【実施例】
【0150】
実施例1−bFcRnα鎖遺伝子(bFCGRT)を有するBACクローンの単離及び特性評価
bFCGRTを有するBACクローンの単離
雄性成体(2才)ボスタウラスジャージーのリンパ球由来DNAを用いて作製されたウシBACライブラリーから90αBACを単離した(ドイツヒトゲノムプロジェクトのリソースセンター/プライマリーデータベース(RZDP)、マックスプランク分子遺伝学研究所、ベルリン、ドイツから取得;http://www.rzdp.de/)。bFcRnα鎖mRNA(206〜425bp;GenBank AF139106)特異的プライマーを用いたPCRスクリーニングによりbFCGRT陽性BACクローンを同定すると共にこれをPCR増幅した(BFcIS:5’−CAGTACCACTTCACCGCCGTGT−3’(SEQ.ID.NO.1);BFcIas:5’−CTTGGAGCGCTTCGAGGAAGAG−3’(SEQ.ID.NO.2)]。次のステップとして、bFCGRTのDNA配列を、この遺伝子のエキソン部分にアニールするプライマーを用いて決定した(Kacskovicsら、2000)。bFCGRT上流のフランキング領域を分析するために、BACのDNAをBamHIで消化し、消化後のDNAをアガロースゲル上で分離した。α1ドメイン由来のDNA断片をプローブとして用いてサザンブロットを行うことにより9kb長の陽性バンドを検出した。次いで、この9kb長のBamHI断片をpGEM−11zf(+)ベクターにサブクローン化した。更にサブクローニングプロセスを行うことにより、エキソン1〜エキソン3と2kbのプロモーターセグメントとを同一ベクター内に得た。続いて、ABI Prism BigDye Terminator Cycle sequencing Ready Reaction Kit(ABI、373A−Stretch、Perkin Elmer)(Cybergene Company)(フディンゲ、スウェーデン)を用いてインサートの配列を完全に決定した。
【0151】
bFCGRT特異的プライマー:FcRnF:5’−CGGCCACCTCTATCACATTT−3’(SEQ.ID.NO.3)及びFcRnR:5’−TGCATTGACCACACTTGGTT−3’(SEQ.ID.NO.4)(GenBank NW
929385)を用いて、ウシBACライブラリー(Eggenら、2001)から189HO2BACと128E04BACを単離した。単離したBACクローンのインサートサイズは、これらクローンをNotI制限エンドヌクレアーゼで消化することにより分析した。Expand Long Template PCR System(Roche)を用いて、インサート中のbFCGRTの5’、3’ボーダー領域のサイズを決定した。2セットのプライマーを設計し、pBAC−アッパープライマー(5’−ACCTCTTTCTCCGCACCCGACATAG、SEQ.ID.NO.5、U80929 11380−11404)とbFcRn−アンチセンスプライマー(GTTCAAGTCCAAAGGCAGGCTATCT、SEQ.ID.NO.6)を用いて5’オーバーハング領域を増幅し、他方、bFcRn−センス(CCTTTACCCACACCCACTCCCCACA、SEQ.ID.NO.7)とpBAC−ローワー(AGAAGTTCGTGCCGCCGCCGTAGTA、SEQ.ID.NO:8、U80929、3801−3777)(アンチセンスプライマー)を用いてbFCGRTの3’オーバーハング領域を増幅した。
【0152】
bFCGRTの特性評価
bFCGRTの転写開始点の上流領域約1800bpとbFCGRT遺伝子全体の配列を決定し、NCBIに寄託されたウシゲノム配列とBLASTプログラムを用いて比較した。配列を決定した断片について、RepeatMaskerプログラム(Smitら、1996〜2004)(http:repeatmasker.org)を用い散在反復配列と低複雑度DNA配列に基づいてスクリーニングした。RepeatMaskerによってスクリーニングされる散在反復配列データベースは、反復データベースに基づいている(Repbase Update;(Jurkaら、2005))。得られたデータはNCBIに寄託されたウシ配列とよく一致しており、第1イントロンに属する2002〜2287bp間に285bp長のギャップを有するものの、最初の3477bp(未配列決定2.5kb領域まで)はクローンNW
929385(ボスタウラス染色体18ゲノムコンティグ)と99%の同一性を示す。分析された配列の第2の部分は、同一のゲノムコンティグと99%の同一性を示す1780bp(未配列決定2.5kbセグメント以後)を含んでいた。この断片もまた、イントロン6に属する167bp長のギャップ(1203〜1370bp)を有している。2個の未同定セグメントは反復配列(単純反復)を含んでおり、このことは相同性がないことを説明している。これらのアラインメントに基づいて欠失部分のサイズを計算したところ2556bpであった。従ってこの配列は、648611〜656426bpの間でウシゲノムコンティグNW
929385と高い相同性を示すことが分かった。
【0153】
また、入手可能なbFcRnα鎖cDNA配列を(ESTデータベース(NCBI)から取得した配列及び参照配列と共に)bFCGRTゲノム配列にアラインメントすることにより転写開始部位を分析した。ウシ、ヒト、ラット、マウスの各FCGRTのゲノム構成について、NCBI Map Viewerを用いて比較した(データは示さず)。
【0154】
bFCGRT陽性BACクローンの特性評価
ウシ新生児型Fc受容体α鎖遺伝子(bFCGRT)とそのゲノム環境を含む、3種のBACクローン90α、189HO2及び128E04を単離した。NotIによる消化後、BACベクター由来のゲノムインサートをパルスフィールドゲル電気泳動で分析したところ、クローン189HO2、クローン128E04及びクローン90αがそれぞれ、約130kbサイズのウシゲノムインサート、約100kbサイズのウシゲノムインサート、約90kbサイズのウシゲノムインサートを含むことが示された。
【0155】
次いで、bFCGRT遺伝子のボーダー領域のサイズを長距離PCRで決定した。得られたデータから、90αBACと189HO2BACが、それぞれ8.5kbと14kbの5’、3’フランキング領域を含んでおり(これはそのサイズに対応している)、組込み部位に依存しないbFCGRT遺伝子の組織特異的発現を確実に行わせる調節エレメントの全てを有しているとは限らないという可能性が示された。2個のプライマーセットを用いたクローン128HO2のPCR増幅からは産物は何ら得られなかった。Expand Long Template PCR Systemは安定的な増幅方法であり、ファージDNAから最長25kbのアンプリコンを生成することから、本発明者らは、このクローンのbFCGRTの5’、3’双方のボーダー領域は25kbよりも長いという結論に至り、128E04BACをマイクロインジェクション用に選択した。
【0156】
ウシゲノムリソース(ウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/genome/guide/cow/)の最近のデータと128E04BACの5’、3’末端配列を用いて、本発明者らは、bFCGRTボーダー領域の正確なサイズとゲノムコンテキストを決定することができた:5’調節領域は44kbまで伸長しており、3’は50kb長である。データから、128E04BACは5種の推定タンパク質コード遺伝子(FLT3LG、LOC539196、LOC522073、LOC511234、LOC511235)とbFCGRTを含んでいることが示された(
図1A)。
【0157】
実施例2−ウシBAC128E04を有するトランスジェニックマウスの作製と遺伝子タイピング
マイクロインジェクション用BACクローン128E04からの102kbゲノムインンサートの調製及びウシBAC128E04を有するトランスジェニックマウスの作製
Schedlら(Schedlら、1996)によって公開されたプロトコールを一部変更してマイクロインジェクション用BAC(クローン128E04)DNAの調製を行った。精製したBAC(極低コピープラスミド用Qiagen plasmid purificationにて)をNotI(Fermentas)で消化して目的のインサートを遊離し、プレパラティブパルスフィールド1%アガロースゲルで単離した。このインサートを含むゲルスライスをLMP(低融点)ゲルと混合し、Gelase(Epicentre)で消化した。Microcon YM50(Millipore)カラムを用いて、アガロースからインサートを分離した。このインサートを、マイクロインジェクションに適切なバッファー(10mM Tris−HCl、pH7.5、0.1mM EDTA、pH8.0、100mM NaCl(0,03mMスペルミン/0,07mMスペルミジン(SIGMA)含有又は不含))中に溶出させた。DNAの濃度は、マイクロインジェクションバッファー(10mM Tris−HCl、pH7.5、0.1mM EDTA、100mM NaCl)を用いて0.4ng/μLに調整し、受精したFVB/Nマウス卵母細胞に注入した。レシピエントは10週齢のCD1雌性とした。実験動物は、Charles Rivers Laboratories Hungary Ltd.(ブダペスト)から得た。
