特許第5752404号(P5752404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752404
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/60 20060101AFI20150702BHJP
   B29K 105/12 20060101ALN20150702BHJP
【FI】
   B29C45/60
   B29K105:12
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-282630(P2010-282630)
(22)【出願日】2010年12月20日
(65)【公開番号】特開2012-131042(P2012-131042A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2013年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】100091694
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 守
(72)【発明者】
【氏名】井上 玲
(72)【発明者】
【氏名】澤田 靖丈
(72)【発明者】
【氏名】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】田口 浩史
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−083307(JP,A)
【文献】 特開昭58−092545(JP,A)
【文献】 特開平11−034131(JP,A)
【文献】 特開2007−130868(JP,A)
【文献】 特開2007−153993(JP,A)
【文献】 特開平10−000665(JP,A)
【文献】 森田一也 外4名,ガラス繊維強化ポリプロピレンの射出成形における繊維長および分散性に関する研究,成形加工シンポジア’10,社団法人プラスチック成形加工学会,2010年11月 5日,p.125-126
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/60
B29K 105/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダの先端に装着した射出ノズルから型閉された金型のキャビティに熱可塑性樹脂と強化用繊維とからなる繊維強化熱可塑性樹脂を射出する射出成形機であって、
前記加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転可能に設けられた可変ピッチダルメージスクリューとを備え、
前記可変ピッチダルメージスクリューには、供給口から供給されてきた前記繊維強化熱可塑性樹脂を前記射出ノズル側へ移送させながら溶融・混練する圧縮部と、該圧縮部から搬送されてきた前記溶融・混練された繊維強化熱可塑性樹脂の計量が行われる計量部とを備え、
前記圧縮部に形成したフライトのピッチは、前記射出ノズル側に向かうにつれて徐々に狭くなるように形成し、
前記計量部と前記圧縮部の間には、前記可変ピッチダルメージスクリューの直径の1から2倍の長さの範囲内で前記強化用繊維を分散させるダルメージ部を形成したことを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記強化用繊維は、竹、ジュート、又は麻のうち何れか1つ、或いは、竹、ジュート、麻のうち少なくとも何れか1つを含む天然繊維であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型閉された金型のキャビティに加熱シリンダで溶融された樹脂を射出する射出成形機に関し、特に熱可塑性樹脂に強化用繊維を混合した材料を用いて成形体の製造を行う射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から用いられている一般的な射出成形機においては、加熱シリンダ内に原料である粒状の熱可塑性樹脂を送り、加熱シリンダ内に設けられたスクリューの回転により樹脂を溶融しながらスクリュー先端のノズル側に送り出し、スクリューを前進させることで該スクリューの先端側に設けた射出ノズルから型閉された金型のキャビティに溶融樹脂を射出させ、キャビティ内で溶融樹脂を冷却させ固化させた後、金型を開き、突出しピンなどにより金型内側面に張り付いている成形体を取り出すことにより、成形体の製造が行われている。
【0003】
