に大きくてもよい。重量平均分子量は多くの場合、最大40,000グラム/モル、最大20,000グラム/モル、最大10,000グラム/モル、最大5,000グラム/モル、最大3,000グラム/モル又は最大1,000グラム/モルである。例えば、重量平均分子量は、100〜50,000グラム/モルの範囲、100〜20,000グラム/モルの範囲、10〜10,000グラム/モルの範囲、100〜5,000グラム/モルの範囲、200〜5,000グラム/モルの範囲、100〜2,000グラム/モルの範囲、200〜2,000グラム/モルの範囲、100〜1,000グラム/モルの範囲、又は200〜1,000グラム/モルの範囲であることができる。
【0019】
好適なエポキシ樹脂は、典型的には、室温(例えば、約20℃〜約25℃)で液体である。しかしながら、好適な溶媒中に可溶であるエポキシ樹脂もまた使用することができる。ほとんどの実施形態では、エポキシ樹脂はグリシジルエーテルである。代表的なグリシジルエーテルは、式(II)を有することができる。
【化7】
式(II)中、R
4基は、芳香族、脂肪族又はこれらの組み合わせであるp価の基である。R
4基は、直鎖、分枝鎖、環状又はこれらの組み合わせであることができる。R
4基は、場合により、ハロ基、オキシ基、チオ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基、ホスホノ基、スルホノ基、ニトロ基、ニトリル基及びこれらに類するものを含むことができる。変数pは任意の好適な1以上の整数であることができるが、pは、多くの場合、2〜4の範囲の整数である。
【0020】
いくつかの代表的な式(II)のエポキシ樹脂では、変数pは2に等しく(すなわち、エポキシ樹脂はジグリシジルエーテルである)、R
4は、アルキレン(すなわち、アルカンの二価ラジカルであり、アルカン−ジイルと呼ぶことができる)、ヘテロアルキレン(すなわち、ヘテロアルキレンはヘテロアルカンの二価ラジカルであり、ヘテロアルカン−ジイルと呼ぶことができる)、アリーレン(すなわち、アレーン化合物の二価ラジカル)又はこれらの混合物を含む。好適なアルキレン基は、多くの場合、1〜20個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。好適なヘテロアルキレン基は、多くの場合、2〜50個の炭素原子、2〜40個の炭素原子、2〜30個の炭素原子、2〜20個の炭素原子、2〜10個の炭素原子、又は2〜6個の炭素原子を有する。ヘテロアルキレン中のヘテロ原子は、オキシ、チオ又は−NH−基から選択することができるが、多くの場合、オキシ基である。好適なアリーレン基は、多くの場合、6〜18個の炭素原子、又は、6〜12個の炭素原子を有する。例えば、アリーレンは、フェニレンであることができる。R
4基は更に、場合により、ハロ基、オキシ基、チオ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基、ホスホノ基、スルホノ基、ニトロ基、ニトリル基及びこれらに類するものを含むことができる。変数pは、通常、2〜4の範囲の整数である。
【0021】
一部の式(II)のエポキシ樹脂はジグリシジルエーテルであり、式中、R
4は、(a)アリーレン基、又は、(b)アルキレン、ヘテロアルキレン又はこれらの両方と組み合わせたアリーレン基、を含む。R
4基は更に、ハロ基、オキシ基、チオ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基、ホスホノ基、スルホノ基、ニトロ基、ニトリル基及びこれらに類するものなどの任意の基を含むことができる。これらのエポキシ樹脂は、例えば、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する芳香族化合物を過剰なエピクロロヒドリンと反応させることにより、調製することができる。有用な、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する芳香族化合物の例としては、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、p,p’−ジヒドロキシジベンジル、p,p’−ジヒドロキシフェニルスルホン、p,p’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシフェニルスルホン及びp,p’−ジヒドロキシベンゾフェノンが挙げられるが、これらに限定されない。更に他の例としては、ジヒドロキシジフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルメチルプロピルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルプロピレンフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルブチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルトリルエタン、ジヒドロキシジフェニルトリルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルジシクロヘキシルメタン及びジヒドロキシジフェニルシクロヘキサンの、2,2’、2,3’、2,4’、3,3’、3,4’及び4,4’異性体が挙げられる。
【0022】
一部の市販の式(II)のジグリシジルエーテルエポキシ樹脂は、ビスフェノールAから誘導される(すなわち、ビスフェノールAは、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタンである)。例としては、Hexion Specialty Chemicals,Inc.(Houston,TX)から商品名EPON(例えば、EPON 828、EPON 872及びEPON 1001)で入手可能なもの、Dow Chemical Co.(Midland,MI)から商品名DER(例えば、DER 331、DER 332及びDER 336)で入手可能なもの、並びに、大日本インキ化学工業株式会社(日本、千葉)から商品名EPICLON(例えば、EPICLON 850)で入手可能なものが挙げられるが、これらに限定されない。他の市販のジグリシジルエーテルエポキシ樹脂は、ビスフェノールFから誘導される(すなわち、ビスフェノールFは、2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタンである)。例としては、Dow Chemical Co.から商品名DER(例えば、DER 334)で入手可能なもの、及び、大日本インキ化学工業株式会社から商品名EPICLON(例えば、EPICLON 830)で入手可能なものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
他の式(II)のエポキシ樹脂は、ポリ(アルキレンオキシド)ジオールのジグリシジルエーテルである。これらのエポキシ樹脂は、ポリ(アルキレングリコール)ジオールのジグリシジルエーテルと呼ぶことができる。変数pは2に等しく、R
4は、酸素ヘテロ原子を有するヘテロアルキレンである。ポリ(アルキレングリコール)は、コポリマー又はホモポリマーであることができる。例としては、ポリ(エチレンオキシド)ジオールのジグリシジルエステル、ポリ(プロピレンオキシド)ジオールのジグリシジルエステル、及びポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールのジグリシジルエステルが挙げられるが、これらに限定されない。このタイプのエポキシ樹脂は、約400グラム/モル、約600グラム/モル又は約1000グラム/モルの重量平均分子量を有する、ポリ(エチレンオキシド)ジオールから又はポリ(プロピレンオキシド)ジオールから誘導されるものなどのPolysciences,Inc.(Warrington,PA)から市販されている。
【0024】
更に他の式(II)のエポキシ樹脂は、アルカンジオールのジグリシジルエーテルである(R
4はアルキレンであり、変数pは2に等しい)。例としては、1,4−ジメタノールシクロヘキシルのジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、及びHexion Specialty Chemicals,Inc.(Columbus,OH)から商品名EPONEX 1510で入手可能なものなどの水素添加ビスフェノールAから形成される脂環式ジオールのジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0025】
更に他のエポキシ樹脂としては、少なくとも2個のグリシジル基を有するシリコーン樹脂、及び、少なくとも2個のグリシジル基を有する難燃性エポキシ樹脂(例えば、Dow Chemical Co.(Midland,MI)から商品名DER 580で市販されているものなどの少なくとも2個のグリシジル基を有する臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂)が挙げられる。
【0026】
