(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752794
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】液体排出物の処理および金属の回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 26/22 20060101AFI20150702BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20150702BHJP
C22B 3/04 20060101ALI20150702BHJP
C01F 5/08 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
C22B26/22
C22B3/00 R
C22B3/00 P
C22B3/00 D
C01F5/08
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-523444(P2013-523444)
(86)(22)【出願日】2011年8月9日
(65)【公表番号】特表2013-540889(P2013-540889A)
(43)【公表日】2013年11月7日
(86)【国際出願番号】BR2011000274
(87)【国際公開番号】WO2012019265
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2014年2月27日
(31)【優先権主張番号】PI1003193-6
(32)【優先日】2010年8月9日
(33)【優先権主張国】BR
(73)【特許権者】
【識別番号】510277338
【氏名又は名称】ヴァーレ、ソシエダージ、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】VALE S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】サロマオ、ソリノ、エベリン
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト、マッティオリ、シルバ
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド、ルイス、ダ、シルバ
(72)【発明者】
【氏名】クラウソン、デ、ソウサ
【審査官】
越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0180945(US,A1)
【文献】
米国特許第07392848(US,B1)
【文献】
米国特許第05587088(US,A)
【文献】
特表2009−529031(JP,A)
【文献】
特開2001−179214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 26/00−26/22
C22B 3/00− 3/46
C02F 1/00− 1/64
C01F 5/00− 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)液体排出物を均一にする工程と、
b)硫化物を加え、金属を金属硫化物の形態で沈殿させる工程と、
c)工程(b)で得られた前記金属硫化物から固体/液体を分離し、液相(10)を形成する工程と
を含む、液体排出物の処理および金属の回収方法であって、
前記液体排出物の処理および金属の回収方法が、
d)前記液相(10)にアミン溶液を50〜250g/Lの比率で加えると共に、水酸化マグネシウムMg(OH)2の形態でマグネシウムを沈殿させる工程と、
e)ストリッピングおよび精留によって前記アミンを回収する工程と
を更に含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
工程(d)において、温度25〜70℃、固形分1〜10%w/w、滞留時間0.5〜2時間、およびスラリーのリサイクル率5〜40:1で、前記液相(10)へ前記アミン溶液を加えることを特徴とする、請求項1に記載の液体排出物の処理および金属の回収方法。
