特許第5752705号(P5752705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752705
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】飲料原料含有カプセルの識別
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/44 20060101AFI20150702BHJP
   A47J 31/36 20060101ALI20150702BHJP
   A47J 31/06 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   A47J31/44 Z
   A47J31/36
   A47J31/06 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-543844(P2012-543844)
(86)(22)【出願日】2010年12月20日
(65)【公表番号】特表2013-514819(P2013-514819A)
(43)【公表日】2013年5月2日
(86)【国際出願番号】EP2010070266
(87)【国際公開番号】WO2011076748
(87)【国際公開日】20110630
【審査請求日】2013年9月4日
(31)【優先権主張番号】09180092.0
(32)【優先日】2009年12月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599132904
【氏名又は名称】ネステク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114270
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 朋也
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】オザンヌ, マティオ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァグニオ, ディディアー
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/090122(WO,A2)
【文献】 特開2001−043768(JP,A)
【文献】 特開2004−342601(JP,A)
【文献】 特開2002−367469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/36
A47J 31/40
A47J 31/44
H01H 13/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル識別部材(6)を有する飲料原料含有カプセル(1)と、前記飲料原料含有カプセルを受容する飲料生成装置とを備える飲料生成システムであって、前記飲料生成装置が、
前記カプセル識別部材の情報を読み取るように前記カプセル識別部材(6)に物理的に接触する接触手段(8)と、
前記接触手段に接続されるとともに、読み取り情報に応じて前記飲料生成装置(11)の動作を制御するように設計されている制御手段とを備え、前記接触手段(8)が、
前記カプセル識別部材(6)に機械的に接触する少なくとも1つの変位可能な検出子(81)と、
一方の側で前記検出子に接触しているとともに他方の側で回路(9)に関連付けられており、前記検出子に接触している部分が変形可能な形状をしている弾性支持部材(82)と、
前記弾性支持部材(82)と前記回路(9)の間の不連続導電部(121)と
空気を通過させる穴を形成するプラスチック材料であるフィルム(13)であって、前記不連続導電部(121)が該フィルム上にある、フィルム(13)と、
前記弾性支持部材(82)と前記不連続導電部(121)との間の防水材層(12)と、
を備える飲料生成システム。
【請求項2】
前記防水材層(12)が、シリコーン、プラスチック、アルミニウム又はプラスチック−アルミニウム積層から選択される材料で作られている、請求項1に記載の飲料生成システム。
【請求項3】
前記不連続導電部(121)が、前記回路のうち短絡可能な領域(91)に対して押し付けられると、前記回路(9)を閉成可能な形状をしている、請求項1又は2に記載の飲料生成システム。
【請求項4】