エポキシ樹脂は、多くの場合、複数の材料の混合物である。例えば、エポキシ樹脂は、硬化に先立って、所望の粘度又は流動特性を提供する混合物であるように選択することができる。混合物は、より低い粘度を有する反応性希釈剤と呼ばれる少なくとも1つの第一エポキシ樹脂と、より高い粘度を有する少なくとも1つの第二エポキシ樹脂と、を含むことができる。反応性希釈剤は、エポキシ樹脂混合物の粘度を低下させる傾向を有し、多くの場合、飽和している分枝状主鎖か又は飽和若しくは不飽和である環状主鎖かのいずれかを有する。例としては、レゾルシノールのジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、及びトリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルは、Hexion Specialty Chemicals(Columbus,OH)から商品名HELOXY MODIFIER 107で、並びに、Air Products and Chemical Inc.(Allentonwn,PA)から商品名EPODIL 757で市販されている。他の反応性希釈剤は、様々なモノグリシジルエーテルのように、1個の官能基のみ(すなわち、オキシラン基)を有する。一部の代表的なモノグリシジルエーテルとしては、1〜20個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を持つアルキルグリシジルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。一部の代表的なモノグリシジルエーテルは、Air Products and Chemical,Inc.(Allentown,PA)から商品名EPODILで市販されており、例えば、EPODIL 746(2−エチルヘキシルグリシジルエーテル)、EPODIL 747(脂肪族グリシジルエーテル)及びEPODIL 748(脂肪族グリシジルエーテル)である。
【0027】
ほとんどの実施形態では、エポキシ樹脂は、1つ以上のグリシジルエーテルを含み、エポキシアルカン及びエポキシエステルを含まない。エポキシアルカン及びエポキシエステルは、しかしながら、油変位剤として、硬化性接着剤組成物中に含むことができる。
【0028】
硬化性接着剤組成物は、典型的には、第一部分と第二部分の合計重量に基づいて(すなわち、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて)少なくとも20重量パーセントのエポキシ樹脂を含む。例えば、硬化性接着剤組成物は、少なくとも25重量パーセント、少なくとも30重量パーセント、少なくとも40重量パーセント、又は少なくとも50重量パーセントのエポキシ樹脂を含むことができる。硬化性接着剤組成物は、多くの場合、最大90重量パーセントのエポキシ樹脂を含む。例えば、硬化性組成物は、最大80重量パーセント、最大75重量パーセント、最大70重量パーセント、最大65重量パーセント、又は最大60重量パーセントのエポキシ樹脂を含むことができる。一部の代表的な硬化性接着剤組成物は、20〜90重量パーセント、20〜80重量パーセント、20〜70重量パーセント、30〜90重量パーセント、30〜80重量パーセント、30〜70重量パーセント、30〜60重量パーセント、40〜90重量パーセント、40〜80重量パーセント、40〜70重量パーセント、50〜90重量パーセント、50〜80重量パーセント、又は50〜70重量パーセントのエポキシ樹脂を含有する。
【0029】
エポキシ樹脂は、典型的には硬化性接着剤組成物の第二部分にある硬化剤と反応することにより硬化する。エポキシ樹脂は、典型的には、貯蔵中には又は硬化性接着剤組成物を使用するのに先立って、硬化剤から分離されている。硬化剤は、少なくとも2個の一級アミノ基、少なくとも2個の二級アミノ基、又はこれらの組み合わせを有する。すなわち、硬化剤は、式−NR
1Hの基を少なくとも2個有し、式中、R
1は水素、アルキル、アリール又はアルキルアリールから選択される。好適なアルキル基は、多くの場合、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。アルキル基は、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであることができる。好適なアリール基は、通常、フェニル基のように6〜12個の炭素原子を有する。好適なアルキルアリール基は、アリールで置換されたアルキルか又はアルキルで置換されたアリールかのいずれかであることができる。上記と同じアリール及びアルキル基をアルキルアリール基で用いることができる。
【0030】
硬化性接着剤組成物の第一部分と第二部分を一緒に混合すると、硬化剤の一級及び/又は二級アミノ基はエポキシ樹脂のオキシラン基と反応する。この反応は、オキシラン基を開環させ、エポキシ樹脂に硬化剤を共有結合する。この反応の結果、式−OCH
2−CH
2−NR
1−の二価の基を形成する。
【0031】
硬化剤から少なくとも2個のアミノ基を除いたもの(すなわち、アミノ基ではない硬化剤の部分)は、任意の好適な芳香族基、脂肪族基、又はこれらの組み合わせであることができる。一部のアミン硬化剤は式(III)を有するが、但し、少なくとも2個の一級アミノ基(すなわち、−NH
2基)、少なくとも2個の二級アミノ基(すなわち、−NHR
1基、式中、R
1はアルキル、アリール又はアルキルアリールに等しい)、又は、少なくとも1個の一級アミノ基と少なくとも1個の二級アミノ基、が存在するという追加的限定を有する。
【化8】
R
5は、それぞれ独立して、アルキレン、ヘテロアルキレン又はこれらの組み合わせである。好適なアルキレン基は、多くの場合、1〜18個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。好適なヘテロアルキレン基は、2個のアルキレン基の間に少なくとも1個のオキシ、チオ又は−NH−基を有する。好適なヘテロアルキレン基は、多くの場合、2〜50個の炭素原子、2〜40個の炭素原子、2〜30個の炭素原子、〜20個の炭素原子、又は2〜10個の炭素原子を有し、最大20個のヘテロ原子、最大16個のヘテロ原子、最大12個のヘテロ原子、又は最大10個のヘテロ原子を有する。ヘテロ原子は、多くの場合、オキシ基である。変数qは少なくとも1に等しい整数であり、最大10若しくはそれ以上、最大5、最大4、又は最大3であることができる。R
1は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール又はアルキルアリールである。R
1に好適なアルキル基は、多くの場合、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。アルキル基は、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであることができる。R
1に好適なアリール基は、多くの場合、フェニル基のように、6〜12個の炭素原子を有する。R
1に好適なアルキルアリール基は、アリールで置換されたアルキルか又はアルキルで置換されたアリールかのいずれかであることができる。上記と同じアリール及びアルキル基をアルキルアリール基で用いることができる。
【0032】
同じアミン硬化剤は、アルキレン基から選択されるR
5基を有することができる。例としては、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホレンジアミン(isophorene diamine)とも呼ばれる)、及びこれらに類するものが挙げられるが、これらに限定されない。他のアミン硬化剤は、酸素ヘテロ原子を有するヘテロアルキレンのように、ヘテロアルキレン基から選択されるR
5基を有することができる。例えば、硬化剤は、アミノエチルピペラジン、4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン(TTD)(TCI America(Portland,OR)から入手可能)、又は、ポリ(エチレンオキシド)ジアミン、ポリ(プロピレンオキシド)ジアミンなどのポリ(アルキレンオキシド)ジアミン(ポリエーテルジアミンとも呼ばれる)あるいはこれらのコポリマー、といった化合物であることができる。市販のポリエーテルジアミンは、Huntsman Corporation(The Woodlands,TX)から商品名JEFFAMINEで市販されている。
【0033】
更に他のアミン硬化剤は、ポリアミン(すなわち、ポリアミンは、一級アミノ基及び二級アミノ基から選択される少なくとも2個のアミノ基を有するアミンを指す)を別の反応物質と反応させて、少なくとも2個のアミノ基を有するアミン含有付加物を形成することにより、形成することができる。例えば、ポリアミンは、エポキシ樹脂と反応して、少なくとも2個のアミノ基を有する付加物を形成することができる。高分子ジアミンがジカルボン酸と、ジアミンとジカルボン酸のモル比2:1以上で反応する場合、2個のアミノ基を有するポリアミドアミンを形成することができる。別の例では、高分子ジアミンが2個のグリシジル基を有するエポキシ樹脂と、ジアミンとエポキシ樹脂のモル比2:1以上で反応する場合、2個のアミノ基を有するアミン含有付加物を形成することができる。高分子ジアミンのモル過剰が多くの場合用いられ、その結果、硬化剤は、アミン含有付加物と未使用(未反応)の高分子ジアミンの両方を含む。例えば、ジアミンと2個のグリシジル基を有するエポキシ樹脂とのモル比は、2.5:1超、3:1超、3.5:1超、又は4:1超であることができる。エポキシ樹脂を使用して硬化性接着剤組成物の第二部分の中にアミン含有付加物を形成する場合でも、追加のエポキシ樹脂は硬化性接着剤組成物の第一部分に存在する。
【0034】
硬化剤は、複数の材料の混合物であることができる。例えば、硬化剤は、硬化済み接着剤組成物の可撓性を高めるために添加される高分子材料である第一硬化剤と、硬化済み接着剤組成物のガラス転移温度を変更するために添加される第二硬化剤と、を含むことができる。
【0035】
