特許第5752196号(P5752196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5752196ワイヤ放電加工機用のプログラム作成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752196
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】ワイヤ放電加工機用のプログラム作成装置
(51)【国際特許分類】
   B23H 7/06 20060101AFI20150702BHJP
   B23H 11/00 20060101ALI20150702BHJP
   B23H 7/02 20060101ALI20150702BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20150702BHJP
   G05B 19/4093 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   B23H7/06 A
   B23H11/00 Z
   B23H7/02 R
   B23Q15/00 303Z
   G05B19/4093 J
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-182117(P2013-182117)
(22)【出願日】2013年9月3日
(65)【公開番号】特開2015-47675(P2015-47675A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2014年9月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】工藤 壮大
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−068226(JP,A)
【文献】 特開2012−254505(JP,A)
【文献】 特開平8−323548(JP,A)
【文献】 特開昭63−191518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 7/06
B23H 7/02
B23H 11/00
B23Q 15/00
G05B 19/4093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルとワイヤ電極を相対移動させる少なくとも2つの直線軸と、前記テーブルに載置されると共にワークを取付け可能であり、かつ、少なくとも2つの旋回軸を有する載置部とを備えたワイヤ放電加工機用の加工プログラム作成装置であって、
製品形状を定義した図形データを入力する図形データ入力手段と、
少なくとも前記製品形状の厚さとワイヤ電極の傾き量を含む加工データを設定する加工データ設定手段と、
前記入力された図形データおよび前記加工データをもとに加工形状を作成する加工形状作成手段と、
前記作成された加工形状から前記直線軸と前記旋回軸を同期させて動かすことでワイヤ電極に対してワークの傾きを相対的に変化させながら加工するために、前記ワイヤ電極の傾き量および前記ワークに対する前記ワイヤ電極の直線軸の相対移動量と予め記憶した前記旋回軸の回転中心線をもとに、前記ワイヤ電極を垂直にした状態で加工するためのワークに対するワイヤ電極の新たな相対移動量および前記旋回軸の回転量を生成し、前記ワイヤ電極の新たな相対移動量および前記旋回軸の回転量を指令する加工プログラムを作成するプログラム作成手段を有することを特徴とするワイヤ放電加工機用の加工プログラム作成装置。
【請求項2】
前記回転中心線と前記ワイヤ電極の垂直からの傾き量を用いて回転マトリクスを求め、前記回転マトリクスを用いて前記ワークに対する前記ワイヤ電極の相対移動量と前記旋回軸の回転量を求めることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ放電加工機用の加工プログラム作成装置。
【請求項3】
