(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定操作片を備えたベース部材と、該固定操作片に対して接近、離間可能に支持された可動操作片と、該可動操作片を前記固定操作片から離間させる方向へ付勢する弾性部材と、前記ベース部材に設けた2つの軸支部によって夫々回動自在に軸支された基端挟圧片、及び各基端挟圧片との間に設けた1又は複数の回動関節部を介して回動自在に軸支された先端挟圧片を夫々有した2つの有関節挟圧部材と、前記各先端挟圧片に両端部を夫々固定され、前記各回動関節部を経て前記ベース部材に中間部を配線した第1の線材と、前記各先端挟圧片に両端部を夫々固定され、前記各回動関節部を経て前記ベース部材に中間部を配線した第2の線材と、前記ベース部材に設けられて、前記第1の線材に所定以上のテンションを付与したり、該テンションを解除する第1の操作機構と、前記可動操作片の閉止操作時に前記第2の線材に所定以上のテンションを付与したり、該テンションを解除する第2の操作機構と、を備え、
前記第1の操作機構が前記第1の線材に所定以上のテンションを付与したときに前記2つの有関節挟圧部材が互いに接近した挟圧状態となり、
前記第2の操作機構が前記第2の線材に所定以上のテンションを付与したとき前記2つの有関節挟圧部材が離間した開放状態となることを特徴とする間接活線工法用クリップ。
前記第1の操作機構は、前記ベース部材により出没自在に支持された線材調整ノブと、該線材調整ノブによって支持されて前記第1の線材を巻き掛けたガイド部材と、を備え、
前記線材調整ノブが没入位置にある時には前記第1の線材を弛緩させる一方で、前記線材調整ノブが突出位置にある時には前記第1の線材に所定以上のテンションを付与することを特徴とする請求項1に記載の間接活線工法用クリップ。
【背景技術】
【0002】
間接活線作業では、充電した状態の高圧配電線(電線)に対して作業員が絶縁ヤットコ等の間接活線工具を用いて各種作業を行う。間接活線作業に際しては、例えば、間接活線工法用クリップ(絶縁シート挟み用器具)を用いて、電線の充電部分に被せた感電防止用の絶縁シートを電線と共に挟んで固定したり、切断によりフリーとなった電線を他の部位に仮固定するといった安全措置を講じる必要がある。この間接活線工法用クリップは、長尺のハンドル部を備えた絶縁ヤットコを用いて操作されるのが一般である(特許文献1)。
【0003】
図7(a)は従来の間接活線工法用クリップ(以下、クリップと称する)と、絶縁シートを並置した状態を示す図であり、(b)は電線に対して二つ折り状態で被せた絶縁シートをクリップによって固定した状態を示す斜視図であり、
図8(a)及び(b)は従来の絶縁シートの構成を示す表面図、及び裏面図である。
クリップ100は、左右2つの挟圧部材101、102を開閉軸支部105によって開閉自在に軸支すると共に、各挟圧部材の先端部101a、102aを常時接近(閉じる)方向へ付勢する図示しないバネを備えている。先端部が閉じた状態では後端部101b、102bは図示のように離間した状態にあり、図示しない絶縁ヤットコを用いてこの後端部101b、102b同士を接近させる方向へ挟み込むことにより、バネに抗して各先端部101a、102aを開放させることができる。
【0004】
図8に示すように絶縁シート110は、絶縁材料から成る四角いシート本体111と、シート本体の表面に配置されたクリップ取付部113と、シート本体の上端縁に沿って固定された面ファスナー121及びシート本体の下端縁から張り出した突片に固定された面ファスナー122から成る締結部120と、シート本体表面中央部に設けられた取手124と、シート本体の型くずれを防止するためにシート本体裏面中央部に固定された板状の芯材125と、を備えている。
シート本体111は、上下方向中央部(センターラインCL)に沿って二つ折りにされた状態で電線130に被せられる。
クリップ取付部113は、シート本体111のセンターラインCLに沿った上下位置に夫々対向配置された2つ一組のクリップ用ポケット(袋)114と、クリップ用ポケットに差し込まれたクリップの先端部101a、102aを脱落しないように押さえ込む一対のクリップ用締め付けバンド115a、115bと、を備える。