硬化性接着剤組成物は、通常、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて少なくとも3重量パーセントの硬化剤を含有する。例えば、総硬化性接着剤組成物は、少なくとも3重量パーセント、少なくとも5重量パーセント、又は少なくとも10重量パーセントの硬化剤を含有することができる。接着剤組成物は、典型的には、最大30重量パーセント、最大25重量パーセント、最大20重量パーセント、又は最大15重量パーセントの硬化剤を含む。例えば、硬化性接着剤組成物は、3〜30重量パーセント、3〜25重量パーセント、3〜20重量パーセント、3〜15重量パーセント、3〜10重量パーセント、5〜30重量パーセント、5〜25重量パーセント、5〜20重量パーセント、又は5〜15重量パーセントの硬化剤を含有することができる。
【0036】
他の硬化剤を硬化性接着剤組成物中に含ませることもできる。これらの他の硬化剤は、典型的には、第二硬化剤と考えられるが、それは、式−NHR
1の基を少なくとも2個有する硬化剤と比較して、これらが、室温にてエポキシ樹脂のオキサリン環とそれほど反応性ではないからである。第二硬化剤は、多くの場合、イミジゾール(imidizole)若しくはその塩、イミダゾリン若しくはその塩、フェノール若しくは三級アミノ基で置換されたフェノールである。好適な三級アミノ基で置換されたフェノールは、式(IV)を有することができる。
【化9】
式(IV)中、R
7及びR
8基は、それぞれ独立して、アルキルである。変数vは、2又は3に等しい整数である。R
9基は、水素又はアルキルである。R
7、R
8及びR
9に好適なアルキル基は、多くの場合、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。1つの代表的な式(IV)の第二硬化剤は、Air Products Chemicals,Inc.(Allentown,PA)から商品名ANCAMINE K54で市販されているトリス−2,4,6−(ジメチルアミノメチル)フェノールである。
【0037】
任意の第二硬化剤は、エポキシ樹脂及び反応性液体改質剤と共に硬化性接着剤組成物の第一部分の中に存在することができ、あるいは、硬化剤と共に硬化性接着剤組成物の第二部分の中に存在することができる。第二硬化剤の量は、典型的には、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて、最大6重量パーセント、最大5重量パーセント、又は最大4重量パーセントである。第一部分の中に含まれる場合、第二硬化剤は、第一部分の総重量に基づいて、0〜15重量パーセントの範囲、0.5〜10重量パーセントの範囲、又は1〜5重量パーセントの範囲の量で存在することができる。第二部分(硬化剤側)の中に含まれる場合、第二硬化剤は、第二部分の総重量に基づいて、0〜5重量パーセントの範囲、0.5〜5重量パーセントの範囲、又は1〜5重量パーセントの範囲の量で存在することができる。
【0038】
硬化性接着剤組成物は、硬化済み接着剤組成物の可撓性を高めるために、衝撃耐性を高めるために、強靭化剤の効果を高めるために、又はこれらの組み合わせのために、添加される反応性液体改質剤を更に含む。反応性液体改質剤は、式(I)を有する。
【化10】
式(I)中、R
2基は、水素又はアルキルである。R
3基は、式−[(CH
2)
nO]
m−(CH
2)
n−を有する。変数nは2、3又は4に等しい整数であり、変数mは5以上の整数である。R
3基は、20個超の炭素原子を有する。多くの実施形態では、R
3基は、少なくとも25個の炭素原子、少なくとも30個の炭素原子、少なくとも40個の炭素原子、又は少なくとも50個の炭素原子を有する。炭素原子の数は、最大600又は更にはそれ以上であることができる。R
3基は、最大550個の炭素原子、最大500個の炭素原子、最大450個の炭素原子、最大400個の炭素原子、最大350個の炭素原子、最大300個の炭素原子、最大250個の炭素原子、最大200個の炭素原子、最大150個の炭素原子、最大100個の炭素原子を含有することができる。例えば、R
3基は、25〜600個の炭素原子、25〜500個の炭素原子、25〜400個の炭素原子、25〜300個の炭素原子、25〜200個の炭素原子、又は25〜100個の炭素原子を有することができる。
【0039】
式(I)中、R
2に好適なアルキル基は、多くの場合、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。アルキル基は、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであることができる。多くの実施形態では、R
2はメチルである。すなわち、反応性液体改質剤の末端基は、アセトアセトキシ基であることができる。
【0040】
式(I)の反応性液体改質剤は、例えば、アルキルアセトアセトキシ化合物をポリ(アルキレンオキシド)ジオールと反応させることにより、調製することができる。ヒドロキシル含有物質とアルキルアセトアセトキシ化合物との反応は、J.S.Witzemanらによる論文(J.Org.Chem.,56(5),1713〜1718,1991)に説明されている。好適なポリ(アルキレンオキシド)ジオールは、20個超の炭素原子を有するR
3基を提供するために、任意の好適な分子量を有することができる。ポリ(アルキレンオキシド)ジオールは、典型的には、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール(すなわち、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオールはポリ(テトラヒドロフラン)ジオールとも呼ぶことができる)、ポリ(プロピレンオキシド)ジオール又はポリ(エチレンオキシド)ジオールから選択される。好適なアルキルアセトアセトキシ化合物は、多くの場合、三級ブチル基などの三級炭素原子を含有するアルキル基を有する。
【0041】
別の方法としては、式(I)の反応性液体改質剤は、R.J.Clemens(Chem.Rev.,86,241(1986))により記載されているように、ジケトンをヒドロキシル官能材料と反応させることにより、調製することができる。
【0042】
式(I)の反応性液体改質剤は、典型的には、エポキシ樹脂とは反応性ではないが、硬化剤とは反応性である。反応性液体改質剤は通常、第二部分の硬化剤との尚早な反応を最小限にするために、硬化性接着剤組成物の第一部分に添加される。反応性液体改質剤は、典型的には、第二硬化剤と室温では反応性ではなく、硬化性接着剤組成物の第一部分の中で第二硬化剤と混合することができる。
【0043】
反応性液体改質剤は、一級アミノ基、二級アミノ基、又は一級及び二級アミノ基の混合物を有する硬化剤と反応することができる。一級アミノ又は二級アミノ基は、反応性液体改質剤の末端カルボニル基と反応することができる。単純化を目的として、硬化剤の1個の一級アミノ基(H
2N−R
5−NH
2)と反応性液体改質剤の1個の末端カルボニル基との反応は、以下の反応で示される。
【化11】
【0044】
硬化剤と反応性液体改質剤との間のこの反応は、典型的には、硬化剤とエポキシ樹脂との間の反応よりも速い速度で生じる。反応性液体改質剤との反応により消費されない任意の硬化剤は、その後、エポキシ樹脂と反応することができる。
【0045】
硬化性接着剤組成物は、多くの場合、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも3重量パーセントの反応性液体改質剤を含有する。反応性液体改質剤は、多くの場合、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも4重量パーセント、少なくとも5重量パーセント、少なくとも7重量パーセント、又は少なくとも10重量パーセントに等しい量で存在する。硬化性接着剤組成物は、多くの場合、最大20重量パーセントの反応性液体改質剤を含有する。この量は、最大18重量%、最大15重量%又は最大12重量%であることができる。例えば、反応性液体改質剤は、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて、3〜20重量%、4〜20重量%、4〜15重量%、4〜12重量%、4〜10重量%、又は5〜10重量%の範囲である。
【0046】
硬化性接着剤組成物中の硬化剤の硬化反応が室温にて生ずる場合、アミン水素当量とエポキシ当量の比は、多くの場合、少なくとも0.5:1、少なくとも0.8:1、又は少なくとも1:1である。この比は、最大2:1又は最大1.5:1であることができる。例えば、この比は、0.5:1〜2:1の範囲、0.5:1〜1.5:1の範囲、0.8〜2:1の範囲、0.8:1〜1.5:1の範囲、0.8:1〜1.2:1の範囲、0.9:1〜1.1:1の範囲、又は約1:1であることができる。この比は、多くの場合、エポキシ樹脂と反応性液体改質剤の両方と反応するのに十分なアミン硬化剤が存在するように、選択される。
【0047】
硬化温度が高温(例えば、100℃よりも高い、又は120℃よりも高い、又は150℃よりも高い温度)にて生じる場合でも、しかしながら、少量のアミン硬化剤が多くの場合使用される。硬化性接着剤組成物の硬化剤の量は、多くの場合、反応性液体改質剤と、並びに、エポキシ樹脂の一部と反応するのに十分なモル量で存在する。例えば、アミン水素当量とエポキシ当量の比は、多くの場合、1:1未満であり、例えば、0.2:1〜0.8:1の範囲、0.2:1〜0.6:1の範囲、又は0.3:1〜0.5:1の範囲である。硬化剤と反応しない任意のエポキシ樹脂は、高温で単独重合を起こす傾向を有する。
【0048】
硬化済み接着剤組成物は、反応性液体改質剤が硬化性接着剤組成物中に含まれる場合、衝撃を受けても破砕又は破断しにくくなる。すなわち、反応性液体改質剤は、典型的には、硬化済み接着剤組成物の衝撃剥離強度を改善する。衝撃剥離強度は、通常、13ニュートン毎ミリメートル(N/mm)超、15N/mm超、20N/mm超、25N/mm超、又は30N/mm超である。
【0049】