テーブルとワイヤ電極を相対移動させる少なくとも2つの直線軸と、前記テーブルに載置されると共にワークを取付け可能であり、かつ、少なくとも2つの旋回軸を有する載置部とを備えたワイヤ放電加工機用の加工プログラム作成装置であって、
加工プログラムを入力するプログラム入力部と、
前記直線軸と前記旋回軸を同期させて動かすことでワイヤ電極に対してワークの傾きを相対的に変化させながら加工するために、前記入力した加工プログラムにおける前記ワイヤ電極の傾き量および前記ワークに対する前記ワイヤ電極の直線軸の相対移動量と予め記憶した前記旋回軸の回転中心線をもとに、前記ワイヤ電極の傾き指令および前記ワークに対する前記ワイヤ電極の相対移動指令を、ワークに対するワイヤ電極の移動指令および前記旋回軸の回転指令に変換するプログラム変換部と、
を有することを特徴とするワイヤ放電加工機用の加工プログラム作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つ以上の旋回軸を用いてワークを任意に傾けることができる載置部を備えたワイヤ放電加工機用のプログラム作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、ワイヤ放電加工機において、テーブル面に対して上ガイド部を平行移動することで、ワイヤガイド部にて支持されたワイヤ電極を鉛直方向に対して斜めに張って加工するテーパ加工を図示している。図12に示されるように、従来のテーパ加工は、ワイヤ電極4を鉛直方向5に対して傾斜させ、テーブル2に載置されたワーク3を放電加工する。
【0003】
ワイヤ電極4を垂直方向(鉛直方向5)に対して斜めに張って加工を行うテーパ加工は、ワイヤ電極4を垂直に張って加工を行う垂直加工に比べると技術的な問題を多く抱えている。主な問題は次の通りである。
1)加工屑の排出が困難なので加工速度を上げられない。
2)ワイヤガイド部でワイヤ電極に摩擦力が加わり、面粗さに悪影響をおよぼす。
3)ワイヤガイド部で曲げられるワイヤ電極の支持点が、ガイドの形状精度や、加工状態により変動する為、高精度加工が困難である。
4)加工条件を設定するのが難しい。
これらはワイヤ電極を斜めに張ることによって生じる問題であり、テーパの角度が大きくなるほど顕著化するという性質を持っている。
【0004】
そこで、特許文献1には、直交する2軸からなる平面と座標系を有して被加工物を載置するテーブルを備え、テーパ加工を行う加工プログラムに従ってワイヤ電極と該被加工物とを相対移動させながら、放電加工を行うワイヤ放電加工機において、前記被加工物を前記平面に対して傾けて載置する載置部と、傾けて載置された前記被加工物と前記平面とがなす傾斜角度を設定する傾斜角設定部と、前記傾斜角度に基づいて前記座標系を前記傾斜角度傾ける座標系変換部と、前記変換された座標系に基づいて前記加工プログラムによって指令される加工指令値を補正する加工指令値補正部と、を有することを特徴とするワイヤ放電加工機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−254505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されるワイヤ放電加工機は、解決しようとする課題は同じであるが、被加工物の傾きを固定して加工を行うことで、ワイヤ電極の傾きを軽減し、テーパ加工の課題を解決しようとするものである。しかしながら、実際には軽微ではあるがワイヤ電極の傾きが発生する。そのため、背景技術の欄で説明したワイヤ電極を鉛直方向に対して斜めに張ることによって生じる問題を十分に回避することができない。
そこで、本発明の目的は、少なくとも2つ以上の旋回軸を用いてワークを任意に傾けることができる載置部を備えたワイヤ放電加工機用の加工プログラム作成装置であって、ワイヤ電極に対してワークの傾きを相対的に変化させながら加工する加工プログラムを作成することを特徴とするワイヤ放電加工用の加工プログラム作成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも2つ以上の旋回軸を用いてワークを任意に傾けることができる載置部を備えたワイヤ放電加工機用の加工プログラム作成装置で、ワイヤ電極に対してワークの傾きを相対的に変化させながら加工する加工プログラムを作成することを特徴とするワイヤ放電加工機用の加工プログラム作成装置に関する。
