特許第5752452号(P5752452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752452
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20150702BHJP
【FI】
   A61B6/03 330Z
   A61B6/03 360Q
   A61B6/03 371
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-64071(P2011-64071)
(22)【出願日】2011年3月23日
(65)【公開番号】特開2012-196402(P2012-196402A)
(43)【公開日】2012年10月18日
【審査請求日】2014年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】二宮 寛明
(72)【発明者】
【氏名】角村 卓是
(72)【発明者】
【氏名】今泉 秀紀
【審査官】 小田倉 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−187812(JP,A)
【文献】 特開2009−285147(JP,A)
【文献】 特開2005−296469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者を寝台に載置し、前記被検者にX線を照射することにより、参照画像を収集する参照画像収集手段と、
前記寝台の高さと前記被検者の大きさとに基づいて前記寝台の横移動可能範囲を算出し、及び/又は、前記寝台の横位置と前記被検者の大きさとに基づいて前記寝台の上下移動可能範囲を算出する移動可能範囲算出手段と、
前記移動可能範囲算出手段によって算出される前記横移動可能範囲及び/又は前記上下移動可能範囲内において、前記寝台の移動位置を設定する移動位置設定手段と、
前記X線の放射線強度を調節する為のフィルタのサイズを設定するフィルタサイズ設定手段と、
前記移動位置設定手段によって設定される前記寝台の移動位置、及び、前記フィルタサイズ設定手段によって設定される前記フィルタサイズにおける撮影可能範囲を算出する撮影可能範囲算出手段と、
前記撮影可能範囲算出手段によって算出される前記撮影可能範囲を前記参照画像に重ねて表示する表示手段と、
を具備するX線CT装置。
【請求項2】
前記表示手段は、更に、前記移動可能範囲算出手段によって算出される前記横移動可能範囲及び/又は前記上下移動可能範囲を前記参照画像に重ねて表示する
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
ガントリの傾斜角度を設定する傾斜角度設定手段、
を更に具備し、
前記移動可能範囲算出手段は、更に、前記傾斜角度設定手段によって設定される前記傾斜角度に基づいて、前記横移動可能範囲及び/又は前記上下移動可能範囲を算出する
請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記移動位置設定手段は、前記表示手段に表示される前記寝台の横移動位置及び/又は上下移動位置がユーザによって移動されると、移動後の前記寝台の横移動位置及び/又は上下移動位置に基づいて前記寝台の移動量を算出し、前記寝台の移動位置を設定する
請求項1記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記移動位置設定手段は、前記表示手段に表示される前記参照画像がユーザによって移動されると、移動後の前記参照画像の位置に基づいて前記寝台の移動量を算出し、前記寝台の移動位置を設定する
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記表示手段は、前記表示手段に表示される前記参照画像が移動されると、前記参照画像の撮影時において取得できていない領域を識別可能に表示する
請求項5に記載のX線CT装置。
【請求項7】
複数部位を撮影する時に、前記移動位置設定手段は、入力装置によって設定される部位ごとのFOV又は部位ごとの前記寝台の移動位置に基づいて、前記複数部位に対する単一の前記寝台の移動位置を設定する
請求項1に記載のX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体を載置させる寝台が横方向(体幅方向)に移動可能なX線CT(Computed
Tomography:コンピュータ断層撮影)装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、X線CT装置は、表示装置に表示される参照画像(スキャノグラム、スキャン画像等)において、寝台の体軸方向の移動先を指定する機能が備えられている。スキャノグラムは、本撮影時の被検者の位置を決める為に撮影される画像であり、スキャノ画像ともいう。
また、近年では、検体を載置させる寝台を、体軸方向以外に横方向(体幅方向)や高さ方向(体厚方向)に移動させる方法が提案されている。寝台を横方向や高さ方向に移動させて、撮影対象部位をガントリの回転中心に配置させることによって、CT画像の空間分解能の向上が期待できる。
例えば、特許文献1には、スキャノグラム上で撮影範囲を対象部位に設定し、その中心位置に寝台を移動する仕組みが提案されている。特許文献1に記載の仕組みでは、撮影範囲外の被曝を低減させるために、ボウタイフィルタを自動的に設定している。しかしながら、特許文献1では、寝台を安全に移動できるかどうか、すなわち寝台を移動した際に被検者がガントリと接触しないかどうかについては考慮されていない。
そこで、特許文献2では、マーカで移動位置を設定する仕組みについて提案されており、スキャノグラムだけでなくスキャン画像を参照画像とした設定も提案されている。
また、特許文献3には、寝台が安全に移動可能な領域をガイド表示する仕組みが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−267783号公報
【特許文献2】特開2010−57731号公報
【特許文献3】特開2010−187812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、寝台はガントリ開口径内しか移動できないため、横方向、高さ方向の移動範囲が限られてくる。特許文献2の仕組みでは、移動位置を入力した後に移動可能か否か判断することになるため、入力した位置に移動できない場合は、判断後に再操作、もしくは参照画像の再撮影が必要となる。また、設定したボウタイフィルタによって撮影可能範囲の広さが限られ、寝台移動位置によって撮影可能範囲の位置が変わってくる。特許文献2の仕組みでは、撮影範囲を入力した後に撮影可能か否か判断することになるため、入力した範囲で撮影できない場合は、判断後に再操作、もしくは参照画像の再撮影が必要となってくる。