硬化性接着剤組成物はまた、強靭化剤を含む。強靭化剤は、硬化性エポキシ樹脂又は反応性液体改質剤以外のポリマーであり、硬化済み接着剤組成物の強靭性を高めることができる。強靱性は、硬化済み接着剤組成物のT剥離強度を測定することにより、特徴付けることができる。T剥離強度は、多くの場合、30lb
f/in幅(すなわち、30フィートポンド毎インチ幅)であり、これは131ニュートン毎25mm(すなわち、131N/25mm)に等しい。T剥離強度は、40lb
f/in幅(175N/25mm)超、50lb
f/in幅(219N/25mm)超、又は60lb
f/in幅(263N/25mm)超であることができる。強靭化剤は、エポキシ樹脂及び反応性液体改質剤と共に硬化性接着剤組成物の第一部分に、硬化剤と共に硬化性接着剤組成物の第二部分に、又は硬化性接着剤組成物の第一部分と第二部分の両方に、添加することができる。典型的な強靭化剤としては、コア−シェル型ポリマー、ブタジエンニトリルゴム、アクリルポリマー及びアクリルコポリマー、並びにこれらに類するものが挙げられる。
【0050】
一部の強靭化剤は、コア−シェル型ポリマーである。シェル高分子材料は、典型的には、コア高分子材料にグラフト化されている。コアは、通常、0℃未満のガラス転移温度を有するエラストマー材である。シェルは、通常、25℃超のガラス転移温度を有する高分子材料である。ガラス転移温度は、動的機械熱分析(DMTA)又は同様の方法を用いて、測定することができる。
【0051】
コア−シェル高分子強靭化剤のコアは、多くの場合、ブタジエンポリマー若しくはコポリマー、スチレンポリマー若しくはコポリマー、アクリロニトリルポリマー若しくはコポリマー、アクリレートポリマー若しくはコポリマー、又はこれらの組み合わせから調製される。これらのポリマー又はコポリマーは、架橋することもでき、あるいは架橋されていなくてもよい。一部の代表的なシェルは、非架橋又は架橋のいずれかであるポリメチルメタクリレートである。他の代表的なシェルは、ブタジエン−スチレンコポリマーであり、これは非架橋又は架橋のいずれかである。
【0052】
コア−シェル高分子強靭化剤のシェルは、多くの場合、スチレンポリマー若しくはコポリマー、メタクリレートポリマー若しくはコポリマー、アクリロニトリルポリマー若しくはコポリマー、又はこれらの組み合わせである。シェルは、エポキシ基、酸性基又はアセトアセトキシ基で更に官能化することができる。シェルの官能化は、例えば、グリシジルメタクリレート又はアクリル酸で共重合化することにより、又はヒドロキシ基を三級ブチルアセトアセトキシなどのアルキルアセトアセトキシと反応させることにより、達成されてもよい。これらの官能基の付加の結果、シェルは架橋されて高分子マトリックスになることができる。
【0053】
好適なコア−シェルポリマーは、多くの場合、少なくとも20ナノメートル、少なくとも50ナノメートル、少なくとも100ナノメートル、少なくとも150ナノメートル、又は少なくとも200ナノメートルに等しい平均粒径を有する。平均粒径は、最大400ナノメートル、最大500ナノメートル、最大750ナノメートル、又は最大1000ナノメートルであることができる。平均粒径は、例えば、10〜1000ナノメートルの範囲、50〜1000ナノメートルの範囲、100〜750ナノメートルの範囲、又は150〜500ナノメートルの範囲であることができる。
【0054】
代表的なコア−シェルポリマー及びこれらの調製は、米国特許第4,778,851号(Hentonら)に記載されている。市販のコア−シェルポリマーは、例えば、Rohm & Haas Company(Philadelphia,PA)から商品名PARALOID(例えば、PARALOID EXL 2600及びPARALOID EXL 2691)で、並びにKaneka(Belgium)から商品名KANE ACE(例えば、KANE ACE MX120及びKANE ACE MX153)で入手することができる。
【0055】
更に他の強靭化剤は、アミノ末端物質又はカルボキシ末端物質をエポキシ樹脂と反応させて、相が硬化済み接着組成物の他の構成成分から分離した付加物を調製することにより、調製することができる。このような強靭化剤を調製するのに使用できる好適なアミノ末端物質は、3M Corporation(Saint Paul,MN)から商品名DYNAMAR POLYETHERDIAMINE HC 1101で市販されているものが挙げられるが、これに限定されない。好適なカルボキシ末端物質としては、Emerald Chemical(Alfred,ME)から市販されているものなどのカルボキシ末端ブタジエンアクリロニトリルコポリマーが挙げられる。
【0056】
硬化性接着剤組成物は、多くの場合、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて少なくとも5重量パーセントの強靭化剤を含む。例えば、硬化性接着剤組成物は、少なくとも10重量パーセント、少なくとも15重量パーセント、少なくとも20重量パーセント、又は少なくとも25重量パーセントの強靭化剤を含むことができる。強靭化剤の量は、多くの場合、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて最大55重量パーセントであることができる。例えば、硬化性接着剤組成物は、最大50重量パーセント、最大45重量パーセント、最大40重量パーセント、最大35重量パーセント、最大30重量パーセント、又は最大25重量パーセントの強靭化剤を含むことができる。一部の実施形態では、硬化性接着剤組成物は、5〜55重量パーセント、5〜50重量パーセント、5〜40重量パーセント、5〜30重量パーセント、5〜20重量パーセント、又は5〜15重量パーセントの強靭化剤を含有する。
【0057】
エポキシ樹脂、硬化剤、反応性液体改質剤及び強靭化剤に加えて、硬化性接着剤組成物は、硬化性接着剤組成物に可溶である油変位剤を更に含む。油変位剤は、エポキシ樹脂と反応性液体改質剤とを含有する硬化性接着剤組成物の第一部分に、硬化剤を含有する硬化性接着剤組成物の第二部分に、又は第一部分と第二部分の両方に、添加することができる。油変位剤は、硬化済み接着剤組成物と、炭化水素含有物質で汚染された基材の表面と、の間の接着を促進するために、添加される。
【0058】
本明細書で使用するとき、用語「炭化水素含有物質」は、加工、操作、保管又はこれらの組み合わせの際に、基材の表面を汚染する場合のある様々な物質を指す。炭化水素含有材料の例としては、鉱油、油脂、乾燥潤滑剤、深絞り加工油、腐食保護剤、潤滑剤、ワックス、及びこれらに類するものが挙げられるが、これらに限定されない。基材の表面は、炭化水素含有物質に加えて他の汚染物質を含有する場合がある。理論に束縛されるものではないが、油変位剤は、基材表面から炭化水素含有物を硬化性接着剤組成物のバルクの中に追いやるのを促進し得る。この基材表面からの追放は、結果として、接着結合強度を高めることになり得る。十分な接着結合強度は、多くの場合、熱硬化工程を必要とせずに得ることができる。
【0059】
油変位剤は、通常、室温にて液体である。これらの作用剤は、典型的には、適用時に、硬化性接着剤組成物との相溶性並びに得られる硬化済み接着剤組成物との相溶性の両方を維持しながら、基材の表面にて炭化水素含有物質を分離又は変位することができる。好適な油変位剤は、多くの場合、炭化水素含有物質の表面張力よりも低い表面張力と、炭化水素含有物質の溶解度パラメータと同様の溶解度パラメータと、を有する。
【0060】
油変位剤は、通常、最大35ダイン毎センチメートル(ダイン/cm)の表面張力を有する。例えば、表面張力は、最大35ダイン/cm、最大32ダイン/cm、最大30ダイン/cm、又は最大25ダイン/cmであることができる。表面張力は、多くの場合、少なくとも15ダイン/cm、少なくとも18ダイン/cm、又は少なくとも20ダイン/cmである。例えば、表面張力は、15〜35ダイン/cmの範囲、15〜32ダイン/cmの範囲、15〜30ダイン/cmの範囲、20〜35ダイン/cmの範囲、20〜30ダイン/cmの範囲、25〜35ダイン/cmの範囲、又は25〜30ダイン/cmの範囲であることができる。表面張力は、例えば、F.K.Hansenらによる論文(J.Coll.and Inter.Sci.,141,1〜12(1991))に特定されているような、いわゆる垂滴試験(垂滴形状分析法とも呼ばれる)を用いて、測定することができる。
【0061】
基材の表面上の炭化水素含有物質が既知である場合、油変位剤は、炭化水素含有物質の表面張力よりも低い表面張力を有するように選択することができる。より具体的には、油変位剤は、炭化水素含有物質の表面張力よりも少なくとも2.5ダイン/cm低い表面張力を有するように選択することができる。例えば、油変位剤の表面張力は、炭化水素含有物質の表面張力よりも少なくとも4.0ダイン/cm、少なくとも8.0ダイン/cm、又は少なくとも12.0ダイン/cm低いものであり得る。
【0062】
多くの実施形態では、油変位剤の溶解度パラメータは、6〜12cal
0.5/cm
1.5の範囲である。例えば、溶解度パラメータは、7〜12cal
0.5/cm
1.5の範囲、8〜12cal
0.5/cm
1.5の範囲、7〜10.5cal
0.5/cm
1.5の範囲、7〜9cal
0.5/cm
1.5の範囲、又は7.5〜9cal
0.5/cm
1.5の範囲であることができる。溶解度パラメータは、D.W.van Krevelenにより書籍Properties of Polymers:Their Correlation with Chemical Structure:Their Numerical Estimation and Prediction form Additive Group Contributions,4
th edition,pp.200〜225,1990(Elsevier in Amsterdam,The Netherlands)で記載されている方法を用いて、ChemSW、Inc.(Fairfield,CA)から商品名MOLECULAR MODELING PROで市販されているソフトウェアから計算することができる。
