(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752470
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】エアバッグアッセンブリ構造
(51)【国際特許分類】
B60R 21/215 20110101AFI20150702BHJP
B60R 21/205 20110101ALI20150702BHJP
【FI】
B60R21/215
B60R21/205
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-88986(P2011-88986)
(22)【出願日】2011年4月13日
(65)【公開番号】特開2012-218664(P2012-218664A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年3月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博紀
【審査官】
粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−201330(JP,A)
【文献】
特開2010−105558(JP,A)
【文献】
特開平06−199200(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0030253(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルの助手席側に適用されるエアバッグアッセンブリ構造であって、エアバッグを含むインフレータアッセンブリと、該インフレータアッセンブリを前記インストルメントパネルの助手席側に開口された収容空間に収めた状態で被覆するカバーとを備え、該カバーはアウターカバーとインナーカバーの二部品から成り、これらアウターカバーとインナーカバーとが相互に組み付けられていると共に、前記アウターカバーが前記インフレータアッセンブリに取り付けられ、前記インナーカバーがインストルメントパネルに取り付けられており、しかも、前記インナーカバーをインストルメントパネルに取り付けるにあたり、前記収容空間の奥まった位置に設定されているインストルメントパネル側の取付部の係止穴に対し前記インナーカバー側の取付部を樹脂クリップを介して嵌挿係止させたことを特徴とするエアバッグアッセンブリ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグアッセンブリ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両の助手席側に装備されるエアバッグは、該エアバッグに火薬の爆発によるガスを送り込んで瞬時に膨らませるインフレータと共にインフレータアッセンブリとしてまとめられ、インストルメントパネルの助手席側に開口された収容空間に収められており、該収容空間はインフレータアッセンブリを収めた状態でカバーにより被覆されるようになっている。
【0003】
従来において、インフレータアッセンブリは、収容空間内でインストルメントパネルのリインフォース等に固定されて据え付けられており、一方、カバーは、その裏面に一体成形されたアーム部を介しインフレータアッセンブリに取り付けられるようになっていると共に、インストルメントパネルの開口縁部に対し係止爪等を介し係止されるようにもなっている。
【0004】
また、前記カバーにおける主として裏面側には、エアバッグが助手席に向けて膨張展開した際に容易に破断するように切欠溝が縦横に形成されており、該切欠溝が形成された部分で前記カバーの肉厚が薄くなるようにしてある。
【0005】
尚、この種のエアバッグアッセンブリ構造に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−142788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、斯かる従来構造において、カバーをインフレータアッセンブリに取り付けるためのアーム部は、エアバッグの展開を案内するガイド部材としての役割も担うようになっているため、アーム部の長手方向をエアバッグの展開方向と一致させる必要があるが、この種のカバーは、樹脂の射出成形品として製作されるようになっているため、金型の抜き方向が前記アーム部の長手方向に決まってしまうことになり、前記カバーをインストルメントパネルの開口縁部に係止させるための係止爪等の設定方向に設計的な制約が生じていた。
【0008】
また、カバーとインストルメントパネルとの取付部を収容空間の奥まった位置に設定してしまうと、カバーの裏面に収容空間の奥まで張り出す取付部を成形しなければならなくなり、これによりカバーの表面にヒケ(Sink Marks)が生じ易くなって意匠面の表面品質や面剛性が悪化する虞れが生じるため、インストルメントパネルの開口縁部に対し係止爪等を介して係止させる形式を採らざるを得ないという制約もあった。
【0009】
しかも、インストルメントパネルの開口縁部に対し係止爪等を介して係止させる形式を採用した場合であっても、インストルメントパネルの収容空間の下方に、物品を載置しておくためのトレイ部が設定されているようなケースでは、開口の下側に係止爪等を係止できるような縁部が存在しないため、カバーの固定が難しくなるという問題もあった。
【0010】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、設計的な制約を従来より緩和してエアバッグアッセンブリの配置の自由度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、インストルメントパネルの助手席側に適用されるエアバッグアッセンブリ構造であって、エアバッグを含むインフレータアッセンブリと、該インフレータアッセンブリを