【0005】
本例では、クリップ用ポケット114は4箇所に配置されており、各クリップ用ポケットのセンターラインCL側端部だけが開口しており、この開口部から
図7(b)に示したようにクリップ100の先端部101a、102aを予め差し込んだ状態とし、面ファスナーを備えたクリップ用締め付けバンド115a、115bを用いて先端部101a、102aを締め付けてポケットからの脱落を防止する。
このように電線130に対して絶縁シート110を取り付ける前にクリップ100をシート本体のポケット114に固定しておくことにより、クリップを開閉させても絶縁シートからクリップが脱落することがなくなる。この状態でクリップ100の後端部101b、102bを図示しない絶縁ヤットコの先端部によって挟んで保持しながら電線に対する絶縁シートの取付け作業を行う。
【0006】
図示しない絶縁ヤットコのハンドル部を操作して絶縁ヤットコ先端部によるクリップ後端部の挟圧力を調整することにより、先端部101a、102aを開閉することができ、先端部を開放させた状態とすることにより、絶縁シートを
図7(b)に示すように電線に対して二つ折り状態で被せることができる。クリップ先端部を閉じることによりシート本体を介して電線を挟み込んだ後で、絶縁ヤットコをクリップ後端部から離脱させる。
このように絶縁シートを電線に被せた後で、面ファスナー121と122とを締結状態とすることにより、絶縁シートを電線に対して固定することができる。
【0007】
ところで、クリップ100の2つの先端部101a、102aは図示のように湾曲している。一方、シート本体裏面に固定された芯材125の保形力によって、クリップ取付部113を支持したシート本体部分は常に平坦面となるように付勢されている。このため、クリップ用ポケットの開口部内にクリップの先端部を挿入する際に抵抗が生じて挿入する作業に手間取ることが多い。
実際の作業では、手作業でシート本体をセンターラインCLで2つ折りにしながら、手により開放させた2つのクリップ先端部101a、102aを各ポケット114の開口部内に差し込むが、クリップ先端部が湾曲している一方で、ポケットは芯材により平坦面化するように付勢されているため、挿入しにくいばかりでなく、挿入作業にはテクニックと強い力が必要となり、作業効率がよくなかった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る間接活線工法用クリップの外観図であり、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)は平面図、(e)は底面図であり、
図2は間接活線工法用クリップの内部構成を示しており、(a)はニュートラル状態、(b)は挟圧状態、(c)は開放状態を示した図であり、
図3(a)乃至(d)は第1操作機構の操作手順を示す図であり、
図4は
図2(c)のA−A断面図である。
【0016】
間接活線工法用クリップ(以下、クリップ、という)1は、固定操作片3を備え、且つ少なくとも一部が中空のベース部材2と、ベース部材2に設けた操作側の軸支部5によって軸支されることにより固定操作片3に対して接近(閉止)、離間(開放)可能に支持された可動操作片6と、可動操作片6を固定操作片3から離間させる方向へ付勢する弾性部材7と、ベース部材2に設けた挟圧側の2つの軸支部10、11によって夫々一端部を回動(揺動)自在に軸支された基端挟圧片30、及び基端挟圧片との間に設けた1又は複数の回動関節部37を介して回動自在に軸支された先端挟圧片40を夫々有した2つの有関節挟圧部材20、21と、2つの有関節挟圧部材20、21の各先端挟圧片40に両端部を夫々固定され、その少なくとも一部が各回動関節部37の内側経路を経てベース部材2側へ延び、且つ中間部をベース部材に配線した第1の線材(挟圧方向への付勢手段)50と、2つの有関節挟圧部材の各先端挟圧片40に両端部を夫々固定され、その少なくとも一部が各回動関節部37の外側経路を経てベース部材側へ延び、且つ中間部をベース部材に配線した第2の線材(開放方向への付勢手段)60と、ベース部材2に設けられて、第1の線材50に所定以上のテンションを付与したり、該テンションを解除する第1の操作機構70と、可動操作片6の閉止操作時に第2の線材60に所定以上のテンションを付与したり、該テンションを解除する第2の操作機構80と、を備える。
