(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、ここで提案される軸保持構造を図面に基づいて説明する。ここでは、軸保持構造を脚部の長さを調整する構造に適用したポータブルトイレを例に挙げる。以下の説明において、ポータブルトイレに関し、前、後、左、右というときは、それぞれ便座に腰掛けた使用者から見た方向を基準にしている。図面には、前(F)、後(Bk)、左(L)、右(R)に対応させて、それぞれ符号F、Bk、L、Rが適宜に付されている。また、各図において同じ作用を奏する部材や部位には、同じ符号を付し、適宜に重複する説明を省略している。
【0016】
ここでは、まず、ポータブルトイレの概要を説明し、その後、ポータブルトイレの脚部の長さを調整する構造、換言すれば、ポータブルトイレの高さを調整する構造に採用された軸保持構造を説明する。ここで提案される軸保持構造は、ポータブルトイレの高さを調整する構造のみならず、種々の用途に採用されうる。
【0017】
《ポータブルトイレ10》
図1から
図4はそれぞれポータブルトイレ10の斜視図である。ここで、
図1は、蓋20が開いた状態(蓋20が上げられた状態)を示している。
図2は、
図1の状態から便座30を上げ、バケツ40の蓋42(バケツ蓋)と、左側の肘掛300とを取り外した状態を示している。
図3は、
図2の状態からバケツ40を取り外した状態を示すポータブルトイレ10の斜視図である。さらに、
図4は、
図3の状態からトレイ50(受け板)を取り出した状態を示すポータブルトイレ10の斜視図である。
【0018】
ポータブルトイレ10は、
図1から
図4に示すように蓋20と、便座30と、バケツ40と、トレイ50と、便器本体100と、背もたれ250と、肘掛300、400と、脚500、600と、脱臭装置750(
図5参照)とを備えている。
【0019】
《蓋20》
蓋20は、ポータブルトイレ10の便座30に被せられる部材である。この実施形態では、蓋20は、
図1に示すように、矩形の部材であり、後ろ側の縁にヒンジ21が取り付けられている。蓋20は、ヒンジ21を軸にして回動する。蓋20は、前後方向の中間部に蝶番22が取り付けられている。蓋20は、蝶番22によって前後方向の中間部で折り曲げることができる。折り曲げられた蓋20は、背もたれ250に設けられた開口251を通すことができる。背もたれ250に設けられた開口251に蓋20を通すことによって、蓋20の姿勢は、背もたれ250の前で便座30の上に配置された姿勢(
図15参照)と、背もたれ250の後ろに引き上げた姿勢(
図1に示す状態)とで適宜に変えられる。
【0020】
《便座30》
便座30は、
図1に示すように、便器本体100の上面の中央部に配置されている。この実施形態では、便座30は、後部の縁に設けられたヒンジ31を介して便器本体100に取り付けられている。そして、便座30の姿勢は、
図1に示すように、便器本体100の上面に配置された姿勢と、
図2に示すように、便器本体100の上面から引き上げられた姿勢とで適宜に変えられる。この実施形態では、便座30は、使用者がお尻を受ける座面を有する。便座30の中央には開口32が形成されている。
【0021】
《バケツ40》
バケツ40は、使用者の排便を受けるバケツであり、「汚物受け」と称されうる。この実施形態では、バケツ40は、上部が開口した底が深い有底の容器である。
図3および
図4に示すように、便器本体100は、当該バケツ40を収容する窪んだ収容部101を有している。収容部101は、「汚水受け」とも称されうる。バケツ40と収容部101は、異形形状であり、バケツ40は予め定められた向きで収容部101に収められる。
図2に示すように、バケツ40の上縁には取っ手41が取り付けられている。バケツ40が収容部101に収容された状態では、取っ手41はバケツ40の後方へ廻される。また、
図1に示すように、バケツ40の開口には蓋42(バケツ蓋)が装着される。
【0022】
《トレイ50》
この実施形態では、
図3に示すように、便器本体100の収容部101を囲むように便器本体100の上部にトレイ50が置かれている。トレイ50は、便器本体100の上面に置かれている。トレイ50の上には便座30が配置される。トレイ50の中央部には、収容部101の上部開口に合わせた形状の開口51が形成されている。トレイ50の開口51の縁およびトレイ50の外縁には、上方に向けて連続して立ち上がった壁52、53がそれぞれ設けられている。トレイ50の上に落ちた汚水は、かかる壁52、53によってトレイ50の上面に受けられる。また、トレイ50には、便座30のヒンジ31を取り付ける基部54が設けられている。
【0023】
《便器本体100》
次に、便器本体100を説明する。便器本体100は、
図4に示すように、収容部101と、上面部102と、外郭部103と、底部104とを有している。ここで、
図5は、便器本体100の平面図である。
図6は、便器本体100の左側を示す側面図である。
図7は、
図6のVII−VII断面矢視図であり、便器本体100の縦断面図である。
図8は、
図7に示された便器本体100の縦断面図に、バケツ40とトレイ50を書き加えたものである。
【0024】
《収容部101》
図7および
図8に示すように、収容部101は、バケツ40が収められた窪んだ部位である。この実施形態では、バケツ40の上縁43は、周方向に連続して外側に屈曲している。バケツ40は、トレイ50の開口51から便器本体100の収容部101に収められ、かつ、トレイ50の開口51の周縁に連続して立ち上がった壁52の上端に、バケツ40の上縁43を引っ掛けて載置されている。この実施形態では、便器本体100の後部には、脱臭装置750を取り付ける脱臭装置取付部215(
図5参照)が設けられている。収容部101の後部には、脱臭装置750へ臭気を導く脱臭ダクト700が取り付けられる。また、この実施形態では、収容部101の後部には、脱臭ダクト700からの排水を受ける受け部216および受け部216で受けた排水を収容部101へ導く溝状の排出路216aが設けられている。
【0025】
《上面部102》
上面部102は、
図3、
図4、
図7および
図8に示すように、収容部101の上部周辺に設けられている。上面部102の上には、
図1に示すように、便座30が配置される。なお、この実施形態では、
図1および
図8に示すように、上面部102の上には、トレイ50が配置され、その上に便座30が配置されている。上面部102には、
図5に示すように、肘掛取付部211、212と、背もたれ取付部213、214とが設けられている。
【0026】
《外郭部103、底部104》
外郭部103は、
図7に示すように、収容部101の少なくとも外側面111を囲う部位である。底部104は、外郭部103の下端から連続し、便器本体100の底を形成する部位である。ポータブルトイレ10は、便器本体100の少なくとも前面において、上面部102の周縁を形成する面112(この実施形態では、上面部102の周縁の周側面)と、外郭部103を形成する面113(この実施形態では、外郭部103の側面)とが連続している。さらに、外郭部103を形成する面113と、底部104を形成する面114とが連続している。そして、ポータブルトイレ10の脚500、600は、
図1に示すように、便器本体100の底部104の左右にそれぞれ独立して取り付けられている。
【0027】
なお、ここで、面が連続しているとは、外観上、面が一連に連なっていることをいう。例えば、ここでは、便器本体100の少なくとも前面において、ポータブルトイレ10の外郭部103を構成する上面部102の周縁を形成する面112と、外郭部103を形成する面113とは、一連に連なっている。また、この実施形態では、便器本体100は、後述するように上側部材210と下側部材220とで構成されている。ここで、上側部材210と下側部材220とは、外側面が一連に連なるように組み合わされている。かかる箇所では、「面が連続している」とする。また、意匠上の多少の凹凸や段差などは、問題としない。
【0028】
このポータブルトイレ10では、
図1、
図6、
図7および
図8に示すように、バケツ40を収容している収容部101の外側面111が外郭部103に囲われている。このため、バケツ40を収容している収容部101が外観上見えにくい。また、ポータブルトイレ10の前面において、上面部102の周縁を形成する面112と、外郭部103を形成する面113とが連続している。また、外郭部103を形成する面113(この実施形態では、外郭部103の側面)と、底部104を形成する面114とが連続している。つまり、ポータブルトイレ10の前面において、便器本体100を構成する部材の縁が下方に張り出していない。このため、ポータブルトイレ10の前面では、使用者および介助者の足が、ポータブルトイレ10の下端に引っ掛かりにくい。
【0029】
さらにポータブルトイレ10の前面において、便器本体100の外郭部103は、上面部102の周縁から底部104へ向かうにつれて後方に傾斜している。このため、
図1に示すように、ポータブルトイレ10に座った使用者が体の近くに足を引き寄せる空間S1が、ポータブルトイレ10の前面下部、使用者の足元に形成されている。ポータブルトイレ10の前面下部にこのような空間S1があると、使用者は、ポータブルトイレ10に座った状態で、自らの重心の近くに足を引き寄せることができ、ポータブルトイレ10から立ち上がりやすくなる。また、介助者にとっても、ポータブルトイレ10の前面に足を踏み入れる空間S1があるので、ベッドとポータブルトイレ10との間で使用者が乗り移るのを介助するのが容易になる。また、この実施形態では、便器本体100の外郭部103は、ポータブルトイレ10の前面と左右の両側面とが連続した面で形成されており、上面部102の周縁から底部104へ向かうにつれて少し内側に傾斜している。かかる外郭形状によって、使用者がベッドに乗り移る際に、便器本体100が邪魔になりにくい。
【0030】
《上側部材210と下側部材220》
この実施形態では、ポータブルトイレ10は、樹脂製(樹脂成形品)である。便器本体100は、上側部材210と下側部材220とで構成されており、上側部材210と下側部材220とを上下に組み合わせた構造を備えている。かかる構造によって、樹脂成形による便器本体100の作製を容易にし、かつ、便器本体100に所要の剛性を確保している。
