(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
露光量情報を有するベクトルデータで記述された描画パターンを複数のブロックパターンに分割し、各ブロックパターンを描画対象物上に形成された下地パターンに重ねて描画するパターン描画方法であって、
第1のラスタライズ開始位置より前記ベクトルデータをラスタライズすることによって、前記露光量情報に応じた階調情報を有する複数の画素で表現される第1の描画データを得る第1のラスタライズ工程と、
前記第1のラスタライズ開始位置に対し、前記画素の第1方向の画素サイズよりも小さなシフト量だけ前記第1のラスタライズから前記第1方向にシフトした第2のラスタライズ開始位置より前記ベクトルデータをラスタライズすることによって、前記露光量情報に応じた階調情報を有する複数の画素で表現される第2の描画データを得る第2のラスタライズ工程と、
前記第1方向での前記下地パターンに対する各ブロックパターンの位置ズレを補正するための補正量を算出する補正量算出工程と、
前記複数のブロックパターンの各々について、前記第1の描画データおよび前記第2の描画データのうちブロックパターンの補正量に対応する描画データを前記補正量に基づき補正して前記ブロックパターンを描画するためのブロックデータを生成するデータ補正工程と、
前記データ補正工程で生成された複数のブロックデータに基づいて前記描画パターンを前記描画対象物上に描画する描画工程と
を備えることを特徴とするパターン描画方法。
第1の分割パターンを構成するブロックパターンを前記描画対象物上に描画する間に、前記第1の分割パターンと別の第2の分割パターンを構成するブロックパターンに対して前記データ補正工程を実行する請求項2に記載のパターン描画方法。
前記第1のラスタライズ工程および前記第2のラスタライズ工程では、前記画素の露光量を、露光量情報に基づいて、最大値と、最小値と、前記最大値および前記最小値の中間値との3段階で設定する請求項1ないし6のいずれか一項に記載のパターン描画方法。
露光量情報を有するベクトルデータで記述された描画パターンを複数のブロックパターンに分割し、各ブロックパターンを描画対象物上に形成された下地パターンに重ねて描画するパターン描画装置であって、
前記ベクトルデータから露光制御データを生成するデータ処理部と、
前記データ処理部から出力される前記露光制御データに基づきエネルギービームを前記描画対象物上に照射して前記描画パターンを描画するパターン描画部と
を備え、
前記データ処理部は、
第1のラスタライズ開始位置より前記ベクトルデータをラスタライズすることによって、前記露光量情報に応じた階調情報を有する複数の画素で表現される第1の描画データを得るとともに、前記第1のラスタライズ開始位置に対し、前記画素の第1方向の画素サイズよりも小さなシフト量だけ前記第1のラスタライズから前記第1方向にシフトした第2のラスタライズ開始位置より前記ベクトルデータをラスタライズすることによって、前記露光量情報に応じた階調情報を有する複数の画素で表現される第2の描画データを得るラスタライズ部と、
前記第1方向での前記下地パターンに対する各ブロックパターンの位置ズレを補正するための補正量を算出する補正量算出部と、
前記複数のブロックパターンの各々について、前記第1の描画データおよび前記第2の描画データのうちブロックパターンの補正量に対応する描画データを前記補正量に基づき補正して前記ブロックパターンを描画するためのブロックデータを生成するとともに、前記複数のブロックデータに基づき前記制御データを生成するデータ補正・生成部と
を有することを特徴とするパターン描画装置。
露光量情報を有するベクトルデータで記述された描画パターンを複数のブロックパターンに分割し、各ブロックパターンを描画対象物上に形成された下地パターンに重ねて描画するためのコンピュータブログラムであって、
第1のラスタライズ開始位置より前記ベクトルデータをラスタライズすることによって、前記露光量情報に応じた階調情報を有する複数の画素で表現される第1の描画データを得る第1のラスタライズ機能と、
前記第1のラスタライズ開始位置に対し、前記画素の第1方向の画素サイズよりも小さなシフト量だけ前記第1のラスタライズから前記第1方向にシフトした第2のラスタライズ開始位置より前記ベクトルデータをラスタライズすることによって、前記露光量情報に応じた階調情報を有する複数の画素で表現される第2の描画データを得る第2のラスタライズ機能と、
前記第1方向での前記下地パターンに対する各ブロックパターンの位置ズレを補正するための補正量を算出する補正量算出機能と、
前記複数のブロックパターンの各々について、前記第1の描画データおよび前記第2の描画データのうちブロックパターンの補正量に対応する描画データを前記補正量に基づき補正して前記ブロックパターンを描画するためのブロックデータを生成するデータ補正機能と
前記複数のブロックデータに基づいて前記描画パターンを前記描画対象物上に描画する描画機能と
をコンピュータに実現させる、コンピュータプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明にかかるパターン描画装置の一実施形態を示す正面図である。また、
図2は
図1のパターン描画装置の平面図である。また、
図3は光学ユニットの構成を示す図である。また、
図4は照射位置シフト機構の構成を模式的に示す図である。さらに、
図5は
図1のパターン描画装置の電気的構成を示すブロック図である。パターン描画装置100は、レジスト等の感光材料の層が形成された基板Wの上面に光を照射して、パターンを描画する装置である。なお、基板Wは、半導体基板、プリント基板、カラーフィルタ用基板、液晶表示装置やプラズマ表示装置に具備されるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板のいずれでもよい。図示例では円形の半導体基板の表面に形成された下地パターンに重ねて描画パターンが描画される。
【0017】
パターン描画装置100は、本体フレーム101で構成される骨格の天井面および周囲面にカバーパネル(図示省略)が取り付けられることによって形成される本体内部と、本体フレーム101の外側である本体外部とに、各種の構成要素を配置した構成となっている。
