特許第5752392号(P5752392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デピュイ・(アイルランド)の特許一覧

<>
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000002
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000003
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000004
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000005
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000006
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000007
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000008
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000009
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000010
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000011
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000012
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000013
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000014
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000015
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000016
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000017
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000018
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000019
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000020
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000021
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000022
  • 特許5752392-複合要素を有するプロテーゼ 図000023
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752392
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】複合要素を有するプロテーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/38 20060101AFI20150702BHJP
   A61L 27/00 20060101ALN20150702BHJP
【FI】
   A61F2/38
   !A61L27/00 F
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2010-243402(P2010-243402)
(22)【出願日】2010年10月29日
(65)【公開番号】特開2011-92740(P2011-92740A)
(43)【公開日】2011年5月12日
【審査請求日】2013年10月11日
(31)【優先権主張番号】61/256,517
(32)【優先日】2009年10月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/620,034
(32)【優先日】2009年11月17日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511089608
【氏名又は名称】デピュイ・(アイルランド)
【氏名又は名称原語表記】DePuy (Ireland)
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ダレン・エル・デッフェンボー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・イー・ウォゴマン
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−319955(JP,A)
【文献】 特開2001−245911(JP,A)
【文献】 特表2010−540077(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0084491(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0109081(US,A1)
【文献】 米国特許第05176710(US,A)
【文献】 特許第4689464(JP,B2)
【文献】 特表2011−512962(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0255412(US,A1)
【文献】 米国特許第05755800(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/38
A61L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節面(18、20)を有する大腿骨要素(12)と、
前記大腿骨要素の前記関節面を支承するような形状の関節面(17)と、反対側の表面(19)とを有するベアリング(16)と、
前記ベアリングのための取付面(26)と、骨係合面(28)と、前記取付面の反対側の前記骨係合面から延出する延長部分(30、32、34、36、38)とを有する複合脛骨トレイ要素(14)と、を備えた膝関節プロテーゼであって、
前記ベアリングの前記反対側の表面と前記複合脛骨トレイ要素の前記取付面とは、前記ベアリングを前記複合要素に取り付けるための相補的なロック機構(140、142、154、156、174、176)を有し、
前記延長部分は患者の骨内に植え込まれる際に前記複合脛骨トレイ要素を安定化させるように構成され、
前記延長部分は前記複合脛骨トレイ要素の前記取付面と反対側の端部(40、42、44、46、48)、および前記骨係合面から前記延長部分の前記端部に向かって延びる外面を有し、
前記複合脛骨トレイ要素は、多孔質部分(82)と、ポリエーテルエーテルケトンを含む中実部分(80)と、前記多孔質部分と前記中実部分との間の中間結合層とを含み、
前記中実部分(80)は前記複合脛骨トレイ要素の前記取付面(26)及び前記延長部分(30、32、34、36、38)の前記端部を画定し、
前記多孔質部分(82)は前記複合脛骨トレイ要素の前記骨係合面(28)と前記延長部分の前記外面の少なくとも一部とを画定し、
前記複合脛骨トレイ要素の前記中実部分と前記多孔質部分とは、前記多孔質部分上に前記中実部分のポリマーを型成形することにより、前記中間結合層を介して互いに結合されていることを特徴とする、膝関節プロテーゼ。
【請求項2】
前記複合脛骨トレイ要素(14)の前記中実部分(80)の前記ポリ(エーテルエーテルケトン)が、繊維強化されている、請求項1に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項3】
前記複合脛骨トレイ要素(14)の前記多孔質部分(82)が金属発泡材を含む、請求項1に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項4】
前記金属発泡材がチタン発泡材を含む、請求項3に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項5】
前記複合脛骨トレイ要素(14)の前記多孔質部分(82)がポリマー発泡材を含む、請求項1に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項6】
前記複合脛骨トレイ要素(14)の前記多孔質部分(82)がポリ(エーテルエーテルケトン)発泡材を含む、請求項5に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項7】
前記ポリ(エーテルエーテルケトン)発泡材が繊維強化されている、請求項6に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項8】
前記複合脛骨トレイ要素(14)が、前記取付面(26)と前記骨係合面(28)との間に配置される金属プレート(200)を含む、請求項5に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項9】
前記金属プレート(200)が切り抜き部(201、203、205、207、209)を含み、前記ポリマーが前記金属プレートの前記切り抜き部を通じて延びる、請求項8に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項10】
前記切り抜き部が貫通孔を含み、前記金属プレートが複数の貫通孔(201、203、205、207、209)を含み、前記ポリマーが前記貫通孔を通じて延びる、請求項9に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項11】
前記貫通孔(201、203、205、207、209)を通じて延びる前記ポリマーがポリマー発泡材を含む、請求項10に記載の膝関節プロテーゼ。
【請求項12】
前記貫通孔(201、203、205、207、209)を通じて延びる前記ポリマーが中実ポリマーを含む、請求項11に記載の膝関節プロテーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は以下の出願に優先権を主張するものである。すなわち、Daren L.Deffenbaugh及びThomas E.Wogomanにより2009年10月30日出願の「PROSTHESIS WITH COMPONENT COMPONENTS」と題する米国仮特許出願第61/256517号(ドケット番号DEP6035USPSP3)。本願は更に、その開示内容を全容にわたって本願に援用する以下の米国特許出願の一部継続出願である。すなわち、2007年9月25日出願の「Fixed−Bearing Knee Prosthesis」と題する米国特許出願公開第20090082873A1号(米国特許出願第11/860,833号)、及び、2009年11月17日出願の「Fixed−Bearing Knee Prosthesis Having Interchangeable Components」と題する米国特許出願公開第20100063594A1号(米国特許出願第12/620034号)。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、植え込み式の整形外科用プロテーゼに一般的に関し、より詳細にはベアリング要素及びそのベアリング要素を支持する別の要素を有する植え込み式プロテーゼに関する。
