(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動制御手段は、前記撮影系移動手段の移動量を、その踏み込み量に応じて制御可能なアクセル型フットスイッチを有することを特徴とする請求項14に記載のX線診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明に係るX線診断装置を好ましい実施形態により説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、撮影位置の移動量制御スイッチを使用することで、予め設定したルート上を撮影位置がトレースするように、保持アームが前進、停止、後退、及びそれらの移動の速さを制御することができる機能について説明する。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るX線診断装置の構成を示すブロック図である。
【0013】
図1において、本実施形態のX線診断装置100は、該X線診断装置全体の制御を司るシステム制御部110と、X線発生部111と、被検体200を載置する寝台(天板)112と、被検体200を介してX線を検出するための平面検出器113と、保持アーム114と、撮影経路演算部116と、画像演算・記憶部117と、寝台112及び保持アーム114を移動させるための機構部118と、医用画像ワークステーション120と、操作部121と、移動量制御スイッチ122と、モニタ123とから構成される。
【0014】
X線発生部111は、X線管125及びX線絞り器126を有して構成される。保持アーム114は、X線発生部111及び平面検出器113を対向関係に配置したC字形状のもので、被検体200の体軸方向に移動可能な1つのアームにより構成される。
【0015】
また、撮影経路演算部116は、血管内を通過する撮影経路(通過経路)を検出するためのポジションセンサ128と、分岐部特定部129と、撮影角度特定部130と、経路演算部131と、機構制御部132と、メモリ133とを有して構成される。
【0016】
画像演算・記憶部117は、画像演算回路135及び画像データ記憶回路136を有して構成される。画像データ記憶回路136に記憶された画像データは、モニタ123に画像として表示される。操作者は、このモニタ123に表示された画像等を確認しながら操作部121を操作することにより、X線診断治療を行うことができる。
【0017】
機構部118は、寝台移動機構138と保持アーム移動機構139とを有して成る。寝台移動機構138は寝台112の位置を移動させるためのものであり、保持アーム移動機構139はX線発生部111及び平面検出器113を対向関係に配置した状態の保持アーム114を移動させるためのものである。
【0018】
操作部121は、ユーザが実際にカテーテル等の操作を行うための各種操作スイッチからなるもので、移動量制御スイッチ122は各種の移動機構を制御するためのもので、例えばフットスイッチにより構成される。
【0019】
このような構成のX線診断装置100において、システム制御部110の制御により実行される処理について、
図2Aのフローチャートを参照して説明する。
【0020】
本シーケンスが開始されると、先ず、ステップS1にて、ユーザの指令に従って、操作部121内の図示されない経路設定スイッチが操作されて撮影経路設定プログラムが起動される。次に、ステップS2にて、指定経路をシステムの持つ座標系で表現した撮影経路を指定するために、医用画像ワークステーション120に記憶された画像がモニタ123に表示されて、その中からユーザが操作部121の入力デバイス(図示せず)によりマップ画像の選択が行われる。このとき、例えば、過去に撮影されたCT(Computed Tomography)画像のように、血管が描出された画像が、マップ画像として選択されたものとする。
【0021】
次いで、ユーザの指令に従って、医用画像ワークステーション120により、選択されたマップ画像から血管マップ画像が作成されてモニタ123に表示される。
【0022】
図3Aは本実施形態による撮影経路lと平面検出器113の中心の移動経路dの関係を示す図である。
