(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態である超電導電流リード8を適用した超電導マグネット装置1を示す概略構成図である。超電導電流リード8の説明に先立ち、この超電導電流リード8を適用する超電導マグネット装置1について説明する。
【0016】
超電導マグネット装置1は、真空容器2、超電導コイル3、伝熱部材4、ギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon:以下、GMと略す)冷凍機5、熱シールド板6、1段電流ライン7、超電導電流リード8、及び2段電流ライン9等を有する。
【0017】
真空容器2は略円筒状の形状を有している。真空容器2には、GM冷凍機5が固定されている。超電導コイル3は、超電導線材により形成されている。
【0018】
超電導コイル3は、熱シールド板6で囲まれた空間内に設けられている。この超電導コイル3は、伝熱部材4を介して後述する低温側冷却ステージ5dに接続されている。よって、超電導コイル3はGM冷凍機5により例えば4K程度に冷却され、これにより超電導コイル3は超電導状態となる。
【0019】
この超電導コイル3は、後述する超電導電流リード8の低温側に接続されている。そして、超電導コイル3は、真空容器2の外部に設けられた図示しない電源から、後述する1段電流ライン7、超電導電流リード8、及び2段電流ライン9を介して電力が供給される。
【0020】
真空容器2は、支持体2aを介して、伝熱部材4と伝熱部材4に取り付けられた超電導コイル3の荷重を支持している。
【0021】
熱シールド板6は、真空容器2の内部に設けられている。熱シールド板6は、超電導コイル3へ侵入する輻射熱を抑制するためのものである。熱シールド板6は、銅、アルミニウム等の電気伝導率の大きい材料により形成されており、例えば略円筒状の形状を有している。
【0022】
GM冷凍機5は、1段目冷却シリンダ5a及び2段目冷却シリンダ5bよりなる多段冷却シリンダ構造を有している。1段目冷却シリンダ5aは真空容器2の内部に挿入されており、2段目冷却シリンダ5bは熱シールド板6で囲まれた空間に挿入されている。
【0023】
熱シールド板6の天板の上部には、1段目冷却シリンダ5aにより冷却される高温側冷却ステージ5cが接続されている。よって、熱シールド板6は、高温側冷却ステージ5cにより冷却される。
【0024】
2段目冷却シリンダ5bの下側先端には、低温側冷却ステージ5dが接続されている。低温側冷却ステージ5dは、2段目冷却シリンダ5bにより冷却される。
【0025】
この低温側冷却ステージ5dは、伝熱部材4を介して超電導コイル3に熱的に接続されている。これにより超電導コイル3は、例えば4K程度まで冷却される。なお、高温側冷却ステージ5c及び低温側冷却ステージ5dは、銅、アルミニウム等の高熱伝導率部材で形成されている。
【0026】
1段電流ライン7、超電導電流リード8、及び2段電流ライン9は、図示しない電源から超電導コイル3に電流を流すためのものである。電源は、1段電流ライン7に接続されている。また、1段電流ライン7は超電導電流リード8の高温側電極21aに接続されており、また超電導電流リード8の低温側電極21bは2段電流ライン9を介して超電導コイル3に接続されている。よって、電源から供給される電流は、1段電流ライン7、超電導電流リード8、2段電流ライン9を介して超電導コイル3に供給される。
【0027】
1段電流ライン7としては、銅、アルミニウム等の電気伝導率の大きい材料を用いることができる。2段電流ライン9としては、銅、アルミニウム等の電気伝導率の大きい材料を用いることができ、或いは、これらの電気伝導率の大きい材料と併せてBi2223、Bi2212、Y123、MgB2等の超電導材料を用いることができる。
【0028】
なお、本実施形態では冷凍機冷却型の超電導マグネット装置1を例に挙げているが、冷凍機冷却型超電導マグネット装置に代えて、例えば液体ヘリウムを冷媒とする液体冷却型超電導マグネット装置に本実施形態に係る超電導電流リード8を適用してもよく、或いは、例えば液体ヘリウムの蒸発ガスを冷媒とするガス冷却型超電導マグネット装置に適用することも可能である。
【0029】
次に、本実施形態に係る超電導電流リード8について、
図2及び
図3を用いて説明する。