【背景技術】
【0003】
患者の生涯において、例えば病気や外傷のために患者に関節置換術を行わなければならない場合がある。関節置換術では患者の1つ以上の骨内に植え込まれるプロテーゼを使用する場合がある。膝関節置換術の場合、脛骨トレイが患者の脛骨内部に植え込まれる。次いでベアリングが脛骨トレイに固定される。これにより置換大腿骨要素の顆表面が脛骨ベアリングに対して支承される。
【0004】
膝関節プロテーゼの1つのタイプに固定ベアリング式膝関節プロテーゼがある。その名が示すように、固定ベアリング式膝関節プロテーゼのベアリングは脛骨トレイに対して動かないようになっている。固定ベアリングの構成は、患者の軟部組織(すなわち膝靭帯)の状態が、可動ベアリングを有する膝関節プロテーゼを使用することができないような状態である場合に一般的に用いられる。
【0005】
これに対して、可動ベアリング式の膝関節プロテーゼでは、ベアリングが脛骨トレイに対して動くことができるようになっている。可動ベアリング式膝関節プロテーゼには、ベアリングが脛骨トレイの長手方向軸を中心として回転することが可能な、いわゆる「回転プラットフォーム式」の膝関節プロテーゼがある。
【0006】
脛骨トレイは、コバルトクロム合金、ステンレス鋼、又はチタン合金などの生体適合性金属で一般に形成されている。これらの材料の中実の形態は、自然骨よりも大幅に高い弾性率(ヤング率)を有している。例えば米国特許出願公開第2009/0192610A1号に報告されているように、コバルトクロム合金は弾性率が220GPa(ギガパスカル)であり、チタン合金6A1 4Vは弾性率が110GPaであることが報告されている。同特許出願では、皮質骨の弾性率は15GPaであり、骨梁の弾性率は0.1GPaであることが報告されている。コバルトクロム合金又はチタン合金で形成された脛骨トレイが例えば超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)で形成されたベアリングと組み立てられる場合、脛骨トレイ及びベアリングを含む全体の構造の有効剛性が、脛骨インプラント構造と近位脛骨の下層骨との間の荷重の伝達が最適とならないようなものとなる場合があり、このため近位脛骨の特定の領域に応力遮蔽が生じ、骨吸収及びインプラントの緩みにつながりうる。
【0007】
固定及び可動ベアリング式の膝関節プロテーゼの両方で、脛骨トレイを患者の脛骨上にセメント固定されるように設計するか、あるいはセメントなしで固定されるように設計することができる。セメント式固定は、脛骨トレイとセメントとの間の機械的結合、及びセメントと骨との間の機械的結合によるものである。セメントレス式インプラントは、インプラント要素の内部への骨内部成長を許容する表面性状を一般に有し、その固定はかなりの部分でこの骨内部成長に依存している。
【0008】
固定及び可動ベアリング式、並びにセメント式及びセメントレス式膝関節形成術システムの両方において、脛骨要素は、通常、脛骨トレイと脛骨トレイによって支持されるポリマー製ベアリングとからなるモジュール式の要素である。脛骨トレイは一般に、ペグ又はステムのような遠位方向に延びる部分を含む。これらの延長部分は脛骨プラトーの表面下へと貫通し、脛骨トレイ要素を動かないように安定化させる。セメントレス式脛骨インプラントでは、これらの延長部分の外表面は通常、多孔質であることによって骨内部成長が可能である。例えば、Zimmer製Trabecular Metal Monoblock脛骨トレイでは、平坦な遠位面と六角形の軸方向面とを有するペグの全体が多孔質の金属で形成されている。こうしたトレイでは、骨内部成長は遠位面を含むペグのすべての表面に沿って生じうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
時としてこうした一次膝関節プロテーゼは故障することがある。こうした故障は、磨耗、非感染性の緩み、骨溶解、靭帯の不安定化、関節の線維化及び膝蓋大腿部における合併症を含む多くの要因によって生じうる。こうした故障が患者を消耗させるようなものである場合には、修正手術が必要となる場合がある。修正手術では一次膝関節プロテーゼ(又はその部分)を取り外し、修正用プロテーゼシステムの要素と交換する。
【0010】
脛骨インプラントが自然骨の内部に延びる延長部分(ペグ及びステムなど)を有する場合、修正手術は通常、こうした延長部分を骨から外すために骨の大きな切除を必要とする。このような大きな切除は手術を複雑にするばかりか、患者の自然骨の必要以上の除去を必要とするものである。このような更なる骨の除去は更に骨を脆弱化させ、骨の病気又は異常の発生のリスクを高め、あるいは修正用インプラントを固定するために利用可能な健康な骨を減少させうるものである。更にこうした大きな切除は通常、空間を埋め、関節要素を望ましい形状に修復するためにより大きな整形外科用インプラントを必要とすることを意味する。
【0011】
骨から脛骨トレイを外す際のこうした障害は、骨が更に延長部分の遠位面の内部へと成長することによって悪化するものである。この結合部を切断することは、こうした領域が脛骨プラトーから容易にアクセスできないことから困難である。
【0012】
同様の問題は他の種類のプロテーゼにおいても生じうる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、修正手術において骨からより簡単に取り外せることにより自然骨を温存することが可能な、セメントレス式固定法に適したモジュール式インプラント要素を有するプロテーゼに対するニーズを満たすものである。本発明は更に、従来のチタン合金及びコバルトクロム合金で形成された脛骨トレイを使用したインプラント構造よりも低い有効剛性を有するインプラントに対するニーズを満たすものである。本発明の例示した実施形態はこれら3つのニーズをすべて満たすものであるが、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲にはこれらのニーズの1つ以上を満たすプロテーゼが含まれうる点は理解されるはずである。本発明の異なる態様によって、下記により詳細に記載するような他の更なる利点が与えられる点も理解されるはずである。更に、本発明の原理は、膝関節プロテーゼばかりでなく、例えば足関節プロテーゼなどの他の関節プロテーゼにも適用しうる点は理解されるはずである。
【0014】
本発明の一実施形態に基づけば、本発明は、金属要素と、ベアリングと、複合要素とを有する関節プロテーゼを提供する。金属要素は関節面を有し、ベアリングは金属要素の関節面を支承するような形状の関節面を有する。ベアリング要素は更に反対側の表面を有する。複合要素は、取付面と、骨係合面と、取付面の反対側の骨係合面から延出する延長部分とを有する。ベアリングの反対側の表面と複合要素の取付面とは、ベアリングを複合要素に取り付けるための相補的なロック機構を有する。延長部分は患者の骨内に植え込まれる際に複合要素を安定化させるように構成される。延長部分は取付面と反対側の端部を有する。複合要素は多孔質部分と中実ポリマー部分とを含む。ポリマー部分は取付面及び延長部分の前記端部を画定する。複合要素の多孔質部分は骨係合面を画定する。
【0015】
本発明のプロテーゼには例えば膝関節プロテーゼ又は足関節プロテーゼが含まれる。
【0016】
複合要素のポリマー部分はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又は繊維強化PEEKを含むことができる。
【0017】
複合要素の多孔質部分は金属要素よりも高い多孔度を有してよい。
【0018】
別の態様に基づけば、本発明は、大腿骨要素と、ベアリングと、脛骨トレイとを備えた膝関節プロテーゼを提供する。大腿骨要素は内側顆面と外側顆面とを有する。ベアリングは遠位面と近位面とを有する。近位面は、(i)大腿骨要素の内側顆面と関節接合するように構成された内側支承面と、(ii)大腿骨要素の外側顆面と関節接合するように構成された外側支承面とを有する。ベアリングは脛骨トレイに固定される。脛骨トレイはプラットフォームを有し、プラットフォームは、(i)近位面と、(ii)近位面の反対側の遠位面と、(iii)プラットフォームの遠位面から遠位端へと遠位面と交差する軸に沿って延びる延長部分とを有する。延長部分は軸方向の長さと外面とを有し、外面は、プラットフォームの遠位面に隣接する近位外面と、遠位外面とを含む。遠位外面は、延長部の軸方向の長さの少なくとも一部にわたって遠位端から近位方向に延びる。脛骨トレイは中実ポリマー部分と多孔質部分とを有する複合体を含む。脛骨トレイの中実ポリマー部分はプラットフォームの近位面を形成してベアリングの遠位面を支承する。ポリマー部分はプラットフォームの近位面から延長部分内へ延び、延長部分の遠位外面を画定する。中実ポリマー部分は脛骨トレイの多孔質部分に固定される。脛骨トレイの多孔質部分は大腿骨要素よりも高い多孔度を有する。多孔質部分はプラットフォームの遠位面を画定する。
【0019】
特定の実施形態では、多孔質部分は延長部分の近位外面を画定する。
【0020】
特定の実施形態では、延長部分の遠位外面はほぼ回転楕円体状である。
【0021】
特定の実施形態では、ポリマー部分はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む。
【0022】
特定の実施形態では、ポリマー部分は繊維強化PEEKを含む。
【0023】
特定の実施形態では、ベアリングは脛骨トレイのポリマー部分とは異なるポリマー材料を含む。
【0024】
特定の実施形態では、ベアリングがUHMWPEを含み、脛骨トレイのポリマー部分が繊維強化PEEKを含む。
【0025】
特定の実施形態では、延長部分はステムを含む。
【0026】
特定の実施形態では、延長部分はペグを含む。
【0027】
特定の実施形態では、脛骨トレイは複数の互いに離間したペグを含む。こうした実施形態では、各ペグは、プラットフォームの遠位面から遠位端へと遠位面と交差する軸に沿って延びてよい。各ペグは軸方向の長さと外面とを有し、外面は、プラットフォームの遠位面に隣接する近位外面と、延長部分の軸と交差し、プラットフォームから離間した遠位外面とを有する。こうした実施形態では、ポリマー部分はプラットフォームの近位面から各ペグ内へ延びてもよく、各ペグの遠位外面を画定してもよい。こうした実施形態では、多孔質部分はプラットフォームの遠位面から遠位方向に延びて各ペグの近位外面を画定してもよい。
【0028】
特定の実施形態では、プロテーゼは固定ベアリング式プロテーゼであり、ベアリングの遠位面及び脛骨トレイのプラットフォームの近位面が相補的なロック機構を有する。こうした実施形態では、脛骨トレイプラットフォームの近位面のロック機構は、脛骨トレイプラットフォームのポリマー部分に形成されてもよい。
【0029】
