【実施例】
【0033】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、実施例中にて示す部および%は重量に基づくものである。
【0034】
ゴム強化スチレン系樹脂(A−1)の製造
ステンレス製耐圧重合反応機に、純水21.9部、オレイン酸カリウム1.0部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物0.5部、水酸化ナトリウム0.15部、ゴム状重合体としてブタジエン−スチレン共重合体ラテックス(スチレン含有量10重量%、ゲル含有量85重量%、重量平均粒子径430nm)を固形分で60部、t−ドデシルメルカプタン0.25部、ブドウ糖0.08部、硫酸第一鉄0.002部を仕込んで十分攪拌しながら67℃に昇温した後、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.08部を仕込み67℃で重合を開始した。
【0035】
重合開始直後からスチレン30部とアクリロニトリル10部の単量体混合物を2時間にわたって連続添加し、重合転化率が63%を越えた時点でt−ブチルハイドロパーオキサイド0.04部を仕込み、反応温度を72℃に上げて反応を2時間継続し、重合転化率が97%を超えたことを確認して槽内温度を40℃以下に冷却した。得られたラテックス状のゴム含有グラフト共重合体を多量のメタノール中に投入して沈殿させ、100メッシュのステンレス製金網に流した後、先ず適量のメタノール、次に多量の純水で洗浄した。その後、減圧下で残留するメタノールを除去し、85℃の熱風オーブン中で含水率が1重量%以下になるまで乾燥させ、パウダー状のゴム強化スチレン系樹脂(A−1)を得た。
【0036】
ゴム強化スチレン系樹脂(A−2)の製造
ステンレス製耐圧重合反応機に、純水230部、オレイン酸カリウム0.30部、過硫酸カリウム0.2部、ブチルアクリレート98.0部、アクリロニトリル1.0部、アリルメタクリレート1.0部からなる混合モノマー溶液を仕込み50℃に昇温した。その後、純水20部、オレイン酸カリウム1.0部からなる乳化剤水溶液を8時間に亘って連続添加した。その後5時間重合を継続し、重量平均粒子径0.28μmのアクリル系ゴムラテックスを得た。
【0037】
さらに、ステンレス製耐圧重合反応機に、上記のアクリル系ゴムラテックス50部(固形分換算)と純水110部、デキストリン0.1部、無水ピロリン酸ナトリウム0.1部および硫酸第1鉄0.005部を溶解した水溶液を添加した後、70℃に昇温した。その後、アクリロニトリル15部、スチレン35部、クメンハイドロパーオキサイド0.3部の混合液および純水20部にオレイン酸カリウム1.0部を溶解した乳化剤水溶液を6時間に亘り連続添加した。その後、重合を3時間継続し、重合を終了した。その後、塩析・脱水・乾燥し、ゴム強化スチレン系樹脂(A−2)を得た。
【0038】
ゴム強化スチレン系樹脂(A−3)の製造
攪拌翼を備えた重合反応機に、純水300部、懸濁安定剤としてヒドロキシエチルセルロース0.3部を溶解した後、3mm角に裁断したエチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体ゴム(エチレン含有量55%、ムーニー粘度(ML1+4;121℃)60)50部を仕込み懸濁させた。その後、スチレン37部、アクリロニトリル13部、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシピバレート3.0部および分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン0.1部を添加し、100℃にて1時間重合を行った。重合終了後、脱水し、ゴム強化スチレン系樹脂(A−3)を得た。
【0039】
スチレン・アクリロニトリル共重合体(A−4)の製造
スチレン75重量部およびアクリロニトリル25重量部を公知の塊状重合法により共重合を行い、スチレン・アクリロニトリル共重合体(A−4)を製造した。
【0040】
スチレン・メタクリル酸メチル共重合体(A−5)の製造
スチレン40重量部およびメタクリル酸メチル60重量部を公知の塊状重合法により共重合を行い、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体(A−5)を製造した。
【0041】
ポリスチレン(A−6)の製造
スチレン100重量部を公知の塊状重合法により共重合を行い、ポリスチレン(A−6)を製造した。
【0042】
α−メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体(A−7)の製造
ステンレス製耐圧重合反応機に、減圧下で純水155部、乳化剤としてロジン酸カリウム3.0部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物0.7部、水酸化ナトリウム0.08部、α−メチルスチレン75部、アクリロニトリル25部、t−ドデシルメルカプタン0.18部を加えて十分攪拌ながら72℃に昇温した後、過硫酸カリウム0.5部を仕込み72℃で重合を開始した。重合転化率が63%を越えた時点で反応温度を77℃に上げて反応を継続し、重合転化率が97%を超えたことを確認して槽内温度を40℃以下に冷却した。得られたα−メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体を、硫酸マグネシウム水溶液を使って塩析し、洗浄後に90℃の熱風オーブン中で含水率が1重量%以下になるまで乾燥させ、パウダー状のα−メチルスチレン・アクリロニトリル共重合体(A−7)を得た。