【請求項3】
工程(d)において加えられる前記アミンが、回収されたアミン(12)および補充アミン(11)の流れからもたらされることを特徴とする、請求項1に記載の液体排出物の処理および金属の回収方法。
【請求項4】
工程(d)の後、かつ、工程(e)の前に、水酸化マグネシウム沈殿物(13)のスラリーが濃縮機で処理されることを特徴とする、請求項1に記載の液体排出物の処理および金属の回収方法。
【請求項5】
前記水酸化マグネシウムが前記濃縮機から回収され、固体/液体分離機に運ばれ、水で洗浄されることを特徴とする、請求項4に記載の液体排出物の処理および金属の回収方法。
【請求項6】
前記洗浄された水酸化マグネシウムが、乾燥およびか焼工程に付されて、マグネシアを形成することを特徴とする、請求項5に記載の液体排出物の処理および金属の回収方法。
【請求項7】
工程(e)において、前記アミンのストリッピングが、低圧蒸気による加熱によって行われ、弱酸および痕跡量のアミドによって形成される塔底部の集合流(21)ならびにアミンに富んだ流れ(20)を得ることを特徴とする、請求項1に記載の液体排出物の処理および金属の回収方法。
【請求項8】
弱酸および痕跡量のアミドによって形成される塔底部の集合流(21)が、活性炭カラムに運ばれ、その際、残留アミンが取り除かれ、得られた弱酸(22)が保管所に移されることを特徴とする、請求項7に記載の液体排出物の処理および金属の回収方法。
【請求項9】
アミンに富んだ蒸気(20)が精留工程に送られ、その際、低圧蒸気を受け、熱交換器を介して凝縮されて、高品質の回収されたアミン(12)を製造することを特徴とする、請求項7に記載の液体排出物の処理および金属の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体排出物の処理方法、ならびにアミンの再生アミンを介したマグネシウム水酸化物の沈殿による金属の回収、およびそれに続くアミンの再生と副生物であるマグネシウムと硫黄の利用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体および固体排出物を処理する任意の方法の主な目的は、(i)環境に放出または変換するために中和および適切に調節すること、および、(ii)自家消費および/または第3者への商業化の形態で使用することができるようなリサイクル可能な副生物を得ることである。
【0003】
ニッケルを含むラテライト鉱の利用において、
・鉱床の地質学的起源;
・鉱石の鉱物学的組成;
・鉱石の粒径分布;
・処理の稼働条件;および
・鉱石前処理システム、浸出、沈殿、溶媒抽出、および電気精錬の配置
といった、高圧酸浸出(HPAL)によるニッケル製造プロセスに影響を与えるいくつかの要因がある。
【0004】
高圧酸浸出(HPAL)プロセスは、低含有量のマグネシウム−通常最大4%に制限−を有する褐鉄鉱に主に推奨されるが、これは高いマグネシウム含有量の鉱石では硫酸の消費量が大きいからである。
【0005】
当業界で知られているHPALによるニッケルの製造方法は、
図1に示されており、(i)ラテライトニッケル鉱を前処理する工程と、(ii)加圧下で硫酸を用いてニッケルを浸出する工程と、(iii)ニッケルを沈殿させる工程と、(iv)再侵出工程と、(v)ニッケルの溶媒抽出工程と、(vi)カソードニッケル(純度99.95%の金属ニッケル)を製造するための電気製錬工程と、を主に含む。鉱石中にはコバルトが相当量存在するため、コバルトが副産物として金属形態で得られる。
【0006】
この技術は、
・褐鉄ラテライトは低いマグネシウム含有量を有し、その結果、硫酸の消費が少ない;
・硫酸の低いコストおよびその低い消費率による、低い稼働コスト;
・粗ラテライト(粗鉱−ROM)がスラリーの形態で使用されるため、乾燥鉱石還元工程が不要であり;
・対象の金属に対する高い選択性;
・環境標準以下の二酸化硫黄排出;および
・鉱石中に含まれるニッケルおよびコバルトの90%以上の回収率
といった理由から、褐鉄ラテライトからニッケルおよびコバルトを抽出するのに最も適したプロセスである。
【0007】
