特許第5752766号(P5752766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752766
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】自動二輪車のエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 33/00 20060101AFI20150702BHJP
   F02B 33/32 20060101ALI20150702BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20150702BHJP
   F02M 69/00 20060101ALI20150702BHJP
   B62M 7/02 20060101ALI20150702BHJP
   B62J 99/00 20090101ALI20150702BHJP
【FI】
   F02B33/00 C
   F02B33/32
   F02M35/10 301R
   F02M69/00 320F
   B62M7/02 W
   B62J99/00 G
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-190830(P2013-190830)
(22)【出願日】2013年9月13日
(62)【分割の表示】特願2011-536131(P2011-536131)の分割
【原出願日】2010年10月12日
(65)【公開番号】特開2014-25476(P2014-25476A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2013年10月1日
(31)【優先権主張番号】特願2009-236996(P2009-236996)
(32)【優先日】2009年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(72)【発明者】
【氏名】有馬 久豊
(72)【発明者】
【氏名】田中 義信
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−006289(JP,A)
【文献】 特開2005−009411(JP,A)
【文献】 特開平05−087021(JP,A)
【文献】 特開平11−157347(JP,A)
【文献】 特開平05−086951(JP,A)
【文献】 特開平02−024284(JP,A)
【文献】 特開2003−83138(JP,A)
【文献】 特開昭58−180745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/00−37/10,37/12−41/10
F02M 39/00−69/14,69/28,69/44−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車に搭載される多気筒エンジンであって、
エンジンに吸入される空気を加圧する過給機と、
シリンダヘッドに取り付けられてエンジンの吸気通路が形成されたスロットルボディと、
前記過給機の下流側で前記スロットルボディの上流側に配置された吸気チャンバと、
吸気チャンバに装着されて、前記吸気通路の入口に向かって前記吸気通路よりも上流側から燃料を供給するトップインジェクタと、
前記スロットルボディに装着されて、前記吸気通路に燃料を噴射するインジェクタと、を備え、
前記トップインジェクタが複数の気筒毎に設けられているエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンにおいて、前記トップインジェクタが前記各気筒の吸気通路の入口に向かって燃料を供給しているエンジン。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエンジンにおいて、前記過給機の出口が、前記吸気チャンバにおける車幅方向の中央部に位置し、
前記過給機は、エンジン本体における左右方向中央部に配置され、
前記過給機に空気を供給する空気供給通路が、前記エンジン本体の左右方向一側寄りに配置され、
前記過給機の出口の過給気通路が前記空気供給通路よりも、前記エンジン本体の左右方向の中央寄りに配置されているエンジン。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のエンジンにおいて、前記過給機の吸込口に、車体の前方に延びるラムダクトユニットが接続されているエンジン。
【請求項5】
請求項3に記載のエンジンにおいて、前記吸気チャンバが、前記シリンダヘッドの上方に配置され、
前記吸気チャンバは、前記過給機の出口の中心から前記吸気通路の入口の軸心までの距離が大きいほど、吸気チャンバ内の通路面積が小さくなるように、中央部から両側部にかけて滑らかに形状が変化しているエンジン。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のエンジンにおいて、前記過給機は、前記シリンダヘッドの後方に配置され、エンジンのクランク軸の動力によって駆動され、