そして、本願の請求項1に係る発明は、テーブルとワイヤ電極を相対移動させる少なくとも2つの直線軸と、前記テーブルに載置されると共にワークを取付け可能であり、かつ、少なくとも2つの旋回軸を有する載置部とを備えたワイヤ放電加工機用の加工プログラム作成装置であって、製品形状を定義した図形データを入力する図形データ入力手段と、少なくとも前記製品形状の厚さとワイヤ電極の傾き量を含む加工データを設定する加工データ設定手段と、前記入力された図形データおよび前記加工データをもとに加工形状を作成する加工形状作成手段と、前記作成された加工形状から前記直線軸と前記旋回軸を同期させて動かすことでワイヤ電極に対してワークの傾きを相対的に変化させながら加工するために、前記ワイヤ電極の傾き量および前記ワークに対する前記ワイヤ電極の直線軸の相対移動量と予め記憶した前記旋回軸の回転中心線をもとに、前記ワイヤ電極を垂直にした状態で加工するためのワークに対するワイヤ電極の新たな相対移動量および前記旋回軸の回転量を生成し、前記ワイヤ電極の新たな相対移動量および前記旋回軸の回転量を指令する加工プログラムを作成するプログラム作成手段を有することを特徴とするワイヤ放電加工機用の加工プログラム作成装置である。
請求項2に係る発明は、前記回転中心線と前記ワイヤ電極の垂直からの傾き量を用いて回転マトリクスを求め、前記回転マトリクスを用いて前記ワークに対する前記ワイヤ電極の相対移動量と前記旋回軸の回転量を求めることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ放電加工機用の加工プログラム作成装置である。
請求項3に係る発明は、テーブルとワイヤ電極を相対移動させる少なくとも2つの直線軸と、前記テーブルに載置されると共にワークを取付け可能であり、かつ、少なくとも2つの旋回軸を有する載置部とを備えたワイヤ放電加工機用の加工プログラム作成装置であって、加工プログラムを入力するプログラム入力部と、前記直線軸と前記旋回軸を同期させて動かすことでワイヤ電極に対してワークの傾きを相対的に変化させながら加工するために、前記入力した加工プログラムにおける前記ワイヤ電極の傾き量および前記ワークに対する前記ワイヤ電極の直線軸の相対移動量と予め記憶した前記旋回軸の回転中心線をもとに、前記ワイヤ電極の傾き指令および前記ワークに対する前記ワイヤ電極の相対移動指令を、ワークに対するワイヤ電極の移動指令および前記旋回軸の回転指令に変換するプログラム変換部と、を有することを特徴とするワイヤ放電加工機用の加工プログラム作成装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、少なくとも2つ以上の旋回軸を用いてワークを任意に傾けることができる載置部を備えたワイヤ放電加工機用の加工プログラム作成装置であって、ワイヤ電極に対してワークの傾きを相対的に変化させながら加工する加工プログラムを作成することを特徴とするワイヤ放電加工用の加工プログラム作成装置を提供できる。これによって、ワイヤ電極を斜めに張ることによって生じる問題を回避でき、テーパ加工における加工精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】XYテーブル上に載置されたワークを、ワイヤ電極を傾けることによりテーパ加工する例を説明する図である。
図2図1においてワークを−X軸方向に見た図である。
図3図1においてワークをY軸方向に見た図である。
図4】加工溝からの加工屑の排出を説明する図である。
図5】ガイド部におけるワイヤ電極の屈曲を説明する図である。
図6】大Rガイドによる支点誤差を説明する図である。
図7】加工条件の1つである板厚の設定方法を説明する図である。
図8】テーパ加工を行う放電加工機の一実施形態を説明する図である。
図9】ワークを載置する載置装置を説明する図である。
図10】本発明の実施形態1を説明するブロック図である。
図11】本発明の実施形態2を説明するブロック図である。
