(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
《第1実施形態》
本発明のエレベータシステムの第1実施形態として、介護施設や病院、児童施設などの建物に設置されたエレベータの利用状況に基づいて、介護施設の入居者、病院に入院中の患者、児童施設に登録された児童などの監視対象者(以下、「特定利用者」とする)に対する、保護者による監視の支援をする場合について説明する。
【0010】
〈第1実施形態によるエレベータシステムの構成〉
本発明の第1実施形態によるエレベータシステムの構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態によるエレベータシステム1Aの構成を示す全体図である。
【0011】
エレベータシステム1Aは、建物に設置されたエレベータ2と、エレベータ2の特定利用者Xに携帯される特定利用者情報記録媒体3と、エレベータ乗場およびエレベータ2の乗りかごの少なくとも一方に設置された識別情報読取装置4と、当該建物を含む複数の建物のエレベータに接続されたエレベータ中央管理装置5と、エレベータ2と識別情報読取装置4とエレベータ中央管理装置5とに接続された中継装置6と、特定利用者の保護者Yに携帯され、エレベータ中央管理装置5に無線接続された携帯端末7とを備える。
【0012】
エレベータ2は、当該建物の各階のエレベータ乗場21を連絡する昇降路22と、この昇降路22の頂部に設置された巻上げ機23と、この巻上げ機23に巻き掛けられたメインロープ24の一端に吊り下げられ、一対のガイドレール25a、25bに沿って昇降路22内を昇降移動する乗りかご26と、メインロープ24の他端に吊り下げられた釣り合い錘27とを有する。
【0013】
なお、当該建物内には各階にエレベータ乗場21が設けられているが、
図1では説明の便宜上、1つのエレベータ乗場21のみを示している。
【0014】
エレベータ乗場21には乗場ドア21aおよび乗場呼びボタン21bが設置されている。
【0015】
また乗りかご26には、
図2に示すように、かごドア26aと、かご操作パネル26bと、ドア開閉ボタン26cと、行先階指定ボタン26dと、音声案内メッセージ情報を出力する音声発生器26eとが設置されている。
【0016】
また昇降路22の頂部には、巻上げ機23やかごドア26a、乗場ドア21a、音声発生器26e等の動作を制御するエレベータ制御装置28が設置されている。
【0017】
エレベータ制御装置28は、
図3に示すように、一般利用者に対する通常運転を行うための通常運転処理用プログラムおよび特定利用者に対する特定運転を行うための特定運転処理用プログラムを記憶するメインメモリ281と、CPUで構成される運転制御処理部282と、エレベータ2の運転制御に必要な情報を記憶する補助メモリ283とを有する。
【0018】
運転制御処理部282は、通常運転処理部282aと、特定運転処理部282bと、送受信部282cとを有する。
【0019】
通常運転処理部282aは、通常運転時にメインメモリ281に記憶された通常運転処理用プログラムに従って、一般利用者の操作に基づいて乗場呼びおよびかご呼びによる呼び登録をした後、巻上げ機23を所定の回転速度にて駆動し、乗りかご26を呼び登録階(目的階)に移動させる機能を有する。また、通常運転中に中継装置6から保護が必要な特定利用者の個人情報を受信したときに、特定運転処理部282bを起動させる。
【0020】
特定運転処理部282bは、メインメモリ281に記憶された特定運転処理用プログラムに従って、特定利用者に応じた特定運転を行う。
【0021】
送受信部282cは、エレベータ2内の各機器および中継装置6との間で情報を送受信する。
【0022】
補助メモリ283には、エレベータ2の通常運転に必要な通常運転制御情報(各種の運転制御用パラメータ、運転速度指示パターン、エレベータの異常有無を判断する各種の異常判定用データ等)283aと、特定運転に必要な特定運転制御情報(例えば、特定利用者によるかご呼び操作には応答しない旨の制御情報、乗場や乗りかごに設置された音声発生装置から出力させるための音声メッセージ情報等)283bとが少なくとも記憶されている。
【0023】
特定利用者情報記録媒体3は、携帯される特定利用者の識別情報を記録した媒体であり、無線ICタグ、または非接触ICタグと称するRFIDタグ等で構成される。
