(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752775
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】長繊維不織布およびその長繊維不織布を有する積層生地
(51)【国際特許分類】
D06C 23/04 20060101AFI20150702BHJP
D06C 29/00 20060101ALI20150702BHJP
D04H 3/00 20120101ALI20150702BHJP
D06B 19/00 20060101ALI20150702BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
D06C23/04 Z
D06C29/00 Z
D04H3/00
D06B19/00 Z
B32B5/26
【請求項の数】20
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-248980(P2013-248980)
(22)【出願日】2013年12月2日
(65)【公開番号】特開2014-196585(P2014-196585A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2013年12月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-42030(P2013-42030)
(32)【優先日】2013年3月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504113190
【氏名又は名称】株式会社finetrack
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金山 洋太郎
【審査官】
松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−150222(JP,A)
【文献】
特開平07−054256(JP,A)
【文献】
特開昭57−005957(JP,A)
【文献】
特開平08−003850(JP,A)
【文献】
特開2007−236437(JP,A)
【文献】
特開2002−058619(JP,A)
【文献】
特開2007−177375(JP,A)
【文献】
特開昭63−085153(JP,A)
【文献】
実開平05−029742(JP,U)
【文献】
特開平10−158966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06B 1/00−23/30
D06C 3/00−29/00
B32B 1/00−43/00
D04H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維長が平均100mmを超える長繊維を有して構成された長繊維不織布であって、
不規則な凹凸状のシワが形成され、
前記シワが形成された長繊維不織布の嵩高さ(平面に置いたときの平面から最上部までの高さ(h))が、シワが形成される前の長繊維不織布の厚み(t)の10倍以上である、長繊維不織布。
【請求項2】
前記シワが形成された長繊維不織布の目付けが、シワが形成される前の長繊維不織布の目付けの3倍〜60倍である、請求項1に記載の長繊維不織布。
【請求項3】
前記シワが形成された長繊維不織布の目付けが15g/m2〜300g/m2であり、シワが形成される前の長繊維不織布の目付けが5g/m2〜60g/m2である、請求項1または2に記載の長繊維不織布。
【請求項4】
前記シワが形成される前の長繊維不織布の厚みが、0.01mm〜1.0mmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の長繊維不織布。
【請求項5】
前記シワが形成されていない長繊維不織布を袋体に詰めて熱水または水蒸気を与えることで、前記長繊維不織布に前記シワが形成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の長繊維不織布。
【請求項6】
前記シワが形成されていない長繊維不織布は、湿式法、乾式法、スパンボンド法、メルトブロー法または直交積層結合で製造される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の長繊維不織布。
【請求項7】
前記長繊維は、太さが1μm〜100μmである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の長繊維不織布。
【請求項8】
前記長繊維は、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ビニロン、アラミド、アクリル、レーヨン、ポリエチレン、ポリウレタンおよび絹のうちの1種の長繊維あるいは2種以上の長繊維である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の長繊維不織布。