【0017】
固定操作片3、及可動操作片6には、
図5に示した絶縁ヤットコ90の先端の挟持手段を接触させた時の位置ズレ等を防止するための滑り防止手段や係止手段を適宜配置する。
本例に係る有関節挟圧部材(多関節挟圧部材)20、21は、基端挟圧片30と先端挟圧片40との間に2つの連結片35、36を有し、基端挟圧片30と連結片35との間、連結片35と連結片36との間、及び連結片36と先端挟圧片40との間には、夫々回動関節部37が配置されていて、各部材20、35、36、40を略同一平面内で回動自在に軸支している。
なお、連結片の数は1個以上であればよい。また、連結片を介さずに、基端挟圧片30と先端挟圧片40を直接回動関節部37によって回動自在に連結した有関節挟圧部材としてもよい。
【0018】
また、各有関節挟圧部材20、21を構成する基端挟圧片30、2つの連結片35、36、及び先端挟圧片40は、少なくとも一部が中空となっており、各中空部は連通している。これらの中空部は、各回動関節部37、及び各軸支部10、11を結ぶ線の内側を経由する第1の線材50の通過ルート(配線経路)と、外側を経由する第2の線材60の通過ルート(配線経路)を形成している。
換言すれば、基端挟圧片30、2つの連結片35、36、及び先端挟圧片40の内部には、夫々第1の線材50の通過ルートと、第2の線材60の通過ルートとなる空所が形成されている。
【0019】
第1の線材50、第2の線材60は、何れも一本ずつであり、2つの先端挟圧片40に各線材の両端部を固定すると共に、各回動関節部37、各軸支部10、11、各プーリ78a、79a、78、79、各プーリ82、83を経る経路に沿って配線されている。つまり、各線材50、60は、両端部を各先端挟圧片40に固定される一方で、中間部をベース部材側に配線されている。
本例では、第1の線材50は各有関節挟圧部材の全長に渡って第2の線材60よりも内側に位置しているが、第1の線材50の一部を第2の線材と並行な外側位置に配線してもよい。また、第2の線材60の配線経路の一部を第1の線材50と並行な内側位置に配線してもよい。
要するに、第1の操作機構70を
図3(d)に示した作動状態とすることにより、第1の線材50に所定以上のテンションを加えたときに各軸支部10、11、及び各回動関節部37が、第1の線材からの応力(張力)によって
図2(b)中の時計回り方向へ回動することにより、各有関節挟圧部材20、21を
図1(a)、及び
図2(b)のように挟圧操作状態にすることができれば、第1の線材50の配線経路に制限はない。
また、同様に第1の操作機構70を
図3(d)に示した作動状態としている時に、可動操作片6を
図2(c)のように閉じることにより第2の線材60に所定以上のテンションを加えたときに、各軸支部10、11、及び各回動関節部37が同図の反時計回り方向へ回動することにより、各有関節挟圧部材20、21が
図2(c)のように開放操作状態となれば、第2の配線60の配線経路に制限はない。
【0020】
図2(a)中に示すように各回動関節部37は、一本の共通軸37aによって回転自在に軸支された2つのプーリ(ガイド部材)37b、37cから成り、一方のプーリ37bの内側には第1の線材50が配線され、他方のプーリ37cの外側には第2の線材60が配線されている。このため、第1の操作機構70、第2の操作機構80が夫々各線材50、60を個別に引張って所定以上のテンションを付与したり、引張りを解除してテンションを解消する操作を、線材同志を干渉させることなくスムーズに行うことができる。
なお、プーリ37b、37cに代えて、各線材をスムーズにガイドする低摩擦のガイド部材を用いても良い。つまり、ガイド部材は、回転するプーリでなくてもよい。