【0158】
トランスジェニックマウスの特性評価
マウス中にbFCGRTが存在するかどうかを検出するために、胚移植により生誕した同腹子と、ファウンダーのG1、G2子孫の尾部バイオプシーによりゲノムDNAを単離し、PCR増幅を2回行うことによりスクリーニングした。2種のプライマーペアは、90αBACクローンのbFCGRT配列に基づき設計した。第1のプライマーペアは、センスとしてのbFcSuf:5’−CTCCTTTGTCTTGGGCACTT−3’(SEQ.ID.NO.9)と、アンチセンスとしてのBFcL5’−GCCGCGGATCCCTTCCCTCTG−3’(SEQ.ID.NO.10)から成り、これらは600bpの産物(1275〜1894bp)を与え、一方、第2のプライマーペアは、センスとしてのFcrnfpr/in5’−AAAGTTTCTCGAGAGAGGCAGAGAC−3’(SEQ.ID.NO.11)と、アンチセンスとしてのFcrnrpr/in5’−TAGTTACAGAGCCTGGATAGGCTGA−3’(SEQ.ID.NO.12)であり、これらは410bpの産物(1698〜2108bp)を与えた。形質転換実験の結果は表1に示す。
【0159】
【表1】
【0160】
表1に示すように、合計41匹のパブ(pub)が生誕し、bFCGRTの有無について尾部DNAを遺伝子タイピングした。6匹のファウンダーから3種の独立したTg系統を確立した。これら系統の内の2系統である#14と#19は、第1世代においてトランスジーンの遺伝はメンデルの法則に従うパターンを示した(それぞれ合計30匹又は34匹の同腹子のうち、17匹又は12匹がトランスジーンを有していた)。一方、第3の系統である#9はファウンダー動物においてある程度のモザイク現象を示した。Tgマウスは、その同腹子と重量及び健康状態全般において区別がつかなかった。
【0161】
長距離トランスジーン完全性の解析
ウシゲノムマップ(GenBank Map Viewer Build 3.1(Btau3.1に基づく)ウシ染色体18;53543852〜53652024bp間の領域)に基づいて、導入したBACに局在する5種の推定タンパク質コード遺伝子用とBAC128E04の5’、3’末端用に設計した特異的プライマーペアを用い、3種のTg系統におけるトランスジーンの完全性について評価した。プライマー配列及び条件は表2に示す。
【0162】
【表2】
【0163】
BAC128EOHの5’末端配列とBAC128EOHの3’末端配列をA.Eggen(Inra、Jouy−en−Josas、フランス)より得た。プライマーペアはいずれも、128E04BAC及びウシゲノムDNAと同一のPCR産物を与え、系統#9DNA以外ではインタクトなBACの組み込みが示された。系統#9では、LOC511234、LOC522235及びBAC128E04の3’末端特異的PCRにおいてPCR産物が得られなかった(
図1B)。従ってこのTg系統では、組み込まれたBACトランスジーンの3’末端から推定30kb長の断片が欠失したと結論付けることができる。大きなトランスジーンにおいて、5’、3’両末端からゲノム断片が欠失することはよく見られる現象である(Raguzら、1998)。しかしながら、場合によってはBACDNAの欠失部分に存在していた可能性もある特性評価されていない調節エレメントが存在しないことにより、bFCGRTの発現が影響を受けるという可能性を排除するために、系統#9に対する更なる研究は行わなかった。
【0164】
トランスジーンの染色体位置
両トランスジェニック系統のマウス染色体の同一セグメントにウシBAC128E04クローンが偶発的に組み込まれてトランスジェニックマウス系統#14と#19の表現型がトランスジーンの組み込み部位における(一以上の)未同定遺伝子の挿入突然変異の影響を受けるという可能性を排除するために、蛍光インシチュハイブリダイゼーション(FISH)により128E04トランスジーンのゲノムへの組み込みを可視化させた。128E04BACDNAを、ニックトランスレーションによりビオチン−14−dATP(BioNick標識化キット、インビトロジェン、USA)で標識した。次いで、低張処理とメタノール:酢酸(3:1)固定とを含む標準的なプロトコールに従い、分裂期染色体をビンブラスチン処理済み線維芽細胞から得た。この線維芽細胞は、13.5日齢のホモ接合体である#14胚と#19胚のそれぞれから単離したものである。
【0165】
先の記載(Hayesら、1992)に従って効率的にFISHを行った。ビオチン化プローブを変性し、変性染色体スプレッドに37℃で一晩ハイブリダイズさせた。ヤギに産生させた抗ビオチン抗体(Vector Laboratories Inc、バーリンゲーム、CA)で染色体のハイブリダイゼーション部位を増幅し、フルオレセイン結合ウサギ抗ヤギIgG(Nordic Immunological Laboratories、ティルブルフ、オランダ)と共に更にインキュベーションすることにより可視化した。ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI;Vector Laboratories、バーリンゲーム、CA)で染色体調製物を対比染色し、Nikon Eclipse E600落射蛍光顕微鏡(ニコンインスツルメンツ;川崎、日本)で観察した。蛍光イメージはCohu 4910 CCDカメラ(Cohu、Inc.;サンディエゴ、CA、USA)で撮像し、アップルマッキントッシュG4コンピューターに接続されたMacProbe 4.3 FISH ソフトウェア(Applied Imaging;ニューカッスルアポンタイン、UK)を用いてデジタル化した。
【0166】
FISH解析の結果から、蛍光標識BAC128E04がマウス系統#14及び#19それぞれの全く異なる染色体セグメントにハイブリダイズしていることが示された。これは、表現型が組み込み部位依存的であるという可能性を排除するものである。染色体中に見られる1個のスポットは、複数のコピー(系統#14では2、系統#19では5)の組み込みトランスジーンがタンデムリピートを形成している可能性が非常に高いことを示す(
図2)。
【0167】
実施例3−ウシFCGRT(bFCGRT)遺伝子のコピー数のFcRn発現量に対する影響
リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応によるトランスジーンのコピー数の決定
リアルタイムPCRは、Tg動物におけるトランスジーンのコピー数と接合性を決定する定量的且つ精確な方法である(Tessonら、2002)。128E04BACトランスジーンのコピー数は、次のようにして、bFCGRTと内部標準マウスβ−アクチン遺伝子の絶対定量法により決定した。
【0168】
128E04BACトランスジーンのコピー数は、ABI Prism 7000 Sequence Detection System(Applied Biosystems、Foster City、CA)を用いてTaqMan法により決定した。プライマーとプローブのオリゴヌクレオチド配列は、デフォルトパラメーターを用いてPrimer Express v2.0プログラム(Applied Biosystems)により設計した(プライマーとプローブは表3に示す)。従来のフェノール/クロロホルム法を用いると共にクロロホルム抽出ステップを行うことにより、ヘミ接合性動物の尾部サンプルからDNAを抽出した。
【0169】
【表3】
【0170】
各サンプルにおけるマウスβ−アクチン遺伝子とbFCGRT遺伝子を、検量線を用いた絶対定量法により定量した。最大32倍希釈の5点を使用した標準曲線は、各プライマーセットで高い線形性を示した。PCRによる定量の線形性と効率について定量前に評価した。各サンプルは2連にして行った(
図3)。
【0171】
各細胞中2コピーの内因性β−アクチン遺伝子を、DNA濃度を決定する内部標準として用いた。マウスゲノムDNAを用いて、β−アクチン遺伝子の検量線を作成した。bFCGRT遺伝子の絶対定量は、マウスゲノムDNAを添加した128E04BACの段階希釈物を用いて作製した標準曲線に基づき行った。bFCGRT遺伝子のコピー数は、標準曲線を用い次の計算に基づいて決定した。即ち、DNA量を正確に測定しこれからサンプル中の2倍体ゲノム数を決定し、bFCGRT遺伝子の検量線から系統#14と#19由来のヘミ接合性動物のDNAサンプル中のコピー数を決定した。これらの計算を行った後、Tgマウス系統#14及び#19のヘミ接合性動物それぞれにおけるbFCGRT遺伝子のコピー数を2及び5であると決定した(表4)。