【0031】
ここで、上側部材210には、便器本体100のうち収容部101と上面部102とが含まれている。下側部材220には、外郭部103の少なくとも一部と底部104とが含まれている。なお、上側部材210は、収容部101と上面部102とが含まれているとよく、外郭部103の一部(上部)が含まれていてもよい。また、下側部材220には、外郭部103の少なくとも一部(下部)と底部104とが含まれているとよく、外郭部103の一部(上部)が含まれていなくてもよい。また、上面部102と外郭部103、および、外郭部103と底部104などは、境界が明確に定められるものではない。
【0032】
《上側部材210》
図9は、上側部材210の底面図である。
図10は、上側部材210の周縁部の断面を拡大した拡大断面図である。この実施形態では、上側部材210は、一体的な成形品である。上側部材210には、
図5、
図8および
図9に示すように、バケツ40が収容される収容部101と、上面部102とが含まれている。また、上面部102には、肘掛取付部211、212と、背もたれ取付部213、214と、脱臭装置取付部215とが設けられている。肘掛取付部211、212と、背もたれ取付部213、214と、脱臭装置取付部215とについては、後で述べる。
【0033】
図9に示すように、上側部材210の周縁は全周にわたって下方に屈曲している。上側部材210の下縁210aには、
図10に示すように、脱臭装置取付部215を除き、凡そ全周にわたって内側に段差210a1を有し、外側面に沿って下方に延びた係合片210a2が設けられている。
【0034】
上側部材210の周縁には、
図9に示すように、上側部材210と下側部材220とを組み付けるための複数のピン210bが設けられている。ピン210bは、便器本体100の内側に設けられており、上側部材210の底面において下方に突出している。この実施形態では、ピン210bは、略矩形の上側部材210の四隅に設けられている。また、上側部材210の周縁には、上側部材210と下側部材220とを組み付けるための複数のねじ穴210cが形成されている。また、上側部材210の裏面(内面)には、リブが適当に配置されている。また、収容部101の底101aには、底の周縁に沿って下方に突出した底面リブ101a1がある。また、上側部材210の後部の脱臭装置取付部215の周縁部には、脱臭装置750を取り付けるための取付穴210dが形成されている。
【0035】
《下側部材220》
図11は、下側部材220の平面図である。
図12は、下側部材220の周縁部の断面を拡大した拡大断面図である。この実施形態では、下側部材220は、一体的な成形品である。下側部材220には、底部104と、外郭部103とが含まれている。下側部材220は、全体として有底の略矩形の箱形状であり、底部104には、上側部材210の収容部101の底101aに対向する部位に開口104aが形成されている。開口104aの縁には、周方向に連続した突起104a1が設けられている。当該突起104a1は、上側部材210と下側部材220とを上下に組み合わせた際に、上側部材210の収容部101の底101aに形成された底面リブ101a1の内側において立ち上がった状態になる。また、便器本体100の底部104には、脚500、600の脚部501、502、601、602の上端が装着されるボス121〜124が設けられている。この実施形態では、ボス121〜124は、下側部材220の底部104の前後左右の隅部に設けられている。
【0036】
図11に示すように、底部104は全周にわたって上方に屈曲し、外郭部103に連続している。下側部材220の上縁220aには、
図12に示すように、脱臭装置取付部215の一部を除き、凡そ全周にわたって外側に段差220a1を有し、内側面に沿って上方に延びた係合片220a2が設けられている。
【0037】
また、下側部材220の周縁には、
図11に示すように、上側部材210に設けられた複数のピン210bに対応する位置にピン穴220bが設けられている。ピン穴220bは、便器本体100の内側に設けられており、上側部材210に設けられたピン210bがそれぞれ嵌りうる内径を有している。この実施形態では、ピン穴220bは、略矩形の下側部材220の四隅に設けられている。また、下側部材220の周縁には、上側部材210に形成されたねじ穴210cに対応する位置にねじ穴220cが形成されている。また、下側部材220の底面には、リブが適当に配置されている。特に、脚500、600が取り付けられるボス121〜124の周囲にはリブ121a〜124aが放射状に設けられおり、所要の強度が確保されている。
【0038】
《上側部材210と下側部材220の組み付け》
図7に示すように、上側部材210の下縁210aと下側部材220の上縁220aとは、互いに内外に嵌り合っている。この実施形態では、
図10に示すように、上側部材210の下縁210aには、凡そ全周にわたって内側に段差210a1を有し、外側面に沿って下方に延びた係合片210a2が設けられている。下側部材220の上縁220aには、凡そ全周にわたって外側に段差220a1を有し、内側面に沿って上方に延びた係合片220a2が設けられている。この実施形態では、
図7に示すように、外側面に沿って下方に延びた上側部材210の係合片210a2(
図10参照)と、内側面に沿って上方に延びた下側部材220の係合片220a2(
図12参照)とが内外に嵌り合っている。
【0039】
この実施形態では、上側部材210と下側部材220のうち、一方(この実施形態では、上側部材210)にピン210bが設けられ、他方(この実施形態では、下側部材220)にピン210bが嵌るピン穴220bが設けられている。そして、上側部材210と下側部材220とが組み合わされる際に、ピン210bがピン穴220bに装着されている。また、上側部材210と下側部材220に設けられたねじ穴210c、220cは、上側部材210と下側部材220とが組み合わされる際に穴が合い、ビスで止められる。これにより、便器本体100は一体化される。なお、この実施形態では、上側部材210にピン210bが設けられ、かつ、下側部材220にピン穴220bが設けられている。便器本体100は、これに限らず、下側部材220にピンが設けられ、かつ、上側部材210にピン穴が設けられていてもよい。
【0040】
また、この実施形態では、ピン210bとピン穴220bは、それぞれ便器本体100の内側に設けられており、便器本体100の外観上現われていない。このため、かかるピン210bとピン穴220bは、ポータブルトイレ10の外観において美感を損なわない。
【0041】
《水抜き穴》
また、便器本体100の側面には、水抜き穴が形成されている。この実施形態では、
図11に示すように、下側部材220の後部において、上縁220aに水抜き穴となる切欠き220dが形成されている。当該切欠き220dは、上側部材210と下側部材220とが組み合わせた状態で水抜き穴になる。例えば、ポータブルトイレ10を水洗いした際に、便器本体100内に水が入る。この際、下側部材220の内部に設けられたリブ121a〜124aに水が残留する。このような場合に、ポータブルトイレ10の後部を下に向けて放置すると、リブ121a〜124aを伝って、ポータブルトイレ10の後部の水抜き穴から便器本体100の外に水が排出される。このような水抜き穴は、便器本体100の側面に形成されているとよい。なお、この実施形態では、水抜き穴は、便器本体100の後側の側面に形成されているが、水抜き穴は、便器本体100の左右の側面に設けられていてもよいし、便器本体100の前面に設けられていてもよい。
【0042】
次に、便器本体100に設けられた肘掛取付部211、212と、背もたれ取付部213、214と、脱臭装置取付部215を順に説明する。ここでは、肘掛取付部211、212に取り付けられる肘掛300、400を説明し、その後、肘掛取付部211、212を説明する。
【0043】
《肘掛300、400》
ここで、
図13は、左側の肘掛300を示す斜視図である。肘掛300、400は、凡そ同様の構造を有している。
図13中のカッコ内の符号は、右側の肘掛400の符号を示している。ここでは、左側の肘掛300には300番台の符号を付し、右側の肘掛400の各部位には、左側の肘掛300の各部位に対応させて400番台の符号を付している。
【0044】
肘掛300(400)は、
図13に示すように、肘掛ベース301(401)と、肘掛本体302(402)と、高さ調節機構303(403)とを備えている。
【0045】
《肘掛ベース301(401)》
肘掛ベース301(401)は、基部311(411)と、2本の中空の支柱312、313(412、413)と、中空軸314(414)とを備えている。基部311(411)は、便器本体100の上側部材210に前後方向に沿って配置される長手のプレートである。2本の支柱312、313(412、413)は、基部311(411)の前後両端部に配置されている。基部311(411)は、2本の支柱312、313(412、413)の中間部の下端よりの位置に架け渡されている。
【0046】
基部311(411)には、係合突起321(421)と、差込穴322(422)とがある。係合突起321(421)は、基部311(411)の下面から、基部311(411)の長手方向に沿って下方に突出した突起である。差込穴322(422)は、基部311(411)の中間部前よりに形成されており、肘掛300、400を上側部材210に固定する固定ピン350(450)(
図1参照)を挿し込む貫通した穴である。また、後側の支柱313(413)の外周面には、上下に連続して後方に突出した係合片323(423)が設けられている。肘掛ベース301(401)の中空軸314(414)は、基部311(411)よりも高い位置において、前後一対の支柱312、313(412、413)に架設されている。
図1に示す例では、右側の肘掛ベース401の前側の支柱412に、トイレットペーパーホルダ60が取り付けられている。
【0047】
《肘掛本体302(402)》