【0005】
特許文献3の仕組みでは、寝台が安全に移動可能な領域をガイド表示するので、入力した位置に移動できない状況をある程度回避することができる。しかしながら、特許文献3の仕組みでは、X線の放射線強度を調節する為のボウタイフィルタのフィルタサイズやガントリ傾斜角度などを考慮して移動可能範囲や撮影可能範囲を算出するものではない。従って、特許文献3の仕組みでは、ボウタイフィルタのフィルタサイズやガントリ傾斜角度などが、通常と異なる撮影条件の場合では、どの位置まで寝台を移動させることができ、どの範囲を撮影することができるかについて、必ずしも正確に表示させることができるとは言えない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、どのような撮影条件であっても、どの位置まで寝台を移動させることができ、どの範囲を撮影することができるかについて、容易かつ正確に確認することができるX線CT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために本発明は、被検者を寝台に載置し、前記被検者にX線を照射することにより、参照画像を収集する参照画像収集手段と、前記寝台の高さと前記被検者の大きさとに基づいて前記寝台の横移動可能範囲を算出し、及び/又は、前記寝台の横位置と前記被検者の大きさとに基づいて前記寝台の上下移動可能範囲を算出する移動可能範囲算出手段と、前記移動可能範囲算出手段によって算出される前記横移動可能範囲及び/又は前記上下移動可能範囲内において、前記寝台の移動位置を設定する移動位置設定手段と、前記X線の放射線強度を調節する為のフィルタのサイズを設定するフィルタサイズ設定手段と、前記移動位置設定手段によって設定される前記寝台の移動位置、及び、前記フィルタサイズ設定手段によって設定される前記フィルタサイズにおける撮影可能範囲を算出する撮影可能範囲算出手段と、前記撮影可能範囲算出手段によって算出される前記撮影可能範囲を前記参照画像に重ねて表示する表示手段と、
を具備するX線CT装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、寝台移動可能範囲を目視により容易かつ正確に確認することができる。そのため、撮影対象部位を回転中心に移動させることができるか容易に判断することができる。また、寝台移動後の撮影可能範囲を目視により容易かつ正確に確認することができる。そのため、被検者の配置や寝台移動設定に問題ないか容易に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】X線CT装置の全体構成を示す図
図2】コロナル方向のスキャノグラムにおいて寝台横移動位置を設定した例を示す図
図3】寝台高さが開口部中心である場合の横移動可能量(1)、及び寝台高さが低い場合の横移動可能量(2)を示す図
図4】ガントリが傾斜していない場合の横移動可能量(1)、及びガントリが傾斜している場合の横移動可能量(2)を示す図
図5】コロナル方向のスキャノグラムにおける横移動可能範囲の表示例を示す図
図6】X線CT装置の動作を示す第1のフローチャート
図7】ボウタイフィルタのサイズが大きい場合(1)と、小さい場合(2)の撮影可能範囲を示す図
図8】X線CT装置の動作を示す第2のフローチャート
図9】ボウタイフィルタのサイズに対応する撮影可能範囲を段階表示した表示例を示す図
図10】(a)寝台横位置が開口部中心である場合の上下移動可能量(1)、及び寝台横位置が開口部中心でない場合の上下移動可能量(2)、並びに、(b)ガントリが傾斜していない場合の上下移動可能量(3)、及びガントリが傾斜している場合の上下移動可能量(4)を示す図
図11】サジタル方向のスキャノグラムにおける上下移動可能範囲及び撮影可能範囲の表示例を示す図
図12】アキシャル画像における横移動可能範囲、上下移動可能範囲及び撮影可能範囲の表示例を示す図
図13】参照画像を移動させることによって寝台の移動位置を指定する例を説明する図
図14】複数部位を撮影する場合において寝台の移動位置を指定する例を説明する図
図15】累積被曝線量警告範囲の表示例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
最初に、後述する全ての実施形態に共通するX線CT装置1の全体構成について説明する。
図1に示すように、X線CT装置1は、スキャンガントリ部100と、システム制御部120と、操作卓2と、を備える。
【0011】
スキャンガントリ部100は、X線管101と、ガントリ(回転円盤)102と、ボウタイフィルタ103と、コリメータ104と、開口部105と、寝台106と、X線検出器107と、データ収集装置108と、X線制御装置109と、インターロック制御装置110と、寝台制御装置111と、ガントリ制御装置112と、を備える。
【0012】
X線管101は、寝台106上に載置された被検者にX線を照射する装置である。
ボウタイフィルタ103は、X線管101から照射されるX線の放射線強度を減衰するための装置である。
コリメータ104は、X線管101から照射されるX線の放射範囲を制限するための装置である。
【0013】
ガントリ102は、寝台106上に載置された被検者が入る開口部105を備えるとともに、X線管101とX線検出器107を搭載し、被検者の周囲を回転するものである。
X線検出器107は、X線管101と対向配置され、被検者を透過したX線を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測するための装置であり、多数のX線検出素子をガントリ102の回転方向に配列したもの、若しくはガントリ102の回転方向と回転軸方向との2次元に配列したものである。
データ収集装置108は、X線検出器107で検出されたX線量をデジタルデータとして収集する装置である。
X線制御装置109は、X線管101に入力される電力(管電流、管電圧)を制御する装置である。
【0014】
寝台106は、被検者が載置される天板と、天板を支持する支持体と、によって構成される。天板は、上下、前後、左右に移動できるように、支持体に支持されている。以下では、寝台106の移動とは、被検者が載置される天板の移動を示すものとする。
【0015】
寝台制御装置111は、寝台106の上下前後左右動を制御する装置である。
ガントリ制御装置112は、ガントリ102の回転、及び傾斜を制御する装置である。
インターロック制御装置110は、システム制御装置121からの命令に基づいて、寝台制御装置111とガントリ制御装置112を制御する。また、インターロック制御装置110は、スキャンガントリ部100に備えられるボタンやスイッチなどの入力装置(不図示)によって寝台106の移動が指示された場合に、寝台制御装置111とガントリ制御装置112を制御する。