前記不連続導電部(121)が前記フィルム(13)に付着され、前記防水材層(12)が前記弾性支持部材(82)と前記フィルム(13)の間に配されている、請求項1又は3に記載の飲料生成システム。
【請求項5】
前記防水材層(12)が、PET/アルミニウム/PP、PE/EVOH/PP、PET/金属化/PP、アルミニウム/PPの積層から選択される、請求項1〜のいずれか一項に記載の飲料生成システム。
【請求項6】
前記不連続導電部(121)が、前記フィルム(13)のうち前記回路(9)に面する側に固定されている、請求項又はに記載の飲料生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料生成装置によるカプセルの識別に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2008/090122号には、関連する飲料生成装置の動作パラメータを制御するために外側から物理的に接触されるように設計された識別部材が設けられている飲料原料カプセルが記載されている。識別部材は、バイナリコード状態(0又は1)に対応する孔又は窪みを形成している。識別部材は、外側から視認されないようにカバー手段により覆われることが好ましい。飲料生成装置は、存在する孔又は窪みの影響を受け易い領域でカバー手段を貫通でき、変形させることができ、変位させることができる変位可能な検出子を有している。孔又は窪みとの接触に応じた検出子の変位の程度は、カプセルに関する情報に関連付けられる。変位可能な検出子は、飲料生成装置の制御手段の回路から少し離れて弾性的に位置付けられ、窪み又は孔との接触により回路に選択的に接触する。検出子と回路の接触は、バイナリコード(0又は1)を形成する。変位可能な検出子は、非接触位置への復帰を可能にするように検出子に弾性をもたらすとともに、カプセル由来の湿気から回路を絶縁するように、回路に関連付けられた弾性支持部材により回路から少し離れて弾性的に位置付けられる。弾性支持部材をエラストマ部材、好適にシリコーン部材とすることができる。支持部材の座部に埋め込まれた基部又は挿入された基部を有するピンとして検出子を形成できる。例えば、カプセルの内部へ供給される液体の温度等の飲料生成条件を読み取り情報に応じて制御するように制御手段を設計できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の飲料生成装置では、弾性支持部材がシリコーン材で作られていても、2000を超える飲料を生成した後には湿気が同部材に伝わることが知られている。この湿気は、飲料生成装置の制御手段の回路に悪影響を及ぼしカプセルの識別不良をもたらす。
【0004】
よって、解決すべき課題は、飲料調製プロセスで生じる湿気が制御手段の回路に接することを防止できる前述したような識別手段を飲料生成装置に設けることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、本発明は、カプセル識別部材を有する飲料原料含有カプセルと、飲料原料含有カプセルを受容する飲料生成装置とを備える飲料生成システムであって、飲料生成装置が、
カプセル識別部材の情報を読み取るようにカプセル識別部材に物理的に接触する接触手段と、
接触手段に接続されるとともに、読み取り情報に応じて飲料生成装置の動作を制御するように設計されている制御手段とを備え、接触手段は、
カプセル識別部材に機械的に接触する少なくとも1つの変位可能な検出子と、
一方の側で検出子に接触しているとともに他方の側で回路に関連付けられており、検出子に接触している部分が変形可能な形状をしている弾性支持部材と、
弾性支持部材と回路の間の不連続導電部とを備え、
接触手段が、弾性支持部材と不連続導電部の間に防水材層を備える、飲料生成システムに関する。
【0006】
本発明のシステムでは、外側から物理的に接触されるように設計された識別部材がカプセルに設けられる。識別部材は、(視覚的なバーコードとは対照的に)構造的な方法で情報を符号化する。より正確には、識別部材は、所定の局部的な複数の接触面受け部を備えることができ、同受け部それぞれは、外部の検出部材との接触が形成されるか否かに対応する2つの異なる表面高さ、つまりバイナリコード状態(0又は1)から選択される。表面高さには、例えば、局部的な複数の窪み/孔の深さ又は突出部材の高さの差を対応させることができる。一実施形態では、第1及び第2の接触受け部が設けられる。第1接触受け部を同一深さの孔又は窪みとすることができ、第2接触受け部をより浅い孔又は窪みとすることができ、充填し又はわずかに浮き彫りにしてもよい。