図12】従来のワイヤ放電加工におけるテーパ加工を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
本発明は、従来技術の問題を解決するため、加工中にワイヤ電極を垂直位置に保ちながらワークの傾きを変化させて加工する。図1に示されるような形状にワーク3を加工する場合を例にして説明する。なお、垂直位置(鉛直方向)は、背景技術の説明の欄で摘記した問題が回避される範囲で、例えばテーパ角度が5度などの垂直位置(鉛直方向)近傍でも良い。
【0011】
従来のテーパ加工技術では、はじめに、ワイヤ電極4は加工開始点8にある。次に、ワイヤ電極4はY軸方向に傾きを変化させながら、ワイヤ電極4のワーク上面側はPt0
ワーク下面側はPb0に向かって移動する。そして、ワイヤ電極4のワーク上面側はP
、ワイヤ電極4のワーク下面側はPb1に向かって移動する。
【0012】
次に、ワイヤ放電加工におけるテーパ加工においてワイヤ電極4を垂直位置に保ちながら加工する本発明のテーパ加工方法を以下に説明する。図2図1においてワーク3を−X軸方向に見た図である。図3図1においてワーク3をY軸方向に見た図である。なお、ワーク3は点Pを通りYZ平面(図2参照)およびXZ平面(図3参照)に直交する回転中心軸6,7まわりに傾けることができるとする。
【0013】
図1のYZ平面にPおよびPを投影すると、以下の図2のようになる。ここで、図
2においてワイヤ電極4をZ軸(垂直方向、つまり、鉛直方向)と平行にするためには、点Pを中心にしてθrotx傾ける必要がある。ワイヤ電極4とワーク3の上面の交点
を点P’とすると、θrotxは、数1式により表すことができる。
【0014】
【数1】
【0015】
ここで、点Pを通りYZ平面と直交する軸(回転中心軸6)まわりの回転マトリクスをMrotxとすると、数2式により表される。
【0016】
【数2】
【0017】
よって、点P’を求める式は以下の数3式で表される。
【0018】
【数3】
【0019】
続いて、図1のXZ平面にPおよびPを投影すると、図3のようになる。
ここで、図3においてワイヤ電極4をZ軸と平行にするためには、点Pを中心にしてθroty傾ける必要がある。ワイヤ電極4とワーク3の上面の交点を点P’’とすると
、θrotyは、数4式により表すことができる。
【0020】
【数4】
【0021】
ここで、点Pを通りXZ平面と直交する軸(回転中心軸7)まわりにθrotyだけ回転する回転マトリクスをMrotyとすると、数5式により表される。
【0022】
【数5】
【0023】
よって、点P”を求める式は数6式により表される。
【0024】
【数6】
【0025】
そして、数3式および数6式より、点P”は数7式により表される。
【0026】
【数7】
【0027】
このようにして、回転マトリクスを求めることでワイヤ電極4の垂直位置を算出することが出来る。また、ワーク3の傾きを変化させるためには、上記の過程で求めたθrot
、およびθrotxをそれぞれ傾き量として利用すればよい。このようにして、ワイヤ
電極4を垂直(鉛直方向)に保ち、ワーク3の傾きを変化させながら加工することができる。
【0028】
ここで、背景技術の欄で説明した従来技術の問題点が本発明により解決されることを説明する。
1)加工スラッジの排出が困難なので加工速度を上げられない。
図4は加工溝からの加工屑の排出を説明する図である。従来のテーパ加工方法は、図4(a)に示されるようにテーブル面に垂直な位置からワイヤ電極4がテーパ角度分傾くため、加工液の噴出方向とワイヤ電極4の向きが一致せず、加工液は加工溝に流れ込み難くなる。従って、加工屑を効率よく排出できなくなる。
一方、本発明のテーパ加工方法は、(b)に示されるように、テーブル面から被加工物をテーパ角度分だけ傾けるが、ワイヤの被加工物との相対的な位置関係は従来のテーパ加工と同じである。しかし、ワイヤ電極4はテーブル面に対して垂直な位置なので、加工液は垂直加工と同様に加工溝にスムーズに流れ込む。従って、加工屑を効率よく排出することができる。よって問題点の1)が解消される。
【0029】
2)ワイヤガイド部でワイヤに摩擦力が加わり、面粗さに悪影響をおよぼす。