また、インターロック制御装置110は、被検者が開口部105に接触することを防ぐ為に、寝台制御装置111とガントリ制御装置112からの信号に基づいて、インターロックの算出も行う。尚、インターロック制御装置110は、実際に寝台106を移動させたり、ガントリ102を傾斜させたりした結果に基づいてインターロックの算出を行うものであり、後述する図6図8のフローチャートに示す移動可能範囲を算出するものではない。
【0016】
システム制御部120は、システム制御装置121と、画像演算装置122と、記憶装置123と、を備える。
記憶装置123は、データ収集装置108で収集したRawData124を記憶する装置であり、具体的にはHDD(Hard Disk Drive)等である。
画像演算装置122は、記憶装置123に記憶したRawData124を演算処理してCT画像再構成を行う装置である。
システム制御装置121は、後述する操作卓制御装置203とデータの送受信を行い、データ収集装置108、X線制御装置109、インターロック制御装置110、画像演算装置122、記憶装置123等を制御する装置である。
【0017】
操作卓2は、操作卓表示装置201(以下、単に「表示装置201」という。)と、操作卓入力装置202(以下、単に「入力装置202」という。)と、操作卓制御装置203(以下、単に「制御装置203」という。)と、操作卓記憶装置204(以下、単に「記憶装置204」という。)と、を備える。
表示装置201は、CT画像205、撮影計画画面などを表示する装置であり、具体的にはCRT(Cathode-Ray Tube)や液晶ディスプレイ等である。
入力装置202は、被検者氏名、検査日時、撮影条件などを入力するための装置であり、具体的にはキーボードやポインティングデバイスである。尚、表示装置201及び入力装置202は、タッチパネルのように一体として構成されても良い。
記憶装置204は、画像演算装置122で作成されたCT画像205を記憶する装置である。
【0018】
ここで、X線CT装置1の動作の概要について説明する。
入力装置202からの指示に基づき、X線管101が被検者にX線を照射することにより、X線検出器107がX線管101から照射され被検者を透過したX線を多数のX線検出素子によって検出し、データ収集装置108が透過X線の分布を計測し、参照画像を収集する。参照画像は、表示装置201に表示される。
【0019】
制御装置203が寝台106の移動可能範囲や撮影可能範囲の算出を行う。また、制御装置203は、入力装置202から入力される寝台106の移動位置やガントリ102の傾斜角度の情報を、インターロック制御装置110に伝えることにより、ガントリ102を傾斜させ、寝台106を移動させる。ここで、寝台106の移動可能範囲は、被検者の大きさを考慮して算出される。被検者の大きさ(体幅、体厚など)は、例えば、参照画像などから算出したり、予め記憶している値や入力される値を用いたりすることが可能である。また、インターロック制御装置110に伝えられる寝台106の移動位置は、制御装置203によって算出される移動可能範囲内となるように設定される。
【0020】
また、入力装置202から入力された撮影条件、特にX線管電圧やX線管電流などに基づき、X線制御装置109がX線管101に入力される電力を制御することにより、X線管101が撮影条件に応じたX線を被検者に照射する。X線検出器107がX線管101から照射され被検者を透過したX線を多数のX線検出素子によって検出し、データ収集装置108が透過X線の分布を計測する。
【0021】
ガントリ102は、ガントリ制御装置112により制御され、入力装置202から入力された撮影条件、特に回転速度などに基づいて回転する。寝台106は、寝台制御装置111によって制御され、入力装置202から入力された撮影条件、特にらせんピッチなどに基づいて動作する。
X線管101からのX線照射とX線検出器107による透過X線分布の計測がガントリ102の回転とともに繰り返されることにより、様々な角度からのX線量データが取得される。取得されたX線量データは、RawData124として纏められ、画像演算装置122に送信される。画像演算装置122は、RawData124を逆投影処理することによりCT画像205を再構成する。CT画像205は、表示装置201に表示される。
【0022】
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態では、ユーザ(医師、検査技師等)は、参照画像として、コロナル方向のスキャノグラム301を利用し、寝台106の横移動位置302を設定し、CT画像205の撮影を行う。以下では、図2図7を参照しながら、第1の実施の形態について説明する。
【0023】
ユーザは、本撮影を行う前の位置決め作業において、コロナル方向のスキャノグラム301を撮影する。そして、図2に示すように、表示装置201は、コロナル方向のスキャノグラム301を表示する。更に、表示装置201は、コロナル方向のスキャノグラム301に重ねて、横移動位置302及びFOV303を表示する。ユーザは、入力装置202によって、表示装置201に表示されている横移動位置302の位置を変更することによって、適切な寝台106の横移動位置を設定する。また、ユーザは、入力装置202によって、表示装置201に表示されているFOV303の位置及び大きさを変更することによって、適切なFOVを設定する。
【0024】
寝台106の横移動可能量は、寝台106の高さによって変動する。図3に示すように、寝台106の高さが開口部105の中心である場合の横移動可能量(1)は、寝台106の高さが開口部105の中心よりも低い場合の横移動可能量(2)よりも大きい。同様に、寝台106の高さが開口部105の中心である場合の横移動可能量(1)は、寝台106の高さが開口部105の中心よりも高い場合の横移動可能量(2)よりも大きい。言い換えると、寝台106の高さが開口部105の中心から離れるにつれて、寝台106の横移動可能量は小さくなる。従って、ユーザは、寝台106の高さを考慮して、寝台106の横移動位置を設定する必要がある。
【0025】
また、寝台106の横移動可能量は、ガントリ102の傾斜角度によっても変動する。図4に示すように、ガントリ102が傾斜していない場合(傾斜角度θが0°の場合)の横移動可能量(1)は、ガントリ102が傾斜している場合(傾斜角度θ≠0°の場合)の横移動可能量(2)よりも大きい。このことは、ガントリ102を前傾させた場合(傾斜角度θ>0°の場合)も、ガントリ102を後傾させた場合(傾斜角度θ<0°の場合)も同様である。言い換えると、ガントリ102の傾斜角度の絶対値が大きくなるにつれて、寝台106の横移動可能量は、小さくなる。従って、ユーザは、ガントリ102の傾斜角度を考慮して、寝台106の横移動位置を設定する必要がある。