ところで近年においては、成形体の高強度を達成するために、成形体の材料として、熱可塑性樹脂のみではなく、熱可塑性樹脂にガラス繊維を混合したガラス繊維強化プラスチック(GFRP)や、熱可塑性樹脂に炭素繊維を混合した炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の複合材料からなる成形体を製造する技術が広く普及しつつあり、こうした従来技術に関連するものとして特許文献1には、熱可塑性樹脂と強化用繊維とを混合させた繊維強化熱可塑性樹脂(ペレット)を、加熱されたシリンダ内でスクリューの回転により混練した後、金型のキャビティへ射出充填して繊維強化熱可塑性樹脂の成形体を製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3755293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したガラス繊維強化プラスチックからなる成形体が不要となり焼却処分する場合には、焼却炉が傷んでしまうことから焼却処理は実質困難であるとする現状があり、他方、炭素繊維強化プラスチックの成形体を製造する場合には、炭素繊維を得るに際し化石燃料を使用するため、資源の枯渇につながるという問題があることから、近年においては、熱可塑性樹脂に対して混合される強化繊維として、天然繊維を採用することが注目されつつあるのだが、射出成形機の加熱シリンダ内で回転可能に設けられたスクリューの回転により、熱可塑性樹脂と強化用天然繊維を混合したペレット(天然繊維強化熱可塑性樹脂)の溶融、混練を行う場合において、例えば強化用天然繊維として、竹繊維等の比較的破断し易い材料を採用するとなると、スクリューの回転に伴い、比較的強度の低い竹繊維においては、簡単に折れるなどして残存繊維長が短くなるという問題がある。そこで、特許文献1のように、例えば、強化用繊維の破断の原因となる剪断力を低減するために、計量部Smのスクリューの溝深さHmを浅くしたスクリューを用いて、天然繊維強化熱可塑性樹脂の混練を行うとなると、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維とは相違する天然繊維は、樹脂の溶融に伴う繊維の解繊が難しいため、熱可塑性樹脂に対する天然繊維の混練分散性が悪く、所定強度の成形体を得られないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、金型のキャビティへ射出充填される繊維強化熱可塑性樹脂に含まれた強化用繊維の破断を抑制すると共に分散性を高め、所定強度の成形体を得ることが可能な射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項に係る射出成形機の発明は、
加熱シリンダの先端に装着した射出ノズルから型閉された金型のキャビティに熱可塑性樹脂と強化用繊維とからなる繊維強化熱可塑性樹脂を射出する射出成形機であって、
前記加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転可能に設けられた可変ピッチダルメージスクリューとを備え、
前記可変ピッチダルメージスクリューには、供給口から供給されてきた前記繊維強化熱可塑性樹脂を前記射出ノズル側へ移送させながら溶融・混練する圧縮部と、該圧縮部から搬送されてきた前記溶融・混練された繊維強化熱可塑性樹脂の計量が行われる計量部とを備え、
前記圧縮部に形成したフライトのピッチは、前記射出ノズル側に向かうにつれて徐々に狭くなるように形成し、
前記計量部と前記圧縮部の間には、前記可変ピッチダルメージスクリューの直径の1から2倍の長さの範囲内で前記強化用繊維を分散させるダルメージ部を形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項に係る射出成形機の発明は、請求項1において、
前記強化用繊維は、竹、ジュート、又は麻のうち何れか1つ、或いは、竹、ジュート、麻のうち少なくとも何れか1つを含む天然繊維であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可変ピッチダルメージスクリューの計量部と圧縮部の間にダルメージ部を形成したことで、射出ノズルを介して金型のキャビティに射出充填される直前に、加熱シリンダ内で溶融・混練された繊維強化熱可塑性樹脂のうち、強化用繊維の解繊作用を大きくできるため繊維分散性が良好となる。よって、強化用繊維の分散性を向上することで所定強度の成形体を得ることができる。
【0010】
さらに、可変ピッチダルメージスクリューには、計量部と圧縮部の間にダルメージ部を形成したことにより、強化用天然繊維の分散を効果的に行うことができる一方で、比較的折れたり破断し易い強度の弱い強化用天然繊維(竹、ジュート、麻等の天然繊維)であったとしても、所定寸法よりも短くならぬよう抑制することができる。従って、強化用天然繊維の残存繊維長が短くならぬように抑制すること、及び熱可塑性樹脂に対する強化用天然繊維の混練分散性の両立を図ることができ、所定強度の成形体を得ることができる。