加圧浸出は一般的に、チタンコートされたオートクレーブ内で、245〜270℃の範囲の温度で行われる。このプロセスにおいて、オートクレーブ供給口のスラリーは、事前に蒸気で加熱された約40〜45%の固体を含む。ある鉱石では、存在する粘土状鉱石の特性に起因して、この濃度は25〜30%に限定されることがある。スラリーを濃縮する度合いは、比較的高い資本コストの装置を備えるオートクレーブの容量に大きく影響する。浸出機構には、母材のマトリックス中に包含されるニッケルおよびコバルトの高温での酸溶解が含まれる。これらの条件下で、鉄鋼物の溶解が生じ、続いて硫化物が形成され、これが高温条件下で水と反応してヘマタイトを形成し、その結果、硫酸を再生する。
【化1】
【0008】
このプロセスの抽出度合いは、ニッケルに関して92〜96%、そしてコバルトに関して90〜92%に達する。通常、このレベルの抽出を得るためには、化学攻撃後の反応スラリーは、30〜50g/Lの残留遊離酸濃度を示すはずである。
【0009】
侵出後、オートクレーブからのスラリーは減圧され、膨張チャンバー(「フラッシュ容器」)内で約100℃に冷却され、残留固体は液相から分離される。固体−液体分離は、対向流(CCD)で稼働するデキャンター内で行われ、ニッケル、コバルト、マグネシウム、マンガン、亜鉛、胴、鉄および他の金属の硫化物を加えた溶液を発生させる。溶液中に存在するニッケルおよびコバルトは、その後、(H
2Sを用いて)硫化物として、(炭酸アンモニウムを用いて)炭酸塩として、またはマグネシアMgOを用いて水酸化物として沈殿する。これらの中間生成物は、硫化物の場合(MSP−混合硫化物沈殿)、通常55%の(Ni+Co)含有量を有し、水酸化物の場合(MHP−混合水酸化物沈殿)、40〜45%の(Ni+Co)含有量を有する。これらの金属を、デキャンタシステムから直接溶液に適用される溶媒抽出によって回収することも可能である。MSPプロセスは、貴重な金属をより高い含有量で有し、マンガン、マグネシウムおよび硫化物の汚染のレベルが最も低い製品を得ること可能とすることに留意すべきである。しかし、MSPルートによる製造には補助設備に対して高い資本コストを伴い、これは水素および硫化水素単位が必要であり、これらの製品には高度なセキュリティと取り扱いシステムとが求められることによる。
【0010】
以下の製錬工程において、中間生成物(ニッケルおよびコバルトの硫化物または水酸化物)は再侵出され、次いで溶解され、(i)ニッケルおよびコバルトを分離するための溶媒抽出および(ii)電気分解(電気精錬)などの、精製処理を受け、高いレベルの純度を達成する。
【0011】
HPALルートによるニッケル製造方法において、ケイ酸塩および炭酸マグネシウムを含む鉱石から、製造されるNiに対して250〜400m
3/tの比率で液体排出物が発生し、これは主にマグネシウムおよび硫酸塩を含み、種々の元素の中でとりわけ、少量のコバルト、亜鉛、マンガン、ニッケル、鉄、クロムを含む。表1には、処理されるべき排出物の化学組成が示され、硫酸塩およびマグネシウムが非常に多く含有されていることが示されている。
【表1】
【0012】
浸出プロセスで用いられる試薬を回収する目的および/または鉱物の液体処理によって発生する排出物に分散された金属を回収する目的の工程を有する、種々のタイプの排出物処理が当業界で知られている。
【0013】
この意味で、文献GB1.520.175では、例えば、酸化カルシウムまたは炭酸カルシウムをマグネシウムおよび硫酸塩の沈殿に使用することでマグネシウムを硫酸塩水溶液から回収する方法などの、金属を回収する方法が説明されている。このシステムにおいて、マグネシウムは水酸化物の形態で錯体化し、硫酸カルシウムと一緒に沈殿する。細かい粒径および若干類似する物理特性を有することから、従来の工業的な物理的分離プロセスの使用が制限されるため、これら2つの元素の別々の再利用は複雑である。さらに、硫酸カルシウムに含まれる硫黄の回収には、複雑なか焼装置が必要となり、エネルギーの激しい使用が必要となる。この点において、マグネシウムの沈殿がアミンを用いて行われる本発明の対象である方法と比較すると、コスト、可動装置および導入の簡易さの面で主要な欠点がある。
【0014】