【0026】
ユーザが、寝台106の高さやガントリ102の傾斜角度を考慮せずに、寝台106の横移動位置を設定してしまうと、実際に寝台106を移動させたときに被検者とガントリ102が接触してしまう場合がある。このような場合には、ユーザは、寝台106の横移動位置の再入力、もしくは被検者を再配置して、スキャノグラム301の再撮影を行う必要が出てくる。
そこで、参照画像としてコロナル方向のスキャノグラム301を用いる場合、制御装置203が、予め、寝台106の高さ、及びガントリ102の傾斜角度から寝台106の横移動可能範囲を算出し、ユーザが寝台106の横移動可能範囲を超えないように入力制限をかける。また、必要に応じて、表示装置201は、スキャノグラム301に重ねて、横移動可能範囲304を表示する。
【0027】
図5では、横移動可能範囲304の3つの表示例を示している。図5(a)〜図5(c)は、それぞれ、スキャノグラム301に重ねて、横移動位置302、及び横移動可能範囲304が表示されている。また、図5(a)〜図5(c)には、それぞれ、寝台106の現在位置(又はデフォルト位置)を原点としたときに、横移動可能範囲304の左端位置(図5に示す例では−70mm)及び右端位置(図5に示す例では70mm)が表示されている。
【0028】
図5(a)では、横移動可能範囲304が、スキャノグラム301の下部に、「バー表示」として示されている。図5(a)に示す例では、寝台106の現在位置(又はデフォルト位置)、横移動可能範囲304の左端位置及び右端位置に、それぞれ目盛りが付されている。
図5(b)では、横移動可能範囲304が、横移動位置302を示す線の線種(図5(b)に示す例では「実線」)と異なる線種(図5(b)に示す例では「点線」)の線によって、横移動可能範囲304の左端位置及び右端位置が示されている。
図5(c)では、横移動可能範囲304ではない領域が、所定の模様(図5(c)に示す例ではハッチング)を付して示されている。言い換えると、横移動可能範囲304の左端位置及び右端位置が、所定の模様が付されている領域と所定の模様が付されていない領域との境界線として示されている。
【0029】
第1の実施の形態におけるX線CT装置1の動作について、図6を参照しながら説明する。
最初に、ステップS101において、X線CT装置1は、スキャノグラム301の撮影を行う。具体的には、寝台制御装置111の制御によって寝台106を体軸方向に移動させつつ、X線管101からX線を被検者に照射して撮影する。撮影されたスキャノグラム301は、記憶装置204に記憶される。また、記憶装置204には、スキャノグラム301の撮影時における寝台106の上下位置、左右位置、及びガントリ102の傾斜角度も記憶される。
【0030】
次に、ステップS02において、制御装置203は、記憶装置204からスキャノグラム301を取り出して、表示装置201に表示する。また、制御装置203は、スキャノグラム301に重ねて、FOV303も表示装置201に表示する。
【0031】
次に、ステップS103において、制御装置203は、記憶装置204に記憶されている「スキャノグラム301の撮影時における寝台106の上下位置、左右位置、及びガントリ102の傾斜角度」、並びに、スキャノグラム301の画像解析の結果に基づいて、横移動可能範囲304を算出する。
具体的には、制御装置203は、画像演算装置122によるスキャノグラム301の画像解析に基づいて、被検者の体幅を算出する。また、制御装置203は、例えば、予め記憶装置204に記憶されている「人体モデル(楕円体モデルなど)」に対して、算出された被検者の体幅を適用することによって、被検者の大きさ(最大体幅や最大体厚など)を推定する。そして、制御装置203は、スキャノグラム301の撮影時における寝台106の上下位置及び左右位置、スキャノグラム301の撮影時におけるガントリ102の傾斜角度、推定された被検者の大きさ、並びに、予め記憶しておく寝台106の天板の大きさに基づいて、被検者がガントリ102に接触せずに寝台106が横方向に移動可能な範囲、すなわち寝台106の横移動可能範囲304を算出する。
以降のステップでは、制御装置203は、寝台106の上下移動位置及び左右移動位置、ガントリ102の傾斜角度などが指定されると、指定された値に基づいて、再び寝台106の横移動可能範囲304を算出するものとする。
尚、被検者の大きさ(最大体幅や最大体厚など)は、予め記憶装置204に記憶されている値を用いても良いし、入力装置202を介して入力される値を用いても良い。
【0032】
次に、ステップS104において、制御装置203は、スキャノグラム301に重ねて、ステップS103において算出された横移動可能範囲304を表示装置201に表示する。尚、算出された横移動可能範囲304を表示装置201に表示するか否かは、ユーザが選択可能に構成しても良い。
横移動可能範囲304が表示装置201に表示されることにより、ユーザは、撮影対象部位を開口部105中心に配置することができるか否かについて、目視により容易に確認することができる。
【0033】
次に、ステップS105では、ユーザが、ポインティングデバイスなどの入力装置202を介して横移動位置302を移動させると、制御装置203は、横移動位置302の移動量に基づいて、寝台106の横移動位置を設定する。また、ユーザは、キーボードなどの入力装置202を介して、寝台106の横方向の移動量(例えば、20mmなど)を入力しても良い。何れの場合であっても、制御装置203は、設定される横移動位置が、横移動可能範囲304内か否かを判定し、横移動可能範囲304内であれば設定可能とし、横移動可能範囲304外であれば設定不可とする。
横移動可能範囲304が表示装置201に表示されている場合、ユーザは、横移動可能範囲304を確認しながら、寝台106の横移動位置を指定することができる。
【0034】
次に、ステップS106では、制御装置203は、スキャノグラム301に重ねて、ステップS105における設定値に従い、横移動位置302を表示装置201に表示する。ユーザが、ポインティングデバイスなどの入力装置202を介して横移動位置302を移動させる場合、入力と表示が連続して繰り返される。また、ユーザが、キーボードなどの入力装置202を介して、寝台106の横方向への移動量を入力する場合、例えば、ユーザが入力装置202を介して表示ボタンを押下することによって、横移動位置302が指定された位置に再表示される。
【0035】
次に、ステップS107では、システム制御装置121の制御によって、寝台106の移動及びガントリ102の傾斜がなされる。