【0024】
識別情報読取装置4は、エレベータ乗場21およびエレベータ2の乗りかご26の少なくとも一方に設置され、
図4に示すように特定利用者Xが携帯する特定利用者情報記録媒体3から特定利用者Xの識別情報を読み取って、中継装置6に送信する。本実施形態においてはエレベータ乗場21に識別情報読取装置4aが設置され、乗りかご26内に識別情報読取装置4bが設置されているものとする。
【0025】
エレベータ中央管理装置5は、当該建物を含む複数の建物のエレベータを集中管理する装置であり、エレベータ管理センタ装置、保守管理センタ装置、保守センタ装置、遠隔監視装置、遠隔監視制御装置などのいずれであってもよく、その名称によって影響を受けるものではない。
【0026】
エレベータ中央管理装置5は、
図3に示すように、記憶部5aと、判定部5bと、携帯端末通信処理部5cと、エレベータ通信処理部5dとを有する。
【0027】
記憶部5aは、特定利用者の事前申告に基づいて登録される個人情報、例えば特定利用者の氏名、保護の必要な利用者であるか否かを示す保護要否情報、保護が必要な場合の保護者の携帯端末の電話番号やアドレス情報が、特定利用者の識別情報ごとに格納された特定利用者管理テーブルを記憶する。特定利用者管理テーブルの一例を、
図5に示す。
【0028】
図5の特定利用者管理テーブルには、識別情報「X001」の特定利用者X
1の個人情報として、氏名が「○○○○」であること、保護が必要であること、特定利用者X
1の保護者Y
1の携帯端末番号が「090aaaabbbb」であることが格納されている。また、識別情報「X002」の特定利用者X
2の個人情報として、氏名が「××××」であること、保護が必要であること、特定利用者X
2の保護者Y
2の携帯端末番号が「090ccccdddd」であることが格納されている。また、識別情報「X003」の特定利用者X
3の個人情報として、氏名が「△△△△」であること、保護が不要であることが格納されている。また、識別情報「X004」の特定利用者X
4の個人情報として、氏名が「□□□□」であること、保護が必要であること、特定利用者X
4の保護者Y
4の携帯端末番号が「090gggghhhh」であることが格納されている。
【0029】
判定部5bは、識別情報読取装置4aまたは4bで読み取られた特定利用者の識別情報に対応する個人情報を記憶部5aから取得し、取得した個人情報に基づいて、当該特定利用者が「保護が必要な特定利用者」であるか否かを判定する。
【0030】
携帯端末通信処理部5cは、判定部5bにおいて当該特定利用者が「保護が必要な特定利用者」であると判定されると、当該特定利用者の識別情報に対応する保護者の携帯端末番号を利用して、「保護対象の特定利用者がエレベータにいる」ことを示す報知情報を当該保護者の携帯端末7に送信する。
【0031】
エレベータ通信処理部5dは、判定部5bにおいて当該特定利用者が「保護が必要な特定利用者」であると判定されると、取得された特定利用者の個人情報を中継装置6を介してエレベータ制御装置28に送信する。
【0032】
中継装置6は、エレベータ2と識別情報読取装置4とエレベータ中央管理装置5との間で送受信される情報を中継する。
【0033】
携帯端末7は、エレベータ中央管理装置5から送信された報知情報を出力する表示部やスピーカ(図示せず)を有する。
【0034】
〈第1実施形態によるエレベータシステムの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータシステム1Aの動作について、
図6および
図7を参照して説明する。
【0035】
まず、特定利用者X
1がRFIDタグで構成された特定利用者情報記録媒体3を携帯してエレベータ乗場21に入場すると、エレベータ乗場21に設置された識別情報読取装置4aにより無線通信で特定利用者情報記録媒体3に記録されている特定利用者X
1の識別情報「X001」が読み取られる。読み取られた識別情報「X001」は、識別情報読取装置4aから中継装置6に送信される(S1)。
【0036】
中継装置6で受信された識別情報「X001」は、さらにエレベータ中央管理装置5に送信される(S2)。
【0037】
エレベータ中央管理装置5では、判定部5bにより記憶部5aの特定利用者管理テーブルが参照され、受信された識別情報「X001」に該当する特定利用者X