図3Bは血管マップ画像上での始点と目的地点を説明するための図である。
【0023】
そして、ステップS3にて、ユーザによって、操作部121の入力デバイスが操作されることにより、血管マップ画像上で血管141内の始点142と目的地点143の3次元座標が指定される。すると、続くステップS4にて、指定された3次元座標とマップ画像が経路演算部131に転送されて、保持アーム114のビーム中心線が通過すべき指定経路の3次元座標が探索される。ここで、ビーム中心線とは、X線発生部111と平面検出器113の中心を結ぶ線のことである。また、指定経路とは、マップ画像上で指定されたビーム中心が通る座標の集合である。探索された指定経路は、モニタ123に表示される。ここで、複数の指定経路が存在する場合は、ユーザによって操作部121の入力デバイスにより探索された指定経路の中から採用する指定経路の指定が行われる。
【0024】
次に、ステップS5にて、被検体200が寝台112に乗せられて検査が開始される。
【0025】
ステップS6にて、先ず、ユーザ指令に従って座標変換係数算出プログラムが起動されると、被検体200の撮影が行われる。ここで、撮影された画像は、画像データ記憶回路136に記録される。その後、被検体の撮影画像及びマップ画像が画像演算回路135に読み込まれて、画像演算回路135により下記(1)式で表される撮影位置座標と、下記(2)式で表されるマップ画像座標が対応付けられ、下記(3)式の座標変換係数(下記(4)式及び下記(5)式参照)が計算される。
【0031】
更に、ステップS7において、経路演算部131で(4)式及び(5)式で表される座標変換係数が受け取られて、指定経路の3次元座標が撮影経路の3次元座標に変換される。この変換された3次元の撮影経路lが、ステップS8にてメモリ133に登録される。その後、ステップS9にて、操作部121内の図示されない経路設定スイッチがオフにされると、設定が完了して本シーケンスが終了する。
【0032】
次に、
図2Bのフローチャートを参照して、撮影位置の移動量制御スイッチ122を使用した撮影位置の移動について説明する。
【0033】
本シーケンスが開始されると、先ずステップS11にて、ユーザ指令に従い、システム制御部110において撮影経路追従プログラムが起動される。すると、ステップS12にて、メモリ133から撮影経路の始点に対応する撮影経路の3次元座標とポジションセンサ128から現在の保持アーム114の位置情報が機構制御部132に読み出される。そして、ビーム中心線と撮影経路が交わる保持アーム位置が機構制御部132で計算された後、機構部118に制御信号が供給される。これにより、保持アーム114は始点142まで移動される。
【0034】
ここでは、例えば開始撮影位置を正面撮影とし、以降の操作においては、常に正面撮影を維持するものとする。つまり、
図3Aにおいて、平面検出器113の法線ベクトルnと正面撮影平面のべクトル(e
x ,e
z )が常に垂直とする。したがって、検出器の移動経路dは2次元となる。
【0035】
次に、ステップS13にて、ユーザによる手技が開始される。ここでは、ユーザが撮影位置の移動量制御スイッチ122の一例として、速度制御を行うアクセル型フットスイッチを使用するものとする。このアクセル型フットスイッチは、前進用と後退用の2種類を有するものとする。
【0036】
ユーザによって前進用または後退用アクセル型フットスイッチ122aの踏込みが開始されると、その踏込み量がシステム制御部110によって検知され、機構制御部132に踏込み量に応じた信号が供給される。機構制御部132では踏込み量信号が受け取られると、ポジションセンサ128から現在の保持アーム114の位置情報と、メモリ133から現在の撮影経路座標に対して次の撮影経路座標が、機構制御部132に読み出され、ビーム中心線と次の撮影経路座標が交わる保持アーム位置が、機構制御部132で計算される。
【0037】
更に、