具体的には、制御装置203は、ステップS105において設定される寝台106の横移動位置、並びに、スキャノグラム301の撮影時における寝台106の上下位置及びガントリ102の傾斜角度をシステム制御装置121に送信する。システム制御装置121は、インターロック制御装置110に寝台106の横移動位置及び上下位置、並びに、ガントリ102の傾斜角度を送信する。インターロック制御装置110は、寝台制御装置111に寝台106の横移動位置を送信し、ガントリ制御装置112にガントリ102の傾斜角度を送信する。寝台制御装置111は、指定された横移動位置に寝台106を移動させる。また、ガントリ制御装置112は、指定された傾斜角度になるようにガントリ102を傾斜させる。
【0036】
次に、ステップS108では、システム制御装置121の制御によって、被検者を撮影し、CT画像205を作成する。CT画像205を作成するまでの手順は、前述した通りである。作成されたCT画像205は、スキャノグラム301と対応付けられて、記憶装置204に記憶される。また、記憶装置204には、CT画像205の撮影時における寝台106の上下位置、左右位置、及びガントリ102の傾斜角度も記憶される。
制御装置203は、CT画像205やスキャノグラム301とともに、CT画像205の撮影時における寝台106の上下位置、左右位置、及びガントリ102の傾斜角度を表示装置201に表示させることができる。これらの情報によって、ユーザは、撮影すべき箇所が撮影できているか否かを判断することができる。
【0037】
以上、第1の実施の形態では、寝台106の横移動位置が、横移動可能範囲304内において設定されることから、実際に寝台106を移動させたときに、被検者とガントリ102の接触を確実に回避し、スキャノグラム301の再撮影や寝台106の横移動位置の再入力などの後戻りがない。
更に、横移動可能範囲304が表示装置201に表示されている場合、ユーザは、横移動可能範囲304を確認しながら、寝台106の横移動位置を指定することができ、ユーザビリティの向上が図れる。
【0038】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、ユーザは、参照画像として、コロナル方向のスキャノグラム301を利用し、ボウタイフィルタ103のサイズ、寝台106の横移動位置を設定するとともに、撮影可能範囲305を確認してFOV(Field Of View:再構成範囲)303を設定し、CT画像205の撮影を行う。以下では、図7図9を参照しながら、第2の実施の形態について説明する。尚、前述の実施形態と同じ要素は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
撮影可能範囲305は、ボウタイフィルタ103のサイズによって変動する。図7(a)では、ボウタイフィルタ103のサイズが大きい場合(例えば、全身用のボウタイフィルタ103)を示している。図7(b)、図7(c)では、ボウタイフィルタ103のサイズが小さい場合(例えば、心臓用のボウタイフィルタ103)を示している。
【0040】
図7(a)の場合、X線管101から照射されたX線があまり減衰することなくボウタイフィルタ103を通過し、被検者に照射される。この時の照射範囲が図7(a)の撮影可能範囲305となる。第1の実施の形態において説明したように、CT画像205の撮影時には、設定される横移動位置に基づいて寝台106を移動させる為、撮影可能範囲305は、横移動位置302を中心とした範囲となる。そのため、スキャノグラム301内でも撮影される範囲と撮影されない範囲が存在することとなる。図7(a)では、設定されたFOV303が撮影可能範囲305内に収まっている為、このFOV303の幅によってCT画像205を再構成することができる。
【0041】
図7(b)の場合、X線管101から照射されたX線の照射野周辺がボウタイフィルタ103により減衰され、照射野が狭くなる。そのため、撮影可能範囲305が、図7(a)に比べて狭くなる。図7(b)では、設定されたFOV303が撮影可能範囲305内に収まっておらず、FOV303の領域内に撮影可能範囲外321が存在する為、このFOV303の幅によってCT画像205を再構成することができない。そこで、対象部位を撮影する為に、ボウタイフィルタ103のサイズをより大きくする必要があるが、ユーザは、どのサイズまで大きくすると撮影可能範囲305に対象部位が含まれるようになるかが分からない。
また、撮影可能範囲305の位置は、寝台106の横移動位置によって変動する。そのため、設定されたFOV303の位置においてCT画像205を再構成することができない場合がある。そうすると、FOV303を入力するまでは、対象部位を撮影可能か判断できず、設定されたFOV303を撮影できない場合は、その後にFOV303の再入力、もしくはスキャノグラム301の再撮影が必要となってしまう。
【0042】
その為、第2の実施の形態では、ユーザが、入力装置202を介して横移動位置302を図7(b)の位置から図7(c)の位置に移動させると、制御装置203は、横移動位置302の位置に追従するように、撮影可能範囲305の位置を変更して表示装置201に表示する。尚、図7(c)には、図7(b)において横移動位置302に隠れていたFOV中心322も表示されている。
また、制御装置203は、予めボウタイフィルタ103のサイズ、及び横移動位置302の位置に基づいて撮影可能範囲305の幅及び位置を算出し、スキャノグラム301に重ねて、撮影可能範囲305を表示装置201に表示する。更に、制御装置203は、必要に応じて、スキャノグラム301に重ねて、ボウタイフィルタ103の切り替え可能なサイズを表示装置201に表示する。
【0043】
第2の実施の形態におけるX線CT装置1の動作について、図8を参照しながら説明する。
ステップS101〜ステップS104は、図6と同様である。
次に、ステップS201では、ユーザが、入力装置202を介してボウタイフィルタ103のサイズを入力すると、制御装置203は、設定されたボウタイフィルタ103のサイズを設定する。また、制御装置203は、撮影箇所(例えば、「全身」、「心臓」など)に応じて、自動的にボウタイフィルタ103のサイズを設定するようにしても良い。設定されたボウタイフィルタ103のサイズは、RAM又は記憶装置204に一時的に格納される。
【0044】
ステップS105、ステップS106は、図6と同様である。
次に、ステップS202では、制御装置203は、ステップS201において入力されたボウタイフィルタ103のサイズ、及び、ステップS105において入力された横移動位置302の位置に基づいて、撮影可能範囲305の幅及び位置を算出する。
【0045】
次に、ステップS203では、制御装置203は、スキャノグラム301に重ねて、ステップS202において算出された撮影可能範囲305を表示装置201に表示する。
【0046】
図9(a)〜図9(c)は、撮影可能範囲305の表示例である。図9(a)〜図9(c)には、いずれも、スキャノグラム301に重ねて、横移動位置302、FOV303、横移動可能範囲304が表示されている。
