【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【文献】
J. Am. Chem. Soc.,2003年11月12日,Vol.125, No.45,p.13868-13878
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下の説明を読めば、本発明がより良く理解され、また本発明の他の特徴および利点がより明確となる。
【0045】
本発明の説明において、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0048】
Ileは、アミノ酸イソロイシンを示す。
【0049】
C(イタリック体)は、
13Cを示す。
【0053】
proR、proS:それぞれ非標識化LeuおよびValアミノ酸のγおよびβ炭素上のメチル基は同じであり、結果としてそれぞれ非標識化LeuおよびValアミノ酸のγおよびβ炭素はキラルではない。しかしながら、基R
1およびR
2が式Iのアセトラクテート誘導体において同じ様式で標識化されていない場合、結果的にそれぞれLeuおよびValのγおよびβ炭素上のメチル基は異なって標識化され、この差により、それぞれLeuおよびValのγおよびβ炭素はキラルとなる。これらのメチル基は、標識化がR配置を生じる場合proRと示され、標識化がS配置を生じる場合proSと示される。
【0054】
「アセトラクテート誘導体」は、式Iの化合物およびその対応するエステル、好ましくはメチルエステルまたはエチルエステルを示す。
【0055】
生体分子集合体:タンパク質および他の基を含有する分子である。
【0056】
本発明の標識化方法は、特異的に標識化されたメチルまたはエチル基を有するアセトラクテート誘導体の使用に基づく。これらのアセトラクテート誘導体は、対象タンパク質(複数可)を過剰発現する細菌を含有する培地中に導入される。
【0057】
換言すれば、本発明の方法は、Leu、ValおよびIle生合成の初期段階中に生体内で生じるアセトラクテート誘導体中の標識化または非標識化アルキル基の立体特異的再配列に基づく。
【0058】
タンパク質中のバリン(Val)、ロイシン(Leu)、およびイソロイシン(Ile)からなる群から選択されるアミノ酸のメチル基の特異的同位体標識化のための、本発明の提案される方法は、
a)タンパク質を過剰発現する細菌を含有する培地中に、以下の式:
【0060】
(式中、
Xは、溶媒の性質に依存して
1Hまたは
2H(D)である交換可能な水素であり、すなわち、Xは、溶媒がH
2Oである場合
1Hであり、Xは、溶媒がD
2Oである場合
2Hであり、
各Yは、互いに独立して
12Cまたは
13Cであり、
R
1は、炭素原子が
13Cまたは
12Cであり、水素原子が互いに独立して
1Hまたは
2H(D)であるメチル基であり、
R
2は、炭素原子が
13Cもしくは
12Cであり、水素原子が互いに独立して
1Hもしくは
2H(D)であるメチル基、または、炭素原子が互いに独立して
13Cもしくは
12Cであり、水素原子が互いに独立して
1Hもしくは
2H(D)であるエチル基であり、
ただし、
1)式Iのアセトラクテート誘導体の水素原子は、同時に全てが
1Hまたは
2H(D)ではなく、
2)R
1の水素原子およびR
2の水素原子は、同時に全てが
1Hまたは
2H(D)ではない)
を有するアセトラクテートの誘導体を導入するステップを含む。
【0061】
次いで、この方法は、対象タンパク質(複数種可)を過剰発現させるための培地を培養するステップと、タンパク質(複数種可)を精製および単離するステップとを含む。
【0062】
好ましくは、式Iのアセトラクテート誘導体は、以下の式:
(R
1は、以下の基:
12CH
3、
12CD
3、
13CH
3、
13CD
3、
13CHD
2、
13CH
2D
の中から選択され、
R
2は、以下の基:
12CH
3、
12CD
3、
13CH
3、
13CD
3、
13CHD
2、
13CH
2D、
12CH
312CD
2、
12CD
312CD
2、
13CH
312CD
2、
13CH
313CD
2、
13CD
313CD
2、
13CHD
213CD
2、
13CH
2D
13CD
2、
13CHD
212CD
2、
13CH
2D
12CD
2
の中から選択され、
各Yは、互いに独立して
12Cまたは
13Cであり、
ただし、
1)式Iのアセトラクテート誘導体の水素原子は、同時に全てが
1Hまたは
2H(D)ではなく、
2)R
1の水素原子およびR
2の水素原子は、同時に全てが
1Hまたは
2H(D)ではない)
の化合物からなる群から選択される。
【0063】
これらのアセトラクテート誘導体は、以下の式1〜57(式中、
(
13C)メチルは、メチル基の炭素原子が
13Cであることを意味し、
(
13C
2)エチルは、エチル基の2個の炭素原子が
13Cであることを意味し、
2H
n(n=1、2、3、4または5である)は、n個の水素原子が
2Hであることを意味し、
Uは、全ての炭素原子が
13Cであることを意味する):
1=2−ヒドロキシ−2−メチル−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
2=2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソブタン酸、
3=2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
4=2−ヒドロキシ−2−(
13C)メチル−3−オキソ−4(
2H
3)ブタン酸、
5=2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4(
13C)ブタン酸、
6=2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
13C)メチルブタン酸、
7=U−(
13C)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3−オキソ−4(
2H
3)ブタン酸、
8=U−(
13C)−2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソブタン酸、
9=1,2,3,4−(
13C)−2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
10=2−ヒドロキシ−2−(
2H,
13C)メチル−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
11=2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4−(
2H,
13C)ブタン酸、
12=2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H,
13C)ブタン酸、
13=2−ヒドロキシ−2−(
2H
2,
13C)メチル−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
14=2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4−(
2H
2,
13C)ブタン酸、
15=2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
2,
13C)ブタン酸、
16=U−(
13C)−2−ヒドロキシ−2−(
2H
2)メチル−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
17=U−(
13C)−2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4−(
2H
2)ブタン酸、
18=1,2,3,4−(
13C)−2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
2)ブタン酸、
19=2−(1’−(
2H
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
20=2−((1’−(
2H
2),2’−(
13C))エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
21=1,2,3−(
13C)−2−(
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
22=1,2,3,4−(
13C)−2−(
2H
3)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
23=U−(
13C)−2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
24=1,2,3−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),
13C
2)エチル)−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
25=U−(
13C)−2−(1’−(
2H
2))エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
26=U−(
13C)−2−(
2H)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
27=U−(
13C)−2−(
2H
3)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
28=U−(
13C)−2−((
2H
5)エチル)−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
29=1,2,3−(
13C)−2−(
2H,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