【0043】
スチレン・N−フェニルマレイミド・無水マレイン酸共重合体(A−8)
電気化学工業(株)社製 デンカIP MS−NC(商品名)を用いた。
【0044】
熱可塑性樹脂(B)として下記の樹脂を用いた。
B−1(ポリカーボネート):住友ダウ社製 カリバー200−20
B−2(6−ナイロン):ユニチカ社製 ユニチカナイロン6 A1030BRL
B−3(ポリブチレンテレフタレート):三菱エンジニアリングプラスチック社製 ノバデュラン5010
B−4(ポリ乳酸樹脂):ユニチカ社製 テラマック TP−4000
B−5(ポリメタクリル酸メチル):住友化学社製 スミペックス LG21
【0045】
シリコーン化合物(C)として下記の製品を用いた。
シリコーン化合物(C−1):BY27−219(東レ・ダウコーニング株式会社製)
エチレンメタクリル酸メチル共重合体に反応性ポリオルガノシロキサンをグラフト重合したシリコーン化合物。
シリコーン化合物(C−2):BY27−202H(東レ・ダウコーニング株式会社製)
低密度ポリエチレンに反応性ポリオルガノシロキサンをグラフト重合したシリコーン化合物。
シリコーン化合物(C−3):BY27−220(東レ・ダウコーニング株式会社製)
エチレン酢酸ビニル共重合体に反応性ポリオルガノシロキサンをグラフト重合したシリコーン化合物。
シリコーン化合物(C−4):SH200−1000CS(東レ・ダウコーニング株式会社製)
ジメチルシリコーンオイル。粘度:1000mm
2/s
【0046】
相溶化剤(不飽和カルボン酸変性共重合体)の製造
耐圧容器に、純水120部および過硫酸カリウム0.3部を仕込んだ後、攪拌下に65℃に昇温した。その後、スチレン67部、アクリロニトリル30部、メタクリル酸3部およびt−ドデシルメルカプタン1.5部からなる混合モノマー溶液およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2部を含む乳化剤水溶液30部を各々5時間に亘って連続添加し、その後重合系を70℃に昇温、3時間熟成して重合を完結した。その後、塩化カルシウムを用いて塩析、脱水・乾燥し、相溶化剤(不飽和カルボン酸変性共重合体)を得た。
【0047】
実施例1〜16、比較例1〜12
表1および表2に示す成分を、表1および表2に示す割合で混合後、30mm二軸押出機を用いて220℃から250℃で溶融混練してペレットを得た。得られたペレットを射出成形機にてISO試験方法294に準拠して、実施例1〜16、比較例1〜12の試験片を作製し、流動性、耐衝撃性、耐熱性を評価した。それぞれの評価方法を以下に示し、評価結果を表1および表2にまとめた。
【0048】
各物性の評価方法
流動性:ISO 1133に準拠してメルトボリュームフローレイト(220℃、10kg 一部の例では240℃、10kg)を測定して評価した。単位;cm
3/10min
耐衝撃性:ISO 179に準拠し、ノッチ付きのシャルピー衝撃値を測定した。単位;kJ/m
2
耐熱性:ISO 75に準拠し、荷重1.8MPaの荷重たわみ温度を測定した。単位;℃
【0049】
軋み音評価
ISO294−3に準拠したD2タイプの試験片を
図1のように2枚を表同士重ね合わせてそれぞれ両端を持ち(
図2では親指と人差し指のみとなっているが、親指とそれ以外の指で両端を押さえても良い。)、
図2に示すように面に垂直方向上下に歪ませる作業(振幅5mm程度)を下記のスピードで5秒間繰り返した際に、軋み音が発生するのかを確認した。評価結果を表1および表2に示す。
×:1秒間に1往復(上下に一回ずつ)程度のスピードで軋み音が発生する。
○:1秒間に2〜3往復程度のスピードでわずかに軋み音が発生する。(×より、軋み音は小さい)
◎:1秒間に3往復以上のスピードでも軋み音が全く発生しない。
なお、この試験において軋み音の発生しない組成物を用いて、実際の成形品を作成した際に軋み音が発生しないことは確認できた。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
表1に示すように、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形後初期の試験片を軋ませた際に軋み音がほとんど発生しなかっただけでなく、成形後長期間が経過した試験片と同様の状態を想定した、加熱後の試験片も軋み音が発生していないことがわかる。
【0053】
表2に示すように、シリコーン化合物(C)を用いていない場合(比較例2)や、シリコーン化合物(C)の使用量が少ない場合(比較例4、5)は軋み音が発生してしまった。オレフィン系共重合体に反応性ポリオルガノシロキサンをグラフトしていないシリコーン化合物を用いた場合(比較例1、3、7〜12)は初期の軋み音の発生防止効果は発揮されたが、軋み音の発生防止効果の持続性がなかった。本発明で用いられるシリコーン化合物(C)の使用量が多かった場合(比較例6)は軋み音の発生防止効果の持続性はあったが、耐衝撃性や耐熱性が低下してしまった。