(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752593
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】口腔感染の治療および予防組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/343 20060101AFI20150702BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20150702BHJP
A61K 36/18 20060101ALI20150702BHJP
A61K 36/00 20060101ALI20150702BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20150702BHJP
A61P 31/02 20060101ALI20150702BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20150702BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20150702BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20150702BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20150702BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20150702BHJP
A61K 9/68 20060101ALI20150702BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20150702BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20150702BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
A61K31/343
A61K31/353
A61K35/78 C
A61K35/78 X
A61P1/02
A61P31/02
A61P31/10
A61K31/58
A61K35/78 J
A61K9/20
A61K9/10
A61K9/68
A61K8/49
A61K8/63
A61Q11/00
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-505396(P2011-505396)
(86)(22)【出願日】2009年4月6日
(65)【公表番号】特表2011-518792(P2011-518792A)
(43)【公表日】2011年6月30日
(86)【国際出願番号】EP2009002515
(87)【国際公開番号】WO2009129926
(87)【国際公開日】20091029
【審査請求日】2012年3月28日
(31)【優先権主張番号】MI2008A000746
(32)【優先日】2008年4月24日
(33)【優先権主張国】IT
(31)【優先権主張番号】08425422.6
(32)【優先日】2008年6月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591092198
【氏名又は名称】インデナ エッセ ピ ア
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ボンバルデッリ、 エツィオ
(72)【発明者】
【氏名】フォンタナ、 ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】ジオリ、 アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】モラッツォーニ、 パオロ
(72)【発明者】
【氏名】リヴァ、 アントネーラ
(72)【発明者】
【氏名】ロンキ、 マッシモ
【審査官】
上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−014513(JP,A)
【文献】
米国特許第04908211(US,A)
【文献】
特開昭64−085916(JP,A)
【文献】
特開平04−082837(JP,A)
【文献】
特開昭62−126128(JP,A)
【文献】
特表2000−507609(JP,A)
【文献】
特表2000−507958(JP,A)
【文献】
特開昭63−267714(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00464297(EP,A1)
【文献】
特開2007−016021(JP,A)
【文献】
特開平03−077817(JP,A)
【文献】