図4Aに示されるように、機構制御部118では、踏込み信号量に対して平面検出器113の移動速度が線形(図示a)関係となるような保持アーム114の移動速度が計算される。この後、機構部118に制御信号が供給され、ステップS14にて、現在の保持アーム位置に対して次の保持アーム位置へ、計算された移動速度で撮影位置が移動される。そして、ステップS15において、撮影位置が目的地点143に到達していないならば、ステップS13に移行して、前述した処理が繰り返される。これに対し、ステップS15にて撮影位置が目的地点143に到達したならば、本シーケンスが終了する。
【0038】
このような一連の処理は、アクセル型フットスイッチ122aが踏込まれている間中継続され、その結果、撮影位置は予め設定された撮影経路上を、踏込み量に応じた速度で移動する。つまり、ユーザが現在の撮影位置での撮影時間が短くてよいと考える場合は、踏込み量を多くすることで撮影位置は速やかに次の撮影位置へと移動し、逆に撮影時間を長く取りたいと考える場合は、踏込み量を少なくすることで撮影位置の移動が遅くなる。
【0039】
また、ユーザが手技を行う中で、特に撮影位置を止めて撮影を行いたい場合は、ユーザはアクセル型フットスイッチ122aから足を離す。すると、システム制御部110から機構制御部132への踏込み量信号の供給が止まり、撮影位置はその場で停止する。
【0040】
なお、撮影はアクセル型フットスイッチ122aを使用した撮影位置の変更とは独立して、いかなるタイミングで操作してもよい。
【0041】
このように、手技中にアクセル型フットスイッチ122aを操作するという簡単な操作だけで、予め設定された撮影したい経路を常に撮影視野に捕らえながら、撮影位置を連続的に変化させることができ、更に、撮影位置の移動速度を変化させることで各撮影位置における撮影時間も自由に調整することが可能となる。
【0042】
また、前述した説明ではマップ画像から撮影経路を決定したが、例えば過去に使用した撮影経路等、外部から撮影経路のみを読み込んで使用するようにしても良い。
【0043】
更に、前述した説明では撮影経路を3次元的な曲線を例にとって説明したが、
図5Aに示されるように、撮影経路は点であっても良い。この場合は、撮影経路の3次元座標をメモリ133に登録するのではなく、所望の投影方向となる一連の撮影角度をメモリ133に登録する。したがって、このときの撮影位置は、
図5Aに示されるように、撮影経路(撮影対象)を中心に3次元的に回転するような変化をする。
【0044】
加えて、前述した説明では、アクセル型フットスイッチ122aを前進用と後退用の2種類を有するとしたが、アクセル型フットスイッチ122aを1つとして、以下のように前進と後退を切り替えても良い。つまり、前進させたい場合は前述と同様の操作を行う。そして、後退させたい場合、ユーザはフットスイッチ122aを最後まで、しかも急速に踏込むと、システム制御部110では単位時間当たりの踏込み量が検知され、設定された闘値を超えた場合、機構制御部132に後退信号と踏込み量信号が供給される。機構制御部132が後退信号と踏込み量信号を受け取ると、現在位置の撮影経路座標より1つ前の撮影経路座標における撮影位置が前述と同様に計算される。
【0045】
更に、後退信号を受け取った場合は、
図4Bに示されるように、踏込み信号量に対する平面検出器113の移動速度の関係を前進の場合と反転させて保持アーム移動速度を計算しても良い。また、前進と後退で異なる踏込み信号量に対する平面検出器113の移動速度の関係を使用しても良い。
【0046】
また、前述した説明では、踏込み信号量に対する平面検出器113の移動速度の関係は線形(図示a、e)としたが、
図4Aおよび
図4Bに示されるように、両者の関係を一定(図示b、f)、階段状(同c、g)、または曲線(同d、h)としても良い。更には、踏込み量ではなく踏込み回数等の操作量に応じて移動速度を変化させるようにしても良い。
【0047】
更に、前述した説明では、フットスイッチ122aの踏込み量と平面検出器113の移動速度を対応付けて保持アーム移動速度を計算したが、フットスイッチ122aの踏込み量と平面検出器113の加速度を対応付けて保持アーム移動速度を計算しても良い。
【0048】