可能な変形例では、第1接触受け部は、同一高さの突出要素とされ、第2接触受け部は、より高い突出要素とされる。識別部材を外側から視認できないようにし、かつ飲料生成装置の関連する検出手段により物理的に接触される前に外部に露出しないようにすることが好ましい。この点に関して、識別部材をカバー部材により外側に対して覆うことができ、カバー手段及び/又は識別部材は、例えば、関連する飲料生成装置から検出手段により貫通され、変形され、変位されることにより、被覆状態から識別読み取り状態へ移行できるように設計される。例えばカプセルの識別面に孔又は窪みを設けて、カプセル面の表面構造を変調することにより識別部材を符号化することが好ましい。カプセルの識別面をプラスチック層、アルミニウム層、又はプラスチック−アルミニウム積層等の変位可能、変形可能又は穿孔可能なフィルムにより覆うことができる。カバーは、外側から選択的に穿孔されるように、あるいは孔又は窪みに重なる部分で選択的に変形されるように設計される。他方、カバーは、孔又は窪みに重ならない領域で支持されることにより、少なくともある程度の穿孔又は変形に抵抗できる。あるいは、カバー部材を変化させないままでも、識別被覆状態から識別読み取り状態へカプセルを移行させるように識別部材を操作(変位等)できる。好適な実施形態では、カプセルの蓋の正面に識別部材を形成できる。蓋は、カプセルのカップ状本体に関連付けられ、飲料形成原料を収容する空洞を画定する。蓋の一体部として識別部材を形成できる。例えば、蓋を成形プラスチックで作ることができ、その上に識別部材が成形される。検出システムに必要となる空間を制限するために、蓋の正面に非線形パターンで所定の局部的な複数の接触受け部を配することができる。例えば、蓋の面を覆う実質的に多角形状、星状又は湾曲パターン、あるいは実質的に閉鎖された不規則なパターンで受け部をグループ化することができる。
【0007】
本発明によれば、飲料生成装置は、前述した飲料原料含有カプセルと共に使用するために設計される。飲料生成装置は、カプセルの情報を読み取るためにカプセルに物理的に接触する手段を備える。さらに、飲料生成装置には、接触手段に接続され、読み取り情報に応じて飲料生成装置の動作パラメータを制御するように設計された制御手段が設けられる。
【0008】
接触手段は、カプセル識別部材に機械的に接触する少なくとも1つの変位可能な検出子を備える。制御手段は、カプセル識別部材との接触に応じた検出子の変位の程度に関連して識別情報を検出する少なくとも1つの検出子を伴って構成される。より具体的に、少なくとも1つの変位可能な検出子は、制御手段の回路から少し離れて弾性的に配され、カプセルとの接触に応じて回路と選択的に接触する。検出子と回路の接触は、所定のバイナリコード状態(0又は1)を形成し、検出子と回路の非接触は、他のバイナリコード状態を形成する。
【0009】
基部を有するピンとして検出子を形成できる。基部は、弾性支持部材に支えられていることが好ましい。検出子の先端は、識別部材を覆うカバーの穿孔を目的とすることができる。接触手段は、カプセルの所定の局部的な複数の接触受け部に接触する同一の変位可能な複数のピンを備える。
【0010】
接触手段は、一方の側で少なくとも1つの検出子に接触しており他方の側で回路に関連付けられる弾性支持部材を備える。弾性支持部材のうち検出子に接触している部分は、変形可能な形状をしている。この弾性支持部材は、非接触位置への復帰を可能にする弾性を検出子にもたらすとともに、カプセル由来の湿気の一部からの回路の絶縁をもたらす。弾性支持部材を、例えば、好適にはシリコーン又はEPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)ゴムで作られたエラストマ部材とすることができる。弾性支持部材が他方の側で回路に関連付けられるので、制御手段の回路の関連する接触を選択的に開放するように検出子を変位させることができる。
【0011】
識別システムのサイズを著しく低減するために、識別回路を印刷回路とすることができる。印刷回路を数mmの幅とすることができ、飲料生成装置のうちカプセルの筐体に隣接する僅かな空間に挿入することができる。例えば、印刷回路の厚さは、0.5〜3mmである。印刷回路は、例えば、符号化された状態をもたらすように複数の検出子により選択的に開成又は閉成される複数の印刷回路を備える。
【0012】