【0030】
図2は超電導電流リード8の斜視図であり、
図3(A)は超電導電流リード8を正面視した図(
図2に矢印Aで示す方向から見た図)であり、
図3(B)は超電導電流リード8を右側面視した図(
図2に矢印Bで示す方向から見た図)である。
【0031】
各図に示すように、本実施形態に係る超電導電流リード8は、荷重支持体20、高温側電極21a,低温側電極21b、超電導体22等を有した構成とされている。
【0032】
荷重支持体20は、高温側電極21aと低温側電極21bが配設される部材である。荷重支持体20は金属からなり、円柱(円筒)形状とされている。また荷重支持体20を介した熱侵入を防ぐ観点から、荷重支持体20は内部に空間を有する中空円筒形状とされている。
【0033】
ここでいう金属は単体金属に限定されるものではなく、合金も含み、金属であれば特に限定されず使用することができる。具体的には、例えばステンレス鋼、真鍮、銅、アルミなどが好ましく使用できる。
【0034】
この中でも熱伝導率が小さいステンレス鋼が好ましく使用でき、オーステナイト系ステンレス鋼が特に好ましく使用できる。このように、荷重支持体20として金属を用いた場合、超電導体22との熱収縮率の差が小さいため、冷却時に荷重支持体20と略平行に設けている超電導体22に発生する歪みを小さくすることができる。
【0035】
高温側電極21aは、上記構成とされた荷重支持体20の高温側端部(図中、上側の端部)に固定される。また低温側電極21bは、荷重支持体20の低温側端部(図中、下側の端部)に固定される。よって固定状態において、一対の電極21a,21bは、荷重支持体20により離間した状態で支持される。
【0036】
また、高温側電極21aには荷重支持体20の高温側が挿入装着される荷重支持体装着穴28aが形成され、低温側電極21bには荷重支持体20の低温側が挿入装着される荷重支持体装着穴28bが形成されている(
図3参照)。この各荷重支持体装着穴28b,28bの内壁には、荷重支持体20と各電極21a,21bを固定するのに用いるロウ材が配設されるロウ材装着溝29a,29bが形成されている。
【0037】
また、高温側電極21aには、超電導体22を装着するための高温側超電導体装着溝30aが形成されている。同様に、低温側電極21bには、超電導体22を装着するための低温側超電導体装着溝30bが形成されている。
【0038】
上記の高温側電極21aは、電気の良導体である銅、アルミニウム、真鍮等の金属により構成されている。また、高温側電極21aと超電導体22の高温側端部22aとの間は、例えばはんだ、インジウム、導電性樹脂等の導電性材料により接合される(本実施形態では、はんだを使用)。
【0039】
また上記の低温側電極21bは、電気の良導体である銅、アルミニウム、真鍮等の金属により構成されている。この低温側電極21bと超電導体8の低温側端部22bとの間は、例えばはんだ、インジウム、導電性樹脂等の導電性材料により接合される(本実施形態では、はんだを使用)。
【0040】
高温側電極21aの上面には、略Z字状に湾曲した高温側外部荷重吸収部23aを有した配線部26が配設されている。この配線部26は、1段電流ライン7が接続される。
【0041】
高温側外部荷重吸収部23aは、超電導マグネット冷却時に各部材の収縮によって生じる変位の影響や、超電導マグネット運転時に、超電導マグネット由来のローレンツ力による影響等によって超電導電流リードが破損することを防止するものである。
【0042】
よって高温側外部荷重吸収部23aには、弾性部材を用いることが好ましく、具体的には、コイルばね、板ばね等を用いることができる。本実施形態では、これらの弾性部材として金属等の導電体を用いることにより配線部材としても機能させている。しかしながら、配線とは別体の構成とし、絶縁体の弾性部材とすることも可能である。
【0043】
また、低温側電極21bの下面には、U字状に湾曲した低温側外部荷重吸収部23bが配設されている。この低温側外部荷重吸収部23bは、上部が低温側電極21bに固定されると共に下部が基部27に固定されている。また、低温側外部荷重吸収部23bは、2段電流ライン9を介して超電導コイル3に接続される。なお、基部27は伝熱部材4に固定される。
【0044】