なお、前述した説明では、移動量制御スイッチをアクセル型フットスイッチ122aとしたが、以下のようなスイッチでも良い。例えば、手に収まるリモコン形状でトリガタイプのスイッチ、レバー形状のスイッチ、ジョグダイアルのような回転形状のスイッチ、圧力や静電容量を利用する平板タイプのスイッチ等である。更には、物理的なスイッチに限らず画面上に表示されたコントロールバーのようなソフトウェア的なスイッチでも良い。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0050】
この第2の実施形態では、撮影経路に対する撮影位置の直交回転を行う例について説明する。
【0051】
前述した第1の実施形態では、常に正面撮影のポジションのまま撮影位置が平行移動することとしたが、場合によっては撮影経路に対して直交方向で、且つ任意の角度から観察したい場合が考えられる。これを解決するために、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態のシステムに加えて、撮影位置を撮影経路に対して直交方向へ回転させる動作を制御する手段を付加している。
【0052】
なお、以下に述べる実施形態において、X線診断装置の基本的な構成及び動作については、前述した第1の実施形態と同じであるので、説明の重複を避けるため、同一の部分には同一の参照番号を付して、その図示及び詳細な説明を省略し、異なる部分及び動作についてのみ説明する。
【0053】
図6は、本発明の第2の実施形態のX線診断装置においてシステム制御部110の制御により実行される処理について説明するためのフローチャートである。
図7Aは、第2の実施形態による撮影経路lと平面検出器113の中心の移動経路dの関係を示す図である。
図7Bは、第2の実施形態において血管マップ画像上での始点と目的地点を説明するための図である。
【0054】
本シーケンスが開始されると、先ず、ステップS21にて、ユーザによって操作部121における直交回転スイッチ(図示せず)がオンされると、撮影角度変更プログラムが起動される。すると、ステップS22にて、このプログラムの起動と同時にポジションセンサ128から現在の保持アーム114の位置情報と寝台112の上下位置情報が元の撮影位置P
b として、メモリ133に記憶される。
【0055】
次に、ステップS23にて、メモリ133から現在の保持アーム位置情報、寝台上下位置情報及び撮影経路が、機構制御部132に入力される。このデータを基に、ビーム中心線(平面検出器113の法線ベクトルn)と撮影経路の接線l′が直交する撮影位置、及びビーム中心線と撮影経路の交点がアイソセンタになる寝台上下位置が、機構制御部132により計算される。このとき、ビーム中心線と撮影経路が直交する撮影位置は、
図7Bに示すように、ビーム中心線と撮影経路との交点における接線が作る平面内において計算される。
【0056】
こうして、機構制御部132において撮影位置及び寝台上下位置の計算がされると、続くステップS24にて、機構部118に制御信号が供給されて保持アーム位置及び寝台位置が変更される。
【0057】
この後、ステップS25にて、ユーザによって操作部121における撮影角度変更スイッチ(図示せず)が操作されると、システム制御部110を通じて機構制御部132に操作信号が入力され、それに応じて変更する撮影角度θが計算される。更に、機構制御部132では、撮影経路の接線l′と検出器の法線ベクトルnが直交する条件を満たし、撮影角度をθだけ変更する撮影位置が計算される。その後、ステップS26にて、機構部118に制御信号が供給されて保持アーム114位置が変更され、撮影位置が撮影経路に対して直交する方向に角度θだけ変更される。
【0058】
この結果、簡単なスイッチ操作のみで撮影経路に対して直交する撮影位置にすることができ、また、直交撮影位置を保ちながら自由に撮影角度を変更することができる。
【0059】
その後、ステップS27にて撮影が行われると、ステップS28にて撮影終了か否かが判定される。ここで、まだ撮影を続ける場合は、図示されない直交回転スイッチが再び操作され、ステップS25へ移行して前述した処理が繰り返される。一方、変更された撮影角度での撮影を終了する場合は、図示されない直交回転スイッチがオフにされる。すると、ステップS29にて、メモリ133から元の撮影位置P
b が機構制御部132に読み出され、機構部118に制御信号が供給されて、撮影位置は再び撮影角度変更プログラム起動前と同じ撮影位置P
