(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
<液体回収装置>
本発明における液体回収装置の一実施形態例について説明する。本実施形態例は、水と、水より沸点が高く、加水分解により酸を生成する溶剤と、樹脂とを含有する被処理液から水および溶剤を各々回収する例である。
ここで、加水分解により酸を生成する溶剤としては、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
溶剤がジメチルアセトアミドである場合には、加水分解により酢酸を生成し、ジメチルホルムアミドの場合には、加水分解によりギ酸を生成する。
【0009】
図1に、本実施形態例の液体回収装置を示す。本実施形態例の液体回収装置1は、流入管11を介して供給された被処理液を貯留する被処理液タンク10と、被処理液から水を蒸留により回収する水回収ユニット20と、被処理液から水が除去された溶剤含有液から溶剤を回収する溶剤回収ユニット30と、前記溶剤含有液から溶剤が除去された残渣液から未回収の溶剤を分離する未回収液体分離ユニット40とを具備する。
【0010】
(水回収ユニット)
水回収ユニット20は、被処理液タンク10に被処理液移送用配管101を介して接続された前段蒸留塔21と、前段蒸留塔21の下流側に設置された後段蒸留塔22と、前段蒸留塔21の下流側かつ後段蒸留塔22の上流側に設置された蒸発器23とを備える。
【0011】
前段蒸留塔21は、被処理液を蒸留して水を回収する蒸留塔である。
前段蒸留塔21の塔頂部21aには回収水排出用配管102が接続され、塔底部21bには、塔底部21bに溜まった塔底液を蒸発器23に供給する塔底液移送用配管103が接続されている。ここで、塔底液は、被処理液を前段蒸留塔21にて蒸留した際に塔底部21bに溜まった液であり、前段蒸留塔21にて回収しきれなかった水と、溶剤と、溶剤が前段蒸留塔21内にて加水分解して生成した酸と、樹脂とを含有する液である。
前段蒸留塔21における被処理液移送用配管101の接続位置は、中央部21cより最下部21d側の位置Aである。
また、前段蒸留塔21においては、被処理液移送用配管101が接続する位置Aよりも上方に、隙間を有する充填物21fが充填されている。
【0012】
また、前段蒸留塔21は、加熱手段であるリボイラ21hを備えている。
リボイラ21hの上部には、塔底液移送用配管103から分岐された分岐管104が接続されて、塔底液の一部が導入されるようになっている。リボイラ21hの下部には、加熱した塔底液を前段蒸留塔21の充填物21fより下の位置に返送する塔底液返送用配管105が接続されている。
また、リボイラ21hは、後段蒸留塔22にて回収され、回収水移送用配管106を介して移送された回収水が熱源として利用されている。すなわち、リボイラ21hでは、前段蒸留塔21の塔底液の一部を、後段蒸留塔22の回収水との熱交換により加熱するようになっている。
【0013】
前段蒸留塔21においては、被処理液移送用配管101を介して供給された被処理液が充填物21fの下方に導入される。供給された被処理液は塔底部21bに溜まるようになるが、前段蒸留塔21の内部は加熱されているため、一部は蒸発する。その蒸気は上昇し、充填物21fに到達する。充填物21f内では、上昇する蒸気と、その蒸気が凝縮して流下する凝縮液とが接触し、溶剤よりも沸点の低い水が精製されるようになっている。そのため、塔頂部21aにて、溶剤の混入量が少なく純度の高い回収水が得られるようになっている。
前段蒸留塔21の内部の加熱は、分岐管104を介して移送された塔底液の一部をリボイラ21hにより加熱し、加熱した塔底液を前段蒸留塔21に返送することにより行われている。