前記クランク軸に、バランサ軸を駆動するバランサギヤが設けられ、
前記バランサギヤと噛み合う駆動ギヤが設けられ、前記クランク軸に連動して回転するギヤ軸を備え、
前記過給機は、前記バランサギヤおよび前記ギヤ軸を介して駆動されるエンジン。
【請求項7】
請求項6に記載のエンジンにおいて、前記過給機は、エンジン本体における左右方向中央部に配置され、
前記過給機に空気を供給する空気供給通路が、前記エンジン本体の左右方向の一側寄りに配置され、
前記過給機の出口の過給気通路が前記空気供給通路よりも、前記エンジン本体の左右方向の中央寄りに配置され、
前記過給機が、前記エンジン本体の左右方向の他側寄りに配置されたチェーンを介して前記ギヤ軸により駆動されるエンジン。
【請求項8】
請求項7に記載のエンジンにおいて、シリンダが前傾しているエンジン。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2009年10月14日出願の特願2009−236996の優先権を主張するものであり、その全体を参照により本願の一部をなすものとして引用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、空気を圧縮して強制的に送り込む過給機を備えたエンジンに関するものである。
【背景技術】
【0003】
自動二輪車のエンジンにおいて、外気が過給機により加圧されたのち吐出され、過給機から吐出された加圧空気(過給空気)が吸気チャンバに貯留された後、スロットルボディを介してエンジンの吸気ポートに出力されるものがある(特許文献1)。これにより、吸気効率が向上して、エンジン出力が向上する利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−24282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、過給機は高速で回転するので、過給機から送られる過給空気は高温となる。このような高温の過給空気がエンジンに出力されるのは好ましくない。
【0006】
本発明は、エンジンに出力される過給空気の温度上昇を抑制できる自動二輪車のエンジンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るエンジンは、自動二輪車に搭載されるエンジンであって、エンジンに吸入される空気を加圧する過給機と、シリンダヘッドに取り付けられてエンジンの吸気通路が形成されたスロットルボディと、前記過給機の下流側で前記スロットルボディの上流側に配置された吸気チャンバと、吸気チャンバに装着されて、前記吸気通路の入口に向かって前記吸気通路よりも上流側から燃料を供給するトップインジェクタとを備えている
【0008】
この構成によれば、高回転の過給機から送られる高温の過給空気が、トップインジェクタからの噴射燃料により冷却される。その結果、エンジンに出力される過給空気の温度上昇を抑制することができる。
【0009】
本発明において、さらに、前記スロットルボディに装着されて、前記吸気通路に燃料を噴射するインジェクタを備えていることが好ましい。
【0010】
本発明において、前記過給機の出口が、前記吸気チャンバにおける車幅方向の中央部に位置していることが好ましい。
【0011】
本発明において、前記過給機の吸込口に、車体の前方に延びるラムダクトユニットが接続されていることが好ましい。この構成によれば、ラムエアでの空気圧により過給機の仕事を助け、一層大きな過給圧を得ることができる。
【0012】
本発明において、前記吸気チャンバが、前記シリンダヘッドの上方に配置されていることが好ましい。
【0013】
本発明において、前記過給機は、エンジンのクランク軸の動力によって駆動され、前記クランク軸に、バランサ軸を駆動するバランサギヤが設けられ、前記過給機は、前記バランサギヤを介して駆動されることが好ましい。この場合、好ましくは、前記過給機はチェーンを介して前記バランサ軸により駆動される。
【0014】
本発明において、シリンダが前傾していることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
この発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、この発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。この発明の範囲は添付の請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一部分を示す。
図1】本発明の第1実施形態に係る過給装置付きのエンジンを搭載した自動二輪車の側面図である。
図2】同上エンジンの一部断面で示す側面図である。
図3】同上エンジンの吸気系の平面図である。
図4】同上エンジン吸気系のリリーフ弁近傍を示す断面図である。