30=1,2,3,4−(
13C)−2−(
2H
3)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
31=1,2,3,4−(
13C)−2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
32=U−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),2’−(
2H))エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
33=1,2,3−(
13C)−2−(2’−(
2H),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
34=2−(1’−(
2H
2),2’−(
2H),2’−(
13C))エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
35=1,2,3−(
13C)−2−(
2H
2,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
36=3,4−(
13C)−2−(
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
37=3,4−(
13C)−2−(
2H
3,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
38=3,4−(
13C)−2−(
2H
2,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
39=3,4−(
13C)−2−(
2H,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
40=3,4−(
13C)−2−(
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
41=3,4−(
13C)−2−(
2H,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
42=3,4−(
13C)−2−(
2H
2,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
2)ブタン酸、
43=3,4−(
13C)−2−(
2H
3,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
2)ブタン酸、
44=3,4−(
13C)−2−(
2H
3,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
45=3,4−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
46=3,4−(
13C)−2−(
2H
5,
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
47=3,4−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),2’−(
2H),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
48=3,4−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),2’−(
2H
2),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
49=3,4−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
50=3,4−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),2’−(
2H
2),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
2)ブタン酸、
51=3,4−(
13C)−2−(1’−(
2H
2)−2’−(
2H),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
52=3,4−(
13C)−2−(
2H
5,
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
2)ブタン酸、
53=3,4−(
13C)−2−(
2H
5,
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
54=U−(
13C)−2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
2)ブタン酸、
55=U−(
13C)−2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
56=1,2,3−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),2’−(
2H
2),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
57=U−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),2’−(
2H
2))エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸
を有する。
【0064】
本発明の化合物の式をより良く例示するために、化合物1〜18の発展した式を以下に示す。
【0065】
これらの式中、Xは、
2Hまたは
1Hを示し、Dは、
2Hを示し、C(イタリック体)は、
13Cを示し、Cは、
12Cを示す。
【0067】
より具体的には、式1の化合物が本発明の方法において使用される場合、プロトン化メチル基はバリンのproSメチル基(γ2メチル)およびロイシンのproSメチル基(δ2メチル)であり、
12CH
3である。
【0068】
従って、この化合物により、LeuおよびValアミノ酸を含有するタンパク質の構造的研究を行うことができる。この化合物を用いた標識化により、アミノ酸ValおよびLeuの立体特異性を決定することができ、また30kDa未満のタンパク質において、0.05Hzまでの低さの弱い双極子およびスカラー相互作用を検出することもできる。
【0069】
この式1の化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−3−オキソ−4−(
2H
3)−ブタン酸)により、以下の様式で、タンパク質中に組み込まれたアミノ酸LeuおよびValを標識化することができる。
【0071】
この式1の化合物が、300mg/lのこの式1の化合物を使用した重水素化M9培地中での大腸菌細胞を用いたヒトユビキチンおよび連鎖球菌のタンパク質G(GB3)の生成に使用される場合、これらのタンパク質内でValおよびLeuのproSメチル基のみがプロトン化され、次いで得られた化合物のNMR 1Dスペクトルにおいて観察することができる。
【0072】
式2の化合物(2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソブタン酸)により、
12CH
3でLeuおよびValのproRメチル基を立体特異的に標識化することができる。この化合物により、30kDa未満のタンパク質において、構造的研究、立体特異的帰属、ならびに弱い双極子およびスカラー相互作用の検出をNMRで行うことができる。
【0073】
化合物2によるこれらのメチル基の立体特異的標識化は、アミノ酸LeuおよびValの以下の標識化をもたらす。
【0075】
この式2の化合物を含有する培地の培養により得られるタンパク質のNMR 1Dスペクトルにおいて、ロイシンおよびバリンのproRメチル基、より正確にはバリンのγ1メチル基およびロイシンのδ1メチル基のみを観察することができる。
【0076】
式3の化合物により、
12CH
3でIleのγ2メチル基を特異的に標識化することができる。この化合物により、30kDa未満のタンパク質において、構造的研究、特異的帰属、ならびに弱い双極子およびスカラー相互作用の検出をNMRで行うことができる。
【0077】
式3の化合物(2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸)によるIleのγ2メチル基の標識化を、以下のスキームに示す。
【0079】
この化合物により、タンパク質および生体分子集合体の構造的研究を液体NMRで行うことができる。
【0080】
式4の化合物により、
13CH
3でバリンのproSメチル基(γ2メチル)およびロイシンのproSメチル基(δ2メチル)を立体特異的に標識化することができる。この化合物により、タンパク質および巨大生体分子集合体の構造的研究を液体NMRで行うことができる。
【0081】
式4の化合物(2−ヒドロキシ−2−(
13C)メチル−3−オキソ−4(
2H
3)ブタン酸)によるバリンおよびバリンのproSメチル基の立体特異的標識化を、以下のスキームに示す。
【0083】
式4の化合物が、300mg/Lの式4の化合物の存在下で重水素化M9培地中で大腸菌細胞を用いて生成された、468kDaの12量体プロテアーゼであるTET2(U−[
2H],U−[
12C],Leu/Val−[
13C
1H3]
proSTET2)、およびリンゴ酸シンターゼG(MSG)(U−[
2H],U−[
12C],Leu/Val−[
13C
1H3]
proSMSG)の立体特異的標識化に使用される場合、得られる化合物のメチル−TROSYスペクトルは、メチル基の共鳴の半分のみを観察することができることを示す。
【0084】
式5の化合物(2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4(