【0011】
さらに、可変ピッチダルメージスクリューのダルメージ部は、射出ノズルから離れた圧縮部ではなく、射出ノズルに近い計量部と圧縮部の間に形成したことにより、可変ピッチダルメージスクリューの回転に伴い圧縮部で強化用繊維が絡みあったとしても、ダルメージ部で絡み合った強化用繊維をほどいて分散させ、分散された強化用繊維を含む繊維強化熱可塑性樹脂を、射出ノズルを介して金型のキャビティに射出充填することができるから、より確実に所定強度の成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一例の射出成形機を示す概略構成図である。
図2】射出成形機の加熱シリンダ内に回転可能に設けられる可変ピッチダルメージスクリューを示す概略側面図である。
図3】各種スクリューの概略構成を示す説明図であり、図3(a)は標準スクリュー、図3(b)はダルメージスクリュー、図3(c)は可変ピッチスクリューを示す。
図4図4(a)は本実施形態の可変ピッチダルメージスクリュー、図4(b)は標準スクリュー、図4(c)はダルメージスクリュー、図4(d)は可変ピッチスクリューに対応するグラフであり、各スクリューを適用し回転駆動させたときの平均剪断応力を横軸に示し、縦軸に頻度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図1図4により以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施形態において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【0014】
図1に示す本発明の一例の射出成形機1は、熱可塑性樹脂と多数の強化用天然繊維たる竹繊維とからなる粒状の天然繊維強化熱可塑性樹脂としてのペレットを原料として成形体を製造するものであり、射出成形機1には機台2を備え、機台2上には、射出ユニット3、型締ユニット4が配設されている。
【0015】
型締ユニット4には、固定金型5に対し可動金型6を前進後退させ型締(型閉)及び型開を行う型開閉機構を備えており、本実施形態における型開閉機構としては、モータの駆動力を駆動源としてトグルリンク機構7を屈曲作動することで、固定ダイプレート8に固定された固定金型5に対して可動ダイプレート9に固定された可動金型6を繰り返し型開閉する。
【0016】
また、射出ユニット3には、筒型の加熱シリンダ10、加熱シリンダ10の先端に設けた射出ノズル11、加熱シリンダ10の内部に設けられた可変ピッチダルメージスクリュー12、可変ピッチダルメージスクリュー12を回転自在に支持する支持部材13、天然繊維強化熱可塑性樹脂のペレットが投入されるホッパ14、ホッパ14が設けられたホッパブロック15等が構成されており、加熱シリンダ10の内部に設けられた可変ピッチダルメージスクリュー12が回転されると、加熱シリンダ10の後部側へ供給口16から供給された天然繊維強化熱可塑性樹脂は、射出ノズル11の設けられた加熱シリンダ10の先端側へ送り出されるようになっており、加熱シリンダ10内に供給されて、この加熱シリンダ10内で加熱溶融された天然繊維強化熱可塑性樹脂は、図示しない、計量用モータ等からなる回転駆動手段により可変ピッチダルメージスクリュー12が回転されることで後述する計量部22にて計量された後、図示しない、射出用モータ、ボールネジ機構等からなる進退駆動手段により可変ピッチダルメージスクリュー12が前進されることで金型の型閉されたキャビティへ所定量の溶融された天然繊維強化熱可塑性樹脂が射出される。なお、加熱シリンダ10の外側には、図1に示すように加熱ヒータ17が設けられており、加熱ヒータ17が高温に加熱されることで、加熱シリンダ10の内部に供給されたペレットは溶融される。
【0017】
ここで、加熱シリンダ10内に供給される天然繊維強化熱可塑性樹脂の混練・移送等を行う可変ピッチダルメージスクリュー12について図2によりさらに説明する。
【0018】
可変ピッチダルメージスクリュー12は、図2では、左側が先端、右側が後端であり、後端側には、供給口16から供給されてきた天然繊維強化熱可塑性樹脂を射出ノズル11側へ移送させながら溶融・混練する圧縮部20、先端側(射出ノズル側)には、圧縮部20から搬送されてきた溶融・混練された天然繊維強化熱可塑性樹脂の計量を行う計量部22が構成されている。
【0019】
また、図2で概略的に示したように、可変ピッチダルメージスクリュー12の計量部22と圧縮部20との間には、スクリュー直径Dの1から2倍の長さの範囲内でダルメージ部21が形成されている。また、圧縮部20に形成したフライトのピッチは、射出ノズル11側に向かうにつれて徐々に狭くなるように形成されている。
【0020】