b に戻る。こうして、本シーケンスが終了する。
【0060】
このように、簡単なスイッチ操作一つで、ユーザは撮影経路に対して直交する撮影位置を自動で決めることができるので、手技時間を短縮することが可能になる。
【0061】
また、前述した説明では直交回転スイッチとしたが、これは物理的なスイッチに限らず、表示画面上のボタンでも良いし、音声認識によるスイッチでも良い。
【0062】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0063】
前述した第1の実施形態では、始点と終点(目的地点)を指定し、決定した撮影経路を撮影しながら移動するとしたが、ユーザの関心が撮影経路の分岐部分にある場合が考えられる。これを解決するために、第3の実施形態では、第1の実施形態のシステムに、撮影経路の分岐部分を特定する分岐部特定部129と、分岐部分の撮影位置を始点方向から目的地点方向に向かって順番に記憶していく機能と、記憶した撮影位置を再現するスイッチを付加している。
【0064】
図8A及び
図8Bは、第3の実施形態のX線診断装置においてシステム制御部110の制御の下で実行される処理を説明するためのフローチャートである。
図9Aは、第3の実施形態において撮影経路lと平面検出器113の中心の移動経路dの関係を示す図である。
図9Bは、第3の実施形態において血管マップ画像上での始点と目的地点を説明するための図である。
【0065】
第3の実施形態においては、撮影位置が正面撮影のまま分岐部分へスキップするので、平面検出器113の移動経路dは、2次元で離散的な値となる。
【0066】
以下、分岐部分の撮影位置座標の登録の動作について説明する。
【0067】
なお、
図8Aのフローチャートにおいて、ステップS31〜S34、S36〜S37及びS40における処理は、第1の実施形態における
図2AのフローチャートのステップS1〜S4、S5〜S6及びS9の処理と同じであるので、対応するステップ番号の処理を参照するものとして、ここでは説明を省略する。
【0068】
ステップS34にて、経路演算部131により指定経路の指定が終了した後、ステップS35にて、分岐部特定部129により経路演算部131からの指定経路の3次元座標及びマップ画像を基に分岐部分の3次元座標が抽出される。その後、ステップS36にて分岐部分の3次元座標は経路演算部131に入力される。次いで、ステップS37及びS38にて、経路演算部131では、前述した第1の実施形態と同様に、システムの有する座標系である分岐部撮影位置座標へと座標変換処理が行われる。分岐部撮影位置座標は、分岐部分の始点からの順番と共に、ステップS39にてメモリ133に登録される。その後、ステップS40にて設定が完了すると、本シーケンスが終了する。
【0069】
次に、
図8Bのフローチャートを参照して、分岐部撮影スイッチを使用した撮影位置の変更について説明する。
【0070】
なお、以降の操作においては、常に正面撮影を維持するものとする。
【0071】
前述した第1の実施形態の操作の途中で、操作部121内の図示されない分岐部撮影スイッチが操作された場合について説明する。
【0072】
本シーケンスに入り、ステップS41にて、操作部121内の図示されない分岐部撮影スイッチが操作されると、続くステップS42にて、メモリ133からの分岐部撮影位置座標とポジションセンサ128からの現在の撮影位置座標により、終点(目的地点)方向に向かって最も近い分岐部撮影位置座標が、機構制御部132により算出される。更に、機構制御部132では、ビーム中心線が分岐部撮影位置座標と交わる撮影位置が計算される。
【0073】
その後、ステップS43にて、機構部118に制御信号が供給されて、撮影位置が分岐部分へスキップされる。
【0074】
このように、簡単なスイッチ操作一つで、ユーザは撮影したい分岐部分に撮影位置を先回りさせることができるので、手技時間を短縮することが可能になる。
【0075】
また、前述した説明では分岐部撮影スイッチとしたが、これは物理的なスイッチに限らず、表示画面上のボタンでも良いし、音声認識によるスイッチでも良い。
【0076】
(第4の実施形態)
この第4の実施形態では、分岐部の最適な撮影角度からの撮影を行う動作について説明する。
