特許第5752555号(P5752555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752555
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/64 20060101AFI20150702BHJP
【FI】
   B29C45/64
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-225012(P2011-225012)
(22)【出願日】2011年10月12日
(65)【公開番号】特開2013-82177(P2013-82177A)
(43)【公開日】2013年5月9日
【審査請求日】2014年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中▲崎▼ 修
(72)【発明者】
【氏名】森江 孝明
【審査官】 菊地 則義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−307734(JP,A)
【文献】 特開2011−079204(JP,A)
【文献】 特開昭60−173809(JP,A)
【文献】 実開平05−005786(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型が取り付けられる第1の固定部材と、
前記第1の固定部材と対向して配設される第2の固定部材と、
可動金型が取り付けられる第1の可動部材と、
前記第1の可動部材と連結されて前記第1の可動部材と共に移動する第2の可動部材と、を備え、
前記第2の固定部材と前記第2の可動部材は、電磁石による吸着力で型締力を発生させる型締力発生機構を構成し、
前記型締力発生機構を構成する前記第2の固定部材及び前記第2の可動部材の一方は、前記電磁石を形成するコイルが複数隣接して配置されるコイル溝を有すると共に、前記コイル溝内における前記複数のコイル間の隣接する位置に設けられる熱伝導性部材を有し、
前記複数のコイルは平面的に配置され、
前記熱伝導性部材は、少なくとも一部が前記コイル溝の深さよりも低い高さを有することを特徴とする、射出成形機。
【請求項2】
前記熱伝導性部材は、前記コイル溝が形成される部材に接触する態様で設けられる、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記熱伝導性部材は、前記コイル溝内における前記複数のコイル間を仕切る態様で設けられる、請求項1又は2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記熱伝導性部材は、前記コイル溝の深さよりも低い高さを有する、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記熱伝導性部材は、前記コイル溝の底部に対して反対側に切欠き部を有する、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記熱伝導性部材は、前記コイル溝が形成される部材と一体に形成される、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記熱伝導性部材は、前記コイル溝の底部に対して前記コイルを離間させるスペーサ部を備える、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型締め動作を駆動する電磁石を備える射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形機においては、樹脂を射出装置の射出ノズルから射出して固定金型と可動金型との間のキャビティ空間に充填(てん)し、固化させることによって成形品を得るようになっている。そして、固定金型に対して可動金型を移動させて型閉じ、型締め及び型開きを行うために型締装置が配設される。
【0003】
該型締装置には、油圧シリンダに油を供給することによって駆動される油圧式の型締装置、及び電動機によって駆動される電動式の型締装置があるが、該電動式の型締装置は、制御性が高く、周辺を汚すことがなく、かつ、エネルギー効率が高いので、多く利用されている。この場合、電動機を駆動することによってボールねじを回転させて推力を発生させ、該推力をトグル機構によって拡大し、大きな型締力を発生させるようにしている。
【0004】