【0172】
【0173】
逆転写酵素PCRとノザン分析による、転写レベルでのコピー数決定
RNAzol(登録商標)B(TEL−TEST INC)を用いて、6週齢雌性の肝臓、肺及び乳腺と新生児の腸からトータルRNAを抽出した。モロニーマウス白血病ウィルス(M−MLV)の逆転写酵素と、製造業者(Acces RT−PCR System;Promega)により推奨されている(dT)17−アダプタープライマーとを用いて2μgのRNAを逆転写した。プライマーペア:B7 5’−GGCGACGAGCACCACTAC−3’(SEQ.ID.NO.35)及びB8 5’−GATTCCCGGAGGTCWCACA−3’(SEQ.ID.NO.36)(ここで、WはA又はTのいずれかになり得る)を用いてPCRを行うことにより、367bp長のbFCGRT特異的アンプリコン(914〜1280bp、(Kacskovicsら、2000))を得た。増幅セグメントは1%アガロースゲル電気泳動により分離しエチジウムブロミドで染色した。
【0174】
反芻動物のFcRn転写産物は多数の上皮細胞に検出されると共に(Kacskovicsら、2006b;Mayerら、2004;Mayerら、2002)血管内皮細胞においても検出された(Kacskovicsら、2006a)ことから、bFcRnα鎖の発現は、泌乳Tg雌性成体の肺、肝臓及び乳腺と、新生児の腸についてRT−PCRを用い解析した。ウシFcRnα鎖のmRNAは、系統#9、#14、#19由来ヘミ接合性動物の、選択したいずれの組織においても発現していた(
図4A)。
【0175】
トランスジーン発現量のコピー数依存性について評価すると共に内因性ウシFcRnα鎖のmRNA量とこの発現量を比較するために、系統#14及び#19のそれぞれとウシに由来する肝臓RNAサンプルを、ノザンブロットを用いて分析した。トータルRNAを若年成体雌性マウスの肝臓から単離し、5μgのトータルRNAを1%アガロース/2.2Mホルムアルデヒドゲルでサイズ分画し、Hybond N+メンブラン(Amersham)に移した。次いで、上述のB7及びB8プライマーを用いてPCRにより合成した32P標識cDNAプローブをハイブリダイズさせた。18SRNAシグナルを内部標準として用いて、ゲル中のRNAローディング量を評価した。得られたシグナルは、PhosphorImager(登録商標)を用いて評価すると共にSTORM(登録商標)(Molecular Dynamics)で定量した。コピー数が2、4、5及び10のTgマウス間におけるbFcRnmRNA特異的シグナル密度の比較をスチューデントのT検定により行った。
【0176】
結果から、系統#19におけるトランスジーンmRNA発現レベルがより高いことが分かる。BACトランスジーンを2コピー有する系統#14ヘミ接合性Tgマウスの肝臓でのmRNA発現レベルは、ウシの肝臓におけるレベルの90%に達していた(
図4B)。
【0177】
両Tg系統に由来する2又は3匹のヘミ及びホモ接合体動物のシグナル強度の統計的評価と定量分析とから、Tgマウスの肝臓におけるウシFcRnα鎖のmRNA量はそのトランスジーンのコピー数と厳密に相関しており、その差はp<0.05確率水準で有意であることが示された(
図4C)。トランスジーンのコピー数が2であるTgマウスの肝臓でのFcRnα鎖mRNA発現レベルがウシの肝臓でのmRNAレベルと同等であるという事実と共にこの結果は、128E04BACは、コピー数依存的ではあるが位置依存的ではないbFCGRT発現を保証するのに必要な調節エレメントを全て有することを示している。
【0178】
トランスジェニックマウスの肺におけるbFcRnα鎖タンパク質の検出
ウシFcRnα鎖のタンパク質レベルでの発現をウェスタン分析により検討した。タンパク質抽出物をポリアクリルアミド変性トリスグリシンゲルで分離し、アフィニティー精製済みウサギ抗血清を用いてブロットをプローブした(この抗血清は、高度に保存された173〜186のbFcRnα鎖アミノ酸残基に、KLHとコンジュゲートさせるためのN末端Cysを加えたペプチドCLEWKEPPSMRLKARに対して産生されたものである(Mayerら、2002))。結合したbFcRnα鎖抗体は、ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ウサギ抗体と、基質としてルミノール系溶液とを用いた向上した化学発光により検出した。bFcRnα鎖が安定にトランスフェクトされたウシ乳房上皮細胞株(B4)をポジティブコントロールとして用いた(Kacskovicsら、2006a)。
【0179】
両Tg系統由来のヘミ接合性肺サンプル中に40kDのタンパク質(これは、bFcRnα鎖の知られた分子量(Kacskovicsら、2000)と一致している)が検出されたが、ネガティブコントロールとして用いた野生型には見られなかった(
図5)。トランスジェニックFcRnα鎖の分子量は、bFcRnが安定的にトランスフェクトされたB4ウシ乳房上皮細胞株(Kacskovicsら、2006a)により産生される組み換えタンパク質と適合していた。更にこのデータから、5コピーのbFcRnトランスジーンを発現している#19マウス由来のサンプルは、2コピーのトランスジーンを発現している系統#14マウスで検出されたbFcRnタンパク質よりも遥かに多いbFcRnタンパク質を産生することをノザンブロット分析の結果が示していることが確認された(
図5)。
【0180】
これらのデータから102kb長のBACクローンは、bFcRnα鎖を生理的レベルで再現可能且つ組織特異的に発現するのに必要な遺伝的調節エレメントの全てを有していることが示され(
図4A)、このことは、マウスにおけるウシトランスジーンの挙動が、時期を問わず、ウシ組織中の当該遺伝子の発現パターンと同等であるとみなすことができることを強調している。
【0181】
実施例4−ウシBACトランスジェニックマウスにおけるマウスIgG及びヒトIgGの半減期を分析するインビボ研究
TgマウスにおけるbFcRnα鎖の発現を分析すると共にウシFcRnα鎖とマウスβ2mが機能的受容体を形成し得るかどうかを試験するために、マウスIgGとヒトIgGのクリアランスについて分析した。後者については既に調べられており、最近になってウシFcRnがウシIgGに対するよりもヒトIgGに対して遥かによく結合すること(Kacskovicsら、2006a)が示された。
【0182】
プレブリード後、年齢、体重及び性別(雄性)が一致するホモ接合体#14と対照マウス(各群3〜5匹)の静脈内に、抗OVAマウスIgG1(mAb、Sigma)を10mg/kg体重(BWkg)、ヒトIgG(Octapharma(ストックホルム、スウェーデン)より譲り受けた静注用Gammonativ)を10mg/BWkg又は20mg/BWkgでそれぞれ50mg/mL生理溶液を用いてマイクロインジェクションし、続く216時間で定期的に血液サンプル(50μL/回)を後眼窩静脈叢(retroorbital plexus)から採取した。捕捉試薬としてOVA(Sigma)を用い且つ検出試薬としてHRPコンジュゲートアフィニティー精製済みポリクローナルヤギ抗マウスIgG(γ鎖特異的)(Southern Biotech Associates Inc.、バーミンガム、AL、USA)用いる定量的ELISAにより、実験過程における抗OVAマウスIgG1血漿濃度を評価した。先に記載の定量的ELISAアッセイ(Kacskovicsら、2006a)によりヒトIgG血清濃度を決定した。捕捉試薬として卵白アルブミン(Sigma)を用い且つ検出試薬としてHRPコンジュゲートアフィニティー精製済みポリクローナルヤギ抗マウスIgG(γ鎖特異的)(Southern Biotech Associates Inc.、バーミンガム、AL、USA)を用いる定量的ELISAにより、実験過程における抗卵白アルブミンマウスIgG1血漿濃度を評価した。TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン;Sigma)を基質として用いることによりペルオキシダーゼコンジュゲート抗体を検出した。サンプルは2連でアッセイした。Ig濃度は参照標準に基づいて得られる。
【0183】
最初の10日間におけるマウスの平均IgG濃度の分析は、WinNonLinプロフェッショナルバージョン4.1(Pharsight、Mountain View、CA)を用いたツーコンパートメントモデルにデータを適合させることにより行った。
【0184】