図9(a)の例では、制御装置203は、ステップS201において入力された単一のボウタイフィルタ103のサイズに基づいて算出された単一の撮影可能範囲305を、スキャノグラム301に重ねて表示装置201に表示している。
また、図9(b)及び図9(c)では、制御装置203は、ステップS201において入力されたボウタイフィルタ103のサイズに対応する撮影可能範囲305の他、他のボウタイフィルタ103のサイズに対応する撮影可能範囲305についても、スキャノグラム301に重ねて表示装置201に表示している。
【0047】
図9(a)では、撮影可能範囲305を示す為に、撮影不可能範囲321を透過表示又はテクスチャ表示によって示している。図9(a)では、模式的に、所定の透過表示又はテクスチャ表示を「斜線」によって図示している。
【0048】
図9(b)では、複数の撮影可能範囲305と撮影不可能範囲321の境界を、それぞれ異なる線種の直線によって示している。
図9(b)では、3種類のボウタイフィルタ103のサイズに対応する撮影可能範囲305と撮影不可能範囲321の境界が示されている。具体的には、最も小さいボウタイフィルタ103のサイズに対応する撮影可能範囲305と撮影不可能範囲321の境界が、「点線」によって示されている。また、中間の大きさのボウタイフィルタ103のサイズに対応する撮影可能範囲305と撮影不可能範囲321の境界が、「破線」によって示されている。また、最も大きいボウタイフィルタ103のサイズに対応する撮影可能範囲305と撮影不可能範囲321の境界が、「一点鎖線」によって示されている。
【0049】
図9(c)では、複数の撮影可能範囲305を示す為に、撮影不可能範囲321をそれぞれ異なる透過表示又はテクスチャ表示の階調によって示している。図9(c)では、模式的に、所定の透過表示又はテクスチャ表示の階調を「斜線」の線数の違いによって図示している。
図9(c)の例では、3種類のボウタイフィルタ103のサイズに対応する撮影不可能範囲321が示されている。具体的には、最も小さいボウタイフィルタ103のサイズに対応する撮影不可能範囲321が、最も線数が少ない「斜線」によって示されている。また、中間の大きさのボウタイフィルタ103のサイズに対応する撮影不可能範囲321が、中間の線数の「斜線」によって示されている。また、最も大きいボウタイフィルタ103のサイズに対応する撮影不可能範囲321が、最も線数が多い「斜線」によって示されている。
【0050】
図8の説明に戻る。
ステップS204では、ユーザが、入力装置202を介してFOV303を入力すると、制御装置203は、設定されたFOV303の幅及び位置を設定する。
ステップS107、ステップS108は、図6と同様である。尚、ボウタイフィルタ103を切り替える場合には、ステップS107における寝台106の移動と同時に行うことによって、検査時間を短縮することができる。
【0051】
第2の実施の形態では、図9に示すように、入力されたボウタイフィルタ103のサイズに対応する撮影可能範囲305がスキャノグラム301に重ねて示されることによって、ユーザは、撮影対象部位が撮影可能範囲305に入るか否か確認しながら、FOV303を入力することができる。
更に、入力されたボウタイフィルタ103のサイズに対応する撮影可能範囲305に加えて、他のボウタイフィルタ103のサイズに対応する撮影可能範囲305もスキャノグラム301に重ねて示されることによって、ユーザは、指定したボウタイフィルタ103のサイズでは撮影対象部位が撮影可能範囲305に収まらない場合であっても、ボウタイフィルタ103をどのサイズまで変更すれば良いか目視によって容易に判断することができる。
このように、FOV303を入力する前に撮影可能範囲305が分かるため、撮影対象部位が撮影可能か否か容易に判断でき、ユーザビリティの向上が図れる。
【0052】
なお、複数の部位を撮影する場合、部位ごとに横移動位置を入力し、それぞれ撮影可能範囲305を表示するようにしても良い。
また、寝台106の横移動位置を入力した後にFOV303を入力することとしたが、FOV303を入力した後に寝台106の横移動位置を入力しても良い。また、FOV303を入力した後、制御装置203が、寝台106の横移動位置をFOV中心322に合わせて設定しても良い。
【0053】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態では、ユーザは、参照画像として、サジタル方向のスキャノグラム301、又はアキシャル画像を利用し、ボウタイフィルタ103のサイズ、寝台106の横移動位置を設定するとともに、撮影可能範囲305を確認してFOV303を設定し、CT画像205の撮影を行う。以下では、図10図11を参照しながら、第3の実施の形態について説明する。尚、前述の実施形態と同じ要素は、同一の符号を付して説明を省略する。特に、X線CT装置1の動作の流れは、第2の実施の形態と同様である。
【0054】
まず、参照画像にサジタル方向のスキャノグラム301を用いる方法を説明する。サジタル方向のスキャノグラム301は、X線管101をガントリ102に沿って90°回転させて、X線を被検者の側面から照射することにより作成する。サジタル方向のスキャノグラム301では、視点がX−Z平面となり、コロナル方向とは変わるため、寝台102の左右移動ではなく、上下移動について考慮する。
【0055】
寝台106の上下移動可能量は、寝台106の横位置(X方向の位置)によって変動する。図10(a)に示すように、寝台106の横位置(X方向の位置)が開口部105の中心である場合の上下移動可能量(1)は、寝台106の横位置(X方向の位置)が開口部105の中心から離れている場合の上下移動可能量(2)よりも大きい。言い換えると、寝台106の横位置(X方向の位置)が開口部105の中心から離れるにつれて、寝台106の上下移動可能量は小さくなる。従って、ユーザは、寝台106の横位置(X方向の位置)を考慮して、寝台106の上下移動位置を設定する必要がある。
【0056】
また、寝台106の上下移動可能量は、ガントリ102の傾斜角度によっても変動する。図10(b)に示すように、ガントリ102が傾斜していない場合(傾斜角度θが0°の場合)の上下移動可能量(3)は、ガントリ102が傾斜している場合(傾斜角度θ≠0°の場合)の上下移動可能量(4)よりも大きい。このことは、ガントリ102を前傾させた場合(傾斜角度θ>0°の場合)も、ガントリ102を後傾させた場合(傾斜角度θ<0°の場合)も同様である。言い換えると、ガントリ102の傾斜角度の絶対値が大きくなるにつれて、寝台106の上下移動可能量は、小さくなる。従って、ユーザは、ガントリ102の傾斜角度を考慮して、寝台106の上下移動位置を設定する必要がある。
【0057】