13C)ブタン酸)により、
13CH
3でバリンのproRメチル基(γ1メチル)およびロイシンのproRメチル基(δ1メチル)を立体特異的に標識化することができる。
【0085】
この化合物により、タンパク質および巨大生体分子集合体の構造的研究を液体NMRで行うことができる。
【0086】
この式5の化合物による標識化は、以下のスキームに示されるように標識化されたアミノ酸ロイシンおよびバリンをもたらす。
【0088】
式5の化合物が、300ml/Lの式5の化合物の存在下で重水素化M9培地中で大腸菌細胞を用いて生成された、468kDaの12量体プロテアーゼであるTET2(U−[
2H],U−[
12C],Leu/Val−[
13C
1H
3]
proRTET2)を得るために使用される場合、得られる化合物のメチル−TROSYスペクトルは、2個のメチル基上でプロトン化されるイソバレレートから生成されるTET2のスペクトルと比較して、メチル基の共鳴の半分のみを示す。
【0089】
式6の化合物(2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4(
13C)メチルブタン酸)により、
13CH
3でイソロイシンのγ2メチル基を標識化することができる。
【0090】
この化合物により、タンパク質および巨大生体分子集合体の構造的研究を液体NMRで行うことができる。
【0091】
この化合物は、以下のスキームに示されるように標識化された(L)−イソロイシンをもたらす。
【0093】
300mg/Lの式6の化合物の存在下で重水素化M9培地中で生成された、468kDaの12量体プロテアーゼであるTET2(U−[
2H],U−[
12C],Ile−[
13C
1H
3]
γ2TET2)のメチル−TROSYスペクトルは、イソロイシンのγ2メチル基のみを示す。
【0094】
式7の化合物(U−(
13C)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3−オキソ−4(
2H
3)ブタン酸)により、タンパク質および巨大生体分子集合体中のバリンのproSメチル基(γ2メチル)およびロイシンのproSメチル基(δ2メチル)を、液体NMRで立体選択的に帰属させることができる。
【0095】
この化合物は、ロイシンおよびバリンの以下の標識化をもたらす。
【0097】
式8の化合物(U−(
13C)−2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソブタン酸)により、タンパク質および巨大生体分子集合体中のバリンのproRメチル基(γ1メチル)およびロイシンのproRメチル基(δ1メチル)を、液体NMRで立体選択的に帰属させることができる。
【0098】
式8の化合物は、タンパク質および生体分子集合体中のロイシンおよびバリンアミノ酸の以下の標識化をもたらす。
【0100】
式9の化合物(1,2,3,4−(
13C)−2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸)により、タンパク質および生体分子集合体中のイソロイシンのγ2メチル基を、液体NMRで帰属させることができる。
【0101】
イソロイシンは、以下に示されるように標識化される。
【0103】
式10の化合物(2−ヒドロキシ−2−(
2H,
13C)メチル−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸)により、
13CDH
2でバリンのproSメチル基(γ2メチル)およびロイシンのproSメチル基(δ2メチル)を立体特異的に標識化することができる。
【0104】
この化合物は、液体NMRによるタンパク質の
2H動力学的研究に使用することができる。
【0105】
以下のスキームは、アミノ酸ロイシンおよびバリンがこの式10の化合物で標識化される様式を示している。
【0107】
式11の化合物(2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4−(
2H,
13C)ブタン酸)により、
13CDH
2でバリンのproRメチル基(γ1メチル)およびロイシンのproRメチル基(δ1メチル)を立体特異的に標識化することができる。
【0108】
この化合物は、液体NMRによるタンパク質の
2H動力学的研究に使用することができる。この化合物は、以下のスキームに示す様式で、アミノ酸ロイシンおよびバリンを標識化する。
【0110】
式12の化合物(2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4(
2H,
13C)ブタン酸)により、
13CDH
2でイソロイシンのγ2メチル基を特異的に標識化することができる。
【0111】
この化合物は、液体NMRによるタンパク質の
2H動力学的研究に使用することができる。
【0112】
式12の化合物は、以下のスキームに示されるように(L)−イソロイシンを標識化する。
【0114】
式13の化合物(2−ヒドロキシ−2−(
2H
2,
13C)メチル−3−オキソ−4(
2H
3)ブタン酸)により、
13CHD
2でバリンのproSメチル基(γ2メチル)およびロイシンのproSメチル基(δ2メチル)を立体特異的に標識化することができる。
【0115】
この化合物は、タンパク質の固体NMR、および液体NMRによるタンパク質の動力学的研究に使用することができる。
【0116】
以下のスキームは、化合物13がタンパク質中のロイシンおよびバリンを標識化する様式を示す。
【0118】
式14の化合物(2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4−(
2H
2,
13C)ブタン酸)により、
13CHD
2でバリンのproRメチル基(γ1メチル)およびロイシンのproRメチル基(δ1メチル)を立体特異的に標識化することができる。
【0119】
この化合物は、タンパク質の固体NMR、および液体NMRによるタンパク質の動力学的研究に使用することができる。
【0120】
この化合物は、以下のスキームに示されるようにロイシンおよびバリンを標識化する。
【0122】
式15の化合物(2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4(
2H
2,
13C)ブタン酸)により、
13CHD
2でタンパク質中のイソロイシンのγ2メチル基を特異的に標識化することができる。
【0123】
この化合物は、タンパク質の固体NMR、および液体NMRによるタンパク質の動力学的研究に使用することができる。
【0124】
この化合物は、以下のスキームに示されるようにイソロイシンを標識化する。
【0126】
式16の化合物(U−(
13C)−2−ヒドロキシ−2−(
2H
2)メチル−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸)は、タンパク質の固体NMRに使用することができる。
【0127】
この化合物により、以下のスキームに示されるように、タンパク質中のバリンおよびロイシンの炭素鎖を、ならびに
13CHD
2でバリンのproSメチル基(γ2メチル)およびロイシンのproSメチル基(δ2メチル)を標識化することができる。
【0129】
式17の化合物(U−(
13C)−2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4−(
2H
2)ブタン酸)は、タンパク質の固体NMRに使用することができる。
【0130】
この化合物により、以下のスキームに示されるように、タンパク質中のロイシンおよびバリンの炭素鎖を、ならびに
13CHD
2でバリンのproRメチル基(γ1メチル)およびロイシンのproRメチル基(δ1メチル)を標識化することができる。
【0132】
式18の化合物(1,2,3,4−(
13C)−2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
2)ブタン酸)は、タンパク質の固体NMRに使用することができる。
【0133】
この化合物により、以下のスキームに示されるように、タンパク質中の炭素鎖を、および
13CHD
2でイソロイシンのγ2メチル基を標識化することができる。
【0135】
要約すると、式Iのアセトラクテート誘導体のうち、
1)NMRシグナルの帰属および/または構造的制限の測定により適切な誘導体は、以下の式:
4=2−ヒドロキシ−2−(
13C)メチル−3−オキソ−4(
2H
3)ブタン酸、
5=2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4(
13C)ブタン酸、
6=2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
13C)メチルブタン酸、
9=1,2,3,4−(
13C)−2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
21=1,2,3−(
13C)−2−(
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
22=1,2,3,4−(
13C)−2−(
2H
3)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
24=1,2,3−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),
13C
2)エチル)−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
36=3,4−(
13C)−2−(
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
37=3,4−(
13C)−2−(
2H