図5】同上吸気チャンバを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る過給装置付きのエンジンを搭載した自動二輪車の側面図である。この自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を形成するメインフレーム1と、このメインフレーム1の後部に取り付けられて車体フレームFRの後半部を形成するシートレール2および補強レール2aとを有している。メインフレーム1の前端のヘッドブロック4に一体形成されたヘッドパイプ6に、図示しないステアリングシャフトを介してフロントフォーク8が回動自在に軸支されて、このフロントフォーク8に前車輪10が取り付けられている。一方、車体フレームFRの中央下部であるメインフレーム1の後端部にスイングアームブラケット12が設けられており、このスイングアームブラケット12にスイングアーム14が上下揺動自在に軸支され、このスイングアーム14に後車輪16が取り付けられている。車体フレームFRの中央下部でスイングアームブラケット12の前側にエンジンEが取り付けられており、このエンジンEにより図示しないチェーンを介して後車輪16を駆動する。エンジンEは、例えば4気筒4サイクルエンジンである。フロントフォーク8の上端部に操向用の図示しないハンドルが固定されている。
【0017】
メインフレーム1の上部に燃料タンク20が配置され、シートレール2に操縦者のシート22および同乗車用シート24が装着されている。また、車体前部に、前記フロントフォーク8の上端部の前方から車体前部の側方にかけての部分を覆う樹脂製のカウリング26が装着されている。カウリング26には、ヘッドランプユニット28が装着され、このヘッドランプユニット28の上方に位置してエンジンEへの燃焼用空気を取り入れる空気取入口30が形成されている。
【0018】
前記ヘッドブロック4は、前端が開口した吸入ダクト部32と前記ヘッドパイプ6とが鋳物で一体形成されてなる。吸入ダクト部32の前端部に、ラムダクトユニット34が接続されており、ラムダクトユニット34は、これの前端開口をカウリング26の空気取入口30に臨ませた配置でヘッドブロック4に連結されている。ヘッドブロック4の後端部にはエアクリーナ36が接続されている。走行風Aは、空気取入口30からラムダクトユニット34および吸入ダクト部32を通り、エアクリーナ36で清浄化されて清浄空気CAとなって、後述する過給機38により加圧されてエンジンEへ導入される。なお、ラムダクトユニット34は省略してもよい。
【0019】
エンジンの側面図である図2に示すように、エンジンEの回転軸であるクランク軸40がエンジン本体EBの横方向、すなわち車幅方向に延びている。エンジン本体EBは、クランク軸40を支持するクランクケース42と、クランクケース42の上部に連結されて前傾したシリンダ44と、シリンダ44の上部に連結されたシリンダヘッド46と、シリンダヘッド46を覆うシリンダヘッドカバー48と、クランクケースの42の下部に連結されたオイルパン50とを含む部分をいう。エンジン本体EBの後方には変速機52が配置されている。
【0020】
クランク軸40には、クランク軸40と平行な軸心を持つバランサ41を駆動するバランサギヤ43が設けられ、クランク軸40に対して、バランサ41と反対側にアイドル軸の1種であるギヤ軸45が配置され、このギヤ軸45は、これに一体回転するように設けられた駆動ギヤ47がバランサギヤ43に噛合することにより、クランク軸40に連動して回転している。ギヤ軸45には、スプロケット49が設けられており、チェーン51を介して過給機38の駆動ギヤ軸53にクランク軸40の回転力を伝達している。ただし、過給機38の駆動方法はこれに限定されない。
【0021】
シリンダヘッド46の4つの排気ポート46aに4本の排気管54が接続され、排気管54はエンジン本体EBの前方を通ってエンジン本体EBの下方で集合され、車体後方に設けられる図示しないマフラに接続されている。これら排気管54およびマフラが排気系を形成している。
【0022】
エンジン本体EBのシリンダヘッドカバー48の上方に前記エアクリーナ36のケース36aが配置され、ねじ体55によりヘッドブロック4に取り付けられている。エアクリーナ36の下方、具体的には、エアクリーナ36とエンジン本体EBおよび減速機52との間で、且つ前傾したシリンダ44の後方に過給機38が配置されている。したがって、過給機38がクランク軸40に近づくから、クランク軸40に連動するスプロケット49と過給機38の駆動ギヤ軸53との間にかけ渡されたチェーン51が短くなる。エアクリーナ36と過給機38とは清浄空気供給通路56により接続され、エアクリーナ36のフィルタエレメント37を通過した清浄空気CAが、二次側のクリーンサイドである清浄空気室39から清浄空気供給通路56を通って過給機38に供給されている。清浄空気供給通路56は空気パイプ57により形成されており、この空気パイプ57に、清浄空気供給通路56を通って過給機38に供給される清浄空気CAの量を調整する空気制御弁58が装着されている。