各軸支部10、11も、各回動関節部37と同様な構成を備える。
【0021】
第1の操作機構70は、ベース部材2の一側部(固定操作片3とは反対側)に配置されており、ベース部材の一側部からベース部材内部に向けて形成された凹所(穴)71と、凹所71内に入り込んで凹所内を横方向(内外方向)へ進退する進退片76、及び進退片76の一端に固定された摘み部77から成る線材調整ノブ75と、進退片76の先端部によって回転自在に軸支されてフリーに回転する2つのプーリ(ガイド部材)78、79と、線材調整ノブ75を凹所内に付勢する図示しない弾性部材(必須ではない)と、を備える。
進退片76の内側端部は二股に分岐しており、二股分岐部内にプーリ78、79を配置して回転自在に軸支している。
2つのプーリ78、79は、軸方向位置を異ならせてあり、一方のプーリ78が第1の線材50を支持し、他方のプーリ79が第2の線材60を支持する。このため、線材同志が干渉することを防止できる。
なお、第2の操作機構80を間に挟んでプーリ78、79とは反対側のベース部材2上には、位置が固定された他のプーリ78a、79aが配置されて、左側の有関節挟圧部材20から延びてくる各線材50、60を巻き掛けて配線方向を転換している。
各プーリ78、79、78a、79aは、回転しなくても良いし、プーリに代えて低摩擦のガイド部材を用いても良い。
【0022】
図3(a)に示すように没入状態にある線材調整ノブ75を(d)に示すように突出させた状態で固定するには、図示しない弾性部材に抗して手作業によって線材調整ノブ75を外側に引き出してから((b))、(c)のように90度回転させればよい。ベース部材の側面に設けた着座部材72が摘み部77を係止することにより、線材調整ノブ75を突出状態に保持することができる((d))。線材調整ノブ75を(a)の没入状態に戻すには、上記と逆の操作を行えばよい。
このように第1の操作機構70は、第1の線材50に所定以上のテンションを付与することによって、第1の線材によって2つの有関節挟圧部材20、21を
図2(b)に示した挟圧操作状態にしたり、挟圧操作状態を解除する手段である。第2の線材60に対しては原則としてテンションを付与しない構成が好ましいが、第1の線材の挙動に悪影響を及ぼさない程度の多少のテンションを付与することは差し支えない。
【0023】
第2の操作機構80は、可動操作片6の下部適所に設けた軸部6aによって一端を回動(揺動)自在に軸支された作動片81と、作動片81内のクランク状の中空部81a内に上下方向位置、及び軸方向位置を異ならせて回転自在に配置された上下2つのプーリ(ガイド部材)82、83と、を有する(
図4)。各プーリ82、83の軸部は、作動片によって軸支されている。ガイド部材としては、各線材をスムーズにガイドできる単なる低摩擦部材であってもよい。
ベース部材2の内部にはガイドスリット85を設けて、プーリ82、83、軸部6aを所定の経路に沿ってガイドするようにしている。
【0024】
上側のプーリ82の外周面の上面側には第2の線材60が配線されており、下側のプーリ83の外周面の下面には第2の線材50が配線されている。
なお、2つのプーリによってガイドされる各線材が干渉する虞がなければ、中空部81aはクランク状に構成しなくてもよい。つまり、直線状であってもよい。
図2(b)に示したように第1の操作機構70によって第1の線材50に所定以上のテンションを付与した状態において可動操作片6が開放位置にある時には、作動片81により支持された2つのプーリ82、83が可動操作片と連動して下降位置にある。このため、第1の線材50が下側プーリ(第2のプーリ)83により押し下げられることにより、2つの有関節挟圧部材を挟圧状態とすることができる。つまり、有関節挟圧部材は、弾性部材7の力によって挟圧状態を維持することとなる。
【0025】
また、
図2(c)に示したように可動操作片6を閉止した時には、作動片81により支持された2つのプーリ82、83が可動操作片と連動して上昇する。このため、第2の線材60が上側プーリ82により引き上げられることにより、2つの有関節挟圧部材を開放状態にする。