3,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸
40=3,4−(
13C)−2−(
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
45=3,4−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
46=3,4−(
13C)−2−(
2H
5,
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
49=3,4−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸
を有し、
2)液体NMRによる動力学的研究、および固体NMRにおける使用に好ましく使用される誘導体は、以下の式:
13=2−ヒドロキシ−2−(
2H
2,
13C)メチル−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
14=2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4−(
2H
2,
13C)ブタン酸、
15=2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
2,
13C)ブタン酸、
34=2−(1’−(
2H
2),2’−(
2H),2’−(
13C))エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸
の化合物であり、また、
3)
2H NMRによる動力学的研究においては、好ましい式Iのアセトラクテート誘導体は、以下の式:
10=2−ヒドロキシ−2−(
2H,
13C)メチル−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
11=2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4−(
2H,
13C)ブタン酸、
12=2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H,
13C)ブタン酸
を有する。
【0136】
式4の化合物を使用して、NMR分光法により3D構造が決定されている最大モノマータンパク質(82kDa)であるリンゴ酸シンターゼG(MSG)に本発明の標識化方法を適用した。
【0137】
本発明の化合物4の存在下で大腸菌で過剰発現した特異的プロトン化MSGのメチル−TROSYスペクトルを、2−オキソ−3−(
2H
3)−3−(
2H)−4−(
13C)−ケトイソバレレートの存在下で大腸菌で過剰発現したMSGのメチル−TROSYスペクトルと比較した。
【0138】
これらのスペクトルの直接比較は、α-ケトイソバレレートを本発明の化合物と置き換えると、NMRスペクトルの感度が1.6倍(理論的には2倍)増加し、ピーク数が2つ減少することを示している。
【0139】
合成2−(
13C)メチル−4−(
2H
3)−アセトラクテート(式4の化合物)を使用してタンパク質を調製すると、Val−γ
2およびLeu−δ
2メチル基のシグナルのみを観察することができる。
【0140】
Val−γ
1およびLeu−δ
1メチル基のシグナルが存在しないことは、2−(S)−アセトラクテートの2位における
13C
1H
3メチル置換基が、生体内において、ケトール−イソメラーゼにより2,3−ジヒドロキシ−イソバレレートのproS位に立体特異的に移動すること、また、Leu/Val生合成経路の後続の段階においてメチル相互交換が生じないことを裏付けている。
【0141】
さらに、CH
2DおよびCD
2Hアイソトポマーのシグナルは検出されなかったが、これは、M9/D
2O培地へのアセトラクテートの導入後にH/D交換が生じないことを実証している。最後に、他のメチン、メチレンまたはメチル部位へのスクランブリングは検出されなかったが、これは、過剰のアセトラクテートが生体内で他の代謝経路に干渉しないことを示している。
【0142】
したがって、特異的に標識化されたアセトラクテートの使用は、検出可能なスクランブリングなしに、完全に過重水素化されたタンパク質バックグラウンドにおけるLeuおよびVal側鎖の完全および立体特異的メチル標識化を実現するための効率的な方法である。
【0143】
アセトラクテート誘導体は、他の代謝経路内に組み込まれないため、これらの誘導体は、Ile−[CH
3]
δ1またはAla−[CH
3]
βメチル基の特異的標識化に提案されるもの等の他の前駆体と組み合わせて都合良く使用することができる。
【0144】
この新たな標識化スキームの明らかな第1の用途は、Leu、ValおよびIleのメチル基の立体特異的帰属である。
【0145】
メチル共鳴を連続的に帰属された骨格核に関連付けるための効率的な方法が存在するものの、プロキラルメチル基の立体特異的帰属は依然として困難である。従来の手法では、断片的[
13C]標識化方法または小さいスカラーカップリングの測定が関与していた。
【0146】
これらの手法は、低分子量および中分子量のタンパク質には有用であることが示されているが、より大きなタンパク質へのその適用は困難である。それと比較して、Leu、Val、およびIleメチル基の立体特異的帰属は、本発明による式4の化合物を用いて生成された特異的プロトン化タンパク質に対して記録された2Dメチル−TROSYスペクトルを視覚的に調べることにより、直接得ることができる。
【0147】
この方法は、Leu/Valメチル基の98%が立体特異的に明白に帰属されたMSG(82kDa)に対して実証されるように、巨大タンパク質に直接適用可能である。
【0148】
メチル基の特異的プロトン化は、タンパク質における長距離にわたる距離制限を抽出するための有効な方法である。
【0149】
巨大タンパク質に対して、メチル間NOEの抽出は、一般に、
13C−edited 4D NOESYスペクトルの低い固有分解能により妨げられる。
【0150】
本発明の方法によるプロキラルメチル基の立体特異的標識化を使用したスペクトルの単純化は、Nuclear Over Hauser効果(NOE)クロスピークの分析における曖昧さを大きく低減する。
【0151】
proSおよびproRメチル基の間のNOEは、立体特異的に標識化された試料を用いては検出されない。しかしながら、2−オキソ−3−(
2H
3)−3−(
2H)−4−(
13C)−ケトイソバレレートの代わりに本発明の化合物4を使用すると、proSメチル基のプロトン化レベルが理論的に2倍増加し、一方これは残りのNOEクロスピークの強度を理論的に4倍増加させる。
【0152】
この感度の増幅は、より離れたproSメチル基間の構造的に重要な長距離にわたる新たなNOEクロスピークの検出をもたらし、これにより、proRメチル基が関与するNOEの損失を補償する。
【0153】
4D NOESYスペクトルから抽出された距離制限を比較すると、Leu/Valメチル基の立体特異的標識化により、NOEが検出され得る距離閾値が約20%増加することが明らかとなった。メチル基のプロキラル特異的標識化は、NOE分析の時間を要するステップを単純化するための魅力的な手法であるだけでなく、巨大タンパク質において測定され得る構造的に重要な
1H−
1H距離の範囲を大きく拡張させる。
【0154】
本発明の方法はまた、Val、Leu、およびIleからなる群から選択されるアミノ酸の特異的同位体標識化、より具体的には、LeuおよびValのメチル基の特異的標識化、ならびにイソロイシンのγ2メチル基の特異的標識化に使用することができる。
【0155】
本発明の別の目的は、以下の式I−1:
【0157】
(式中、
Xは、溶媒の性質に依存して
1Hまたは
2H(D)である交換可能な水素であり、
各Yは、互いに独立して
12Cまたは
13Cであり、
R
1は、炭素原子が
13Cまたは
12Cであり、水素原子が互いに独立して
1Hまたは
2H(D)であるメチル基であり、
R
2は、炭素原子が
13Cもしくは
12Cであり、水素原子が互いに独立して
1Hもしくは
2H(D)であるメチル基、または、炭素原子が互いに独立して
13Cもしくは
12Cであり、水素原子が互いに独立して
1Hもしくは
2H(D)であるエチル基であり、
ただし、
1)式Iのアセトラクテート誘導体の水素原子は、同時に全てが
1Hまたは
2H(D)ではなく、
2)R
1の水素原子およびR
2の水素原子は、同時に全てが
1Hまたは
2H(D)ではなく、
3)R
1の全ての水素原子が
2Hである場合、式I−1中の炭素原子は、全て同時に
12Cではない)
のアセトラクテート誘導体である。
【0158】
本発明の好ましい化合物は、式I−1(式中、
R
1は、以下の基:
12CH
3、
12CD
3、
13CH
3、
13CD
3、
13CHD
2、
13CH
2D
の中から選択され、
R
2は、以下の基:
12CH
3、
12CD
3、
13CH
3、
13CD
3、
13CHD
2、
13CH
2D、
12CH
312CD
2、
12CD
312CD
2、
13CH
312CD
2、
13CH
313CD
2、
13CD
313CD
2、
13CHD
213CD
2、
13CH
2D
13CD
2、
13CHD
212CD
2、
13CH
2D
12CD
2
の中から選択され、
各Yは、互いに独立して
12Cまたは
13Cであり、
ただし、
1)式Iのアセトラクテート誘導体の水素原子は、同時に全てが
1Hまたは
2H(D)ではなく、
2)R
1の水素原子およびR
2の水素原子は、同時に全てが
1Hまたは
2H(D)ではなく、
3)R
1の全ての水素原子が
2Hである場合、式I−1中の炭素原子は、全て同時に
12Cではない)
を有する。
【0159】
本発明の好ましい化合物は、以下の式2〜57の化合物である。
2=2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソブタン酸、