ところが、構成の電動式の型締装置においては、トグル機構を使用するようになっているので、該トグル機構の特性上、型締力を変更することが困難であり、応答性及び安定性が悪く、成形中に型締力を制御することができない。そこで、ボールねじによって発生させられた推力を直接型締力として使用することができるようにした型締装置が提供されている。この場合、電動機のトルクと型締力とが比例するので、成形中に型締力を制御することができる。
【0005】
しかしながら、従来の型締装置においては、ボールねじの耐荷重性が低く、大きな型締力を発生させることができないだけでなく、電動機に発生するトルクリップルによって型締力が変動してしまう。また、型締力を発生させるために、電動機に電流を常時供給する必要があり、電動機の消費電力量及び発熱量が多くなるので、電動機の定格出力をその分大きくする必要があり、型締装置のコストが高くなってしまう。
【0006】
そこで、型開閉動作にはリニアモータを使用し、型締動作には電磁石の吸着力を利用した型締装置が考えられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第05/090052号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載されるような電磁石の吸着力を利用した型締装置を使用する構成の場合、電磁石の駆動によりコイルが高温となり、コイルの焼損等が生じうるという問題点がある。特に、応答性を高めるために、複数のコイルを隣接して配置する場合、それらの隣接する箇所が高熱となる虞がある。
【0009】
そこで、本発明は、応答性を高めつつ、複数のコイルの隣接する箇所の高熱化を防止することができる射出成形機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によれば、固定金型が取り付けられる第1の固定部材と、
前記第1の固定部材と対向して配設される第2の固定部材と、
可動金型が取り付けられる第1の可動部材と、
前記第1の可動部材と連結されて前記第1の可動部材と共に移動する第2の可動部材と、を備え、
前記第2の固定部材と前記第2の可動部材は、電磁石による吸着力で型締力を発生させる型締力発生機構を構成し、
前記型締力発生機構を構成する前記第2の固定部材及び前記第2の可動部材の一方は、前記電磁石を形成するコイルが複数隣接して配置されるコイル溝を有すると共に、前記コイル溝内における前記複数のコイル間の隣接する位置に設けられる熱伝導性部材を有し、
前記複数のコイルは平面的に配置され、
前記熱伝導性部材は、少なくとも一部が前記コイル溝の深さよりも低い高さを有することを特徴とする、射出成形機が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、応答性を高めつつ、複数のコイルの隣接する箇所の高熱化を防止することができる射出成形機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態の射出成形機における型締装置の型閉じ時の状態を示す図である。
図2】本発明の実施の形態の射出成形機における型締装置の型開き時の状態を示す図である。
図3】リヤプラテン13の単品状態を吸着板22側から型締め方向に視た平面図である。
図4】熱伝導性部材70が配置されたリヤプラテン13を吸着板22側から型締め方向に視た平面図である。
図5】コイル48及び熱伝導性部材70が配置されたリヤプラテン13を吸着板22側から型締め方向に視た平面図である。
図6図5のラインA−Aに沿った断面図である。
図7】代替実施例による熱伝導性部材701の構成を示す断面図である。
図8】他の代替実施例による熱伝導性部材702,703,704の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。尚、本実施の形態において、型締装置については、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方とし、射出装置については、射出を行う際のスクリューの移動方向を前方とし、計量を行う際のスクリューの移動方向を後方として説明する。
【0014】
図1は本発明の実施の形態の射出成形機における型締装置の型閉じ時の状態を示す図、図2は本発明の実施の形態の射出成形機における型締装置の型開き時の状態を示す図である。尚、図1及び図2において、ハッチングを付された部材は主要断面を示す。
【0015】
図において、10は型締装置、Frは射出成形機のフレーム(架台)、Gdは、該フレームFrに対して可動なガイド、11は、図示されないガイド上又はフレームFr上に載置された固定プラテンであり、該固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と対向させてリヤプラテン13が配設され、固定プラテン11とリヤプラテン13との間に4本のタイバー14(図においては、4本のタイバー14のうちの2本だけを示す。)が架設される。尚、リヤプラテン13は、フレームFrに対して固定される。