1が特定され、当該特定利用者X
1の個人情報が取得される(S3)。ここでは、特定利用者X
1の個人情報として、氏名「○○○○」、保護が必要であること、特定利用者X
1の保護者Y
1の携帯端末番号「090aaaabbbb」が取得される。
【0038】
次に判定部5bにおいて、取得された個人情報に基づいて、当該特定利用者X
1が「保護が必要な利用者」であると判定される(S4の「YES」)。
【0039】
特定利用者X
1が「保護が必要な利用者」であると判定されると、携帯端末通信処理部5cにおいて「当該特定利用者がエレベータにいる」ことを示す報知情報が生成され、ステップS3で取得された個人情報に基づいて当該保護者Y
1の携帯端末番号「090aaaabbbb」宛てに送信される。保護者Y
1の携帯端末7では、受信された「当該特定利用者がエレベータにいる」ことを示す報知情報が出力される。
【0040】
また、ステップS4において特定利用者X
1が「保護が必要な利用者」であると判定されたことにより、当該特定利用者X
1の個人情報が、エレベータ中央管理装置5のエレベータ通信処理部5dにより中継装置6に送信される(S5)。
【0041】
中継装置6で受信された特定利用者X
1の個人情報はさらに、エレベータ制御装置28に送信される(S6)。
【0042】
エレベータ制御装置28では、中継装置6から特定利用者X
1の個人情報が受信されると、当該個人情報の内容に基づいてエレベータ2の運転制御が行われる(S7)。
【0043】
エレベータ制御装置28によるエレベータ2の運転制御動作について、
図8のフローチャートを参照して説明する。
【0044】
エレベータ制御装置28では、運転開始とともに通常運転処理部282aが起動され、メインメモリ281に記憶された通常運転処理用プログラムに従って、補助メモリ283に記憶された通常運転制御情報283aが用いられて通常運転が実行される(S11)。すなわち、通常運転処理部282aにより一般利用者の操作に基づいて乗場呼びやかご呼びが登録され、乗りかご26が登録階(目的階)に移動される。
【0045】
通常運転処理部282aでは、通常運転が行われている間、送受信部282cを介して中継装置6から、保護が必要な特定利用者の個人情報が受信されているか否かが監視される(S12)。
【0046】
ここで特定利用者の個人情報が受信されていない間は(S12の「NO」)ステップS11に戻り、通常運転が継続される。また特定利用者の個人情報が受信された場合(S12の「YES」)は、補助メモリ283の空きエリアに当該個人情報が記憶された後、特定運転処理部282bが起動される(S13)。
【0047】
特定運転処理部282bでは、メインメモリ281に記憶された特定運転処理用プログラムに従って、補助メモリ283の特定運転制御情報283bが用いられてエレベータ2の特定運転が実行される(S14)。
【0048】
特定運転処理部282bで実行される、エレベータ2の特定運転の具体例について説明する。
【0049】
(特定運転−1)
取得された個人情報に基づいて保護が必要な特定利用者X
1がエレベータ2にいることがエレベータ制御装置28で検知されたときは、所定時間は乗りかご26内に設置されたボタンによるかご呼び操作に応答しないように設定される。
【0050】
またここで、補助メモリ283に記憶された特定運転制御情報283bから、「かご呼び操作に応答しない」ことや、「保護が必要な人がエレベータにいる」ことを報知するための音声メッセージ情報が取得され、エレベータ乗場21や乗りかご28に設置された音声発生器26eから出力させるようにしてもよい。
【0051】
(特定運転−2)
取得された個人情報に基づいて保護が必要な特定利用者X
1が乗りかご26に乗り込んだことがエレベータ制御装置28で検知されたときは、特定利用者X
1がいる階床のエレベータ乗場21に乗りかご26が着床して戸開したときに、乗りかご26のかごドア26aおよびエレベータ乗場21の乗場ドア21aが所定時間、戸開状態で維持され、且つ、乗りかご26が昇降運転されないように制御が行われる。
【0052】
特定利用者X
1が乗りかご26に乗り込んだか否かは、乗りかご26内の識別情報読取装置4bで特定利用者X