本発明によれば、接触手段は、弾性支持部材と不連続導電部の間に防水材層を備える。この層は、弾性支持部材のうち検出子に接触している部分全体を被覆するのに十分なほど大きいことが好ましい。この層は、弾性支持部材のうち接触している部分の移動又は変形を、層を介して導電要素に伝達できるように変形可能であることが好ましい。この防水材層をシリコーン、プラスチック、アルミニウム又はプラスチック−アルミニウム積層から選択される材料で作ることができる。不連続導電部は、通常、回路のうち短絡可能な領域に対して押し付けられると、回路を閉成可能な形状をしている。
【0013】
第1の態様によれば、導電要素を防水材層に固定できる。この態様では、不連続導電部は、防水材層のうち回路に面する側に固定されている。この態様の好適な実施形態では、防水材層はエラストマ材、好ましくはシリコーン又はEPDMゴムで作られており、不連続導電部は黒鉛で作られている。これらの黒鉛部をエラストマ材の層に印刷できる。
【0014】
第2の態様によれば、不連続導電部がフィルムに付着されており、弾性支持部材とフィルムの間に防水材層が配されている。この第2の態様では、フィルムは、空気を通過させる小さな孔が形成されることになる単一のプラスチックフィルムとすることができる。この態様では、防水材層がPET/アルミニウム/PP、PE/EVOH/PP、PET/金属化(Metallised)/PP、アルミニウム/PPの積層から選択される。不連続導電部は、フィルムのうち回路に面する側に固定される。
【0015】
制御手段は、読み取り情報に応じて、例えばカプセルの内部へ供給される液体の温度等の飲料生成条件を制御するように設計される。接触手段は、所定パターンを形成してカプセルの所定の局部的な面受け部に選択的に機械的に接触する複数の変位可能なピンを備えることができる。制御手段は、カプセルに対するピンの変位の程度により識別情報を検出するように設計できる。制御手段は、読み取り情報に応じて飲料生成温度及び/又は淹出中断時間を制御するように設計されることが好ましい。特に、制御手段は、異なる特性及び/又は産地の茶葉原料を収容するカプセルに応じた異なる淹出茶飲料を淹出する際の水温パラメータ、流量及び/又は淹出中断時間を変化させるように設計される。
【0016】
飲料生成装置を茶、コーヒー及び/又は他の飲料を生成するように設計できる。
【0017】
本発明の実装は、カプセル側で生成された湿気からの回路の絶縁性を向上できる。本発明のシステムは、湿気の問題に直面せずに6000を超える飲料を生成するために使用される。
【0018】
本発明の特徴及び利点は、以下の図面に関連してより良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】飲料原料含有カプセルから識別情報を読み取るように設計された本発明の第1の態様に係るシステムを示す概観図である。
図2】本発明の第2の態様に係るシステムを示す概観図である。
図3】本発明のシステムに使用可能な弾性支持部材を示す斜視図である。
図4】本発明の第1の態様に係る層を示す斜視図である。
図5】検出手段に関連付けられ得る印刷回路基板を示す図である。
図6】本発明の第2の態様に係る、弾性支持部材と、フィルムに付着された導電手段とを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一態様では、一般に、飲料生成装置11の飲料生成位置に配されたカプセル1から飲料を生成するように飲料生成装置11が設計されている。図1に示すように、カプセルは、飲料原料5を収容する専用隔室を有している。飲料生成装置11の制御部10により制御された液体は、カプセルに収容された原料5と相互作用するようにカプセル1に入れられる。飲料生成装置11からは、相互作用の結果、つまり生成された飲料又は液状食品4を得ることができる。液体3と原料5の間の相互作用の典型例は、淹出、混合、抽出、溶解等である。飲料隔室には様々な種類の原料が存在し得、カプセルでは様々な種類の相互作用が生じ得る。図1に示すようなシステムには、読み取られた識別データを制御部10へ転送するために、カプセル1から識別データを検索する(「読み取る」)手段が設けられている。制御部10は、読み取られた識別データの内容に応じて飲料生成装置11の後続する生成サイクルの動作を制御できる。識別データは、カプセル及び/又は原料のパラメータを参照できる。本発明に係るカプセル1には、符号化された識別情報を伴う識別部材6が設けられている。カプセル1の表面構造の変調により情報を符号化することが好ましい。