【0014】
蒸発器23は、前段蒸留塔21から供給された塔底液を加熱して蒸発させるものであり、第1蒸発槽23aと、第1蒸発槽23aよりも下流側に配置された第2蒸発槽23bとを備えている。
ここで、第1蒸発槽23aは、加熱手段(図示せず)を備え、塔底液が濃縮するように水および溶剤を加熱して蒸発させる槽である。第2蒸発槽23bは、加熱手段(図示せず)を備え、第1蒸発槽23aにて濃縮された塔底液がさらに濃縮するように水および溶剤を加熱して蒸発させる槽である。
第1蒸発槽23aおよび第2蒸発槽23bが備える加熱手段としては、例えば、スチームが導入されるジャケット、第1蒸発槽23a(または第2蒸発槽23b)から抜き出した濃縮液の一部を加熱し、その加熱した濃縮液を第1蒸発槽23a(または第2蒸発槽23b)に返送する加熱器などが挙げられる。
【0015】
第1蒸発槽23aの上部23cには、ボトム液の蒸気を後段蒸留塔22に移送するための第1蒸発槽ボトム液蒸気移送用配管107aが接続され、下部23dには、第1蒸発槽23aを第2蒸発槽23bに連通させる連通管23eが接続されている。連通管23eは、第1蒸発槽23aの下部23dに溜まった、水と溶剤と酸と樹脂とを含有する濃縮液を第2蒸発槽23bに移送するための配管である。
第2蒸発槽23bの上部23fには、ボトム液の蒸気を後段蒸留塔22に移送するための第2蒸発槽ボトム液蒸気移送用配管107bが接続され、下部23gには、第2蒸発槽23bの下部23gに溜まった、水と溶剤と酸と樹脂とを含有する濃縮液を排出する濃縮液移送用配管108が接続されている。
【0016】
蒸発器23においては、第1蒸発槽23aにて、ボトム液移送用配管により供給されたボトム液に含まれる一部の水および溶剤が蒸発し、第1蒸発槽ボトム液蒸気移送用配管107aを介して後段蒸留塔22に移送されるようになっている。また、第1蒸発槽23aの下部に溜まった濃縮液が、連通管23eを介して第2蒸発槽23bに供給され、第2蒸発槽23bにて、濃縮液に含まれる一部の水および溶剤が蒸発し、第2蒸発槽ボトム液蒸気移送用配管107bを介して後段蒸留塔22に移送されるようになっている。
【0017】
後段蒸留塔22は、蒸発器23にて蒸発させた塔底液を蒸留して水を回収する蒸留塔である。
後段蒸留塔22の塔頂部22aには回収水移送用配管106が接続されている。塔底部22bには、塔底部22bに溜まった、溶剤と酸とを含有する酸含有溶剤を、溶剤回収ユニット30に移送する酸含有溶剤移送用配管109が接続されている。
後段蒸留塔22における第1蒸発槽ボトム液蒸気移送用配管107aの接続位置は、中央部22cよりも最上部22e側の位置Bである。
後段蒸留塔22においては、第1蒸発槽ボトム液蒸気移送用配管107aが接続する位置Bよりも上方および下方に充填物22f,22gが充填されている。
後段蒸留塔22は、リボイラ22hを備えている。リボイラ22hの下部には、酸含有溶剤移送用配管109から分岐した分岐管110が接続されて、酸含有溶剤の一部が導入されるようになっている。リボイラ22hの上部には、加熱した酸含有溶剤を、後段蒸留塔22の充填物22gより下の位置に返送する酸含有溶剤返送用配管111が接続されている。
【0018】
後段蒸留塔22においては、蒸発槽ボトム液蒸気移送用配管107a,107bを介して供給された被処理液が充填物22f,22gの間に導入される。後段蒸留塔22の内部は加熱されているため、後段蒸留塔22の内部に導入された蒸気は上昇し、充填物22fに到達する。充填物22f内では、上昇する蒸気と、その蒸気が凝縮して流下する凝縮液とが充分に接触するようになっている。そのため、塔頂部22aにて、溶剤の混入量が少なく純度の高い回収水が得られるようになっている。