【0016】
タイバー14の前端部(図において右端部)にはネジ部(図示せず)が形成され、該ネジ部にナットn1を螺合して締め付けることによって、タイバー14の前端部が固定プラテン11に固定される。タイバー14の後端部はリヤプラテン13に固定される。
【0017】
そして、タイバー14に沿って固定プラテン11と対向させて可動プラテン12が型開閉方向に進退自在に配設される。そのために、可動プラテン12がガイドGdに固定され、可動プラテン12におけるタイバー14と対応する箇所にタイバー14を貫通させるための図示されないガイド穴が形成される。尚、ガイド穴の代わりに、切欠き部を形成してもよい。尚、ガイドGdには、後述の吸着板22も固定される。
【0018】
また、固定プラテン11には固定金型15が、可動プラテン12には可動金型16がそれぞれ固定され、可動プラテン12の進退に伴って固定金型15と可動金型16とが接離させられ、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。尚、型締めが行われるのに伴って、固定金型15と可動金型16との間に図示されないキャビティ空間が形成され、射出装置17の射出ノズル18から射出された図示されない樹脂がキャビティ空間に充墳される。また、固定金型15及び可動金型16によって金型装置19が構成される。
【0019】
吸着板22は、可動プラテン12と平行にガイドGdに固定される。これにより、吸着板22は、リヤプラテン13より後方において進退自在となる。吸着板22は、磁性材料で形成されてよい。例えば、吸着板22は、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成される電磁積層鋼板により構成されてもよい。或いは、吸着板22は、鋳造により形成されてもよい。
【0020】
リニアモータ28は、可動プラテン12を進退させるため、ガイドGdに設けられる。リニアモータ28は、固定子29、及び可動子31を備え、固定子29は、フレームFr上において、ガイドGdと平行に、かつ、可動プラテン12の移動範囲に対応させて形成され、可動子31は、可動プラテン12の下端において、固定子29と対向させて、かつ、所定の範囲にわたって形成される。
【0021】
可動子31は、コア34及びコイル35を備える。そして、コア34は、固定子29に向けて突出させて、所定のピッチで形成された複数の磁極歯33を備え、コイル35は、各磁極歯33に巻装される。尚、磁極歯33は可動プラテン12の移動方向に対して直角の方向に、互いに平行に形成される。また、固定子29は、図示されないコア、及び該コア上に延在させて形成された図示されない永久磁石を備える。該永久磁石は、N極及びS極の各磁極を交互に着磁させることによって形成される。コイル35に所定の電流を供給することによってリニアモータ28を駆動すると、可動子31が進退させられ、それに伴って、ガイドGdにより可動プラテン12が進退させられ、型閉じ及び型開きを行うことができる。
【0022】
尚、本実施の形態においては、固定子29に永久磁石を、可動子31にコイル35を配設するようになっているが、固定子にコイルを、可動子に永久磁石を配設することもできる。その場合、リニアモータ28が駆動されるのに伴って、コイルが移動しないので、コイルに電力を供給するための配線を容易に行うことができる。
【0023】
尚、ガイドGdに可動プラテン12と吸着板22を固定する構成に限られず、可動プラテン12又は吸着板22にリニアモータ28の可動子31を設ける構成としてもよい。また、型開閉機構としては、リニアモータ28に限定されず、油圧式や電動式等であってもよい。
【0024】
可動プラテン12が前進させられて可動金型16が固定金型15に当接すると、型閉じが行われ、続いて、型締めが行われる。リヤプラテン13と吸着板22との間に、型締めを行うための電磁石ユニット37が配設される。また、リヤプラテン13及び吸着板22を貫通して延び、かつ、可動プラテン12と吸着板22とを連結するセンターロッド39が進退自在に配設される。該センターロッド39は、型閉じ時及び型開き時に、可動プラテン12の進退に連動させて吸着板22を進退させ、型締め時に、電磁石ユニット37によって発生させられた吸着力を可動プラテン12に伝達する。
【0025】
尚、固定プラテン11、可動プラテン12、リヤプラテン13、吸着板22、リニアモータ28、電磁石ユニット37、センターロッド39等によって型締装置10が構成される。