そこで、参照画像にサジタル方向のスキャノグラム301を用いる場合、制御装置203が、予め、寝台106の横位置(X方向の位置)、及びガントリ102の傾斜角度から寝台106の上下移動可能範囲307を算出し、ユーザによって設定される寝台106の上下移動位置306が上下移動可能範囲307を超えないように入力制限をかける。また、図11に示すように、必要に応じて、表示装置201は、スキャノグラム301に重ねて、上下移動可能範囲307及び撮影可能範囲305(或いは撮影不可能範囲321)を表示する。
尚、寝台106の上下移動可能範囲307についても、寝台106の横移動可能範囲304と同様、制御装置203は、被検者の大きさと寝台106の天板の大きさを考慮して算出する。
【0058】
次に、参照画像にアキシャル画像301aを用いる方法を説明する。アキシャル画像301aは、視点がX−Y平面である為、アキシャル画像301aを参照することによって、寝台106の横移動と上下移動の設定が可能となる。
【0059】
そこで、参照画像にアキシャル画像301aを用いる場合、制御装置203が、予め、寝台106の高さ、及びガントリ102の傾斜角度から寝台106の横移動可能範囲304を算出し、ユーザによって設定される寝台106の横移動位置302が横移動可能範囲304を超えないように入力制限をかける。また、制御装置203が、予め、寝台106の横位置(X方向の位置)、及びガントリ102の傾斜角度から寝台106の上下移動可能範囲307を算出し、ユーザによって設定される寝台106の上下移動位置306が上下移動可能範囲307を超えないように入力制限をかける。
更に、図12に示すように、必要に応じて、表示装置201は、アキシャル画像301aに重ねて、横移動可能範囲304及び上下移動可能範囲307、並びに、撮影可能範囲305(或いは撮影不可能範囲321)を表示する。
【0060】
第3の実施の形態では、参照画像がサジタル方向のスキャノグラム301の場合であれば、寝台106の上下移動位置306が、上下移動可能範囲307内において設定されることから、実際に寝台106を移動させたときに、被検者とガントリ102の接触を確実に回避し、スキャノグラム301の再撮影や寝台106の上下移動位置306の再入力などの後戻りがない。
更に、参照画像がアキシャル画像301aの場合であれば、寝台106の横移動位置302及び上下移動位置306が、横移動可能範囲304及び上下移動可能範囲307内において設定されることから、実際に寝台106を移動させたときに、被検者とガントリ102の接触を確実に回避し、スキャノグラム301の再撮影や寝台106の横移動位置302及び上下移動位置306の再入力などの後戻りがない。
更に、上下移動可能範囲307が表示装置201に表示されている場合、ユーザは、上下移動可能範囲307を確認しながら、寝台106の上下移動位置306を指定することができる。また、横移動可能範囲304及び上下移動可能範囲307が表示装置201に表示されている場合、ユーザは、横移動可能範囲304及び上下移動可能範囲307を確認しながら、寝台106の横移動位置302及び上下移動位置306を指定することができる。
【0061】
尚、コロナル方向のスキャノグラム301とサジタル方向のスキャノグラム301の両方を参照画像として用いる場合、コロナル方向のスキャノグラム301に重ねて横移動可能範囲304を表示し、サジタル方向のスキャノグラム301に重ねて上下移動可能範囲307を表示することができる。
【0062】
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態では、ユーザは、参照画像を移動させることによって寝台106の移動位置を設定する。以下では、図13を参照しながら、第4の実施の形態について説明する。尚、前述の実施形態と同じ要素は、同一の符号を付して説明を省略する。特に、X線CT装置1の動作の流れは、第2の実施の形態と同様である。
【0063】
まず、コロナル方向のスキャノグラム301を参照画像とした場合について説明する。
図13(a)が、移動位置未入力時の画面である。ユーザは、この画面上で、参照画像をマウスなどでドラッグし、左右にスクロールさせることで参照画像を図13(b)に示す位置に移動させ、撮影対象部位が開口部中心308に位置するように配置する。制御装置203は、移動後の参照画像の位置に基づいて寝台106の移動量を算出し、移動位置を設定する。また、制御装置203は、図13(b)に示すように、スキャノグラム301の撮影時に取得できていない領域を補完領域309として表示装置201に表示する。
【0064】
次に、アキシャル画像301aを参照画像とした場合について説明する。
図13(c)が、移動位置未入力時の画面である。ユーザは、この画面上で、参照画像をマウスなどでドラッグし、左右や上下にスクロールさせることで参照画像を図13(d)に示す位置に移動させる。制御装置203は、移動後の参照画像の位置に基づいて寝台106の移動量を算出し、移動位置を設定する。また、制御装置203は、図13(d)に示すように、スキャノグラム301の撮影時に取得できていない領域を補完領域309として表示装置201に表示する。
【0065】
制御装置203は、参照画像の移動に追従させてFOV303を移動させても良いし、参照画像の移動に追従させずにFOV303をそのままの位置に表示しても良い。
また、参照画像をマウスなどでドラッグすることに代えて、参照画像の移動量を数値によって入力しても良い。
制御装置203は、図13(b)及び図13(d)に示すように、参照画像を移動した後の画像を、別の参照画像として記憶装置204に格納するようにしても良い。それによって、撮影完了後に、CT画像205と参照画像との比較が容易となる。
尚、サジタル方向のスキャノグラム301を参照画像とした場合については、コロナル方向のスキャノグラム301の場合から容易に推測できるため、ここでは省略する。
【0066】
第4の実施の形態では、表示装置201に表示される補完領域309の大きさが、寝台106の移動量と同じになる。これによって、ユーザは、被検者が撮影時に開口部105内のどの位置に配置されるのかを容易に理解でき、実際の寝台106の移動をイメージしやすい。また、仮にFOV303の一部の領域が参照画像からはみ出る場合であっても、はみ出る部分も補完領域309に重ねて表示されるので、FOV303の領域がどこまでなのか判断し易くなる。
【0067】
<第5の実施の形態>
第5の実施の形態では、複数部位を撮影する場合において、X線CT装置1が寝台106の移動位置を設定する。以下では、図14を参照しながら、第5の実施の形態について説明する。尚、前述の実施形態と同じ要素は、同一の符号を付して説明を省略する。特に、X線CT装置1の動作の流れは、第2の実施の形態と同様である。
【0068】