【請求項9】
前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の長繊維不織布と、前記長繊維不織布の一方面に積層される第1生地を有し、前記長繊維不織布と前記第1生地との間に第1空間部が形成される、積層生地。
【請求項10】
前記長繊維不織布の一方面とは異なる他方面に積層される第2生地をさらに有し、前記長繊維不織布と前記第2生地との間に第2空間部がさらに形成される、請求項9に記載の積層生地。
【請求項11】
前記長繊維不織布が2枚以上積層され、前記長繊維不織布同士の間に第3空間部が形成される、請求項9または10に記載の積層生地。
【請求項12】
前記請求項9〜11のいずれか1項の積層生地を有して構成された衣類。
【請求項13】
前記請求項9〜11のいずれか1項の積層生地を有して構成された寝具。
【請求項14】
前記請求項9〜11のいずれか1項の積層生地を有して構成されたカーテン。
【請求項15】
前記請求項9〜11のいずれか1項の積層生地を有する敷物。
【請求項16】
不規則な凹凸状のシワを有する長繊維不織布を製造する方法であって、
繊維長が平均100mmを超える長繊維で構成された長繊維不織布を袋体に詰めて熱水または水蒸気を与えるステップと、
前記袋体から取り出した前記長繊維不織布を乾燥させるステップと、を含み、
乾燥後の前記不規則な凹凸状のシワが形成された長繊維不織布の嵩高さ(平面に置いたときの平面から最上部までの高さ(h))が、長繊維不織布の厚み(t)の5倍以上であることを特徴とする方法。
【請求項17】
長繊維不織布を、湿式法、乾式法、スパンボンド法、メルトブロー法または直交積層結合で製造するステップを、さらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記長繊維不織布の厚みが、0.01mm〜1.0mmである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記長繊維は、太さが1μm〜10μmである、請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記長繊維は、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ビニロン、アラミド、アクリル、レーヨン、ポリエチレン、ポリウレタンおよび絹のうちの1種の長繊維あるいは2種以上の長繊維である、請求項16〜19のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵩高くなるように加工された長繊維不織布およびその長繊維不織布を有する積層生地に関する。
【背景技術】
【0002】
短繊維で構成された不織布を100℃の熱水で熱処理して凹凸状のシボを形成した短繊維不織布がある(特許文献1参照)。また、規則的な凹凸エンボス展伸加工によって規則的な凹凸が形成された不織布がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−220446号公報
【特許文献2】特開2001−48238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1は、短繊維を材料にしているため、実用に供するに必要な強度を得るためには、それ相応の目付の短繊維不織布を用いなければならなかった。また、不規則なシボ加工がしやすいが、一方で使用が長期に渡り洗濯回数が多くなるとシボ形状を維持できず、次第にシボ形状が弱まる傾向であった。また、上記特許文献2は、凹凸エンボスロールで加工しているため、その両面方向に交互に凹凸が形成された規則性のある凹凸を形成した不織布を記載しているにすぎない。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、極端な落差(嵩高さ)を有する不規則な凹凸状のシワ(あるいはシボ)が形成された、軽量かつ十分な強度を有する長繊維不織布を提供することを目的とする。また、長繊維不織布を1枚または2枚以上有する積層生地、この積層生地を有する衣類、寝具、この積層生地を有するカーテン、敷物などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、長繊維を有して構成された長繊維不織布であって、極端な落差を有する不規則な凹凸状のシワが形成された長繊維不織布である。平面状の長繊維不織布を、その不織布の厚みを実質的に維持しつつ、かつ厚み方向に立体的に嵩高くなるように加工することで、極端な落差を有する不規則な凹凸状のシワが形成された長繊維不織布を得ることができる。
【0007】