肘掛本体302(402)は、肘掛部341(441)と、可動軸342、343(442、443)とを備えている。肘掛部341(441)は、ポータブルトイレ10の使用者が肘を掛ける部位である。この実施形態では、肘掛部341(441)は、長手の形状を有しており、ポータブルトイレ10の左右において前後方向に延びた状態で設けられる。可動軸342、343(442、443)は、肘掛部341(441)の下部の前後に離れた位置において下方に延びている。肘掛本体302(402)の前後の2本の中空の可動軸342、343(442、443)が、肘掛ベース301(401)の2本の中空の支柱312、313(412、413)に挿入されている。
【0048】
《高さ調節機構303(403)》
高さ調節機構303(403)は、肘掛部341(441)の高さを調整する機構である。高さ調節機構303(403)は、肘掛ベース301(401)の中空軸314(414)内に内装されている。
図14は、肘掛ベース301(401)の中空軸314(414)を横断した横断平面図である。
【0049】
図14に示すように、この実施形態では、肘掛本体302(402)の可動軸342、343(442、443)には、穴361、362(461、462)が形成されている。当該穴361、362(461、462)は、図示は省略するが、長さ方向に沿って、複数形成されている。また、肘掛ベース301の支柱312、313(412、413)にも、中空軸314(414)に連通するように貫通した穴363、364(463、464)が形成されている。
【0050】
高さ調節機構303(403)は、肘掛ベース301の中空軸314(414)の内部に突起381、382(481、482)を有している。突起381、382(481、482)は、可動軸342、343(442、443)に向かって突出するように、中空軸314(414)に装着されている。中空軸314(414)には、バネ383、384(483、484)が内装されている。バネ383、384(483、484)は、中空軸314(414)から支柱312、313(412、413)の内部に突起381、382(481、482)が突出するように突起381、382(481、482)を付勢するかかる突起381、382(481、482)は、中空軸314(414)に沿ってスライド可能に取り付けられた摘み385、386(485、486)と一体的な部材である。摘み385、386(485、486)を操作することによって、支柱312、313(412、413)の内部に突出した突起381、382(481、482)は、支柱312、313(412、413)から引き抜かれる。
【0051】
当該突起381、382(481、482)は、支柱312、313(412、413)の内部に突出した状態では、肘掛本体302(402)の可動軸342、343(442、443)の穴361、362(461、462)に嵌る。この際、可動軸342、343(442、443)の長さ方向に沿って形成された複数の穴361、362(461、462)のうち、何れかの穴に当該突起381、382(481、482)を嵌めるとよい。突起381、382(481、482)を嵌める穴361、362(461、462)を変えることによって、肘掛部341(441)の高さが調整される。つまり、かかる高さ調節機構303(403)によって、肘掛ベース301(401)の2本の中空の支柱312、313(412、413)に対し、肘掛本体302(402)の可動軸342、343(442、443)が挿入された長さが変化する。これにより、便器本体100に対する肘掛部341(441)の高さが調整される。
【0052】
《肘掛取付部211、212》
上側部材210には、かかる肘掛300、400が取り付けられる肘掛取付部211、212が設けられている。肘掛取付部211、212は、上側部材210の上面部102の左右において、それぞれ肘掛300、400を取り付ける位置に設けられている。肘掛取付部211、212は、それぞれ左右の肘掛300、400の下部に対応した形状を有している。
【0053】
肘掛取付部211、212は、
図2、
図5および
図13に示すように、それぞれ肘掛300、400の基部311(411)が嵌る前後に延びた長手の窪み221、222を有している。当該窪み221、222には、縦穴223、224、225、226と、係合溝227、228と、鍵穴231、232が形成されている。上側部材210の裏面には、特に肘掛取付部211、212の裏面にリブが多く配置されている。かかるリブによって肘掛300、400のぐらつきが小さく抑えられるとともに所要の耐荷重を確保することができる。
【0054】
ここで、左側の窪み221には、左側の肘掛300の基部311(
図13参照)が嵌る。また、左側の窪み221に形成された縦穴223、225には、基部311から下方に突出した支柱312、313(
図13参照)の下端部312a、313aがそれぞれ嵌る。左側の窪み221に形成された係合溝227には、左側の肘掛300の基部311の下面から下方に突出した係合突起321(
図13参照)が嵌る。さらに、左側の窪み221に形成された鍵穴231は、左側の肘掛300の基部311に形成された差込穴322に対応する位置に形成されている。当該左側の肘掛300は、支柱312、313(
図13参照)の下端部312a、313aを、便器本体100の肘掛取付部211の縦穴223、225に挿入し、基部311を窪み221に嵌める。そして、差込穴322および鍵穴231に固定ピン350(
図1参照)を装着する。これによって、左側の肘掛300を便器本体100に固定することができる。
【0055】
また、右側の窪み222には、右側の肘掛400の基部411が嵌る。また、右側の窪み222に形成された縦穴224、226には、基部411から下方に突出した支柱412、413(
図13参照)の下端部412a、413aがそれぞれ嵌る。右側の窪み222に形成された係合溝228には、右側の肘掛400の基部411の下面から下方に突出した係合突起421(
図13参照)が嵌る。さらに、右側の窪み222に形成された鍵穴232は、右側の肘掛400の基部411に形成された差込穴422に対応する位置に形成されている。そして、当該右側の窪み222に右側の肘掛400の基部411を嵌めて、差込穴422および鍵穴232に固定ピン450(
図1参照)を装着することによって、右側の肘掛400を便器本体100に固定することができる。
【0056】
ここで、高さ調節機構303(403)の摘み385、386(485、486)は、
図1に示すように、肘掛ベース301(401)の中空軸314(414)の左右両側に設けられている。このため、肘掛300、400の高さ調節機構303(403)は、ポータブルトイレ10の内側および外側の両側からも操作できる。
【0057】
図15は、ポータブルトイレ10の蓋20を閉じた状態での平面図である。この実施形態では、左右の肘掛300、400は、平面視において、肘掛ベース301の支柱312、313(412、413)の中心軸を結ぶ線C1に対して、肘掛部341(441)が内側に張り出している長さL1と、外側に張り出している長さL2が異なる。例えば、
図15に示すように、この実施形態では、肘掛部341(441)が内側に張り出している長さL1は、外側に張り出している長さL2よりも長い。また、便器本体100の肘掛取付部211、212は、左右で同じ構造を有している。つまり、左の肘掛300を右側の肘掛取付部212に取り付けることができ、右の肘掛400を左側の肘掛取付部211に取り付けることができる。左右の肘掛300、400を入れ替えることで、ポータブルトイレ10における肘掛部341(441)の間隔L3を変えることができる。これにより、使用者の体格に応じて、肘掛部341(441)の間隔L3を調整できる。
【0058】
なお、この実施形態では、左側の肘掛ベース301に取り付けられた肘掛本体302を、右側の肘掛ベース401に取り付け、右側の肘掛ベース401に取り付けられた肘掛本体402を、左側の肘掛ベース301に取り付けることができる。左右の肘掛ベース301、401に対して、左右の肘掛本体302、402を入れ替えることによって、左右の肘掛部341、441の間隔L3を調整してもよい。
【0059】
また、左右の肘掛300、400は、使用者や介助者のニーズに応じて適宜に取り外すことができる。また、ポータブルトイレ10は、便器本体100から肘掛300、400を取り外した際に、便器本体100の肘掛取付部211、212に被せることができるカバーが付属されているとよい。かかるカバーは、肘掛取付部211、212に取り付けられた際に、便器本体100の上面を平坦にする形状であるとよい。
【0060】
また、肘掛ベース301(401)の後側の支柱313(413)の外周面に、上下に連続して後方に突出した係合片323(423)は、背もたれ250に形成された係合溝256、257(
図1〜
図4参照)にそれぞれ係合している。
【0061】
《背もたれ250》
次に、ポータブルトイレ10の背もたれ250を説明する。背もたれ取付部213、214は、
図5に示すように、便器本体100の上面において、後部の左右両側にそれぞれ設けられている。背もたれ250は、
図1に示すように、便器本体100の上面において、蓋20を後方に通すことができる開口251を有している。この背もたれ250は、左右の柱部252、253と、背もたれ部254と、クッション255とを備えている。柱部252、253は、ポータブルトイレ10の背部において、便器本体100の左右両側に設けられた背もたれ取付部213、214に取り付けられる。柱部252、253は、便器本体100の背もたれ取付部213、214から上方に立ち上がっている。背もたれ部254は、柱部252、253の上端に架け渡されている。クッション255は、背もたれ部254の前面に取り付けられている。
【0062】
《脚500、600》
次に、脚500、600は、
図1に示すように、それぞれ2本の脚部501、502(601、602)と、フロントベース部503(603)と、リヤベース部504(604)と、連結部505(605)とを備えている。なお、ここで、左側の脚500の各部材および部位には500番台の符号を付している。右側の脚600の各部材および部位には、左側の脚500に対応させて、600番台の符号を付している。また、右側の脚600の、脚部602と、リヤベース部604と、連結部605とは、
図1において、便器本体100に隠れており、図示されていない。右側の脚600の脚部602と、リヤベース部604と、連結部605とは、それぞれ左側の脚500の脚部502と、リヤベース部504と、連結部505と凡そ左右が対象な構造を有している。