マウスIgGのクリアランス曲線は二相性であり、相1(アルファ相)は血管内と血管外の各コンパートメント間の平衡を表し、相2(ベータ相)は緩やかな排出を表す。216時間までの相1及び2の数学的モデル化により、FcRn仲介IgG薬物動態の一般的なスキーム(Loboら、2004)との良好な相関関係が示された。従って本発明者らは、このタイムフレームにおけるmIgGのアルファ及びベータ相の半減期を算出した。推定されるアルファ相の半減期は、wt及びTgマウスにおいていずれも約5時間であった。これに対して、ツーコンパートメントモデル化解析に基づけば、wt動物で125.4±3.2時間(平均±SEM)、Tg動物で165.1±7.8時間であり、ベータ相の半減期には有意差があった(p<0.05)(表5;
図6A)。
【0185】
hIgGの場合もmIgGのクリアランスデータと同様に、本研究により得られたデータの216時間までの相1及び2の数学的モデル化によって、FcRn仲介IgG薬物動態の一般的なスキームとの良好な相関関係が示された。従って本発明者らは、このタイムフレームにおけるhIgGのアルファ及びベータ相の半減期を算出した。ツーコンパートメントモデル化解析に基づくと、アルファ相は野生型マウスとトランスジェニックマウスの双方において約10時間であり、グラム当たり10マイクログラムとした実験とグラム当たり20マイクログラムとした実験との間で差がなかった。ベータ相の場合には、wtマウスとTgマウス間に有意差が見られた(p<0.05)。算出されたベータ相は、wt及びTgマウスのそれぞれにおいて、グラム当たり10マイクログラムを注射した場合には106±3.6時間と171.5±16.2時間であり、グラム当たり20マイクログラムを注射した場合には108.2±3.7時間と181±7.7時間であった(表5;
図6B)。予想されたように曲線下面積(AUC)値は顕著に異なり、グラム当たり20マイクログラムを注射した実験では、グラム当たり10マイクログラムとした実験に比べ約2倍の値を示した。一方、グラム当たり10μg又は20μgのhIgGを注射した場合においては、アルファ半減期とベータ半減期のいずれについても顕著な相違は見られなかった。
【0186】
本発明者らは、これらの実験(グラム当たり10マイクログラムのIgGを注射した実験)においてmIgGのクリアランスデータとhIgGのそれとを比較することにより、hIgGはwtマウスから有意に(p<0.05)早く排出されたことを見出した(ヒトIgG/マウスIgGが106時間/125.5時間)。しかしながらTg動物においては、マウスIgGとヒトIgGの各クリアランスデータに差はなかった(表5)。
【0187】
【表5】
【0188】
結論として、BACトランスジェニックマウスにおけるこれらのIgGクリアランス研究によって、β2mの主立った欠損はなくウシFcRnα鎖が機能的複合体をマウスβ2mと形成していることが確認された。TgマウスではmIgG1のクリアランスは著しく低減され、このことは、投与された抗体の保護に利用可能なマウスFcRnとハイブリッドFcRnの量が、インビボにおけるクリアランスからの保護の程度に寄与していることを示している。更に、Tg動物においてはマウスIgGとヒトIgGとのクリアランスデータに差がなく、これはハイブリッドbFcRnα鎖mβ2m受容体がhIgG1も保護することができることを示している。
【0189】
実施例5−卵白アルブミンによる免疫感作
ホモ接合体#14とヘミ接合体#19(それぞれ4又は5コピーのbFCGRTをコード)及び年齢、性別(雄性)が一致したwtマウス(各群5匹)の腹腔内に、250μgの卵白アルブミン(OVA、Sigma−Aldrich、ブダペスト、ハンガリー)と完全フロイントアジュバント(CFA)を用いて免疫感作し、14日後に250μgのOVAと不完全フロイントアジュバント(IFA、Sigma−Aldrich、ブダペスト、ハンガリー)を接種した。
【0190】
実験手続はいずれも、アグリカルチュラルバイオテクノロジーセンター(ゲデレー、ハンガリー)の動物ケア・倫理委員会(Animal Care and Ethics Committee)による認可を受けたものである。
【0191】
抗原特異的IgM及びIgGの力価
bFcRn過剰発現によるIgGの保護以外の免疫学的重要性を明らかにするために、wtとTg(#14及び#19)マウスを免疫感作し2週間後にOVAを接種して、その血清中の抗OVAIgMと抗OVAIgGそれぞれの力価を測定した。56日間、後眼窩静脈叢から血液サンプル(50μL/回)を採取した。OVA、FITC特異的IgM、IgGについて血清をアッセイした。捕捉試薬としてOVA、FITC−アルブミン(Sigma−Aldrich、ブダペスト、ハンガリー)を用いると共に検出試薬としてHRPコンジュゲートアフィニティー精製済みポリクローナルヤギ抗マウスIgM及びヤギ抗マウスIgG(μ鎖、γ鎖特異的)(Southern Biotech Associates Inc.、バーミンガム、AL、USA)を用いる定量的ELISAにより、実験過程における抗−OVA、抗−FITCマウスIgM、IgGの血漿濃度を評価した。基質としてTMB(Sigma−Aldrich、ブダペスト、ハンガリー)を用いることによりペルオキシダーゼコンジュゲート抗体を検出した。各血清試験サンプルの段階希釈物を測定に用いた。Ig濃度は、用量反応曲線の直線部分から内挿される450nmでの吸光度に基づいて示される。サンプルは2連でアッセイした。スチューデントの両側t検定を用いて、処理群の平均値の統計的有意性を評価した。p≦0.05であれば、各値は有意に異なると考えられる。
【0192】
結果から、一次免疫応答時にはwt動物とTg動物間に差がないが、追加免疫感作後はOVA−特異的IgM、IgGの力価が著しく異なることが示された。二次抗体応答時のIgM価は、一次免疫応答時と比べてIgMピークが僅かに低い、wt動物に典型的な曲線を示した。一方、Tgマウスの場合、IgM価は一次免疫応答時よりも二次免疫応答時に高く、wtマウスと比較し有意に高かった(
図7A)。IgG価に関しては、二次免疫応答においては、TgマウスのOVA−特異的IgG価はwtマウスのそれの約3倍であった(
図7B)。
【0193】
IgGサブクラスプロファイル
次に、OVA−特異的血清免疫グロブリンのIgGサブクラスプロファイルを決定した。免疫感作後32日目に、wtマウスとTgマウス(#14)由来の血清をOVA特異的IgGアイソタイプについてアッセイした。捕捉試薬としてOVAを用いると共に検出試薬としてHRP−コンジュゲートアフィニティー精製済みポリクローナルヤギ抗−マウスIgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3(Southern Biotech Associates Inc.、バーミンガム、AL、USA)を用いる定量的ELISAにより、抗−OVAIgGアイソタイプの血漿濃度を評価した。基質としてTMBを用いることによりペルオキシダーゼ−コンジュゲート抗体を検出した。各血清試験サンプルの段階希釈物を測定に用いた。Ig濃度は、用量反応曲線の直線部分から内挿される450nmでの吸光度に基づいて示される。サンプルは2連でアッセイした。
【0194】
OVA−CFAとOVA−IFAで順次免疫感作した動物は、抗−OVA抗体IgG1サブクラスを主に産生することが見出された。データから、Tgマウスにより産生されたIgG1、IgG2a及びIgG2bのOVA−特異的力価は有意に高いことが示された。IgG3産生量については、Tgマウスはwtマウスよりも僅かに高かったものの、結果の標準偏差が大きくその差は有意ではなかった。またこのデータから、OVA特異的IgGアイソタイプの間の比がwtマウスのそれと同様であることが示された(
図7C)。このことは、量が異なるほかは、TgマウスでのbFcRn発現はOVA−特異的免疫応答に対して変化をもたらさなかったことを示す。
【0195】
トータルIgGレベル
捕捉試薬として未標識アフィニティー精製済みヤギ抗−マウスポリクローナル抗体(ヤギ抗−マウスIgG(H+L);Southern Biotechnology Associates、Inc.、バーミンガム、AL、USA)を用いると共に検出試薬としてホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲートアフィニティー精製済みポリクローナルヤギ抗−マウスIgG(γ鎖特異的;Southern Biotechnology Associates、Inc.、バーミンガム、AL、USA)を用いる定量的ELISAにより、実験過程におけるマウスIgGの血漿濃度を評価した。基質としてTMB(Sigma)を用いることによりペルオキシダーゼコンジュゲート抗体を検出した。サンプルは2連でアッセイした。
【0196】
