(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752913
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】車両のドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
E05B 85/12 20140101AFI20150702BHJP
E05B 77/38 20140101ALI20150702BHJP
【FI】
E05B85/12 B
E05B77/38
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-232703(P2010-232703)
(22)【出願日】2010年10月15日
(65)【公開番号】特開2012-87473(P2012-87473A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2013年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(74)【代理人】
【識別番号】100128864
【弁理士】
【氏名又は名称】川岡 秀男
(72)【発明者】
【氏名】嶺村 隆二
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−193706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 85/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルベースに回転操作可能に軸支される操作部材を有し、該操作部材の初期位置から操作位置への回転操作により操作力伝達手段を介してドア体に配置されたドアロック装置を操作する車両のドアハンドル装置であって、
操作部材に比して軟質の合成樹脂材により形成されて前記操作部材に装着され、装着状態において、前記操作力伝達手段の一端の操作部材への連結状態を保持するとともに、ハンドルベースのストッパ壁面に当接して操作部材の操作ストローク終端位置を決定する連結保持部材を有し、
前記操作部材には、前記連結保持部材により決定されるストローク終端位置からのオーバーストローク位置において前記ハンドルベースに当接して前記連結保持部材のオーバーストロークによる変形量を規制する第2ストッパが設けられ、
かつ、前記連結保持部材は、操作部材の回転軸に装着されるとともに、装着状態において、操作部材に回転方向に連結されて操作部材とともに回転する車両のドアハンドル装置。
【請求項2】
前記連結保持部材にはストッパ突条が形成され、該ストッパ突条をハンドルベースのストッパ壁面に当接させて操作ストローク終端が決定される請求項1記載の車両のドアハンドル装置。
【請求項3】
前記操作力伝達手段は、アウターケース内にインナーケーブルを摺動自在に挿通させたケーブル装置により形成されるとともに、
操作部材とインナーケーブルとはインナーケーブルの先端に形成され、インナーケーブルの長手方向に直交する連結用折り曲げ部を操作部材のケーブル挿通孔に挿通させて連結され、
かつ、連結保持部材は、翼部により連結用折り曲げ部のケーブル挿通孔からの脱離方向への移動を規制して操作部材とインナーケーブルとの連結状態を保持する請求項1または2記載の車両のドアハンドル装置。
【請求項4】
操作ハンドルが連結されるハンドルベースにロックレバーを回転操作可能に連結して形成され、ロックレバーの初期位置から操作位置への回転操作によって、ロックレバーに一端が連結されたケーブル装置を介してドアロック装置を操作する車両のドアインサイドハンドル装置であって、
前記ロックレバーには、ケーブル装置のロックレバーへの連結状態を保持する連結保持部材が連結されるとともに、
前記連結保持部材は、ロックレバーに比して軟質の合成樹脂材により形成されてハンドルベースのストッパ壁面に当接した際の衝突音の発生を防止してロックレバーのストローク終端位置を決定し、
かつ、ロックレバーには、前記連結保持部材により決定されるストローク終端位置からのオーバーストローク位置において前記ハンドルベースに当接して前記連結保持部材のオーバーストロークによる変形量を規制する第2ストッパが設けられ、
