特許第5752241号(P5752241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5752241香味剤としての5−アルケニル−2−オキソ−テトラヒドロフラン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752241
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】香味剤としての5−アルケニル−2−オキソ−テトラヒドロフラン誘導体
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/226 20060101AFI20150702BHJP
   A23D 7/00 20060101ALI20150702BHJP
   C07D 307/33 20060101ALN20150702BHJP
【FI】
   A23L1/226 G
   A23D7/00 500
   !C07D307/32 E
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-510712(P2013-510712)
(86)(22)【出願日】2011年5月17日
(65)【公表番号】特表2013-527184(P2013-527184A)
(43)【公表日】2013年6月27日
(86)【国際出願番号】IB2011052153
(87)【国際公開番号】WO2011145048
(87)【国際公開日】20111124
【審査請求日】2013年5月24日
(31)【優先権主張番号】10163104.2
(32)【優先日】2010年5月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】カズィア エーバーハート
(72)【発明者】
【氏名】エリック フルロ
(72)【発明者】
【氏名】エリーズ サラズィン
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−518595(JP,A)
【文献】 特開2001−112431(JP,A)
【文献】 特開2002−000287(JP,A)
【文献】 特開平07−118254(JP,A)
【文献】 特表2008−519013(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/038148(WO,A1)
【文献】 特開昭62−123183(JP,A)
【文献】 米国特許第05023347(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/226
A23D 7/00
C07D 307/33
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(E)−9−ドデセン−4−オリド、(E,Z)−5,9−ドデカジエン−4−オリド、(Z)−9−ドデセン−4−オリドおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物の、フレーバー組成物または食料品におけるバタリーもしくはクリーミーのフレーバーまたはノートを提供するあるいは増大させるための使用
【請求項2】
化合物が、食料品ベースと組み合わせて使用される、請求項記載の使用。
【請求項3】
食料品ベースが、冷凍食品または冷凍製品、ソース、フレーバー付けされたオイル、スプレッド、スナックまたはビスケットである、請求項記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、フレーバーの分野に関する。とくに、新規のモノ−およびジ−不飽和のγ−ラクトン、ならびに、クリーミー(creamy)、バタリー(buttery)、ファッティ(fatty)、ミルキー(milky)および/またはグリーンのフレーバーならびにノートを付与または増強させるためのフレーバー成分としてのモノ−不飽和のγ−ラクトンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