【0063】
2本の脚部501、502(601、602)は、便器本体100の左右において、それぞれ前後に配置されている。この実施形態では、脚部501、502(601、602)の上端は、便器本体100の底部104には設けられたボス121〜124(
図11参照)に装着されている。脚部501、502(601、602)は、長さを調節する構造を備えている。脚部501、502(601、602)の長さを調節することによって、ポータブルトイレ10の便座30の高さを調整することができる。ここでは、ポータブルトイレ10の脚部501、502(601、602)の長さを調節する構造については、後述する。
【0064】
フロントベース部503(603)は、前側の脚部501(601)の下端から前方に延びた部位である。リヤベース部504(604)は、後ろ側の脚部502(602)の下端から後方に延びた部位である。この実施形態では、リヤベース部504(604)の後端には、キャスター506(606)が取り付けられている。
図1では、右側のリヤベース部604(
図15参照)および右側のリヤベース部604の後端に取り付けられたキャスター606(
図15参照)は、便器本体100に隠れており、図示されていない。
【0065】
この実施形態では、便器本体100の下に2本の脚部501、502(601、602)があり、フロントベース部503(603)が、前側の脚部501(601)の下端から前方に延びている。また、リヤベース部504(604)は、後ろ側の脚部502(602)の下端から後方に延びている。つまり、このポータブルトイレ10は、単純な4本足の椅子のような構造ではない。かかるフロントベース部503(603)によって、ポータブルトイレ10は前方へ転倒するのが確実に防止されている。また、かかるリヤベース部504(604)によって、ポータブルトイレ10は後方へ転倒するのが確実に防止されている。
【0066】
また、このポータブルトイレ10は樹脂製である。このような樹脂製のポータブルトイレ10は、一般的には、木製の簡易トイレなどと比べると、全体が軽量であるとともに剛性が低く、全体として撓みやすい。例えば、ポータブルトイレ10の使用者が、肘掛300、400の肘掛部341、441の前側に体重を掛けて立ち上がろうとする場合に撓みやすい。このポータブルトイレ10は、ポータブルトイレ10の使用者が、肘掛300、400の肘掛部341、441の前側に体重を掛けて立ち上がろうとする場合に、前方へ傾くように力が掛かる。しかし、脚500が便器本体100の前方へ延びた脚500、600のフロントベース部503、603によって、ポータブルトイレ10が前方への倒れるのが防止される。
【0067】
また、この実施形態では、ポータブルトイレ10の下部後方にはリヤベース部504(604)が延びている。例えば、介助者が背もたれに体重を掛けて、介助作業を行うような場合でも、かかるリヤベース部504(604)によって、ポータブルトイレ10が後方へ倒れるのを防止できる。
【0068】
またポータブルトイレ10には、脚500、600の脚部501、502(601、602)の基端にも大きな力が作用する。この実施形態では、便器本体100の底部104に、脚部501、502(601、602)の上端が装着されるボス121〜124(
図11参照)が設けられている。さらに、当該ボス121〜124の周囲にリブ121a〜124aが放射状に設けられおり、所要の強度が確保されている。かかるリブ121a〜124aによって、脚部501、502(601、602)の上端が装着されたボス121〜124に所要の剛性が確保されている。このため、脚部501、502(601、602)が装着されたボス121〜124の周辺部分の撓みが小さく抑えられ、ポータブルトイレ10の撓みが小さく抑えられる。
【0069】
また、脚500、600の脚部501、502(601、602)は、便器本体100の底部104に設けられたボス121〜124(
図11参照)に装着されている。ここでは図示は省略するが、ボス121〜124は、脚500、600の脚部501、502(601、602)を保持する構造を備えている。また、脚500、600の脚部501、502(601、602)は、ボス121〜124に挿入された長さを調整できる幅がある程度大きく確保されている。これによって、便器本体100の高さを調整できる幅をより大きく確保できる。
【0070】
また、連結部505(605)は、2本の脚部501、502(601、602)の下端を繋ぐように前後方向に延び、フロントベース部503、603とリヤベース部504(604)とに連続している。かかる連結部505(605)によって、フロントベース部503、603とリヤベース部504(604)とが一体的になる。このため、例えば、ポータブルトイレ10の使用者が、肘掛300、400の前側に体重を掛けて立ち上がろうとする場合に、フロントベース部503、603の撓みやポータブルトイレ10の前方への撓みや、リヤベース部504(604)の後端が浮くのを小さく抑えることができる。
【0071】
以上のように、ここで提案されるポータブルトイレ10は、
図1から
図4に示すように、バケツ40と、便座30と、便器本体100と、脚500、600とを備えている。便器本体100は、バケツ40が収められる窪んだ収容部101と、収容部101の上部周辺に設けられ、便座30が配置される上面部102と、収容部101の少なくとも外側面111を囲う外郭部103と、外郭部103の下端から連続し、便器本体100の底を形成する底部104とを有している。
【0072】
そして、
図6に示すように、便器本体100の少なくとも前面において、上面部102の周縁を形成する面112と、外郭部103を形成する面113と、底部104を形成する面114とが連続している。また、脚500、600は、便器本体100の底部104の左右においてそれぞれ独立して取り付けられている。上述したように、このポータブルトイレ10では、使用者および介助者の足が便器本体100の前面下部に引っ掛かりにくい。
【0073】
また、便器本体100の少なくとも前面において、外郭部103は上面部102の周縁から底部104へ向かうにつれて後方に傾斜している。便器本体100の前面においてポータブルトイレ10に座った使用者が足を引き寄せる所要の空間S1が確保されている。
【0074】
また、便器本体100は、収容部101と上面部102とを含む上側部材210と、外郭部103の少なくとも一部と、底部104とを含む下側部材220とを備えている。ここでは、上側部材210と下側部材220とが組み合わされている。このように、かかる構成では、便器本体100は、例えば、上下半割型であり、上側部材210と下側部材220の成形が容易になる。
【0075】
また、この場合、
図7に示すように、上側部材210の下縁210aと下側部材220の上縁220aとは、互いに内外に嵌り合っているとよい。かかる構成によって、上側部材210の下縁210aと下側部材220の上縁220aの剛性が確保され、便器本体100全体として高い剛性が得られる。また、この実施形態では、上側部材210と下側部材220とは、それぞれ一体的な成形品で具現化されている。また、便器本体100の上面部には、
図3に示すように、収容部101の上部開口を囲うようにトレイ50が配置されている。さらに当該トレイ50の上に便座30が配置されている。かかるトレイ50によって、バケツ40から汚水がこぼれた場合でも、汚水が床に流れ出にくい。
【0076】
また、この実施形態では、便器本体100の底部104は、
図7および
図11に示すように、収容部101の底に対向する部位に開口104aを有している。かかる開口により、便器本体100の軽量化が図られている。また、便器本体100の収容部101の外側面111は、全体として外郭部103で囲われている。このため、外観上、バケツ40を収容する部分が見えず、汚物を入れるバケツの印象が薄い。このため、このポータブルトイレ10は、清潔感が高いデザインになっている。
【0077】
また、収容部101の底101aには、当該底101aの周縁に沿って下方に突出した底面リブ101a1(
図9参照)を有している。かかる底面リブ101a1によって、収容部101の底101aの剛性が確保されている。さらに、便器本体100の底部104の開口104aの縁には、収容部101の底面リブ101a1の内側において立ち上がった突起104a1が設けられている。このため、便器本体100を丸洗いした場合に、便器本体100内に水が残留しても、例えば、上側部材210の内面を伝って流れ落ちる水は、収容部101の底面リブ101a1を伝い、下側部材220の底部104で受けられる。下側部材220の底部104に流れた水は、開口104aの縁に設けられた突起104a1よって受けられる。したがって、このポータブルトイレ10は、便器本体100内に残留した水は、容易には便器本体100の底に垂れない。
【0078】
≪ポータブルトイレの脚部の長さを調整する構造(軸保持構造800)≫
以下、ポータブルトイレの高さを調整する構造に採用された軸保持構造を説明する。ここで提案される軸保持構造は、ポータブルトイレの高さを調整する構造のみならず、種々の用途に採用されうる。
【0079】
上述したように、ポータブルトイレ10は、
図1に示すように、便器本体100と、便器本体100の下部の左右に脚500、600が設けられている。かかるポータブルトイレ10において、左右の脚500、600は、それぞれ前後に軸状の脚部501、502、601、602を有している。また、便器本体100の下部には、ボス121〜124(
図11参照)を有している。当該ボス121〜124には、脚部501、502、601、602の一端を保持する構造として、それぞれ軸保持構造800が設けられている。
【0080】
ここで、脚部501、502、601、602は、便器本体100の前後左右に取り付けられている。各脚部501、502、601、602は、多少の違いはあるものの、それぞれ同様の基本構成を有する軸保持構造800を備えている。ここで右側の脚部601、602を保持する軸保持構造800は、左側の脚部501、502を保持する軸保持構造800と同様の基本構成を有している。右側の脚部601、602の軸保持構造800は、左側の脚部501、502の軸保持構造800の説明を基に、基本構造が理解される。
【0081】
図16および