3=2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
4=2−ヒドロキシ−2−(
13C)メチル−3−オキソ−4(
2H
3)ブタン酸、
5=2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4(
13C)ブタン酸、
6=2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
13C)メチルブタン酸、
7=U−(
13C)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3−オキソ−4(
2H
3)ブタン酸、
8=U−(
13C)−2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソブタン酸、
9=1,2,3,4−(
13C)−2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
10=2−ヒドロキシ−2−(
2H,
13C)メチル−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
11=2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4−(
2H,
13C)ブタン酸、
12=2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H,
13C)ブタン酸、
13=2−ヒドロキシ−2−(
2H
2,
13C)メチル−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
14=2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4−(
2H
2,
13C)ブタン酸、
15=2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
2,
13C)ブタン酸、
16=U−(
13C)−2−ヒドロキシ−2−(
2H
2)メチル−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
17=U−(
13C)−2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4−(
2H
2)ブタン酸、
18=1,2,3,4−(
13C)−2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
2)ブタン酸、
19=2−(1’−(
2H
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
20=2−((1’−(
2H
2),2’−(
13C))エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
21=1,2,3−(
13C)−2−(
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
22=1,2,3,4−(
13C)−2−(
2H
3)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
23=U−(
13C)−2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
24=1,2,3−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),
13C
2)エチル)−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
25=U−(
13C)−2−(1’−(
2H
2))エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
26=U−(
13C)−2−(
2H)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
27=U−(
13C)−2−(
2H
3)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
28=U−(
13C)−2−((
2H
5)エチル)−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
29=1,2,3−(
13C)−2−(
2H,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
30=1,2,3,4−(
13C)−2−(
2H
3)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
31=1,2,3,4−(
13C)−2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
32=U−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),2’−(
2H))エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
33=1,2,3−(
13C)−2−(2’−(
2H),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
34=2−(1’−(
2H
2),2’−(
2H),2’−(
13C))エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
35=1,2,3−(
13C)−2−(
2H
2,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
36=3,4−(
13C)−2−(
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
37=3,4−(
13C)−2−(
2H
3,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
38=3,4−(
13C)−2−(
2H
2,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
39=3,4−(
13C)−2−(
2H,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
40=3,4−(
13C)−2−(
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
41=3,4−(
13C)−2−(
2H,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
42=3,4−(
13C)−2−(
2H
2,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
2)ブタン酸、
43=3,4−(
13C)−2−(
2H
3,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
2)ブタン酸、
44=3,4−(
13C)−2−(
2H
3,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
45=3,4−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
46=3,4−(
13C)−2−(
2H
5,
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
47=3,4−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),2’−(
2H),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
48=3,4−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),2’−(
2H
2),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
49=3,4−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
50=3,4−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),2’−(
2H
2),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
2)ブタン酸、
51=3,4−(
13C)−2−(1’−(
2H
2)−2’−(
2H),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
52=3,4−(
13C)−2−(2H
5,
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
2)ブタン酸、
53=3,4−(
13C)−2−(2H
5,
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
54=U−(
13C)−2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
2)ブタン酸、
55=U−(
13C)−2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H)ブタン酸、
56=1,2,3−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),2’−(
2H
2),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