【0063】
特定の用途に好適な油変位剤を同定するために経験的方法を用いることができる。例えば、およそ20〜100マイクロリットルの、油変位剤候補を、炭化水素含有物質で被覆された基材の表面上に静かに堆積することができる。好適な油変位剤候補は、典型的には、広がり、炭化水素含有物質の被膜を破裂させる。理論に束縛されるものではないが、好適な油変位剤は、炭化水素含有物質を少なくとも部分的に溶解する、及び/又は少なくとも部分的に炭化水素含有物質の中に拡散する、と考えられる。好適な油変位剤の液滴は、炭化水素含有物質を衝撃閾から外へ押し出す傾向を有する。
【0064】
経験的方法は可能性のある油変位剤の比較的迅速な同定を促進できるが、このような試験を通過する全ての化合物が他の考慮点に基づいて油変位剤として上手く使用できるわけではない。例えば、一部の化合物は被膜破裂を引き起こすが、硬化性接着剤組成物中で過度に揮発性であり、あるいは、油変位剤として有効であるように硬化性接着剤組成物との好適な相溶性を有さない。
【0065】
多くの様々な部類の化合物が油変位剤に好適である。好適なタイプの化合物としては、グリシジルエステル、環状テルペン、環状テルペンオキシド、モノエステル、ジエステル、トリエステル、トリアルキルホスフェート、エポキシアルカン、アルキルメタクリレート、及びビニルアルキルエステルが挙げられるが、これらに限定されない。油変位剤は、典型的には、グリシジルエーテルではない。
【0066】
一部の油変位剤は、式(V)のグリシジルエステルである。
【化12】
式(V)中、R
10基は、1〜18個の炭素原子、1〜12個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレンである。一部の代表的な式(V)の化合物では、R
10基はメチレンである。R
11基は、それぞれ独立して、1〜12個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖アルキルである。1つの代表的な式(V)の化合物は、Hexion Specialty Chemicals(Columbus,OH)から商品名CARDURA N10で市販されている。この油変位剤は、10個の炭素原子を有する高度に分枝した三級カルボン酸(ネオデカン酸)のグリシジルエステルである。
【0067】
一部の油変位剤は、エステルである。好適なモノエステルは、式(VI)を有することができる。
【化13】
式(VI)中、R
13基は、通常、1〜20個の炭素原子、1〜18個の炭素原子、1〜12個の炭素原子又は1〜8個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖アルキルである。R
12基は、アルキル、アルケン−イル(すなわち、アルケン−イルは、アルケンの一価ラジカルである)、アリール又はアリールアルキルである。R
12に好適なアルキル及びアルケン−イル基は、多くの場合、6〜20個の炭素原子、8〜20個の炭素原子、8〜18個の炭素原子、又は8〜12個の炭素原子を有する。アルキル及びアルケン−イルは、非置換であることができ、あるいは、ヒドロキシル基、アミノ基、アリール基又はアルキルアリールで置換することができる。好適なアミノ基置換体は、式−N(R
1)
2を有し、式中、R
1は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール又はアルキルアリールである。R
1、R
12に好適なアリール基及び置換体は、多くの場合、6〜12個の炭素原子を有する。アリール基は、多くの場合、フェニルである。R
1に好適なアルキル基は、多くの場合、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。R
1、R
12に好適なアリールアルキル基及び置換体は、多くの場合、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル部分と、フェニルのような6〜12個の炭素原子を有するアリール部分と、を有する。代表的な式(VI)の油変位剤としては、メチルオレエートなどのアルキルオレエート、並びに、イソデシルベンゾエートなどのアルキルベンゾエートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
油変位剤としての使用に好適なジエステルは、式(VII)を有することができる。
【化14】
式(VII)中、R
14基は、それぞれ独立して、3〜20個の炭素原子、3〜18個の炭素原子、3〜12個の炭素原子、又は3〜8個の炭素原子といった、少なくとも3個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキルである。R
15基は、アルカン−ジイル(すなわち、アルカン−ジイルは、アルカンの二価ラジカルであり、アルキレンとも呼ぶことができる)、ヘテロアルカン−ジイル(すなわち、ヘテロアルカン−ジイルは、ヘテロアルカンの二価ラジカルであり、ヘテロアルケンとも呼ぶことができる)、又はアルケン−ジイル(すなわち、アルケン−ジイルは、アルケンの二価ラジカルである)である。アルカン−ジイル、ヘテロアルカン−ジイル及びアルケン−ジイルは、少なくとも2個の炭素原子を有し、多くの場合、2〜20個の炭素原子、2〜16個の炭素原子、2〜12個の炭素原子、又は2〜8個の炭素原子を有する。ヘテロアルキレン−ジイル中のヘテロ原子は、オキシ、チオ又は−NH−であることができる。アルカン−ジイル、ヘテロアルカン−ジイル及びアルケン−ジイルは、非置換であることができ、あるいは、ヒドロキシル基、アミノ基、アリール基又はアルキルアリール基で置換することができる。好適なアミノ基置換体は、式−N(R
1)
2を有し、式中、R
1は、水素、アルキル、アリール又はアルキルアリールである。R
1に好適なアリール基及び置換体は、多くの場合、フェニル基のように、6〜12個の炭素を有する。R
1に好適なアルキルアリール基及び置換体は、多くの場合、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル部分と、フェニルのような6〜12個の炭素原子を有するアリール部分と、を有する。R
1に好適なアルキル基は、多くの場合、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。代表的な式(VII)のジエステルとしては、ジエチルヘキシルマレエートなどのジアルキルマレエート、ジイソブチルアジペートなどのジアルキルアジペート、ジイソブチルスクシナートなどのジアルキルスクシナート、ジイソブチルグルタレートなどのジアルキルグルタレート、ジブチルフマレートなどのジアルキルフマレート、及び、ジブチルグルタメートなどのジアルキルグルタメートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
油変位剤としての使用に好適なトリエステルは、式(VIII)を有することができる。
【化15】
式(VIII)中、R
16基は、それぞれ独立して、3〜20個の炭素原子、3〜18個の炭素原子、3〜12個の炭素原子、又は3〜8個の炭素原子といった、少なくとも3個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキルである。R
17基は、アルカン−トリイル(すなわち、アルカン−トリイルは、アルカンの三価ラジカルである)、ヘテロアルカン−トリイル(すなわち、ヘテロアルカン−トリイルは、ヘテロアルカンの三価ラジカルである)、又はアルケン−トリイル(すなわち、アルケン−トリイルは、アルケンの三価ラジカルである)である。アルカン−トリイル、ヘテロアルカン−トリイル及びアルケン−トリイルは、少なくとも2個の炭素原子を有し、多くの場合、2〜20個の炭素原子、2〜16個の炭素原子、2〜12個の炭素原子、又は2〜8個の炭素原子を有する。ヘテロアルキレン−ジイル中のヘテロ原子は、オキシ、チオ又は−NH−であることができる。アルカン−トリイル、ヘテロアルカン−トリイル及びアルケン−トリイルは、非置換であることができ、あるいは、ヒドロキシル基、アミノ基、アリール基又はアルキルアリール基で置換することができる。好適なアミノ基置換体は、式−N(R
1)
2を有し、式中、R
1は、水素、アルキル、アリール又はアルキルアリールである。R
1に好適なアリール基及び置換体は、多くの場合、フェニル基のように、6〜12個の炭素を有する。R
1に好適なアルキルアリール基及び置換体は、多くの場合、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル部分と、フェニルのような6〜12個の炭素原子を有するアリール部分と、を有する。R
1に好適なアルキル基は、多くの場合、1〜12個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。代表的な式(VIII)の化合物としては、トリブチルシトレートなどのトリアルキルシトレートを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0070】
油変位剤は、式(IX)のエポキシアルカンから選択することができる。
【化16】
式(IX)中、R
18基は、アルキル又はペルフルオロアルキルである。アルキル又はペルフルオロアルキル基は、直鎖、分枝鎖、環状、又はこれらの組み合わせであることができる。アルキル又はペルフルオロアルキル基は、多くの場合、3〜20個の炭素原子、4〜20個の炭素原子、4〜18個の炭素原子、4〜12個の炭素原子、又は4〜8個の炭素原子といった、少なくとも3個の炭素原子を有する。代表的な式(IX)の化合物としては、1H,1H,2H−ペルフルオロ(1,2−エポキシ)ヘキサン、3,3−ジメチル−1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシデカン及び1,2−エポキシシクロペンタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