また、可変ピッチダルメージスクリュー12の本体(軸部)は、全体に亘って同半径の円柱状に形成されていることから、圧縮部20、及び計量部22の各々に対応するスクリュー本体の外周と、フライト23の外周との間隙部、すなわちスクリュー溝深さの寸法H1、H2は、同寸法の関係を有しており、また、スクリューの直径をDmmとすると、圧縮部の長さ寸法は16.325Dmm、計量部22の長さ寸法は2Dmm、可変ピッチダルメージスクリュー12の長さ寸法Lは20Dmmであり、該長さ方向と同方向のダルメージ部21の長さ寸法L1は、スクリュー直径Dの寸法に対して、1Dから2Dの範囲の長さとして短く形成しており、本実施形態のダルメージ部21の長さ寸法は、1.675Dmmとしている。
【0021】
ここで、本実施形態の可変ピッチダルメージスクリュー12とは形態が相違する各種スクリューについて図3によりさらに説明する。
【0022】
図3(a)は標準スクリュー102を示し、図3(b)はダルメージスクリュー202を示し、図3(c)は可変ピッチスクリュー302を示している。図3における各スクリュー102,202,302は、図2と同様、左側が先端、右側が後端となっており、図3(a)、(b)では、後端側から先端側の順に、供給口16から供給されてきた天然繊維強化熱可塑性樹脂を射出ノズル11側へ移送する供給部24、この供給部24から搬送されてきた天然繊維強化熱可塑性樹脂を射出ノズル11側へさらに移送させながら溶融・混練する圧縮部20、この圧縮部20から搬送されてきた溶融・混練された天然繊維強化熱可塑性樹脂の計量を行う計量部22が構成されている。
【0023】
図3(a)の一般的な標準スクリュー102は、フライト23のピッチが全て等間隔に形成され、圧縮部21は、後方よりも前方が径大なテーパー状に形成されたものである。
【0024】
また、図3(b)におけるダルメージスクリュー202は、計量部22と圧縮部20の間に、ダルメージ部21が形成されており、ダルメージ部21を除くフライト23のピッチは全て等間隔に形成されたものである。
【0025】
また、図3(c)における可変ピッチスクリュー302は、圧縮部20からなり、フライト23のピッチを後端側から先端側に向かって徐々に狭くしたものであり、可変ピッチスクリュー302の本体(軸部)は全体に亘って同半径の円柱状に形成されたものであるが、ダルメージ部は有していないものである。
【0026】
ここで、本実施形態の可変ピッチダルメージスクリュー12のほか、各種スクリュー(標準スクリュー102,ダルメージスクリュー202,可変ピッチスクリュー302)を前記加熱シリンダ10内に設け、射出成形機1を稼動して計量工程後に強化用天然繊維としての竹繊維を取り出し、竹繊維の状態について実験を行った結果を下記表1に示す。(なお、ペレットに含まれていた当初の竹繊維は、繊維長:8mm,繊維径:0.15mmのものを採用。)
【0027】
【表1】
※上記「フラクタル値」は、繊維分散性を定量化した値であり、フラクタル値が大きいほど、分散性が良好であると判断できる。
【0028】
表1に示す実験結果よれば、当初の竹繊維は、繊維長が8mm、繊維径が約0.15mmであったが、計量工程後に取り出し測定したときには、可変ピッチスクリュー302を採用した場合が、当初の竹繊維の原型寸法に最も近いことから好ましく、次に、本実施形態の可変ピッチダルメージスクリュー12、標準スクリュー102、ダルメージスクリュー202の順であるとの結果が得られた。本実施形態の可変ピッチダルメージスクリュー12の値は、可変ピッチスクリュー302よりも若干劣るものの2番目に好ましいとする結果である。
【0029】
また、竹繊維の分散性の観点からすると、フラクタル値から明らかなように、ダルメージスクリュー202が最も好ましく、次に、本実施形態の可変ピッチダルメージスクリュー12、標準スクリュー102、可変ピッチスクリュー302の順であるとの結果が得られた。本実施形態の可変ピッチダルメージスクリュー12の値は、ダルメージスクリュー202よりも僅かに劣るものの2番目に好ましいとする結果である。
【0030】
そして、以上の実験結果から、天然繊維の含まれたペレットを原料として所定強度の成形体を製造するには、竹繊維の残存繊維長が短くならぬよう抑制できることと、繊維分散性の良いことを兼ね備えた、本実施形態の可変ピッチダルメージスクリュー12を採用することが最も好適であるとの結論を見出した。
【0031】
また、さらに説明すると、図4の竹繊維に係るグラフにおいて、図4(a)は本実施形態の可変ピッチダルメージスクリュー12、図4(b)は標準スクリュー102、図4(c)はダルメージスクリュー202、図4(d)は可変ピッチスクリュー302を適用した場合を示すものであり、縦軸には頻度(%)を示し、横軸には平均剪断応力を示し、平均剪断応力が小さい横軸の左側寄りでは、竹繊維の残存繊維長が長く且つ分散性が悪い場合を表し、平均剪断応力が大きい横軸の右側寄りでは、竹繊維の残存繊維長が短く且つ分散性が良好の場合を表している。