57=U−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),2’−(
2H
2))エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸。
【0160】
これらの化合物のうち、以下の式の化合物が好ましい。
4=2−ヒドロキシ−2−(
13C)メチル−3−オキソ−4(
2H
3)ブタン酸、
5=2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4(
13C)ブタン酸、
6=2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
13C)メチルブタン酸、
9=1,2,3,4−(
13C)−2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
21=1,2,3−(
13C)−2−(
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
22=1,2,3,4−(
13C)−2−(
2H
3)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
24=1,2,3−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),
13C
2)エチル)−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
36=3,4−(
13C)−2−(
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
37=3,4−(
13C)−2−(
2H
3,
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸
40=3,4−(
13C)−2−(
13C)メチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
45=3,4−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
46=3,4−(
13C)−2−(
2H
5,
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸、
49=3,4−(
13C)−2−(1’−(
2H
2),
13C
2)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソブタン酸。
【0161】
しかしながら、さらに他の好ましい化合物は、以下の式を有する。
13=2−ヒドロキシ−2−(
2H
2,
13C)メチル−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
14=2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4−(
2H
2,
13C)ブタン酸、
15=2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
2,
13C)ブタン酸、
34=2−(1’−(
2H
2),2’−(
2H),2’−(
13C))エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸。
【0162】
本発明による他の好ましいアセトラクテート誘導体は、以下の式を有する。
10=2−ヒドロキシ−2−(
2H,
13C)メチル−3−オキソ−4−(
2H
3)ブタン酸、
11=2−ヒドロキシ−2−(
2H
3)メチル−3−オキソ−4−(
2H,
13C)ブタン酸、
12=2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4−(
2H,
13C)ブタン酸。
【0163】
本発明はまた、式1、より具体的には式1〜18の化合物を製造するための方法であって、
a)炭素原子が
13Cもしくは
12Cであり、水素原子が互いに独立して
1Hもしくは
2H(D)であるメチル基、または、炭素原子が互いに独立して
13Cもしくは
12Cであり、水素原子が互いに独立して
1Hもしくは
2H(D)であるエチル基により、保護基、好ましくはメチルまたはエチル基で保護された1位にヒドロキシル基を有する3−オキソブタノエートをアルキル化するステップと、
b)ステップa)において得られた化合物をヒドロキシル化するステップと、
c)必要に応じて、脱保護して
2H原子で所望の
1H原子を交換するステップと
を含み、
ヒドロキシル化するステップb)は、ニッケル(II)イオンの存在下でジメチルジオキシランを用いることにより行われる方法を提案する。
【0164】
本発明の方法によるヒドロキシル化するステップb)により、方法の全収率を90%超まで改善することができ、一方、先行技術により示唆されるように、このヒドロキシル化ステップを、触媒としてのコバルトまたはセリウムイオンの存在下で酸素分子を用いて行うと、方法の全収率は、他のいずれかのステップが変更されない限り、わずか約50%である。
【0165】
本発明の標識化方法は、生体分子集合体に含まれるものを含むタンパク質のNMRによる分析に特に適切である。
【0166】
したがって、本発明はまた、NMRによりタンパク質を分析するための方法を提案する。
【0167】
第1の実施形態において、この方法は、本発明の標識化方法により、分析するタンパク質を標識化するステップを含む。
【0168】
第2の実施形態において、この方法は、以下の式I:
【0170】
(式中、
Xは、
1Hまたは
2H(D)であり、
各Yは、互いに独立して
12Cまたは
13Cであり、
R
1は、炭素原子が
13Cまたは
12Cであり、水素原子が互いに独立して
1Hまたは
2H(D)であるメチル基であり、
R
2は、炭素原子が
13Cもしくは
12Cであり、水素原子が互いに独立して
1Hもしくは
2H(D)であるメチル基、または、炭素原子が互いに独立して
13Cもしくは
12Cであり、水素原子が互いに独立して
1Hもしくは
2H(D)であるエチル基であり、
ただし、
1)式Iのアセトラクテート誘導体の水素原子は、同時に全てが
1Hまたは
2H(D)ではなく、
2)R
1の水素原子およびR
2の水素原子は、同時に全てが
1Hまたは
2H(D)ではない)
の化合物で、分析するタンパク質を標識化するステップを含む。
【0171】
第3の実施形態において、この方法は、以下の式I−1:
【0173】
(式中、
Xは、
1Hまたは
2H(D)であり、
各Yは、互いに独立して
12Cまたは
13Cであり、
R
1は、炭素原子が
13Cまたは
12Cであり、水素原子が互いに独立して
1Hまたは
2H(D)であるメチル基であり、
R
2は、炭素原子が
13Cもしくは
12Cであり、水素原子が互いに独立して
1Hもしくは
2H(D)であるメチル基、または、炭素原子が互いに独立して
13Cもしくは
12Cであり、水素原子が互いに独立して
1Hもしくは
2H(D)であるエチル基であり、
ただし、
1)式Iのアセトラクテート誘導体の水素原子は、同時に全てが
1Hまたは
2H(D)ではなく、
2)R
1の水素原子およびR
2の水素原子は、同時に全てが
1Hまたは
2H(D)ではなく、
3)R
1の全ての水素原子が
2Hである場合、式I−1中の炭素原子は、全て同時に
12Cではない)
の化合物で、分析するタンパク質を標識化するステップを含む。
【0174】
本発明をより良く理解するために、本発明の標識化方法を行う例を以下に示す。この例は、例示のみを目的とし、決して本発明を制限しない。
【実施例】
【0175】
1.選択的メチル標識化アセトラクテートの合成
エチル2−(
13C)メチル−3−オキソブタノエート
エチル3−オキソブタノエート(A)12.15mL(95.4mmol)、K
2CO
314.5g(104.9mmol)およびヨウ化
13C−メチル(Cambridge Isotope Laboratories, Inc.製)15.0g(104.9mmol)の無水エタノール120mL中の混合物を、アルゴン下で90時間40℃に加熱した。濾過後、濾液を真空下で濃縮すると、生成物12.30g(収率89%)が得られたが、これはそれ以上精製することなく使用するのに十分純粋であった。
1H NMR (CDCl
3); 4.21 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 3.51 (dq, J = 7.2, 4.4 Hz, 1H), 2.25 (s, 3H), 1.35(dd, J = 130.4, 7.2 Hz, 3H), 1.29 (t, J = 7.1 Hz, 3H).
エチル2−ヒドロキシ−2−(
13C)メチル−3−オキソブタノエート(B)
新しく調製したジメチルジオキシランにより、ニッケル(II)イオンの存在下でヒドロキシル化反応を行った。エチル2−(
13C)メチル−3−オキソブタノエート50mg(0.345mmol)の蒸留水3mL中の混合物に、Ni(OAc)
2.4H
2O 8.6mg(0.035mmol)を、および0℃でジメチルジオキシラン(0.05〜0.10M)のアセトン中の未滴定溶液20mLを続けて添加した。得られた溶液を室温まで温め、24時間撹拌した。次いで有機溶媒を真空下で蒸発させ、得られた水性残渣をジクロロメタンで抽出した(4回)。有機抽出物をNa
2SO
4上で乾燥させ、真空下で濃縮すると、エチル2−ヒドロキシ−2−(
13C)メチル−3−オキソブタノエート51mg(0.317mmol、収率92%、変換率>90%)が無色液体として得られたが、これはそれ以上精製せずに使用するのに十分純粋であった。
NMR分光法:
1H NMR (CDCl
3); 4.25(q, J = 7.1 Hz, 2H), 2.27 (s, 3H), 1.58 (d,
1J
H-13C = 130.3 Hz, 3H), 1.29 (t, J = 7.1 Hz, 3H).