1の識別情報が取得されたか否か、または乗りかご26内の荷重センサ(図示せず)で荷重が検出されたか否か等により判断される。
【0053】
またここで、補助メモリ283に記憶された特定運転制御情報283bから、乗りかごから降りることを促すための音声メッセージ情報や、「保護が必要な人がエレベータにいる」ことを報知するための音声メッセージ情報が取得され、エレベータ乗場21や乗りかご28に設置された音声発生器26eから出力させるようにしてもよい。
【0054】
以上の第1実施形態によれば、保護が必要な特定利用者がエレベータを利用しようとしたときにこれを検知して保護者に報知することにより、保護者による特定利用者の監視を支援することができる。また、当該特定利用者がエレベータを利用しようとしたときにエレベータの運転を制限したり、特定利用者がいることをエレベータ付近にいる人に報知することにより、当該特定利用者がエレベータ2を利用して単独で他階に移動したり建物外へ移動したりすることを抑止し、保護者が駆けつける前にも特定利用者の安全を確保することができる。
【0055】
《第2実施形態》
本発明の第2実施形態として、第1実施形態で説明したように特定利用者がエレベータで検知されたときに特定運転を行うエレベータシステムにおいて、特定利用者に保護者が付き添っていると判断される場合には特定運転は行わず、通常運転を継続する場合について説明する。
【0056】
〈第2実施形態によるエレベータシステムの構成〉
本発明の第2実施形態によるエレベータシステムの構成について、
図9を参照して説明する。
図9は、本実施形態によるエレベータシステム1Bの構成を示す全体図である。
【0057】
エレベータシステム1Bは、特定利用者の保護者に携帯される保護者情報記録媒体8を備える他は、第1実施形態によるエレベータシステム1Aの構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0058】
本実施形態において保護者情報記録媒体8は、携帯される特定利用者の保護者の識別情報を記録した媒体であり、無線ICタグ、または非接触ICタグと称するRFIDタグ等で構成される。
【0059】
識別情報読取装置4は、保護者情報記録媒体8から保護者の識別情報を読み取って中継装置6に送信する機能をさらに有する。
【0060】
またエレベータ中央管理装置5の記憶部5aは、特定利用者管理テーブルに特定利用者の個人情報として、保護者の識別情報を特定利用者の識別情報と対応付けて記憶する。
【0061】
本実施形態における特定利用者管理テーブルの一例を、
図10に示す。
【0062】
図10の特定利用者管理テーブルには、第1実施形態で説明した
図5の特定利用者管理テーブルの情報に加え、識別情報「X001」の特定利用者X
1の個人情報として保護者の識別情報「Y001」が格納され、識別情報「X002」の特定利用者X
2の個人情報として保護者の識別情報「Y002」が格納され、識別情報「X004」の特定利用者X
4の個人情報として保護者の識別情報「Y004」が格納されている。
【0063】
また判定部5bは、取得した個人情報に基づいて、当該特定利用者が「保護が必要な特定利用者」であると判定した後、所定期間内に、識別情報読取装置4において当該特定利用者の保護者の識別情報が読み取られたか否かを、記憶部5aに記憶された情報に基づいて判定する。
【0064】
携帯端末通信処理部5cは、判定部5bにおいて、当該特定利用者が「保護が必要な特定利用者」であると判定された後、さらに所定期間内に当該特定利用者の保護者の識別情報が読み取られたと判定されると、保護者の携帯端末7への報知情報の送信を中止する機能をさらに有する。
【0065】
エレベータ通信処理部5dは、判定部5bにおいて、当該特定利用者が「保護が必要な特定利用者」であると判定された後、さらに所定期間内に当該特定利用者の保護者の識別情報が読み取られたと判定されると、「当該特定利用者に保護者が付き添っている」ことを示す情報を取得された個人情報に付加し、中継装置6を介してエレベータ制御装置28に送信する。
【0066】
またエレベータ制御装置28の通常運転処理部282aは、受信された特定利用者の個人情報に、当該特定利用者に「保護者が付き添っている」ことを示す情報が付加されていることを検知したときは特定運転処理部282bを起動させず、通常運転を継続させるように制御する機能をさらに有する。