【0023】
過給機38の吐口側には、過給機38で過給された過給空気SAを、単一の吸気チャンバ64を介して、4気筒エンジンEの4つの吸気通路60に供給する過給気通路62が接続されている。過給気通路62は過給パイプ63により形成されている。吸気チャンバ64はエンジン本体EBの上方、より具体的には、エアクリーナ36の下方で且つシリンダヘッド46および過給機38の上方に配置され、過給気通路62の下流端部に接続されている。吸気チャンバ64は吸気通路60に過給空気SAを供給する。
【0024】
各吸気通路60は、シリンダヘッド46に取り付けられたスロットルボディ72に形成されており、このスロットルボディ72に、吸気量を調整するスロットル弁66、吸気通路60を開閉するチョーク弁65および燃料F1を噴射するインジェクタ67が装着されている。スロットルボディ72の上流端部に、吸気チャンバ64を形成するチャンバケース74がねじ体76により取り付けられている。スロットル弁66およびインジェクタ67は空気制御弁58とともに、電子制御ユニットECUにより制御される。
【0025】
吸気系の平面図である図3に示すように、清浄空気供給通路56はエンジン本体EBの一側寄りである右側に配置され、過給気通路62は清浄空気供給通路56よりもエンジン本体EBの左右方向中央寄りに配置され、過給機38はエンジン本体EBにおける左右方向中央部に配置されている。エアクリーナ36が過給気通路62の下流部を形成する吸気チャンバ64の一部分の上方を覆っている。本実施形態では、エアクリーナ36が吸気チャンバ64のほぼ半分を覆っているが、エアクリーナ36と清浄空気供給通路56の少なくとも一方が、吸気チャンバ64の少なくとも一部分を覆うようにしてもよい。
【0026】
図2に示す吸気チャンバ64には、吸気チャンバ64の空気圧力を調整するリリーフ弁68が設けられている。リリーフ弁68は、吸気チャンバ64におけるエアクリーナ36により覆われた前記一部分に配置されている。したがって、リリーフ弁68を吸気チャンバ64とエアクリーナ36の両方に連結するのが容易である。リリーフ弁68は、図4に示すようにチャンバケース74に締結部材(図示せず)によって着脱自在に取り付けられ、感圧部68aが吸気チャンバ64内に臨んでいる。リリーフ弁68の排出口部68bはエアクリーナ36に収納されており、吸気チャンバ64の圧力が所定値に達すると開弁して、チャンバ64内の空気をエアクリーナ36に逃がすようになっている。排出口部68bと、クリーナケース36aにおける排出口部68bが挿通される挿通孔78との間は、Oリングからなるシール部材80によりシールされている。リリーフ弁68は環状の弁座82に弁体84がばね体86のばね力によって押圧されており、吸気チャンバ64内の圧力が所定値以上となったとき、ばね力に抗して弁体84が弁座82から離間し、吸気チャンバ64をエアクリーナ36の清浄空気室39に連通させて、高圧を逃がす。
【0027】
この実施形態では、リリーフ弁68を吸気チャンバ64の圧力で作動するように設けているが、リリーフ弁68の感圧部68aを過給気通路62内に臨ませて、過給気通路62の圧力で作動するようしてもよい。また、リリーフ弁68の排出口部68bは、エアクリーナ36ではなく、清浄空気通路56に収納されてもよい。さらに、吸気チャンバ64に、各吸気通路60の入口に向かって、吸気通路60よりも上流側から追加の燃料F2を供給する追加燃料供給装置であるトップインジェクタ70が装着されている。これらエアクリーナ36、清浄空気供給通路56、過給機38、過給気通路62、吸気チャンバ64およびスロットルボディ72が吸気系を形成している。
【0028】
図5に示すように、各気筒への吸気通路60は、その入口60aが車幅方向Wに並んで、吸気チャンバ64に接続されている。吸気チャンバ64における車幅方向Wの中央部に、過給気通路62の出口62aが開口している。この過給気通路62の出口62aに対し、この出口62aの中心から吸気通路60の入口60aの軸心Xまでの距離Lが大きいほど、吸気チャンバ64内の通路面積S、つまり、吸気チャンバ64内の過給空気SAの流れ方向に直交した面積が小さくなるように、中央部から両側部にかけて滑らかに変化している。したがって、中央寄りの2つの吸気通路60の入口60aが臨む部分の通路面積S1が、両外側の2つの吸気通路60の入口60aが臨む部分の通路面積S2よりも大きくなっている。ここで、吸気通路60の入口60aが臨む部分とは、入口60aにつながる空間であって、吸気通路60の入口60aの軸心Xを通り、入口60aが並んでいる方向である車幅方向Wと直交する仮想面Vに含まれる部分のことをいう。
【0029】
吸気チャンバ64の車幅方向Wの中央部付近は、過給気通路62の出口62aから左右それぞれの2本の吸気通路60に対して供給される過給空気SAが流れるが、車幅方向Wの両外側部付近は、1本の吸気通路60に供給される過給空気SAが流れるのみである。したがって、中央寄りの通路面積S1が両側の通路面積S2よりも大きいことで、過給空気SAの流量と、中央寄りの通路面積S1および両側の通路面積S2とがバランスする。吸気チャンバ64の上方における、通路面積S2を狭くして空いたスペースに、清浄空気供給通路56が配置されている。