γ−ラクトンは、Bedoukian, P.Z. Perfumery and Flavoring Synthetics 3rd Edition 1986, 256-265.Carol Stream, IL Editor; Novel synthesis of flavour quality γ-lactones. Zope, D.D.; Patnekar, S.G.; Kanetkar, V.R. Flavour Fragr. J. 2006, 21, 395-399; およびIdentification and synthesis of new γ-lactones from tuberose absolute (Polienthes tuberosa),. Maurer, B.; Hauser, A. Helv. Chim.Acta 1982, 65, 462-476などの様々な刊行物に記載されている。
【0003】
γ−ラクトンは、フェロモンとしての性質についても記載されている。EP−A1−0528044には、有害な昆虫のためのフェロモントラップとして使用される4置換されたγ−ラクトンの製造方法が開示されている。「Synthesis of the Enantiomers of (Z)-5-(1-octenyl)oxacyclopentan-2-one, a Sex Pheromone of the Cupreous Beetle, Anomala Cuprea Hope」Bioscience, Biotechnology and Biochemistry, vol 56, no.7, 1992, pages 1160-1161の刊行物には、銅色シェーファービートル(cupreous chafer beetle)から単離されるγ−ラクトンからなるフェロモンが記載されている。
【0004】
他の刊行物、JP−07118254(Toray Ind Inc)において、γ−ラクトン、7−デセン−4−オリドが記載されており、そこには、ミルキー様、バタリー様、フルーツ様またはジャスミン様の香気、匂いおよび芳香を提供するために、当該化合物は、芳香組成物中で使用され得ることが開示されている。しかしながら、この文献には、異なるアルケニル鎖長と異なる炭素位置での不飽和の両方を有するγ−ラクトンが、より所望とされ得るフレーバーまたはフレーバーノートを提供できることは示唆されていない。クリーミー、バタリー、グリーン、ミルキーおよび/またはファッティのフレーバーならびにノートを提供するための、未だ知られていないγ−ラクトン類を提供することが望まれている。
【0005】
本発明の概要
それ故、本発明において、式(I)の化合物:
【化1】
[式(I)中、点線は場合により二重結合を表す]が提供される。
【0006】
さらに、本発明は、フレーバー組成物または食料品におけるバタリー、クリーミー、グリーン、ファッティおよび/またはミルキーのフレーバーあるいはノートを提供するまたは増大させるための、式(II):
【化2】
の化合物の使用を提供する。
【0007】
さらに、本発明は、上述に定義された化合物が、食料品類と組み合わせて使用される、クリーミー、バタリー、グリーン、ミルキーおよび/またはファッティのフレーバーあるいはノートを提供するための、該化合物の使用を提供する。
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は、フレーバー成分としての使用、好ましくは、クリーミー、バタリーおよび/またはファッティのノートを付与するために適している、式(I)および(II)で示される化合物に関する。本発明における化合物は、好ましくは、バタリーもしくはクリーミーのフレーバーまたはノートを提供するために使用される。
【0009】
とりわけ、飽和γ−ラクトンは、通常、フルーティ・ピーチー(fruity-peachy)なノートを提供するのに対し、δ−ラクトンは、ココナッツをより彷彿とさせる。一方、本発明におけるγ−ラクトンは、しばしばグリーンの要素を伴って、香りをよりバタリーなノートへと劇的に変える。これらのラクトンが、特に、長持続性のフレーバーインパクトを発揮することも見出されている。
【0010】
アルキル鎖において1つの二重結合を有する本発明における化合物は、シスまたはトランス配置で存在していてもよく、あるいはそれらの混合物を有していてもよい。
【0011】
アルキル鎖において2つの二重結合を有する式(II)で示される化合物は、シス,シスまたはシス,トランスまたはトランス,シスまたはトランス,トランス配置を採用していてもよく、あるいはそれらの混合物を有していてもよい。
【0012】
式(I)における化合物は、9−ドデセン−4−オリド、5,9−ドデカジエン−4−オリド、およびそれらの混合物を含む。
【0013】
特に、(E)−9−ドデセン−4−オリド、(E,Z)−5,9−ドデカジエン−4−オリド、(Z)−9−ドデセン−4−オリドおよびそれらの混合物といった異性体構造を有する化合物が好ましい。これらの中でも、(E)−9−ドデセン−4−オリド、(Z)−9−ドデセン−4−オリドおよびそれらの混合物がより好ましい。