図17は、ポータブルトイレ10の左側の脚部501、502に設けられた軸保持構造800を示す側面図である。ここでは、脚部501、502をポータブルトイレ10の外側(左側)から見た側面図である。
【0082】
ここで、
図16では、前側の脚部501について、筒材802が取り付けられた当該脚部501が、筒状部材823に装着された便器本体100の左前側のボス121に装着された状態が図示されている。また、後側の脚部502について、単に、当該脚部502が、左後側のボス123に挿通された状態が示されている。つまり、ここでは、後側の脚部502には、筒材802が取り付けられておらず、ボス123には筒状部材823が取り付けられていない。
【0083】
また、
図17では、前側の脚部501は、
図16に示された左前側の脚部501に対して、さらに筒状部材823に連結部材804が取り付けられた状態が示されている。また、後側の脚部502について、筒材802が取り付けられた脚部502が、筒状部材823に装着された便器本体100の左後側のボス123に装着された状態が図示されている。ここで、ボス123に装着された筒状部材823は断面で示されている。
【0084】
また、
図18は、左側の脚部501、502をポータブルトイレ10の内側(右側)の方向から見た側面図である。ここで、
図18では、前側の脚部501に、筒材802と、便器本体100の左前側のボス121に装着される筒状部材823とが取り付けられた状態が示されている。また、後側の脚部502に筒材802が取り付けられた状態が示されている。また、
図16から
図18では、その余の部材は、図示を省略している。
【0085】
ここでは、
図16から
図18を基に、左側のボス121、123に取り付けられる脚部501、502を保持する軸保持構造800を説明する。右側の脚部601、602の軸保持構造800については、左側の脚部501、502の軸保持構造800と重複する説明は適宜に省略する。
【0086】
左側の前後の脚部501、502に設けられる各軸保持構造800は凡そ同じ構造である。かかる脚部501、502に設けられる軸保持構造800において、脚部501、502が保持される軸である。また、便器本体100(この実施形態では、具体的には、便器本体100の下側部材220)が、脚部501、502の一端を保持する基材である。
【0087】
軸保持構造800は、
図16および
図17に示すように、保持される軸としての脚部501、502と、当該脚部501、502を保持する基材としての便器本体100と、筒材802と、連結部材804とを備えている。この実施形態では、脚部501、502は、基材としての便器本体100の底部104に設けられたボス121、123(
図11参照)に装着される。この実施形態では、ボス121、123には、筒状部材823が取り付けられている。
【0088】
≪軸保持構造800の基材としての便器本体100≫
基材としての便器本体100は、保持部821と、係止部822とを有している。
【0089】
<保持部821>
保持部821は、脚部501、502の一端を保持する略筒状の部位である。この実施形態では、保持部821として、脚部501、502の一端を保持する便器本体100のボス121、123には、それぞれ筒状部材823が装着されている。
【0090】
<筒状部材823>
筒状部材823は、脚部501、502に装着された筒材802が嵌め込まれる部材である。ここで、筒状部材823の外周面には、段差823a1、823a2と、爪部823b1、823b2とが設けられている。
【0091】
<段差823a1、823a2>
ここで、段差823a1、823a2は、外径方向に突出し、前記ボス部の一端側に当たる部位である。この実施形態では、段差823a1、823a2は、筒状部材823の外周面において外径方向に突出している。段差823a1、823a2は、便器本体100のボス121、123の一端側(ここでは、下端側)に当たるように設けられている。この実施形態では、筒状部材823の下部において上下2箇所に、段差823a1、823a2が設けられている。下側の段差823a2は、筒状部材823の外方にフランジ状に突出している。なお、この実施形態では、段差823a1、823a2は周方向に連続しているが、必ずしも周方向に連続していなくてもよい。
【0092】
<爪部823b1、823b2>
爪部823b1、823b2は、ボス121、123の他端側(ここでは、上端側)に引っ掛かる部位である。この実施形態では、爪部823b1、823b2は、筒状部材823の軸方向の他端(上端)に、外径方向に突出するように設けられている。具体的には、爪部823b1、823b2は、筒状部材823の上端を切り欠いて設けられた弾性片の上端部において外方に突出している。ここで、筒状部材823には、2つの爪部823b1、823b2が設けられている。爪部823b1は、
図16に示すように、筒状部材823の左側(ポータブルトイレ10の外側)に設けられている。爪部823b2は、
図18に示すように、筒状部材823の右側(ポータブルトイレ10の内側)に設けられている。また、爪部823b1、823b2が設けられた部位では、筒状部材823の外周面は軸方向に沿って外側に少し盛り上がっており、筒状部材823の内周面は軸方向に沿って窪んでいる(
図23、
図24参照)。
【0093】
<突起824>
また、
図16に示すように、筒状部材823の外側の爪部823b1の下には、さらに外方に盛り上がった略矩形の突起824が設けられている。突起824は、筒状部材823の2つの段差823a1、823a2の間に設けられている。
図19は、筒状部材823の内周面(ポータブルトイレ10の外側に向けられる側の内周面)を示している。筒状部材823の突起824の裏側は、
図19に示すように、窪んでいる。当該窪み824aは、下方に連続している。また、当該窪み824aが設けられた部位の下には、筒状部材823の下端部を切り欠いた切り欠き825が形成されている。また、上側の段差823a1の裏面には、段差826が形成されている。この実施形態では、当該段差826の下部には、筒材802が装着される。段差826の下部では、後述する筒材802の上部の外周面802a(
図23、
図24参照)に合わせて、筒状部材823の内周面827の内径は、下方ほど徐々に大きくなっている。つまり、ここでは、筒材802の外周面802aは、保持部821の奥に嵌め込まれる部位(上端)から、筒材802の軸方向に沿って外径が大きくなっている。
【0094】
<窓828>
また、
図18に示すように、筒状部材823の内側の爪部823b2の下には、開口した窓828が形成されている。当該窓828は、筒状部材823の2つの段差823a1、823a2の間において、下側の段差823a2の上に横長の略長方形に形成されている。窓828の下縁には、上方に突出した突起829が設けられている。
【0095】
この実施形態では、ボス121、123の内周面には、
図16および
図17に示すように、筒状部材823が装着されるように2つの段差823a1、823a2に応じて、それぞれ2つの段差121b1、121b2、123b1、123b2が形成されている。また、筒状部材823の軸方向(高さ方向)における、各段差823a1、823a2と爪部823b1、823b2との間の距離は、ボス121、123の内周面に形成された2つの段差121b1、121b2、123b1、123b2と、ボス121、123の上縁までの距離と凡そ同じ長さである。
【0096】
また、図示は省略するが、ボス121、123の内周面には、筒状部材823の外側に設けられた突起824(
図16参照)が嵌る溝が形成されている。筒状部材823は、
図16に示すように、ボス121、123に下から挿入される。筒状部材823の爪部823b1、823b2は、筒状部材823の内側に弾性的に若干変位しながら、ボス121、123に挿入される。さらに、筒状部材823の突起824は、ボス121、123の内周面に形成された溝(図示省略)に沿って挿入される。これにより、筒状部材823は、ボス121、123に対して、周方向に位置決めされて装着される。
【0097】
筒状部材823がボス121、123に装着された状態では、
図17に示すように、ボス121、123の内周面に形成された2つの段差121b1、121b2、123b1、123b2に、筒状部材823の2つの段差823a1、823a2がそれぞれ当たる。そして、筒状部材823の上端に設けられた爪部823b1、823b2が、ボス121、123の上端縁に引っ掛けられる。このようにボス121、123の予め定められた位置に、それぞれ筒状部材823が取り付けられる。この場合、筒状部材823は、爪部823b1、823b2が外れたり、折れたりしない限りにおいて、ボス121、123から外れない。
【0098】
<係止部822>
係止部822は、
図16に示すように、連結部材804が係止される部位である。この実施形態では、ボス121、123に装着された筒状部材823の下端部は、便器本体100の底部104から下方に延びている。係止部822は、ボス121、123の下端(便器本体100の底部104)から下方に延びた筒状部材823の下端部の外周面に設けられている。ここでは、当該筒状部材823の外周面に係止部822としてねじ溝が形成されている。また、この実施形態では、上述したように、ボス121、123の下端(便器本体100の底部104)から下方に延びた筒状部材823の下端部には切り欠き825が形成されている。
【0099】
ここでは、便器本体100の左側のボス121、123および当該ボス121、123に取り付けられる筒状部材823を説明したが、便器本体100の右側のボス122、124についても、同様に、筒状部材823が取り付けられる。
【0100】
≪軸保持構造800の軸としての脚部501、502≫
次に、軸保持構造800の軸としての脚部501、502を説明する。ここで、脚部501、502の外周面には、
図16および
図18に示すように、長さ方向に沿って複数の第1係合部841、842がそれぞれ設けられている。ここで、第1係合部841、842は、脚部501、502の外周面から突出した突起である。また、この実施形態では、第1係合部841、842は、脚部501、502の外周面において、所要の高さで突出している。また、脚部501、502は、予め定められた長さで周方向に沿って延びている。