この構成によれば、極端な落差(嵩高さ)を有する不規則な凹凸状のシワ(あるいはシボ)が形成された長繊維不織布を提供できる。この不織布の厚み方向において嵩高くなるように不規則なシワあるいは重なり部分(くしゃくしゃ感)が形成される。この長繊維不織布は、不織布の原材料に長繊維を用いているため、目付の小さい(軽い)不織布を用いても、シワ形成後にも十分な強度と軽量性を有する。これに対し、短繊維で構成された不織布は、長繊維で構成された不織布よりも厚みおよび目付が大きくなるため軽量性に乏しい。また、洗濯回数が増加してもシワ形状が長期間維持される。さらに、この長繊維不織布を衣類や寝具などの内層生地に用いれば、空気層を備えた単層および多層構造となり、従来のわた状繊維や羽根、羽毛からなる中わたタイプよりも軽量、乾燥性に優れ、濡れても保温性を好適に維持できる。そして、綺麗に折りたたむ必要がなく、無造作に収納ケースや収納袋に詰め込むことができるとともに収納時のコンパクト性にも優れる。
【0008】
上記発明の一実施形態として、前記シワが形成された長繊維不織布の目付けが、シワが形成される前の長繊維不織布の目付けの3倍〜60倍である。嵩高性の理由から5倍〜60倍であることが好ましい。
【0009】
上記発明の一実施形態として、前記シワが形成された長繊維不織布の目付けが15g/m
2〜300g/m
2である。また、シワが形成される前の長繊維不織布の目付けが5g/m
2〜60g/m
2であり、好ましくは5g/m
2〜20g/m
2未満であり、より好ましくは6g/m
2〜10g/m
2である。目付けが小さいほど加工後の形状維持性が弱く、一方、目付けが大きくなるほど嵩高性が損なわれることから、上記範囲の目付けが好ましい。
【0010】
上記発明の一実施形態として、前記シワが形成された長繊維不織布の嵩高さ(h:平面に置いたときの平面から最上部までの高さ)が、シワが形成される前の長繊維不織布の厚み(t)の5倍以上、好ましくは10倍以上、より好ましくは50倍以上、さらに好ましくは100倍以上である(
図2参照)。
【0011】
上記発明の一実施形態として、前記シワが形成される前の長繊維不織布の厚みが、0.01mm〜1.0mmである。嵩高性の理由から0.02mm〜0.5mmが好ましく、0.02mm〜0.3mmがより好ましく、0.02mm〜0.2mmがさらに好ましい。
【0012】
上記発明の一実施形態として、前記シワが形成されていない長繊維不織布を袋体に詰めて湿熱を与えることで、前記長繊維不織布に前記シワが形成される。不規則なシワが形成されるように、シワが形成されていない長繊維不織布を無造作に(乱雑に)袋体にギュウギュウに詰め込むことが好ましい。綺麗に折りたたんで袋体に詰め込むと不規則なシワが形成されにくいからである。
【0013】
上記発明の一実施形態として、前記シワが形成されていない長繊維不織布は、湿式法(例えば、ウォーターパンチ方式)、乾式法(例えば、トウ開繊法、バーストファイバー法)、スパンボンド法(例えば、ケミカルボンド方式、サーマルボンド方式、ニードルパンチ方式)、メルトブロー法または直交積層結合で製造される。シワ形状の形成、維持の理由から、スパンボンド法、メルトブロー法または直交積層結合の製造方法が好ましい。
図4、5で示すとおり、直交積層結合で製造された直交積層不織布は、整列した縦糸41と整列した横糸41とが重なった積層構造である。
図5の断面図で示すとおり、重なりがなく厚みを薄くでき、かつ表面が平滑である。そのため、直交積層不織布は、スパンボンド法で製造された不織布よりも、薄肉化が可能であり、寸法安定性があり、引張強度も高い。例えば、目付が5g/m
2〜60g/m
2、厚みが50μm〜130μmである。引張強度は、縦方向が25〜300[N/50mm]、横方向が10〜90[N/50mm]である。また、直交積層結合の製造方法として、特開2003−213560に開示された製造方法が一例として挙げられる。
【0014】
上記発明の一実施形態として、前記長繊維は、繊維太さ(直径)が1μm〜100μmが好ましく、5μm〜50μmがより好ましい。
【0015】
上記発明の一実施形態として、前記長繊維は、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ビニロン、アラミド、アクリル、レーヨン、ポリエチレン、ポリウレタンおよび絹のうちの1種の長繊維あるいは2種以上の長繊維である。シワ形状の形成、維持の理由から、ポリエステルが好ましい。
【0016】
また、他の発明の積層生地は、上記長繊維不織布(内層)と、前記長繊維不織布の一方面に積層される第1生地(第1外層)を有し、前記長繊維不織布(内層)と前記第1生地(第1外層)との間に第1空間部が形成される。この積層生地は2層構造である。この第1空間部によって断熱性、保温性が向上する。
【0017】
上記発明の一実施形態として、前記長繊維不織布(内層)の一方面とは異なる他方面に積層される第2生地(第2外層)をさらに有し、前記長繊維不織布(内層)と前記第2の生地(第2外層)との間に第2空間部がさらに形成される。この積層生地は3層構造である。この第2空間部によって断熱性、保温性がさらに向上する。
【0018】
上記発明の一実施形態として、前記長繊維不織布(内層)が2枚以上積層され、前記長繊維不織布同士の間に第3の空間部が形成される。内層が2枚の長繊維不織布で構成されるため、内層同士の間でも空間部を形成できるため、保温効果がより高まる。