【0018】
パターン描画装置100の本体内部は、処理領域102と受け渡し領域103とに区分されている。これらの領域のうち処理領域102には、主として、ステージ10、ステージ移動機構20、ステージ位置計測部30、光学ユニット40、アライメントユニット60が配置される。一方、受け渡し領域103には、処理領域102に対する基板Wの搬出入を行う搬送ロボットなどの搬送装置70が配置される。
【0019】
また、パターン描画装置100の本体外部には、アライメントユニット60に照明光を供給する照明ユニット61が配置される。また、同本体外部には、パターン描画装置100が備える装置各部(描画エンジン)と電気的に接続されて、これら各部の動作を制御する制御部90が配置される。
【0020】
なお、パターン描画装置100の本体外部で、受け渡し領域103に隣接する位置には、カセットCを載置するためのカセット載置部104が配置される。また、カセット載置部104に対応し、本体内部の受け渡し領域103に配置された搬送装置70は、カセット載置部104に載置されたカセットCに収容された未処理の基板Wを取り出して処理領域102に搬入(ローディング)するとともに、処理領域102から処理済みに基板Wを搬出(アンローディング)してカセットCに収容する。カセット載置部104に対するカセットCの受け渡しは、図示しない外部搬送装置によって行われる。この未処理基板Wのローディング処理および処理済基板Wのアンローディング処理は制御部90からの指示に応じて搬送装置70が動作することで行われる。
【0021】
ステージ10は、平板状の外形を有し、その上面に基板Wを水平姿勢に載置して保持する保持部である。ステージ10の上面には、複数の吸引孔(図示省略)が形成されており、この吸引孔に負圧(吸引圧)を付与することによって、ステージ10上に載置された基板Wをステージ10の上面に固定保持することができるようになっている。そして、ステージ10はステージ移動機構20により移動させられる。
【0022】
ステージ移動機構20は、ステージ10を主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)、及び回転方向(Z軸周りの回転方向(θ軸方向))に移動させる機構である。ステージ移動機構20は、ステージ10を回転させる回転機構21と、ステージ10を回転可能に支持する支持プレート22を支持するベースプレート24と、ベースプレート24を主走査方向に移動させる主走査機構25とを備える。回転機構21、副走査機構23、及び主走査機構25は、次のように構成されるとともに、制御部90の露光制御部91に電気的に接続されており、露光制御部91からの指示に応じてステージ10を移動させる。
【0023】
回転機構21は、支持プレート22上で、基板Wの上面に垂直な回転軸を中心としてステージ10を回転させる。
【0024】
副走査機構23は、支持プレート22の下面に取り付けられた図示しない移動子とベースプレート24の上面に敷設された図示しない固定子とにより構成されたリニアモータ23aを有している。また、支持プレート22とベースプレート24との間には、副走査方向Xに延びる一対のガイド部23bが設けられている。このため、リニアモータ23aを動作させると、ベースプレート24上のガイド部23bに沿って支持プレート22が副走査方向Xに移動する。
【0025】
主走査機構25は、ベースプレート24の下面に取り付けられた移動子とパターン描画装置100の基台106上に敷設された固定子とにより構成されたリニアモータ25aを有している。また、ベースプレート24と基台106との間には、主走査方向に延びる一対のガイド部25bが設けられている。このため、リニアモータ25aを動作させると、基台106上のガイド部25bに沿ってベースプレート24が主走査方向Yに移動する。
【0026】
ステージ位置計測部30は、ステージ10の位置を計測する機構である。ステージ位置計測部30は、制御部90の露光制御部91と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じてステージ10の位置を計測する。ステージ位置計測部30は、例えばステージ10に向けてレーザ光を照射し、その反射光と出射光との干渉を利用して、ステージ10の位置を計測する機構により構成されているが、その構成動作はこれに限定されるものではない。この実施形態では、ステージ位置計測部30は、レーザ光を出射する出射部31と、ビームスプリッタ32と、ビームベンダ33と、第1干渉計34と、第2干渉計35とを備える。これら出射部31、各干渉計34、35は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じてステージ10の位置を計測する。
【0027】
出射部31から出射されたレーザ光は、まずビームスプリッタ32に入射し、ビームベンダ33に向かう第1分岐光と、第2干渉計35に向かう第2分岐光とに分岐される。第1分岐光は、ビームベンダ33により反射され、第1干渉計34に入射するとともに、第1干渉計34からステージ10の第1の部位に照射される。そして、第1の部位で反射した第1分岐光が、再び第1干渉計34へと入射する。第1干渉計34は、ステージ10の第1の部位に向かう第1分岐光と第1の部位で反射された第1分岐光との干渉に基づいて第1の部位の位置に対応した位置パラメータを計測する。
【0028】
一方、第2分岐光は、第2干渉計35に入射するとともに、第2干渉計35からステージ10の第2の部位(ただし、第2の部位は、第1の部位とは異なる位置である。)に照射される。そして、第2の部位で反射した第2分岐光が、再び第2干渉計35へ入射する。第2干渉計35は、ステージ10の第2の部位に向かう第2分岐光とステージ10の第2の部位で反射された第2分岐光との干渉に基づいて第2の部位の位置に対応した位置パラメータを計測する。
【0029】
制御部90の露光制御部91は、第1干渉計34及び第2干渉計35の各々から、ステージ10の第1の部位の位置に対応した位置パラメータ及びステージ10の第2の部位の位置に対応した位置パラメータを取得する。そして、取得した各位置パラメータに基づいて、ステージ10の位置を算出する。