【0026】
電磁石ユニット37は、リヤプラテン13側に形成された電磁石49、及び吸着板22側に形成された吸着部51からなる。また、リヤプラテン13の後端面の所定の部分、本実施の形態においては、センターロッド39まわりにコイル溝45が形成され、コイル溝45内にコア46が形成される。そして、コイル溝45内でコア46まわりにコイル48が巻装される。尚、リヤプラテン13は、鋳物の一体構造で構成されてもよいし、若しくは、強磁性体から成る薄板を積層することによって形成される電磁積層鋼板により構成されてもよい。
【0027】
尚、本実施の形態において、リヤプラテン13とは別に電磁石49が、吸着板22とは別に吸着部51が形成されもよいし、リヤプラテン13の一部として電磁石を、吸着板22の一部として吸着部を形成してもよい。また、電磁石と吸着部の配置は、逆であってもよい。例えば、吸着板22側に電磁石49を設け、リヤプラテン13側に吸着部を設けてもよい。
【0028】
電磁石ユニット37において、コイル48に電流を供給すると、電磁石49が駆動され、吸着部51を吸着し、型締力を発生させることができる。
【0029】
センターロッド39は、後端部において吸着板22と連結させて、前端部において可動プラテン12と連結させて配設される。したがって、センターロッド39は、型閉じ時に可動プラテン12と共に前進させられて吸着板22を前進させ、型開き時に可動プラテン12と共に後退させられて吸着板22を後退させる。そのために、リヤプラテン13の中央部分に、センターロッド39を貫通させるための穴41が形成され、穴41の前端部の開口に臨ませて、センターロッド39を摺動自在に支持するブッシュ等の軸受部材Br1が配設される。
【0030】
型締装置10のリニアモータ28及び電磁石49の駆動は、制御部60によって制御される。制御部60は、CPU及びメモリ等を備え、CPUによって演算された結果に応じて、リニアモータ28のコイル35や電磁石49のコイル48に電流を供給するための回路も備える。制御部60には、また、荷重検出器55が接続される。荷重検出器55は、型締装置10において、少なくとも1本のタイバー14の所定の位置(固定プラテン11とリヤプラテン13との間における所定の位置)に設置され、当該タイバー14にかかる荷重を検出する。図中では、上下二本のタイバー14に荷重検出器55が設置された例が示されている。荷重検出器55は、例えば、タイバー14の伸び量を検出するセンサによって構成される。荷重検出器55によって検出された荷重は、制御部60に送られる。尚、制御部60は、図2においては便宜上省略されている。
【0031】
次に、型締装置10の動作について説明する。
【0032】
制御部60の型開閉処理部61によって型閉じ工程が制御される。図2の状態(型開き時の状態)において、型開閉処理部61は、コイル35に電流を供給する。続いて、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が前進させられ、図1に示されるように、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22との間、すなわち、電磁石49と吸着部51との間には、ギャップδが形成される。尚、型閉じに必要とされる力は、型締力と比較されて十分に小さくされる。
【0033】
続いて、制御部60の型締処理部62は、型締工程を制御する。型締処理部62は、コイル48に電流を供給し、吸着部51を電磁石49の吸着力によって吸着する。それに伴って、吸着板22及びセンターロッド39を介して型締力が可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。型締め開始時等、型締力を変化させる際に、型締処理部62は、当該変化によって得るべき目標となる型締力、すなわち、定常状態で目標とする型締力を発生させるために必要な定常的な電流の値をコイル48に供給するように制御している。
【0034】
尚、型締力は荷重検出器55によって検出される。検出された型締力は制御部60に送られ、制御部60において、型締力が設定値になるようにコイル48に供給される電流が調整され、フィードバック制御が行われる。この間、射出装置17において溶融させられた樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19のキャビティ空間に充墳される。
【0035】