油変位剤としての使用に好適な環状テルペンとしては、リモネン、α−ピネン、β−ピネン、1,8−シネオール及びこれらに類するものが挙げられるが、これらに限定されない。好適な環状テルペンオキシドとしては、リモネンオキシド及びα−ピネンオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
油変位剤としての使用に好適なトリアキルホスフェートは、多くの場合、2〜10個の炭素原子を有するアルキル基を持つ。一部の代表的なトリアルキルホスフェートとしては、トリプロピルホスフェート、トリエチルホスフェート及びトリブチルホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
油変位剤として使用できるアルキルメタカリレート(Alkylmethacarylates)は、多くの場合、少なくとも4個の炭素原子、少なくとも6個の炭素原子、又は少なくとも8個の炭素原子を有するアルキル基を含む。例えば、このアルキル基は、6〜20個の炭素原子、6〜18個の炭素原子、6〜12個の炭素原子、又は6〜10個の炭素原子を有することができる。アルキルメタクリレート中のアルキルは、環状、直鎖、分枝鎖又はこれらの組み合わせであることができる。例としては、メタクリル酸イソデシル、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
油変位剤としての使用に好適なビニルアルキルエステルは、多くの場合、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、又は少なくとも6個の炭素原子を有するアルキル基を有する。例えばこのアルキル基は、2〜20個の炭素原子、4〜20個の炭素原子、4〜18個の炭素原子、4〜12個の炭素原子、又は4〜8個の炭素原子を有することができる。ビニルアルキルエステル中のアルキルは、環状、直鎖、分枝鎖又はこれらの組み合わせであることができる。例としては、10個の炭素原子を有する高度に分枝したカルボン酸のビニルエステルであるVEOVA 10が挙げられるが、これに限定されない。VEOVA 10は、Hexion Specialty Chemicals(Columbus,OH)の商品名である。
【0075】
油変位剤として使用できるアルキルトリアルコキシシランは、多くの場合、1〜10個の炭素原子、2〜10個の炭素原子、又は2〜6個の炭素原子を有するアルキル基を含む。このアルキル基は、非置換であることができ、あるいは、一級アミノ基などのアミノ基で置換することができる。アルコキシ基は、多くの場合、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を有する。例としては、3−アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられるが、これに限定されない。
【0076】
表1には、代表的な油変位剤についての表面張力値と溶解度パラメータ値を挙げている。
【0078】
硬化性接着剤組成物は、多くの場合、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて少なくとも0.01重量パーセントの油変位剤を含有する。その量は、多くの場合、少なくとも0.05重量パーセント、少なくとも0.1重量パーセント、少なくとも0.2重量パーセント、少なくとも0.5重量パーセント、又は少なくとも1重量パーセントである。硬化性接着剤組成物は、最大25重量パーセント、最大20重量パーセント、最大15重量パーセント、又は最大10重量パーセントの油変位剤を含むことができる。多くの実施形態では、油変位剤は、0.1〜25重量パーセントの範囲、0.5〜20重量パーセントの範囲、1〜20重量パーセントの範囲、1〜10重量パーセントの範囲、又は2〜10重量パーセントの範囲の量で存在する。
【0079】
一部の硬化性接着剤組成物は、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも20重量パーセントのエポキシ樹脂と、少なくとも3重量パーセントの硬化剤と、少なくとも5重量パーセントの反応性液体改質剤と、少なくとも5重量パーセントの強靭化剤と、少なくとも0.1重量パーセントの油変位剤と、を含有する。一部の代表的な硬化性接着剤組成物は、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて、20〜90重量パーセントのエポキシ樹脂と、3〜30重量パーセントの硬化剤と、3〜20重量パーセントの反応性液体改質剤と、5〜55重量パーセントの強靭化剤と、0.1〜25重量パーセントの油変位剤と、を含有する。
【0080】
他の代表的な硬化性接着剤組成物は、20〜70重量パーセントのエポキシ樹脂と、3〜20重量パーセントの硬化剤と、4〜15重量パーセントの反応性液体改質剤と、5〜40重量パーセントの強靭化剤と、0.5〜20重量パーセントの油変位剤と、を含有する。更に他の代表的な硬化性接着剤組成物は、30〜60重量パーセントのエポキシ樹脂と、5〜20重量パーセントの硬化剤と、4〜10重量パーセントの反応性液体改質剤と、5〜30重量パーセントの強靭化剤と、1〜10重量パーセントの油変位剤と、を含有する。これらの量は、硬化性接着剤組成物の総重量に基づく。
【0081】
充填剤などの他の追加の構成成分を硬化性接着剤組成物に添加することができる。充填剤は、硬化性接着剤組成物の第一部分に、硬化性接着剤組成物の第二部分に、又は硬化性接着剤組成物の第一部分と第二部分の両方に、添加することができる。充填剤は、多くの場合、接着を促進するため、腐食耐性を改善するため、接着剤のレオロジー特性を制御するため、硬化中の収縮を低減させるため、硬化を加速するため、汚染物質を吸収するため、耐熱性を改善するため、又はこれらの組み合わせのために、添加される。充填剤は、無機材料、有機材料、又は、無機材料及び有機材料を含有する複合材料であることができる。充填剤は、任意の好適な寸法及び形状を有することができる。一部の充填剤は、球、楕円、板形状を有する粒子の形状である。他の充填剤は、繊維形状である。
【0082】
一部の充填剤は、繊維ガラス(例えば、グラスウール及びガラス長繊維)、鉱物綿(例えば、岩綿及びスラグウール)及び耐火性セラミック繊維などの無機繊維である。一部の代表的な無機繊維としては、SiO
2、Al
2O
3の混合物又はこれらの組み合わせが挙げられる。無機繊維は、CaO、MgO、Na
2O、K
2O、Fe
2O
3、TiO
2、他の酸化物又はこれらの混合物を更に含むことができる。代表的な無機繊維は、Lapinus Fibres BV(Roermond,オランダ)から商品名COATFORCE(例えば、COATFORCE CF50及びCOATFORCE CF10)で市販されている。他の代表的な無機繊維は、ウォラストナイト(すなわち、ケイ酸カルシウム)から調製することができる。
【0083】
他の繊維は、アラミド繊維、及びポリエチレン繊維などのポリオレフィン繊維、といった有機繊維である。これらの有機繊維は、未処理であることができ、あるいは、これらの疎水性又は親水性を変化させるために処理することができる。例えば、一部の有機繊維は、これらを疎水性にするために、又は、これらの疎水性を高めるために、特別処理される。繊維をフィブリル化することができる。代表的なポリオレフィン繊維としては、EP Minerals(Reno,NV)から商品名SYLOTHIX(例えば、SYLOTHIX 52及びSYLOTHIX 53)で入手可能なもの、EP Mineralsから商品名ABROTHIX(例えば、ARBOTHIX PE100)で入手可能なもの、MiniFIBERS,Inc.(Johnson City,TN)から商品名SHORT STUFF(例えば、SHORT STUFF ESS2F及びSHORT STUFF ESS5F)で入手可能なもの、Inhance/Fluoro−Seal,Limited(Houston,TX)から商品名INHANCE(例えば、INHANCE PEF)で入手可能なモノなどの高密度ポリエチレン繊維が挙げられる。代表的なアラミド繊維は、Inhance/Fluoro−Seal,Ltd.(Houston,TX)から商品名INHANCE(例えば、INHANCE KF)で市販されている。
【0084】
他の好適な充填剤としては、シリカ−ゲル、ケイ酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、ヒュームドシリカ、ベントナイト、有機粘土などの粘土、アルミニウム三水和物、ガラス微小球、中空ガラス微小球、高分子微小球及び中空高分子微小球が挙げられる。充填剤はまた、酸化第二鉄、レンガ粉、カーボンブラック、酸化チタン、及びこれらに類するものなどの顔料を挙げることができる。これらの充填剤のいずれかは、硬化性又は硬化済み接着剤組成物との相溶性を高めるために表面改質することができる。
【0085】
代表的な充填剤としては、W.R.Grace(Columbia,MD)から商品名SHIELDEX(例えば、SHIELDEX AC5)で市販されている合成非晶質シリカと水酸化カルシウムとの混合物、Cabot GmbH(Hanau,ドイツ)から商品名CAB−O−SIL(例えば、CAB−O−SIL TS 720)で入手可能である疎水性表面を調製するためにポリジメチルシロキサンで処理したヒュームドシリカ、Degussa(Dusseldorf,ドイツ)から商品名AEROSIL(例えば、AEROSIL VP−R−2935)で入手可能な疎水性ヒュームドシリカ、CVP S.A.(フランス)からのガラスビーズクラスIV(250〜300マイクロメートル)及びNabaltec GmbH(Schwandorf,ドイツ)から商品名APYRAL 24 ESFで入手可能なエポキシシラン官能化(2重量%)アルミニウム三水和物が挙げられる。