【0030】
アライメントユニット60は、基板Wの上面に形成された図示しないアライメントマークを撮像する。アライメントユニット60は、照明ユニット61のほか、鏡筒、対物レンズ、およびCCDイメージセンサ62(
図5)を備える。アライメントユニット60が備えるCCDイメージセンサ62は、例えばエリアイメージセンサ(二次元イメージセンサ)により構成される。
【0031】
照明ユニット61は、鏡筒とファイバ601を介して接続され、アライメントユニット60に対して照明用の光を供給する。照明ユニット61から延びるファイバ601によって導かれる光は、鏡筒を介して基板Wの上面に導かれ、その反射光は、対物レンズを介してCCDイメージセンサ62(
図5)で受光される。これによって、基板Wの上面が撮像されて撮像データが取得されることになる。CCDイメージセンサ62は、制御部90のデータ処理部92と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて撮像データを取得し、取得した撮像データを制御部90に送信する。なお、アライメントユニット60はオートフォーカス可能なオートフォーカスユニットをさらに備えていてもよい。
【0032】
CCDイメージセンサ62から与えられる撮像データに基づき制御部90は、後述するようにアライメント処理を行い、またデータ処理部92で描画パターンを描画するためのストリップデータを作成して露光制御部91に与え、光学ユニット40によるパターン描画を行う。なお、データ処理部92の構成および動作については、後で詳述する。
【0033】
本実施形態では、光学ユニット40は、光照射部41と、光学ヘッド42を有している。光学ヘッド42は光照射部41から与えられるレーザ光を上記ストリップデータに基づき変調する。光照射部41は、レーザ駆動部411、レーザ発振器412および照明光学系413を有している。この光照射部41では、レーザ駆動部411の作動によりレーザ発振器412からレーザ光が出射され、照明光学系413を介して光学ヘッド42に導入される。この光学ヘッド42は、光照射部41からの光を光学ヘッド42内に導入する入射部44と、導入された光を変調するための空間光変調素子45と、入射部44からの光を空間光変調素子45へと導く光学系46と、空間光変調素子45で変調された光の光軸をシフトさせ、基板Wの上面において描画位置を副走査方向に相対的にシフトさせるための照射位置シフト機構47と、照射位置シフト機構47を介した光を基板Wの上面に導く投影光学系48とを備える。
【0034】
空間光変調素子45は、回折格子型の変調素子であり、半導体装置製造技術を利用して製造され、格子の深さを変更することができる回折格子となっている。本実施形態では、回折格子型の光変調素子として、GLVを使用しており、露光制御部91から与えられる露光制御データに応じて後述するように画素単位で露光量を多段階(本実施形態では、「フル露光」、「ハーフ露光」および「露光なし」の3段階)に変更可能となっている。なお、GLVによる光の変調原理および階調制御原理については、既知であるため詳細については説明を省略する。
【0035】
照射位置シフト機構47は、
図4に示すように、2個のウェッジプリズム471と、ウェッジプリズム移動機構472とを備えており、空間光変調素子45によって描画パターンに応じて空間変調された光を副走査方向Xに沿ってシフトさせる。本実施形態では、これらのウェッジプリズム471は、光が入射する光学面と出射する光学面が非平行となるプリズムであり、互いに略同一の構造を有しており、例えば、頂角、屈折率がいずれも同一となる構造を有している。そして、これらのうち一方のウェッジプリズム471が、ウェッジプリズム移動機構472によって、他方のウェッジプリズム471に対して入射光の光軸Lの方向に沿って直線的に移動させる。
【0036】
また、2個のウェッジプリズム471は、固定ステージ473、可動ステージ474にそれぞれ固定され、対向する光学面が互いに平行となり、かつ、互いに逆向きとなるように、入射光の光軸Lの方向に沿って並んで配置される。各ウェッジプリズム471は、例えば固定バンド475を用いて各ステージ473、474に固定される。
【0037】
一方のウェッジプリズム471が配置される固定ステージ473は、ベース部476上に固定されている。他方のウェッジプリズム471が配置される可動ステージ474は、ベース部476上に配置された一対のガイドレール4721に沿って移動可能とされている。ガイドレール4721は、ベース部476上に、Z軸方向に沿って延在して形成されている。
【0038】
ベース部476には、回転モータ4722によって回転させられるボールねじ4723が配置されている。ボールねじ4723は、ガイドレール4721の延在方向に沿って延在しており、可動ステージ474のブラケット4741の雌ねじ部に螺合されている。この構成において、ボールねじ4723が回転モータ4722によって回動されることで、可動ステージ474がガイドレール4721に沿ってZ方向に移動する。
【0039】
つまり、可動ステージ474、ガイドレール4721、回転モータ4722、およびボールねじ4723により、他方のウェッジプリズム471を入射光の光軸Lの方向に沿って直線的に移動させるウェッジプリズム移動機構472が構成される。ウェッジプリズム移動機構472は、他方のウェッジプリズム471を、一方のウェッジプリズム471に対して光軸Lの方向に沿って直線的に移動させることによって、2個のウェッジプリズム471の光軸Lの方向に沿う離間距離を変化させる。
【0040】
上記構成を備える照射位置シフト機構47においては、2個のウェッジプリズム471の光軸Lに沿う離間距離を変化させることによって、ウェッジプリズム471に入射する光の経路をX軸方向に沿ってシフトさせることができる。なお、シフト量Δxは、2つのウェッジプリズム471の離間距離に応じて定まる。
【0041】