図4に示すように、軸部6aは、可動操作片6から突設された2つの軸受部材6bによって支持されており、この軸部6aによって作動片81の上端部が回動自在に軸支されている。作動片81の側面には図示のようなクランク状の中空部81aが形成されており、この中空部の上側部分には上側プーリ82が回転自在に軸支され、穴の下側部分には下側プーリ83が回転自在に軸支されている。このように2つのプーリ82、83の上下方向位置、及び軸方向位置を異ならせることにより、2つの線材50、60が互いに干渉することを防止できる。
【0026】
以上の構成を備えたクリップ1の2つの有関節挟圧部材20、21を
図8に示した絶縁シート110のクリップ用ポケット114に装着する場合には、クリップを
図2(a)のニュートラル状態にする。即ち、ニュートラル状態では第1の操作機構70の線材調整ノブ75を凹所71内に没入させた状態にしておくことにより、可動操作片6を固定操作片3側へ閉止させたとしても、何れの線材50、60にも強いテンションが加わらないため、有関節挟圧部材20、21は
図2(b)の挟圧状態や(c)の開放状態には移行しない。
【0027】
つまり、ニュートラル状態では各有関節挟圧部材は、各軸支部10、11、及び各回動関節部37が所定の角度範囲で回動可能になっており、基端挟圧片30、2つの連結片35、36、及び先端挟圧片40の間は比較的自由に回動できる状態となっている。
このため、
図7に関して説明したように、絶縁シートの2つのクリップ用ポケット114内に各有関節挟圧部材を差し込む際に、各軸支部10、11、各回動関節部37を任意に回動させて基端挟圧片30、2つの連結片35、36、及び先端挟圧片40の位置関係を任意に変化させた上で、差し込むことができる。
従って、芯材125によってシート本体111がフラットな姿勢にある時であっても、有関節挟圧部材をクリップ用ポケット内に簡単に差し込んで、バンド115a、115bによって固定することができる。
【0028】
また、絶縁シートを
図7(b)のように二つ折りにした状態であっても、有関節挟圧部材をクリップ用ポケット内に簡単に差し込んで、バンド115a、115bによって固定する作業が容易となる。
このような手順によってクリップ1を絶縁シート110に固定した状態で、
図3に示した手順で第1操作機構70を構成する線材調整ノブ75を凹所71から外側に突出させると、第1の線材50がプーリ78によって引張られることにより、各有関節挟圧部材20、21は
図2(b)に示した挟圧状態に移行し、各先端挟圧片40の先端部同志が圧接した状態となる。この状態では、2つの有関節挟圧部材20、21によって、絶縁シートを介して電線130を挟圧した状態となっている。
【0029】
なお、この時、第1の線材50は、第2操作機構80の下側のプーリ83の下側に位置しているため、下降状態にあるプーリ83によって押し下げられた状態にあり、その分だけテンションがより多く加わった状態となっている。このため、線材調整ノブ75を引き出す操作によって第1の線材50が各有関節挟圧部材を挟圧状態に移行させる際の応答性を高めることができる。
なお、本例のように第2の線材60を線材調整ノブ75に設けたプーリ79に巻き掛けている場合には、
図2(b)のように線材調整ノブ75が突出した状態においても、第2線材60には余りテンションがかからないように第2の線材60の長さを長めに設定しておく。
なお、第2の線材60をプーリ79に巻き掛けず、有関節挟圧部材から延びる第2の線材60を直接第2操作機構80の上側プーリ82に巻掛けるように構成してもよい。この場合には、第2の線材が線材調整ノブ75による影響を受けることがないので、第1の線材と第2の線材間の長さ調整が容易となる。この場合には、プーリ78a、79aを省略してもよい。
【0030】
次に、
図2(b)のように挟圧状態にある2つの有関節挟圧部材を(c)のように開放させる場合には、
図5に示した絶縁ヤットコ90を用いて2つの操作片3、6を閉じた状態に移行させる。