【0077】
分岐部分においては、その分岐部分が最も見やすい方向から撮影したい場合がある。前述した第3の実施形態においては、分岐部分に撮影位置を移動することは可能であるが、撮影角度は正面撮影のままである。これを解決するために、第4の実施形態では、第3の実施形態のシステムに、最適な分岐部撮影角度を特定する撮影角度特定部130とその最適な撮影角度を記憶する機能と、記憶した最適撮影角度を再現するスイッチを付加している。
【0078】
図10A及び
図10Bは、第4の実施形態のX線診断装置においてシステム制御部110の制御の下で実行される処理を説明するためのフローチャートである。
図11Aは、第4の実施形態において撮影経路lと平面検出器113の中心の移動経路dの関係を示す図である。
図11Bは、第4の実施形態において血管マップ画像上での始点と目的地点を説明するための図である。
【0079】
なお、
図10Aのフローチャートにおいて、ステップS51〜S55、S57〜S59及びS61の処理は、第3の実施形態における
図8AのフローチャートのステップS31〜S35、S36〜S38及びS40の処理と同じであるので、対応するステップ番号の処理を参照するものとして、ここでは説明を省略する。
【0080】
第4の実施形態においては、前述した第3の実施形態と同様に、ステップS51〜S55にて、分岐部分の3次元座標の抽出が終了した後、ステップS56にて、撮影角度特定部130で分岐部特定部129からの指定経路の3次元座標とマップ画像、及び分岐部分の3次元座標の情報を基に分岐部分の最適撮影角度が計算される。
【0081】
ここで、最適撮影角度とは、分岐部分l
n における接線l
n ′と分岐経路方向b
n の接線b
n ′が作る分岐平面に対して、平面検出器113の法線べクトルnが直交する角度である。このとき、角度は180度反転する2通りの角度が求められる。その後、ステップS57〜S59を経て、この最適撮影角度は、ステップS60にて、分岐部撮影位置座標と関連付けられてメモリ133に登録される。その後、ステップS61にて設定が完了すると、本シーケンスが終了する。
【0082】
次に、
図10Bのフローチャートを参照して、分岐部最適撮影角度スイッチを使用した撮影について説明する。
【0083】
前述した第1の実施形態の操作の途中で、操作部121内の分岐部最適撮影角度スイッチ(図示せず)が操作された場合について説明する。
【0084】
本シーケンスに入り、ステップS71にて、操作部121内の図示されない分岐部最適撮影角度スイッチが操作されると、ステップS72にて、前述した第3の実施形態と同様に、現在の撮影位置から終点(目的地点)方向に向かって最も近い分岐部撮影位置が機構制御部132により算出される。そして、ステップS73にて、メモリ133から読み出された2通りの当該撮影分岐部の最適撮影角度とポジションセンサ128からの現在の撮影角度情報により、現在の撮影角度から最も撮影角度の変更量が少ない最適撮影角度が判定される。
【0085】
最も近い分岐部撮影位置と最適撮影角度が決定されると、ステップS74にて、機構部118に制御信号が供給されて、保持アーム114が移動され、撮影位置と角度が変更される。
【0086】
この結果、簡単なスイッチ操作1つで、ユーザは撮影したい分岐部分に撮影位置を先回りさせることができると同時に、最も分岐部分の観察がしやすい撮影角度にすることができ、手技時間を短縮することが可能となる。
【0087】
また、前述した説明では分岐部最適撮影角度スイッチとしたが、これは物理的なスイッチに限らず、表示画面上のボタンでも良いし、音声認識によるスイッチでも良い。
【0088】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
【0089】
前述した第1の実施形態では、常に正面撮影位置のまま保持アーム114が平行移動することとしたが、撮影経路に対して直交方向から撮影しながら撮影位置を変更したい場合が考えられる。これを解決するために、第5の実施形態では、第1の実施形態のシステムに、直交移動撮影スイッチを付加している。
【0090】