かつ、前記連結保持部材は、ロックレバーの回転軸に装着されるとともに、装着状態において、ロックレバーに回転方向に連結されてロックレバーとともに回転する車両のドアインサイドハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアハンドル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハンドルベースに連結される操作部材のストローク終端位置における衝突音を軽減させたドアハンドル装置としては、特許文献1の
図4に記載のものが知られている。この従来例において、ハンドル装置は、ボディ本体(ハンドルベース)に施解錠操作ノブ(操作部材)を回転操作可能に連結して形成され、操作部材への操作をロッドを介してドアロック装置に伝達する。
【0003】
ロッドを操作部材に連結するために操作部材に装着されるホルダー部材には操作部材がストローク終端位置に移動した際にハンドルベース側に設けたストッパー部に当接する緩衝部が一体に形成され、ストローク終端位置への移動時の衝突音の発生を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6-79975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来例において、緩衝効果を発揮させるために軟質材料により形成されるホルダー部材は、大きな衝撃荷重を繰り返し与えられ、さらに、ストローク終端位置において常時静荷重を受けているために、経時的に弾性能を失い、緩衝効果が消滅するという問題がある。
【0006】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、簡単な構造で長期にわたって緩衝音の発生を防止できる車両のドアハンドル装置の提供を目的とする。また、本発明の他の目的は、ドアハンドル装置の構造を採用した車両のドアインサイドハンドル装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ドアハンドル装置は、ハンドルベース1に回転操作可能に軸支される操作部材2と、操作部材2に形成される第2ストッパ7と、操作部材2に比して軟質の合成樹脂材により形成される連結保持部材6とを有する。
【0008】
操作部材2は、初期位置と操作位置との間を回転可能であり、初期位置から操作位置まで回転操作すると、操作部材2に連結された操作力伝達手段3を介してドアロック装置4が操作される。操作部材2への操作は、手動であっても、モータ等の電気的駆動手段を有するものであっても、さらには、双方を状況により使い分けるものであってもよい。また、操作力伝達手段3には、アウターケース9内にインナーケーブル10を摺動自在に挿通させたケーブル装置3、あるいはロッド棒等を使用できる。
【0009】
連結保持部材6は、操作部材2への装着状態において、操作部材2と操作力伝達手段3の連結状態を保持するもので、操作力伝達手段3の一端に適宜の連結手段により連結して使用される所謂周知のロッドホルダ等であってもよく、さらには、操作力伝達手段3には直接連結されることなく、間接的に操作力伝達手段3の移動方向、移動量を規制して操作部材2からの脱落を防止するものであってもよい。
【0010】
連結保持部材6は、さらに、ストローク規制部材を兼用しており、操作部材2のストローク終端位置は、ハンドルベース1に形成されるストッパ壁面5に連結保持部材6を当接させることにより決定される。ストローク終端を軟質の連結保持部材6を使用して決定することにより、ストローク終端位置での衝接音の発生が防止される。
【0011】
第2ストッパ7は、連結保持部材6により決定されるストローク終端位置からのオーバーストローク位置においてハンドルベース1に当接して連結保持部材6のオーバーストロークによる変形量を規制し、この結果、連結保持部材6の弾性能の低下による性能劣化が防止される。
【0012】
また、上記連結保持部材6は、操作部材2の回転軸に装着
されるために、連結保持部材6の操作部材2からの脱落を確実に防止することが可能になる。
【0013】
さらに、上述したドアハンドル装置は、
操作ハンドル14が連結されるハンドルベース1にロックレバー2を回転操作可能に連結して形成され、ロックレバー2の初期位置から操作位置への回転操作によって、ロックレバー2に一端が連結されたケーブル装置3を介してドアロック装置4を操作する車両のドアインサイドハンドル装置であって、
前記ロックレバー2には、ケーブル装置3のロックレバー2への連結状態を保持する連結保持部材6が連結されるとともに、
前記連結保持部材6は、ロックレバー2に比して軟質の合成樹脂材により形成されてハンドルベース1のストッパ壁面5に当接した際の衝突音の発生を防止してロックレバー2のストローク終端位置を決定し、