別の態様としては、本発明は、膝関節プロテーゼの脛骨トレイ要素を製造するための方法を提供する。多孔質のベースが与えられる。ベースは、近位面と、遠位面と、近位面から遠位端へと遠位方向に延びる延長部分とを有する。延長部分は遠位端に開口部を有する。多孔質ベースは近位面から延長部分の遠位端の開口部に延びる内面を有する。ある量の繊維強化PEEK材料が与えられる。繊維強化PEEK材料が多孔質ベースの近位面を覆うように、また、繊維強化PEEK材料が多孔質ベースの内面に型成形され、延長部分の遠位端の開口部から遠位方向に延出するように繊維強化PEEK材料が多孔質ベースに型成形される。
【0030】
特定の実施形態では、型成形工程は射出成形を含む。
【0031】
特定の実施形態では、型成形工程は、PEEK材料にロック機構を形成することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0032】
発明を実施するための形態は以下の図面に特に関する。
図1】固定ベアリング式膝関節プロテーゼの分解斜視図。
図2図1の膝関節プロテーゼのベアリングの底面斜視図。
図3図1の膝関節プレートの脛骨トレイの斜視図。
図4図1の膝関節プレートの脛骨トレイの底面図。
図5図4の5−5線に沿った、図1及び4の脛骨トレイの矢印の方向に見た断面図。
図6図1、4、及び5に示す脛骨トレイを形成するために型成形される前のプリフォームとして示された、図1、4、及び5の膝関節プロテーゼの多孔質部分の斜視図。
図7図6の多孔質プリフォームの底面図。
図8図7の8−8線に沿った、図6及び7の多孔質プリフォームの矢印の方向に見た断面図。
図9】本発明において使用することが可能なプリフォームの代替的実施形態の斜視図。
図10図9の多孔質プリフォームの底面図。
図11図10の11−11線に沿った、図9及び10のプリフォームの矢印の方向に見た断面図。
図12図9〜11のプリフォームから形成された脛骨トレイを示す、図5と似た断面図。
図13】プリフォームの別の実施形態から形成された脛骨トレイを示す、図5及び12と似た断面図。
図14】脛骨トレイの多孔質部分とポリマー部分との界面を示す概略断面図。
図15】大腿骨要素及びベアリングと組み立てられた図1及び3〜5の脛骨トレイを示す、図5、12及び13と似た断面図。
図16】本発明の原理を実施した足関節プロテーゼの斜視図。
図17】脛骨トレイの別の実施形態の図5と似た断面図。
図18図17の脛骨トレイの金属プレート部分の斜視図。
図19図18の金属プレートの底面図。
図20図17の脛骨トレイの多孔質部分の斜視図。
図21図17及び20の脛骨トレイの多孔質部分の底面図。
図22図21の22−22線に沿った、図17及び20〜21の脛骨トレイの矢印の方向を見た断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本願と同時に出願された以下の米国特許出願は本願に関連したものである。すなわち、Daren L.Deffenbaugh及びAnthony D.Zannisにより出願された「Prosthesis with Modular Extensions」(DEP6035USCIP1、米国仮特許出願第61/256527号)、Daren L.Deffenbaugh及びAnthony D.Zannisにより出願された「Prosthesis For Cemented Fixation And Method Of Making The Prosthesis」(DEP6035USCIP2、米国仮特許出願第61/256546号)、Daren L.Deffenbaugh及びAnthony D.Zannisにより出願された「Prosthesis with Modular Extensions」(DEP6035USCIP1、米国仮特許出願第61/256527号)、Daren L.Deffenbaugh及びAnthony D.Zannisにより出願された「Prosthesis With Cut−Off Pegs And Surgical Method」(DEP6035USCIP3、米国仮特許出願第61/256574号)、並びに、Stephanie M.DeRuntz、Daren L.Deffenbaugh、Derek Hengda Liu、Andrew James Martin、Jeffrey A.Rybolt、Bryan Smith及びAnthony D.Zannisにより米国仮特許出願として出願された「Prosthesis With Surfaces Having Different Textures And Method Of Making The Prosthesis」(DEP6089USCIP1、米国仮特許出願第61/256468号)。これらの特許出願はすべて、その全容を本願に援用するものである。
【0034】
本開示の概念には様々な改変及び代替的形態を行いうるが、本開示の具体的な実施形態を図面に例として示し、ここに詳しく述べる。ただし、本開示の概念を開示される特定の形態に限定することを何ら意図するものではなく、その逆に、添付の特許請求の範囲において定義される発明の趣旨並びに範囲に包含されるすべての改変物、均等物、及び代替物を網羅することを意図するものであることが理解されるべきである。
【0035】
前側、後側、内側、外側、上、下といった解剖学的基準を表す用語は、本開示の全体を通じて、本明細書に記載する整形外科用インプラント及び患者の自然の解剖学的構造の両方に関して使用されうるものである。これらの用語は、解剖学的構造の研究及び整形外科分野の両方において充分に理解された意味を有するものである。明細書及び特許請求の範囲におけるこれらの解剖学的参照用語の使用は、特に断らないかぎり、それらの充分に理解された意味と一致するものである。
【0036】
図1を参照すると、膝関節プロテーゼ10が示されている。膝関節プロテーゼ10は、大腿骨要素12、脛骨トレイ14、及びベアリング16を有する。図に示された膝関節プロテーゼ10は固定ベアリング式膝関節プロテーゼであるが、これは脛骨トレイ14とベアリング16との間で動きがまったく生じないことを意味する。
【0037】
大腿骨要素12は、内側顆面18及び外側顆面20の2つの顆状支承面を有する。大腿骨要素12は、患者の大腿骨(図示せず)の外科的に前処理された端部の内部に植え込まれるように構成され、患者の自然の大腿骨顆の形状を再現するように構成されている。このため、外側顆面20及び内側顆面18は、自然大腿骨の顆部を模倣するように構成されている(例えば湾曲している)。外側顆面20及び内側顆面18は互いに離間していることにより、その間に顆間窩22が画定される。顆間窩22は、膝蓋骨インプラント要素(図示せず)を受容及び支承するような形状の膝蓋溝を画定する。図1の大腿骨要素12は十字靭帯保持型要素であるが、本発明の原理は十字靭帯置換型プロテーゼ膝関節システムにも適用可能であることは理解されるべきである。大腿骨要素12は、DePuy Orthopaedics,Inc.(インディアナ州ワルシャワ)より販売されるもの、及びプロテーゼ膝関節システムの他の供給元から販売されるもののような標準的な市販のインプラントを含みうる。大腿骨要素12は、その開示内容の全容を本願に援用する以下の米国特許出願に述べられるような特徴を含みうるものである。すなわち、「Orthopaedic Knee Prosthesis Having Controlled Condylar Curvature」米国特許出願第12/488,107号(ドケット番号DEP6157USNP)、「Posterior Cruciate−Retaining Orthopaedic Knee Prosthesis Having Controlled Condylar Curvature」米国特許出願第12/165,574号(ドケット番号DEP6152USNP)、「Orthopaedic Femoral Component Having Controlled Condylar Curvature」米国特許出願第12/165,579号(ドケット番号DEP6151USNP)、米国特許出願第12/165,582号(ドケット番号DEP6057USNP)、及び「Posterior Stabilized Orthopaedic Knee Prosthesis Having Controlled Condylar Curvature」米国特許出願第12/165,575号(ドケット番号DEP5923USNP)。
【0038】
大腿骨要素12は、ステンレス鋼、チタン、コバルトクロム合金、又はチタン合金などの生体適合性の金属で形成することができるが他の材料を使用することも可能である。これらの要素の骨係合面は、骨に対する要素のセメント結合を促進するためのセメントポケットを含みうる。また、大腿骨要素の骨係合面は、永久的固定のために骨内部成長を促進するように多孔質であってもよい。
【0039】
図1に示されるように、ベアリング要素16は、近位関節面17及び近位関節面17の反対側の遠位取付面19を有する。ベアリング16の近位関節面17は、大腿骨要素12の内側顆18と関節接合するように構成された内側支承面21、及び大腿骨要素12の外側顆20と関節接合するように構成された外側支承面23を有する。ベアリング要素16はモジュール式であり、脛骨トレイ14とともに手術中に組み立てられ、下記により詳細に述べるような機械的連結機構によって脛骨トレイ14に固定される。
【0040】
脛骨トレイ14は、近位取付面26及び反対側の遠位骨係合面28を有するプラットフォーム24を有する。図に示される脛骨トレイ14は、プラットフォームの遠位骨係合面28から遠位端40、42、44、46、48へとプラットフォーム24の遠位面28と交差する軸50、52、54、56、58に沿って延びる複数の延長部分30、32、34、36、38を更に有する。各延長部分30、32、34、36、38は、例えば図5においてL及びLとして示される軸方向の長さを有している。各延長部分30、32、34、36、38は、更に、脛骨プラットフォーム24の遠位面28に隣接する近位外面60、62、64、66、68及び各延長部分の遠位端40、42、44、46、48に遠位外面70、72、74、76、78を有する。各延長部分30、32、34、36、38の遠位外面70、72、74、76、78は、延長部分の遠位端40、42、44、46、48から、各延長部分30、32、34、36、38の軸方向の長さの少なくとも一部だけ近位方向に延びている。ステム30及びペグ32、34、36、38の遠位外面70、72、74、76、78は、第1の例示的実施形態ではほぼ回転楕円体形状であるが、本発明は特許請求の範囲において特に規定しないかぎりいずれの特定の形状に限定されるものでもない。
【0041】
脛骨トレイ14は、中実ポリマー部分80及び多孔質部分82を有する2種類の材料の複合体である。ここで言う「中実ポリマー」とは、理論上の密度のほぼ100%の密度を有する、隙間のない材料を特定して用いられる。ここで言う「多孔質部分」とは、隙間を有し、理論上の密度の100%よりも小さい密度を有する材料で形成されたインプラントの部分を特定して用いられる。下記により詳細に述べるように、多孔質部分は生体適合性金属又は生体適合性ポリマーを含みうる。
【0042】
脛骨トレイ14の中実ポリマー部分80はプラットフォーム24の近位面26を画定し、組立て時にはベアリング要素16の遠位面19に対して支承される。中実ポリマー部分80はプラットフォームの近位面26から各延長部分30、32、34、36、38の内部へと延び、延長部分30、32、34、36、38の遠位外面70、72、74、76、78を画定する。