【0067】
〈第2実施形態によるエレベータシステムの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータシステム1Bの動作について、
図11を参照して説明する。
【0068】
図11において、ステップS21〜S24により実行される処理は、第1実施形態で説明した
図7のステップS1〜S4により実行される処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0069】
本実施形態において、判定部5bで取得された個人情報に基づいて、当該特定利用者X
1が「保護が必要な利用者」であると判定されると(S24の「YES」)、所定期間内に、識別情報読取装置4において当該特定利用者X
1の保護者の識別情報が読み取られたか否かがさらに判定される(S25)。
【0070】
当該特定利用者X
1の保護者の識別情報が読み取られたか否かは、特定利用者X
1の個人情報として記憶部5aの特定利用者管理テーブルに登録されている保護者の識別情報「Y001」が、識別情報読取装置4で読み取られたか否かにより判定される。
【0071】
ここで、当該特定利用者X
1の保護者の識別情報が読み取られていないと判定されたとき(S25の「NO」)、つまり特定利用者X
1に保護者Y
1が付き添われていないと判断されたときに実行されるステップS26〜S28の処理は、第1実施形態において説明したステップS5〜S7の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0072】
ステップS25において当該特定利用者X
1の保護者の識別情報「Y001」が読み取られたと判定されたとき(S25の「YES」)は、特定利用者X
1に保護者Y
1が付き添われていると判断され、当該保護者Y
1の携帯端末7への報知情報の送信は中止される。ここで、エレベータ通信処理部5dにおいて「当該特定利用者に保護者が付き添っている」ことを示す情報が特定利用者X
1の個人情報に付加され、中継装置6に送信される(S29)。
【0073】
中継装置6で受信された特定利用者X
1の個人情報はさらに、エレベータ制御装置28に送信され、当該個人情報の内容に基づいてエレベータ2の運転制御が行われる(S27、S28)。
【0074】
エレベータ制御装置28によるエレベータ2の運転制御動作について、
図12のフローチャートを参照して説明する。
【0075】
エレベータ制御装置28では、運転開始とともに通常運転処理部282aが起動され、メインメモリ281に記憶された通常運転処理用プログラムに従って、補助メモリ283に記憶された通常運転制御情報283aが用いられて通常運転が実行される(S31)。
【0076】
通常運転処理部282aでは、通常運転が行われている間、送受信部282cを介して中継装置6から、保護が必要な特定利用者の個人情報が受信されているか否かが監視される(S32)。
【0077】
ここで特定利用者の個人情報が受信されていない間は(S32の「NO」)ステップS31に戻り、通常運転が継続される。また特定利用者の個人情報が受信された場合(S32の「YES」)は、当該個人情報に「当該特定利用者に保護者が付き添っている」ことを示す情報が付加されているか否かが判定される(S33)。
【0078】
判定の結果、当該個人情報に「当該特定利用者に保護者が付き添っている」ことを示す情報が付加されている場合には(S33の「YES」)特定運転は必要ないと判断され、ステップS31に戻り、通常運転が継続される。また当該個人情報に「当該特定利用者に保護者が付き添っている」ことを示す情報が付加されていない場合には(S33の「NO」)、補助メモリ283の空きエリアに当該個人情報が記憶された後、特定運転処理部282bが起動される(S34)。
【0079】
特定運転処理部282bでは、メインメモリ281に記憶された特定運転処理用プログラムに従って、補助メモリ283の特定運転制御情報283bが用いられてエレベータ2の特定運転が実行される(S35)。
【0080】
以上の第2実施形態によれば、特定利用者の安全に配慮した動作を行うエレベータシステムにおいて、特定利用者に保護者が付き添っている場合には、保護者への報知動作やエレベータの運転制限等を行わないようにすることで、効率よく処理を行うことができる。