図12Aは、第5の実施形態において撮影経路lと平面検出器113の中心の移動経路dの関係を示す図である。
図12Bは、第5の実施形態において血管マップ画像上での始点と目的地点を説明するための図である。
【0091】
ユーザにより操作部121内の図示されない直交移動撮影スイッチが操作されると、直交移動撮影プログラムが起動する。次に、ポジションセンサ128から現在の撮影位置における保持アーム位置情報と、メモリ133から撮影経路の3次元座標が、機構制御部132に入力される。これらのデータを基に、ビーム中心線(平面検出器113の法線ベクトルnと撮影経路の接線l′が直交する撮影位置)が、機構制御部132により計算される。このとき、ビーム中心線と撮影経路が直交する撮影位置は、ビーム中心線と撮影経路との交点における接線が作る平面内において計算される。
【0092】
機構制御部132において撮影位置の計算がなされると、機構部118に制御信号が供給されて保持アーム114の位置が変更される。続いて、前述した第1の実施形態のように、ユーザによって移動量制御スイッチ122が操作されて撮影位置が変更されると、第1の実施形態の移動量計算に加えて、現在の撮影経路座標に対して次の撮影経路座標がメモリ133から機構制御部132に読み出される。すると、次の撮影経路座標におけるビーム中心線(平面検出器113の法線べクトルn)と撮影経路の接線l′が直交する撮影位置が、機構制御部132で計算された後、機構部118に制御信号が供給される。
【0093】
このように、移動量制御スイッチ122を使用して撮影位置の変更を行いながら、スイッチを押すという簡単な操作のみで、常に撮影経路に対して直交する方向から撮影することが可能となる。
【0094】
また、前述した説明では直交移動撮影スイッチとしたが、これは物理的なスイッチに限らず、表示画面上のボタンでも良いし、音声認識によるスイッチでも良い。
【0095】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
【0096】
前述した第1乃至第5の実施形態では、撮影位置の始点と目的地点を指定して撮影経路に対する撮影位置を算出しているが、第6の実施形態では、予め設定された順序に従って撮影(投影)方向を決定するようにしている。
【0097】
一般に、心筋を灌流する血管は心筋の外側にあるので、心筋に垂直にX線を照射させるということは、その心筋の表面の血管と心臓中心を結ぶ線がX線投影線と略一致するようにする、ということとほぼ同等である。
【0098】
ここで、米国心臓学会(American Heart Association : AHA)が推奨する、解剖学的に割り当てられた血管番号を用いる。
図13に示されるように、AHA分類では、心臓血管であれば血管に応じて1〜15等の番号が振られている。これらのAHA血管分類番号は、撮影経路演算部116内のメモリ133に予め登録されている。また、操作部121には、
図14に示されるように、AHA血管分類番号に対応した操作ボタン121a〜121j等が配設されている。
【0099】
例えば、
図15Aに示されるように、操作ボタン121cが押されると、AHA血管分類の番号“2”の血管箇所に垂直になるように、X線発生部111の投影方向がセットされる。すなわち、ポジションセンサ128から現在の撮影位置における保持アーム位置情報と、メモリ133からのAHA血管分類番号の情報が、機構制御部132に入力される。これらのデータを基に、当該AHA血管分類番号(この場合“2”)の血管箇所に垂直になるような位置が、機構制御部132により計算される。機構制御部132において撮影位置の計算がなされると、機構部118に制御信号が供給されて保持アーム114の位置が変更され、
図15Bに示されるように、AHA血管分類番号“2”の血管箇所に垂直になるような位置での撮影が可能になる。
【0100】
なお、当該血管箇所に垂直になる方向が2方向存在する場合は、ユーザによって予め入力しておくことが好ましい。或いは、そのときに選択できるようにしてもよい。
【0101】
また、撮影方向は必ずしも垂直であることに限定されるものではない。例えば、AHA血管分類番号“3”の血管近傍が見たい場合、予めユーザが好みの角度をプリセットしておく方法であっても良い。