【0043】
脛骨トレイ14のポリマー部分80は下記により詳しく述べるように多孔質部分82に固定されている。
【0044】
脛骨トレイの多孔質部分82はプラットフォーム24の遠位骨係合面28を画定する。この多孔質の遠位面28は脛骨プラトーの切除された近位面の骨に面し、骨内部成長を許容する材料を画定することによって、近位脛骨に対する脛骨プラットフォームのセメントレス固定が可能となっている。下記により詳細に述べるように、多孔質部分82は遠位面28から近位方向に延び、プラットフォーム24の遠位面28と近位面26との間の位置で中実ポリマー部分80と結合している。
【0045】
中実ポリマー部分80に型成形される前の、脛骨トレイ14の多孔質部分82の第1の例の一実施形態が、図6〜8に示されている。この多孔質部分は、遠位表面28と反対側の上面86を有するベース又はプリフォーム84を画定している。上面86はほぼ平板又は平面状であり、多孔質のベースすなわちプリフォームがポリマーと型成形されて脛骨トレイ14を形成する際にトレイの中実ポリマー部分80との境界面となる。第1の例示的実施形態では、多孔質のベースすなわちプリフォーム84は更に、延長部分30、32、34、36、38のそれぞれの近位外面60、62、64、66、68を画定する。近位外面60、62、64、66、68は、ベースすなわちプリフォーム84の骨係合遠位面28から遠位方向に延出する。
【0046】
図6〜7に示されるように、第1の例示的多孔質のベースすなわちプリフォーム84の上面86は、5個の一連の孔又は開口部90、92、94、96、98を有する。これらの孔又は開口部は延長部分30、32、34、36、38と対応している。
【0047】
第1の例示的実施形態の延長部分30、32、34、36、38は、1つのステム30と、4つの間隔をおいて設けられたペグ32、34、36、38とを画定している。ステム30及びペグ32、34、36、38は、患者の脛骨(図示せず)の外科的に前処理された端部の内部に植え込まれるように構成されている。
【0048】
多孔質の金属製プリフォーム84A、84Bの更なる実施形態が図9〜13に示されている。これらの実施形態では、ベースすなわちプリフォームは3個の孔又は開口部90A、90B、92A、92B、96A、96Bを有している。図12及び13において14A及び14Bに示される、こうしたベースすなわちプリフォーム84A、84Bを用いて形成される脛骨トレイは、ステム90A、90B及び2つのペグ92A、92B、96A、96Bを有する。したがって、本発明は特許請求の範囲において特に規定しないかぎり、いずれの特定の数又は形状の延長部分にも限定されない点は理解されるはずである。
【0049】
図9〜13に示される実施形態では、第1の例示的実施形態に対応する部材には同様の参照符合を使用し、図9〜12の第1の代替的実施形態では文字「A」を付し、図13の第2の代替的実施形態では文字「B」を付した。一般に、第1の例示的実施形態の説明は、相違点が図示されている部分以外はこれらの代替的実施形態にも当てはまるものである。
【0050】
図6〜8の実施形態のプリフォーム84と、図9〜11の実施形態のプリフォーム84Aとの比較から分かるように、多孔質のベースすなわちプリフォームはプリフォームの遠位面28、28Aを超えて遠位方向に延びる部分を有する必要はない。図9〜11のプリフォーム84Aから形成される脛骨トレイは、図12に示されるトレイ14Aに似ているように見えるが、この実施形態では、トレイ14Aの多孔質部分82Aは延長部分30A、32A、34A、36A、38A、40Aのいずれの部分も画定しておらず、代わりに多孔質部分82Aは脛骨トレイのプラットフォーム28Aの一部分のみを画定している。図12の実施形態の延長部分30A、32A、34A、36A、38A、40Aのそれぞれはその全長にわたって、脛骨トレイ14Aの中実ポリマー部分80Aの部分を含む。
【0051】
図12及び13のトレイ14A及び14Bの比較から分かるように、脛骨トレイの各延長部分はすべてが同じである必要はない。図13の実施形態では、トレイ14Bの中央ステム延長部分30Bは、トレイ14Bの多孔質部分82Bの一部である近位外面60Bを有し、遠位外面70Bはトレイ14Bのポリマー部分80Bの一部となっている。図13の他の延長部分92B及び96Bの各外面は、それらの露出した長さの全体にわたってトレイ14Bの中実ポリマー部分の一部となっている。
【0052】
例示的実施形態のそれぞれにおいて、各延長部分30、32、34、36、38、30A、32A、36A、30B、32B、36Bの少なくとも一部はトレイ14、14A、14Bの中実ポリマー部分80、80A、80Bによって画定されている。図5、12及び13の断面図に示されるように、中実ポリマー部分80、80A、80Bは、各孔90、92、94、96、98、90A、92A、96A、90B、92B、96Bの内面100、102、104、106、108、100A、102A、106A、100B、102B、106Bによって画定される空洞を通じて延び、各延長部30、32、34、36、38、30A、32A、36A、30B、32B、36Bの遠位外面40、42、44、46、48、40A、42A、46A、40B、42B、46Bにまで延びている。
【0053】
例示的脛骨トレイ14、14A、14Bの中実ポリマー部分80、80A、80Bは、繊維強化PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの強化された生体安定性及び生体適合性ポリマーを含むことができる。好適な材料の例としては、カーボンファイバー又はグラスファイバーで強化されたPEEKがある。市販のカーボンファイバー強化PEEK材料の1つとして、Invibio Inc.(West Conshohocken,Pennsylvania)及びInvibio Limited Corporation(Lancashire,United Kingdom)(www.invibio.com)より販売される「PEEK−OPTIMA(登録商標)」がある。インビビオ社により供給されるカーボン強化PEEKは、異なる濃度のカーボンファイバーのものが販売されており、Invibioは異なる濃度について異なる弾性率を報告している。すなわち、20重量%のカーボンファイバーでは15GPaの弾性率又は曲げ弾性率であり、30重量%のカーボンファイバーでは19GPaの弾性率又は曲げ弾性率であり、60重量%のカーボンファイバーでは50GPaの弾性率又は曲げ弾性率であるとしている。本発明は、特許請求の範囲において特に規定しないかぎり、この特定のPEEK材料に限定されず、ポリマー部分用のPEEK材料にも限定されない点は理解されるはずである。本発明の原理を適用するうえで有用な他のポリアリールアリールケトンポリマー、他の繊維強化生体適合性ポリマー材料、及び非強化生体適合性ポリマー材料が現在入手可能であるか、あるいは将来的に入手可能となることが予想される。更に、選択されたポリマーを強化するために他の繊維を使用することも可能であると予想される。例えば、本願にその全容を援用する米国特許出願公開第20080206297A1号に開示されるような、異なる体積比率のヒドロキシアパタイト(HA)ウィスカーによって生体適合性ポリマーを強化することができる。
【0054】
例示的な脛骨トレイ14、14A、14Bの多孔質部分82、82A、82Bは、ステンレス鋼、チタン、及び標準的なコバルトクロム/チタン合金などの一般的に使用されているいずれの生体安定性かつ生体適合性の金属を含んでもよく、多孔質の生体適合性ポリマーを含んでもよい。多孔質部分82、82A、82Bは、脛骨トレイの中実ポリマー部分80、80A、80Bが多孔質部分82、82A、82Bに型成形される際に、多孔質部分82、82A、82Bとポリマー部分80、80A、80Bとの間に中間結合層が形成されるようなサイズ、形状、及び数の小孔を有することが好ましい。こうした構造の一例が図14に示されている。図に示されるように、中実ポリマー部分80の材料をまったく含まない多孔質部分82と、多孔質部分82の材料をまったく含まない中実ポリマー部分80と、ポリマー部分80及び多孔質部分82の両方の材料を含む中間部分83とが存在している。中間部分83では、中実ポリマー部分80からのポリマー材料と、多孔質部分82からの骨格構造とが互いに入り込むことによって中実ポリマー部分80が多孔質部分82に機械的に結合されている。こうした同様の相互の入り込み構造は、図9〜13の実施形態においても同様に見られる。
【0055】
様々な種類の多孔質構造を例示的脛骨トレイ14、14A、14Bの多孔質部分82、82A、82Bに使用することができる。例えば、以下の米国特許出願に開示される発泡材などのチタン金属発泡材を使用することができる。すなわち、2007年2月21日出願の発明の名称が「Porous Metal Foam Structures And Methods」である米国特許出願公開第20080199720A1号(米国特許出願第11/677140号)、発明の名称が「Mixtures For Forming Porous Constructs」である米国特許出願公開第20100098574A1号(米国特許出願第12/540617号)、発明の名称が「Open Celled Metal Implants with Roughened Surfaces and Method for Roughening Open Celled Metal Implants」である米国特許出願公開第20090326674A1号(米国特許出願第12/487698号)、及び発明の名称が「Implants with Roughened Surfaces」である米国特許出願公開第20090292365A1号(米国特許出願第12/470397号)、上記の特許出願のすべての開示内容をその全容にわたって本願に援用するものである。代替的な材料が入手可能である。好適な代替材料の一例として、例えばその開示内容を本願に援用する発明の名称が「Open Cell Tantalum Structures for Cancellous Bone Implants and Cell and Tissue Receptors」である米国特許第5,282,861号、及び米国特許出願公開第20090192610号に開示されるタンタル多孔質金属がある。代替材料の別の例として、ステンレス鋼、コバルトクロム合金、チタン、チタン合金などの植え込み可能な金属で形成され、骨係合面及び脛骨トレイのポリマー部分と係合する表面の両方に多孔質コーティングが施された中実金属体がある。例示的脛骨トレイ14、14A、14Bの多孔質部分82、82A、82Bとして使用することが可能な多孔質コーティングのタイプの1つとして、DePuy Orthopaedics,Inc.(インディアナ州ワルシャワ)より販売されるPorocoat(登録商標)がある。好適な多孔質プリフォーム82、84A、84Bは、上記に引用した特許及び特許出願に述べられる方法のいずれを用いても、標準的な方法のいずれによっても製造することができる。
【0056】