例えば、孔又は窪みにより1つの論理状態(「0」等)を表すことができ、他の表面状態(「窪みなし」又は「孔なし」)により他の論理状態(「1」等)を表すことができる。識別部材6を外側に露出せず、通常は外側から視認できないようにカプセル1に配することが好ましい。この点に関して識別部材6用のカバー7を設けることができる。カバー7は、識別部材6に関して美観及び/又は保護の目的を果たす。カバー7と識別部材6は、カプセルの一部であり、当初は識別部材を保護する状態に配されている。飲料生成装置の接触手段8は、システムのカバー手段/識別部材を被覆状態から識別読み取り状態とするように、システムのカバー手段/識別部材を操作できる。識別読み取り状態では、検出手段は、識別部材内に符号化された情報を視覚的に、又は機械的接触により読み取ることができる。操作は、識別部材6及び/又はカバー手段7に関して生じ得る。カバー7は、検出プロセスが実行されない限り、完全な被覆機能のみを果たす。検出プロセスとともに、後述するように、例えば少なくとも部分的にカバー7を除去し、変位させ、変形させ、又は穿孔することができる。あるいは、カバー7は、情報読み取りプロセス中に、カバーの下に配された識別部材の表面形状に従うように撓まされる。この点に関して、カバー7の下に配された識別部材6の表面構造を読み取るために外側から撓ませることができる柔軟なカバー7を採用できる。飲料生成装置11には、識別部材6の表面構造を変調することにより符号化された情報を読み取るように設計された接触手段8が設けられている。このような検出を物理的な機械的接触を用いて行うことが好ましい。この点に関して、好適には、接触手段8は、情報読み取りプロセス中に、カプセル1の識別部材6に対して押し付けられる変位可能な複数のピン81を有することができる。ピン81と識別部材6の間の接触領域における識別部材の表面構造の具体的な形状に応じて、ピン81は、カプセル1に向けて多少突出することができる。
【0021】
ピン81は、好適にはシリコーン等の電気的絶縁材の層で作られた弾性支持部材82を用いて電子回路基板9から絶縁されている。この部材82は、カプセルに向けてピン81をわずかに押し付けてカプセルの識別部材の頂部に設けられたカバーを穿孔し、又は変形させるために必要な押し付け力をもたらす。各ピン81には支持部材82の一部に接触しているフランジ83を設けることができる。ピンは、弾性支持部材82よりも硬いことが好ましい。ピンを金属又は硬質プラスチックで作ることができる。ピン81の相対変位は、その正面でピン81に接触している弾性支持部材82に伝達される。弾性支持部材82は、その後面で回路9に関連付けられている。ピンの機械的変位は、電子信号に変換される。生成された電気検出信号を制御部10により処理できる。制御部10は、カプセルから読み取られた識別データの関数として、例えば供給される液体3の流量及び温度並びに相互作用時間等(但し、これらに限定されない。)の飲料生成プロセス用パラメータを設定する。
【0022】
図1に示す状態では、図示される1つのピン81だけが識別部材6の孔61に面している。よって、この特定のピンが読み取り中に後方へ押されないので、印刷回路基板9の専用部分の電気的短絡を選択的に生成するように設計された電気的マイクロスイッチが作動しない。対照的に、他の3つのピンは、識別部材6の孔に面しておらず、識別部材6の表面構造へ摺動できない。よって、3つのピンがわずかに後方へ(図1では左側へ)押されるので、フランジ83に接触している弾性支持部材82のシリコーン材料の部分を押して導電性マイクロスイッチを印刷回路基板9に向けて作動させる(つまり導電状態に移行させる。)。この点に関して、弾性支持部材82と印刷回路基板9の間には、スイッチの閉成に対応する所定の短絡を印刷回路基板9上で選択的に生成できる導電要素121が挿入されている。弾性支持部材82のうち変形可能な部分と、印刷回路基板9のうち短絡され得る領域とに面する位置に導電部121が配されている。本発明の第1の態様では、導電部121が防水材層12に固定されている。
【0023】
図2は、フィルム13に不連続導電部121が付着されている他は図1と同じ飲料生成装置を示している。このフィルムによって、印刷回路基板9のうち短絡され得る領域の正面に導電部121を配することが容易となる。装置は、弾性支持部材82とフィルム13の間に防水材層12を備えている。
【0024】