当業界で知られている他の方法が、文献US2009/0148366において説明されており、この文献には硫酸マグネシウム溶液から金属および酸化マグネシウムを回収する方法が開示されている。この方法では、硫酸マグネシウムの蒸発による結晶化を利用しており、硫酸塩の望ましいレベルの水和に基づき、排出物中に含まれる実質的に全ての水が蒸発されることが求められる。この蒸発は、真空状態が用いられる場合、70℃〜90℃の範囲の温度で起こり得る。次工程において、マグネシウムを使用するために、硫酸マグネシウム沈殿物がか焼されて酸化マグネシウムに変化させなければならない。この操作は700℃〜800℃の高温で行わなければならず、激しいエネルギー消費を必要とする。か焼から生じるガスから硫黄を回収するために、二酸化硫黄が最初に三酸化硫黄に錯体化されなければならず、後続の硫酸への転換には触媒床を使用する。この操作は、複雑で、コストが高く、かつ、硫酸プラント内で行わなければならない。
【0015】
当業界で知られている他の方法が、文献US2009/018945に記載されており、この文献では、ラテライト鉱の酸浸出からの排出物中に含有されるマグネシウムと硫黄の水酸化マグネシウムおよび酸化マグネシウムの形態で回収するシステムが開示されている。この方法では、アンモニアが沈降剤として用いられ、硫黄が硫酸アンモニウムの形態で回収される。本発明の対象であるアミンを使用する方法に対する、アンモニアを使用することの主要な欠点は、アンモニアは取り扱いの難しい高毒性ガスであり、一端硫黄と結合するとその再生ができないのに対し、アミンは周囲温度で液体形態で取り扱うことができ、主に、プロセスにおける再利用のために再生することができる点である。
【0016】
本発明の目的は、液体排出物を処理し、さらにアミンを用いて水酸化マグネシウムの沈殿によって金属を回収し、続いてアミンを再生し、マグネシウムおよび硫黄の副生物を利用する、方法を提供することにある。
【0017】
a)液体排出物を均一にする工程と、
b)硫化物を加え、金属を金属硫化物の形態で沈殿させる工程と、
c)工程(b)で得られた金属硫化物から固体/液体を分離し、金属を含まない液相を形成する工程と
を含む、液体排出物の処理および金属の回収方法であって、
本発明の対象である方法は、
d)液相にアミン溶液を50〜250g/Lの比率で加えると共に、水酸化マグネシウムMg(OH)
2の形態でマグネシウムを沈殿させる工程と、
e)
ストリッピングおよび精留によってアミンを回収する工程と
を更に含むことを特徴とする、方法。
【図面の簡単な説明】
【0018】
次いで、図面に示した実行例を基に本発明をより詳細に説明する。
【
図1】先行技術で知られている、HPALルートによるニッケル製造方法のフロー図である。
【
図2】本発明の対象である、液体排出物を処理して金属を回収する方法のフロー図である。
【0019】
好ましい態様によれば、そして、
図2から分かるように、本発明の対象である、液体排出物を処理して金属を回収する方法は、(i)マグネシウムおよび(ii)硫黄を回収するために開発された。一つめは、一般的に、農業目的(中和剤および肥料)のため、および工業における原料として、ニッケル抽出湿式冶金プロセス自体でリサイクルされるべきものである。後者は希硫酸の形態であり、浸出プロセスでリサイクルされ得る。
【0020】
本発明の対象である方法も、とりわけマンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、銅(Cu)などの、液体排出物中に残存している金属の除去を可能にし、それによりそれらが工業プロセスにおいて完全にリサイクルされる状態を作り出し、同様に、とりわけ、農業用途の微量栄養素の追加の製造を提供する。
【0021】
図2のフローチャートで説明されているように、本発明の対象である、液体排出物を処理して金属を回収する方法において、液体排出物(1)は均一化のために攪拌槽に受け入れられる。その後、均質化(均一化)された排出物(2)は、Na
2Sおよび/またはH