前記インストルメントパネルの助手席側に開口された収容空間に収めた状態で被覆するカバーとを備え、該カバーはアウターカバーとインナーカバーの二部品から成り、これらアウターカバーとインナーカバーとが相互に組み付けられていると共に、前記アウターカバーが前記インフレータアッセンブリに取り付けられ、前記インナーカバーがインストルメントパネルに取り付けられ
ており、しかも、前記インナーカバーをインストルメントパネルに取り付けるにあたり、前記収容空間の奥まった位置に設定されているインストルメントパネル側の取付部の係止穴に対し前記インナーカバー側の取付部を樹脂クリップを介して嵌挿係止させたことを特徴とするものである。
【0012】
而して、このようにすれば、カバーをアウターカバーとインナーカバーの二部品で構成したことにより、アウターカバーをインフレータアッセンブリに取り付けるための取付部をエアバッグの展開方向に合わせて形成したとしても、インナーカバーをインストルメントパネルに取り付けるための取付部については、前記エアバッグの展開方向の制約を受けることなく任意な向きに設定することが可能となる。
【0013】
また、カバーの意匠面の表面品質は、アウターカバーにより確保されることになり、インナーカバーには、射出成形時のヒケ(Sink Marks)を心配することなく収容空間の奥まで張り出す取付部を成形することが可能となるため、インナーカバーとインストルメントパネルとの取付部を収容空間の奥まった位置に設定することが可能となり、収容空間の開口の一部に係止爪等を係止できるような縁部が存在しないケースでもカバーを確実に固定することが可能となる。
【0014】
更
に、インナーカバーを取り付けるためのインストルメントパネル側の取付部を、エアバッグアッセンブリに替えて設置されるコンソールボックスの取付部として共用し
、インストルメントパネル側の取付部の係止穴に対し前記インナーカバー側の取付部を樹脂クリップを介して嵌挿係止すれば、インストルメントパネル側の同じ取付部を利用してコンソールボックスへの付け替えを容易に行うことが可能となる。
【0015】
この際、インナーカバーとインストルメントパネルとの取付部
が収容空間の奥まった位置に設定
されているので、コンソールボックスを選択した時の物入れスペースがインストルメントパネル側の取付部により阻害されなくて済み、物入れスペースの使用性を大幅に向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
上記した本発明のエアバッグアッセンブリ構造によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0017】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、インナーカバーをインストルメントパネルに取り付けるための取付部をエアバッグの展開方向の制約を受けることなく任意な向きに設定することができ、また、カバーの意匠面の表面品質をアウターカバーにより確保することができて、インナーカバーに射出成形時のヒケ(Sink Marks)を心配することなく収容空間の奥まで張り出す取付部を成形することができ、これによりインナーカバーとインストルメントパネルとの取付部を収容空間の奥まった位置に設定してカバーを確実に固定することもできるので、設計的な制約を従来より大幅に緩和してエアバッグアッセンブリの配置の自由度を著しく向上することができる。
【0018】
(II)本発明の請求項
1に記載の発明によれば、インストルメントパネル側の同じ取付部を利用してコンソールボックスへの付け替えを容易に行うことができ、しかも、インナーカバーとインストルメントパネルとの取付部を収容空間の奥まった位置に設定し
たことにより、コンソールボックスを選択した時の物入れスペースがインストルメントパネル側の取付部により阻害されないようにして、物入れスペースの使用性を大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明を実施する形態の一例を示す断面図である。
【
図3】アウターカバーとインナーカバーの組み付け位置における断面図である。
【
図4】アウターカバーとインフレータアッセンブリの取り付け位置における断面図である。
【
図5】エアバッグアッセンブリに替えてコンソールボックスを設置した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
図1〜
図5は本発明を実施する形態の一例を示すもので、
図1中における1はインストルメントパネル、2は該インストルメントパネル1の助手席側に開口された収容空間、3は該収容空間2に収められたインフレータアッセンブリ、4は該インフレータアッセンブリ3を被覆するカバーを示し、該カバー4と前記インフレータアッセンブリ3とでエアバッグアッセンブリ5が構成されている。
【0022】
前記インフレータアッセンブリ3は、折り畳まれたエアバッグ6と、該エアバッグ6に火薬の爆発によるガスを送り込んで瞬時に膨らませるインフレータ7とで構成され、
図1の断面では図示されていないブラケットを介してインストルメントパネル1のリインフォース8に固定されている。
【0023】
また、カバー4はアウターカバー9とインナーカバー10の二部品から成り、これらアウターカバー9とインナーカバー10とが相互に組み付けられていると共に、前記アウターカバー9が前記インフレータアッセンブリ3に取り付けられ、前記インナーカバー10がインストルメントパネル1に取り付けられている。
【0024】
より具体的には、前記インナーカバー10が、
図2に示す如き形状を有して形成されており、その上下の適宜位置に形成された係止穴11,12に対し、
図3に示す如きアウターカバー9の裏面側に張り出し形成された係止爪13,14を嵌挿係止させることにより、アウターカバー9とインナーカバー10とが相互に組み付けられている。