【0101】
また、この実施形態では、
図16および
図18に示すように、第1係合部841、842は、脚部501、502に対して、同じ高さにおいて周方向に2つ設けられている。詳しくは、
図16および
図17に示すように、第1係合部841は、各脚部501、502の後側において、脚部501、502の外側にそれぞれ設けられている。また、
図18に示すように、第1係合部842は、各脚部501、502の後側において、脚部501、502の内側にそれぞれ設けられている。なお、第1係合部841、842は、この実施形態では、同じ高さにおいて周方向に2つ設けられているが、周方向に複数設けられていてもよい。また、この実施形態では、脚部501、502の外周面に設けられた複数の第1係合部841と第1係合部842は、脚部501、502の長さ方向に沿って等間隔で設けられている。
【0102】
<右側の脚600の脚部601、602>
図20は、右側の脚600をポータブルトイレ10の外側(右側)から見た図である。
図21は、右側の脚600をポータブルトイレ10の内側(左側)から見た図である。
図20および
図21では、ともに前側の脚部601に、筒材802が装着されている。ここで、右側の脚600は、左側の脚500に対して凡そ左右対称である。
図20および
図21に示すように、右側の脚600の脚部601、602には、左側の脚部501、502と同様に、長さ方向に沿って複数の第1係合部843、844がそれぞれ設けられている。ここで、
図20および
図21に示すように、第1係合部843、844は、各脚部601、602の後側において、脚部601、602の内側と外側にそれぞれ設けられている。また、この実施形態では、筒材802および筒状部材823は、左右の脚部501、502、601、602で部品を共通化させている。以下、筒材802を説明する。
【0103】
≪筒材802≫
筒材802は、軸としての脚部501、502(601、602)に装着される部材である。筒材802は、
図17に示すように、保持部821(この実施形態では、筒状部材823)に嵌め込まれうる外形形状を有している。
図22は、筒材802の斜視図である。
図23および
図24は、それぞれ筒状部材823に筒材802を嵌め込み連結部材804を取り付けた状態を示す縦断面図である。
図23では、ポータブルトイレ10の外側に向けられる側における、筒状部材823および筒材802の内周面が示されている。その外観は、
図16の前側の脚部501に装着された筒状部材823と筒材802に表れている。
図24では、ポータブルトイレ10の内側に向けられる側における、筒状部材823および筒材802の内周面が示されている。その外観は、
図18の前側の脚部501に装着された筒状部材823と筒材802に表れている。
【0104】
ここで、筒材802は、弾性的に拡縮可能である。この実施形態では、筒材802は、
図20に示すように、軸方向にスリット850が形成されている。このように筒材802の側面は、周方向において開口している。そして、当該開口(ここでは、スリット850)を開くことで筒材802の内径が弾性的に拡がる。
【0105】
また、筒材802の側面に形成されたスリット850の少なくとも一方の端部の縁には、外径方向に突出した突起851が設けられている。筒材802は、例えば、かかる突起851に指を掛けて押し広げることができる。このため、筒材802は、例えば、
図20に示すように、脚部601に装着された状態でも、工具を使わずに押し広げることができる。
【0106】
<第1被係合部861〜864>
筒材802には、脚部501、502、601、602の第1係合部841〜844に係合する第1被係合部861〜864が形成されている。この実施形態では、第1係合部841〜844は、脚部501、502、601、602の外周面から突出した突起である。筒材802に形成された第1被係合部861〜864は、第1係合部841〜844が嵌る孔である。なお、ここでは、第1被係合部861〜864は、筒材802を貫通した孔であるが、筒材802を貫通していなくてもよく第1係合部841〜844が嵌る凹部としてもよい。この場合、脚部501、502、601、602および筒材802の型抜きが容易な形状になる。第1被係合部861〜864が、筒材802を貫通した孔である場合には、第1被係合部861〜864に第1係合部841〜844が嵌っているか否かが、外観から目視にて確認できる。
【0107】
また、この実施形態では、
図22から
図24に示すように、筒材802には、同じ高さにおいて周方向に複数(この実施形態では、4つ)の第1被係合部861〜864が設けられている。この実施形態では、4つの第1被係合部861〜864が、周方向に均等に(ここでは、筒材802の中心軸に対して凡そ90度間隔で)配置されている。
【0108】
また、第1被係合部861〜864は、筒材802の軸方向(高さ方向)に複数(この実施形態では3つ)設けられている。この実施形態では、脚部501、502、601、602に設けられた第1係合部841〜844は、それぞれ軸方向に複数、等間隔で設けられている。筒材802の第1被係合部861〜864は、高さ方向において、脚部501、502、601、602の第1係合部841〜844と同じ間隔で設けられている。
【0109】
筒材802は、押し広げた状態で、各脚部501、502、601、602に装着される。この際、それぞれスリット850がポータブルトイレ10の外側に向くように、脚部501、502、601、602に取り付けられる。また、左側の脚500では、
図17および
図18に示すように、脚部501、502の後側の側面において、内側と外側に第1係合部841、842が設けられている。第1係合部841、842は、それぞれ軸方向に沿って複数設けられている。
【0110】
筒材802は、かかる左側の脚部501、502に対して、スリット850が外側に向くように取り付けられる。この際、脚部501、502の第1係合部841、842に対して、筒材802の第1被係合部861、862が嵌る。ここでは、筒材802の第1被係合部861、862は、筒材802の軸方向(高さ方向)に複数(この実施形態では3つ)設けられている。筒材802の第1被係合部861、862は、脚部501、502の軸方向に沿って設けられた複数の第1係合部841、842のうち、それぞれ3つの第1係合部841、842に嵌る。
【0111】
筒材802は、
図20および
図21に示すように、右側の脚部601、602に対して、スリット850が外側に向くように取り付けられる。この際、脚部601、602の第1係合部843、844に対して、筒材802の第1被係合部863、864が嵌る。ここでは、筒材802の第1被係合部863、864は、筒材802の軸方向(高さ方向)に複数(この実施形態では3つ)設けられている。筒材802の第1被係合部863、864は、脚部601、602の軸方向に沿って設けられた複数の第1係合部843、844のうち、それぞれ3つの第1係合部843、844に嵌る。
【0112】
このように、左側の脚部501、502の第1係合部841、842に対しては、筒材802の第1被係合部861、862が嵌る。右側の脚部601、602の第1係合部843、844に対しては、筒材802の第1被係合部863、864が嵌る。また、筒材802には、左側の脚部501、502の第1係合部841、842と、右側の脚部601、602の第1係合部843、844とにそれぞれ嵌るように、周方向に4つの第1被係合部861〜864が設けられている。さらに、4つの第1被係合部861〜864は、筒材802の軸方向(高さ方向)において、それぞれ複数(この実施形態では3つ)設けられている。
【0113】
そして、左側の脚部501、502では、筒材802の周方向に設けられた4列の第1被係合部861〜864のうち2列の第1被係合部861、862が、左側の脚部501、502の2列の第1係合部841、842に係合する。さらに2列の第1被係合部861、862は、脚部501、502の長さ方向に沿って3つの第1係合部841、842に係合する。他方、右側の脚部601、602では、筒材802の周方向に設けられた4列の第1被係合部861〜864のうち2列の第1被係合部863、864が、右側の脚部601、602の2列の第1係合部843、844に係合する。2列の第1被係合部863、864は、脚部601、602の長さ方向に沿って3つの第1係合部843、844に係合する。
【0114】
上述のように、脚部501、502、601、602には、長さ方向に沿って複数の第1係合部841〜844が設けられている。筒材802は、脚部501、502、601、602の長さ方向に沿って設けられた複数の第1係合部841〜844のうち、任意の位置に設けられた第1係合部841〜844に係合させることができる。脚部501、502、601、602に対して筒材802の第1被係合部861〜864を係合させる位置を変えることによって、ポータブルトイレ10の脚部501、502、601、602の長さを調整することができる。なお、ポータブルトイレ10の脚部501、502、601、602の長さを揃えるために、4つの脚部501、502、601、602に筒材802を取り付ける位置は、適切に調整される必要がある。
【0115】
この実施形態では、筒材802は、スリット850を押し広げることによって、第1被係合部861〜864を第1係合部841〜844から外す。そして、脚部501、502、601、602の適当な高さの第1係合部841〜844に、第1被係合部861〜864を取り付けるとよい。この実施形態では、筒材802の内周面にガイド853、854と、廻り止め855、856と、脱出テーパ857、858が設けられている。
【0116】
<ガイド853、854>
ガイド853、854は、脚部501、502、601、602に装着した状態で筒材802を回転させた際に、脚部501、502、601、602の第1係合部841〜844に当たる。そして、ガイド853、854は、脚部501、502、601、602の第1係合部841〜844に筒材802の第1被係合部861〜864が嵌るように、脚部501、502、601、602に対して筒材802を案内する。この実施形態では、ガイド853、854は、
図22〜
図24に示すように、筒材802の内周面において、突出するように設けられている。
【0117】
この実施形態では、