低温側外部荷重吸収部23bは、前記の高温側外部荷重吸収部23aと同様に、超電導マグネット冷却時に各部材の収縮によって生じる変位の影響や、超電導マグネット運転時に、超電導マグネット由来のローレンツ力による影響等によって超電導電流リードが破損することを防止するものである。
【0045】
よって低温側外部荷重吸収部23bも、弾性部材を用いることが好ましく、コイルばね、板ばね等を用いることができる。また本実施形態では、前記の高温側外部荷重吸収部23aと同様に、弾性部材として金属等の導電体を用いて配線部材として機能させているが、絶縁体の弾性部材とすることも可能である。
【0046】
なお、外部荷重吸収部は高温側電極又は低温側電極に選択的に設けることも可能であるが、超電導体22の保護の面からは本実施形態のように両方に外部荷重吸収部を有することがより好ましい。
【0047】
超電導体22は、高温側電極21aと低温側電極21bとを電気的に接続するように設けられている。よって、超電導体22は、高温側電極21aから低温側電極21bに向かって延在するように設けられている。
【0048】
超電導体22としては、例えばBi2223、Bi2212、Y123、MgB2等の超電導材料を用いることができる。また、超電導体22が超電導テープ線材であるときは、例えば、銀等の金属を母材としてBi2223、Bi2212等の多芯線が被覆されてなる超電導線材、或いは、ハステロイ等の金属テープ基材上にY123等の薄膜を堆積してなる超電導線材、等の各種の超電導テープ線材を用いることができる。
【0049】
ここで、高温側電極21a及び低温側電極21bの各々の側面に注目する。
【0050】
高温側電極21aの側面部(超電導体22の高温側端部22aが配設される面と隣接する面)には、位置決め用ネジ孔31aが形成されている。同様に、低温側電極21bの側面部(超電導体22の高温側端部22bが配設される面と隣接する面)にも、位置決め用ネジ孔31bが形成されている。
【0051】
位置決め用ネジ孔31a,31bは、後述するように超電導電流リード8の製造工程において、一対の電極21a,21b間の位置決めを行うのに用いるものである。この位置決め用ネジ孔31a,31bは請求項に記載した位置決め部に相当し、電極21a,28aにドリル加工等により穴加工した後、ネジ加工を行うことにより形成される。
【0052】
この位置決め用ネジ孔31a,31bを形成することにより、各電極21a,21bの位置決め用ネジ孔31a,31bの形成位置における熱容量を低減することができる。即ち、各電極21a,28aの位置決め用ネジ孔31a,31bが形成された部位近傍における熱抵抗を大きくすることができる。
【0053】
これにより、高温側電極21aにおいては、高温側外部荷重吸収部23aから荷重支持体20への熱の侵入を抑制することができる。また、低温側電極21bにおいては、荷重支持体20から超電導コイル3への熱の侵入を抑制することができる。よって、超電導体22及び超電導コイル3への外部熱の侵入を有効に防止することができる。
【0054】
また、位置決め用ネジ孔31a,31bの形成位置に注目すると、各位置決め用ネジ孔31a,31bは各電極21a,21bの超電導体22が配設される位置(超電導体装着溝30a,30bの形成位置)から離間した位置に配置されている。具体的には、
図3(B)の側面視した状態において、各電極21a,21bの側面の超電導体22が配設された側の縁部(
図3(B)に矢印C1で示す)と反対側の縁部(
図3(B)に矢印C2で示す)に近い位置に配設されている。
【0055】
ここで、電源から供給される電流が各電極21a,21b内を流れるときの電流密度に注目する。
図2及び
図3(B)に、超電導体22の装着位置近傍における電流密度の大きさと、位置決め用ネジ孔31a,31bの形成位置における電流密度の大きさを、模式的に矢印で示している。
【0056】
各電極21a,21b内を流れる電流密度は、超電導体22の装着位置近傍においては電流密度が高く、超電導体22の装着位置から離れるに従い電流密度は低くなる。よって、各図に示すように超電導体22の装着位置近傍における電流密度A1は大きく、超電導体22の装着位置から離間した位置決め用ネジ孔31a,31bの形成位置における電流密度A2は小さくなっている。
【0057】