従来のテーパ加工技術では、ワイヤ電極4がワイヤガイド部分で急激に曲がるため、ワイヤ電極4のワイヤガイド孔内での移動が円滑にされず、振動が生じたりしてワイヤ電極4が断線したり被加工面に筋が入って面粗さが悪化する(図5(a)参照)ことがあるが、ワイヤ電極4がテーブル面に対して垂直な位置を維持することができれば、ワイヤ電極4はワイヤガイド部で急激に曲げられることがなくなる。よって、問題点の2)が解消される。
【0030】
3)ワイヤガイド部で曲げられるワイヤの支持点が、ガイドの形状精度や加工状態により変動し、高精度加工が困難。
【0031】
問題点の2)に対応するために、大きなRのワイヤガイド(図5(b)参照)を使用することで、支点誤差という精度に関わる新たな問題(図6参照)が発生するが、上述のとおりに問題点の2)が解消されることで、問題点の3)が解消される。
【0032】
4)加工条件を設定するのが難しい。
ワイヤ放電加工における加工条件は、通常、垂直加工用のものがワーク3の板厚毎に用意されているが、テーパ加工用のものは用意されていない。それは、テーパ加工時の最適な加工条件を決めるということは非常に難しいからである。
これに対して本発明は、ワイヤ電極4が垂直(鉛直方向)になっているので、図7に示されるように、加工における板厚をt´と考え、ワーク3の本来の板厚をtとすると数8式の関係が成り立つ。なお、図7(a)は従来技術のテーパ加工を説明する図であり、図7(b)は本発明のテーパ加工を説明する図である。
【0033】
【数8】
【0034】
これは、ワーク3の板厚とテーパ角度を元に本発明のテーパ加工における板厚t´を求め、ワーク3の板厚がt´となる垂直加工用の加工条件を設定すれば、テーパ加工用の加工条件が得られるということである。これによって、問題点の4)が解消される。
【0035】
次に、上述した本発明に係るテーパ加工方法を実施するためのワイヤ放電加工機の一構成例を説明する。図8はテーパ加工を行う放電加工機を説明する図である。
【0036】
ワイヤ放電加工機70はワイヤ電極4と、被加工物であるワーク3との間に放電を発生させることでワーク3の加工を行う機械である。ワイヤ放電加工機70は、基台20上に、X軸モータ26が駆動するボールネジ31によってX軸方向に移動するX軸サドル19を備え、X軸サドル19の上に、Y軸モータ25が駆動するボールネジ30によってY軸方向に移動するY軸サドル18を備える。Y軸サドル18上には内部に載置装置44(図9参照)を載置するテーブル2を備えた加工槽14が固定されている。
【0037】
コラム21は基台20に垂直に立てられる。コラム21の側面部には下アーム42が水平に取り付けられる。下アーム42の先端には下ノズル10とガイド13が取り付けられている。下ノズル10とガイド13はテーブル2の下方に位置する。コラム21はその上部にV軸サドル15を備える。V軸サドル15はV軸モータ29が駆動するボールネジ34によってV軸方向に移動する。V軸方向はY軸方向と同じである。V軸サドル15にはU軸テーブル16が取り付けられている。U軸テーブル16はU軸モータ28が駆動するボールネジ33によってU軸方向に移動する。U軸方向はX軸方向と同じである。
【0038】
U軸テーブル16には上アーム支持部材17が取り付けられている。上アーム支持部材17はZ軸モータ27が駆動するボールネジ32によってZ軸方向に移動する。上アーム支持部材17には上アーム41が固定されている。上アーム41の端部に上ノズル9およびガイド13が取り付けられている。Y軸モータ25,X軸モータ26,Z軸モータ27,U軸モータ28,V軸モータ29はそれぞれ、制御装置50と動力・信号線35,36,37,38,39によって接続されており、各モータは図示しないアンプを備えた制御装置50から動力(電力)が供給されると共に、制御装置50との間で各種信号の授受を行う。なお、図8では、X軸およびU軸は紙面に垂直な方向、Y軸およびV軸は紙面の左右方向、Z軸は紙面の上下方向である。
【0039】