トータルIgGレベルの分析から、免疫感作前でもTgマウス(#14)IgG産生量がwtマウスに比べて有意に高いことが示された(wtマウス、Tgマウスのそれぞれにおいて2.4±0.4mg/mL、4.8±0.5mg/mL(平均±SEM、p<0.01))。免疫感作後、トータルIgGレベルは常時上昇し、そのレベルはwt動物、Tg動物それぞれにおいて28日目、36日目でピークに達した。特筆すべきことに、本発明者らは、IgGの最大レベルが両動物間で顕著且つ有意に異なることを見出した。即ち、wt、Tgマウスにおいてそれぞれ14.8±2.6mg/mL(平均±SEM)、39.9±2.7mg/mL(p<0.001)であった(
図7D)。
【0197】
ファゴサイトーシスアッセイ
Tgマウスにおいて産生されるOVA特異的IgGの機能的インタクトネスを評価するために、OVA免疫感作後35日で回収したTg、wtマウス血清とOVA−FITCとを血清の量を変えてインキュベートすることによりOVA−抗OVA抗体複合体を調製し、マウスマクロファージ細胞株P388D1を用いてファゴサイトーシスアッセイを行った。FITCによるOVAのラベリングは、製造業者の取扱説明書(Molecular Probes、Eugene、OR)に従った手続きにより行った。P388D1細胞株のマウスマクロファージは、5%ウシ胎児血清(Sigma− Aldrich、ブダペスト、ハンガリー)と10μM 2−メルカプトエタノール(Sigma−Aldrich、ブダペスト、ハンガリー)とを添加したRPMI1640培地(Sigma−Aldrich、ブダペスト、ハンガリー)中、37℃で増殖させた。24ウェル細胞培養プレート中、2×10
5細胞/ウェルを15ngホルボールミリステートアセテート(PMA、30ng/mL、Sigma−Aldrich、ブダペスト、ハンガリー)にて37℃で60分間処理した。OVA−抗OVA抗体複合体を調製するために、OVAで免疫感作したTg、wtマウス(免疫感作後35日)由来の血清2.5μL、10μL、40μLとOVA−FITC(1μg/μL)50μgとを37℃で60分間プレインキュベートした。OVA−抗OVA抗体複合体をPMA処理P388D1細胞と37℃で90分間インキュベートすることによりファゴサイトーシスさせた。よく洗浄して未結合タンパク質を除去した後、フローサイトメトリー(FACS)により細胞を分析した。細胞外FITC−標識OVAの消光にはトリパンブルーを用いた。
【0198】
免疫複合体の取込み効率についてFACSで分析した。Tg、wtマウスいずれの場合においてもその血清を2.5μL用いた場合には、非オプソニン化OVA−FITCの取込みに比べ向上したファゴサイトーシスは見られなかった。しかしながら、血清を10μL用いた場合には、Tgマウスの血清では有意な向上が見られたが、wtマウスの血清では見られなかった。最後に、Tg、wtマウスそれぞれの血清を40μL用いた場合にはいずれにおいても、非オプソニン化抗原の取込みに比べてファゴサイトーシスが上昇した(
図7E)。これらのデータから、Tgマウス血清が免疫感作35日目でOVA特異的抗体含有量が非常に高いことと、それが機能的にインタクトであることが示された。
【0199】
実施例6−Tg、wtマウスは、FITC−デキストランによる免疫感作に対し同様に応答する
主にIgMを産生する免疫応答を分析するために、Tg、wtマウスの腹腔内にFITC−デキストランを免疫感作し、2週間後に再度同様にして接種した。FITC−デキストランは、典型的なT細胞非依存性II型抗原(デキストラン)(Mondら、1995)とハプテン(FITC)とのコンジュゲートであり、血清中には主にFITC特異的IgMが見られ、FITC特異的IgGは殆ど見られなかった。FITC特異的免疫応答に関しTg、wt動物間で差はなかった。免疫感作過程における免疫応答を分析したところ、Tg、wtマウスのいずれにおいても二次免疫感作後にIgM産生の上昇が見られた(
図8)。
【0200】
実施例7−OVA特異的IgM、IgG産生細胞に対するbFcRn過剰発現の影響
ELISPOTアッセイによるOVA特異的B細胞の分析
TgマウスにおけるOVA特異的IgMの力価上昇から、bFcRn過剰発現は、より多くのIgGを保護することに寄与するだけではなくB細胞クローンの増殖という点で免疫応答に変化をもたらすことが示唆された。この観察結果を検証するために、先ず、ELISPOTアッセイを用いてOVA特異的B細胞を分析することにより、免疫感作後25日での脾臓中における抗−OVAIgM、抗−OVAIgG分泌形質細胞数を分析した。ホモ接合体#14とwtマウス(各群3匹)の腹腔内にOVA250μgとCFAを免疫感作し、14日後にOVA250μgとIFAを接種した。初回免疫感作後25日でこれらの動物を殺しその脾臓細胞をOVA特異的IgM、IgG細胞について分析した。ELISPOTでは、MultiScreen−HTSプレート(Millipore、ベッドフォード、MA)を、5μg/mLのOVA含有PBS溶液で3時間室温にて被覆した。次いで、このプレートをPBSで6回洗浄し、5%FCSとメルカプトエタノール(50μM)とを含有するRPMI培地で30分間室温にてブロッキングした。脾臓細胞の段階希釈物(5×10
5細胞/ウェルから開始)を各ウェルに添加した。このプレートを5%CO
2条件下37℃で一晩インキュベートし、PBS−Tweenで6回洗浄した。続いて、ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗−マウスIgG(γ重鎖特異的;1:4000倍希釈物;Southern Biotechnology)を各ウェルに添加した。室温にて1時間インキュベートした後、プレートをPBS−Tweenで6回洗浄した。次いで、プレートを色原体基質である3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC;Sigma)とH
2O
2の存在下に室温にてインキュベートした。反応は水洗することにより停止させた。ウェル当たりのスポット形成ユニット(SFU)をImmunoScan ELIspotリーダー(Cellular Technology Ltd.、USA)でカウントし、ImmunoSpotソフトウェア ver.3.2(Cellular Technology Ltd.、USA)で評価した。
【0201】
結果から示されるように脾臓において、OVA特異的IgM産生細胞数は2倍になっており(p<0.05)、OVA特異的IgG産生細胞数は3倍超となっていた(p<0.001)(
図9A)。
【0202】
免疫感作によりもたらされる脾臓への好中球の大量流入
OVAによる免疫感作により、脾臓重量の増加(
図9B)とその細胞数の増加(
図9C)が見られ、また抹消リンパ節の拡大が観察された。この現象はwt、Tgマウスのいずれにも見られたが、脾臓のサイズはTg動物ではwtコントロールの2倍になっていた(p<0.001)。
【0203】
続いて本発明者らは、フローサイトメトリーにより脾臓における細胞種分布の特性化を行った。FACSを行うため脾臓細胞を単離し、先ず、抗−CD32/CD16(クローン2.4G2)と30分間インキュベートした。次いで、染色バッファー(0.1%BSAと0.1%アジ化ナトリウムとを含有するPBS)中、この細胞をフルオロクロムコンジュゲート特異的Abと4℃で50分間インキュベートした後、2回洗浄し、続いてCellQuestソフトウェア(BD Biosciences、サンホセ、CA)を取付けたFACSCaliburで分析した。コンジュゲートmAbであるCD45R/B220−PECy5、I−A/I−E−PE、GR−1(Ly−6G)−PE及びCD11b−A647は、BD Pharmingen(サンディエゴ、CA)より得た。CD3−A647、CD86−PE、CD11c−A647及びCD11b−PEはそれぞれ、Caltag(バーリンゲーム、CA)、eBioscience(サンディエゴ、CA)、Serotec(デュッセルドルフ、ドイツ)及びImmunoTools GmbH(Friesoythe、ドイツ)から購入した。アイソタイプコントロールはBD Pharmingen又はSerotecから得た。
【0204】
結果から、免疫感作後においてはCD45R/B220を有する細胞(Bリンパ球)とI−A/I−E(MHCクラスII)抗原の割合が有意に減少した(p<0.05)ことが示された。CD3マーカーを有する細胞(Tリンパ球)に関しては、wt、Tgマウスのいずれの場合も差がないか或いはそれ程急激ではない減少が見られた。これらの現象はwt、Tgマウスにおいて見られたがTg動物でより強調されている(
図10)。
【0205】
免疫感作後、CD11bマーカーとGr−1マーカーを有する細胞の割合は、wt、Tgマウスのいずれにおいても劇的に上昇した(p<0.001)。この上昇レベルに関し本発明者らは、wtマウスで約5倍の上昇、Tgマウスで約9倍の上昇であることを見出した。また、本発明者らはGr−1を発現した細胞の大部分が、前方/側方光散乱(FCS/SSC)パラメーターから典型的な顆粒球位置であるGr−1