照射位置シフト機構47によってシフト量Δxだけシフトされた光は投影光学系48に入射される。この投影光学系48は、対物レンズ482と、対物レンズ482を光軸に沿って移動させるアクチュエータとから構成されるフォーカス機構481を備えている。フォーカス機構481により対物レンズ482がZ軸方向に移動することによって、空間光変調素子45によって変調された光の焦点位置が調整させる。焦点位置が調整された光は、基板Wの上面に照射され、基板W上の感光材料の層を露光することにより、ストリップデータに対応した分割描画パターンが未処理基板Wに形成されている下地パターンに対して重ねて描画される。
【0042】
また、上記ストリップデータを生成するために、制御部90はデータ処理部92を有している。このデータ処理部92はCPU(Central Processing Unit)や記憶部921等を有するコンピュータで構成されており、露光制御部91とともに電装ラック(図示省略)内に配置されている。また、データ処理部92内のCPUが所定のプログラムに従って演算処理することにより、ランレングスデータ生成部921、補正量算出部922およびデータ補正・生成部923が実現される。例えば下地パターンに重ね合わせて描画する描画パターンは外部のCAD等により生成されたベクトル形式の設計データD1で記述されており、後述するように描画パターンの各部の露光量情報を有している。その設計データD1がデータ処理部92に入力されると、記憶部925に書き込まれて保存される。そして、当該設計データD1に対して以下の処理が施されて複数のストリップデータが本発明の「露光制御データ」として生成され、露光制御部91に供給されて描画パターンが光学ヘッド42により基板W上に描画される。
【0043】
ランレングスデータ生成部921は、ベクトル形式の設計データD1をラスタライズして2種類のランレングスデータD2A、D2Bを生成して記憶部925に保存する。これらのうちランレングスデータD2Aは、基準のラスタライズ開始位置Aからラスタライズ処理を行うことで得られるデータであるのに対し、ランレングスデータD2Bはラスタライズ開始位置AからX方向にシフトしたラスタライズ開始位置Bからラスタライズ処理を行うことで得られるデータである点で相違するが、ともに1または複数のブロックランレングスデータを含むストリップ単位に分割して記憶部925に保存される。ここでは、まずランレングスデータD2Aの生成について
図6および
図7を参照しつつ説明する。
【0044】
図6はランレングスデータおよびインデックスファイルの概略構成を示す模式図である。また、
図7はラスタライズ処理を模式的に示す図である。本実施形態では、
図7に示すラスタライズ開始位置Aからラスタライズ処理してランレングスデータD2Aを生成しているが、後で説明するデータ処理を高精度に行うため、複数のブロックランレングスデータD22Aに区分けしている。より詳しくは、
図6に示すように、描画パターンをX方向にNmax本の分割パターンに分割し、各分割パターンに対応する分割描画データをストリップデータD21Aとしている。また、ランレングスデータD2AをY方向にストリップ単位よりも細かいブロック単位、つまりブロックランレングスデータD22Aに区分けしている。さらに、ランレングスデータ生成部921は、各ブロックランレングスデータD22Aを構成する複数のラインデータD22A1、…、D22AMの記憶部925での先頭アドレスを示す情報をまとめたインディクスファイルIDAを作成し、記憶部925に保存する。このようにインディクスファイルIDAを作成することでブロックランレングスデータD22Aへのアクセスが容易となり、優れたデータ処理性を確保している。
【0045】
また、ラスタライズ処理により生成されたランレングスデータD2Aは、設計データD1に含まれる露光量情報に応じた階調情報を有する複数の画素で表現されるものである。例えば
図7(a)〜(c)に示すように、設計データD1に含まれる描画パターンPT1の一部(ここでは、英文字のA)はラスタライズ処理により複数の画素PXで表現され、各画素とパターンPT1との関係で「フル露光」、「ハーフ露光」、「露光なし」の3段階のデータが各画素PXの階調情報としてセットされる。つまり、この「フル露光」は、
図7(b)、(c)に示すように、画素PX全体にパターンPT1がかかっている場合に設定されるものであり、光照射部41からの光が光学ヘッド42を介して露光されて画素を形成するものである。このように、「フル露光」は画素PXの露光量を最大値とするための階調情報となる。また、「露光なし」は、画素PXにパターンPT1が全くかかっていない、あるいはパターンPT1のエッジが画素PXにかかっているものの、パターンPT1が画素PXに部分的にかかっている領域の面積が画素PXの半分よりも少ない場合に設定されるものであり、「露光なし」をセットすることで、光照射部41からの光は基板Wに照射されず、「露光なし」がセットされた画素PXの露光量は最小値となる。さらに、「ハーフ露光」は、
図7(b)、(c)に示すように、パターンPT1のエッジが画素PXにかかっており、しかも、パターンPT1が画素PXに部分的にかかっている領域の面積が画素PXの半分以上となっている場合に設定されるものである。このように、「ハーフ露光」は、光照射部41からの光の半分程度を基板Wに照射して画素PXの露光量を最大値の半分とするための階調情報となる。
【0046】
また、ランレングスデータ生成部921は、
図7(a)、(d)、(e)に示すように、ラスタライズ開始位置Aと異なるラスタライズ開始位置Bからラスタライズ処
理してランレングスデータD2Bを生成している。すなわち、ラスタライズ開始位置Bは、ラスタライズ開始位置Aに対し、画素PXの所定方向Xの画素サイズ(本実施形態では1[μm])よりも小さいシフト量(本実施形態では、0.5[μm])だけX方向にシフトした位置である。このため、ラスタライズ処理により生成されたランレングスデータD2BはランレングスデータD2Aと異なる階調情報を有している。つまり、ラスタライズを開始する位置がX方向に半画素分シフトしたことに対応し、各画素PXの階調情報が一部変化している。なお、ラスタライズを開始する位置が異なっている点を除き、分割パターンの分割数、ブロックランレングスデータの区分け数、インディクスファイルIDBの作成などについてはランレングスデータD2Aと同一である。このように、本実施形態では、ランレングスデータ生成部921が本発明の「ラスタライズ部」に相当する。