2−ヒドロキシ−2−(
13C)メチル−3−オキソ−4−(
2H
3)−ブタノエート(または2−(
13C)メチル−4−(
2H
3)−アセトラクテート)(式4の化合物)
エチル2−ヒドロキシ−2−(
13C)メチル−3−オキソブタノエート(B)の4位のメチル基の脱保護およびプロトン交換を、pH13のD
2O中で達成した。典型的には、300mgのBを0.1M NaOD/D
2O溶液24mLに添加した。脱保護は、NMR分光法で観察されるように、即時的であった。4−メチルに対する交換の完了もまた、NMR分光法によりリアルタイムで追跡した。末端メチル基の97±1%のプロトンが、30分後に交換され、一方2位のメチル置換基が、98±1%のレベルでプロトン化されたままであった。脱保護反応は水酸化物イオンを消費するため、pH、ひいては重水素交換率は反応中に減少する。交換が完了したら、溶液をDClで中性pHに調節し、D
2O中の1M TRIS(pH8)2mLを添加した。次いで、式4の化合物の溶液を、必要となるまで−20℃で保存した。
【0176】
【化30】
【0177】
2−(
13C)メチル−4−(
2H
3)−アセトラクテートの化学合成のための詳細なプロトコルを上に示す。
13C核は、イタリック体の太字で示されている。アセトラクテートに
13C
1H
3基を組み込んだ後の、Leu/Val生合成経路の異なる中間体における立体化学が図に示されている(M9/D
2O系培地中での成長を想定)。各生合成中間体は、京都遺伝子ゲノム百科事典(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)に従い命名されている。反応の触媒を担う酵素は、EC番号で示されている。EC1.1.1.86:ケトール酸リダクトイソメラーゼ、EC4.2.1.9:ジヒドロキシ酸脱水酵素、EC2.6.1.42:分岐鎖アミノ酸アミノトランスフェラーゼ、EC2.3.3.13:2−イソプロピルマレートシンターゼ、EC4.2.1.33:3−イソプロピルマレート脱水酵素、EC1.1.1.85:3−イソプロピルマレートデヒドロゲナーゼ。Leu/Val代謝経路に関するさらなる情報は、http://www.genome.jp/kegg/でオンラインで見出すことができる。
2.大腸菌におけるメチル立体特異的標識化タンパク質の過剰発現
過剰発現タンパク質へのアセトラクテートの組込みの最適化
ユビキチンをモデル系として使用して、過剰発現タンパク質へのアセトラクテートの組込みレベルを決定するための初期実験を行った。ヒトHisタグユビキチン(pET41c−His−Ubi)遺伝子を有するpET41cプラスミドで大腸菌BL21(DE3)細胞を形質転換し、1g/Lの
15ND
4Clおよび2g/LのU−[
2H],U−[
13C],グルコースを含有するM9/D
2O培地中で形質転換細胞を成長させた。600nmにおける光学密度(O.D.)が0.8に達したら、未標識化アセトラクテートを含有する溶液を添加した。さらに1時間後、1mMの最終濃度までIPTGを添加することによりタンパク質発現を誘導した。誘導は、37℃で3時間行った。Ni−NTA(Qiagen社製)クロマトグラフィーによりユビキチンを一段階で精製した。
【0178】
過剰発現タンパク質へのほぼ完全な組込みを達成するために必要なアセトラクテートの最適量を、異なる量の非標識化前駆体が0、100、200、300および800mg/Lの最終濃度まで誘導の1時間前に添加された一連の培地(それぞれ90mL)中で算定した。精製タンパク質への組込みレベルを、直接検出
13C 1D NMRにより監視した。過剰発現タンパク質に前駆体が組み込まれると、
13C−L、V残基は、
12C側鎖を有するアミノ酸により置き換えられる。定量化は、4つの分離されたLeu/Valメチル共鳴(19〜21ppm)のシグナルの積分値を、Ile、Ala(9〜19ppmの間)のメチル基のシグナルに対して比較することにより行った。M9/D
2O培地1リットル当たり純粋アセトラクテート300mgを添加することにより、他のアミノ酸生合成経路への検出可能なスクランブリングなしに、Leu/Val側鎖への95%の組込みレベルが達成される。
U−[
2H],U−[
15N],Leu/Val−[
13C
1H
3]
proSタンパク質の生成
過剰発現タンパク質(TET2またはMSG)のプラスミドを有する大腸菌BL21(DE3)を、1g/Lの
15ND
4Clおよび2g/LのD−グルコース−d
7(Isotec社製)を含有するM9/D
2O培地に、24時間にわたり3段階で徐々に馴化した。最終的培養において、99.85%D
2O(Eurisotop社製)で調製したM9培地中で細菌を37℃で成長させた。O.D.(600nm)が0.8に達したら、2−(
13C)メチル−4−(
2H
3)−アセトラクテート(式4の化合物)を含有する溶液(上述のプロトコルを用いて調製)を添加した。300mg/Lの最終濃度までアセトラクテートを培地に添加した。1時間後、1mM(/0.1mM)の最終濃度までIPTGを添加することによりTET2(/MSG)発現を誘導した。採取前に、37℃(/20℃)で3時間(/12時間)発現を行った。MSGに対して、600MHzのプロトン周波数で動作するNMR分光器で、D
2O中37℃で
13Cスペクトルを記録した。
13CスペクトルにおいてLeuおよびValメチル炭素のシグナルのみが観察されたが、これは、アセトラクテートの
13C
1H
3基が他のアミノ酸の代謝経路内に組み込まれなかったことを示している。
U−[
2H],U−[
15N],Ile−[
13C
1H
3]
γ2タンパク質の生成
過剰発現タンパク質(TET2またはMSG)のプラスミドを有する大腸菌BL21(DE3)を、1g/Lの
15ND
4Clおよび2g/LのD−グルコース−d
7(Isotec社製)を含有するM9/D
2O培地に、24時間にわたり3段階で徐々に馴化した。最終的培養において、99.85%D
2O(Eurisotop社製)で調製したM9培地中で細菌を37℃で成長させた。O.D.(600nm)が0.8に達したら、2−(
2H
5)エチル−2−ヒドロキシ−3−オキソ−4(