図3は、本発明に実装され得る弾性支持部材82を示している。この弾性支持部材82は、弾性材の平坦なシート823であり、隠れた側821で検出手段により接触されており図示されている側824で回路9に関連付けられている6つの部分を形成している。この側では、6つの部分825を回路9のうち選択的に短絡され得る領域91に関連付けることができる。
【0025】
図4は、不連続導電部121が防水材層12に固定されている本発明の第1の態様を示している。6つの導電要素121は、導電材、好適には黒鉛で作られており、導電材は、図示されている側122では回路のうち短絡され得る領域に面しており隠れた他の側では弾性支持部材のうち検出子に接触している部分が変形可能な形状をしている、層12の6つの部分に付着されている。黒鉛をシリコーンに印刷できる。回路に面する側では、ピンが弾性支持部材を押した後に6つの導電要素121のうち1つの面で層を押さない限り回路との接触が形成されないように、これらの6つの部分を側面から僅かに後退させることができる。この層をエラストマ材、好適にはシリコーン又はEPDMゴムで作ることが好ましい。
【0026】
図5は、本発明に使用可能な印刷回路基板9の詳細を示している。参照符号91は、選択的に短絡され得る領域を示している。
【0027】
図6は、弾性支持部材82と回路の間に不連続導電部121をどのように配するかを示すことにより、図2等で説明された本発明の第2の態様の説明を完成させている。これらの不連続導電部材121は、フィルム13(点で示されている)に固定され、不連続導電部は、回路に接触できるようにフィルム13のうち回路に面する側に固定されている。弾性支持部材82の円錐部825の移動は、これらの導電部121が回路のうち短絡され得る領域に接触するように導電部を移動させる。防水材層は、図6には示されておらず、フィルム13と弾性支持部材82の間に配される。
[発明の例]
[例1]
カプセル識別部材(6)を有する飲料原料含有カプセル(1)と、前記飲料原料含有カプセルを受容する飲料生成装置とを備える飲料生成システムであって、前記飲料生成装置が、
前記カプセル識別部材の情報を読み取るように前記カプセル識別部材(6)に物理的に接触する接触手段(8)と、
前記接触手段に接続されるとともに、読み取り情報に応じて前記飲料生成装置(11)の動作を制御するように設計されている制御手段とを備え、前記接触手段(8)が、
前記カプセル識別部材(6)に機械的に接触する少なくとも1つの変位可能な検出子(81)と、
一方の側で前記検出子に接触しているとともに他方の側で回路(9)に関連付けられており、前記検出子に接触している部分が変形可能な形状をしている弾性支持部材(82)と、
前記弾性支持部材(82)と前記回路(9)の間の不連続導電部(121)とを備え、
前記接触手段(8)が、前記弾性支持部材(82)と前記不連続導電部(121)の間に防水材層(12)を備える飲料生成システム。
[例2]
前記防水材層(12)が、シリコーン、プラスチック、アルミニウム又はプラスチック−アルミニウム積層から選択される材料で作られている、例1に記載の飲料生成システム。
[例3]
前記不連続導電部(121)が、前記回路のうち短絡可能な領域(91)に対して押し付けられると、前記回路(9)を閉成可能な形状をしている、例1又は2に記載の飲料生成システム。
[例4]
前記不連続導電部(121)が前記防水材層(12)に固定されている、例1〜3のいずれか一項に記載の飲料生成システム。
[例5]
前記不連続導電部(121)が、前記防水材層(12)のうち前記回路(9)に面する側に固定されている、例4に記載の飲料生成システム。
[例6]
前記防水材層(12)がエラストマ材料で作られ、前記不連続導電部(121)が黒鉛で作られている、例4又は5に記載の飲料生成システム。
[例7]
前記防水材層(12)がシリコーン又はEPDMゴムで作られている、例1〜6のいずれか一項に記載の飲料生成システム。
[例8]
前記不連続導電部(121)がフィルム(13)に付着され、前記防水材層(12)が前記弾性支持部材(82)と前記フィルム(13)の間に配されている、例1〜3のいずれか一項に記載の飲料生成システム。
[例9]
前記防水材層(13)が、PET/アルミニウム/PP、PE/EVOH/PP、PET/金属化/PP、アルミニウム/PPの積層から選択される、例1〜8のいずれか一項に記載の飲料生成システム。
[例10]
前記不連続導電部(121)が、前記フィルム(13)のうち前記回路(9)に面する側に固定されている、例8又は9に記載の飲料生成システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6