【0047】
ランレングスデータD2A、D2BおよびインディクスファイルIDA、IDBの準備後、または、ランレングスデータD2A、D2BおよびインディクスファイルIDA、IDBの準備と並行して、上記のようにしてカセットCに収納されている未処理の基板Wが搬送装置70により搬出され、搬送装置70によってステージ10に載置される。
【0048】
その後、データ処理部92から与えられるアライメントマーク(基準マーク)の設計位置情報に基づきステージ移動機構20によりステージ10がアライメントユニット60のCCDイメージセンサ62の直下位置に移動して基板W上の各アライメントマークを順番にCCDイメージセンサ62の撮像可能位置に位置決めし、CCDイメージセンサ62によるマーク撮像が実行される。CCDイメージセンサ62から出力される画像信号は電装ラック内の画像処理回路(
図5において図示省略)により処理され、アライメントマークのステージ10上の位置が正確に求められる。そして、これらの計測位置情報に基づき回転機構21が作動してステージ10を鉛直軸回りに微小回転させて基板Wへのパターン描画に適した向きにアライメント(位置合わせ)される。ここで、ステージ10を光学ヘッド42の直下位置に移動させた後で当該アライメントを行ってもよい。
【0049】
図5に示す補正量算出部922は、画像処理回路にて求められた基板W上のアライメントマークの計測位置情報、および基板Wの向きの修正量を取得し、アライメント後のアライメントマークの位置、並びに、設計データで記述された描画パターンの下地パターンに対する位置ズレを求め、その位置ズレを解消するための補正量を算出する。なお、補正量の算出については後で詳述する。
【0050】
一方、データ補正・生成部923は、ランレングスデータをブロック単位、つまり1ストリップに対応する2種類のブロックランレングスデータ(ブロックデータ)D22A、D22Bを読み出し、ブロックランレングスデータごとに、ブロックランレングスデータD22A、D22Bのうち補正量に対するブロックランレングスデータを選択するとともに、補正量に基づいて選択したブロックランレングスデータの補正を行う。また、データ補正・生成部923は、補正後の各ブロックランレングスデータからデータを切り出すとともに、それらを連結してY方向に延びるラインデータを生成し、さらにこうして生成されたラインデータを連結して分割領域に対応する描画データ、すなわち、1つのストリップ(つまり分割パターン)に相当するストリップデータ(露光制御データ)を生成し、露光制御部91に出力する。
【0051】
このように、本実施形態では、空間光変調素子45としてGLVを使用することによって画素単位で露光量を「フル露光」、「ハーフ露光」、「露光なし」の切替可能に構成する、いわゆる「ハーフ露光技術」を採用しているが、これに対して新たな技術を組み合わせている。その新たな技術とは、上記したように2種類のランレングスデータD2A、D2Bを形成し、使用するランレングスデータを切り替えることによってデータを画素PXのX方向の画素サイズよりも小さなシフト量だけシフトする、いわゆる「ハーフピッチデータシフト技術」であり、「ハーフ露光技術」と「ハーフピッチデータシフト技術」との組み合わせによって描画パターンをX方向に画素サイズよりも小さな単位でシフトすることができる。例えば
図8に示すように、「ハーフ露光技術」のみを用いたパターン描画装置では、描画パターン(同図では、英文字「A」)PT1をX方向に1画素単位でしかシフトさせることができない。これに対し、
図9に示すように、「ハーフ露光技術」と「ハーフピッチデータシフト技術」とを組み合わせた場合、描画パターンをX方向に1画素単位でシフトさせることが可能であることはもちろんのこと、それに付加して、ランレングスデータの切替によって描画パターンをX方向にさらに0.5画素でシフトさせることができる。したがって、上記した2つのランレングスデータD2A、D2Bのうちの一方、例えばランレングスデータD2Aを元のランレングスデータとして、X方向の補正量が1画素、2画素、…などの画素の整数倍である場合には、ランレングスデータD2Aを選択して補正量に基づきランレングスデータD2Aを補正することによって、描画パターンPT1をX方向にシフトさせて下地パターンと高精度に重ねることができる。一方、X方向の補正量が0.5画素、1.5画素、…などである場合には、ランレングスデータD2Bを選択して補正量に基づきランレングスデータD2Bを補正することによって、描画パターンPT1をX方向にシフトさせて下地パターンと高精度に重ねることができる。なお、補正量が0.5画素、1画素、1.5画素、…、p画素(ただし、pは整数)、(p+0.5)画素以外となる場合がある。そのため、例えば(p−0.25)≦補正量<(p+0.25)のとき、ランレングスデータD2Aを選択し、(p+0.25)≦補正量<(p+0.75)のとき、ランレングスデータD2Bを選択するように構成してもよい。なお、この点に関しては、後で説明するランレングスデータD2A、D2Bの選択切替処理(
図13のステップS263)においても同様である。
【0052】
このように「ハーフ露光技術」と「ハーフピッチデータシフト技術」との組み合わせによって描画パターンをX方向に0.5画素、1画素、1.5画素、…、p画素、(p+0.5)画素だけシフトさせることができる。そこで、本実施形態では、この組み合わせ技術を用い、以下のようにしてパターン描画を行っている。以下、
図10ないし
図15を参照しつつ本実施形態にかかるパターン描画方法について詳述する。
【0053】
図10は、パターン描画装置によるパターン描画動作を示すフローチャートである。このパターン描画装置100では、未処理の基板Wを1ロット分収納するカセットCがパターン描画装置100に搬送されてくるとともに、その基板Wに描画する描画パターンを記述した設計データD1が制御部90に与えられると、制御部90は以下の演算処理などを実行しながら装置各部(描画エンジン)を制御して各基板Wへの描画パターンの描画を実行する。