【0019】
また、他の発明の衣類または寝具は、上記積層生地を有して構成される。衣類は、特に制限されず、例えば、ベストタイプ、半袖タイプ、長袖タイプ、半ズボンタイプ、長ズボンタイプ、カバーオールタイプ、帽子、手袋、靴下、バラクラバ、ショール、腰巻、マフラーなどが挙げられる。また、寝具は、特に制限されず、例えば、寝袋、掛け布団、敷き布団、枕、クッション、ブランケットなどが挙げられる。また、他の発明のカーテンまたは敷物は、上記積層生地を有して構成される。敷物は、特に制限されず、例えば、カーペット、絨毯などが挙げられる。
【0020】
上記発明において、上記長繊維または上記加工前の長繊維不織布は、各種加工処理(例えば、透湿防水加工、撥水加工、反発加工、抗菌防臭加工、吸水加工、難燃加工等)も適宜施されていてもよい。
【0021】
上記発明において、第1、第2生地(シワが形成された長繊維不織布を内層としたときに、第1、第2生地は外層を構成する)は、糸材料、縫製方法は特に制限されず、また、各種加工処理(例えば、透湿防水加工、撥水加工、反発加工、抗菌防臭加工、吸水加工、難燃加工等)も適宜施されていてもよい。第1、第2生地(第1、第2外層)は、同じ生地でもよく、異なる生地でもよい。第1、第2生地は、例えば、編み組織、織り組織、不織布、フィルムである。第1、第2生地は、1層構造でも複層構造でもよいが、軽量性の観点から単層の方がより好ましい。第1、第2生地は、例えば、ポリエステル、ナイロン等の合成繊維でもよく、天然繊維でもよい。第1、第2生地は、1種類の繊維で構成されていてもよく、複数種類の繊維の組み合わせで構成されていてもよい。また、第1、第2生地の原糸(繊維)自体に上記各種加工処理が施されていてもよい。
【0022】
また、内層(シワが形成された長繊維不織布)の生地は、第1外層と第2外層(第1生地と第2生地)と間に配置されるが、第1生地と第2生地との間に必ず配置されている必要はなく、衣類(衣類の形状、衣類のパーツ形状、パーツの必要性、目的)、寝具(寝具の形状、寝具のパーツ形状、パーツの必要性、目的)に応じて、内層が省略され、第1外層と第2外層のみ、あるいはその第1外層と第2外層との間に別の生地(あるいは部材)が存在している場合もある。例えば、フィット性あるいは締め付け用にゴム素材や、開閉自在の留め具が設けられていてもよい。留め具としては、例えば、通常のボタン、点ファスナー(例えば、スナップボタン)、線ファスナー(例えば、ジッパー、チャック)または面ファスナー(例えば、マジックテープ(登録商標))が挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上を適宜組み合わせて用いることもできる。また、衣類には、ポケットが設けられていてもよい。
【0023】
また、上記発明において、上記シワが形成された長繊維不織布を2層以上積層した状態を内層として用いる場合に、嵩高さの小さいものと嵩高さの大きいものとの組み合わせのように、異なる嵩高さの長繊維不織布同士を空間部を形成した状態で積層してもよい。
【0024】
また、上記発明において、衣類のパーツに応じて、異なる立体形状面(あるいは異なる嵩高さシワが形成された)の長繊維不織布を用いてもよい。シワの形状は、例えば、波形状、凹凸形状、シボ状等が挙げられる。
【0025】
また、上記発明の一実施形態として、積層される生地同士(上記シワが形成された長繊維不織布、第1、第2の生地)は、端部分以外が縫い止めされていなくてもよく、部分的に縫い止めされてもいてもよい。また、生地同士の間に平面状の生地を全体または部分的に介在させてあってもよく、この平面状生地が前記生地に部分的に縫い止めされていてもよい。
【0026】
上記発明において、衣類の端部において、前記内層(シワが形成された長繊維不織布)の生地の端部が、前記第1外層および/または前記第2外層と縫い合わされていることが好ましい。空間部を広範囲に形成して保温性を確保しつつ、折りたたみ時のコンパクト性を向上できる。キルティングや部分的な縫い止め(内層生地と外層生地との縫製)をほとんど必要としないことから、衣類着用時のごわごわ感を抑制し、着衣感触を好適にできる。また、衣類、寝具などの製品の縫製加工時の工数を低減する効果も得られる。衣類の端部は、ベストであれば、例えば、襟周り、肩(上腕)周り、胴周り、ファスナー部分などである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】
図1の長繊維不織布のA−A断面を示す図である。
【
図4】直交積層不織布の構造について説明する斜視図である。
【
図5】直交積層不織布の構造について断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<長繊維不織布の実施形態>
本実施形態の長繊維不織布1を
図1に示す。長繊維不織布1は、極端な落差を有する不規則な凹凸状のシワが形成されている。
図2は、
図1の長繊維不織布1のA−A断面である。