特開2006−083100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 8/00−99
A61K 9/00−72
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)サンギナリンまたはケレリトリンであるベンゾフェナントリジンアルカロイド、
b)下記式:
【化1】
[式中、Rは、水素または2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキル鎖、またはアミノ基、ニトロ基で置換されている該アルキル鎖である。]
のベンゾフラン化合物、
c)カテキンポリフェノール
を含む、口腔衛生
のための、口腔内における細菌および真菌膜の形成を低減、または口臭および歯垢の形成を低減するための組成物。
【請求項2】
a)サンギナリンおよび/またはケレリトリンであるベンゾフェナントリジンアルカロイド;
b)前記ベンゾフラン化合物;
c)モノマーまたはオリゴマーカテキンポリフェノール
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
種々の成分が、以下のインターバル(1単位用量あたりの重量):
a)サンギナリンまたはケレリトリン:0.5〜10mg;
b)ベンゾフラン化合物:5〜25mg;
c)カテキンポリフェノール:10〜100mg
で存在する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
種々の成分が、以下のインターバル(1単位用量あたりの重量):
a)サンギナリンまたはケレリトリン:2.5〜5mg;
b)ベンゾフラン化合物:3〜10mg;
c)カテキンポリフェノール:40〜50mg
で存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ベンゾフェナントリジンアルカロイドのサンギナリンまたはケレリトリンが、遊離もしくは塩化形態、実質的に純粋なそのままの形態、またはサングイナリアカナデンシス、マクレアヤコルダタもしくはマクレアヤマクロカルパの抽出物の形態で存在する、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記ベンゾフェナントリジンアルカロイドが、ルテイン酸で塩化された形態で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ベンゾフラン化合物が、クラメリアトリアンドラ、エウポマティアラウリナまたはピペル属種の抽出物の形態で存在する、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
カテキンポリフェノールが、カテキン、エピカテキンおよびガロカテキン、ならびにC3ヒドロキシルでのその没食子酸エステルのいずれかの単位の形態で存在する、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
カテキンポリフェノールが、ブドウ(Vitis vinifera)、セイヨウトチノキ(Aesculus hippocastanum)、茶(Camellia sinensis)またはカカオ(Theobroma cacao)の種または地上に生えている部分の抽出物の形態で存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
口溶け錠剤、口内洗浄剤、口腔内に分散するゲル剤、またはチューインガムの形態である、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概要
本発明は、口腔感染の治療および予防に有用である、ベンゾフェナントリジンアルカロイド、ベンゾフラン化合物およびカテキンポリフェノールを含む組成物に関する。
【0002】
本発明の組成物は、口腔衛生、ならびに歯生(dentition)、インプラント(implant)および口腔手術の合併症に関わる多様な由来の病理形態の治療および予防に有用である、抗細菌、抗真菌および抗酵素活性を有する。
【0003】
前記組成物は、口腔でゆっくりと溶解する錠剤の形態または口内洗浄剤もしくはチューインガムの形態で投与することができる。
【背景技術】
【0004】
従来技術
口内における細菌または真菌の膜の形成は、非常に多くの場合、う歯、歯槽膿漏ならびに歯根膜および歯肉の感染のような障害を生じる。特に、細菌または真菌膜の形成は、インプラント歯科学、義歯の維持および一般に高齢の歯科患者において非常に一般的である。
【0005】
ベンゾフェナントリジンアルカロイドは、特にグラム陽性細菌において抗細菌および抗真菌活性を有し、細菌膜を破ることができ、したがって病原体を制菌性化合物または抗生物質に敏感にさせることが、文献において報告されている。
【0006】