【0102】
このように、解剖学的に割り当てられた血管番号に対応するボタンを操作するという簡単な操作のみで、常に所望の血管箇所に対して直交する方向から撮影することが可能となる。
【0103】
(第7の実施形態)
前述した第6の実施形態では、ユーザが見たい心筋または血管番号の箇所に限定して撮影方向が決められている。しかしながら、本発明は血管番号の箇所にのみ限定されるものではない。第7の実施形態では、複数の血管番号の間にて撮影可能にしたものである。
【0104】
例えば、右冠状動脈の支配領域のうち、AHA血管分類番号“2”と“3”の中間あたりの心筋を見たい場合がある。この場合、従来の方法では所望の位置に撮影系を移動させることができなかったので、手動で動かす必要があった。
【0105】
そこで、第7の実施形態では、前述した第6の実施形態と同様に、操作部121の操作ボタンの番号とAHA血管分類番号を一致させるように構成し、更に、所望の複数の操作ボタンを順番に押すことにより、複数のAHA血管分類番号の間にて撮影方向がセットされるようにしている。
【0106】
例えば、
図16Aに示されるように、操作部121の操作ボタン121c、121dが押された後に開始ボタン121iが押される。すると、
図16Bに示されるように、AHA血管分類番号の“2”と“3”の中間の箇所に垂直になるようにX線の撮影位置がセットされる。
【0107】
これにより、解剖学的に割り当てられた血管番号に対応するボタンのうち、複数個のボタンを押すと、それぞれの組織用の撮影方向の重心方向にX線撮影方向を定めることができる。
【0108】
(第8の実施形態)
第6及び第7の実施形態では、ユーザの見たい箇所はAHA血管分類番号に対応する箇所或いはそれらの番号の間に限定されていた。しかしながら、実際の臨床場面においては、見たい心筋はある血管番号の箇所に限定されるものではない。例えば、ある血管に狭窄がある場合、その狭窄の遠方の心筋を全て観察したいことは多い。この場合、単一方向では不足であり、対象心筋をなめるように全て観察することができるようにしたのが第8の実施形態である。
【0109】
従来の方法では、手動で撮像系を回転させることは可能であったが、慣れない者が操作すると視野から外れてしまったり、垂直にならなかったりしていた。そこで、第8の実施形態では、操作部121の操作ボタンの番号とAHA血管分類番号を一致させるように構成して、操作ボタンを押した順に見やすい角度にセットされるようにする。
【0110】
例えば、
図17Aに示されるように、操作部121の操作ボタン121b→マップボタン121j→操作ボタン121c→マップボタン121j→操作ボタン121d→開始ボタン121iの順で操作ボタンが押されたとする。すると、
図17Bに示されるように、先ず、AHA血管分類番号“1”近傍が見やすい角度にセットされ、次に同“2”近傍が見やすい角度に移動され、更に、同“3”近傍が見やすい角度に移動されるようなルートがセットされる。例えば、具体的には、AHA血管番号“1”→“2”→“3”とは右冠状動脈であり、例えば“LAO40,CRA0→LAO0,CRA30”のように保持アーム114が回転される。
【0111】
図18Aは、第8の実施形態における右冠状動脈における撮影方向の移動の例を示す図である。
図18Bは、第8の実施形態における左冠状動脈における撮影方向の移動の例を示す図である。
【0112】
このように、解剖学的に割り当てられた血管番号に対応する複数個のボタンを連続的に押すことで、それぞれの組織ごとに最適な撮影方向が得られるように撮影方向のルートを定めることが可能となる。
【0113】
以上のように、第8の実施形態に従ったX線診断装置によれば、ユーザは移動量制御スイッチまたは操作部を操作するという簡単な操作で所望の撮影位置に沿って撮影位置を連続的に変更することができる。また、スイッチを使用するだけで、撮影位置を分岐部分に先回りさせ、且つ、最適な撮影角度に設定することができるので、従来個別に必要であった、天板の操作、アーム角度操作といった煩雑な作業を簡素化することができる。
【0114】
その結果、手技状態間が短縮されるだけでなく、医師への負担が軽くなり、手技が正確になる等の効果が期待できる。