【0054】
搬送装置70によってカセットCから未処理基板Wを1枚本体部に搬入する(ステップS11)。そして、分割パターンのカウント値Nをゼロにクリアした(ステップS12)後、制御部90からアライメントマーク(基準マーク)の設計位置情報が与えられると、その設計位置情報に基づきCCDイメージセンサ62により基板W上の各アライメントマークを順番に撮像し、アライメントマークのステージ10上の位置を求める。そして、その計測位置情報に基づき回転機構21により基板Wをパターン描画に適した向きにアライメント(位置合わせ)する。そして、基板W上のアライメントマークの計測位置情報、および基板Wの向きの修正量を制御部90に与える(ステップS13)。そして、カウント値Nを「1」だけインクリメントし(ステップS14)、第N番目のストリップ(以下「第Nストリップ」という」)を描画するのに必要な第Nストリップデータが制御部90から送信されてくるのを待つ。
【0055】
一方、制御部90は設計データD1を受け取ると、記憶部925に保存した後、設計データD1をラスタライズして2種類のランレングスデータD2A、D2Bを生成するとともに、インディクスファイルIDA、IDBを作成する(ステップS21)。すなわち、制御部90のランレングスデータ生成部921がラスタライズ開始位置Aからラスタライズ処
理してランレングスデータD2Aを生成するとともに、インディクスファイルIDAを作成する(第1のラスタライズ工程)。また、ランレングスデータ生成部921がラスタライズ開始位置AからX方向に0.5画素だけシフトしたラスタライズ開始位置Bからラスタライズ処
理してランレングスデータD2Bを生成するとともに、インディクスファイルIDBを作成する(第2のラスタライズ工程)。そして、これらランレングスデータD2A、D2BおよびインディクスファイルIDA、IDBを記憶部925に書き込む(ステップS22)。なお、ラスタライズの実行は基板搬入(ステップS11)と並行して行ってもよいし、あるいは基板搬入前であってもよい。
【0056】
次に、制御部90は分割パターンのカウント値Nをゼロにクリアした(ステップS23)後、アライメントマーク(基準マーク)の設計位置情報を描画エンジン側に与える。そして、ステージ位置計測部30により計測された計測位置情報および基板Wの向きの修正量が与えられると、アライメント後のアライメントマークの位置、並びに、設計データで記述された描画パターンの下地パターンに対する位置ズレ量を求め、さらに位置ズレ量に基づき各ブロックランレングスデータD22Aの補正量を算出する(ステップS24)。この補正量の算出処理について、
図11および
図12を参照しつつ説明する。
【0057】
図11は補正量の算出処理を示すフローチャートである。
図12は参照アライメントマーク座標と基板上マーク座標の関係を模式的に示す図である。制御部90の補正量算出部922が、参照アライメントマーク座標RM1(rx1、ry1)、RM2(rx2、ry2)、RM3(rx3、ry3)、RM4(rx4、ry4)を設計データD1から選定し、これらの設計位置情報を描画エンジン側に与える(ステップS241)。そして、描画エンジンでのアライメント計測(ステップS13)により計測された計測位置情報を受け取り、記憶部925に一時的に保存する(ステップS242)。すなわち、各参照アライメントマークRM1、RM2、RM3、RM4に対応して基板Wに形成されているマーク(以下「基板上マーク」という)の基板上マーク座標MK1(mx1、my1)、MK2(mx2、my2)、MK3(mx3、my3)、MK4(mx4、my4)が計測位置情報として制御部90に与えられ、記憶部925に保存される。なお、ここでは位置ズレ量の検出原理を容易に理解できるよう、基板Wの向きの修正量がゼロであると仮定して説明する。
【0058】
それに続いて、補正量算出部922は、以下の演算、つまり
dx1=mx1−rx1、dy1=my1−ry1、
dx2=mx2−rx2、dy2=my2−ry2、
dx3=mx3−rx3、dy3=my3−ry3、
dx4=mx4−rx4、dy4=my4−ry4
を実行して両マークの差分(dx1、dy1)、(dx2、dy2)、(dx3、dy3)、(dx4、dy4)を算出する(ステップS243)。こうして得られた差分(dx1、dy1)、(dx2、dy2)、(dx3、dy3)、(dx4、dy4)が下地パターンとの位置ズレ量に相当する。
【0059】
次のステップS244では、制御部90の補正量算出部922が各ブロックランレングスデータD22Aについて、差分(dx1、dy1)、(dx2、dy2)、(dx3、dy3)、(dx4、dy4)から当該ブロックランレングスデータD22Aを下地パターンとマッチングさせるための補正量を求める。なお、この実施形態では、
図12に示すように、投影変換による補正を用いている。
【0060】
図12中の符号Trans(x,y)は参照アライメントマーク座標RM1(rx1、ry1)、RM2(rx2、ry2)、RM3(rx3、ry3)、RM4(rx4、ry4)を基板上マーク座標MK1(mx1、my1)、MK2(mx2、my2)、MK3(mx3、my3)、MK4(mx4、my4)に投影する変換関数を表している。この実施形態では、変換関数Trans(x,y)は、参照アライメントマーク座標RM1(rx1、ry1)、RM2(rx2、ry2)、RM3(rx3、ry3)を基板上マーク座標MK1(mx1、my1)、MK2(mx2、my2)、MK3(mx3、my3)に投影するアフィン変換で表される。もちろん、参照アライメントマーク座標RM1(rx1、ry1)、RM2(rx2、ry2)、RM3(rx3、ry3)、RM4(rx4、ry4)を基板上マーク座標MK1(mx1、my1)、MK2(mx2、my2)、MK3(mx3、my3)、MK4(mx4、my4)に投影する斜影変換であってもよい。
【0061】