加工槽14がY軸サドル18上に取り付けられている。加工槽14の槽内にテーブル2が配設される。テーブル2には、図9を用いて説明するワーク3が載置される載置装置が固定される。放電加工は加工槽14内に加工液11を貯留した状態で実行される。上ノズル9はワーク3の上部に加工液11を噴出させる。下ノズル10はワーク3の下部に加工液を噴出させる。上ノズル9内のガイド13はワーク3の上部でワイヤ電極4を支持し、下ノズル10内のガイド13はワーク3の下部でワイヤ電極4を支持する。
【0040】
ワイヤ放電加工機70はワイヤ電極4とワーク3の間で加工液11を介して放電加工を行う。安定した放電加工を行うため、加工液ポンプ43は加工液11を貯留する貯留槽(図示省略)から加工液11を汲み上げ、分岐管路22,管路23,管路24を経由して上ノズル9及び下ノズル10から加工液11を加工部に高圧で噴出させる。噴出された加工液11で加工溝12内の加工屑を吹き飛ばしながらワイヤ放電加工を行う。
【0041】
加工液ポンプ43は図示しないアンプを備えた制御装置50と動力・信号線40で接続され、制御装置50によって駆動制御される。制御装置50から加工液ポンプ43に動力(電力)が供給され、制御装置50と加工液ポンプ43との間で信号の授受を行う。加工液ポンプ43は、分岐管路22、管路23を介して上ノズル9に加工液11を供給すると共に、分岐管路22、管路24を介して下ノズル10に加工液11の供給を行う。上ノズル9から放電加工中の加工部に加工液11が噴射される。下ノズル10から放電加工中の加工部に加工液11が噴射される。
【0042】
制御装置50はワイヤ放電加工機を全体的に制御する装置であり、図示しない演算装置、表示装置、各種信号の入出力用インタフェース、アンプを備えており、さらに、各種データを記憶する記憶装置51を備えている。図8では図示しない演算装置、表示装置、各種信号の入出力用インタフェース、アンプを総称して演算処理装置52と称する。
【0043】
図9はワークを載置する載置装置を説明する図である。ワーク3を載置する載置装置44は旋回軸Aと旋回軸Bを備える。旋回軸Aと旋回軸Bはそれぞれ図示しないサーボモータ(A軸モータ,B軸モータ)によって駆動される。旋回軸Aと旋回軸Bを駆動するサーボモータ(A軸モータ,B軸モータ)は、他の移動軸と同様に図8に示される制御装置50によって駆動制御される。
【0044】
旋回軸Aは、X軸に平行な回転中心軸をもつ(但し、旋回軸Bがある角度の場合)。旋回軸Bは、Y軸に平行な回転中心軸をもつ。旋回軸Aは、旋回軸Bに載置する。ワーク3は、旋回軸Aに固定する。旋回軸Bを回転させると旋回軸Bに載置した旋回軸A自身が回転47し、旋回軸Aを回転させるとワーク3が回転46する。このような構成により、ワーク3の傾きを任意に変化させることが可能となる。旋回軸Aと旋回軸Bを備えた載置装置44の機械構成は、制御装置50の記憶装置51にパラメータとして記憶されている。
【0045】
次に、少なくとも2つ以上の旋回軸を用いてワークを任意に傾けることができる載置部を備えたワイヤ放電加工機用の加工プログラム作成装置で、ワイヤ電極に対してワークの傾きを相対的に変化させながら加工する加工プログラムを作成することを特徴とするワイヤ放電加工機用の加工プログラム作成装置を説明する。
【0046】
図10は本発明の実施形態1を説明するブロック図である。図形情報記憶手段80は、加工の対象となる図形情報が多数格納されているものである。図形情報解析手段81は、作業者等によって指定された図形情報を解析して、加工形状に関するデータを抽出してこれらをプログラム生成手段に渡すものである。回転中心記憶手段83は、旋回軸の回転中心線が多数格納されているものである。プログラム生成手段82は、図形情報解析手段81から加工形状データと回転中心記憶手段83から旋回軸の回転中心線を受け取り、これらを基にして加工プログラム84を生成するものである。
【0047】
作業者によって、図形情報は図形情報記憶手段80に予め格納されている。また、旋回軸の回転中心も予め作業者によって設定され、回転中心記憶手段83に格納されている。作業者が必要とする図形情報を図形情報記憶手段80から選択すると、図形情報が図形情報記憶手段80から図形情報解析手段81に渡される。
【0048】