また、充填物22g内でも水が精製され、塔頂部21a側に向かうほど、水の純度が高くなるようにされている。そのため、塔底部22bには、水の混入量が少ない酸含有溶剤が溜まるようになっている。なお、この酸含有溶剤とは、溶剤だけでなく、溶剤の加水分解により生成した酸を含む溶剤である。
後段蒸留塔22の内部の加熱は、分岐管110を介して移送された酸含有溶剤の一部をリボイラ22hにより加熱し、加熱した酸含有溶剤を後段蒸留塔22に返送することにより行われている。
【0019】
(溶剤回収ユニット)
溶剤回収ユニット30は、前記酸含有溶剤を蒸留して溶剤を回収する蒸留塔31と、蒸留塔31の塔底部31bに溜まった、酸含有溶剤を塔底部31bから抜き出す抜き出し用ポンプ32と、抜き出し用ポンプ32の下流側に設置され、濃縮された酸を含有する溶剤(以下、「濃縮酸含有溶剤」という。)を中和する中和手段33とを備える。
【0020】
蒸留塔31の塔頂部31aには、留出液である高純度の溶剤を排出する回収溶剤排出用配管112が接続され、塔底部31bには、抜き出し用ポンプ32に接続する抜き出し用配管113が接続されている。回収溶剤排出用配管112には、回収した溶剤の一部を蒸留塔31の塔頂部31aに戻す還流用配管114が接続されている。
蒸留塔31における酸含有溶剤移送用配管109の接続位置は中央部31cである。
蒸留塔31においては、中央部31cよりも上方および下方に、隙間を有する充填物31f,31gが充填されている。
また、蒸留塔31は、抜き出した塔底液の一部を加熱し、蒸留塔31の内部に戻して蒸留塔31の内部を加熱するリボイラ31hを備えている。
【0021】
蒸留塔31においては、酸含有溶剤移送用配管109を介して供給された酸含有溶剤が充填物31f,31gの間に導入される。蒸留塔31の内部は加熱されているため、蒸留塔31の内部に導入された溶剤の蒸気は上昇し、充填物31fに到達する。充填物31f内では、上昇する蒸気と、その蒸気が凝縮して流下する凝縮液とが充分に接触するようになっており、溶剤が充分に精製されるようになっている。そのため、塔頂部31aにて、酸の混入量が少なく純度の高い溶剤が得られるようになっている。
また、充填物31g内でも、溶剤が精製され、塔頂部31a側に向かうほど、溶剤の純度が高くなるようにされている。そのため、塔底部31bには、濃縮酸含有溶剤が溜まるようになっている。
蒸留塔31の内部の加熱は、分岐管115を介して移送された濃縮酸含有溶剤の一部をリボイラ31hにより加熱し、加熱した酸を蒸留塔31に返送することにより行われている。
【0022】
抜き出し用ポンプ32には、中和手段33に濃縮酸含有溶剤を移送する濃縮酸含有溶剤移送用配管116が接続されている。
中和手段33は、中和用タンク33aを備える。中和用タンク33aには、アルカリ水溶液を供給するアルカリ水溶液供給用配管117と、希釈水を供給する希釈水供給用配管118が接続されている。ここで、濃縮酸含有溶剤を中和した後の液体を残渣液という。
【0023】
(未回収液体分離ユニット)
未回収液体分離ユニット40では、溶剤回収ユニット30から移送された残渣液を加熱することにより、残渣液に含まれる未回収の溶剤と、中和手段33にて添加した水と、蒸発器23から移送された濃縮液に含まれる水および溶剤を蒸発させる。
未回収液体分離ユニット40は、残渣液を加熱する乾燥機41を備える。乾燥機41としては、例えば、パンドライヤ、薄膜蒸発器などが用いられる。