制御部90の補正量算出部922は上記したように参照アライメントマーク座標(設定値)と基板上マーク座標(計測値)に基づき変換関数Trans(x,y)を求める。また、設計データD1で予め規定されている各ブロックランレングスデータD22Aの設計描画位置(bx1,by1)、(bx2,by2)、…を変換関数Trans(x,y)により基板W上の位置(wbx1,wby1)、(wbx2,wby2)、…にそれぞれ変換し、設計描画位置との差分を次式、
bdx1=wbx1−bx1、bdy1=wby1−by1、
bdx2=wbx2−bx2、bdy2=wby2−by2、
…
にしたがって求める。さらに、補正量算出部922はこれらの差分bdx1、bdy1、bdx2、bdy2、…を画素PXのX方向の画素サイズで割り、その商を補正量として求める。
【0062】
こうして各ブロックランレングスデータD22Aの補正量の算出が完了すると、カウント値Nを「1」だけインクリメントする(ステップS25)。そして、データ補正・生成部923による上記補正量に基づくブロックランレングスデータのデータ補正処理および第Nストリップデータのデータ生成処理を行って下地パターンとの位置ズレを考慮して修正した第Nストリップデータ(露光制御データ)を取得する(ステップS26:データ補正・生成工程)。
【0063】
図13はデータ補正・生成処理を示すフローチャートである。また、
図14はデータ補正方法を示す模式図であ
り、ランレングスデータを区分けして形成される複数のブロックランレングスデータのうちの一に着目して図示している。さらに、
図15はラインデータの生成方法を示す模式図である。このデータ補正・生成処理では、最初に元データとなるブロックランレングスデータD22Aを構成するラインデータのカウント値Mをゼロにリセットする(ステップS261)。そして、第Nストリップに関連するブロックランレングスデータD22Aを記憶部925から読み出す(ステップS262)。このように読み出されたブロックランレングスデータD22Aは
図14において実線で示すように設計データD1をラスタライズした
ランレングスデータをブロック単位に区分けしたものであり、下地パターンとの位置ズレは考慮していない(なお、
図15では当該データD22Aを点線で示している)。そこで、第Nストリップに関連するブロックランレングスデータに対してデータ補正処理(ステップS263〜S265)を実行する。このデータ補正処理は本発明の「データ補正工程」に相当するものであり、各ブロックランレングスデータD22Aの補正量に応じてデータ補正内容を切り替える処理である。より詳しくは、ステップS24で求められたX方向の補正量が画素PXのX方向の画素サイズ(本実施形態では1[μm])の整数倍である場合には、
図14(a)の太破線で示されるように、元のブロックランレングスデータD22Aから当該補正量(同図(a)の場合、X方向に−2画素、Y方向に1画素)だけシフトした位置のデータを切り出し、これを補正されたブロックランレングスデータD22とする(ステップS264)。一方、ステップS24で求められたX方向の補正量が画素PXのX方向の画素サイズの非整数倍である場合には、
図14(b)の太破線で示されるように、シフトしたブロックランレングスデータD22Bから当該補正量(同図(b)の場合、X方向に−
2画素、Y方向に1画素)だけシフトした位置のデータを切り出し、これを補正されたブロックランレングスデータD22とする(ステップS265)。
【0064】
次に、X方向の補正量に基づき求められたブロックランレングスデータD22からラインデータを順番に切り出して第Nストリップデータを生成する(ステップS266〜S268)。より詳しくは、ステップS266でカウント値Mを「1」だけインクリメントした後、
図15に示すように各ブロックランレングスデータD22の第M番目のラインデータD22Mを切り出すとともに、それらのラインデータD22Mを連結して第NストリップデータD21の第MラインデータD21Mを生成する(ステップS267)。これらの処理(ステップS266、S267)を最終ライン、つまり第Mmax番目のラインまで繰り返して第NストリップデータD21の再構築を完成させる。こうして得られた第NストリップデータD21を記憶部925に一時的に保存する(ステップS269)。
【0065】
図10に戻って説明を続ける。第NストリップデータD21の再構築が完了すると、制御部90は第NストリップデータD21を露光制御データとして露光制御部91に出力する(ステップS27)。なお、本実施形態では、制御部90は、第NストリップデータD21を出力した後、次のステップS28でカウント値Nが最終値Nmaxでない、つまりデータ補正・生成を行っていないストリップデータD21Aが残っていると判定すると、ステップS25に戻り、次に説明するように描画エンジンで第Nストリップの描画を行っている間に、次の第(N+1)ストリップデータD21の再構築を行う。
【0066】
一方、再構築された第NストリップデータD21を受け取った描画エンジンでは、その第NストリップデータD21に基づき露光処理を実行して第Nストリップを基板Wに描画する(ステップS15)。このように制御部90側で第Nストリップのデータ補正・生成処理を行って第NストリップデータD21の再構築を行うとともに、描画エンジン側では再構築後の第NストリップデータD21に基づき描画処理を行っている。このように制御部90側でのデータ補正・生成処理と、描画エンジン側での描画処理との組み合わせによって、設計データD1で記述されている描画パターンと下地パターンとの間に位置ズレが生じていたとしても、第Nストリップを下地パターンに合致させた状態で描画することが可能となっている。このような処理の組み合わせ(ステップS14、S15、S25〜S27)は、ステップS16、S28でカウント値Nが最終値Nmaxであると判定されるまで繰り返され、この結果、所望の描画パターンが下地パターンと一致されながら基板Wに描画される。
【0067】
基板Wへの描画が完了すると、ステージ10は描画済み基板Wを載置したまま基板受渡位置(
図1および