【0025】
また、前記アウターカバー9の裏面側には、
図4に示す如きインフレータアッセンブリ3側への取付部を成すアーム部15,16も張り出し形成されており、該各アーム部15,16の係止穴15a,16aに対しインフレータアッセンブリ3の上下面に備えられた係止爪17,18を嵌挿係止させることにより、アウターカバー9がインフレータアッセンブリ3に取り付けられている。
【0026】
更に、先の
図2に示されている通り、前記インナーカバー10の上下に三本ずつ収容空間2の奥側に向かう取付部19,20が突設されていると共に、該各取付部19,20の夫々に樹脂クリップ19a,20aが抜脱しないように装着されており、収容空間2の奥まった位置に設定されているインストルメントパネル1側の取付部21,22の係止穴21a,22aに対し前記インナーカバー10側の取付部19,20を樹脂クリップ19a,20aを介して嵌挿係止させることにより、インナーカバー10がインストルメントパネル1に取り付けられている。
【0027】
この際、インナーカバー10は、インフレータアッセンブリ3に取り付けられるアウターカバー9とは別部品となっているため、前記エアバッグ6の展開方向(
図1中に矢印Aで示す方向)とは異なる向きに前記インナーカバー10の取付部19,20を設定することが可能である。
【0028】
また、先の
図2及び
図4に示されている通り、インナーカバー10におけるアウターカバー9の裏面に対峙する部位には、アウターカバー9を裏面から支えるサポート部23が設けられており、アウターカバー9の面剛性を補うと共に、該アウターカバー9のガタつきを抑え得るようになっている。
【0029】
尚、
図1、
図3、
図4中の24はアウターカバー9の裏面側に形成された切欠溝を示し、エアバッグ6が助手席に向けて膨張展開した際に容易にアウターカバー9が破断するようにしてある。
【0030】
而して、このようにすれば、カバー4をアウターカバー9とインナーカバー10の二部品で構成したことにより、アウターカバー9のアーム部15,16(アウターカバー9をインフレータアッセンブリ3に取り付けるための取付部)をエアバッグ6の展開方向に合わせて形成したとしても、インナーカバー10をインストルメントパネル1に取り付けるための取付部19,20については、前記エアバッグ6の展開方向の制約を受けることなく任意な向きに設定することが可能となる。
【0031】
また、カバー4の意匠面の表面品質は、アウターカバー9により確保されることになり、インナーカバー10には、射出成形時のヒケ(Sink Marks)を心配することなく収容空間2の奥まで張り出す取付部19,20を成形することが可能となるため、インナーカバー10とインストルメントパネル1との取付部19,20及び21,22を収容空間2の奥まった位置に設定することが可能となり、しかも、収容空間2の開口の一部に係止爪等を係止できるような縁部が存在しないケースでもカバー4を確実に固定することが可能となる。
【0032】
例えば、
図1に図示している例では、インストルメントパネル1の収容空間2の下方に、物品を載置しておくためのトレイ部25が設けられているので、収容空間2の開口の下側には、係止爪等を係止できるような縁部が存在しないが、このような場合にもカバー4を確実に固定することが可能となる。
【0033】
従って、上記形態例によれば、インナーカバー10をインストルメントパネル1に取り付けるための取付部19,20をエアバッグ6の展開方向の制約を受けることなく任意な向きに設定することができ、また、カバー4の意匠面の表面品質をアウターカバー9により確保することができて、インナーカバー10に射出成形時のヒケ(Sink Marks)を心配することなく収容空間2の奥まで張り出す取付部19,20を成形することができ、これによりインナーカバー10とインストルメントパネル1との取付部19,20及び21,22を収容空間2の奥まった位置に設定してカバー4を確実に固定することもできるので、設計的な制約を従来より大幅に緩和してエアバッグアッセンブリ5の配置の自由度を著しく向上することができる。
【0034】
更に、インナーカバー10を取り付けるためのインストルメントパネル1側の取付部21,22は、エアバッグアッセンブリ5に替えて設置されるコンソールボックスの取付部として共用し得るように構成しておくことが好ましく、例えば、
図5に示す如く、コンソールボックス26が収納部27とリッド部28とにより構成されている場合、前記収納部27の裏面の上下にインナーカバー10と同様に取付部29,30を突設しておき、該各取付部29,30の夫々に樹脂クリップ31,32を抜脱しないように装着し、インストルメントパネル1側の取付部21,22の係止穴21a,22aに対し前記インナーカバー10側の取付部29,30を樹脂クリップ31,32を介して嵌挿係止することでコンソールボックス26を設置できるようにしておくと良い。
【0035】
このようにすれば、インストルメントパネル1側の同じ取付部21,22を利用してコンソールボックス26への付け替えを容易に行うことができ、しかも、インストルメントパネル1側の取付部21,22を収容空間2の奥まった位置に設定しておくことにより、コンソールボックス26を選択した時の物入れスペースがインストルメントパネル1側の取付部21,22により阻害されないようにして、物入れスペースの使用性を大幅に向上することができる。
【0036】
尚、本発明のエアバッグアッセンブリ構造は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
1 インストルメントパネル
3 インフレータアッセンブリ
4 カバー
5 エアバッグアッセンブリ
6 エアバッグ
9 アウターカバー
10 インナーカバー
15,16 アーム部(取付部)
19,20 取付部
21,22 取付部
26 コンソールボックス