図17および
図20に示すように、筒材802のスリット850は、脚部501、502、601、602の外側に向けて配置されている。筒材802の第1被係合部861〜864を脚部501、502、601、602の第1係合部841〜844に嵌めるときは、筒材802を左(
図22中矢印Bで示す方向)に廻す(ポータブルトイレ10の外側から見て、スリット850を左に動かす)。筒材802の第1被係合部861〜864を脚部501、502、601、602の第1係合部841〜844から外すときは、スリット850を押し広げて筒材802を右(
図22中矢印Aで示す方向)に廻す(ポータブルトイレ10の外側から見て、スリット850を右に動かす)。
【0118】
ガイド853、854は、
図22〜
図24に示すように、それぞれ筒材802の右に廻される向き(
図22中矢印Aで示す方向)に対して、斜め下向きの傾斜面を有している。ガイド853、854は、筒材802の第1被係合部861〜864を脚部501、502、601、602の第1係合部841〜844に嵌める際に機能する。この際、筒材802は、脚部501、502、601、602に装着された状態で、ポータブルトイレ10の外側から見て、筒材802のスリット850を左に動かす。
【0119】
これにより、筒材802は、脚部501、502、601、602に対して、それぞれ
図22中矢印Bで示す方向に廻される。この際、左側の脚部501、502に対しては、脚部501、502の第1係合部842に、ガイド853の傾斜面が当たり、筒材802の第1被係合部862が、当該傾斜面に沿って脚部501、502の第1係合部842に導かれる。また、右側の脚部601、602に対しては、脚部601、602の第1係合部843に、ガイド854の傾斜面が当たり、筒材802の第1被係合部863が、当該傾斜面に沿って脚部601、602の第1係合部843に導かれる。
【0120】
このように、ガイド853、854によって、筒材802を脚部501、502、601、602に対して廻すことによって、筒材802の第1被係合部861〜864が、脚部501、502、601、602の第1係合部841〜844に導かれる。このため、筒材802の第1被係合部861〜864を、脚部501、502、601、602の第1係合部841〜844に嵌めるのが容易になる。
【0121】
<廻り止め855、856>
廻り止め855、856は、脚部501、502、601、602に対して、筒材802を廻し過ぎるのを防止する部位である。この実施形態では、廻り止め855、856は、筒材802の内周面において、筒材802の第1被係合部862、863の右端(
図22中矢印Aで示す方向の端部)に沿って、筒材802の高さ方向に沿って突出した突起である。
【0122】
筒材802の第1被係合部861〜864を脚部501、502、601、602の第1係合部841〜844に嵌めるときは、筒材802を左(
図22中矢印Bで示す方向)に廻す(ポータブルトイレ10の外側において、スリット850を左に動かす)。この際、筒材802が左側の脚部501、502に装着される際には、筒材802の廻り止め855に、脚部501、502の第1被係合部862が当たる。また、筒材802が右側の脚部601、602に装着される際には、筒材802の廻り止め856に、脚部601、602の第1係合部843が当たる。
【0123】
かかる廻り止め855、856によって、脚部501、502、601、602に対して、筒材802を廻し過ぎるのを防止できる。このように、周方向において、脚部501、502、601、602の第1係合部841〜844に当って、予め定められた位置で筒材802が廻るのを止める廻り止め855、856が、筒材802の内周面に設けられているとよい。
【0124】
<脱出テーパ857、858>
脱出テーパ857、858は、筒材802の第1被係合部861、862、863、864が、脚部501、502、601、602の第1係合部841〜844から抜けるのを助ける部位である。
【0125】
この実施形態では、脱出テーパ857、858は、
図23および
図24に示すように、筒材802の第1被係合部861、864に形成されている。ここでは、脱出テーパ857、858は、第1被係合部861、864の一方の端部の近傍で、筒材802の内周面が外径方向に凹んだ部位857a、858aがある。詳しくは、第1被係合部861、864には、筒材802を外す際に廻す方向(
図22中矢印Aで示す方向)とは反対側の端部よりも少し内側に、外径側に窪んだ部位857a、858aがある。そして、当該部位857a、858aから、第1被係合部861、864の端部857b、858bに向けて(筒材802を外す際に廻す方向(
図22中矢印Aで示す方向)とは反対側に向けて)、筒材802の内周面が徐々に内径側に盛り上がっている。
【0126】
この場合、第1被係合部861に設けられた脱出テーパ857は、左側の脚部501、502に装着された筒材802を外す際に機能する。また、第1被係合部864に設けられた脱出テーパ858は、右側の脚部601、602に装着された筒材802を外す際に機能する。
【0127】
ここで、左側の脚部501、502から筒材802を外す際、筒材802は、ポータブルトイレ10の外側において、スリット850を押し広げつつ、スリット850を右に動かす。つまり、筒材802は、左側の脚部501、502に対して、
図22中矢印Aで示す方向に廻される。この際、筒材802の第1被係合部861に設けられた脱出テーパ857が、左側の脚部501、502の第1係合部841の端部に当る。そして、第1係合部841の端部に脱出テーパ857が当たることによって、筒材802の第1被係合部861がスムーズに押し上げられる。これにより、脚部501、502の第1係合部841から筒材802の第1被係合部861を、容易に外すことができる。
【0128】
また、右側の脚部601、602から筒材802を外す際、筒材802は、ポータブルトイレ10の外側において、スリット850を押し広げつつ、スリット850を右に動かす。つまり、筒材802は、右側の脚部601、602に対して、
図22中矢印Aで示す方向に廻される。この際、筒材802の第1被係合部864に設けられた脱出テーパ858が、右側の脚部601、602の第1係合部844の端部に当る。そして、第1係合部844の端部に脱出テーパ858が当たることによって、筒材802の第1被係合部864がスムーズに押し上げられる。これにより、脚部601、602の第1係合部844から筒材802の第1被係合部864を、容易に外すことができる。
【0129】
上述したように、筒材802の内周面には、ガイド853、854と、廻り止め855、856と、脱出テーパ857、858とが設けられている。ガイド853、854は、筒材802の第1被係合部861〜864が、脚部501、502、601、602の第1係合部841〜844に嵌る際に、第1被係合部861〜864を第1係合部841〜844に導く。また、廻り止め855、856は、予め定められた位置で筒材802が廻るのを止める部位である。また、脱出テーパ857、858は、脚部501、502、601、602の第1係合部841〜844から筒材802の第1被係合部861〜864を外す際に、第1被係合部861、864が、第1係合部841、844に乗り上がるのを補助する。かかるガイド853、854と、廻り止め855、856と、脱出テーパ857、858は、上述した形態に限定されず、設けられる位置や形状など、種々の変更が可能である。
【0130】
<鍔部866(第2係合部)>
また、この実施形態では、筒材802の外周面には、鍔部866が設けられている。鍔部866は、筒材802の高さ方向の中間位置において外方に突出している。鍔部866は、具体的には、筒材802の高さ方向において第1被係合部861〜864が形成された部位の下側に設けられている。鍔部866は、周方向に連続している。この実施形態では、
図16および
図17に示すように、筒材802は、脚部501、502、601、602に装着された状態で、便器本体100のボス121〜124(
図11参照)に装着された筒状部材823に嵌められる。筒材802は、筒状部材823に対して下側から挿入される。そして、鍔部866が設けられた部位まで、筒材802の上部が筒状部材823に嵌め込まれる。このように、鍔部866は、筒状部材823に嵌められる筒材802の位置を規定する。また、鍔部866は、筒状部材823の下端の下において、外径方向に突出している。かかる鍔部866は、連結部材804と係合する第2係合部として機能する。
【0131】
また、この実施形態では、筒材802の外周面802aは、保持部821の奥に嵌め込まれる部位(上端)から、筒材802の軸方向に沿って外径が大きくなっている。つまり、筒状部材823に嵌め込まれる筒材802の上部の外周面802aの外径は、筒材802の上端から徐々に大きくなっている。このため、筒材802を筒状部材823に嵌め込むことによって、筒材802が締まる。筒材802は、脚部501、502、601、602に装着された状態で、筒状部材823に挿入される。筒材802が筒状部材823に嵌め込まれると、筒材802の第1被係合部861〜864が、脚部501、502、601、602の第1係合部841〜844により深く嵌り込み、この状態が維持される。
【0132】
<脱落防止片867>
また、この実施形態では、筒材802の上端には、外方へ突出した脱落防止片867が設けられている。かかる脱落防止片867は、
図18および
図21に示すように、筒状部材823の窓828に対応した部位に設けられている。かかる脱落防止片867は、筒状部材823に筒材802が嵌め込まれた状態において、筒状部材823の窓828に嵌る。窓828の下縁には、上方へ突出した突起829が設けられている。脱落防止片867は、当該窓828の上縁と、突起829との間に収められる。かかる脱落防止片867は、筒材802を筒状部材823から引き抜く際に、筒状部材823の窓828に対して引っ掛かる。このため、かかる脱落防止片867によって、筒状部材823に嵌め込まれた状態から筒材802が急に外れるのが防止される。なお、脱落防止片867の引っ掛かりは、それほど強くない。このため、筒材802を筒状部材823から引き抜くことはできる。
【0133】
<目盛>