図2において、シワが形成された長繊維不織布1の嵩高さ(h:平面に置いたときの平面から最上部までの高さ)が、シワが形成される前の長繊維不織布の厚み(t)の200倍である。シワが形成される前の長繊維不織布1の厚み(t)は0.05mmであり、嵩高さ(h)は、10mmである(200倍)。厚み(t)は、複数個所の平均値でもよい。
【0029】
また、シワが形成された長繊維不織布1の目付けは、シワが形成される前の長繊維不織布の目付けの3.75倍である。シワが形成された長繊維不織布1の目付けは、30g/m
2であり、シワが形成される前の長繊維不織布の目付けが8g/m
2である。
【0030】
不規則なシワを形成する方法は以下のとおりである。シワが形成されていない長繊維不織布を袋体に詰めて湿熱(60
℃以上の熱水、水蒸気など)を与えることで、長繊維不織布にシワを形成する。不規則なシワが形成されるように、シワが形成されていない長繊維不織布を無造作に袋体にギュウギュウに詰め込むことが好ましい。湿熱を与える時間は、例えば10分以上が好ましい。湿熱を与えた後に、袋体から長繊維不織布を取り出し、40℃の熱風で乾燥させる。
【0031】
シワが形成される前の長繊維不織布は、直交積層結合で製造される。材料となる長繊維(フィラメント)は、太さが10μmのポリエステル樹脂である。長繊維(フィラメント)は、平均長さが100mmを超えているものをいい、短繊維フィラメントとは異なる。
【0032】
<長繊維不織布の別実施形態>
上記実施形態において、シワが形成される前の長繊維不織布は、直交積層結合で製造されるものに限定されず、他の上記で例示された製造方法でもよい。また、材料となる長繊維は太さが10μmのポリエステルに限定されず、他の上記で例示された太さが0.1μm〜100μmでもよく、ポリエステル以外の他の上記で例示された材料でもよい。
【0033】
また、シワが形成される前の長繊維不織布1の厚み(t)および嵩高さ(h)は、上記に制限されず、tが0.05mm〜2.0mmの範囲でもよく、hがtの5倍以上、好ましくは10倍以上、より好ましくは50倍以上でもよい。また、シワが形成された長繊維不織布1の目付けは、シワが形成される前の長繊維不織布の目付けの3倍〜60倍でもよい。
【0034】
シワの形成方法は、長繊維不織布を袋体に詰めて湿熱(例えば60
℃以上の熱水、水蒸気など)を与えることに制限されず、湿熱と一緒に大気圧以上の圧力をかけてもよい。湿熱を与える時間は、10分に限定されず、10分〜24時間が例示される。湿熱を与えた後に袋体から取り出した長繊維不織布を40℃の熱風で乾燥させることに制限されず、30
℃〜150
℃の範囲の温度、または18
℃〜28
℃の範囲の室温下で自然乾燥させることでもよい。若しくは、90
℃以上の熱を与えたローラにそのローラの回転速度よりも速く、長繊維不織布をローラの上で接触するように送り込むことで、シワを形成する方法など、他の方法を用いてもよい。
【0035】
<シワが形成された長繊維不織布を有する積層生地>
本実施形態の積層生地10を
図3に示す。積層生地10は、シワが形成されている長繊維不織布で構成された第1内層102および第2内層103が積層され、その間に第3空間部(空気層)112が形成される。そして、第1内層102の上面側(
図3参照)に第1外層101が積層され、第1内層102と第1外層101との間に第1空間部(空気層)111が形成される。第2内層103の下面側(
図3参照)に第2外層104が積層され、第2内層103と第2外層104との間に第2空間部(空気層)113が形成される。
【0036】
<積層生地の別実施形態>
上記積層生地10は、2層の内層を有していたが、1層の内層であってもよく、3層以上でもよい。また、積層生地は、1層以上の内層と第1外層から構成されていてもよく、または1層以上の内層と第2外層から構成されていてもよい。内層が複数ある場合には、異なる材料の長繊維から構成された異なる長繊維不織布で構成されていてもよい。
【0037】
<シワが形成された長繊維不織布を有する積層生地で構成された衣類、寝具、カーテン、敷物など>
本実施形態の衣類または寝具は、上記積層生地10を有して構成される。衣類は、特に制限されず、例えば、ベストタイプ、半袖タイプ、長袖タイプ、半ズボンタイプ、長ズボンタイプ、カバーオールタイプ、帽子、手袋、靴下、バラクラバ、ショール、腰巻、マフラーなどが挙げられる。また、寝具は、特に制限されず、例えば、寝袋、掛け布団、敷き布団、枕、ブランケットなどが挙げられる。
【0038】
また、カーテン、カーペット、絨毯、壁紙などの家屋に使用される生地材を、上記長繊維不織布の単層または複数層で構成してもよく、また、上記長繊維不織布を有する積層生地で構成してもよい。また、本発明の長繊維不織布またはこの長繊維不織布を有する積層生地は、上記用途に限定されず、他の用途にも応用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 シワが形成された長繊維不織布
10 積層生地