ネオリグナン構造を有するベンゾフラン化合物は、細菌および真菌膜の形成を阻害すること、または既に形成された膜を破り、したがって再形成を予防することも知られており、そのような化合物は、クラメリアトリアンドラ(Krameria triandra)、エウポマティアラウリナ(Eupomatia laurina)およびピペル属種(Piper sp.)の抽出物において見出され、特にオイポマテノイド(eupomatenoid)および2−(2',4'−ジヒドロキシフェニル)−5−プロペニルベンゾフランである。
【0007】
口腔内に存在するα−アミラーゼ、グルコシダーゼおよびタカジアスターゼのような酵素は、炭水化物の分解を促進するが、このことは口腔内における細菌膜の形成に寄与するので、口腔衛生にとって非常に有害であるグルコースの形成をもたらす。したがって、これらの酵素の阻害剤は、細菌膜の形成を防止することを助ける。
【0008】
プロシアニジン、特に、没食子酸でエステル化されているカテキンオリゴマーは、グルコシダーゼおよびタカジアスターゼ阻害剤である。
【0009】
ブドウ(Vitis vinifera)から抽出されたポリフェノールは、α−アミラーゼおよびグルコシダーゼの強力な阻害剤である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の説明
本発明は、
口腔内における細菌および真菌膜の形成を低減し、したがって口臭および歯垢の形成を低減する抗細菌、抗真菌および抗酵素活性を有する、
a)ベンゾフェナントリジンアルカロイド;
b)ベンゾフラン化合物;および
c)カテキンポリフェノール
を含む組成物に関する。
【0011】
好ましいベンゾフェナントリジンアルカロイドは、ケレリトリンおよびサンギナリンであるが、一方、好ましいベンゾフラン化合物は、クラメリアトリアンドラ、エウポマティアラウリナおよびピペル属種の抽出物において見出されるネオリグナン構造を有する化合物であり、特にオイポマテノイドおよび2−(2',4'−ジヒドロキシフェニル)−5−プロペニルベンゾフランである。
【0012】
本発明によると、ベンゾフラン化合物は、以下の式:
【0014】
[式中、Rは、水素または2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキル鎖、またはアミノ基、ニトロ基で置換されているアルキル鎖であり;Rは、好ましくは水素またはC1〜C3アルキルである]を有する。
【0015】
前記のベンゾフラン化合物は既知であり、従来の方法によって、例えば2−フェノキシ−2',4'−ジメトキシアセトフェノンで適切に置換されたフェノールの、Chimie Therapeutique 1973,8,398に報告された条件下での反応、続いてポリリン酸の存在下でのキシレンにおける環化、そしてメトキシおよびヒドロキシ基の加水分解によって、調製することができる。
【0016】
現在、驚くべきことに、本発明の組成物は、別々に投与される種々の成分の合計で得られるものを超える極めて強力な抗細菌、抗真菌および抗酵素活性を有することが見出されている。前記効果は、当該の関連する種々の成分の間に生じる相乗作用機構に起因しうる。
【0017】
したがって、本発明の組成物は、口腔衛生において、ならびに歯生、インプラント歯科学および口腔手術の合併症に関わる多様な由来の病理形態の治療および予防において有用である。
【0018】
より詳細には、本発明は、
a)サンギナリンおよび/またはケレリトリンおよび/またはこれらの誘導体から選択されるベンゾフェナントリジンアルカロイド;
b)上記に特定されたベンゾフラン化合物;
c)モノマーまたはオリゴマーカテキンポリフェノール
を含む組成物に関する。
【0019】
本発明によると、組成物は、以下のインターバル(intervals)で種々の成分を含有する(1単位用量あたりの重量):
a)ベンゾフェナントリジンアルカロイド:0.5〜10mg;
b)ベンゾフラン:5〜25mg;
c)ポリフェノール化合物:10〜100mg。
【0020】
特に好ましい態様によると、組成物は、以下のインターバルで種々の成分を含有する(1単位用量あたりの重量):
a)ベンゾフェナントリジンアルカロイド:2.5〜5mg;
b)ベンゾフラン化合物:3〜10mg;
c)ポリフェノール化合物:40〜50mg。
【0021】
ベンゾフェナントリジンアルカロイドのサンギナリンおよびケレリトリンは、遊離もしくは塩化形態、実質的に純粋なそのままの形態(as such in substantially pure form)、またはサングイナリアカナデンシス(Sanguinaria canadensis)、マクレアヤコルダタ(Macleaya cordata)もしくはマクレアヤマクロカルパ(Macleaya macrocarpa)の抽出物の形態で存在しうる。好ましい態様によると、ベンゾフェナントリジンアルカロイドは、ルテイン酸で塩化された形態で存在する。アルカロイドの硫酸塩または塩化物をルテイン酸のナトリウムまたはカリウム塩と反応させ、続いて結晶化させて調製した前記塩は、本発明の目的に特に効果的であることが証明されている。
【0022】
