特許第5752569号(P5752569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752569
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/32 20060101AFI20150702BHJP
【FI】
   H02K1/32 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-251225(P2011-251225)
(22)【出願日】2011年11月17日
(65)【公開番号】特開2013-106505(P2013-106505A)
(43)【公開日】2013年5月30日
【審査請求日】2014年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103333
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 治
(74)【代理人】
【識別番号】100173451
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 彪
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 豪
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−303343(JP,A)
【文献】 特開2008−220054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00−1/16
H02K 1/18−1/26
H02K 1/28−1/34
H02K 9/00−9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材と、
前記軸部材を半径方向外側から取り囲むように配置されて、軸方向に延びて貫通する複数の鉄心通風孔が周方向に互いに間隔をあけて形成されて、外周から半径方向内向きに延びる複数の鉄心スロットが互いに周方向間隔をあけて形成されて、前記軸部材と同軸に回転するように構成された回転子鉄心と、
前記複数の鉄心スロット内に配置されて軸方向に延びる回転子巻線と、
前記回転子鉄心の軸方向両側それぞれに配置された一対の間隔板と、
前記回転子鉄心を半径方向外側から、前記回転子鉄心の外周面に所定の空隙を保ちながら取り囲むように配置された固定子鉄心と、
を有する回転電機において、
前記一対の間隔板それぞれには、
前記複数の鉄心通風孔のうち周方向に一孔おきに対応する位置で、軸方向に貫通する間隔板通風孔と、
前記鉄心スロットの一スロットおきに対応する周方向位置で外周から前記間隔板通風孔の半径方向外側まで延びた溝状で、前記回転子巻線が軸方向に通るように構成された間隔板浅溝と、
隣り合う前記間隔板浅溝の間にある前記鉄心通風孔に対応する位置よりも半径方向内側まで延びた溝状で、前記回転子巻線が軸方向に通るように構成された間隔板深溝と、
が形成されて、
前記一対の間隔板は、
前記一方の側に配置された前記間隔板の前記間隔板浅溝の周方向位置と、反対側に配置された前記間隔板の前記間隔板深溝の周方向位置とが、互いに揃うように配置されていること、
を特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記間隔板浅溝および前記間隔板深溝は、周方向に交互に形成されて、各溝間のティースの周方向位置は、前記回転子鉄心の前記鉄心スロット間のティースの周方向位置に揃うように構成されていること、を特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記間隔板深溝は、前記鉄心通風孔を通る空気が半径方向に流れる流路を形成すること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載に回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転子鉄心の内部に軸方向の通風孔が設けられた回転子を有する回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機などの回転電機の回転子ではコイルへの通電によるジュール熱などの発生により発熱する。そのため、鉄心の内部に軸方向の通風孔を設けてその通風孔に冷却空気を流して回転子を冷却する技術が知られている(特許文献1参照)。また、鉄心を軸方向に複数の鉄心ブロックに分割し、鉄心ブロック同士の間に間隔片を配置して、互いに隣接する二つの鉄心ブロックの鋼板の間に半径方向の通風路を設けて鉄心の内部の軸方向の通風孔を通って供給された冷却空気を半径方向外側に導く技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−303343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、例えばオイルおよびガスを送るための産業用高速回転電機の分野で、高速回転に耐える回転電機の必要性が増している。しかし、前述の従来の間隔片の引掛け構造では、高速回転による大きな遠心力に耐えることが困難である。