【0014】
式(II)における化合物は、7−ドデセン−4−オリド、9−ドデセン−4−オリド、10−ドデセン−4−オリド、10−ドデセン−4−オリド、5−ドデセン−4−オリド、5,9−ドデカジエン−4−オリド、11−ドデセン−4−オリド、9−ドデセン−4−オリドおよびそれらの混合物を含む。
【0015】
本発明は、フレーバー組成物またはフレーバー付けされた物品の、上述のフレーバー特性を付与、増大、向上あるいは改変する方法であって、前記組成物または物品に、本発明における少なくとも1つの化合物の有効量を添加することを含む前記方法をも提供する。「本発明における化合物の使用」の記載は、化合物(I)を含有する、フレーバー業界において有効成分として有利に使用できるあらゆる組成物の使用も意味している。
【0016】
好ましい形態において、本発明は、
i)フレーバー成分として、上述に定義された本発明における少なくとも1つの化合物;
ii)フレーバーキャリアおよびフレーバーベースからなる群から選択される少なくとも1つの成分;ならびに
iii)場合により、少なくとも1つのフレーバーアジュバント
を有するフレーバー組成物を提供する。
【0017】
「フレーバーキャリア」とは、ここでは、フレーバーの観点から事実上中性であり、そのため、フレーバー成分の官能的性質を著しく変化させない物質を意味している。前記キャリアは液体または固体であってもよい。
【0018】
液体のキャリアとして、乳化系、例えば、溶剤および界面活性剤の系、あるいは一般にフレーバーに使用される溶剤が例示できるが、これらに限定されない。一般にフレーバーに使用される溶剤の性質およびタイプの詳細な記載を、包括的にすることはできない。しかしながら、その一例として、例えば、プロピレングリコール、トリアセチン、トリエチルシトレート、ベンジル型アルコール、エタノール、植物油またはテルペン類などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
固体のキャリアとして、吸収性ゴムまたは吸収性ポリマー、あるいは、さらには、カプセル化材料が例示できるが、これらに限定されない。そのような材料の例は、壁形成材料および可塑化材料を有していてもよく、前記材料は、例えば、モノ−、ジ−またはトリサッカリド、天然または化工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、タンパク質またはペクチン、あるいは、さらには、H. Scherz, Hydrokolloids: Stabilisatoren, Dickungs-und Gehermittel in Lebensmittel, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr's VerlagGmbH & Co., Hamburg, 1996などの参考資料に挙げられているような材料である。カプセル化は、当業者によく知られた工程であり、例えば、噴霧乾燥、凝集、または、さらには、押出などの技術の使用により実施されていてもよく、あるいはコアセルベーションおよび複合コアセルベーション技術を含んだカプセル化コーティングからなる。
【0020】
「フレーバーベース」とは、ここでは、少なくとも1つのフレーバー補助成分を有する組成物を意味している。
【0021】
前記フレーバー補助成分は、式(I)または式(II)で示される化合物ではない。また、「フレーバー補助成分」とは、ここでは、快い作用を付与するためにフレーバー調合物または組成物中に使用される化合物を意味している。言い換えれば、かかる補助成分は、フレーバー付けするものとみなされ、それは当業者には組成物の風味を好ましくもしくは快く付与または改変することができると認識されねばならず、ただ、風味を有するとだけ認識されるべきではない。
【0022】