highであること見出し(
図11A)、このことから、これら細胞が好中球であることが示唆された(データは示さず)。改めて、この上昇はTgマウスの場合により顕著であるということができる(p<0.01)(
図11A)。本発明者らはまた、CD11bとMHCクラスII抗原を有する細胞(マクロファージ、樹状細胞)の割合(
図11B)、CD11b抗原とCD11c抗原を有する細胞(樹状細胞)の割合(
図11C−ゲートセル)は、Tgマウスにおいてそのwtコントロールよりも有意に上昇していることを見出した(それぞれp<0.05、p<0.01)。これらの結果は、MHCIIとB220を有する細胞の比例的減少について述べるものではあるが、免疫感作後の細胞数が脾臓で増加しているので(
図9C)、総細胞数の減少は意味しない。これらの分析に基づき本発明者らは、免疫感作後25日で脾臓に流入した細胞の大部分は好中球であると結論付けたが、樹状細胞数の増加も見られた。
【0206】
実施例8−腹腔滲出好中球、マクロファージ、樹状細胞においてbFcRn発現量が高い
bFcRnα鎖の発現について、先ず、コンカナバリンA(ConA、100μg/マウス(PBS溶液);Sigma−Aldrich、ブダペスト、ハンガリー)による腹腔内処理後2日のマウス由来の腹腔滲出細胞を分析した。好中球に富む細胞調製物を得るために、5%(w/v)カゼイン(Sigma−Aldrich、ブダペスト、ハンガリー)の滅菌生理食塩水溶液2mLでマウスに腹腔内注射し、注射後6時間で腹腔細胞を単離した。次いで、Ficoll−Paque Plus(GE Healthcare、ウプサラ、スウェーデン)で遠心分離(400×g、30分、RT)することにより好中球を精製した。好中球の精製度は、抗−CD11b試薬と抗−Gr−1試薬を用いるフローサイトメトリーにより測定したところ〜80%であった(
図12)。
【0207】
Trizol Reagent(Invitrogen、カールスバッド、CA)を用いてこれらの細胞からトータルRNAを抽出した。次いで標準的なプロトコールに従い、モロニーマウス白血病ウィルス(M−MLV)の逆転写酵素(Promega)と(dT)17−アダプタープライマーとを用いて2μgのRNAを逆転写した。プライマーペア:B3 5’−CGCAGCARTAYCTGASCTACAA−3’(SEQ.ID.NO.37、ここでRはG又はAに、YはT又はCに、SはG又はCになり得る)とB4 5’−GGCTCCTTCCACTCCAGGTT−3’(SEQ.ID.NO.38)を用いてPCRを行うことにより、422bp長のbFcRnα鎖特異的アンプリコン(AF139106の289〜711bp)を得た。増幅セグメントを1%アガロースゲル電気泳動により分離し、エチジウムブロミドで染色した。
【0208】
先ず、ConA処理済みTg、wtマウス由来の腹腔滲出細胞において、bFcRnの発現をPCR増幅により検出した。bFcRnの発現は好中球とマクロファージに富む細胞集団にも見られ、精製細胞は〜78%がCD11b
high/Gr−1
highであり、〜20%がCD11b
high/Gr−1
−であった(
図12)。
【0209】
より最近の研究によって、FcRnは、多形核白血球と単球のIgG仲介ファゴサイトーシスにおいて主要な役割を果たすことが示された(Vidarssonら、2006)。これは、FcRnが抗原提示に関わっていることを示唆している。本発明者らのデータに基づけば、これらの細胞におけるbFcRnの過剰発現は、抗原のファゴサイトーシスの向上と共に抗原提示の向上をも仲介し、その結果、二次リンパ器官における抗原特異的IgM、IgG産生形質細胞の増加に至るという仮説を立てることができる。仮にこの理論が正しいとすれば、この向上はIgGが産生された時点で明らかとなるが、それ以前の段階では明らかとはならない。実際にIgM価の上昇は、主に二次免疫応答において、OVA特異的IgGの生成後にはじめて見られる。
【0210】
実施例9−免疫感作マウス脾臓中におけるOVAを有する樹状細胞、好中球、Bリンパ球の存在
本発明者らが行った細胞分析から、免疫感作後、脾臓に流入した主な細胞種は好中球であることが示された。他の最近なされた報告に基づけば、二次リンパ器官において好中球は抗原を有する主たる細胞集団であり、特異的な免疫応答が生じると直ちにIgG−抗原免疫複合体が形成され、これが、確立される二次免疫応答の質に寄与しているとのことである(Malettoら、2006)。好中球の流入が実際に抗原特異的免疫応答に依存しているかどうか、そしてこれが抗原を有しているかどうかを実験で確かめるために、OVAによる免疫感作後56日で(この時期は依然としてOVA特異的IgGレベルは高い−
図7B)更なる免疫感作は行っていないトランスジェニックマウスをFITC−OVAで腹腔内処理した。この実験においてマウスは(ホモ接合体#14)、OVA−FITC(7.4mg/mL、100μL/マウス)で腹腔内処理した。OVA−FITC注射から5時間後に、マウスの脾臓を摘出しその細胞をフローサイトメトリーと共焦点顕微鏡法により分析した。フローサイトメトリーを行うために、細胞は次の各試薬を用いて上述のように処理した:即ち、CD45R/B220−PECy5、GR−1(Ly−6G)−PE、CD11c−A647、CD11b−A647及びCD11b−PE。共焦点顕微鏡法を行うに当たり、細胞はDRAQ5赤色蛍光細胞透過性DNAプローブ(Biostatus Ltd.、英国)にてRTで10分間染色した。洗浄ステップ後、Olympus FLUOView500レーザースキャニング共焦点顕微鏡(ハンブルグ、ドイツ)を高倍率(63×対物)で用いて、蛍光/DIC像(512×512ピクセル)を記録した。FITCとDRAQ5の各染料の励起は488nmのアルゴンレーザー線と632He−Neレーザー線を用いて行った。
【0211】
得られたフローサイトメトリーデータによれば、OVAにより免疫感作された動物においてOVA−FITC陽性細胞(15.1±1.4%)の内、61.2±5.4%がB220陽性(Bリンパ球)であり、18.5±0.6%がCD11b
high、Gr−1
high(好中球)として検出され、13.5±2.1%がCD11b、CD11c陽性(樹状)細胞であることが示された。非免疫感作動物(2.1±0.3%)においては、OVA−FITC陽性細胞数は多くは見られなかった(
図13A、13B)。OVA−FITC陽性好中球とBリンパ球に関するフローサイトメトリーにより得られたデータについて共焦点顕微鏡法により確認した。本発明者らは、OVA−FITCを取込む多葉の核を有する典型的な好中球を見出した一方で、他の細胞、恐らくはBリンパ球(大きな球形の核とその周縁に薄く細胞質を有する)がOVA−FITCによって被覆されていることを見出した(
図13C)。脾臓サイズと細胞数に関して、免疫感作動物と非免疫感作動物間に有意差は見られなかった(データは示さず)。この知見は、本発明者らが得た他の結果と非常によく符合し、免疫感作後25日のwt、TgマウスにおいてCD11b、Gr−1陽性好中球が著しい流入を示す理由を説明するものである。Tgマウスが遥かに多量のOVA特異的IgGを産生したこと(
図7B)、そしてこれらの細胞中でFcRnが過剰発現したこと(
図12)を考慮すると、Tgマウスにおいてこれらの細胞の流入の程度がより大きかったこと、抗原特異的なB細胞のクローンの増殖がより盛んであったこと、その結果として安定的な抗体応答が見られたことも説明することができる。
【0212】
実施例10−レンチウィルスによるトランスジェネシスを用いたbFcRnトランスジェニックマウスの作製
最近になって、レンチウィルスベクター由来のHIVとEIAVを用いることにより、再現性のある高トランスジェネシス率がマウス(Pfeiferら、2002)、ラット(Loisら、2002)、トリ(McGrewら、2004)、ブタ(Hofmannら、2003;Whitelawら、2004)及びウシ(Hofmannら、2004)で達成された。トランスファーベクターpWPTS−EGFP(Boviaら、2003)中の元のEF1α−EGFPセグメントを、ウシFcRn(bFcRn)α鎖遺伝子プロモーターセグメント(2950bp長)とそのコード配列の人工的組合せ物と置換することによりWPRE−P2
bFcRnトランスファーベクターを作製した。bFcRnプロモーターセグメントは、bFcRnトランスジェニックマウスの作製に用いた(実施例2参照)bFcRnα鎖遺伝子を有するBACクローン#128E04を用い、Deep Ventポリメラーゼ(New England Biolab、ベバリー、MA、USA)でPCR増幅した。フォワードプライマーはXbaI部位を含み(下線)(レンチ−BORE20:5−GGG
