特許第5752586号(P5752586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752586
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】フォトカプラを用いた電流検出回路
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20150702BHJP
【FI】
   G01R19/00 B
   G01R19/00 P
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-281107(P2011-281107)
(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公開番号】特開2013-130506(P2013-130506A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】591212718
【氏名又は名称】株式会社正興電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】森田 伸一
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−289668(JP,A)
【文献】 特開平08−292806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトカプラの発光ダイオードを接続した1次側入力回路と、前記フォトカプラのフォトトランジスタを接続した2次側出力回路とを有する電流検出回路において、前記1次側回路の発光ダイオードと並列に、ある定格電流値で前記フォトカプラの動作電流の温度特性の勾配と逆の勾配の電流温度特性を持つ定電流素子または定電流回路を前記定格電流値で動作するように接続したことを特徴とするフォトカプラを用いた電流検出回路。
【請求項2】
前記定電流素子または定電流回路として、定電流ダイオードを用いたことを特徴とする請求項1記載のフォトカプラを用いた電流検出回路。
【請求項3】
前記フォトカプラの動作電流に対して、温度補償の大小に応じて、複数の定電流ダイオードを並列接続したことを特徴とする請求項2記載のフォトカプラを用いた電流検出回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトカプラを用いた電流検出回路に関し、特にその温度補償回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1次側回路と2次側回路を絶縁したい装置、例えば地絡検出器等に用いられる電流検出回路として、フォトカプラを用いた電流検出回路がある。
【0003】
このフォトカプラを用いた電流検出回路の基本構成は、図5に示すように、1次側回路にフォトカプラ1の発光ダイオード1aを接続し、2次側回路にフォトカプラ1のフォトトランジスタ1bを接続したものであり、1次側回路には発光ダイオード1aの動作値調整可変抵抗2と、逆流阻止ダイオードD1,D2が接続されている。この電流検出回路では、入力電流Iinがフォトカプラ1の発光ダイオード1aに流れ、入力電流Iinがある設定値(閾値)を超えると発光ダイオード1aから光が放射され、それをフォトトランジスタ1bが受光してフォトトランジスタ1bのコレクタ・エミッタ間に出力電流Ioutが流れる。出力電流Ioutは、ある範囲では入力電流Iinに比例する。
【0004】
ところで、図5に示すような基本構成のみの電流検出回路では、図6に示すように、フォトカプラの負の温度特性により、温度に対し負の勾配をもった動作特性(出力側に規定の信号が得られたときの入力電流値の特性)となり、温度の極値、例えば−20℃においては変化が大きくなりすぎる。
具体的には、図6のグラフにおいて、+20℃の時の動作電流の電流値1.04mAに対し、−20℃のときは1.19mAまで、14%以上変化している。
【0005】
このように、フォトカプラ1をそのまま用いた電流検出回路では、フォトカプラ1が温度変化に対し負の勾配、すなわち温度が上昇するとフォトカプラ回路の動作電流が減少し、温度が下降すれば逆に動作電流が増加する動作特性を有する。そのため、使用温度範囲が広い場合、その上限または下限の温度に近づくにつれ検出電流値の変化が著しくなり、精度が求められる用途では使用に適さない。
【0006】
従来においては、周囲温度の高さまたは低さに対応できる、温度による出力変動の少ない高価なフォトカプラを使用するか、周囲温度によるフォトカプラの出力変化を補正するための複雑な回路が必要であった。
【0007】
例えば、特許文献1においては、出力電圧の変動に応じたフィードバック信号を、受光素子と発光素子とを組み合わせたフォトカプラにより伝送して、前記出力電圧の安定化を図る電源装置のフィードバック回路において、前記フォトカプラの発光素子から受光素子への変換効率の、温度による変化を補償する温度補償素子(サーミスタ)を備えた電源装置のフィードバック回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−289668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前掲の特許文献1において記載された回路においては、温度補償素子であるサーミスタをフォトカプラの発光ダイオード側あるいはフォトトランジスタ側の抵抗器に並列に接続して、温度補償を行うようにしている。
【0010】
しかしながら、サーミスタを温度補償素子として用いると、サーミスタの抵抗値変化により間接的に電流値の補償をすることとなり、サーミスタに印加する電圧を定電圧化する必要があるため回路構成が複雑化し、回路設計も難しいという問題があった。
【0011】
そこで本発明は、回路構成が簡単で、広範囲に渡って温度特性を精度よく補償することのできるフォトカプラを用いた電流検出回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、フォトカプラの発光ダイオードを接続した1次側入力回路と、前記フォトカプラのフォトトランジスタを接続した2次側出力回路とを有する電流検出回路において、前記1次側回路の発光ダイオードと並列に、ある定格電流値で前記フォトカプラの動作電流の温度特性の勾配と逆の勾配の電流温度特性を持つ定電流素子または定電流回路を前記定格電流値で動作するように接続したことを特徴とするフォトカプラを用いた電流検出回路である。
本発明においては、フォトカプラによる電流検出回路の、フォトカプラ1次側の発光ダイオードと並列に、フォトカプラの温度特性の勾配と逆の温度勾配をもつ定電流素子または定電流回路を設け、温度特性勾配を相殺する。