乾燥機41には、残渣液の加熱により蒸発させた未回収の溶剤の一部および水を被処理液タンク10に返送する返送用配管119と、乾燥機41の内部に残った、樹脂を含む廃液を排出する廃液排出用配管120とを備える。返送用配管119には、加熱により蒸発した溶剤および水を冷却して凝縮させる冷却器120aが設けられている。
【0024】
<溶剤回収方法>
上記溶剤回収装置1を用いた溶剤回収方法について説明する。
本実施形態例の溶剤回収方法では、被処理液から水を回収する水回収工程と、該水回収工程にて得られた酸含有溶剤から溶剤を回収する溶剤回収工程と、該溶剤回収工程にて得られた残渣液から未回収の溶剤を分離する未回収液体分離工程とを有する。
【0025】
被処理液に含まれる樹脂としては、例えば、水溶性樹脂(例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等)、溶剤性可溶樹脂(例えば、ポリエーテルサルホン、ポリスルホン)などが挙げられる。被処理液には、水溶性樹脂および溶剤可溶性樹脂の一方のみが含まれていてもよいし、両方が含まれていてもよい。
【0026】
(水回収工程)
水回収工程では、被処理液タンク10から被処理液を、被処理液移送用配管101を介して水回収ユニット20の前段蒸留塔21に連続的に供給する。前段蒸留塔21に供給された被処理液は塔底部21bに溜まるが、前段蒸留塔21は加熱されているため、塔底部21bに溜まった塔底液の一部は蒸発し、その蒸気は充填物21fに達する。蒸気には水と溶剤が含まれるが、前段蒸留塔21の充填物21f内では、溶剤よりも沸点の低い水の精製が行われる。すなわち、充填物21fでは、塔頂部21a側に向かう程、水の純度が高くなる。したがって、充填物21fを通過し、塔頂部21aに到達した水は最も純度が高い状態になる。得られた水(回収水)は、回収水排出用配管102を介して排出される。
前段蒸留塔21内の温度は、溶剤の種類に応じて適宜選択される。溶剤がジメチルアセトアミドの場合には、前段蒸留塔21の温度を100℃以下にすることが好ましく、ジメチルホルムアミドの場合にも、前段蒸留塔21の温度を100℃以下にすることが好ましい。
【0027】
また、塔底部21bに溜まった塔底液の一部は塔底液移送用配管103を介して蒸発器23に連続的に移送され、蒸発器23に移送されなかった残りの塔底液は分岐管104を介してリボイラ21hに移送されて加熱される。ここで、リボイラ21hにおける塔底液の加熱は、回収水移送用配管106を介して後段蒸留塔22から移送された回収水との熱交換により行う。リボイラ21hにて加熱された塔底液は、塔底液返送用配管105を介して前段蒸留塔21に戻される。このようにリボイラ21hにより加熱された塔底液が前段蒸留塔21に戻されることにより、前段蒸留塔21の内部が加熱される。一方、リボイラ22hの熱源として利用された回収水は、熱交換により冷却され、回収水排出用配管130を介して排出される。
【0028】
次いで、前段蒸留塔21から移送した塔底液を蒸発器23の第1蒸発槽23aにて加熱し、水および溶剤を蒸発させ、水および溶剤の蒸気を、第1蒸発槽ボトム液蒸気移送用配管107aを介して後段蒸留塔22に連続的に移送する。その際、第1蒸発槽23aにおいては、塔底液が固形分濃度15質量%以下の範囲で濃縮するように水および溶剤を蒸発させる。固形分濃度15質量%を超えて濃縮するように水および溶剤を蒸発させるためには、第1蒸発槽23aの規模を大きくしなければならず、実用的ではない。
第1蒸発槽23aにおけるボトム液の加熱は、ボトム液が好ましくは10質量%以下の範囲、また、好ましくは5質量%以上の範囲で濃縮するように、水および溶剤を蒸発させる。
溶剤がジメチルアセトアミドの場合には、第1蒸発槽23aの温度を100〜110℃にすることが好ましく、ジメチルホルムアミドの場合にも、第1蒸発槽23aの温度を100〜110℃にすることが好ましい。