【0032】
図4のグラフによれば、(b)の標準スクリュー102及び(c)のダルメージスクリュー202を適用した場合においては、横軸の中心から左側にかけて分布が集中しており、竹繊維の残存繊維長を長く残存させることが困難なため、分散性を考慮するまでもなく、所定強度の成形体を製造するには適していない。また、(a)の可変ピッチダルメージスクリュー12及び(d)の可変ピッチスクリュー302を適用した場合では、左側に分布が存在していることから、竹繊維の残存繊維長を長い状態で残存させることができるが、(d)の可変ピッチスクリュー302においては、横軸の右側寄りにも分布が存在していることから、残存繊維長の短い竹繊維が発生することが把握でき、強度の高い成形体を製造するには適していない。また、(c)〜(d)のグラフに対し、(a)の可変ピッチダルメージスクリュー12を適用した場合のグラフは、横軸のほぼ中心よりも左側寄りに全ての分布が存在することから、竹繊維の残存繊維長の観点からすると、残存繊維長が短くならないよう抑制できることが把握でき、また、分散性の観点からすると、過半数以上を横軸のほぼ中央に集約させることができるため、竹繊維の残存繊維長が短くならないよう抑制しつつ、竹繊維の分散を実現することができるということを把握することができる。
【0033】
以上のように本実施形態の射出成形機1によれば、加熱シリンダ10の先端に装着した射出ノズル11から型閉された金型のキャビティに熱可塑性樹脂と竹繊維等の強化用天然繊維とからなる天然繊維強化熱可塑性樹脂を射出する射出成形機1であって、加熱シリンダ10と、加熱シリンダ10内に回転可能に設けられた可変ピッチダルメージスクリュー12とを備え、この可変ピッチダルメージスクリュー12には、供給口16から供給されてきた天然繊維強化熱可塑性樹脂を射出ノズル11側へ移送させながら溶融・混練する圧縮部20と、この圧縮部20から搬送されてきた溶融・混練された天然繊維強化熱可塑性樹脂の計量が行われる計量部22とを備え、この計量部22と圧縮部20の間には、可変ピッチダルメージスクリュー12のスクリュー直径Dの1から2倍の長さの範囲内で強化用天然繊維を分散させるダルメージ部21を形成したものである。そして、可変ピッチダルメージスクリュー12の射出ノズル11側に近い計量部22と圧縮部20との間にダルメージ部21を形成したことで、射出ノズル11を介して金型のキャビティに射出充填される前に、加熱シリンダ10内で溶融・混練された天然繊維強化熱可塑性樹脂のうち、強化用天然繊維が束状にならぬよう分散することができる。よって、強化用天然繊維の分散性を向上することで所定強度の成形体を得ることができる。
【0034】
さらに、可変ピッチダルメージスクリュー12には、スクリュー直径Dの1から2倍の長さの範囲内にのみダルメージ部21を形成したことから、強化用天然繊維の分散を効果的に行うことができる一方で、比較的折れたり破断し易い強度の弱い強化用天然繊維(竹やジュート、麻等の天然繊維)であったとしても、所定寸法よりも短くならぬよう抑制することができる。従って、強化用天然繊維の残存繊維長が短くならぬように抑制すること、及び熱可塑性樹脂に対する強化用天然繊維の混練分散性の両立を図ることができ、所定強度の成形体を得ることができる。
【0035】
さらに、可変ピッチダルメージスクリュー12のダルメージ部21は、射出ノズル11から離れた圧縮部20ではなく、これより射出ノズル11に近い計量部22と圧縮部20の間に形成したことにより、可変ピッチダルメージスクリュー12の回転に伴い圧縮部20で強化用天然繊維が絡みあったとしても、計量部22と圧縮部20の間のダルメージ部21で絡み合った強化用天然繊維をほどいて分散させ、分散された強化用天然繊維を含む天然繊維強化熱可塑性樹脂を、射出ノズル11を介して金型のキャビティに射出充填することができるから、より確実に所定強度の成形体を製造することができる。
【0036】
以上、本実施形態の一例を詳述したが、強化用天然繊維としては、平板状の竹繊維に限らず、ジュート、麻、或いはトウモロコシ繊維であってもよく、竹、ジュート、麻、トウモロコシ繊維等のうち2つ以上の天然繊維を含む複合天然繊維を採用してもよい。また、本実施形態の射出成形機1は、繊維の解繊が難しい竹等の天然繊維であっても効果的に分散できるため、天然繊維に限らず、それよりも解繊し易い、ガラス繊維や炭素繊維等の通常の強化繊維を採用してもよく、そうした場合にも前述した作用効果を奏することが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1 射出成形機
5 固定金型(金型)
6 可動金型(金型)
10 加熱シリンダ
11 射出ノズル
12 可変ピッチダルメージスクリュー(スクリュー)
16 供給口
20 圧縮部
21 ダルメージ部
22 計量部
23 フライト
24 供給部
図1
図2
図3
図4