13C)ブタノエート(式6の化合物)を含有する溶液(上述のプロトコルを用いて調製)を添加した。300mg/Lの最終濃度まで生成物を培地に添加した。1時間後、1mM(/0.1mM)の最終濃度までIPTGを添加することによりTET2(/MSG)発現を誘導した。採取前に、37℃(/20℃)で3時間(/12時間)発現を行った。
U−[
2H],U−[
15N],Leu/Val−[
13C
1H
3,
12C
2H
3]タンパク質の生成
比較を目的として、LeuおよびValメチル基を非立体特異的に
13C
1H標識化した過重水素化タンパク質の生成を、本発明の前に使用されていたプロトコル、すなわち、V.Tugarinovら、J.Biomol.NMR 2004、28、165〜172頁およびR.Lichteneckerら、J.Am.Chem.Soc.2004、126、5348〜5349頁に記載のプロトコルを使用して達成した。
【0179】
このプロトコルは、上述のプロトコルであるが、誘導の1時間前に、300mg/Lの標識化アセトラクテート(式4の化合物)の代わりに、125mg/Lの3−(
2H
3)メチル−3−(
2H)−4−(
13C)−ケトイソバレレート(Isotec社製)を添加した。
U−[
2H],U−[
15N],U−[
12C],U−[
13C
1H
3]
proS−Leu/Val,U−[
13C
1H
3]−Alaタンパク質の生成
上述の一般的プロトコルを使用して、Leu/Val proSメチル基およびAla位を立体特異的に
13C
1H標識化した過重水素化タンパク質の生成を達成したが、誘導の1時間前に、300mg/Lの標識化アセトラクテート(式4の化合物)と共に、800mg/Lの2−(S)−2−(
2H)−3−(
13C)−アラニン(CortecNet社製)を添加した。800MHzのプロトン周波数で動作するNMR分光器で、D
2O中37℃で2D
13C−メチルTROSYスペクトルを記録した。アラニンメチル基ならびにLeuおよびVal側鎖のproSメチル基の予測されるシグナルに対応するピークのみが観察されたが、これは、アセトラクテート誘導体を使用した標識化が他のメチル標識化プロセスに干渉しないことを示している。
タンパク質精製
最初にキレート化セファロースクロマトグラフィー(GE Healthcare社製)により、続いてゲル濾過クロマトグラフィー(Superdex 200pg、GE Healthcare社製)によりリンゴ酸シンターゼG(MSG)を精製した。精製後の典型的な最終収率は、60〜80mg/Lのメチル特異的プロトン化MSGであった。典型的なNMR試料中のMSGの濃度は、25mMのMES(pH7.0、非補正)、20mMのMgCl
2、5mMのDTTを含有する100%D
2O緩衝液中1mMであった。NMRデータは、37℃で取得した。
【0180】
2つの陰イオン交換クロマトグラフィーステップ(DEAE Sepharose CL−6B、およびResource Q 6mL、GE Healthcare社製)を使用し、続いてゲル濾過(Sephacryl S−300 HR、GE Healthcare社製)によりTET2を精製した。精製後の典型的な最終収率は、20mg/Lのメチル特異的プロトン化TET2であった。このようにして調製された試料は、完全に活性であることが実証された(Leu−4−ニトロアニリドを使用した加水分解活性により測定)。TETの最終NMR試料は、D
2O300μLに溶解した20mMのTris(pH7.4、非補正)、20mMのNaCl中の約80μMのTET2 12量体(約1mMのモノマー)からなっていた。NMRデータは、50℃で取得した。
3.NMR分光法
実験の詳細
ユビキチンおよびMSGの全ての
1Hおよび
13C 1D NMRスペクトルは、極低温三重共鳴パルス場勾配プローブヘッドを備えた、600MHzのプロトン周波数で動作するVarian DirectDrive分光器で記録した。
【0181】
2Dメチル−TROSYスペクトルは、極低温三重共鳴パルス場勾配プローブヘッドを備えた、800MHzのプロトン周波数で動作するVarian DirectDrive分光器で記録した。MSG(/TET2)の
1H−
13C HMQCは、直接次元(最大t
2=99ms(/60ms))において1288(/780)の複合データポイントで、および炭素次元(最大t
1=128ms(/47ms))において512(/380)のポイントで記録した。
【0182】
4D HMQC−NOESY−HMQC実験データは、極低温三重共鳴パルス場勾配プローブヘッドを備えた、800MHzのプロトン周波数で動作するVarian DirectDrive分光器で記録した。データは、300msのNOE混合時間で、96時間のMSGの1mM試料で取得した。実験データは、間接
1H次元(最大t
1=30ms)において20の複合ポイント、第1および第2の炭素次元(最大t
2=21msおよびt
3=11ms)において36および18の複合ポイント、ならびに直接次元(最大t
4=80ms)において201の複合ポイント、また増分当たり4スキャンで収集した。全てのデータは、nmrPipe/nmrDrawおよびNMRViewを使用して処理および分析した。距離は、Sounierら、J.Am.Chem.Soc.2007、129、472〜473頁に記載のように、メチル特異的プロトン化タンパク質における離れたプロトン間のNOEの完全緩和行列解析を用いて定量化した。
Leu/Valメチル特異的標識化TET2試料(468kDa)に対して記録されたメチル−TROSYスペクトルの比較
3−(
2H
3)メチル−3−(
2H)−4−(
13C)−ケトイソバレレートを使用して調製された、非立体特異的に[
13C
1H
3]−メチル標識化したU−[
2H],U−[
12C],Leu/Val−[
12C
2H
3,
13C
1H
3]TET2に対して、および2−(
13C)メチル−4−(
2H
3)−アセトラクテート(式4の化合物)を使用して調製された、立体特異的に標識化したU−[
2H],U−[
12C],Leu/Val−[
13C
1H
3]
proSTET2に対して、800MHzのプロトン周波数で動作するNMR分光器で、D
2O中50℃で2D
13C−メチルTROSYスペクトルを記録した。非立体特異的標識化スキームを使用したTET2集合体の調製では、アマスタチン誘導化学シフト変化の観察を大きく妨げるであろう相当量のクロスピーク重複を有するスペクトルが得られた(アマスタチンは、TET2の阻害剤である)。