多孔質の生体適合性ポリマーも入手可能である。例えば、米国特許出願公開第20080206297A1号は、ヒドロキシアパタイトの繊維又はウィスカーで強化されたPEEKなどの多孔質の生体適合性ポリマー材料及びこうした材料の製造方法について述べている。この公報をその全容にわたって本願に援用する。こうした多孔質の生体適合性ポリマーは、金属の代わりに例示的トレイ14、14A、14Bの多孔質部分82、82A、82Bに使用可能であることが予想される。
【0057】
当業者であれば、一体として型成形される際に中実ポリマー部分80、80A、80Bと機械的結合を形成するだけの充分な多孔度及び適当な機械的性質を有する表面を有するものであればいずれの生体適合性材料も脛骨トレイ14、14A、14Bの多孔質部分82、82A、82Bとして使用可能であることは認識されるであろう。
【0058】
当業者であれば、更なる材料を脛骨トレイ14、14A、14Bの多孔質部分82、82A、82B中に取り込むことが望ましい場合があることが更に認識されるであろう。例えば、骨内部成長を促進するため、ヒドロキシアパタイトのようなリン酸カルシウムを多孔質部分82、82A、82B上に、他の生物活性物質を共に用いるかあるいは用いずに、コーティング又は被覆することができる。
【0059】
脛骨トレイ14、14A、14Bの多孔質部分82、82A、82Bがポリマー材料で形成されている場合、トレイに更なる強化を与えることが望ましい場合がある。こうした更なる強化を与えるための1つの方法が図17〜22の実施形態に示されている。図17は、複合構造体に強化プレート200が追加されている点以外は図5と同様である。図17〜22に示される実施形態では、第1の例示的実施形態に対応する部材には同様の参照符合を使用し、文字「C」を付した。一般に、第1の例示的実施形態の説明は、相違点が図示されている部分以外はこれらの代替的実施形態にも当てはまるものである。更に、図17〜22に関して下記に述べる構造は、図9〜13に示した実施形態にも適用されうることは理解されるはずである。
【0060】
図17〜の実施形態における強化プレート200は、トレイ14Cの多孔質プリフォーム82Cと中実ポリマー部分80Cの所定部分の間に配置されている。図18〜19に示されるように、プレート200は脛骨トレイのプラットフォームとほぼ同じ形状の外形を有し、複数の孔又は貫通孔を含んでいる。大きな中央貫通孔201は、図20〜21に示される多孔質ポリマープリフォーム84Cの貫通孔90Cと対応するようなサイズ、形状、及び位置となっている。強化プレート200は、多孔質ポリマープリフォーム84Cの貫通孔92C、94C、96C、98Cにサイズ、形状、及び位置が対応した4つの他の貫通孔203、205、207、209を有している。図に示す強化プレート200は、多孔質ポリマープリフォームの上面86Cから上方に延出する4つの隆起した突起部219、221、223、225上に嵌まるようなサイズ、形状、及び位置に構成された4つの離間した貫通孔211、213、215、217を更に含んでいる。強化プレート200の図の縮尺は必ずしも正しくない点は理解されるはずである。プレート200の厚さは、材料とともに変化させることによって脛骨トレイ14Cの所望の性質を実現することができる。プレート200は、標準的なコバルトクロム合金、ステンレス鋼、又はチタン合金などの金属で形成することができる。また、プレート200は、例えば繊維強化PEEK材料などの生体適合性ポリマー又は本願で述べる他のポリマー材料のいずれかを含むこともできる。例えば上記に述べたように、カーボンファイバーで強化されたPEEKは、異なる濃度のものが入手可能であり、ある濃度のカーボンファイバーを有するPEEKで強化プレート200を形成し、別の濃度のカーボンファイバーを有するPEEKで中実ポリマー部分80Cを形成するように選択することができる。強化プレート200の材料及び寸法(厚さなど)を変えることによって脛骨トレイ14C全体について所望の有効剛性を与えることができる。
【0061】
脛骨トレイ14、14A、14B及び14Cの上記に述べた実施形態はいずれも例示的ベアリング16を支持するうえで適している。
【0062】
例示的実施形態におけるベアリング16はポリマー材料であるが、脛骨トレイのポリマー部分に使用されるものとは異なるポリマー材料を含む。ベアリングに適したポリマー材料としては、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)が挙げられる。UHMWPEは例えば架橋材料を含むものでよい。UHMWPEを架橋、急冷、又は調製するための方法については、多くの発行米国特許に述べられており、その例としてはSunらに付与された米国特許第5,728,748号(及びその相当物)、Merrillらに付与された米国特許第5,879,400号、Saumらに付与された米国特許第6,017,975号、Saumらに付与された米国特許第6,242,507号、Saumらに付与された米国特許第6,316,158号、Shenらに付与された米国特許第6,228,900号、McNultyらに付与された米国特許第6,245,276号、及びSaloveyらに付与された米国特許第6,281,264号がある。これらの米国特許のそれぞれの開示内容を本願にその全容にわたって援用するものである。ベアリング材料のUHMWPEは、ビタミンEのような酸化防止剤を添加するなど、含有されるフリーラジカルを安定化させるための処理を行うことができる。酸化防止剤によってUHMWPEを安定化させるための方法については、例えば発明の名称がいずれも「Oxidation−Resistant And Wear−Resistant Polyethylenes For Human Joint Replacements And Methods For Making Them」である米国特許出願公開第20070293647A1号(米国特許出願第11/805,867号)及び米国特許出願公開第20030212161A1号(米国特許出願10/258,762)に開示されており、これらの開示内容を本願にその全容にわたって援用するものである。本発明は、特に特許請求の範囲において規定しないかぎり、いずれの特定のUHMWPE材料にも限定されず、ベアリング16用のUHMWPE材料にも限定されないことは理解されるべきである。本発明の原理を適用するうえで有用なベアリング16用の他の材料が現在入手可能であるか、あるいは将来的に入手可能となることが予想される。
【0063】
図1〜3を再び参照すると、第1の例示的膝関節プロテーゼは固定ベアリング式プロテーゼである。すなわち、ベアリング16が相補的なロック機構によって脛骨トレイ14に固定されていることにより、これらの要素が組み立てられる際にベアリング16と脛骨トレイ14との間の相対運動が生じないか少なくとも最小に抑えられるようになっている。
【0064】
図2に示されるように、ベアリング16の遠位面19は外側台部134及び内側台部138を含んでいる。台部134、138には後部タブ140が画定されている。ベアリング16には所定の数の前部タブが更に画定されている。
【0065】
図1及び3に示されるように、ほぼY字形状の後部支持壁144が脛骨トレイ14の近位面26の一部を画定している。この後部支持壁144は、脛骨トレイ14のポリマー部分80に形成されている。本願で述べる第1の例示的実施形態では、後部支持壁144は、トレイのポリマー部分80の近位面26の外周後部の所定部分に沿って延びる2本のアーム146、148を有している。詳細には、後部支持壁144の外側アーム148がポリマー部分80の外側面上の後縁部150に沿って延びているのに対して、後部支持壁144の内側アーム146はポリマー部分80の内側面上の後縁部150に沿って外側アーム148から遠ざかる方向に延びている。後部支持壁144の第3のアーム152は、外側アーム148と内側アーム146との交点から遠ざかる方向に前方に延びている。
【0066】
図1に示されるように、後部支持壁144には2つのアンダーカット154、156が画定されている。詳細には、外側アンダーカット154が後部支持壁144の外側アーム148に画定され、内側アンダーカット156が後部支持壁144の内側アーム146に画定されている。
【0067】
やはり図1及び3に示されるように、ほぼT字形状の前部支持壁164が脛骨トレイ14の近位面26から上方に延びている。この前部支持壁164は脛骨トレイ14のポリマー部分80に形成されている。本願で述べる第1の例示的実施形態では、前部支持壁164は、トレイのポリマー部分80の近位面26の外周前部の所定部分に沿って延びる2本のアーム166、168を有している。詳細には、前部支持壁164の外側アーム166がポリマー部分80の外側面上の前縁部170に沿って延びているのに対して、前部支持壁164の内側アーム168はポリマー部分80の内側面上の前縁部170に沿って外側アーム166から遠ざかる方向に延びている。前部支持壁164の第3のアーム172は、外側アーム166と内側アーム168との交点から遠ざかる方向に後方に延びている。
【0068】
図3に示されるように、前部支持壁164には2つのアンダーカット174、176が画定されている。詳細には、外側アンダーカット174が前部支持壁164の外側アーム166に画定され、内側アンダーカット176が前部支持壁164の内側アーム168に画定されている。
【0069】
図1及び3の実施形態では、脛骨トレイ14の後部支持壁144はトレイの前部支持壁164と連続している。詳細には、後部支持壁144の第3のアーム152は前部支持壁164の第3のアーム172と連続している。しかしながら、後部支持壁同士が連続していない構成などの他の実施形態も考えられる。更に、2つの支持壁144、164は、本願では同様の高さのものとして述べられているが、各支持壁は異なる高さを有するものとして実施されてもよい。
【0070】
2つの支持壁144、164は、中実ポリマー部分80が多孔質部分82に型成形される際に、型成形プロセスの一部としてポリマー材料に型成形することができる。また、支持壁144、164は、中実ポリマー部分と多孔質部分とを一体に型成形した後、ポリマー部分80を機械加工することによって形成してもよい。アンダーカット154、156、174、176は、型成形、機械加工、又は他の適当なプロセスによってポリマー部分80に形成することができる。型成形と機械加工とのいくつかの組み合わせによって支持壁144、164及びアンダーカット154、156、174、176を形成することもできる。
【0071】
脛骨ベアリング16を脛骨トレイ14に固定するには、ベアリング16の各後部タブ140を脛骨トレイ14の後部アンダーカット154、156内に配置する。この後、脛骨ベアリング16の前部部分を脛骨トレイ14に向かって下方に押し進めることによって、脛骨ベアリング16の前部タブ142が前部支持壁164によって撓められた後、前部支持壁の前部アンダーカット174、176内にスナップ嵌めされ、これによりベアリング16がトレイ14に固定される。
【0072】