上記に記載されたベンゾフラン構造を有する化合物は、そのままで存在しうるか、またはクラメリアトリアンドラ、エウポマティアラウリナおよびピペル属種の抽出物など、それらを含有する抽出物の形態で存在しうる。特に活性であることが証明されている、クラメリアトリアンドラから単離された化合物は、オイポマテノイド6およびネオリグナン2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−5−(E)−プロペニル−ベンゾフランであり、これらはグラム陽性細菌、真菌および嫌気性細菌の多数の菌株において抗細菌および抗真菌活性を実証している。
【0023】
ポリフェノール化合物は、カテキン、エピカテキンおよびガロカテキン、ならびにC3ヒドロキシルでのその没食子酸エステルのようなモノマー単位、または好ましくは5単位までのオリゴマー単位の形態で存在しうる。特に好ましい態様によると、オリゴマー単位は、C3において没食子酸によりエステル化されている。ポリフェノール化合物は、ブドウ(vitis vinifera)、セイヨウトチノキ(Aesculus hippocastanum)、茶(Camellia sinensis)、カカオ(Theobroma cacao)などの種または気生部分
(地上に生えている部分)の抽出物の形態で存在することもできる。これらの化合物は、特に、口腔衛生、口臭および歯肉の感染において指示されている。
【0024】
本発明の組成物は、口溶け(melt-in-the-mouth)錠剤、口内洗浄剤、口腔内に分散するゲル剤、チューインガムなどとして都合良く処方される。前記製剤は、“Remington's Pharmaceutical Handbook”,Mack Publishing Co.,N.Y.,USAに記載されているものなど、周知の従来の方法にしたがって、適切な賦形剤と一緒に調製することができる。
【0025】
本発明の製剤は、治療される障害に応じて、24時間から数日間に5回まで患者に投与される。口腔衛生のためのみには、投与回数は2回に低減することができ、主要な食事の際に摂取される。
【実施例】
【0026】
下記に記載されている例は、範囲を制限することなく本発明を説明する。
【0027】
例1−ベンゾフラン化合物の調製
工程A. 2−フェノキシ−2',4'−ジメトキシアセトフェノン(a)の調製
25mLの2−ブタノン中の2−ブロモ−2',4'−ジメトキシアセトフェノン(5g、19.1mmol)の溶液を、20.0mLの同じ溶媒中のフェノール(1.8g、19.1mmol)、K
2CO
3(2.6g、19.1mmol)およびKI(41.5mg、0.25mmol)の懸濁液に加えた。次に溶液を20時間還流した。混合物を濾過し、溶媒を真空下で蒸発させた。得られた残渣をEtOAcに溶解し、NaOHの10%水溶液、次に水で洗浄した。有機抽出物をNa
2SO
4で乾燥し、濾過し、真空下で蒸発させた。最後に、粗残渣をEt
2Oで洗浄し、低圧で乾燥して、4.4g(収率:84%)の標記化合物をもたらした。
【0028】
工程B. 2−(2',4'−ジメトキシフェニル)ベンゾフラン(b)の調製
12gのポリリン酸を、130.0mLのキシレン中の工程Aで得られた化合物(4.4g、16.2mmol)の溶液に加えた。混合物を2時間環流し、次に室温に放置して冷ました。次に、溶液をデカントし、低圧で蒸発させた。得られた残渣(3.7g、収率:90%)を、更に精製することなく次の工程に使用した。
【0029】
工程C. −(2',4'−ジヒドロキシフェニル)ベンゾフラン(1)の調製
工程Bで調製した化合物(3.7g、14.5mmol)およびピリジン塩酸塩(11.1g、96.4mmol)の混合物を、225℃で45分間加熱した。形成された赤色生成物を10%HClに注いだ。混合物をEtOAcで繰り返し洗浄し、合わせた有機層をNa
2SO
4で乾燥し、蒸発させた。提供するために、残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc=7:3)により精製して、最終化合物を、ベンゼンからの結晶化の後、収率41%(1.36g)で得た。
【0030】
処方例1−口溶け錠剤
ベンゾフェナントリジンアルカロイド 2.5mg
ベンゾフラン化合物 10.0mg
ブドウ(Vitis vinifera)抽出物 50.0mg
キシリトール 500.0mg
マンニトール 400.0mg
カンゾウ風味剤 50.0mg
ステアリン酸マグネシウム 10.0mg
アセスルファムK 5.0mg。
【0031】
処方例2−経口ゲル剤
ベンゾフェナントリジンアルカロイド 3.0mg
ベンゾフラン化合物 10.0mg
茶(Camellia sinensis)抽出物 50.0mg
グリセリン 400.0mg
液体ソルビトール 200.0mg
ヒドロキシエチルセルロース 30.0mg
ミント風味剤 20.0mg
メチルパラヒドロキシベンゾエート 10.0mg
アセスルファムK 5.0mg
精製水 2.0gにする十分量。