【0086】
一部の実施形態では、親油性表面を有する充填剤が、硬化性接着剤組成物中に含まれる。理論に束縛されるものではないが、これらの充填剤は、基材の表面にある炭化水素含有物質の少なくとも一部を吸収し得、それゆえに接着接合を強化するものと考えられる。
【0087】
硬化性接着剤組成物は、任意の好適な量の充填剤を含有することができる。多くの実施形態では、硬化性接着剤組成物は、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて0.01〜50重量パーセントの充填剤を含有することができる。例えば、その量は、0.5〜50重量パーセントの範囲、1〜40重量パーセントの範囲、1〜30重量パーセントの範囲、1〜20重量パーセントの範囲、1〜10重量パーセントの範囲、5〜30重量パーセントの範囲、又は5〜20重量パーセントの範囲であることができる。
【0088】
硬化性接着剤組成物は、任意の数の他の追加の構成成分を含むことができる。例えば、追加の接着促進剤を添加することができる。代表的な接着促進剤としては、様々なシラン化合物が挙げられるが、これらに限定されない。接着促進剤に好適である一部のシラン化合物は、硬化性接着剤組成物中の1個以上の構成成分と反応できるアミノ基又はグリシジル基を有する。他の代表的な接着促進剤としては、米国特許第6,632,872号(Pelleriteら)に記載されているものなどの様々なキレート剤及び株式会社ADEKA(日本、東京)から商品名EP−49−10N及びEP−49−20で入手可能なものなどのキレート変性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0089】
溶媒を硬化性接着剤組成物中に含ませることができる。溶媒は、典型的には、硬化性接着剤組成物と相溶性であるように選択される。溶媒は、硬化性接着剤組成物の第一部分又は第二部分のいずれかの粘度を低下させるために添加することができ、あるいは、硬化性接着剤組成物中に含まれる様々な構成成分のうちの1つと共に添加することができる。溶媒の量は、典型的には、最小限にされ、多くの場合、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて10重量パーセント未満である。溶媒は、多くの場合、硬化性接着剤組成物の総重量に基づいて、8重量%未満、6重量%未満、4重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、又は0.5重量%未満である。好適な有機溶媒としては、硬化性接着剤組成物に可溶であり、硬化中又は硬化後に除去されて、硬化済み接着剤組成物を形成できるものが挙げられる。代表的な有機溶媒としては、トルエン、アセトン、様々なアルコール及びキシレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
硬化性接着剤組成物は、典型的には、第一部分と第二部分の形状である。第一部分は、典型的には、エポキシ樹脂、反応性液体改質剤、並びに、エポキシ樹脂と反応性液体改質剤のいずれにも反応しない他の構成成分を含む。第二部分は、典型的には、硬化剤、並びに、典型的には硬化剤と反応しない任意の他の構成成分を含む。強靭化剤及び油変位剤は、それぞれ独立して、第一部分又は第二部分のいずれかに添加することができる。各部分の構成成分は、典型的には、各部分内の反応性を最小限にするように選択される。
【0091】
別の方法としては、硬化性組成物は、追加の構成成分を含有できるか又は硬化性接着剤組成物の構成成分を更に分離できる、第三部分などの追加的部分を含むことができる。例えば、エポキシ樹脂は第一部分にあることができ、硬化剤は第二部分にあることができ、反応性液体改質剤は第三部分にあることができる。強靭化剤及び油変位剤は、それぞれ独立して、第一、第二又は第三部分のいずれかにあることができる。
【0092】
硬化性接着剤組成物の様々な部分を一緒に混合して、硬化済み接着剤組成物を形成する。これらの部分は、典型的には、硬化性接着剤組成物の使用直前に一緒に混合される。混合物中に含まれる各部分の量は、オキシラン基とアミン水素原子の所望のモル比、及び、反応性液体改質剤とアミン水素原子の所望のモル比をもたらすように、選択することができる。
【0093】
硬化性接着剤組成物は、室温にて硬化することができ、室温にて及び続いて高温(例えば、100℃超、120℃超又は150℃超)にて硬化することができ、並びに高温にて硬化することができる。一部の実施形態では、接着剤は、室温にて少なくとも3時間にわたって、少なくとも6時間にわたって、少なくとも12時間にわたって、少なくとも18時間にわたって、少なくとも24時間にわたって、少なくとも48時間にわたって、又は少なくとも72時間にわたって、硬化することができる。他の実施形態では、接着剤は、任意の好適な長さの時間にわたって硬化し、続いて、例えば、180℃にて最長10分にわたって、最長20分にわたって、最長30分にわたって、最長60分にわたって、最長120分にわたって、又は更には120分超にわたって、といったように、高温にて更に硬化することができる。
【0094】
接着剤組成物は、短時間熱硬化した後、所望の凝集強度に達し得る。凝集強度は、多くの場合、同一又は異なる条件下での更なる硬化中に増加することができ、この種の硬化は、本明細書では部分硬化と呼ばれる。原理上は、部分硬化は任意の種類の加熱を用いて実施することができる。いくつかの実施形態では、誘導硬化(例えば、局部誘導硬化又は環誘導硬化)が部分硬化のために使用され得る。誘導硬化は、硬化済み接着剤組成物に接近してその中に交流が流れる誘導コイルを配置することによって、電導材料中に熱を発生させるための電力を使用した非接触式加熱法である。ワークコイル内の交流は、被加工物中に循環電流を発生させる電磁場を確立する。被加工物中のこの循環電流は、材料の固有抵抗に逆らって流れ、熱を発生する。誘導硬化装置は、例えば、IFF−GmbH(Ismaning,ドイツ)からのEWSが市販品として入手可能である。誘導硬化は、例えば、80℃〜180℃の範囲の温度にて、最長120秒、最長90秒、最長60秒、最長45秒、又は最長30秒の曝露時間で生じることができる。更なる実施形態では、接着剤組成物は、誘導硬化を起こし、その後、室温、高温又はその両方で更なる硬化を起こし得る。
【0095】
硬化済み接着剤組成物は、多くの場合、1つ以上の基材と頑強な接合を形成する。接合は、典型的には、重ね剪断試験で試験した際にその接合が高剪断力値にて粘着して離れる場合、並びに、T剥離試験で試験した際に高いT剥離強度値が得られる場合、頑強であると考えられる。接合は以下の3つの異なるモードで離れ得る、(1)凝集破壊モードで、接着剤が、両方の金属表面への接着剤の接着部分を残して裂ける、(2)接着破壊モードで、どちらかの金属表面から接着剤が引き離される、又は(3)接着及び凝集破壊の組み合わせ(すなわち、組み合わせ破壊モード)。
【0096】
硬化済み接着剤組成物は、典型的には、きれいな金属表面に、並びに、様々な油及び潤滑剤などの炭化水素含有物質で汚染された金属表面に、接着することができる。硬化済み接着剤組成物は、多くの場合、重ね剪断力強度により測定されると、少なくとも2500psi(17.2MPa)の凝集強度を有する。例えば、重ね剪断力強度は、少なくとも3000psi(20.7MPa)、少なくとも3200psi(22.1MPa)又は少なくとも3500psi(24.1MPa)であることができる。
【0097】
硬化済み接着剤組成物は、接合する2つの部分の間(すなわち、2つの基材の2つの表面の間)に硬化性接着剤組成物を適用し、接着剤を硬化させて接着された接合部を形成することにより、溶接体又は機械的締結具を補助する又は完全に省くために使用されてもよい。その上に本発明の接着剤を適用することができる好適な基材としては、金属(例えば、スチール、鉄、銅、アルミニウム又はこれらの合金)、炭素繊維、ガラス繊維、ガラス、エポキシ繊維複合材料、木材、及びこれらの混合物が挙げられる。一部の実施形態では、基材の少なくとも1つは金属である。別の実施形態では、基材の両方が金属である。
【0098】
基材の表面は、硬化性接着剤組成物の適用に先立って、洗浄してもよい。しかしながら、接着剤組成物はまた、表面上に炭化水素含有物質を有する基材に適用される場合の用途にも有用である。特に、硬化性接着剤組成物は、例えば、ミリング油、切削流体及び絞り油などの、様々な油及び潤滑剤で汚染された鋼表面に適用され得る。
【0099】
接着剤結合の領域では、硬化性接着剤組成物は、液体、ペースト、スプレー、又は加熱時に液化できる固体として適用することができる。適用は、連続性ビーズとして、又は、有用な接着形成をもたらす点、縞、対角線若しくは任意の他の幾何形状として、であり得る。一部の実施形態では、硬化性接着剤組成物は液体又は、ペーストの形態である。
【0100】
硬化済み接着剤組成物は、溶接又は機械的締結により増強することができる。溶接を、スポット溶接、連続シーム溶接、又は接着剤組成物と組み合わせることが可能な任意のその他の溶接技術によって行うことで、機械的にしっかりした結合を形成することができる。
【0101】
硬化済み接着剤組成物は、構造用接着剤として使用され得る。特に、それらは、船、航空機、又は、車及びモーターバイクなどのモータークラフト車の組立といった、機体組立における構造用接着剤として使用してよい。特に、接着剤組成物は、周辺部フランジ接着剤として、又は、本体フレーム構成体の中に、使用されてもよい。接着剤組成物はまた、建築用途で構造用接着剤として、又は、様々な家庭及び産業用途で構造用接着剤として、使用してもよい。