【0081】
《第3実施形態》
本発明の第3実施形態として、第1実施形態で説明したように特定利用者がエレベータで検知されたときに特定運転を行うエレベータシステムにおいてさらに、特定利用者が一定時間以上乗りかごに滞在していることを検知したときに保護者に報知する機能が搭載された場合について説明する。
【0082】
〈第3実施形態によるエレベータシステムの構成〉
本発明の第3実施形態によるエレベータシステム1Cの構成は、第1実施形態によるエレベータシステム1Aと同様であるため、同一機能を有する部分に関する詳細な説明は省略する。
【0083】
本実施形態において識別情報読取装置4は、特定利用者が携帯する特定利用者情報記録媒体3から特定利用者の識別情報を読み取った後、当該特定利用者が一定時間以上乗りかご26に滞在していることを検知すると、「特定利用者が一定時間以上、乗りかごに滞在している」ことを示す報知情報、および当該特定利用者の識別情報を、中継装置6を介してエレベータ中央管理装置5に送信する。
【0084】
またエレベータ中央管理装置5の携帯端末通信処理部5cは、識別情報読取装置4から報知情報とともに送信された特定利用者の識別情報に対応する、保護者の携帯端末の識別情報を記憶部5aから取得し、「特定利用者が一定以上、乗りかごに滞在している」ことを示す報知情報を当該保護者の携帯端末7に送信する。
【0085】
〈第3実施形態によるエレベータシステムの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータシステム1Cの動作について、
図13を参照して説明する。
【0086】
まず、特定利用者X
1がRFIDタグで構成された特定利用者情報記録媒体3を携帯してエレベータ乗場21に入場すると、エレベータ乗場21に設置された識別情報読取装置4aにより無線通信で特定利用者情報記録媒体3に記録されている特定利用者X
1の識別情報「X001」が読み取られる(S41)。
【0087】
次に識別情報読取装置4aにおいて、特定利用者X
1が一定時間以上乗りかご26に滞在しているか否かが判定される(S42)。特定利用者X
1が一定時間以上乗りかご26に滞在しているか否かは、乗りかご26内の識別情報読取装置4bにおいて一定時間継続して識別情報「X001」が取得されているか否か、または乗りかご26内の荷重センサで一定時間継続して荷重が検出されたか否か等により判断される。
【0088】
特定利用者X
1が一定時間以上乗りかご26に滞在していると判定されると(S42の「YES」)、「特定利用者が一定時間以上、乗りかごに滞在している」ことを示す報知情報、および当該特定利用者の識別情報「X001」が、識別情報読取装置4から中継装置6に送信される(S43)。
【0089】
中継装置6で受信された報知情報および識別情報「X001」は、さらにエレベータ中央管理装置5に送信される(S44)。
【0090】
エレベータ中央管理装置5では、判定部5bにより記憶部5aの特定利用者管理テーブルが参照され、受信された識別情報「X001」に該当する特定利用者X
1が特定され、当該特定利用者X
1の個人情報が取得される(S45)。ここでは、特定利用者X
1の個人情報として、氏名「○○○○」、保護が必要であること、特定利用者X
1の保護者Y
1の携帯端末番号「090aaaabbbb」が取得される。
【0091】
次に判定部5bにおいて、取得された個人情報に基づいて、当該特定利用者X
1が「保護が必要な利用者」であるか否かが判定される(S46)。
【0092】
特定利用者X
1が「保護が必要な利用者」であると判定されると(S46の「YES」)、携帯端末通信処理部5cにより、ステップS45で取得された個人情報に基づいて当該保護者Y
1の携帯端末番号「090aaaabbbb」宛てに、「特定利用者が一定時間以上、乗りかごに滞在している」ことを示す報知情報が送信される(S47)。
【0093】
以上の第3実施形態によれば、特定利用者の安全に配慮した動作を行うエレベータシステムにおいて、特定利用者が一定時間以上乗りかごに滞在しているときにこれを検知して保護者に報知することにより、さらに高い精度で保護者による特定利用者の監視を支援することができる。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。