このように本実施形態では、各電極21a,21bにおいて電流密度の低い部位に位置決め用ネジ孔31a,31bを形成している。このため、位置決め用ネジ孔31a,31bを各電極21a,21bに形成しても、実質的に各電極21a,21bの電気抵抗を増大させることにはならない。
【0058】
従って、本実施形態に係る超電導電流リード8によれば、各電極21a,21bに位置決め用ネジ孔31a,31bを形成することにより、電気的特性を劣化させることなく、各電極21a,21bを介して外部の熱が超電導コイル3に伝達するのを抑制することが可能となる。
【0059】
なお、上記した実施形態では、位置決め部としてネジ孔を電極21a,21bに形成した例を示した。しかしながら、位置決め部はネジ孔に限定されるものではなく、凹部及び溝等によっても、上記の実施形態と同様の効果を実現することが可能である。
【0060】
次に、上記構成とされた超電導電流リード8の製造方法について説明する。
【0061】
図4は、超電導電流リード8を製造する際に用いる超電導電流リード用治具40(以下、単にリード用治具40という)を示している。超電導電流リード8の製造方法の説明に先立ち、説明の便宜上、先ずリード用治具40について説明する。
【0062】
リード用治具40は、後述する超電導電流リード組立体10が装着されるものである。このリード用治具40は、基台41、電極位置決め部材42、及び固定部材43等を有している。
【0063】
この基台41、電極位置決め部材42、及び固定部材43は、いずれも金属材料からなる板状部材である。この基台41、電極位置決め部材42、及び固定部材43の金属材料としては、荷重支持体20及び電極21a,21bと熱膨張係数が同一或いは近似した金属材料であることが望ましい。本実施形態では、この金属材料としてステンレスを採用している。
【0064】
基台41は板状の部材であり、その上部に超電導電流リード組立体10が載置されるものである。
【0065】
電極位置決め部材42は、その上部に位置決めボルト45aが回転可能に装着されている。また、電極位置決め部材42の下部には、位置決めボルト45bが回転可能に装着されている。
【0066】
この位置決めボルト45aの形成位置は、位置決め用ネジ孔31aの形成位置に高精度に対応するよう設定されている。また、位置決めボルト45bの形成位置は、位置決め用ネジ孔31bの形成位置に構成に対応するよう設定されている。
【0067】
また、位置決めボルト45aと位置決めボルト45bとの離間距離は、高温側電極21aと低温側電極21bの離間距離に高精度に対応するよう設定されている。更に、位置決めボルト45aは高温側電極21aに形成された位置決め用ネジ孔31aに螺合するよう構成されており、位置決めボルト45bは低温側電極21bに形成された位置決め用ネジ孔31bに螺合するよう構成されている。
【0068】
位置決めボルト45aを位置決め用ネジ孔31aに螺着すると共に、位置決めボルト45bを位置決め用ネジ孔31bに螺着することにより、各電極21a,21bは電極位置決め部材42に固定される。これにより、各電極21a,21bは、電極位置決め部材42により既定位置(これについては後述する)に高精度に位置決めされる。
【0069】
固定部材43は、上記の電極位置決め部材42を基台41に固定するものである。この固定部材43の上端部43aは固定用ボルト46により電極位置決め部材42に固定され、下端部43bは固定用ボルト47により基台41に固定される。よって、固定部材43を介して基台41に固定されることにより、電極位置決め部材42は基台41に対して位置決めがされる。
【0070】
なお、上端部43a及び下端部43bは固定部材43に対して所定の角度を有しており、よって固定部材43は基台41に対して斜めに延出した構成となっている。
【0071】
続いて、上記構成とされたリード用治具40を用いた超電導電流リード8の製造方法について説明する。
図5乃至
図9は、超電導電流リード8の製造方法を説明するための図である。
【0072】
図5は、荷重支持体20に高温側電極21a及び低温側電極21bを装着し、超電導電流リード組立体10を組み立てる工程(超電導電流リード組立体組み立て工程)を示す図である。前記のように、高温側電極21aには荷重支持体装着穴28aが形成されており、低温側電極21bには荷重支持体装着穴28bが形成されている。
【0073】