【0102】
別の態様では、複合物品の製造方法が提供される。この方法は、二液型硬化性接着剤組成物を表面に適用することと、表面に接触させながら二液型硬化性接着剤組成物を硬化させて複合物品を形成することと、を含む。第一表面は、生じる硬化済み接着剤組成物により第二表面に接着される。
【0103】
更に別の態様では、基材間の接着接合の形成方法が提供される。この方法は、二液型硬化性接着剤組成物を2つ以上の基材のうちの少なくとも1つの表面に適用することと、二液型硬化性接着剤組成物が2つ以上の基材の間に挟まれるように基材を接合することと、硬化性接着剤組成物を硬化させて2つ以上の基材間に接着接合を形成することと、を含む。本組成物は、例えば、金属を金属に、金属を炭素繊維に、炭素繊維を炭素繊維に、金属をガラスに、又は炭素繊維をガラスに、接着させるために、使用され得る。
【0104】
(実施例)
本発明の目的及び利点は、下記の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈すべきではない。これらの実施例は単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した特許請求の範囲に限定することを意味するものではない。
【0105】
使用される溶媒及び他の試薬は、特に記載のない限り、Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
【0108】
試験方法
金属パネルの注油
適切な油MSDSから得られる密度データを用いて、特定の容量のOEST B804/3 COW−1油を適用して、コーティングされる領域(入手した状態のまま使用された金属の)について3グラム毎平方メートルのコーティングを達成することにより、注油された鋼パネルを調製した。ニトリル手袋の清潔な指先を使用して、オイルを表面上に注意深く均一に塗り広げた。いったん表面を被覆してから、金属パネルを室温にて使用前24時間にわたって保存した。
【0109】
重ね剪断接着の生成
金属パネルの注油を説明した上記プロトコルを用いて注油した4インチ×1インチ×0.063インチ(101.6mm×25.4mm×1.6mm)を測定した亜鉛めっき鋼試験試料を用いて、重ね剪断試料を作製した。重ね剪断試料は、ASTM規格D 1002−05に記載されているように作製した。およそ0.5インチ(12.7mm)幅及び0.010インチ(0.25mm)厚さの硬化性接着剤組成物片を、スクレーパを用いて、2つの注油された重ね剪断試料の各々の1つの末端に適用した。直径約250マイクロメートルを有するガラスビーズは、接着剤内でスペーサとして働いた。2つの注油された重ね剪断試料を一緒に接着し、1インチ(2.54cm)のバインダクリップを用いて締め付けて圧力を印加して、接着剤を広げた。少なくとも5つの接着体を、試験する各条件について作製した。接着剤を(実施例において記載するように)硬化させた後で、接着体を、0.1インチ(2.5mm)毎分のクロスヘッド変位速度を用いてSintech引張試験機(MTS(Eden Prairie,MN))で室温にて破壊させて、試験した。破壊荷重を記録した。ラップ幅は、ノギスにて測定した。引用された重ね剪断強度は、破壊荷重/測定された接着幅、として計算される。平均及び標準偏差は、特に断りのない限り少なくとも5回の試験の結果から算出した。
【0110】
T剥離接合の生成
冷間圧延鋼試験試料(「S」型鋼、12インチ×1インチ×0.032インチ(304.8mm×25.4mm×0.81mm)の寸法及び直角の角部を有する、Q−Lab Corporation(Cleveland,OH)からの1010 CRS)を用いてT剥離試料を作製した。これらの鋼試験試料を、金属パネルの上記説明のように、注油した。T剥離試料は、ASTM規格D−1876に記載されているように作製した。およそ1インチ×9インチ×10ミル(1ミルは0.001インチである)(25.4mm×228.6mm×0.25mm)の接着片を、注油したT剥離試料それぞれに適用した。直径約250マイクロメートルを有するガラスビーズは、接着剤内でスペーサとして働いた。
【0111】
2つの注油した重ね剪断試料を一緒に接着し、2つの1インチ(2.54cm)バインダクリップを用いて締め付けて圧力を印加して、接着剤を広げ、硬化のために接着体を固定した。接着剤を(実施例において記載するように)硬化させた後で、接着体を、12インチ(304.8mm)毎分のクロスヘッド変位速度を用いてSintech引張試験機で室温にて破壊させて、試験した。荷重データの初期部分は無視した。約1インチ(2.54cm)を剥離した後で。平均荷重を測定した。引用されたT型剥離強度は、少なくとも2回の剥離測定の平均値であった。
【0112】
対称なISO11343:2003E接合の生成
0.030インチ(0.76mm)の公称厚さを有し、ISO11343:2003E仕様にある
図2に従って加工された電気亜鉛めっき鋼(EZG60G60E)を用いてISO11343:2003E対称ウェッジ試料(すなわち、接着での2つの基材の接着により形成された物品)を作った。めっき鋼は、ACT Test Panels,LLC(Hillsdale,MI)から入手した。ISO11343:2003Eに記載のように、対称ウェッジ試料を作った。2セットの対称ウェッジ試料を隣り合わせに配置し、およそ20ミリメートル×30ミリメートル×250マイクロメートルの接着剤片を各対称ウェッジに適用した。直径約250マイクロメートルを有するガラスビーズは、接着剤内でスペーサとして働いた。接着剤を対称ウェッジ使用に適用した後、これらを2つの1”(2.54cm)バインダクリップで一緒に締め付けた。
【0113】
締め付けた対称ウェッジ試料を177℃にて20分にわたって強制空気炉で硬化させた。接着剤を(実施例において記載するように)硬化させた後で、接着体を、ISO11343:2003E対称ウェッジ方法に従い、Dynatup 9250HV衝撃テスター(Instron(Norwood,MA))でおよそ2メートル毎秒の初期衝撃速度及びおよそ90ジュールの初期衝撃エネルギーにて試験した。室温にて試験した接着体は、周囲実験室条件にあった。平均剥離力をISO11343:2003E仕様に従って計算した。少なくとも3つの接着体を各実施例につき試験した。
【0114】
調製例1〜5:反応性液体改質剤の調製
表3に示す三成分の各々を計量して三口丸底フラスコに入れることにより、反応性液体改質剤を作製した。撹拌棒をフラスコに入れ、フラスコを窒素でパージした。フラスコを油浴で還流しながら窒素下で110℃にて少なくとも4時間にわたって加熱した。得られた生成物を30分にわたって減圧蒸留した。
【0116】
調製例6〜7:硬化性接着剤組成物の第二部分(硬化剤側)
硬化剤を含有する第二部分組成物を調製した。これらの2つの第二部分組成物中の構成成分は、表4に要約されている。1パイントの金属缶において、アミンを添加し(例えば、ポリアミドアミンA、TTD、IPDA)、80℃に加熱した。硝酸カルシウムを添加し、80℃にて1時間にわたって混合した。次に、ANCAMINE K54をアミン混合物に添加し、80℃にて6時間にわたって撹拌した。残りの成分を3000回転毎分(RPM)にて5分にわたって混合した。最終的な硬化剤混合物を脱気し、室温にて保存した。
【0118】
調製例8〜14:硬化性接着剤組成物の第一部分(エポキシ樹脂側)の調製
第一部分組成物を、下表5に明記した量に従って、作製した。エポキシ樹脂(例えば、EPON 828、EPONEX 1510)と油変位剤(CARDURA N10)とコア−シェル粒子(例えば、PARALOID 2600、KANE ACE MX153)を測定し、1パイント金属缶において120℃にて少なくとも2時間にわたって混合した。次に、Silane Z6040と反応性液体改質剤を充填剤(例えば、SHIELDEX AC5、ウォラストナイト、APYRAL 24ES2、SYLOTHIX 52)と共に混合物に添加した。得られた混合物を高速にておよそ5分にわたって、均質になるまで撹拌した。全成分を加えた後、この混合物を脱気し、使用まで室温にて密閉容器内に詰めた。
【0120】
準備/硬化方法C−1
スズ製の小さなカップ中で、43.8グラムの第一部分(エポキシ樹脂側)と、10.0グラムの第二部分(硬化剤側)とを、1重量パーセントのガラスビーズ(平均粒径250マイクロメートル)と一緒に十分に混合した。上記のように接合体を調製し、室温にて24時間、続いて180℃にて30分にわたって硬化させた。
【0121】
準備/硬化方法C−2
スズ製の小さなカップ中で、40.9グラムの第一部分(エポキシ樹脂側)と、10.0グラムの第二部分(硬化剤側)とを、1重量パーセントのガラスビーズ(平均粒径250マイクロメートル)と一緒に十分に混合した。上記のように接合体を調製し、室温にて24時間にわたって硬化させた。
【0122】
実施例1〜6:硬化済み接着剤組成物及び特徴付け
実施例1〜6は、上記準備/硬化方法(方法C−1又は方法C−2のいずれか)に従って、示されたエポキシ樹脂側(調製例8〜14から選択)と硬化剤側(調製例6又は7から選択)とを一緒に混合することにより、表6に示されているように調製された硬化済み接着剤組成物であった。接着接合体を室温にて上記のように試験した。用語「TCF」は薄い凝集破壊を表し、「Coh」は凝集破壊を表す。
【0124】
比較例1:比較硬化済み接着剤組成物及び特徴付け
比較例1は、準備/硬化方法C−1に従って、示されたエポキシ樹脂側(調製例12から選択)と硬化剤側(調製例5から選択)とを一緒に混合することにより、表7に示すように調製した比較硬化済み接着剤組成物であった。接着接合体を室温にて上記のように試験した。用語「TCF」は、薄い凝集破壊を表す。