また、筒材802の下部(鍔部866の下側)は、筒材802が筒状部材823に嵌め込まれた状態でも、筒状部材823の下に露出している。当該下部には、切り欠き868が形成されている。この実施形態では、スリット850の周りにおいて、周方向に予め定められた幅で切り欠き868が形成されている。かかる切り欠き868には、脚部501、502、601、602の外周面が露出する。この実施形態では、当該脚部501、502、601、602の外周面には、当該切り欠き868から露出する部位に、筒材802が取り付けられた位置における脚部501、502、601、602の長さを示す目盛(図示省略)を配置されている。
【0134】
≪連結部材804≫
連結部材804は、
図16、
図23および
図24に示すように、筒材802を基材としての便器本体100に連結する部材である。連結部材804は、第2被係合部881と、被係止部882とを備えている。この実施形態では、連結部材804は、筒材802に装着可能なリング状の部材である。
【0135】
<第2被係合部881>
第2被係合部881は、筒材802の第2係合部としての鍔部866に対して、筒材802の軸方向に係合する部位である。連結部材804において、第2被係合部881は、筒材802の鍔部866に係合する。この実施形態では、第2被係合部881は、連結部材804の内周面において、内径側に突出した突起である。この連結部材804の下端の縁が内径側に突出している。かかる連結部材804の下端の縁が、第2被係合部881として機能する。また、この実施形態では、筒材802の第2係合部は、周方向に連続している。また、連結部材804の第2被係合部881においても、周方向に連続している。このため、周方向において、何れの方向でも適切に力を支承することができる。
【0136】
<被係止部882>
被係止部882は、保持部821に設けられた係止部822に係止される部位である。この実施形態では、係止部822は、基材としての便器本体100のボス121〜124(
図11参照)に装着される筒状部材823の下端に設けられている。当該筒状部材823の下端には、ねじ溝(雄ねじ)が形成されている。これに対して連結部材804は、当該筒状部材823の係止部822としてのねじ溝(雄ねじ)に嵌る、ねじ溝(雌ねじ)がリング状の連結部材804の内周面に形成されている。
【0137】
このポータブルトイレ10は、
図1に示すように、便器本体100と、便器本体100の下部に脚500、600が設けられている。脚500、600は、軸状の脚部501、502、601、602を備えている。
図16および
図17に示すように、便器本体100の下部には、脚部501、502、601、602を保持する保持部821を備えている。そして、保持部821が、脚部501、502、601、602を保持する構造として、上述した軸保持構造800を備えている。
【0138】
このポータブルトイレ10では、図示は省略するが、各脚部501、502、601、602に、予め連結部材804を挿通させておく。そして、各脚部501、502、601、602の長さが揃うように、位置を調節して脚部501、502、601、602に筒材802を取り付ける。そして、脚部501、502、601、602に取り付けた筒材802を、それぞれ便器本体100の保持部821(この実施形態では、ボス121〜124に装着された筒状部材823)に装着する。
【0139】
この際、筒材802が取り付けられた脚部501、502、601、602は、例えば、
図16に示された前側の脚501のように、それぞれボス121〜124に装着された筒状部材823に装着される。そして、この状態で、
図17に示された前側の脚部501のように、各脚部501、502、601、602に予め挿通していた連結部材804を、便器本体100の係止部822に取り付けるとよい。この実施形態では、係止部822は、筒状部材823の下端に設けられており、連結部材804は、筒状部材823の下端に係止されている。
【0140】
連結部材804を取り付けることによって、脚部501、502、601、602に取り付けられた筒材802が、便器本体100の保持部821に装着された状態で保持される。これにより、ポータブルトイレ10の高さが定まる。そして、ポータブルトイレ10の高さを変えるときは、連結部材804を外し、脚部501、502、601、602を保持部821から外し、脚部501、502、601、602に取り付けられた筒材802の位置を調節するとよい。これにより、保持部821に保持された位置から延びる脚部501、502、601、602の長さを変えることができる。脚部501、502、601、602の長さを調整ことによって、ポータブルトイレ10の高さを調整することができる。
【0141】
以上、ここで提案されるポータブルトイレの一実施形態を例示し、ポータブルトイレ10に適用された軸保持構造800を説明したが、本発明は、特に言及されない限りにおいて、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0142】
上述した実施形態では、軸保持構造800を構成する各部材、つまり、軸としての脚部501、502、601、602と、基材としての便器本体100および筒状部材823と、筒材802と、連結部材804とは、それぞれ樹脂成形品である。この場合、各部材は、成形後の型抜きが容易な形状であることが望ましい。
【0143】
ここでは、軸保持構造800の基材としての便器本体100は、保持部821の構造として、ボス121〜124(
図11参照)に筒状部材823が装着されている。ここで、便器本体100の保持部821は、上述した筒状部材823を別体にすることによって、ボス部の肉厚を大きくし、保持部821に所要の強度を得ている。また、筒状部材823を別体にする被係止部882としての雄ねじ構造などを適切に成形することができる。なお、便器本体100の保持部821は、ボス121〜124(
図11参照)に、筒状部材823の構造が、一体的に成形されていてもよい。
【0144】
また、脚部501、502、601、602に形成された第1係合部841〜844は、
図16、
図18、
図20および
図21に示すように、脚部501、502、601、602の外周面から突出した突起を例示した。この場合、筒材802に形成された第1被係合部861〜864は、第1係合部841〜844が嵌る凹部または孔であるとよい。また、この場合、ガイド853、854は、筒材802の内周面に突出しているとよい。
【0145】
なお、第1係合部841〜844、第1被係合部861〜864、ガイド853、854は、かかる構造に限定されない。例えば、図示は省略するが、脚部501、502、601、602に形成された第1係合部841〜844は、脚部501、502、601、602の外周面に形成された凹部または孔としてもよい。この場合、筒材802に形成された第1被係合部861〜864は、第1係合部841〜844に嵌る突起であってもよい。また、この場合、ガイド853、854は、軸としての脚部501、502、601、602の外周面から突出し、脚部501、502、601、602に装着された状態で筒材802を回転させた際に、筒材802の第1被係合部861〜864が当たる構造でもよい。
【0146】
また、上述した実施形態では、基材としての便器本体100の保持部821に設けられた係止部822は雄ねじ構造であり、連結部材804に設けられた被係止部882は雌ねじ構造であった。基材としての便器本体100の保持部821に設けられた係止部822と、連結部材804に設けられた被係止部882とは、それぞれかかる形態に限定されない。例えば、係止部822は、保持部821の外周面に形成された溝であり、被係止部882は、連結部材804の内周面に形成され、当該溝に嵌り得る突起であってもよい。また、係止部822は、保持部821の外周面に形成された突起であり、被係止部882は、連結部材804の内周面に形成され、当該突起が嵌り得る溝としてもよい。
【0147】
また、筒材802の側面は、周方向において開口しており、当該開口を開くことで内径が弾性的に拡がる構造を例示した。上述した形態では、筒材802の開口は、スリット850であるが、かかる開口は、筒材802の内径を弾性的に拡がる構造であればよく、特に言及されない限りにおいて、スリット850(細長い開口)に限定されない。
【0148】
また、上述した実施形態では、筒材802の側面に形成されたスリット850(開口)の少なくとも一方の端部の縁に、外径方向に突出した突起851が設けられている。かかる突起851は、スリット850を拡げる際に、指を掛ける部位となる。例えば、工具などを用いてスリット850を拡げて良い場合や、筒材802を拡径させる手段が他にある場合などには、かかる突起851はなくてもよい。
【0149】
また、筒材802には第1被係合部861〜864が、筒材802の軸方向に沿って複数(図示例では、3つ)設けられていたが、第1被係合部861〜864が、筒材802の軸方向に沿って設けられた数は、この限りでない。第1被係合部861〜864が、筒材802の軸方向に沿って設けられた数は、例えば、1つでもよい。なお、第1被係合部861〜864が、筒材802の軸方向に沿って設けられた数が、多ければ多いほど力が分散するので、1つの第1被係合部861〜864に作用する力を小さく抑えることができる。
【0150】
また、筒材802の外周面802aは、保持部821の奥に嵌め込まれる部位から、筒材802の軸方向に沿って外径が大きくなっている。これにより、筒材802が保持部821に嵌め込まれた際に、筒材802が締まるように作用する。なお、特に言及されない限りにおいて、軸保持構造800としての筒材802の外周面802aは、かかる形態に限定されない。
【0151】
また、連結部材804は、筒材802が基材としての便器本体100の保持部821に嵌め込まれた状態で、筒材802を保持部821に連結するものであればよい。このため、かかる連結部材804の構造については、上述した形態に限定されない。例えば、連結部材804は、リング状の部材でなくてもよい。
【0152】
以上、ポータブルトイレ10に適用された形態を説明したが、ここで開示される軸保持構造800は、ポータブルトイレ10の脚部501、502、601、602の長さを調整する構造のみならず、種々の用途に適用できる。例えば、杖の長さ調整構造や、浴槽椅子の脚の長さ調整構造など、種々の用途に適用されうる。