かつ、ロックレバー2には、前記連結保持部材6により決定されるストローク終端位置からのオーバーストローク位置において前記ハンドルベース1に当接して前記連結保持部材6のオーバーストロークによる変形量を規制する第2ストッパ7が設けられ
、
かつ、前記連結保持部材6は、ロックレバー2の回転軸に装着されるとともに、装着状態において、ロックレバー2に回転方向に連結されてロックレバー2とともに回転する車両のドアインサイドハンドル装置として構成することができる。
なお、本発明によれば、
ハンドルベース1に回転操作可能に軸支される操作部材2を有し、該操作部材2の初期位置から操作位置への回転操作により操作力伝達手段3を介してドア体に配置されたドアロック装置4を操作する車両のドアハンドル装置であって、
操作部材2に比して軟質の合成樹脂材により形成されて前記操作部材2に装着され、装着状態において、前記操作力伝達手段3の一端の操作部材2への連結状態を保持するとともに、ハンドルベース1のストッパ壁面5に当接して操作部材2の操作ストローク終端位置を決定する連結保持部材6を有し、
かつ、操作部材2には、前記連結保持部材6により決定されるストローク終端位置からのオーバーストローク位置において前記ハンドルベース1に当接して前記連結保持部材6のオーバーストロークによる変形量を規制する第2ストッパ7が設けられる車両のドアハンドル装置や、
操作ハンドル14が連結されるハンドルベース1にロックレバー2を回転操作可能に連結して形成され、ロックレバー2の初期位置から操作位置への回転操作によって、ロックレバー2に一端が連結されたケーブル装置3を介してドアロック装置4を操作する車両のドアインサイドハンドル装置であって、
前記ロックレバー2には、ケーブル装置3のロックレバー2への連結状態を保持する連結保持部材6が連結されるとともに、
前記連結保持部材6は、ロックレバー2に比して軟質の合成樹脂材により形成されてハンドルベース1のストッパ壁面5に当接した際の衝突音の発生を防止してロックレバー2のストローク終端位置を決定し、
かつ、ロックレバー2には、前記連結保持部材6により決定されるストローク終端位置からのオーバーストローク位置において前記ハンドルベース1に当接して前記連結保持部材6のオーバーストロークによる変形量を規制する第2ストッパ7が設けられる車両のドアインサイドハンドル装置を提供することも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、連結保持部材の撓みを第2ストッパにより制限するために、長期にわたって緩衝音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1の断面図で、(a)は2A-2A線断面図、(b)は2B-2B線断面図である。
【
図3】
図1の断面図で、(a)は3A-3A線断面図、(b)は3B-3B線断面図である。
【
図4】ロックレバーを示す斜視図で、(a)は連結保持部材装着側から見た図、(b)は(a)に対して反対方向から見た図である。
【
図5】インナーケーブルの保持状態を示す図で、(a)はロックレバーにインナーケーブルを連結した状態を示す図、(b)はケーブル装置を示す図である。
【
図6】ロックレバーのストローク状態を示す図で、(a)はロック位置を示す
図3(b)の6A−6A線断面図、(b)は(a)の要部拡大図、(c)はロック解除位置を示す図、(d)はロック解除位置における第2ストッパを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に車両のドアインサイドハンドル装置として構成された本発明の実施の形態を示す。インサイドハンドル装置は、図外のドアパネルに固定されるハンドルベース1に操作ハンドル14と、ロックレバー(操作部材2)とを枢軸16を使用して回転操作可能に軸支される。
【0017】
操作ハンドル14、およびロックレバー2には、アウターケーブル内にインナーケーブル10を摺動自在に挿通させたケーブル装置(操作力伝達手段3)が連結され、後述するように、操作ハンドル14を初期位置から操作位置まで回転操作すると、ドアロック装置4のロックが解除されてドア体の開放操作が可能になり、ロックレバー2をロック解除位置からロック位置まで回転操作すると、キャンセル部4aが作動し、上記操作ハンドル14からの操作がキャンセルされて操作ハンドル14によるドア体の開放操作が不能となる。
【0018】
操作ハンドル14は、回転中心を挟んで一端部に手掛け部14aを、反対端にワイヤ連結孔14bを備え、枢軸16周りに
図2(a)において実線で示す初期位置と、鎖線で示す操作位置との間で回転操作される。