ベアリング16の前部部分がこのようにして下方に押し進められるにしたがって、脛骨トレイ14の支持壁144、164はベアリングの遠位面19の台部134、138の間に捕捉される。詳細には、図2に示されるように、ベアリング16の遠位面19には後部凹部178及び前部凹部が画定されている。後部凹部178は脛骨トレイ14の後部支持壁144の形状と相補的な形状に構成されている。すなわち、ベアリング16が脛骨トレイ14に固定される際、後部凹部178を画定する台部134、138の側壁が後部支持壁144の縁部と接触する。同様に、前部凹部180は脛骨トレイ14の前部支持壁164の形状と相補的な形状に構成されている。すなわち、ベアリング16が脛骨トレイ14に固定される際、前部凹部180を画定する台部134、138の側壁が前部支持壁164の縁部と接触する。凹部178、180及び支持壁144、164の寸法は、比較的緊密な嵌合が得られるように選択される。これにより、ベアリング16は脛骨トレイ14に対して固定される。詳細には、支持壁144、164及びベアリング16の遠位面19に形成された台部134、138の構成によって、脛骨トレイ14に対するベアリング16の前/後方向及び内側/外側方向の運動が防止される。更に、アンダーカット154、156内に配置される各後部タブ及びアンダーカット174、176内に配置される各前部タブ142によって、ベアリング16が脛骨トレイ14から持ち上がることが防止される。脛骨トレイ14の支持壁144、164がベアリング16の凹部178、180内に比較的緊密に嵌合することによって、(特に後部支持壁144の第3のアーム152及び/又は前部支持壁164の第3のアーム172に沿った)回転微小運動が完全に防止されるか、防止されないまでも低減される。
【0073】
固定ベアリング式膝関節プロテーゼの所定の構成は、通常、広範に異なるサイズ、特に広範に異なる幅で市販に供される。これは、集団にまたがった患者のサイズ及び解剖的構造の多くの変動に対応するために行われるものである。しかしながら、本開示の固定式膝関節プロテーゼ10の構成は、脛骨トレイ14及びベアリング16のサイズ選択に関して高い柔軟性を与えるものである。そのグループの他のトレイ14と異なるサイズ(例えば幅)を有する個々のトレイ14のそれぞれにおいて、後部支持壁144及び前部支持壁164の基本的構成は広範に異なるサイズのトレイ14間で同じに保たれる。詳細には、後部支持壁144に画定されたアンダーカット154、156の位置はそれぞれ、広範に異なるサイズのトレイ14間で同じに保たれる。後部アンダーカット154、156が広範に異なるサイズのトレイ14間で同じ位置に保たれているとしても、アーム146、148の幅は特定のトレイ14の全体の幅に合わせて変化させられる。同様に、前部支持壁164に画定されたアンダーカット174、176の位置はそれぞれ、広範に異なるサイズのトレイ14間で同じに保たれるが、アーム166、168の幅は特定のトレイ14の全体の幅に合わせて変化させられる。後部支持壁144及び前部支持壁164の第3のアーム152、172のサイズ及び構成もそれぞれ、広範に異なるサイズのトレイ14間で変化しない。
【0074】
異なるサイズのベアリング16を同様に構成することもできる。詳細には、複数のベアリング16を、こうした複数のベアリング16のそれぞれが異なるサイズ、特に異なる幅を有するように構成することができる。しかしながら、こうした異なるサイズのベアリング16はそれぞれ、上記に述べた脛骨トレイ14の共通のサイズ及び共通の位置を有する構造と共通のサイズ及び共通の位置を有する嵌合構造を含んでもよい。詳細には、広範に異なるサイズのベアリング間の各ベアリング16は、広範に異なるサイズのトレイ14間の各脛骨トレイ14の後部支持壁144及び前部支持壁164の縁部と緊密に嵌合するような位置及びサイズに構成された後部凹部178及び前部凹部180を含んでもよい。
【0075】
後部タブ140は広範に異なるサイズのベアリング16間で共通のサイズ及び共通の位置となるように構成されることにより、広範に異なるサイズのトレイ14間で各脛骨トレイ14の後部アンダーカット154、156内にそれぞれ配置される。同様に、前部タブ142は広範に異なるサイズのベアリング16間で共通のサイズ及び共通の位置となるように構成されることにより、広範に異なるサイズのトレイ14間で各脛骨トレイ14の前部アンダーカット174、176内にそれぞれ配置される。
【0076】
支持壁144、164の一般的構成(それらが連続した変形例を含む)は、広範に異なるサイズの脛骨トレイ14間で同じである点は上記の考察から認識されるべきである。同様に、凹部178、180の一般的構成(それらが連続した変形例を含む)及びタブ140、142の一般的構成は、広範に異なるサイズのベアリング16間で同じである。このため、多くの異なるサイズのベアリング16を特定の脛骨トレイ14に固定することができる。このことは、膝関節プロテーゼ10を特定の患者の解剖学的構造と一致させるうえで整形外科医に大きな柔軟性を与えるものである。
【0077】
後部支持壁144及び前部支持壁164の他の構成、並びにロック機構の他の構成も考えられる。固定ベアリングの用途のための脛骨トレイ及びベアリング用のロック機構の構成に関連した他の特許出願が本願の譲受人によって出願されている。例としては以下のものが挙げられる。すなわち、2007年9月28日に出願された発明の名称が「Fixed−Bearing Knee Prosthesis Having Interchangeable Components」と題される米国特許第7,628,818号、2007年9月25日出願の公開番号第20090082873A1号「Fixed−Bearing Knee Prosthesis」と題される米国特許出願第11/860,833号。これらの特許出願の開示内容はその全容にわたって本願に援用する。本発明の原理は、これらの特許出願に開示される脛骨トレイのいずれにも適用することができる。
【0078】
本発明の脛骨トレイ14、14A、14B、14Cを製造するには、上記に述べたような適当な方法のいずれかを用いて多孔質のベースすなわちプリフォーム84、84A、84B、84Cを先ず作製する。プリフォーム84、84A、84B、84Cを適当な成形装置に入れた後、中実ポリマー部分80、80A、80B、80C(繊維強化PEEKなど)の材料をプリフォーム上に型成形することができる。例えば射出成形を用いることができる。
【0079】
成形プロセスの間に、ポリマーの一部は多孔質のベースすなわちプリフォーム84、84A、84Bの近位面86、86A、86Bを覆うように流れ、プリフォームの孔90、92、94、96、98、90A、92A、94A、96A、98A、90B、92B、94B、96B、98B内に流れ込む。第1の例示的実施形態の場合では、ポリマーは各孔を通じて流れ、延長部分30、32、34、36、38の内面100、102、104、106、108によって画定される通路に流入し、延長部分の多孔質部分の遠位端において孔110、112、114、116、118から流出して延長部分30、32、34、36、38のポリマー遠位端40、42、44、46、48及び遠位外面70、72、74、76、78を形成する。第4の例示的実施形態の場合では、成形プロセスの間にポリマーは金属プレート200の上面を覆うように流れ、プレートの貫通孔201、203、205、207、209を通じて流れ、多孔質プリフォーム84Cの貫通孔90C、92C、94C、96C、98Cに流入し、延長部の多孔質部分の遠位端において各孔から流出して延長部分30C、32C、34C、34D、34Eのポリマー遠位端40C、42C、44C、46C、46D、46E及び遠位外面を形成する。下記により詳細に述べるように、成形プロセスの間にポリマーは更にプレート200の貫通孔211、213、215、217を通じて流れ、4つの隆起した突起部219、221、223、225の多孔質ポリマーの小孔中にも流れ込む。
【0080】
ポリマーと多孔質プリフォームとの界面に沿ってポリマーの一部がプリフォーム84、84A、84Bの小孔の一部に流入し、図14に概略的に示されるような構造を形成する。この構造ではポリマーと多孔質材料とが互いに入り込んでいる領域が形成されることによってポリマー部分80が多孔質のベースすなわちプリフォーム84と結合される。第4の実施形態の場合では、ポリマーは突起部219、221、223、225の小孔中に流入して図14に示されるように互いに入り込むことによって2つのポリマー部分80C、82Cをその間に強化プレート200が挟み込まれるようにして互いに結合する。図に示す4つの突起部219、221、223、225は、中実ポリマー部分80Cを多孔質ポリマー部分82Cに結合する方法の1つを代表したものであり、例えば2つのポリマー部分の相互の入り込みを可能とするような、異なる数、サイズ、及び形状のプレート200の領域を使用することもできる点は理解されるべきである。
【0081】
上記に述べたように、ロック機構(支持壁144及びアンダーカット154、156、174、176)を型成形及び/又は機械加工又は仕上げ加工することによって脛骨トレイ14、14A、14B、14Cの取付面26、26A、26B、26Cを形成することもできる。
【0082】
こうした脛骨トレイの製造コストは、全体が金属で形成された同様のサイズの脛骨トレイを製造するコストよりも低くなることが予想される。
【0083】
このようにして製造された複合脛骨トレイ14、14A、14B、14Cは有利な性質を有することが予想される。例えば、こうした脛骨トレイは、標準的な生体適合性金属合金のみから形成された同様のサイズ及び形状の脛骨トレイの有効剛性よりも低い有効剛性(多孔質部分82及びポリマー部分80の両方を含む複合構造体の剛性)を有するものと予想される。このような有効剛性を有することにより、本発明の脛骨トレイは下層骨への荷重伝達が最適となるため、応力遮蔽及びそれによる骨損失が最小に抑えられるかあるいは防止される。
【0084】
一般に、サイズの異なる複数のこうした脛骨トレイを、サイズの異なる大腿骨要素及びベアリングと一緒にキットに含める。外科医又は手術室のスタッフは適当なサイズの脛骨トレイ及びベアリングを選択し、これらを図15に示されるもののような構造に組み立てる。このアセンブリは、前処理された脛骨に脛骨トレイ14、14A、14B、14Cを植え込みする前又は後に作製することができる。このように組み立てられると、ベアリング16の遠位取付面19は脛骨トレイ14、14A、14B、14Cの近位取付面26、26A、26B、26Cに接触してこれを支承する。適当な大腿骨要素12を植え込み、図15に示されるようにベアリング16と関節接合させる。図に示す脛骨トレイ14、14A、14B、14Cは特にセメントレス植え込みに適している。
【0085】
植え込み後、脛骨トレイ14、14A、14B、14Cの多孔質部分82、82A、82B、82C内に骨が成長することが予想される。しかしながら骨は脛骨トレイ14、14A、14B、14Cの露出した中実ポリマー部分80、80A、80B、80C内に成長することはない。したがって、脛骨プラットフォーム24、24A、24B、24Cの遠位面28、28A、28B、28C内に骨の内部成長が起こることが予想される。更に第1の例示的実施形態では、脛骨プラットフォーム24の遠位面28に隣接する延長部30、32、34、36、38の近位外面60、62、64、66、68内にも骨内部成長が起こることが予想される。同様の結果が、図17に示される延長部分30C、32C、36Cの外面60C、62C、66C及び遠位面28Cについても予想される。近位外面60、62、64、66、68、60C、62C、66Cに沿った径方向の圧力は均一であると予想され、これによりステム及びペグ30、32、34、36、38、30C、32C、36C上ですべての方向に骨内部成長が刺激される。しかしながら、延長部分30、32、34、36、38、30C、32C、36Cの遠位端40、42、44、46、48、40C、42C、46Cにおいて遠位外面70、72、74、76、78、70C、72C、76Cの露出したポリマー部分内へと骨が成長することはない。したがって骨内部成長は、脛骨トレイの近位端で起きるが遠位端では起きない。更に例示的実施形態のそれぞれにおいて、トレイ14、14A、14B、14Cの多孔質部分82、82A、82B、82Cと骨との界面はすべて脛骨プラトーから容易にアクセスすることが可能である。