可動操作片6が固定操作片3側へ移動することにより、第2操作機構80を構成する作動片81が上昇し、作動片81により支持された2つのプーリ82、83が上昇する。このため、第2の線材60が上側プーリ82により引き上げられて、2つの有関節挟圧部材を開放状態にする。
絶縁シートのクリップ用ポケット内に装着された有関節挟圧部材を開放させた状態とすることにより、絶縁シートの電線への取付け、或いは取外しが可能となる。
有関節挟圧部材をニュートラル(フリー)の状態とすることにより、各回動関節部において変形することが可能となるため、絶縁シート側のクリップ用ポケット内に有関節挟圧部材を差し込んで装着する作業を容易化することができる。
【0031】
また、本発明ではベース部材に設けた固定操作片3(及び可動操作片6)の突出方向を任意に設定することができる点が特徴的である。即ち、
図7に示した従来のクリップにあっては、挟圧部材101、102の突出方向に対して、後端部101b、102bが略180度反対側に突出しているが、
図1、
図2に示したように、有関節挟圧部材の突出方向と180度対向した方向とは異なった方向(斜め方向、或いは横方向)に固定操作片3、及び可動操作片6を突出させることができる。
このため、絶縁ヤットコ全体の延びる方向(軸方向)に対して、有関節挟圧部材の突出方向を斜め方向、或いは横方向とすることができる。そして、絶縁ヤットコの先端部により、絶縁シートに装着されたクリップの操作片3、6を挟んで有関節挟圧部材を開閉させることにより、絶縁シートを電線に装着したり、離脱させる作業を容易化することが可能となる。
【0032】
つまり、
図7に示したような従来のクリップの構成であると、絶縁ヤットコの先端部の延長方向と同じ方向に挟圧部材101、102が突出しているため、高所作業車から延びるバケット上に載った作業員が絶縁シートを電線に被せる作業を行う際に、電線よりも上方に作業員が位置しない限り、その作業は労力を要する作業となる。
即ち、絶縁シートを装着する対象となる電線の周辺に障害物があるために、バケットを電線の横方向、或いは電線よりも低い箇所に配置せざるを得ない場合には、従来のクリップを用いた作業は極めて煩雑となる。
これに対して本発明のクリップにあっては、有関節挟圧部材の突出方向に対して、操作片3、6の突出方向が横方向、或いは斜め方向となっている。このため、
図5に示すように操作片3、6を絶縁ヤットコ90の先端部で挟んだ時に、有関節挟圧部材は絶縁ヤットコの先端部の延長方向とは異なった方向に位置している。このため、バケット上の作業者の高さ位置が電線よりも低くても、或いは電線の横方向にあっても、絶縁シートを被せてクリップ止めする作業は容易となる。
【0033】
次に、
図6(a)(b)及び(c)は本発明の他の実施形態に係る間接活線工法用クリップの正面図、平面図、及び右側面図であり、(d)は使用状態の説明図である。
この実施形態は、2つのクリップ1の固定操作部3間と、可動操作部6間に、夫々連設操作部材92を差し渡して螺子固定することにより、2つのクリップを同時に操作できるようにしたものである。
即ち、クリップ1の固定操作部3と可動操作部6には予め螺子穴3a、6cを設けておき、これらの螺子穴を利用して連設操作部材92を螺子95を利用して螺着固定する。
このため、(d)に示すように一つの絶縁ヤットコ90を用いて2つの連設操作部材92を挟圧保持したり、挟圧を解除することにより、絶縁シートに固定された2つのクリップ1を同時に開閉操作することが可能となり、作業性を高めることができる。
【0034】
<本発明の構成、作用、効果のまとめ>