フレーバーベース中に存在するフレーバー補助成分の性質およびタイプは、ここでは、より詳細な説明を保証するものではなく、いずれにせよ包括的なものではないが、当業者は、それらを通常の知識ならびに意図している使用または適用および所望とする感覚受容作用に基づき、選択できる。大まかに言えば、これらのフレーバー補助成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、窒素複素環式化合物または硫黄複素環式化合物ならびに精油などの様々な化学薬品クラスに属しており、前記フレーバー補助成分は、天然または合成由来であってもよい。これらのフレーバー補助成分の多くは、いずれにせよ、S. Arctander, Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montcair, New Jersey, USAによる書籍、またはその最新版などの参考資料、あるいは類似の種類の他の論文、ならびにフレーバー分野における豊富な特許文献に挙げられている。また、前記補助成分は、制御された様式で、様々なタイプの香味剤を放出するものとして知られている化合物であってもよいことも理解される。
【0023】
「フレーバーアジュバント」とは、ここでは、例えば、着色、特有の耐光性、耐薬品性などの付加的な利点をさらに付与できる成分を意味している。一般にフレーバーベース中に使用されるアジュバントの性質およびタイプの詳細な記載を、包括的なものにはできないが、前記成分は、当業者によく知られていることは述べておく必要がある。
【0024】
本発明における少なくとも1つの化合物および少なくとも1つのフレーバーキャリアからなる本発明の組成物は、本発明における少なくとも1つの化合物、少なくとも1つのフレーバーキャリア、少なくとも1つのフレーバーベース、および場合により少なくとも1つのフレーバーアジュバントを有するフレーバー組成物と同様の発明の1実施形態を表す。
【0025】
ここでは、上述の組成物において、本発明における1種より多くの化合物を有する可能性は重要であることを述べることが有用である。それというのも、それにより、フレーバリストは、本発明の様々な化合物のフレーバー香調(tonality)を有するアコード、フレーバーを調整することが可能となり、こうして、フレーバリストのための新たなツールがもたらされるからである。
【0026】
本発明の化合物が出発または中間生成物として関与する、化学合成から直接(例えば適切な精製なしで)生じるあらゆる混合物は、本発明におけるフレーバー組成物とはみなされ得ないことが好ましい。
【0027】
また、本発明における化合物は、好ましくはフレーバー付けされている物品へ導入させ、前記物品の風味を好ましく付与または改変させることができる。したがって、
i)フレーバー成分として、上述に定義された、本発明における少なくとも1つの化合物、または本発明のフレーバー組成物;および
ii)食料品ベース
を有するフレーバー付けされている物品もまた、本発明の対象である。
【0028】
適切な食料品、例えば食品または飲料は、セイバリーキューブ(savory cubes)、インスタントスープ、かん詰スープ、貯蔵肉、インスタント麺、冷凍食品および冷凍製品、全ての形態におけるソース、フレーバー付けされたオイルおよびスプレッド、スナックおよびビスケットを含む。
【0029】
本発明の目的において、「食料品ベース」とは、食用製品、例えば、食品または飲料を意味している。したがって、本発明におけるフレーバー付けされている物品は、所望とする食用製品(例えば、セイバリーキューブ)に相当する機能的な配合物、ならびに場合により付加的に有益な作用物質と本発明における少なくとも1つの化合物のフレーバー有効量とを有している。
【0030】
食料品または飲料の成分の性質およびタイプは、ここでは、より詳細な説明を保証するものではなく、いずれにせよ包括的なものではないが、当業者は、それらを通常の知識に基づき、および前記製品の性質に応じて選択できる。しかしながら、食料品は、冷凍食品または冷凍製品、ソース、フレーバー付けされたオイル、スプレッド、スナックまたはビスケットが特に好ましい。
【0031】
本発明における化合物が様々な前述の物品または組成物に導入されうる割合は、広い範囲の値で変化する。これらの値は、フレーバー付けされている物品の性質や、所望とする感覚受容作用、ならびに本発明における化合物が、フレーバー補助成分、溶剤または当該技術分野において通常使用される添加剤と混合される際に所定のベース中の補助成分の性質に依存している。
【0032】
フレーバー組成物の場合、本発明の化合物が導入されている消費者製品の質量に対して、本発明の化合物の典型的な濃度は、0.0001質量%〜1質量%、またはそれを上回るオーダーである。これらの化合物が、フレーバー付けされている物品に導入される場合、前記濃度より低い濃度、例えば、0.001質量%〜0.5質量%のオーダーの濃度が使用され得、その際、パーセンテージは物品の質量に対するものである。
【実施例】
【0033】
実施例