2Sの形態の硫化物(3)の添加を受け、Ni、Co、Mn、Zn、Cuおよび他の残留金属を金属硫化物(4)の形態で沈殿させる。後続の工程において、その硫化物を固体−液体分離操作に付し、金属硫化物が豊富な流れ(5)を得る。適切に洗浄し、硫化物を攪拌反応器中で酸素を注入しつつ(6)酸化し、得られた溶液(7)を結晶化に付して、それぞれの塩(8)を得、分割または混合し、出荷(9)のために貯蔵および輸送する。
【0022】
このように処理され、実質的に金属(10)を含まない液相または液体排出物を、攪拌槽を備える反応システムに移し、そこで回収されたアミン(12)および補充アミン(11)の流れを用いて低沸点アミンと接触させ、この反応の結果、水酸化マグネシウム沈殿物(13)のスラリーが得られる。この工程において、アミンを50〜250g/Lの比率、25〜70℃の温度、1〜10%
w/wの固形分、0.5〜2時間の滞留時間、5〜40:1のスラリーのリサイクル率で加える。
【0023】
このスラリーを濃縮機に送り、水酸化マグネシウムを底流(14)から回収し、固体−液体分離機に送り、水(15)で洗浄し、水酸化マグネシウムケーキ(16)を得る。先行技術において既に知られた方法と異なり、本発明の対象であるこの方法では、水酸化マグネシウムを単独で沈殿するため、従来の固体/液体分離装置を用いて容易に回収できる。
【0024】
一連の操作において、このケーキを乾燥およびか焼に付し、結果としてマグネシア(17)を得、貯蔵し、一部をニッケル抽出プロセスにリサイクルし、残りを商品化する(18)。反応システムにおいて、アミン/排出物比率は、100〜200g/Lの範囲に維持されなければならず、マグネシウム溶液の含有量に基づいて最適化する。沈殿した水酸化マグネシウムのスラリーの一部は、種としてMg(OH)
2の結晶の成長を促進させるために、濃縮機の底流から接触反応器に再循環させる。沈殿反応器からおよび水酸化マグネシウムの乾燥からのガス流を、アミン吸収システムに送り、沈殿反応器における再処理に返還する。
【0025】
濃縮機の上澄み液相(19)は、蒸留を介して、
ストリッピングおよびその後の精留の2工程でアミン回収工程に従う。
【0026】
アミン
ストリッピングは、アミンを含む弱酸溶液(19)を90〜120℃の範囲の温度まで、低圧蒸気(27)−1.5〜3.0kgf/cm
2(man.)−を連続的に供給しつつ加熱することで行う。これにより、弱酸および痕跡量のアミンを含む、塔底部の集合流(21)が得られ、含まれている残留量のアミンを除去するために、活性炭カラムに送る。得られた弱酸(22)を貯蔵エリアに移し、そこ(23)から湿式冶金プロセスで再利用する。飽和した活性炭(24)を再生工程に進め、その後(25)追加の新しい炭(26)と共に組立て直す。
【0027】
蒸留における
ストリッピング工程の後、アミンに富む蒸気の流れ20が精留工程に流れ、そこで、低圧蒸気(28)を再度蒸留カラム(27)に、1.5〜3.0kgf/cm
2(man.)の範囲の圧力で注入し、連続的に供給する。また、この装置で、上部の蒸気流を冷却水で稼働する熱交換機(29)によって凝縮し、蒸留装置内における高品質アミン(12)の製造に関して3〜5:1の還流を形成する。アミン補充流(11)を、回収されたアミン流(12)と共同で沈殿反応器に供給し、処理回路を閉じる。
【実施例】
【0028】
研究所規模で行った、本発明の対象である方法のシミュレーション試験は、商業的価値を有する副生物(リサイクル可能な固体)および回収された酸性水を得る可能性を示し、これらは工業プロセスにおける再使用に適しており、液体排出物の放出の観点から達成される無廃水状態を可能にする。上記試験は、既知量のジエチルアミンを既知量の溶液(Mg濃度が30g/LであるMgSO
4水溶液)に加えた500mlビーカー内で行った。水の加水分解およびOH
−の溶液への放出に伴い、Mg(OH)
2の沈殿が生じる。表2に、ジエチルアミン(Et
2NH)を用いた水酸化マグネシウムについての沈殿試験の実験結果を示す。
【表2】
【0029】
表2の結果から示されるように、ジエチルアミン量の増加により、Mgの回収から分かるように、溶液からのマグネシウムの高い除去が提供される。しかし、カチオンであるMg
2+の化学量論量に対して125%および150%のアミンを加えた場合、マグネシウムの回収に大きな変化はなかった。