【0086】
中央ステム30、30A、30B、30Cは、脛骨トレイの持ち上がりに対する安定性を与えると予想される。中央ステム30、30A、30B、30Cを囲んだペグ32、34、36、38、32A、36A、32B、36B、32C、36Cは、特に骨内部成長が起こった後で応力及び近位方向への微小運動を低減するものと予想される。
【0087】
脛骨トレイ14、14A、14B、14Cを取り外すことが必要となった場合、外科医は脛骨トレイのプラットフォーム24、24A、24B、24Cの遠位面28、28A、28B、28Cに沿って切開することで患者の骨と脛骨トレイプラットフォーム24、24A、24B、24Cとの間の結合を切断することができる。脛骨トレイ14、14A、14B、14Cの多孔質部分82、82A、82B、82Cが金属又はポリマー発泡材などの材料で形成されている場合、外科医はすべての延長部分30、32、34、36、38、30A、32A、36A、30B、32B、36B、30C、32C、36Cを各延長部分と脛骨プラットフォーム24、24A、24B、24Cの遠位面28、28A、28B、28Cとの接合部において切断することによっても脛骨プラットフォーム24、24A、24B、24Cを容易に取り外すことができる。脛骨トレイ14、14A、14B、14Cが第1及び第4の例示的実施形態と同様のものである場合、外科医は各延長部分30、32、34、36、38、30C、32C、36Cの外周に沿って切開することで骨と延長部分30、32、34、36、38、30C、32C、36Cの多孔質の近位外面60、62、64、66、68、60C、62C、66Cとの結合部を切断することができる。次いで、各延長部分を容易に取り外すことができる。特に、各延長部分の遠位端では骨内部成長が起きないことから、切除を要する骨の量は、全体が多孔質のステム及びペグを使用したシステムと比較して大幅に少なくなるはずである。
【0088】
したがって、本発明はセメントレス固定に適したモジュール式の脛骨インプラント要素を有する膝関節プロテーゼを提供するものである。脛骨植え込み要素は修正手術において骨から容易に取り外せることから自然骨を温存することができる。本発明の脛骨インプラントの例示的実施形態は更に、従来の中実のチタン及びコバルトクロム合金製のトレイよりも低い弾性率を有するものである。
【0089】
本発明の原理が他の関節プロテーゼにも適用可能であることは認識されるであろう。そのような関節プロテーゼの一例を図16に示す。図16の関節プロテーゼは足関節プロテーゼである。図に示す足関節プロテーゼは、距骨要素212、複合遠位脛骨要素214及びベアリング216を含んでいる。図に示す実施形態では、複合遠位脛骨要素214は、膝関節プロテーゼ10について上記に述べたように互いに結合された遠位中実ポリマー部分220と近位多孔質部分222とを含んでいる。膝関節プロテーゼ10におけるのと同様、中実ポリマー部分220及びベアリングは相補的なロック機構(図示せず)を有する取付面を有することにより、ベアリング216を脛骨要素214に固定することができるようになっている。図に示す遠位脛骨要素214は、脛骨要素214の骨係合面226から近位方向に延びる近位延長部分224を有している。近位延長部分224が骨と係合するポリマー外面を提供してもよく、あるいは遠位部分228が多孔質材料を含み、かつ近位部分230が中実ポリマーを含んでもよい。
【0090】
例示的実施形態のそれぞれにおいて、骨にもインプラント要素の別の部分にも接触しないインプラント要素の表面が存在する。例えば図1、3、5、12、13及び17の実施形態において、脛骨トレイ14、14A、14B、14Cの外周面250、250A、250B、250Cは骨係合面28、28A、28B、28Cと近位取付面26、26A、26B、26Cとの間に延びている。軟部組織への刺激を避けるため、図1、3、5、12及び13におけるこの外周面250、250A及び250Bは脛骨トレイ14、14A、14Bの中実ポリマー部分80、80A、80Bの一部となっている。このため軟部組織は脛骨トレイ14、14A、14Bの多孔質部分82、82A、82Bとの接触によって刺激されることはない。図17の実施形態では、多孔質部分82Cの外側の寸法は中実ポリマー部分80Cと比較して小さくなっているため軟部組織との接触が防止される。基本的に多孔質部分82Cの相当の部分が中実ポリマー部分80Cのポケットの内部に嵌合している一方で、多孔質部分82Cの一部が突出することによって表面28Cが下層骨にしっかりと噛み合って下層骨に荷重を伝達するようになっている。
【0091】
以上、図面及び上記の説明文において本開示内容を詳細に図示、説明したが、こうした図示、説明はその性質上、例示的なものとみなすべきものであって、限定的なものとみなすべきものではなく、あくまで例示的実施形態を示し、説明したにすぎないのであって、本開示の趣旨の範囲に含まれる変更並びに改変はすべて保護されることが望ましい点は理解されよう。
【0092】
本開示には、ここに述べた装置、システム、及び方法の様々な特徴に基づく多くの利点がある。本開示の装置、システム、及び方法の代替的実施形態はここで述べた特徴のすべてを含むわけではないが、こうした特徴の利点の少なくとも一部から利するところがあるものである。当業者であれば、本発明の1以上の特徴を取り入れた、特許請求の範囲において定義される本開示の趣旨及び範囲に含まれる装置、システム、及び方法を独自に実施することが容易に可能である。
【0093】
〔実施の態様〕
(1) 関節面を有する第1の要素と、
前記第1の要素の前記関節面を支承するような形状の関節面と、反対側の表面とを有するベアリングと、
取付面と、骨係合面と、前記取付面の反対側の前記骨係合面から延出する延長部分とを有する複合要素と、を備えた関節プロテーゼであって、
前記ベアリングの前記反対側の表面と前記複合要素の前記取付面とは、前記ベアリングを前記複合要素に取り付けるための相補的なロック機構を有し、
前記延長部分は患者の骨内に植え込まれる際に前記複合要素を安定化させるように構成され、
前記延長部分は前記複合要素の前記取付面と反対側の端部を有し、
前記複合要素は多孔質部分と中実部分とを含み、
前記中実部分は前記複合要素の前記取付面及び前記延長部分の前記端部を画定し、
前記多孔質部分は前記複合要素の前記骨係合面を画定し、
前記中実部分はポリマーを含み、
前記中実部分と前記多孔質部分とは互いに結合されている、関節プロテーゼ。
(2) 前記プロテーゼが膝関節プロテーゼであり、
前記第1の要素が遠位大腿骨インプラント要素を含み、前記複合要素が脛骨トレイを含む、実施態様1に記載の関節プロテーゼ。
(3) 前記プロテーゼが足関節プロテーゼである、実施態様1に記載の関節プロテーゼ。
(4) 前記複合要素の前記中実部分がPEEKを含む、実施態様1に記載の関節プロテーゼ。
(5) 前記複合要素の前記中実部分が繊維強化PEEKを含む、実施態様4に記載の関節プロテーゼ。
(6) 前記複合要素の前記多孔質部分が金属発泡材を含む、実施態様1に記載の関節プロテーゼ。
(7) 前記金属発泡材がチタン発泡材を含む、実施態様1に記載の関節プロテーゼ。
(8) 前記複合要素の前記多孔質部分がポリマー発泡材を含む、実施態様1に記載の関節プロテーゼ。
(9) 前記複合要素の前記多孔質部分がPEEK発泡材を含む、実施態様8に記載の関節プロテーゼ。
(10) 前記複合要素の前記多孔質部分が繊維強化PEEK発泡材を含む、実施態様9に記載の関節プロテーゼ。
【0094】
(11) 前記複合要素が、前記取付面と前記骨係合面との間に配置される金属プレートを更に含む、実施態様8に記載の関節プロテーゼ。
(12) 前記金属プレートが切り抜き部を含み、ポリマーが前記金属プレートの前記切り抜き部を通じて延びる、実施態様11に記載の関節プロテーゼ。
(13) 前記切り抜き部が貫通孔を含み、前記金属プレートが複数の貫通孔を含み、前記ポリマーが前記貫通孔を通じて延びる、実施態様12に記載の関節プロテーゼ。
(14) 前記貫通孔を通じて延びる前記ポリマーがポリマー発泡材を含む、実施態様13に記載の関節プロテーゼ。
(15) 前記貫通孔を通じて延びる前記ポリマーが中実ポリマーを含む、実施態様14に記載の関節プロテーゼ。
(16) 関節面を有する第1の要素と、
前記第1の要素の前記関節面を支承するような形状の関節面と、反対側の表面とを有するベアリングと、
取付面と、骨係合面と、前記取付面の反対側の前記骨係合面から延出する延長部分とを有する複合要素と、を備えた関節プロテーゼであって、
前記ベアリングの前記反対側の表面と前記複合要素の前記取付面とは、前記ベアリングを前記複合要素に取り付けるための相補的なロック機構を有し、
前記延長部分は患者の骨内に植え込まれる際に前記複合要素を安定化させるように構成され、
前記複合要素は多孔質ポリマー部分と、中実ポリマー部分と、金属強化部分とを含み、
前記中実ポリマー部分は前記複合要素の前記取付面を画定し、
前記多孔質ポリマー部分は前記複合要素の前記骨係合面を画定し、
前記金属強化部分は前記取付面と前記骨係合面との間に配置され、前記取付面及び前記骨係合面と離間し、
前記中実ポリマー部分、多孔質ポリマー部分、及び金属強化部分は互いに結合されている、関節プロテーゼ。
(17) 前記金属強化部分が切り抜き部を有するプレートを含み、ポリマーが前記切り抜き部を通じて前記中実ポリマー部分から前記多孔質ポリマー部分へと延びる、実施態様16の関節プロテーゼ。
(18) 前記切り抜き部が貫通孔を含む、実施態様17に記載の関節プロテーゼ。
(19) 前記延長部分が、前記取付面を画定する前記中実ポリマー部分と一体形成された中実ポリマーを含む、実施態様18に記載の関節プロテーゼ。
(20) 前記貫通孔を通じて延びる前記ポリマーが多孔質ポリマーを含む、実施態様19に記載の関節プロテーゼ。
【0095】
(21) 前記中実ポリマー部分がPEEKを含む、実施態様16に記載の関節プロテーゼ。
(22) 前記中実ポリマー部分が繊維強化PEEKを含む、実施態様21に記載の関節プロテーゼ。
(23) 前記多孔質ポリマー部分がPEEKを含む、実施態様16に記載の関節プロテーゼ。
(24) 前記多孔質ポリマー部分が繊維強化PEEKを含む、実施態様23に記載の関節プロテーゼ。
(25) 前記中実ポリマー部分が繊維強化PEEKを含む、実施態様24に記載の関節プロテーゼ。
(26) 内側顆面と外側顆面とを有する大腿骨要素と、
遠位面と、(i)前記大腿骨要素の前記内側顆面と関節接合するように構成された内側支承面と(ii)前記大腿骨要素の前記外側顆面と関節接合するように構成された外側支承面とを含む近位面と、を有するベアリングと、