【0030】
次に吸気系の作用について説明する。図2のエンジンEのクランク軸40の回転により、これに連動した過給機38が駆動される。過給機38の上流側のエアクリーナ36のケース36aには、車体の前方に延びるラムダクトユニット34(図1)が接続されているので、ラムエアAでの空気圧により過給機38の仕事を助け、一層大きな過給圧が得られるようになっている。清浄空気供給通路56に設けられた空気制御弁58が電子制御ユニットECUにより制御され、過給機38に供給される空気量、すなわち過給圧が調整される。
【0031】
過給機38で加圧された過給空気SAは、過給気通路62を介して吸気チャンバ64に送られる。吸気チャンバ64に送られた過給空気SAは吸気通路60を通過する際にインジェクタ67から供給される燃料F1と混合されてシリンダ44に送られる。このとき、ハンドルのスロットルグリップからの指令に基づき、電子制御ユニットECUにより、吸気通路60の吸気スロットル弁66または空気制御弁58の開度およびインジェクタ67による燃料噴射量が制御される。
【0032】
高負荷・高回転領域にあるとき、インジェクタ67とは別に、図5の吸気チャンバ64に設けられたトップインジェクタ70からも燃料F2が吸気通路60に供給される。その際、高回転の過給機38から送られる高温の過給空気SAがトップインジェクタ70からの噴射燃料F2により冷却される利点がある。
【0033】
さらに、吸気チャンバ64内の過給圧が設定値以上となったとき、図4に示す吸気チャンバ64に設けられたリリーフ弁68が作動して、エアクリーナ36のフィルタエレメント37の二次側、すなわちクリーンサイドである清浄空気室39に逃がして、過給圧の過大化を防止している。
【0034】
上記構成において、吸気チャンバ64に設けたリリーフ弁68の排出口部68bが、エアクリーナ36に収納されているので、リリーフ弁68とエアクリーナ36との間の配管が省略され、図2のエンジンE周辺のスペースを効率的に利用することができる。
【0035】
エアクリーナ36が吸気チャンバ64に近接して、その一部分の上方を覆っているので、吸気チャンバ64内の圧力を調整するリリーフ弁68の排出口部68bを上方のエアクリーナ36に容易に収納できる。
【0036】
また、図3に示す清浄空気供給通路56がエンジン本体EBの一側寄りである右側寄りに配置され、過給気通路62が清浄空気供給通路56よりもエンジン本体EBの左右方向中央寄りに配置されているから、過給気通路62と清浄空気供給通路56とが横方向に並んで配置されるので、さらにスペースを有効活用できる。
【0037】
さらに、図5に示す吸気通路60の入口60aに向かって追加の燃料F2を供給するトップインジェクタ70が、吸気チャンバ64に装着されているので、燃料F2の噴射により、吸気チャンバ64内の空気の温度上昇が抑制され、吸気通路60、吸気スロットル弁66の樹脂部分、ゴム部品等の高温による劣化が抑制される。
【0038】
また、吸気チャンバ64の通路面積Sは、吸気チャンバ64における車幅方向中央部の吸気通路60の入口60aが臨む部分の面積S1が大きく、車幅方向両側部の吸気通路60の入口60aが臨む部分の面積S2が小さく設定されているので、過給空気SAの流量と両通路面積S1、S2とのバランスがよくなり、過給空気SAの流れが円滑になって吸気抵抗が減少する。また、吸気チャンバ64の両側部の高さが小さくなり、空いたスペースに清浄空気供給通路56を配置しているので、エンジンE周辺のスペースを一層効率的に利用することができる。
【0039】
さらに、エンジン本体EBの後方に変速機52が配置され、エンジン本体EBの前傾したシリンダ44の後方に過給機38が配置され、過給機38の上方に吸気チャンバ64が配置され、シリンダヘッドカバー48の上方にエアクリーナ36が配置されているので、前傾したシリンダ44の後方および上方の空いたスペースに、エアクリーナ36、過給機38および吸気チャンバ64がそれぞれ配置されることになり、エンジンE周辺のスペースを有効に利用できる。
【0040】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、過給機38にて温度上昇した過給空気SAをインタークーラーにより冷却したり、過給機38をチェーン51ではなくギヤを介して駆動したりしてもよい。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
34 ラムダクトユニット
38 過給機
40 クランク軸
41 バランサ
43 バランサギヤ
44 シリンダ
46 シリンダヘッド
49 スプロケット
51 チェーン
60 吸気通路
64 吸気チャンバ
67 インジェクタ
70 トップインジェクタ
72 スロットルボディ
E エンジン
図1
図2
図3
図4
図5