また、各荷重支持体装着穴28a,28bの内壁にはロウ材装着溝29a,29bが形成されている。このロウ材装着溝29a,29bには、予めロウ材が配設されている。このロウ材は、荷重支持体20、各電極21a,21b、各外部荷重吸収部23a,23b、配線部26、及び基部27よりも融点の低い材料(例えば、銀ロウ材)が選定されている。
【0074】
荷重支持体20の高温側端部は高温側電極21aの荷重支持体装着穴28aに挿入装着され、低温側端部は低温側電極21bの荷重支持体装着穴28bに挿入装着される。これにより、超電導電流リード組立体10が製造される。
【0075】
ここで、超電導電流リード組立体10は、荷重支持体20と各電極21a,21bが本固定されてない状態(ロウ付けされていない状態)である。よって、荷重支持体20と各電極21a,21bが本固定された超電導電流リード8と区別するため、本明細書では本固定前の荷重支持体20に各電極21a,21bが装着された構成のものを超電導電流リード組立体10というものとする。
【0076】
なお、超電導電流リード組立体10は、前記ように各電極21a,21bが荷重支持体20に本固定されていない状態である。このため、各電極21a,21bは荷重支持体20に対して若干の変位が可能な状態(仮固定状態という)となっている。
【0077】
上記のように超電導電流リード組立体10が組み立てられると、一対の電極21a,21bの位置決めを行う工程(位置決め工程)が実施される。
図6は、この位置決め工程を説明するための図である。
【0078】
位置決め工程では、先ず超電導電流リード組立体10を前記したリード用治具40の基台41上に載置する。超電導電流リード組立体10がリード用治具40上に搭載されると、超電導電流リード組立体10の基部27は搭載用ボルト47により基台41に固定される(
図7(A)参照)。
【0079】
続いて、位置決めボルト45aを位置決め用ネジ孔31aに螺着し、位置決めボルト45bを位置決め用ネジ孔31bに螺着することにより、高温側電極21a及び低温側電極21bを電極位置決め部材42に固定する処理を行う。
【0080】
このように、位置決めボルト45aと位置決めボルト45bとの離間距離は、予め定められている高温側電極21aと低温側電極21bの離間距離に高精度に対応するよう設定されている。即ち、電極位置決め部材42における各位置決めボルト45a,45bの形成位置は、超電導電流リード8における各電極21a,21bの既定の配設位置と高精度に一致した位置(請求項に記載の既定位置)とされている。また、各電極21a,21bは荷重支持体20に本固定おらず、若干の変位は可能な状態となっている。
【0081】
よって、荷重支持体20に対する各電極21a,21bの位置を調整しつつ、位置決めボルト45a,位置決めボルト45bを位置決め用ネジ孔31a,31bに螺着することにより、各電極21a,21bは既定位置に高精度に位置決めされた状態となる。
図7は、超電導電流リード組立体10がリード用治具40に装着されることにより、高温側電極21a及び低温側電極21bの位置決めが行われた状態を示している。
【0082】
この位置決め工程が終了した時点においても、各電極21a,21bと荷重支持体20は本固定されていないため変位可能ではある。しかしながら、各電極21a,21bは位置決めボルト45a,45bにより電極位置決め部材42に固定されている。このため、荷重支持体20に対して各電極21a,21bが変位することはなく、位置決めされた状態は維持される。
【0083】
上記のように電極21a,21bの位置決めが行われた超電導電流リード組立体10は、続いて荷重支持体20と一対の電極21a,21bとを本固定する工程(固定工程)が実施される。
【0084】
図8は、荷重支持体20と一対の電極21a,21bとを本固定する処理を説明するための図である。同図に示されるように、リード用治具40に固定された超電導電流リード組立体10は、加熱炉50に入れられ加熱処理が実施される。
【0085】
この時、加熱炉50の加熱温度は、超電導電流リード組立体10(ロウ材を除く)及びリード用治具40を構成する各材料の融点よりも低く、かつロウ材の融点よりも高い温度に設定されている。よって、加熱炉50で加熱処理を行うことにより、荷重支持体装着穴28a,28bのロウ材装着溝29a,29bに配設されていたロウ材は溶融し、各電極21a,21bと荷重支持体20との間に進行する。