複数部位を撮影する場合、部位ごとに寝台106を横移動することもできるが、検査を急いでいる時など、寝台106を横に移動する時間をなるべく短くしたい場合がある。そこで、第5の実施の形態では、複数部位に対して同じ寝台106の横位置(X方向の位置)のまま撮影するようにし、寝台106の横移動は、最初の部位の撮影時のみとすることによって、検査時間を短縮する。
【0069】
まず、ユーザが統一する寝台106の横移動位置302を入力する方法について説明する。前述の実施の形態と同じGUI(Graphical User Interface)であっても、ユーザが各部位に対して同じ寝台106の横移動位置302を入力すれば、寝台106の横移動位置302を統一することができるが、ユーザが各部位に対して同じ寝台106の横移動位置302を入力する手間が発生する。そこで、複数の部位に対して統一する寝台106の横移動位置302を設定できるGUIを提供する。
図14(a)は、部位ごとに横移動位置302を設定している状態である。図14(b)では、図14(a)の状態から、ユーザが統一設定ボタンを押下することによって、制御装置203は統一設定可能な状態に変更した状態を示している。ユーザは、図14(b)のGUIによって、統一する寝台106の横移動位置302を設定する。
【0070】
次に、ユーザが入力した複数の寝台106の横移動位置302に基づいて、制御装置203が統一する寝台106の横移動位置302を設定する方法を説明する。
ユーザは、図14(a)に示すように、部位ごとに寝台106の横移動位置302を設定する。制御装置203は、図14(c)に示すように、複数の寝台106の横移動位置302の中で、最も左に位置する横移動位置302を横移動位置最左部310とし、最も右に位置する横移動位置302を横移動位置最右部311とする。そして、制御装置203は、例えば、横移動位置最左部310と横移動位置最右部311との中点を、統一する寝台106の横移動位置302として設定する。
また、別の例として、制御装置203は、図14(d)に示すように、複数の寝台106のFOV303の中で、最も左に位置するFOV303の左端部をFOV最左部312とし、最も右に位置するFOV303の右端部をFOV最右部313とする。そして、制御装置203は、例えば、FOV最左部312とFOV最右部313との中点を、統一する寝台106の横移動位置302として設定する。
【0071】
第5の実施の形態のように、複数部位を撮影する際、統一する寝台106の横移動位置302を設定し、最初の部位の撮影においてのみ寝台106の横移動を行うことによって、検査時間の短縮と被曝量の低減を両立させることが可能となる。
尚、寝台106の横移動位置302は、全ての部位に対して統一する方法だけでない。例えば、ユーザが統一したい部位に関する寝台106の横移動位置302を複数選択すると、制御装置203が、選択された複数の寝台106の横移動位置302に基づいて、統一する寝台106の横移動位置302を設定するようにしても良い。
【0072】
<第6の実施の形態>
第6の実施の形態では、ユーザは、累積被曝線量が多い部位(累積被曝線量警告範囲323)を確認しながら、X線CT装置1が寝台106の移動位置を設定する。以下では、図15を参照しながら、第6の実施の形態について説明する。尚、前述の実施形態と同じ要素は、同一の符号を付して説明を省略する。特に、X線CT装置1の動作の流れは、第2の実施の形態と同様である。
【0073】
記憶装置204には、予め被検者毎及び部位毎の累積被曝線量を記憶させておく。
制御装置203は、スキャノグラム301を表示する際、記憶装置204を参照し、対応する被検者の部位毎の累積被曝線量を取得する。次に、制御装置203は、部位毎の累積被曝線量が所定の閾値を超えているか否か判定する。そして、制御装置203は、図15に示すように、所定の閾値を超えている部位については、スキャノグラム301に重ねて、累積被曝線量警告範囲323として表示装置201に表示する。図15では、被検者の右腕は累積被曝線量が多いことから、寝台106の横移動位置302をずらして、撮影可能範囲305に被検者の右腕が入らないようにしている。
【0074】
第6の実施の形態では、ユーザは、撮影対象部位が撮影可能範囲305に入ることを確認するとともに、累積被曝線量が多い部位(累積被曝線量警告範囲323)が撮影可能範囲305に入らないことを確認しながら、FOV303を入力することができる。
【0075】
第6の実施の形態では、記憶装置204に累積被曝線量警告範囲323を記憶させ、表示装置201に表示させていたが、これに代えて、設定されるボウタイフィルタ103に基づいて部位ごとの被曝線量を算出し、表示装置201に表示させるようにしても良い。
また、第6の実施の形態では、累積被曝線量が多い範囲を表示するようにしたが、これに代えて、X線を照射させたくない領域(骨、生殖器など)を表示するようにしても良い。そして、制御装置203は、X線を照射させたくない領域が、出来る限り開口部105の中心から離れるように、寝台106の横移動位置や上下移動位置を設定するようにしても良い。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係るX線CT装置等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0077】
1………X線CT装置
100………スキャンガントリ部
101………X線管
102………ガントリ(回転円盤)
103………ボウタイフィルタ
104………コリメータ
105………開口部
106………寝台
107………X線検出器
108………データ収集装置
109………X線制御装置
110………インターロック制御装置
111………寝台制御装置
112………ガントリ制御装置
120………システム制御部
121………システム制御装置
122………画像演算装置
123………記憶装置
124………RawData
2………操作卓
201………操作卓表示装置
202………操作卓入力装置
203………操作卓制御装置
204………操作卓記憶装置
205………CT画像
301………スキャノグラム
302………横移動位置
303………FOV(Field
Of View:再構成範囲)
304………横移動可能範囲
305………撮影可能範囲
306………上下移動位置
307………上下移動可能範囲
308………開口部中心ライン
309………補完領域
310………横移動位置最左部
311………横移動位置最右部
312………FOV最左部
313………FOV最右部
321………撮影不可能範囲
322………FOV中心
323………累積被曝線量警告範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
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図15