前記ベアリングに固定されるとともにプラットフォームを有する脛骨トレイであって、前記プラットフォームは、(i)近位面と、(ii)前記近位面の反対側の遠位面と、(iii)前記プラットフォームの前記遠位面から遠位端へと前記遠位面と交差する軸に沿って延びる延長部分とを有し、前記延長部分は軸方向の長さと外面とを有し、前記外面は、前記プラットフォームの前記遠位面に隣接する近位外面と、前記延長部の前記軸方向の長さの少なくとも一部にわたって前記遠位端から近位方向に延びる遠位外面とを含む、脛骨トレイと、を備えた膝関節プロテーゼであって、
前記脛骨トレイは中実ポリマー部分と多孔質部分とを含む複合体を含み、
前記脛骨トレイの前記中実ポリマー部分は前記プラットフォームの前記近位面を画定して前記ベアリングの前記遠位面を支承し、
前記中実ポリマー部分は前記プラットフォームの前記近位面から前記延長部分内へ延び、
前記中実ポリマー部分は前記延長部分の前記遠位外面を画定し、
前記中実ポリマー部分は前記脛骨トレイの前記多孔質部分に固定され、
前記脛骨トレイの前記多孔質部分は前記大腿骨要素よりも高い多孔度を有し、
前記脛骨トレイの前記多孔質部分は前記プラットフォームの前記遠位面を画定する、膝関節プロテーゼ。
(27) 前記多孔質部分が前記延長部分の前記近位外面を画定する、実施態様26に記載の膝関節プロテーゼ。
(28) 前記延長部分の前記遠位外面がほぼ回転楕円体状である、実施態様26に記載の膝関節プロテーゼ。
(29) 前記中実ポリマー部分がポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む、実施態様26に記載の膝関節プロテーゼ。
(30) 前記中実ポリマー部分が繊維強化PEEKを含む、実施態様29に記載の膝関節プロテーゼ。
【0096】
(31) 前記ベアリングが前記脛骨トレイの前記中実ポリマー部分とは異なるポリマー材料を含む、実施態様26に記載の膝関節プロテーゼ。
(32) 前記ベアリングがUHMWPEを含み、前記脛骨トレイの前記中実ポリマー部分が繊維強化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む、実施態様31に記載の膝関節プロテーゼ。
(33) 前記延長部分がステムを含む、実施態様26に記載の膝関節プロテーゼ。
(34) 前記延長部分がペグを含む、実施態様26に記載の膝関節プロテーゼ。
(35) 前記脛骨トレイが複数の互いに離間したペグを含み、
各ペグは、前記プラットフォームの前記遠位面から遠位端へと前記遠位面と交差する軸に沿って延び、
各ペグは軸方向の長さと外面とを有し、前記外面は、前記プラットフォームの前記遠位面に隣接する近位外面と、前記延長部分の前記軸と交差し、前記プラットフォームから離間した遠位外面とを含み、
前記中実ポリマー部分は前記プラットフォームの前記近位面から各ペグ内へ延び、
前記中実ポリマー部分は各ペグの前記遠位外面を画定し、
前記多孔質部分は前記プラットフォームの前記遠位面から遠位方向に延びて各ペグの前記近位外面を画定する、実施態様34に記載の膝関節プロテーゼ。
(36) 前記プロテーゼが固定ベアリング式プロテーゼであり、
前記ベアリングの前記遠位面及び前記脛骨トレイのプラットフォームの前記近位面が相補的なロック機構を含む、実施態様26に記載の膝関節プロテーゼ。
(37) 前記脛骨トレイプラットフォームの前記近位面の前記ロック機構が前記脛骨トレイプラットフォームの前記ポリマー部分に形成される、実施態様36に記載の膝関節プロテーゼ。
(38) (i)近位骨係合面と、(ii)遠位取付面と、(iii)前記近位骨係合面から近位端へと前記近位面と交差する軸に沿って延びる延長部分と、を有する遠位脛骨要素であって、前記延長部分は軸方向の長さと外面とを有し、前記外面は、前記遠位脛骨要素の前記近位骨係合面に隣接する遠位外面と、前記延長部分の前記軸方向の長さの少なくとも一部にわたって前記近位端から近位方向に延びる近位外面とを含む、遠位脛骨要素と、
関節面と取付面とを有するベアリングと、
関節面と骨係合面とを有する距骨要素と、を備えた足関節プロテーゼであって、
前記遠位脛骨要素は中実ポリマー部分と多孔質部分とを含む複合体を含み、
前記遠位脛骨要素の前記中実ポリマー部分は前記延長部分の前記近位端及び前記遠位脛骨要素の前記取付面を画定して前記ベアリングの前記取付面を支承し、
前記遠位脛骨要素の前記中実ポリマー部分は前記脛骨要素の前記多孔質部分に固定され、
前記脛骨要素の前記多孔質部分は前記脛骨要素の前記近位骨係合面及び前記延長部分の前記近位外面を画定する、足関節プロテーゼ。
(39) 前記多孔質部分が前記延長部分の前記遠位外面を画定する、実施態様38に記載の足関節プロテーゼ。
(40) 前記中実ポリマー部分がポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む、実施態様38に記載の足関節プロテーゼ。
【0097】
(41) 前記中実ポリマー部分が繊維強化PEEKを含む、実施態様40に記載の足関節プロテーゼ。
(42) 前記ベアリングが前記遠位脛骨要素の前記中実ポリマー部分とは異なるポリマー材料を含む、実施態様38に記載の足関節プロテーゼ。
(43) 前記ベアリングがUHMWPEを含み、前記遠位脛骨要素の前記中実ポリマー部分が繊維強化PEEKを含む、実施態様42に記載の足関節プロテーゼ。
(44) 膝関節プロテーゼの脛骨トレイ要素を製造するための方法であって、
近位面と、遠位面と、前記近位面から遠位端へと遠位方向に延びる延長部分とを有する多孔質ベースを提供する工程であって、前記延長部分は前記遠位端に開口部を有し、前記多孔質ベースは前記近位面から前記延長部分の前記遠位端の前記開口部に延びる内面を有する、工程と、
ある量の繊維強化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料を提供する工程と、
前記繊維強化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料が前記多孔質ベースの前記近位面を覆うように、また、前記繊維強化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料が前記多孔質ベースの前記内面に型成形され、前記延長部分の前記遠位端の前記開口部から遠位方向に延出するように、前記繊維強化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料を前記多孔質ベースに型成形する工程と、を含む、方法。
(45) 前記繊維強化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料を前記多孔質ベースに型成形する前記工程が、射出成形を含む、実施態様44に記載の方法。
(46) 前記繊維強化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料を前記多孔質ベースに型成形する前記工程が、前記多孔質ベースの前記近位面に型成形された前記ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料にロック機構を形成することを含む、実施態様45に記載の方法。
(47) 前記多孔質ベースが金属発泡材を含む、実施態様44に記載の方法。
(48) 前記多孔質ベースがチタン発泡材を含む、実施態様47に記載の方法。
(49) 前記多孔質ベースがポリマー発泡材を含む、実施態様44に記載の方法。
(50) 前記ポリマー発泡材がPEEKを含む、実施態様49に記載の方法。
【0098】
(51) 前記ポリマー発泡材が繊維強化PEEKを含む、実施態様50に記載の方法。
(52) 前記繊維強化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料を前記多孔質ベースに型成形する前に前記多孔質ベース上に強化プレートを置く工程を更に含み、前記繊維強化PEEK材料を前記多孔質ベースに型成形する前記工程が前記金属プレートを前記ベース上に保持する、実施態様49に記載の方法。
(I) 関節面(18、20)を有する大腿骨要素(12)と、
前記大腿骨要素の前記関節面を支承するような形状の関節面(17)と、反対側の表面(19)とを有するベアリング(16)と、
前記ベアリングのための取付面(26)と、骨係合面(28)と、前記取付面の反対側の前記骨係合面から延出する延長部分(30、32、34、36、38)とを有する複合脛骨トレイ要素(14)と、を備えた膝関節プロテーゼであって、
前記ベアリングの前記反対側の表面と前記複合脛骨トレイ要素の前記取付面とは、前記ベアリングを前記複合要素に取り付けるための相補的なロック機構(140、142、154、156、174、176)を有し、
前記延長部分は患者の骨内に植え込まれる際に前記複合脛骨トレイ要素を安定化させるように構成され、
前記延長部分は前記複合脛骨トレイ要素の前記取付面と反対側の端部(40、42、44、46、48)を有し、
前記複合脛骨トレイ要素は、多孔質部分(82)と、ポリエーテルエーテルケトンを含む中実部分(80)とを含み、
前記中実部分(80)は前記複合脛骨トレイ要素の前記取付面(26)及び前記延長部分(30、32、34、36、38)の前記端部を画定し、
前記多孔質部分(82)は前記複合脛骨トレイ要素の前記骨係合面(28)を画定し、
前記複合脛骨トレイ要素の前記中実部分と前記多孔質部分とは、前記多孔質部分上に前記中実部分のポリマーを型成形することにより、互いに結合されていることを特徴とする、膝関節プロテーゼ。
(II) 前記複合脛骨トレイ要素(14)の前記中実部分(80)の前記ポリ(エーテルエーテルケトン)が、繊維強化されている、実施態様(I)に記載の膝関節プロテーゼ。
(III) 前記複合脛骨トレイ要素(14)の前記多孔質部分(82)が金属発泡材を含む、実施態様(I)に記載の膝関節プロテーゼ。
(IV) 前記金属発泡材がチタン発泡材を含む、実施態様(III)に記載の膝関節プロテーゼ。
(V) 前記複合脛骨トレイ要素(14)の前記多孔質部分(82)がポリマー発泡材を含む、実施態様(I)に記載の膝関節プロテーゼ。
(VI) 前記複合脛骨トレイ要素(14)の前記多孔質部分(82)がポリ(エーテルエーテルケトン)発泡材を含む、実施態様(V)に記載の膝関節プロテーゼ。
(VII) 前記ポリ(エーテルエーテルケトン)発泡材が繊維強化されている、実施態様(VI)に記載の膝関節プロテーゼ。
(VIII) 前記複合脛骨トレイ要素(14)が、前記取付面(26)と前記骨係合面(28)との間に配置される金属プレート(200)を含む、実施態様(V)に記載の膝関節プロテーゼ。
(IX) 前記金属プレート(200)が切り抜き部(201、203、205、207、209)を含み、前記ポリマーが前記金属プレートの前記切り抜き部を通じて延びる、実施態様(VIII)に記載の膝関節プロテーゼ。
(X) 前記切り抜き部が貫通孔を含み、前記金属プレートが複数の貫通孔(201、203、205、207、209)を含み、前記ポリマーが前記貫通孔を通じて延びる、実施態様(IX)に記載の膝関節プロテーゼ。
(XI) 前記貫通孔(201、203、205、207、209)を通じて延びる前記ポリマーがポリマー発泡材を含む、実施態様(X)に記載の膝関節プロテーゼ。
(XII) 前記貫通孔(201、203、205、207、209)を通じて延びる前記ポリマーが中実ポリマーを含む、実施態様(XI)に記載の膝関節プロテーゼ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22