キャビティ空間内の樹脂が冷却されて固化すると、型開閉処理部61は、型開き工程を制御する。型締処理部62は、図1の状態において、コイル48への電流の供給を停止する。それに伴って、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が後退させられ、図2に示されるように、可動金型16が後退限位置に置かれ、型開きが行われる。
【0036】
ここで、図3以降を参照して、本発明の特徴的な構成について説明する。
【0037】
図3は、リヤプラテン13の単品図を示し、リヤプラテン13を吸着板22側から型締め方向に視た平面図である。図4は、熱伝導性部材70が配置されたリヤプラテン13を吸着板22側から型締め方向に視た平面図である。図5は、コイル48及び熱伝導性部材70が配置されたリヤプラテン13を吸着板22側から型締め方向に視た平面図である。尚、図3乃至図5において、ハッチングが付された領域は、面直方向の高さが低い領域(コイル溝45)を表す。図6は、図5のラインA−Aに沿った断面図である。尚、以下では、便宜上、図6のY方向を高さ方向とし、図6の上側(吸着板22側)が上側として説明する。
【0038】
リヤプラテン13は、図3乃至図5に示すように、リヤプラテン13の後端側(吸着板22側)に、コイル溝45が形成される。図示の例では、リヤプラテン13は、センターロッド39が通過する穴41が形成される中央部47aと、外周部47bとの間に、コイル溝45が形成される。また、図示の例では、コイル溝45は、中央部47aを囲繞する態様で、矩形に形成されている。また、中央部47aと外周部47bとの間には、コア46が設けられる。従って、中央部47aと外周部47bとの間には、コア46を残してコイル溝45が形成されることになる。尚、中央部47a、外周部47b、及びコア46の表面(吸着板22側表面)は、同一平面内に延在してよく、ギャップ面を画成する。コイル溝45は、このギャップ面から深さ分だけオフセットした底面を有することになる。
【0039】
リヤプラテン13には、複数の極が形成されるように電磁石が設けられる。即ち、複数のコイル48が設けられる。これにより、駆動時(通電時)の電磁石49の応答性を高めることができる。図示の例では、4つのコイル48a−48dが設けられる。尚、コイルの個数は、任意であってよい。コイル48a−48dは、それぞれ、並列に電源に対して接続されてもよいし、それぞれ、別々の電源に接続されてもよい。或いは、コイル48a−48dのうちの一方の2つと、他方の2つとが、並列に電源に対して接続されてもよいし、別々の電源に接続されてもよい。コイル48a−48dは、それぞれ、対応するコア46まわりに巻回される。図示の例では、4つのコイル48a−48dに対応して、4つのコア46a−46dが設けられる。また、図示の例では、コア46a−46dは、中央部47aの各側(4方の側)に、中央部47aの穴41を中心として対称に設けられている。尚、図示の例では、4つのコア46a−46dは、同一の長手方向の長さを有しているが、例えば、中央部47aを挟んで対向する一方の組のコア46a,46cの長手方向の長さが、他方のコア46b,46dよりも長くてもよい。
【0040】
リヤプラテン13には、コイル溝45内におけるコイル48a−48d間の隣接する位置に熱伝導性部材70が設けられる。熱伝導性部材70は、コイル48a−48dの隣接する領域で発生する熱を、外部(本例ではリヤプラテン13)に伝達する機能を果たす。熱伝導性部材70は、熱伝導性のある任意の材料から形成されてよい。熱伝導性部材70は、典型的には、金属材料から形成される。但し、熱伝導性部材70は、樹脂(例えば、コイル溝45を封止するモールド材)よりも熱伝導性が高い材料から形成されればよい。熱伝導性部材70の形状は、任意であるが、典型的には、板状の部材であってよい。
【0041】
図示の例では、4つのコイル48a−48dに対応して、4つの熱伝導性部材70a−70dが設けられる。熱伝導性部材70aは、コイル48aとコイル48bとの間の隣接する位置に設けられ、熱伝導性部材70bは、コイル48bとコイル48cとの間の隣接する位置に設けられ、熱伝導性部材70cは、コイル48cとコイル48dとの間の隣接する位置に設けられ、熱伝導性部材70dは、コイル48dとコイル48aとの間の隣接する位置に設けられる。この際、熱伝導性部材70は、好ましくは、コイル溝45内におけるコイル48a−48d間を仕切る態様で設けられる。
【0042】
熱伝導性部材70a−70dは、対応するコイル48a−48dに近接して配置される。この際、熱伝導性部材70a−70dは、対応するコイル48a−48dに接触してもよいし、図6に示すように、対応するコイル48a−48dから離間されてもよい(図6参照)。熱伝導性部材70a−70dは、好ましくは、絶縁材料により被覆され、コイル48a−48dからの絶縁性が確保される。