TCT AGA ACA CCA AGG GCG GCA TCA−3、SEQ.ID.NO.39);リバースプライマーはEcoRI部位を含む(レンチ−BORE18:5−GGG
GAA TTC CGG CTC CCG TGA CTG GAG AC−3、SEQ.ID.NO.40)。PCRにより得られたアンプリコンは、2950bp長のbFCGRT調節配列であった(GenBank:NW 001493624.1クローン/Bt18 WGA2132 3/ボスタウラス染色体18ゲノムコンティグ、レファレンスアッセンブリ(Btau
3.1に基づく)のヌクレオチド765455〜762510bp)。bFcRn重鎖のコードセグメントは、先に本発明者らの研究所で安定したトランスフェクト細胞を調製するのに用いた(Kacskovicsら、2006a)bFcRncDNA(GenBank AF139106)含有クローンからDeep VentポリメラーゼでPCR増幅した。フォワードプライマーはEcoRI部位を含み(BORE10:5−GGG
GAA TTC TGG GGC CGC AGA GGG AAG G−3、SEQ.ID.NO.41);リバースプライマーはMluI部位を含む(レンチ−BORE19:5−GGG
ACG CGT GAG GCA GAT CAC AGG AGG AGA AAT−3、SEQ.ID.NO.42)。PCRにより得られたアンプリコンは、1285bp長のbFcRnα鎖cDNA(GenBank:bFcRnのNM
176657レファレンス配列のヌクレオチド64〜1344)であった。精製後、二種のアンプリコン(bFcRnのコード配列とプロモーター)をEcoRI(Promega)で消化しT4リガーゼ(Promega)で連結することにより、bFcRn重鎖プロモーターの2950bpセグメントとbFcRn重鎖cDNA(SEQ.ID.NO.43)の1285bpセグメントとを有するP2−bFcRn構築物を調製した。次いで、bFcRnプロモーター−cDNA断片をトランスファーベクタープラスミドpWPTSに挿入した。このベクターを、先に記載した(Boviaら、2003)293T細胞中への一過性トランスフェクションにより増幅した。レンチウィルスを作製するために用いたベクターは、Tronolab、Cantonal Medical University(ジェノバ、スイス)から得た。次のベクターを使用した:pMD.G(エンベロープ構築物、6kbp);pCMV R8.91(パッケージング構築物、12kbp);pWPTS(トランスファー構築物、12.7kbp)。FcRnプロモーター(P2)−FcRncDNA配列はClaI、SalI部位間に挿入した。レンチウィルスの力価は、並行して調製したウィルスストックの上清の段階希釈物を用いたJurkat細胞に対するトランスダクションを行うことにより評価した。このウィルスはpWPRE−EGFPトランスファーベクターを有していた。蛍光励起セルソーター(FACS)によりGFP+細胞をカウントした。力価はミリリットル当たり10
7〜10
8トランスデューシングユニットの範囲であった。1細胞段階の接合子の囲卵腔にレンチウィルスHIV−P2−FcRnを注入することによりトランスジェニックマウスを作製した。FVB/NとBalb/cの遺伝的バックグラウンドにマイクロインジェクションを行った。続いて、注入後の接合子を雌性レシピエントに移植した(表6)。次のプライマー:bFcSuf 5’CTCCTTTGTCTTGGGCACTT3’(SEQ.ID.NO.9)とbFcL 5’GCCGCGGATCCCTTCCCTCTG3’(SEQ.ID.NO.10)を用いてPCRを行うことにより、トランスジェニックファウンダーを同定した。
【0213】
【表6】
【0214】
トランスジーンの発現を検出するために、HIV−P2−FcRn新生児マウスの腸、肺、脾臓及び肝臓から単離したRNAサンプルについてRT−PCRを行った(
図14に示す)。P2プロモーター用に設計したプライマー(FcRnprf:CGGCCACCTCTATCACATTT、SEQ.ID.NO.3;FcRnprr:TGCATTGACCACACTTGGTT、SEQ.ID.NO.4;予想される断片サイズ:579bp)を用いてRNAサンプル中にゲノムDNAがコンタミする可能性を排除した。また、ウシFcRnエキソン4用に設計したプライマー(bFcRnex4f:CCAAGTTTGCCCTGAACG、SEQ.ID.NO.19;bFcRnex4r:GAGGCAGATCACAGGAGGAG、SEQ.ID.NO.44、予想される断片サイズ:161bp)を用いてトランスジーン特異的mRNAを検出した。結果から明らかにbFcRnmRNAの発現が示された。
【0215】
トランスジェニックファウンダーをそれぞれ、野生型マウスと交配させることにより繁殖させトランスジェニック系統を確立した。
【0216】
実施例11−アルブミンレベルはTgマウスの血清中においても上昇する
トランスジェニックマウスはbFcRnを過剰発現していることから、次の2点:即ち(1)bFcRnはマウスアルブミンと相互作用するかどうか、(2)アルブミンの代謝に影響するかどうか、について検討した。従って、アルブミン特異的サンドウィッチELISAを用いることにより、FcRnを発現しないマウス(FcRn KO−Jackson Laboratory、USAから購入)、wt動物、ホモ接合性#14及び#19(それぞれ4又は10コピーのbFcRnを発現)それぞれのアルブミンレベルを測定した。この研究に基づいて、bFcRnはアルブミンと結合しその血清レベルに大きく影響することが分かった(
図15)。更にトランスジェニックマウスの乳中のアルブミン含有量を測定したところ、その濃度が野生型コントロールよりも有意に高いことが分かった(データは示さず)。従ってこれらのデータは、体液性免疫応答に対するFcRn過剰発現の有利な効果に加え、アルブミン濃度も上昇することを示唆するものである。アルブミン濃度の上昇により、血中の浸透圧レベルが正常レベルより高くなるため害になることもあるが、コピー数が10の場合でも認められる程度の有害な作用はなく、Tg動物は長期間健康に生存した(最長14ヶ月間)。
【0217】
実施例12−マウスFcRn KO−ウシBACトランスジェニックマウスにおけるウサギIgG半減期を分析するインビボ研究
bFcRnがウサギIgGと結合し、そのクリアランスが早まらないようにするかどうかを分析するために、マウスFcRn KO−ウシBACトランスジェニックマウスにおけるウサギIgGの半減期について分析した。4コピーの128E04BACトランスジーン(Benderら、2007)を有するbFcRnホモ接合体マウス(#14)と、ノックアウトしたmFcRnアレルのホモ接合体マウス系統とを交配させることにより、ウシFcRnトランスジェニック−マウスFcRnα鎖ヌルマウス(bFcRn/mFcRn
−/−)を作製した。このマウス系統は、Jackson Laboratories(USA)からB6.129XI−Fcgrt
tmIDcr/Dcrの名で購入した。所望の表現型を有する二重トランスジェニックマウス(bFcRn/mFcRn
−/−)を、次のプライマー:NEO−F:GGA ATT CCC AGT GAA GGG C(SEQ.ID.NO.45);NEO−R:CGA GCC TGA GAT TGT CAA GTG TAT T(SEQ.ID.NO.46);FcRn wt−F:GGG ATG CCA CTG CCC TG(SEQ.ID.NO.47);bFcSuF:CTC CTT TGT CTT GGG CAC TT(SEQ.ID.NO.9);bFcL:GCC GCG GAT CCC TTC CCT CTG(SEQ.ID.NO.10)を用いる多重PCRにより選択した。
図16Aに示すように適切なF2マウスを同定した。
【0218】
本質的に実施例4に示したようにウサギIgGの半減期について分析した。即ち、プレブリード後、年齢、体重及び性別(雄性)が一致したmFcRn
−/−とbFcRn
+/+/mFcRn
−/−マウス(各群3匹)の腹腔内に、50mg/mL生理食塩水溶液のウサギIgG(Sigma)150μg相当量を続く216時間でマイクロインジェクションし、定期的に血液サンプル(50μL/回)を後眼窩静脈叢から回収した。捕捉試薬としてヤギ抗−ウサギIgG(H+L特異的)(Caltag)を用い且つ検出試薬としてHRP−コンジュゲートヤギ抗−ウサギIgG(H+L特異的)(Vector Laboratories)を用いる定量的ELISAにより、実験過程におけるウサギIgGの血漿濃度を評価した。TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン;Sigma)を基質として用いることによりペルオキシダーゼコンジュゲート抗体を検出した。サンプルは2連でアッセイした。ウサギIgG濃度は参照標準に基づいて得られる。FcRn
−/−マウスではウサギIgGは素早く排出されたが(半減期:15時間)、bFcRn/FcRn