また、第1蒸発槽23aの下部23dに溜まった、蒸発しなかった残りの溶剤および水と、溶剤の加水分解により生成した酸と、樹脂とを含む濃縮液を、連通管23eを介して第2蒸発槽23bに連続的に移送する。
【0029】
第2蒸発槽23bでは、濃縮液に含まれる水および溶剤を蒸発させ、水および溶剤の蒸気を、第2蒸発槽ボトム液蒸気移送用配管107bを介して後段蒸留塔22に連続的に移送する。その際、第2蒸発槽23bにおいては、濃縮液が固形分濃度15質量%を超えかつ35質量%以下の範囲で濃縮するように加熱する。固形分濃度35質量%を超えるように濃縮液を加熱濃縮すると、第2蒸発槽23bにて得られる濃縮液の流動性が低くなるため、移送困難になる上に、第2蒸発槽23bを大きくしなければならず、実用的ではない。
第2蒸発槽23bにおける濃縮液の加熱は、濃縮液が好ましくは25質量%以下の範囲、また、好ましくは20質量%以上の範囲で濃縮するように、水および溶剤を蒸発させる。
溶剤がジメチルアセトアミドの場合には、第2蒸発槽23bの温度を115〜125℃にすることが好ましく、ジメチルホルムアミドの場合にも、第2蒸発槽23bの温度を115〜125℃にすることが好ましい。
また、第2蒸発槽23bの下部23gに溜まった、蒸発しなかった残りの溶剤および水と、溶剤の加水分解により生成した酸と、樹脂とを含む濃縮液を、濃縮液移送用配管108を介して未回収液体分離ユニット40の乾燥機41に連続的に移送する。
【0030】
次いで、蒸発器23から移送された水および溶剤の蒸気を後段蒸留塔22により蒸留して、塔頂部22aから回収水を得る。
具体的には、蒸発器23から移送された水および溶剤の蒸気を後段蒸留塔22に導入する。水および溶剤は充填物22f,22gの隙間に入り込み、溶剤よりも沸点の低い水が上昇し、溶剤は凝縮して流下する。これにより精製が行われ、塔頂部22aに到達した水は溶剤の混入量が少ないものとなる。
後段蒸留塔22内の温度は、溶剤の種類に応じて適宜選択される。
【0031】
後段蒸留塔22にて得た回収水は、回収水移送用配管106を介してリボイラ21hに供給されて、リボイラ21hの熱源として使用される。このように後段蒸留塔22により得た回収水をリボイラ21hの熱源として使用することにより、エネルギー使用量を削減できる。
後段蒸留塔22の塔底部22bには溶剤と溶剤の加水分解により生成した酸とを含む酸含有溶剤が溜まるようになる。塔底部22bに溜まった酸含有溶剤は酸含有溶剤移送用配管109を介して溶剤回収ユニット30に連続的に移送される。
酸含有溶剤の一部は酸含有溶剤移送用配管109を介して溶剤回収ユニット30に連続的に移送され、溶剤回収ユニット30に移送されなかった残りの酸含有溶剤は分岐管110を介してリボイラ22hに移送されて加熱される。リボイラ22hにて加熱された酸含有溶剤は、酸含有溶剤返送用配管111を介して後段蒸留塔22に戻される。このようにリボイラ22hにより加熱された酸含有溶剤が後段蒸留塔22に戻されることにより、後段蒸留塔22の内部が加熱される。
【0032】
水回収工程において、被処理液に含まれる溶剤が加水分解される割合は、例えば、0.05〜0.3モル%である。したがって、酸含有溶剤においては、溶剤と酸との合計を100モル%とした際に、溶剤の含有量が99.7〜99.95モル%、酸の含有量が0.05〜0.3モル%になっている。
【0033】
(溶剤回収工程)
溶剤回収工程では、水回収工程にて得た酸含有溶剤を蒸留塔31に連続的に供給し、蒸留塔31にて蒸留する。