【0005】
また、特許文献1に開示されているように、間隔板を複数種類準備するためには、製造時間等のコスト増になってしまう。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、回転電機の回転を高速にしても健全性を維持でき、鉄心等の熱を空冷によって効果的に逃がすことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る回転電機は、軸部材と、前記軸部材を半径方向外側から取り囲むように配置されて、軸方向に延びて貫通する複数の鉄心通風孔が周方向に互いに間隔をあけて形成されて、外周から半径方向内向きに延びる複数の鉄心スロットが互いに周方向間隔をあけて形成されて、前記軸部材と同軸に回転するように構成された回転子鉄心と、前記複数の鉄心スロット内に配置されて軸方向に延びる回転子巻線と、前記回転子鉄心の軸方向両側それぞれに配置された一対の間隔板と、前記回転子鉄心を半径方向外側から、前記回転子鉄心の外周面に所定の空隙を保ちながら取り囲むように配置された固定子鉄心と、を有する回転電機において、前記一対の間隔板それぞれには、前記複数の鉄心通風孔のうち周方向に一孔おきに対応する位置で、軸方向に貫通する間隔板通風孔と、前記鉄心スロットの一スロットおきに対応する周方向位置で外周から前記間隔板通風孔の半径方向外側まで延びた溝状で、前記回転子巻線が軸方向に通るように構成された間隔板浅溝と、隣り合う前記間隔板浅溝の間にある前記鉄心通風孔に対応する位置よりも半径方向内側まで延びた溝状で、前記回転子巻線が軸方向に通るように構成された間隔板深溝と、が形成されて、前記一対の間隔板は、前記一方の側に配置された前記間隔板の前記間隔板浅溝の周方向位置と、反対側に配置された前記間隔板の前記間隔板深溝の周方向位置とが、互いに揃うように配置されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転電機の回転を高速にしても健全性を維持でき、しかも鉄心等の熱を空冷によって効果的に逃がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る回転電機の一実施形態の状態を模式的に示す上半正面図である。
図2図1の間隔板のみを部分的に示す部分側面図である。
図3図1の回転子鉄心に間隔板が取り付けられた状態の一部を示す部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る回転電機の一実施形態について図面を参照して説明する。ここで、図1は、本実施形態の回転電機を模式的に示す上半部分正面図である。図2は、図1の間隔板31のみを部分的に示す部分側面図である。図3は、図1の回転子鉄心21に間隔板31が取り付けられた状態の一部を示す部分側面図である。なお、図3では、鋼板22を間隔板31よりも周方向に広く記載している。
【0011】
先ず、本実施形態の回転電機の構成について説明する。
【0012】
回転電機は、軸部材10と、回転子20と、固定子50と、これらを収容するケーシング53と、を有する。軸部材10は、図示しない軸受で支持されて所定の軸を回転中心軸1として回転する部材である。回転子20は、軸部材10を半径方向外側から取り囲むように固定された円環状である。回転子20の構造は後で説明する。
【0013】
固定子50は、固定子鉄心51と、固定子巻線52と、を有し、ケーシング53内に固定される。固定子鉄心51は、後述の回転子鉄心21を半径方向外側から、回転子鉄心21の外周面に所定の空隙65を保ちながら取り囲むように配置される。固定子巻線52は、固定子鉄心51に形成された溝内に配置される。
【0014】
以下、回転子20の構造について説明する。
【0015】
回転子20は、回転子鉄心21と、回転子巻線28と、一対の間隔板31と、を有する。この回転子鉄心21は、複数の鋼板22が軸方向に積層されて構成される。
【0016】
各鋼板22には、中央を軸方向に貫通する中央貫通孔23と、中央貫通孔23よりも半径方向外側に軸方向に貫通する複数の通風孔24が形成される。通風孔24それぞれは、周方向に互いに等間隔に同心円状に形成される。また、各鋼板22には、複数の外側溝25が形成される。各外側溝25は、鋼板22の外周から半径方向内向きに延びる溝で、互いに周方向間隔をあけて形成される。
【0017】
各鋼板22が、積層して回転子鉄心21を構成するとき、各鋼板22の中央貫通孔23が軸方向に連通し鉄心中央貫通孔23aを形成する。鉄心中央貫通孔23aには、軸部材10が挿入される。この例では、当該中央貫通穴に軸部材10が嵌め込まれて固定される。
【0018】
また、各鋼板22の周方向位置が同じ外側溝25は、軸方向に連通し、それぞれ鉄心スロット25aを形成する。各鉄心スロット25aには、回転子巻線28が挿入される。また、各鋼板22の周方向位置が同じ通風孔24は、軸方向に連通し、それぞれ鉄心通風孔24aを形成する。