前記定電流素子または定電流回路として、定電流ダイオードを用いることができる。定電流ダイオードは、この素子のみで付加部品は要らないため、部品点数は極小となり、占有面積またコストの面で有利である。
フォトカプラの動作電流に対して、温度補償の大小に応じて、複数の定電流ダイオードを並列接続することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フォトカプラを用いた電流検出回路において、1次側回路の発光ダイオードと並列に、ある定格電流値でフォトカプラの動作電流の温度特性の勾配と逆の勾配の電流温度特性を持つ定電流素子または定電流回路、例えば定電流ダイオードを前記定格電流値で動作するように接続したことにより、フォトカプラの温度特性の勾配が、定電流素子または定電流回路の逆の温度勾配により相殺され、広い温度範囲に渡って検出電流変化の少ない電流検出回路を構成することができる。
これにより、高温や低温になりやすい場所においても安定した検出が可能な電流検出回路を、簡単な回路構成でありながら、広範囲に渡って温度特性を精度よく補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る電流検出回路を示す回路図である。
図2】本発明の実施の形態に用いる定電流ダイオードの温度―ピンチオフ電流特性を示すグラフである。
図3】本発明の実施の形態における温度補償後の周囲温度―動作電流特性を示すグラフである。
図4】温度補償なしの電流検出回路と本発明による温度補償ありの実施形態における電流検出回路の作用を示す回路図である。
図5】温度補償なしの電流検出回路の基本構成を示す回路図である。
図6図5の電流検出回路の周囲温度−動作電流特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施の形態に係る定電流回路は、図1に示すように、1次側回路にフォトカプラ1の発光ダイオード1aを接続し、2次側回路にフォトカプラ1のフォトトランジスタ1bを接続したものであり、1次側回路には発光ダイオード1aの動作値調整可変抵抗2と、逆流阻止ダイオードD1,D2が接続されている。そして、フォトカプラ1の発光ダイオード(以下「LED」と言う。)1aに並列に、定電圧素子としての定電流ダイオード(Current Regulative Diode、以下「CRD」と言う。)3が接続されている。
【0016】
LEDに定電流を供給する回路としては、トランジスタやオペアンプを使用した定電流回路が用いられるが、構成が複雑で、設計も容易ではない。
【0017】
CRDは、それ自体で(1個で)常に一定の電流を流すことのできる素子であり、LEDの駆動素子としての利用が図られている。しかし、CRDは通常は、LEDに直列に接続されて、LEDに流れる電流を一定に調整するものである。
【0018】
本発明の実施の形態においては、LED1aに流す電流を一定にするためにCRD3を用いるのではなく、フォトカプラ1の1次側LED1aと並列に、温度に対し正の勾配定電流(LED1aが負の勾配であるのとは逆)となる特性を持つCRD3を設けることにより温度補償を行い、温度変化に対するフォトカプラ1の回路動作特性の変化を小さくするようにした。
【0019】
CRD3はその定格の定電流値により、図2のように温度に対する勾配が異なる。概ね定格値が0.5mAを境に、それより定格値が小さいものが正の温度勾配、大きいものが負の温度勾配である。したがって本実施の形態では0.5mAより小さい定格値で温度勾配がフォトカプラ1の入力電流変化の補償に適した勾配のものを選ぶ必要がある。ここで実験の結果、CRD3の定格電流値が小さいものほどフォトカプラ1の補償に適した電流変化特性を持つことが分かった。そのため容易に入手可能な最低の定格値として0.1mAのCRD3の採用を考えたが、図6に示すように、周囲温度が50℃から−20℃でおよそ0.2mAの電流増加があるフォトカプラ1の温度補償には電流値そのものが不足する。
【0020】
そこで、本実施の形態では、図1の( )内に示すように、定格0.1mAのCDRを2本に増やした。すなわちCDR3の他に同温度特性のCDR4を並列に接続し、電流値を確保しつつ最適な電流変化特性を持つようにした。
【0021】
これらにより図1に示した実施の形態の電流検出回路において、温度補償なしの状態の図5の回路に比べ、フォトカプラ1を用いた電流検出回路の動作特性が大幅に改善された。
【0022】
実際の変化値を図3のグラフに示す。図6に比較し、温度に対する動作温度の変化量が少なくなっているのが分かる。図3において、具体的には+20℃のときの電流値1.00mAに対し、−20℃のとき0.97mAまでの変化に収まっている。
【0023】
以上のように、このフォトカプラの温度補償回路を搭載した直流地絡検出器の温度特性を大幅に改善し、より広い温度範囲に渡って動作電流の変化を低減することが可能となった。
【0024】
以上の実施の形態は、直流地絡検出器のフォトカプラ回路への適用例を示したが、例えばフォトカプラを使用したインターフェース装置において入力電流の温度依存性を減らし、動作電圧を広い温度に渡って安定化する応用なども考えられる。その例を図4に示す。図4中、5は電流調整抵抗、6は降圧抵抗である。
【0025】
図4(a)では、温度補償を行わない場合、動作電圧は入力電流と降圧抵抗6の積にフォトカプラ1の順電圧efを加えたものとなる。このため、フォトカプラ1の入力電流ILが温度により変化すると、動作電圧も変化する。
【0026】
これに対し、図4(b)のように、CRD3,4をフォトカプラ1の1次側に並列に接続することにより、動作電圧は広い温度範囲に渡って一定となり、動作が安定する。
【0027】
以上は、フォトカプラ1の温度勾配が負である場合について説明したが、もしフォトカプラの温度勾配が正であった場合も、並列に接続するCRDを負の温度勾配のものとすれば、同様に温度補償が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
上述したように、本発明は、回路構成が簡単で、広範囲に渡って温度特性を精度よく補償することのできるフォトカプラを用いた電流検出回路として、屋外で使用される太陽光発電装置や電気自動車の電源装置における直流地絡検出器、あるいは電子機器のインターフェース装置等の分野において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 フォトカプラ
1a 発光ダイオード
1b フォトトランジスタ
2 動作値調整可変抵抗
3,4 定電流ダイオード(CRD)
5 電流調整抵抗
6 降圧抵抗
D1,D2 逆流阻止ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6