以下の実施例において、本発明はより詳細に記載されており、略語は、当該技術分野において通例の意味を有するものである。
【0034】
実施例1
出発物質の準備
以下の市販されている試薬および溶剤を、Sigma−Aldrich社(ドイツ)から購入した:ジクロロメタン中1.0Mの塩化チタン(IV)(Sigma Aldrich 249866)、チタン(IV)tert−ブトキシド(Aldrich 462551)、[(1−エトキシシクロプロピル)−オキシ]トリメチルシラン(Aldrich 332739)、3−エトキシ−3−オキソプロピル亜鉛ブロミド(Aldrich 498521;Acros Organics社(USA)、Carlo−Erba社(フランス)およびFluka社(スイス))。ジクロロメタンにおける15%溶液としてのデス・ マーチン・ペルヨージナンをAcros Organics社(USA)から購入した(Acros 333110500)。以下の化合物を、Firmenich SA社(スイス)から得た:(Z,Z)−3,6−ノナジエノール(ref. 967327, 純度95%)、8−ノネナール(Novenal DIPG(ref. 967415)からシクロヘキサンにおいて希釈し、水で洗浄し、次いで蒸留することで得られる、純度94%)、(Z)−6−ノネナール(ref. 925050, 純度95%)および(E)−3−ノネナール(ref. 57652, 純度99%)。
【0035】
NMRスペクトルを、Bruker社のNMRソフトウェアTopSpin2.0を使用して処理した(s, 1重線;d, 2重線;t, 3重線;m, 多重線)。
【0036】
ガスクロマトグラフィー/電子衝撃質量分析(GC/EI−MS)のために、以下の条件下で、スニッフィングポートを備えるAgilent6890/5973 GC−MSを用いて、無極性カラム分析を実施した:カラム:HP1カラム、60m、内径0.32mm、膜厚1μm;キャリアガス:ヘリウム、5.0mL/分;オーブン:50℃で5分等温、その後、勾配3℃/分で120℃、その後、勾配5℃/分で250℃、5分保持し、最後に、勾配15℃/分で300℃、次いで20分等温;注入パラメータ:分割比 1/1;注入量 2.0μL;検知パラメータ:70eVで生じる質量分析スペクトル;スキャンモード:m/z 30−550。GC−MSスニッフィング分析は、1人のフレーバリストを含む3人の判定人により実施した。極性カラムについては、分析は、以下の条件下で、Agilent6890/5973 GC−MSを用いて実施した。
カラム:SupelcoWax(30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm);キャリアガス:ヘリウム、0.7mL/分;オーブン:50℃で5分等温、その後、勾配3℃/分で240℃、15分保持;注入パラメータ:分割比 1/1;注入量 1.0μL;検知パラメータ:70eVで生じる質量分析スペクトル;スキャンモード:m/z 30−550。GC−MSのピークは、Chemstation(HP社)のソフトウェアを用いて割り出し、積分させた。
【0037】
ガスクロマトグラフィー/水素炎イオン化検出器(GC/FID)は、VariantGC3800により実施した。カラムは、SPB−1 30m、内径0.25mm、膜厚0.25μmであった(Supelco)。オーブンプログラムは、ヘリウムガスを12psiの一定圧下で、70℃で0.5分、次いで10℃/分で70℃−200℃。インジェクターは250℃であった。
【0038】
(Z,Z)−3,6−ノナジエナール:
207gのデス・ マーチン・ペルヨージナン溶液(1.76当量)を、60mLのジクロロメタン中の5.85gの(Z,Z)−3,6−ノナジエノール(41.9mmol)の溶液に添加した。反応物を、20℃で30分間攪拌させ、その後、5%NaOH溶液(500mL)に注入した。該混合物を、ジエチルエーテルにおいて3回抽出させ、ブライン、水で洗浄し、乾燥および蒸発させた。粗生成物のバルブ−トゥ−バルブ蒸留(bulb−to−bulb distillation)を行い、3.7gの淡黄色の油を得た(63.5%の収率、79%の(Z,Z)−3,6−ノナジエナール、(E,Z)−2,6−ノナジエナールも含む)。
【0039】
(E)−7−ノネナールおよび(Z)−7−ノネナール:
10gの8−ノネナールを、5mgの三塩化ロジウム1水和物および100μLのメタノールと、70℃で6時間反応させた。該混合物を、200mLのジエチルエーテルにおいて希釈させ、水で洗浄し、乾燥および蒸発させた。粗生成物を、真空下でビグリューカラムを介して蒸留させ(沸点 40℃/0.7mmHg)、約1/1の比率で、7.2g(72%)の(Z)−および(E)−7−ノネナールの混合物を得ると共に、8%の残りの8−ノネナールおよびいくつかのより重たい非同定生成物を得た。4.5gの該混合物を、4%の硝酸銀を含有している300gのシリカゲルにより精製させ(シクロヘキサン中の2.5%の酢酸エチルで溶出させる)、2.2gの(E)−7−ノネナール(GC−FIDにおいて純度95%、98%(E)、2%(Z))および1.7gの(Z)−7−ノネナール(GC−FIDにおいて純度80%、96%(Z)、4%(E)、17%の残りの8−ノネナール含有)を得た。
【0040】
(E)−7−ノネナールのスペクトルデータ:
【0041】
(Z)−7−ノネナールのスペクトルデータ:
【0042】
(E)−6−ノネナール:
8gの(Z)−6−ノネナールと0.25gの硝酸アルミニウムを、130℃で6時間反応させた。該混合物を、ビグリューカラムを介して蒸留させ(沸点 30℃/0.03mmHg)、65/35の比率で、4.73g(59%)の(E)−および(Z)−6−ノネナールの混合物を得た。上述と同じ条件下で、AgNO−SiOによる精製を行い、1.2gの(E)−6−ノネナール(GC−FIDにおいて純度98%、約1%(Z))を得た。
【0043】
【0044】
(E)−4−ノネナール:
1gの(E)−4−ノネノールを10mLのCHCl中で希釈した。35gのデス・ マーチン・ペルヨージナン溶液を2時間にわたって添加した。反応物を、20℃でさらに2時間攪拌させ、その後、50mLの冷5%NaOHに注入した。該混合物を、ジエチルエーテルにおいて3回抽出させ、それをブライン、水で洗浄し、乾燥および蒸発させた。粗生成物のバルブ−トゥ−バルブ蒸留を行い、0.64gの淡黄色の油を得た(65%の収率、GC−FIDにおいて純度91%、99%(E)、1%(Z))。
【0045】
【0046】
実施例2
本発明におけるγ−ラクトンの合成
ラクトンの製造において、以下の一般的な手順が用いられる。各反応において使用されるアルデヒドは、以下に明らかにされる。
【0047】
[(1−エトキシシクロプロピル)−オキシ]−トリメチルシラン(2.2当量)を、四塩化チタン(2当量)の溶液に25分間にわたって添加した。20℃で5分間攪拌した後、深い赤色となった。チタン(IV)tert−ブトキシド(1当量)を添加し、反応物を1時間攪拌した。その後、アルデヒド(1当量)を、ゆっくりかつ一定の添加速度で、シリンジポンプを用いて3時間にわたって添加した。反応物をさらに1時間攪拌し、その後、5%NaHCOを有する氷に注ぎ、ジクロロメタンで2回抽出し、乾燥および蒸発させた。粗生成物は4−ヒドロキシ−エチルエステルであり、それはGCインジェクターにおいて、ラクトンへと分解した。粗ヒドロキシエステルを、メタノール/5%NaOH(1/1)中で約0.1Mへと希釈し、かつ反応物を一晩攪拌した。メタノールを蒸発させ、水相をエーテルで洗浄し、5%KHSOを用いてpH1に酸性化させ、最後に、ジエチルエーテルで3回抽出させた。このようにして得られたラクトンを、真空下での蒸留またはフラッシュクロマトグラフィーによって精製させた。
【0048】
以下の全てのラクトンは、ラセミ混合物から構成される。
【0049】
(Z)−9−ドデセン−4−オリド
5.6g(40mmol)の(Z)−6−ノネナールから出発
ビグリューカラムを介する蒸留による精製:沸点 77℃/0.018mmHg
収率:38%、GC−FIDにおいて99%、94%(Z)および6%(E)
【0050】
11−ドデセン−4−オリド
5.6g(40mmol)の8−ノネナールから出発
ビグリューカラムを介する蒸留による精製:沸点 93℃/0.026mmHg
収率:77%、GC−FIDにおいて95%
【0051】
(E,Z)−5,9−ドデカジエン−4−オリド
4.98g(36mmol)の(E,Z)−2,6−ノナジエナールから出発
ビグリューカラムを介する蒸留による精製:沸点 94℃/0.027mmHg
収率:36%、GC−FIDにおいて98%
【0052】
(E)−6−ドデセン−4−オリド
1.0g(7.1mmol)の(E)−3−ノネナールから出発
バルブ−トゥ−バルブ蒸留による精製
収率:42%、GC−FIDにおいて90%
【0053】
(E)−5−ドデセン−4−オリド
5.0g(36mmol)の(E)−2−ノネナールから出発
ビグリューカラムを介する蒸留による精製:沸点 65℃/0.027mmHg
収率:37%、GC−FIDにおいて93%
【0054】