【0019】
すなわち、回転子鉄心21は、軸部材10を半径方向外側から取り囲むように配置されるものである。この回転子鉄心21には、軸方向に延びて貫通する複数の鉄心通風孔24aが、周方向に互いに間隔をあけて形成される。また、回転子鉄心21には、外周から半径方向内向きに延びる複数の鉄心スロット25aが、互いに周方向間隔をあけて形成される。この鉄心スロット25aには、回転子巻線28が配置される。この回転子巻線28は、鉄心スロット25a内を軸方向に延びるように配置される。
【0020】
間隔板31は、回転子鉄心21の軸方向両側それぞれに配置される。各間隔板31それぞれは、中央を貫通する間隔板中央貫通孔33と、複数の間隔板通風孔34と、深さが異なる2種類の溝、すなわち、複数の間隔板深溝35と、複数の間隔板浅溝36と、が形成される。
【0021】
間隔板中央貫通孔33は、回転子鉄心21の鉄心中央貫通孔23aに連通し、軸部材10が挿入される。間隔板通風孔34は、複数の鉄心通風孔24aのうち周方向に一孔おきに対応する位置で、軸方向に貫通する。すなわち、周方向に一孔おきの鉄心通風孔24aに連通し、冷却空気60が流通可能である。
【0022】
間隔板浅溝36は、外周から間隔板通風孔34の半径方向外側まで延びた溝である。すなわち、この間隔板浅溝36は、複数の鉄心スロット25aのうち、一スロットおきに対応する周方向位置に形成される。
【0023】
間隔板深溝35は、隣り合う間隔板浅溝36の間にある鉄心通風孔24aに対応する位置よりも半径方向内側まで延びた溝である。これらの間隔板深溝35は、溝底側(半径方向内側)で鉄心通風孔24aに連通し、鉄心通風孔24aを通る空気が半径方向外側に流れる流路を形成する。
【0024】
この間隔板深溝35は、所定の鉄心スロット25aの周方向位置が同じになるように形成される。間隔板深溝35に対応する鉄心スロット25aは、間隔板浅溝36に対応する鉄心スロット25aとは別の鉄心スロット25aとなる。
【0025】
間隔板深溝35は、間隔板浅溝36と同様に、複数の鉄心スロット25aのうち一スロットおきに対応する周方向位置に形成される。すなわち、間隔板深溝35および間隔板浅溝36は、周方向に交互に形成される。また、間隔板浅溝36および間隔板深溝35の各溝間のティースの周方向位置は、回転子鉄心21の鉄心スロット25a間のティースの周方向位置に揃うように構成されている。
【0026】
間隔板浅溝36内および間隔板深溝35内には、それぞれ回転子巻線28が軸方向に通るように配置される。
【0027】
回転子鉄心21の軸方向両側に配置された間隔板31、すなわち一対の間隔板31は、一方の側に配置された間隔板31の間隔板浅溝36の周方向位置と、反対側に配置された間隔板31の間隔板深溝35の周方向位置とが、互いに揃うように配置されている。
【0028】
この間隔板31は、例えば金属製で一体の金属円板から切削加工によって成形することができる。これにより、高速回転に耐えうる堅牢な構造とすることができる。またこの間隔板31は、例えば焼き嵌めにより軸3に嵌めて固定することができる。
【0029】
続いて本実施形態の作用について説明する。
【0030】
冷却空気60は、図示しないファンによって鉄心通風孔24a内に、軸方向の所定の向きに送り込まれる。そして、各間隔板31の間隔板通風孔34および間隔板深溝35を当該軸方向に通り抜ける。
【0031】
冷却空気60が間隔板通風孔34を通るときに冷却空気60の一部が半径方向外側に向かって分岐して、間隔板深溝35を通り、当該間隔板深溝35内の回転子巻線28の周囲を通って回転子20の外周側へ出る。間隔板深溝35を通る冷却空気60は、ファン効果等により、半径方向外側に流れやすくなる。
【0032】
このとき、回転子巻線28を冷却する。また、このとき固定子巻線52も冷却することができる。
【0033】
以上の説明からわかるように本実施形態によれば、回転電機の回転を高速にしても健全性を維持でき、しかも鉄心の内部の熱を空冷によって効果的に逃がすことができる。
【0034】
また、この例では、間隔板31を複数種類製作する必要がないため、製作時間等を短縮可能で、コスト低減に繋がる。
【0035】
上記の実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0036】
また、例えば、間隔板深溝35の周方向両側のティースの半径方向長さを短めに形成することで、間隔板浅溝36にも冷却空気60の一部を流すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…回転中心軸
3…軸
10…軸部材
20…回転子
21…回転子鉄心
22…鋼板
23…中央貫通孔
23a…鉄心中央貫通孔
24…通風孔
24a…鉄心通風孔
25…外側溝
25a…鉄心スロット
27…ティース
28…回転子巻線
31…間隔板
33…間隔板中央貫通孔
34…間隔板通風孔
35…間隔板深溝
36…間隔板浅溝
37…ティース
50…固定子
51…固定子鉄心
52…固定子巻線
53…ケーシング
60…冷却空気
65…空隙
図1
図2
図3