【0086】
なお、前記のようにリード用治具40を構成する構成部品41,42,43の熱膨張率は超電導電流リード組立体10の構成部品の熱膨張率に近似した値に設定されている。このため、加熱処理中にリード用治具40の熱膨張に起因して一対の電極21a,21bの位置が既定位置からずれるようなことはない。
【0087】
加熱処理が終了すると、リード用治具40に固定された超電導電流リード組立体10は加熱炉50から取り出され、冷却処理が実施される。冷却により、溶融していたロウ材は再び固化する。これにより、高温側電極21a及び低温側電極21bは荷重支持体20に本固定された状態となる。
【0088】
本実施形態では、各電極21a,21bが荷重支持体20に本固定されるまで、超電導電流リード組立体10はリード用治具40に固定された状態を維持する。よって、本固定された状態で一対の電極21a,21bは、既定位置に位置決めされた状態を維持する。
【0089】
ここで、既定位置とは、電極21a,21bに形成された超電導体22を装着する超電導体装着溝30a,30bが高精度に対向した位置であり、かつ、超電導体装着溝30a,30bに超電導体22を装着した際に超電導体22に歪を発生させることがない位置である。
【0090】
上記のように各電極21a,21bが既定位置に位置決めされた状態で荷重支持体20に本固定されると、超電導電流リード組立体10はリード用治具40から取り外される。このリード用治具40から取り外された超電導電流リード組立体10は、続いて図示しない超電導体装着用治具に装着される。
【0091】
この超電導体装着用治具は、超電導体22を超電導電流リード組立体10に取り付ける際の作業性を向上させるためのものである。なお、超電導電流リード組立体10を超電導体装着用治具に装着する際、各電極21a,21bに形成されている位置決め用ネジ孔31a,31bを利用して取り付ける構成としてもよい。
【0092】
図9は、超電導体22を超電導電流リード組立体10に配設する工程(超電導体配設工程)を説明するための図である。
【0093】
超電導体22を超電導電流リード組立体10に装着するには、超電導体22の高温側端部22aと高温側電極21aの超電導体装着溝30aを位置決めすると共に、低温側端部22bを低温側電極21bの超電導体装着溝20bに位置決めする。そして、この位置決め状態を維持しつつ、高温側端部22aを超電導体装着溝30a内に、また低温側端部22bを超電導体装着溝20b内に挿入する。
【0094】
次に、超電導体22が挿入された各超電導体装着溝30a,30b内にはんだ(図示せず)を装着した上で加熱処理を行い、超電導体22と各電極21a,21bとをはんだ付け接合する。このはんだ付けが終了した後、超電導体装着用治具は取り外される。これにより超電導体22は、各電極21a,21bに電気的に接続されると共に機械的に固定され、超電導電流リード8が製造される。
【0095】
本実施形態では、超電導体配設工程に先立って実施される固定工程において、高温側電極21aと低温側電極21bは既定位置に高精度に位置決めされた状態となっている。よって、各電極21a,21bに形成された超電導体装着溝30a,30bも高精度に位置決めされている。
【0096】
これにより、超電導体22を超電導体装着溝30a,30bに装着する際、及び装着後に加熱処理を実施する際、超電導体22に各電極21a,21bから余計な外力が印加されることはなく、超電導体22に歪が発生することを防止することができる。また、超電導体22に歪が発生することを防止できるため、超電導体22の電気的性能が低下することを防止でき、超電導電流リード8の信頼性を高めることができる。
【0097】
また上記のように本実施形態では、各電極21a,21bの位置決めが高精度に行われるため、各超電導体装着溝30a,30bの溝幅を狭くしても、歪を発生させることなく超電導体22を各超電導体装着溝30a,30bに装着することができる。よって、超電導体装着溝30a,30bに配設するはんだ量を少なくすることができ、各電極21a,21bと超電導体22間における電気的抵抗を低減させることができる。よってこれによっても、超電導電流リード8の信頼性を向上させることができる。
【0098】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。