【0043】
熱伝導性部材70a−70dは、好ましくは、リヤプラテン13への熱の伝達効率を高めるために、リヤプラテン13と接触する態様で設けられる。例えば、熱伝導性部材70a−70dは、下端がリヤプラテン13(即ち、コイル溝45の底部)に接触してもよい(図6参照)。また、熱伝導性部材70a−70dは、図4に示すように、中央部47a側の端部及び外周部47b側の端部が、中央部47a及び外周部47bに接触してもよい。また、代替実施例では、熱伝導性部材70a−70dは、リヤプラテン13に中間部材(図示せず)を介して接触してもよい。尚、熱伝導性部材70a−70dは、リヤプラテン13にボルトや溶接等により固定されてもよいし、リヤプラテン13と共に鋳物の一体構造で形成されてもよい。
【0044】
熱伝導性部材70a−70dの上端(吸着板22側端部)は、リヤプラテン13のギャップ面と同一の高さまで延在してもよいが、好ましくは、リヤプラテン13のギャップ面よりも低い高さまで延在する(図6のΔ参照)。即ち、熱伝導性部材70a−70dは、好ましくは、コイル溝の深さよりも低い高さを有する。他方、熱伝導性部材70a−70dの上端は、好ましくは、対応するコイル48a−48dの上端まで延在するが、例えば、対応するコイル48a−48dの中間高さ付近まで延在する構成であってもよい。このように、熱伝導性部材70a−70dの上端の位置がリヤプラテン13のギャップ面よりも低い場合、熱伝導性部材70a−70dの上端とギャップ面との間の隙間(図6のΔ参照)を利用して、電磁石49を駆動するための電気配線(コイル48a−48d間の配線等)の配索を行うことができる。例えば図6に示す例では、熱伝導性部材70cの上端とギャップ面との間の隙間Δを利用して、コイル48cとコイル48dとを配線で接続することが可能である。
【0045】
ところで、電磁石49の駆動時には、コイル48が高温となり、コイル48の焼損等が生じうるという問題点がある。この点、特に図3乃至図5に示すように、応答性を高めるために、複数のコイル48a−48dを隣接して配置する場合、それらの隣接する箇所が高熱となる虞がある。これに対して、本実施例によれば、コイル48a−48d間の隣接する位置に熱伝導性部材70が設けられるので、コイル48a−48dの隣接する箇所で生じる熱は、熱伝導性部材70を介してリヤプラテン13へと伝達される。これにより、電磁石49の応答性を高めつつ、複数のコイル48a−48dの隣接する箇所の高熱化を防止することができる。
【0046】
図7は、代替実施例による熱伝導性部材701の構成を示す断面図(図6の断面図に相当)である。
【0047】
図7に示す代替実施例では、熱伝導性部材701は、コイル溝45の底部に対してコイル48を離間させるスペーサ部72を備える。スペーサ部72は、熱伝導性部材701の下端から、熱伝導性部材701の高さ方向に垂直な方向でコイル48の下方に延在する。即ち、スペーサ部72は、コイル溝45の底部に沿って延在し、コイル48の下端を支持する。これにより、コイル48とリヤプラテン13との間の必要な隙間をスペーサ部72により確保することができる。スペーサ部72は、熱伝導性部材701と同様に、絶縁材料で被覆されてもよい。これにより、コイル48とリヤプラテン13との間の絶縁性をスペーサ部72により確保することができる。また、スペーサ部72は、リヤプラテン13との接触面積を増加させるので、熱伝導性部材701からリヤプラテン13への熱の伝導性を高める機能も果たす。尚、スペーサ部72は、熱伝導性部材701と一体に形成されてもよいし、熱伝導性部材701に取り付けられて一体化されてもよい。
【0048】
尚、図7に示す断面は、熱伝導性部材701の一部の断面であってもよいし、或いは、熱伝導性部材701は、図7に示す断面を等断面として有してもよい。また、図7に示す代替実施例による熱伝導性部材701は、図4等に示した熱伝導性部材70a−70dのうちのいずれか3個以下の熱伝導性部材と置換して使用されてもよい。また、熱伝導性部材701は、熱伝導性部材70(図6参照)と同様、リヤプラテン13にボルトや溶接等により固定されてもよいし、リヤプラテン13と共に鋳物の一体構造で形成されてもよい。
【0049】
図8は、他の代替実施例による熱伝導性部材702,703,704の構成を示す断面図であり、図5のラインB−Bに沿った断面に相当する。
【0050】