第1の本発明に係る間接活線工法用クリップは、固定操作片3を備えたベース部材2と、固定操作片に対して接近、離間可能に支持された可動操作片6と、可動操作片を固定操作片から離間させる方向へ付勢する弾性部材と、ベース部材に設けた2つの軸支部によって夫々回動自在に軸支された基端挟圧片30、及び各基端挟圧片との間に設けた1又は複数の回動関節部37を介して回動自在に軸支された先端挟圧片40を夫々有した2つの有関節挟圧部材20、21と、各先端挟圧片に両端部を夫々固定され、各回動関節部を経てベース部材に中間部を配線した第1の線材50と、各先端挟圧片に両端部を夫々固定され、各回動関節部を経てベース部材に中間部を配線した第2の線材60と、ベース部材2に設けられて、第1の線材に所定以上のテンションを付与したり、該テンションを解除する第1の操作機構70と、可動操作片の閉止操作時に第2の線材に所定以上のテンションを付与したり、該テンションを解除する第2の操作機構80と、を備え、第1の操作機構が第1の線材に所定以上のテンションを付与したときに2つの有関節挟圧部材が互いに接近した挟圧状態となり、第2の操作機構が第2の線材に所定以上のテンションを付与したとき2つの有関節挟圧部材が離間した開放状態となることを特徴とする。
【0035】
有関節挟圧部材は、軸支部10、11、基端挟圧片30、先端挟圧片40、及び一つの回動関節部37のみから構成してもよいし、複数の回動関節部を用いることにより多間接構造としてもよい。
第1の操作機構70は、第1の線材50に所定値以上のテンションを付与して作動させることにより有関節挟圧部材を動作させる手段であり、可動操作部材が非操作位置(開放位置)にあるときに、所定以上のテンションを第1の線材に付与した時に2つの有関節挟圧部材20、21が挟圧状態となる。
【0036】
第2の操作機構80は、第1の操作機構70が第1の線材に所定値以上のテンションを付与している状態において、可動操作片6を操作位置(閉止位置)に移動させることにより第2の線材60に所定以上のテンションを付与することにより、2つの有関節挟圧部材20、21を開放状態とする手段である。
テンションが所定値を越えない場合には、各線材50、60を用いて各有関節挟圧部材を所定の姿勢(挟圧姿勢、開放姿勢)に変形させることができない状態となり、この状態では各有関節挟圧部材は、
図2(a)に示したようなニュートラル(フリー)の状態となる。
シート本体を平坦に保つための芯材を備えた絶縁シートに設けたクリップ取付部に対して、熟練を要することなく、クリップの挟圧部材を容易に装着することが可能となる。
【0037】
第2の本発明は、各有関節挟圧部材20、21は、基端挟圧片30、少なくとも一つの連結片35、及び先端挟圧片40を順次回動関節部37を介して連結した構成を備え、第1の線材、及び第2の線材は、各先端挟圧片、各連結片、及び各基端挟圧片を経由してベース部材へ延び、第1の線材、及び第2の線材の各中間部は、ベース部材側において、第1の操作機構と、第2の操作機構により夫々支持されることを特徴とする。
有関節挟圧部材20、21は、軸支部10、11、基端挟圧片30、先端挟圧片40、及び一つの回動関節部37のみから構成してもよいし、複数の回動関節部37、及び連結片35を用いることにより多間接構造としてもよい。
連結片を用いることにより、有関節挟圧片を任意の長さとし、且つ任意の位置で回動させることが可能となる。
【0038】
第3の発明は、第1の操作機構は、ベース部材により出没自在に支持された線材調整ノブ75と、該線材調整ノブによって支持されて第1の線材を巻き掛けたガイド部材78、79と、を備え、線材調整ノブが没入位置にある時には第1の線材を弛緩させる一方で、線材調整ノブが突出位置にある時には第1の線材に所定以上のテンションを付与することを特徴とする。
線材調整ノブは弾性部材によってベース部材側へ没入(復帰)するように構成しておいてもよい。
【0039】
第4の発明は、第2の操作機構は、可動操作片に設けた軸部6aによって回動自在に軸支された作動片81と、該作動片上に配置された2つのガイド部材82、83と、を有し、2つのガイド部材の内の一方には第1の線材50が配線されており、他方のガイド部材には第2の線材60が配線されており、第1の操作機構70によって第1の線材に所定以上のテンションを付与した状態において、可動操作片6が固定操作片3から離間した開放位置にある時には、一方のガイド部材83が第1の線材を一方に押圧することにより、2つの有関節挟圧部材を挟圧状態とすることができ、可動操作片が固定操作片に接近した閉止位置にある時には、他方のガイド部材82が第2の線材を他方に押圧することにより、2つの有関節挟圧部材を開放状態とすることを特徴とする。