−/−では保護されていた(半減期:67時間)(
図16B)。FcRn
−/−動物における短時間でのIgGクリアランスについては文献報告されており(Roopenianら、2003)、またベータ−2−ミクログロブリンが存在しないことに起因して機能性FcRnを欠く動物においても同様のことが報告されている(Ghetieら、1996;Israelら、1996;Junghans及びAnderson、1996)。本発明者らによる実験において、bFcRn/mFcRn
−/−動物ではbFcRn活性によりウサギIgGのクリアランスが有意に低減された(p<0.0001)。しかしながら、これらの動物におけるウサギIgGの半減期はウサギにおけるウサギIgGの半減期(半減期:132〜153時間)(Andersen及びBjorneboe、1964;Dimaら、1983;Sabiston及びRose、1976)又はマウスにおけるウサギIgGの半減期(半減期:106時間)(Dimaら、1983)よりも遥かに短く、これはウサギIgGとbFcRn/マウスベータ−2−ミクログロブリン複合体との相互作用が比較的弱いことを示唆している。確かにこれまでのデータにより、IgG−FcRn相互作用の種間の相違は調べられているが(Oberら、2001)、このことは、IgGの半減期を向上させ延いては免疫感作時のIgGレベルを向上させるためには、適切なFcRnを選択する実験が必要であることを強調するものである。
【0219】
実施例13−ヒト化免疫グロブリンを産生すると共にウシFcRnを過剰発現する二重トランスジェニックウサギの、交配による作製
ヒトIgGとウシFcRnを産生する二重トランスジェニックウサギ系統は、血清中の免疫グロブリンレベルを改善する候補として有望である。過剰発現されたウシFcRnのヒトIgG半減期に対する効果については既に示されているので、これらの二重トランスジェニックウサギ系統は、ポリクローナル抗血清の産生又はウサギモノクローナル抗体を産生させる出発点として非常に有用である。
【0220】
二重Tgウサギは標準的な交配により作製することができる。先の実験により、bFcRnはウサギIgGへの結合に関して最良の候補ではないことが示されたが、bFcRnトランスジェニックウサギを作製することは依然として、ヒトIgGとウシFcRnの双方を産生する二重トランスジェニックウサギの作製のための望ましい中間ステップとなろう。後続のステップにおいて、最終の目的とする動物を作製するために、それぞれ一方のトランスジーンを有する2種のTgウサギ系統の交配が行われることになる。
【0221】
前核マイクロインジェクションにより128E04ウシBACクローンをウサギ接合体に導入し、トランスジェニックファウンダーを作製した。ウシFCGRT4番エキソンからの160bp断片の増幅用に設計したプライマー:bFcRnex4F:5’−CCAAGTTTGCCCTGAACG−3’(SEQ.ID.NO.19)とbFcRnex4R:5’−GTGTGGGCAGGAGTAGAGGA−3’(SEQ.ID.NO.20)を用いてPCRを行い、ウシFcRn遺伝子の有無を検出した。
図17は予想通りの断片が存在していることを示す。
【0222】
ファウンダーウサギのF1同腹子は、遺伝子的に改変されたヒト化免疫グロブリン産生ウサギとの交配に好適であり(Thoreyら、2006)、ヒト化ポリクローナル抗体産生の向上したレベルを達成するのに適した二重トランスジェニック動物を与える。
【0223】
実施例14−ヒト化免疫グロブリンを産生すると共にウシFcRnを過剰発現する二重トランスジェニックウサギの作製
実施例13の別法として、ヒト化免疫グロブリン産生トランスジェニックウサギをレシピエント動物として用いて(Thoreyら、2006)実施例3の記載と同様にトランスジェネシス実験を行うことにより、二重トランスジェニックウサギ系統を作製することができる。128E04ウシBACクローンを用いて、前核マイクロインジェクションによりトランスジェニックウサギを作製した。トランスジェニックウサギは、ウシBACクローン特異的なプローブとプライマーを用いるPCR及び/又はサザンブロットにより同定し、注入されたヒトIgGの半減期について評価した。ウサギ血清中において半減期は実質的により長くなり、これは導入されたウシFcRnが、トランスジェニックウサギにより産生されたヒト免疫グロブリンを分解から保護していることを示している。
【0224】
実施例15−ウサギFcRnα鎖遺伝子を有するBACクローン単離及び特性化
FcRn活性に関する初期の研究の多くはモデル動物としてウサギを用いていたため、ウサギFcRnは各組織の内皮細胞によって発現され、IgGの恒常性に寄与することが予測された。従って、ウサギFcRn遺伝子コピーを追加することでIgG半減期は向上する。よって、ウサギFcRnをクローン化しその配列を決定した(SEQ.ID.NO.48)。
【0225】
これと並行して、ウサギBACライブラリーから(Rogel−Gaillardら、2001)ウサギBACクローン262E02を単離した。このBACライブラリーはpBeloBAC11ベクター中に構築されたものであり、この高分子量DNAはニュージーランドウサギの白血球細胞から調製された。ウサギBACライブラリーは、家畜のためのINRAリソースセンターにより取扱われており公的に入手可能である。ウサギFCGRT遺伝子特異的プライマー:OCU
FCGRT
F:GGGACTCCCTCCTTCTTTGT(SEQ.ID.NO.49)とOCU
FCGRT
R:AGCACTTCGAGAGCTTCCAG(SEQ.ID.NO.50)をPrimer 3プログラム(http://bioinfo.genopole−toulouse.prd.fr/iccare/cgi−bin/primer3
aTg.cgi.pl)で設計し、Iccareプログラム(http://bioinfo.genopole−toulouse.prd.fr/Iccare/)でこれをヒトFCGRT遺伝子(GenBank NM
004107)とアラインメントさせることによりウサギの発現配列タグ(EST)EB377775を同定した。EB377775EST配列はウサギFcRncDNA(SEQ.ID.NO.55)の対応部分と同一である。オーソロガスボスタウラス染色体に基づいて、262E02ウサギBACクローンを候補遺伝子の有無について分析した。
Oryctolagus cuniculusのEST用に設計したプライマーとウシ遺伝子特異的プライマーのいずれか一方をFCGRT遺伝子近傍の50kb内の5’及び3’方向に用いた。次のウサギ遺伝子が262E02BACクローンに同定された:RPL13A;RPS11;FCGRT;RCN3;PRRG2(
図18参照)。
【0226】
【表7】
【0227】
また、スロット−ブロット分析に基づきFLT3LG遺伝子の存在も検出した。プライマー:FLT3LG
L:5’−TCGGAGATGGAGAAACTGCT−3’(SEQ.ID.NO.15)とFLT3LG
R:5’−CTGGACGAAGCGAAGACAG−3’(SEQ.ID.NO.16)を用いて得られたウシFLT3LG547bpPCR産物を262E02ウサギBACとハイブリダイズさせたところ、高度にストリンジェントな条件下で強い陽性シグナルが得られた。
【0228】
ウサギBACクローン262E02の構造は、ウシ128E04ウシBACクローンと極めて類似していると考えられ、従ってトランスジェネシス実験においても同様に良好な結果をもたらすと期待できる。
【0229】
実施例16−ウサギFcRnを過剰発現するトランスジェニックウサギの作製とウサギIgGの半減期を分析するインビボ研究
これまでの実施例で特性評価されたウサギBACクローン262E02を有する遺伝子構築物か又は十分に特性評価されたbFcRnプロモーターによって駆動されるウサギFcRncDNA(SEQ.ID.NO.48)を含み、ウサギFcRncDNAの下流にヘテロガスイントロンと市販のSV40ポリA領域を更に含む構築物を、前核マイクロインジェクションでウサギ接合体に導入した。或いは、トランスジェニックウサギは、実施例10に記載のレンチウィルストランスファーベクターにP2−ウサギFcRncDNA構築物を挿入して、これをウサギ胚の囲卵腔に注入することにより作製することもできる。トランスジェニックウサギは、特異的プライマー/プローブを用いるPCR及び/又はサザンブロットにより同定される。ウサギFcRnを過剰発現するトランスジェニックウサギにおけるIgG半減期は、例えば上で例示したような標準的な方法で評価される。
【0230】
以上から、ウサギFcRnα鎖を過剰発現するトランスジェニックウサギはポリクローナル抗血清の産生向上に有利に用いることができる。
【0231】
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