図8(A)に示す熱伝導性部材702は、熱伝導性部材70(図6参照)とは異なり、ギャップ面と同一高さに上端を備える。他方、熱伝導性部材702は、中央部47a側の端部及び外周部47b側の端部が、中央部47a及び外周部47bから離間している。即ち、熱伝導性部材702と外周部47bとの間には隙間S1が形成されると共に、熱伝導性部材702と中央部47aとの間には隙間S2が形成される。これにより、熱伝導性部材702が上述の如く複数のコイル48間を仕切るように配置される場合でも、かかる隙間S1,S2を利用して、電磁石49を駆動するための電気配線(複数のコイル48間の配線等)の配索を行うことができる。尚、熱伝導性部材702は、隙間S1,S2のいずれか一方のみを有するように構成されてもよいし、また、隙間S1,S2のいずれか一方又は双方を有しつつ、ギャップ面よりも低い上端を有してもよい。
【0051】
図8(B)に示す熱伝導性部材703は、熱伝導性部材70(図6参照)とは異なり、ギャップ面と同一高さに上端を備える。他方、熱伝導性部材703は、上縁側が開口した切欠き703aを有する。これにより、熱伝導性部材703が上述の如く複数のコイル48間を仕切るように配置される場合でも、切欠き703aを利用して、電磁石49を駆動するための電気配線(複数のコイル48間の配線等)の配索を行うことができる。尚、熱伝導性部材703は、任意の数の同様の切欠き703aを有してもよいし、ギャップ面よりも低い上端を有してもよい。
【0052】
図8(C)に示す熱伝導性部材704は、熱伝導性部材70(図6参照)とは異なり、ギャップ面と同一高さに上端を備える。他方、熱伝導性部材704は、4方が閉じた切欠き(穴)704aを有する。これにより、熱伝導性部材704が上述の如く複数のコイル48間を仕切るように配置される場合でも、切欠き704aを利用して、電磁石49を駆動するための電気配線(複数のコイル48間の配線等)の配索を行うことができる。尚、熱伝導性部材703は、任意の数の同様の切欠き704aを有してもよいし、ギャップ面よりも低い上端を有してもよい。
【0053】
尚、熱伝導性部材702,703,704は、熱伝導性部材70(図6参照)と同様、リヤプラテン13にボルトや溶接等により固定されてもよいし、リヤプラテン13と共に鋳物の一体構造で形成されてもよい。
【0054】
尚、上述した実施例(代替実施例を含む)においては、特許請求の範囲における「第1の固定部材」は、固定プラテン11に対応し、特許請求の範囲における「第1の可動部材」は、可動プラテン12に対応する。また、特許請求の範囲における「第2の固定部材」は、リヤプラテン13に対応し、特許請求の範囲における「第2の可動部材」は、吸着板22に対応する。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0056】
例えば、上述の如く、吸着板22側に電磁石49を設け、リヤプラテン13側に吸着部を設けてもよい。このように吸着板22側に電磁石49を設ける場合には、吸着板22側に上述と同様の熱伝導性部材70,701等を設ければよい。
【0057】
また、上述した実施例(代替実施例を含む)において、熱伝導性部材70(70a−70d)、701,702,703,704は、流体を利用した冷却機構と共に使用されてもよい。例えば、熱伝導性部材70(70a−70d)、701,702,703,704として、内部に冷却水の通路が形成された水冷プレートが使用されてもよい。この場合、複数のコイル48a−48dの隣接する箇所の熱を冷却水を介して取り除くことができる。
【0058】
また、上述では、特定の構成の型締装置10を例示しているが、型締装置10は、電磁石を利用して型締めを行うものであれば、任意の構成であってよい。例えば、リヤプラテン13において、外周部47bが省略されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
Br1 軸受部材
Fr フレーム
Gd ガイド
10 型締装置
11 固定プラテン
12 可動プラテン
13 リヤプラテン
14 タイバー
15 固定金型
16 可動金型
17 射出装置
18 射出ノズル
19 金型装置
22 吸着板
28 リニアモータ
29 固定子
31 可動子
33 磁極歯
34 コア
35 コイル
37 電磁石ユニット
39 センターロッド
41 穴
45 コイル溝
46(46a−46d) コア
47a 中央部
47b 外周部
48(48a−48d) コイル
49 電磁石
51 吸着部
55 荷重検出器
60 制御部
61 型開閉処理部
62 型締処理部
70(70a−70d)、701,702,703,704 熱伝導性部材
72 スペーサ部
703a,704a 切欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8