具体的には、後段蒸留塔22から移送された酸含有溶剤を蒸留塔31に導入する。酸含有溶剤は充填物31gを通って塔底部31bに溜まるようになる。蒸留塔31内は加熱されているため、塔底部31bに溜まった酸含有溶剤の一部は蒸発し、その蒸気は充填物31f,31gの隙間に入り込む。
充填物31f,31gでは、酸混合物よりも沸点の低い溶剤の蒸気は上昇し、酸混合物は凝縮して流下する。これにより精製が行われ、塔頂部31aに到達した溶剤は酸の混入量が少ないものとなる。したがって、塔頂部31aからは、純度の高い溶剤を含む留出液が得られる。
得られた留出液の一部は、還流用配管114を介して蒸留塔31の塔頂部31aに戻される。留出液の一部が蒸留塔31の塔頂部31aに戻されることにより、塔頂部31aにて得られる留出液に混入する酸の量を低減させることができ、溶剤の純度をより向上させることができる。
蒸留塔31に戻されなかった残りの留出液は、回収溶剤排出用配管112を介して排出される。
【0034】
蒸留塔31内の塔頂部31aの温度は、溶剤の種類に応じて適宜選択される。溶剤がジメチルアセトアミドの場合には、温度を120℃以下にすることが好ましい。溶剤がジメチルホルムアミドの場合にも、温度を120℃以下にすることが好ましい。
また、より高純度の溶剤を得るという点では、蒸留塔31の塔頂部31aの圧力を一定にすることが好ましい。さらに、塔頂部31aと塔底部31bとの差圧を一定にすることが好ましい。
【0035】
溶剤含有液の蒸留により、塔底部31bには、溶剤含有液から殆どの溶剤が除去された残渣液が溜まるようになる。本実施形態例では、この残渣液を、抜き出し用ポンプ32を用いて塔底部31bから抜き出し用配管113を介して連続的に抜き出す。
塔底部31bからの残渣液の抜き出しは、蒸留塔31内の酸の濃度が、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下になるようにする。このような酸の濃度になるように残渣液を蒸留塔31から抜き出せば、一般的な耐蝕材料(例えばSUS316L等)を使用した安価な設備とすることが可能となる。
また、蒸留塔31内の酸の濃度を0質量%にすることが理想であるが、0質量%にすることは実用的ではない。実用的には0.1質量%以上にすることが好ましい。
蒸留塔31内の酸の濃度を調整するためには、抜き出し量を調整すればよい。具体的には、酸の濃度が高い程、抜き出し量を多くすればよい。
【0036】
塔底部31bから抜き出された残渣液の一部は、分岐管115を介してリボイラ31hに送られて加熱された後、塔底部31bに戻される。このように残渣液を戻すことにより、蒸留塔31の内部を加熱する。また、塔底部31bから抜き出された残渣液の残部は中和用タンク33aに送られる。
【0037】
次いで、中和用タンク33aに入れられた残渣液に、アルカリ水溶液供給用配管117を介してアルカリ水溶液を供給すると共に、希釈水供給用配管118を介して希釈水を供給して、残渣液を中和処理する。ここで、中和とは、アルカリ水溶液の添加により中和後の液のpHを7以上、好ましくは9.5〜10.5にすることである。なお、希釈水を添加するのは、pHの測定を容易にするためである。
中和にて使用されるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。
【0038】
(未回収液体分離工程)
上記の溶剤回収工程において残渣液に溶剤を全く含ませないようにするのは困難であり、例えば、残渣液には溶剤が40〜60質量%含まれている。また、残渣液には中和処理にて水が添加されている。そのため、未回収液体分離工程にて、未回収の溶剤および水を分離回収する。
さらに、未回収液体分離工程では、水および溶剤の回収率をより高くするために、水回収ユニット20の蒸発器23から濃縮液移送用配管108を介して移送された濃縮液に含まれる一部の水および溶剤を蒸発させて分離する。