図形情報解析手段81は、作業者等によって指定された図形情報を解析し。図形情報の中から加工プログラムを生成するために必要な加工形状データを抽出してこれらをプログラム生成手段82に渡す。プログラム生成手段82は、図形情報解析手段81から加工形状データと回転中心記憶手段83から旋回軸の回転中心線を受け取り、これらを基にワイヤ電極を垂直にした状態で加工するためのワークに対するワイヤ電極の新たな相対移動量および旋回軸の回転量を生成し、ワイヤ電極の新たな相対移動量および旋回軸の回転量を指令する加工プログラム84を作成する。
【0049】
なお、図形情報解析手段81は、図形情報記憶手段80に記憶される図形情報から作業者等によって指定された図形情報を解析することに替えて、図形情報読み取り装置(図示せず)を用いて、外部から図形情報を読み込ませるようにしてもよい。
【0050】
図11は、本発明の実施形態2を説明するブロック図である。プログラム記憶手段90は、加工に必要となるプログラムが多数格納されているものである。プログラム解析手段91とは、作業者等によって指定されたプログラムを解析して、プログラム変換手段92に渡すものである。回転中心記憶手段93は、旋回軸の回転中心線が多数格納されているものである。プログラム変換手段92は、プログラム解析手段91からワイヤ電極の傾き指令およびワークに対するワイヤ電極の相対移動指令と回転中心記憶手段93から旋回軸の回転中心線を受け取り、これらを基にして加工プログラム94を生成するものである。
【0051】
作業者によって、加工プログラムはプログラム記憶手段90に予め格納されている。また、旋回軸の回転中心も予め作業者によって設定され、回転中心記憶手段93に格納されている。作業者が必要とする加工プログラムをプログラム記憶手段90から選択すると、加工プログラムがプログラム記憶手段90からプログラム解析手段91に渡される。プログラム解析手段91は、作業者等によって指定された加工プログラムを解析し、加工プログラムの中からワイヤ電極の傾き指令およびワークに対するワイヤ電極の相対移動指令を抽出してこれらをプログラム変換手段92に渡す。
【0052】
プログラム変換手段92は、プログラム解析手段91からワイヤ電極の傾き指令およびワークに対するワイヤ電極の相対移動指令と、回転中心記憶手段93から旋回軸の回転中心線を受け取る。そして、これらを基に、ワイヤ電極の傾き指令およびワークに対するワイヤ電極の相対移動指令を、ワークに対するワイヤ電極の移動指令および旋回軸の回転指令に変換する。
【0053】
なお、プログラム解析手段91は、プログラム記憶手段90に記憶される加工プログラムから、作業者等によって指定された加工プログラムを解析することに替えて、加工プログラム読み取り装置を用いて、外部から加工プログラムを読み込ませるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
2 テーブル
3 ワーク
4 ワイヤ電極
5 鉛直方向
6 回転中心軸
7 回転中心軸
8 加工開始点
9 上ノズル
10 下ノズル
11 加工液
12 加工溝
13 ガイド
13a 小Rガイド
13b 大Rガイド
14 加工槽
15 V軸サドル
16 U軸テーブル
17 上アーム支持部材
18 Y軸サドル
19 X軸サドル
20 基台
21 コラム
22 分岐管路
23 管路
24 管路
25 Y軸モータ
26 X軸モータ
27 Z軸モータ
28 U軸モータ
29 V軸モータ

30 ボールネジ
31 ボールネジ
32 ボールネジ
33 ボールネジ
34 ボールネジ
35 動力・信号線
36 動力・信号線
37 動力・信号線
38 動力・信号線
39 動力・信号線
40 動力・信号線
41 上アーム
42 下アーム
43 加工液ポンプ
44 載置装置

46 回転
47 回転

50 制御装置
51 記憶装置
52 演算処理装置

70 ワイヤ放電加工機

80 図形情報記憶手段
81 図形情報解析手段
82 プログラム生成手段
83 回転中心記憶手段
84 加工プログラム

90 プログラム記憶手段
91 プログラム解析手段
92 プログラム変換手段
93 回転中心記憶手段
94 加工プログラム
図8
図10
図11
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図9
図12