図3に示すように、操作ハンドル14には、トーションスプリング14cにより初期位置側への付勢力が与えられる。
【0019】
操作ハンドル14に対応するケーブル装置3の装着は、アウターケース9の端部に形成されたケースエンド9aをハンドルベース1に形成されたケーブル係止部1aに係止させるとともに、インナーケーブル10の先端に固定される球状のケーブルエンド10aを操作ハンドル14のワイヤ連結孔14bに嵌合して行われる。
【0020】
一方、ロックレバー2は、合成樹脂材を射出成形して形成され、ハンドルベース1に装着した際の外部露出面に操作用膨隆部2aが、枢軸16を挟んで反対端部にケーブル挿通孔12が設けられる。
【0021】
このロックレバー2に対応するケーブル装置3のインナーケーブル10には、
図5(b)に示すように、先端がL字形状に折曲したケーブルエンド10aが固定されており、連結用折り曲げ部11を上記ケーブル挿通孔12に挿入してロックレバー2に連結される。
【0022】
このインナーケーブル10のケーブル挿通孔12からの脱落を防止するために、ロックレバー2には連結保持部材6が連結される。
図4に示すように、連結保持部材6は、ロックレバー2に比して軟質の合成樹脂材により形成されており、ロックレバー2を軸支する枢軸16を軸挿通孔6aに挿通させて枢軸16周りに空転自在に装着される。
【0023】
図4に示すように、この連結保持部材6には回り止め突部6bと翼部13とが設けられ、連結保持部材6の壁面から突出する回り止め突部6bをロックレバー2の壁面に形成された嵌合凹部2bに嵌合させることによりロックレバー2に対する空転が規制され、ロックレバー2とともに回転する。
【0024】
また、翼部13は、
図5に示すように、装着状態において、インナーケーブル10のケーブルエンド10aをロックレバー2と協働して挟み付け、連結用折り曲げ部11のケーブル挿通孔12からの脱落方向(
図5における紙面手前側方向)への移動を規制し、インナーケーブル10の連結状態を保持する。
【0025】
さらに、連結保持部材6には、ロック位置、アンロック位置に対応して2個のストッパ突条8が形成される。
図6(a)に示すように、ロックレバー2がロック位置にあるとき、連結保持部材6のロック側ストッパ突条8Aは、ハンドルベース1に形成されたロック側ストッパ壁5Aに当接してロックレバー2のロック位置側ストローク終端が決定される。
【0026】
この状態からロックレバー2がロック解除位置側に回転操作されると、
図6(c)に示すように、アンロック側ストッパ突条8Bがハンドルベース1のアンロック側ストッパ壁面5Bに当接して当該方向のストローク終端を決定する。
【0027】
加えて、ロックレバー2には、第2ストッパ7が設けられる。この実施の形態において、ロック側第2ストッパ7Aは、
図5(a)に示すように、ハンドルベース1から突設されるストッパ突部1bに当接し、アンロック側第2ストッパ7Bは、
図6(c)に示すように、ロックレバー2外周壁に形成される。
【0028】
これら第2ストッパ7は、上記連結保持部材6のストッパ突条8が当接してストローク終端位置にロックレバー2が到達した後、さらに、オーバーストローク方向の負荷が加わった場合、すなわち、ロック位置側への操作が終了して、さらに同方向への操作力が負荷された場合、あるいは、ロック解除位置側への操作が終了したさらにロック解除位置側への操作力が付与され、ストッパ突条8が押し込み方向の負荷により撓んで突出状態が解除された際に働くことにより、さらなる連結保持部材6への撓みの発生を防止する。
【0029】
したがってこの実施の形態において、ロックレバー2を手動、あるいは電動により反対位置、すなわちロック位置からロック解除位置、あるいはロック解除位置からロック位置に作動させると、まず、連結保持部材6のストッパ突条8がハンドルベース1のストッパ壁面5に当接する。電動操作のように、反対位置の移動が大きな駆動力により行われた場合であっても、軟質のストッパ突条8がまず衝接することにより、衝突音の発生が防止される。
【0030】
この状態から、ロックレバー2にさらに同方向の操作力が与えられた場合には、第2ストッパ7が当接して連結保持部材6への過度の撓み発生による弾性喪失等が防止される。
【符号の説明】
【0031】
1 ハンドルベース
2 操作部材
3 操作力伝達手段
4 ドアロック装置
5 ストッパ壁面
6 連結保持部材
7 第2ストッパ
8 ストッパ突条
9 アウターケース
10 インナーケーブル
11 連結用折り曲げ部
12 ケーブル挿通孔
13 翼部
14 操作ハンドル
15 ケーブル装置