具体的には、未回収液体分離工程では、中和処理された残渣液と、蒸発器23から移送された濃縮液を所定の間隔で乾燥機41に入れ、例えば70〜165℃で加熱する。これにより、一部の溶剤および水を蒸発させる。蒸発させた溶剤および水は、返送用配管119を介し、冷却器120aに送られて凝縮された後、被処理液タンク10に返送される。
被処理液タンク10に返送された溶剤および水は、流入管11を介して新たに被処理液タンク10に供給された被処理液と共に再び水回収ユニット20、溶剤回収ユニット30および未回収液体分離ユニット40に順次送られて、水および溶剤が回収される。
また、乾燥機41に残留した、残りの未回収の溶剤と水と樹脂と中和手段33にて生成した塩とを含む廃液は、廃液排出用配管120を介して乾燥機41から排出される。廃液は廃棄処分にしてもよいし、押出機を用いて溶剤および水を揮発させると共に樹脂を搬送して固液分離してもよい。
【0039】
(作用効果)
上述したように、液体回収装置1を用いた液体回収方法では、第1蒸発槽23aおよび第2蒸発槽23bを備え、水および溶剤を2段階で蒸発させて、水および溶剤と樹脂とを分離させているため、後段蒸留塔22に樹脂が送られることを充分に防止できる。したがって、樹脂を含有する塔底液(被処理液)から後段蒸留塔22を用いて水を回収する際に、充填物の隙間に樹脂が入り込むことによる後段蒸留塔22の閉塞を防止でき、後段蒸留塔22の清掃の頻度を少なくできる。また、塔底液に含まれる水および溶剤を2段階に分けて蒸発させることにより、蒸発器23をコンパクトにできる。
これに対し、蒸発槽が1つであると、熱交換が容易ではないため、蒸発槽を大規模なものにする必要がある上に、熱交換器を閉塞させないための樹脂の濃度管理が難しい。
【0040】
また、本実施形態例では、蒸発器23から濃縮液移送用配管108を介して乾燥機41に濃縮液を供給し、未回収の水および溶剤を分離し、返送用配管119を介して被処理液タンク10内の被処理液に返送するため、水および溶剤の回収率を高くできる。
また、液体回収装置1においては、蒸発器23より上流側に前段蒸留塔21を備えるため、第1蒸発槽23aおよび第2蒸発槽23bをコンパクトにできる。しかも、前段蒸留塔21の加熱の熱源としては、後段蒸留塔22にて回収した回収水を利用できるため、前段蒸留塔21を備えると、エネルギーの使用効率が高くなる。
また、本実施形態例では、溶剤回収ユニット30にて、溶剤と酸とを含有する酸含有溶剤を蒸留塔31にて蒸留しつつ、蒸留塔31内の酸の濃度が5質量%以下になるように蒸留塔31の塔底部31bから酸を連続的に抜き出すため、共沸組成を抑制しながら蒸留することができる。したがって、溶剤を容易に分離・回収できるため、溶剤含有液から高純度の溶剤を高い回収率で回収できる。
【0041】
(他の実施形態例)
なお、本発明は、上記実施形態例に限定されない。
例えば、水回収ユニット20における蒸発器23は、2つの蒸発槽(第1蒸発槽23a,第2蒸発槽23b)を有していたが、蒸発槽を3つ以上有しても構わない。蒸発槽を3つ以上有する場合には、1段目の蒸発槽よりも下流側の各蒸発槽にて、固形分濃度5質量%を超えかつ30質量%以下の範囲で固形分濃度が順次高くなるように水および溶剤を蒸発させる。
また、水回収ユニット20では、2本の蒸留塔(前段蒸留塔21、後段蒸留塔22)を備えていたが、後段蒸留塔22のみでも構わないし、前段蒸留塔または後段蒸留塔が2本以上であってもよい。省エネルギーの観点では、回収水の熱を有効利用できることから、前段蒸留塔を1本以上備えることが好ましい。