【0030】
アミンを回収する試験は、分割蒸留およびMg(OH)
2の回収によってアミンをリサイクルする目的で、反応器−晶析装置に接続された研究室の蒸留装置で行った。反応器を、サーモスタットを備える浴で70℃の温度で加熱した。サーペンタインコンデンサ(serpentine condenser)を反応器に接続した。コンデンサジャケットに60℃の水を供給し、蠕動ポンプを用いて再循環させて温度を一定に保った。気体状のアミンが発生してH
2SO
4溶液(10%
w/w)中でバブリングした。回収された全てのアミンのレシーバーである酸性溶液を、その後分析して有機試薬の回収を計算した。全体の実験を通して、空気流が反応器中で膨張した。溶液のpHを、デジタル読取り機を用いて実験の間中監視した。化学量論値よりも50%高い(アミン/Mg)比率を用いた。したがって、蒸留試験に用いられた混合物は、Mgを90mg/L、SO
42−を71.1g/L、Et
2NHを162.2g/L含み、pH=12であった。各試験は3時間続いた。アミンの平均回収率は99.6%に相当し、溶液の最終pHは5.5に相当した。
【0031】
表3には、本発明の対象である処理プロセスの過程における、液体排出物の品質の発展が示されている。
【表3】
【0032】
以下の、(i)ニッケル抽出プロセスで再利用されるのに適した品質を有する、Mg(OH)
2のか焼後の酸化マグネシウム−MgO−、(ii)農業における微量栄養素を得るための原料としての金属硫化物、(ii)工業的ニッケル抽出プロセスにおける再利用の目的に適した酸性水、は副生物として得られたものである。
【0033】
本プロセスの主な試薬であるアミンは、蒸発によって回収され、リサイクルされることが稼働コストを低減する上で好ましい。
【0034】
さらに、先行技術において既に知られているプロセスと比較した、本発明の対象であるプロセスの他の利点は、炭カラムを通過した後に得られる硫酸塩溶液が、ラテライト鉱石自体を浸出するプロセスにも再利用される酸性溶液を構成する点である。したがって、マグネシウムおよび硫黄はこれらの元素を含む排出物から単純な方法で回収される。
【0035】
本プロセスの他の利点は、Mgが沈殿した水酸化マグネシウムの形態で回収されるという事実にあり、これにより本プロセスに先立つ工程に容易にリサイクルされることができ、先行技術の現在の手法と比較して、より低い稼働コストのための代替手法を構成することにある。その結果、上述の通り、硫黄は炭カラムにおける研磨工程から発生する酸性水中に回収される。したがって、より単純なフロー図およびより低い稼働コストで、アミンはより低い温度で蒸発され、本プロセスのこの工程において回収されるマグネシウムおよび硫黄を浸出する工程に再循環することを可能とする。
【0036】
この意味で、一般的に、本発明の対象である液体排出物の処理プロセスは、先行技術に対して以下の新規な発明的特徴を示す。
a)マグネシウムおよび硫黄を含む排出物の溶液に直接適用される、通常アルカリ状態の物質であり、回収およびリサイクルの目的のために容易に分離する、低沸点アミンの使用;
b)ニッケル抽出プロセス自体での再利用ならびに農業的および工業的用途への原料として目的での、ニッケルを含むラテライトの酸可溶化から生じる、沈殿したMg(OH)
2の形態およびそのマグネシアMgOへの転換での、溶解性マグネシウムの除去;
c)処理回路における再利用を可能とする特徴を有し、工程を「排出物ゼロ」状態にし、工業地帯における補充水の消費を大幅に低減させる、液体排出物の低濃度酸性水への転換;
d)液体排出物中に残留する金属(Co、Mn、Ni、Zn、Cu、等)の除去、および農業的目的のための微量栄養素の製造における原料としてのその再利用;
e)ニッケルに関する他の鉱物資源の使用の拡大;および
f)さらに、この液体排出物の処理プロセスは、大きな稼働柔軟性を有し、モジュール方式で実施することができる。
【0037】
好ましい態様の例を説明してきたが、本発明の範囲が他の予測され得る変更も及ぶものであり、添付の請求項によってのみ限定され、潜在的に同等の方法がここに含まれることが理解されるべきである。