(E)−10−ドデセン−4−オリド
1.55g(11mmol)の(E)−7−ノネナールから出発
ビグリューカラムを介する蒸留による精製:沸点 78℃/0.019mmHg
収率:41%、GC−FIDにおいて91%、<2%(Z)
【0055】
(Z)−10−ドデセン−4−オリド
1.55g(11mmol)の(Z)−7−ノネナールから出発
ビグリューカラムを介する蒸留による精製:沸点 74℃/0.014mmHg
収率:25%、GC−FIDにおいて91%、<4%(E)
【0056】
(E)−9−ドデセン−4−オリド
1.13g(7.3mmol)の(E)−6−ノネナールから出発
マイクロ蒸留(ビグリューカラムなし)による精製:沸点 72℃/0.024mmHg
収率:26%、GC−FIDにおいて91%、<1%(Z)
【0057】
(E)−7−ドデセン−4−オリド
0.6g(11mmol)の(E)−4−ノネナールから出発
ビグリューカラムを介する蒸留による精製:沸点 78℃/0.019mmHg
収率:41%、GC−FIDにおいて91%、約1%(Z)
【0058】
実施例3
バタリーフレーバーにおける化合物の製造および評価
以下の実施例の目的のために、表中に示されている成分の濃度は、評価される最終生成物(溶液であろうがなかろうが)、または即席食品の重さに対する、成分の質量部(ppm)を示している。
【0059】
以下のラクトンが、本願において試験された。
【0060】
表1
【表1】
【0061】
上述の各ラクトン化合物を、市販されているラクトン基調を10ppm含む水溶液に、示された割合で添加した。フレーバー付けされたサンプルは、以下のB〜Eに示されている(サンプルAは対照)。
【0062】
表2
【表2】
【0063】
こうして得られた溶液を、その後、各サンプルの風味を記載することを依頼された少なくとも8人の熟練したフレーバリストのパネルによるブラインドテストに基づく評価に使用した。その結果は、以下の表に示されている。
【0064】
表3
【表3】
【0065】
実施例4
塗り広げ可能なマーガリンにおける化合物の製造および評価
60質量%の脂肪相と40質量%の水相を含んだ、フレーバー付けされていないマーガリンを、標準的な実施法において製造した。75質量%のなたね油と25質量%のエステル交換された脂肪ブレンド(例えば、Danisco社)を有する脂肪相に、ベータカロテンおよび0.3質量%のDimodan(登録商標)R−T PEL/B−K乳化剤(例えば、Danisco社)を添加した。水相に0.5質量%塩を添加した。該2つの相を、50℃で乳化させた。その後、エマルションを連続した冷却区間において冷却させ、標準的な実施法において結晶化させた。
【0066】
選択された量のラクトン化合物を攪拌しながら導入することにより、マーガリンをフレーバー付けさせ、下記のサンプルA〜Iを製造した。その後、製造物を評価する前に、4℃で少なくとも24時間そのまま維持した。前記の量は、下記の表のとおりである。
【0067】
表4
【表4】
【0068】
その後、フレーバー付けされたマーガリンのサンプルを、対照サンプルAを対照にして、サンプルB〜Iを比較する2つのブラインドテストおいて、少なくとも8人の熟練したフレーバリストのパネルにより評価した。
【0069】
結果は、以下の表の通りであった。
【0070】
表5
【表5】
【0071】
特に、製造物Bは、そのクリーミー、バタリー、ファッティ特性のため、フレーバリストから高く評価された。
【0072】
実施例5
フレーバー付けされたマーガリンにおける化合物の製造および評価
実施例4において製造されたマーガリンベースを、バターフレーバー(706409 02714T;由来:Firmenich SA社、ジュネーブ、スイス)の攪拌と共に導入することによってフレーバー付けさせた。その後、フレーバー付けされたマーガリンを4℃で最低限24時間そのまま維持した。その後、ラクトン化合物をフレーバー付けされたマーガリン中で攪拌させ、以下のサンプルA〜Dを製造した。その後、該サンプルを4℃で最低限24時間貯蔵した。含量は、以下の表の通りである。
【0073】
表6
【表6】
【0074】
その後、該サンプルを少なくとも8人の熟練したフレーバリストのパネルによるブラインドテストにおいて評価し、バターフレーバーのみを含むベースサンプル(サンプルA)と比較した。
【0075】
結果は、以下の表の通りである。
【0076】
表7
【表7】
【0077】
特に、製造物BおよびDは、それらのクリーミー、バタリー、ファッティ特性のため、フレーバリストから高く評価された。