図2の右側領域)に移動した後、搬送装置70により基板WがカセットCへと戻され、ステップS18でカセットCに収納されている1ロット分の全基板Wについて描画処理が実行されたことが確認されるまで、ステップS11に戻り、次の基板Wが取り出されて上記したと同様の一連の処理が繰り返される。また、制御部90側では、未処理基板WがカセットCに残っている間、描画エンジン側と同様に処理を繰り返す。ただし、同一ロット内の基板Wについては、同一の下地パターンが形成されており、しかも、それらに同一の描画パターンを描画するため、2枚目以降の基板Wに対して処理を繰り返す場合には、ランレングスデータの生成処理(ステップS21)およびランレングスデータの記憶部925への書込処理(ステップS22)は不要である。そこで、本実施形態では、同一ロット内の基板Wについて処理を繰り返す場合、これらの処理(ステップS21、S22)をスキップし、ステップS23に戻って補正量の算出(ステップS24)、データ補正・生成処理(ステップS26)および第Nストリップデータの送信(ステップS27)を繰り返して行う。これにより1ロット分の基板Wに対する描画に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0068】
さらに、カセットCに収納されている全ての基板Wに対するパターン描画が終了すると、カセットCがパターン描画装置100から搬出される。
【0069】
以上のように、本実施形態によれば、空間光変調素子45としてGLVを使用することで「ハーフ露光技術」を実行可能となっているのみならず、上記した「ハーフピッチデータシフト技術」を実行可能となっており、これらを組み合わせることで画素サイズよりも細かいシフト量で描画位置をX方向に補正することができ、その結果、下地パターンに対して描画パターンを高精度に重ねて描画することが可能となっている。
【0070】
また、ベクトル形式の設計データD1を描画処理前にラスタライズ処理(RIP処理)してランレングスデータD2A、D2Bを生成しておき、描画処理ではストリップ、つまり分割パターン単位でランレングスデータD2A、D2Bを選択的に用いてブロックランレングスデータを直接補正してストリップデータD21を再構築しており、下地パターンに対する位置ズレに対応したストリップデータ(分割描画データ)D21をリアルタイムに生成している。そして、そのストリップデータD21に基づき分割パターンを描画している。このため、描画処理中にRIP処理を行っていた特許文献1に記載の装置に比べてパターン描画を短時間で開始することができる。また、各分割パターンを描画するための時間も、描画パターンの内容にかかわらず、ほぼ同一であり、パターン描画を安定して実行することができる。
【0071】
また、第Nストリップの描画と、第(N+1)ストリップデータの生成とを並行して行っているため、全ストリップを描画するのに要する時間を短縮することができる。
【0072】
また、上記実施形態では、
図11および
図12に示すように参照アライメントマーク座標(設定値)と基板上マーク座標(計測値)に基づき変換関数Trans(x,y)を求め、その変換関数Trans(x,y)を用いて各ブロックランレングスデータD2A、D2Bbの補正量を算出している(ステップS24)。したがって、基板Wが線形に歪んだ場合はもちろんのこと非線形に歪んだ場合であって、上記補正量を正確に求めることができ、描画パターンを下地パターンに高精度に一致させることが可能となっている。
【0073】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、1または複数のブロックランレングスデータを含むストリップ単位に分割してデータ補正・生成処理を実行しているが、ブロックランレングスデータ単位で行ってもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、「フル露光」、「ハーフ露光」および「露光なし」の3段階で露光量を変更可能となっているが、さらに露光量の階調数はこれに限定されるものではなく、任意である。
【0075】
また、上記実施形態では、シフト量を画素サイズの半分に設定しているが、シフト量はこれに限定されるものではなく、画素サイズよりも小さい値に設定することで上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0076】
また、上記実施形態では、投影変換による補正を用いているが、投影変換以外の方法を用いてよい。例えば上記実施形態では参照アライメントマーク座標RM1(rx1、ry1)、RM2(rx2、ry2)、RM3(rx3、ry3)を基板上マーク座標MK1(mx1、my1)、MK2(mx2、my2)、MK3(mx3、my3)に投影するアフィン変換を用いているが、この場合、2つの三角形の境界付近では位置ズレが大きくなる傾向にあり、異なる可能性が生じる。
【0077】
また、最近点変換による補正を採用してもよい。つまり、各ブロックランレングスデータD22Aにおいて、ブロックランレングスデータD22Aの配置位置から参照アライメントマーク座標RM1(rx1、ry1)、…、RM4(rx4、ry4)までの距離をそれぞれ求め、最も近い点に対応する位置ズレ量に基づき歪み補正量を求めてもよい。例えば、ブロックランレングスデータD22Aの初期描画位置(bx1、by1)が参照アライメントマーク座標RM1(rx1、ry1)に最も近い場合、
bdx1=rx1−mx1
bdy1=ry1−my1
となる。また、初期描画位置(bx1、by1)から各参照アライメントマーク座標RM1〜RM4までの距離に応じて重み付けを行ってもよい。つまり、初期描画位置(bx1、by1)から各参照アライメントマークRM1〜RM4までの距離を、それぞれW1〜W4としたとき、
bdx1=(rx1−mx1)*W1+(rx2−mx2)*W2
+(rx3−mx3)*W3+(rx4−mx4)*W4
bdy1=(ry1−my1)*W1+(ry2−my2)*W2
+(ry3−my3)*W3+(ry4−my4)*W4
で位置ズレ量を求めてもよい。
【0078】
これらの最近点変換を用いた場合、参照アライメントマークの点数は2点でも、4点以上でも同じアルゴリズムで適用することができる。これに対し、投影変換では、4点以上になった場合には、投影平面を構成する頂点データの選択の仕方により、補正結果が異なってくるため、参照アライメントマークの点数が多くなるにしたがって最近点変換の方が投影変換よりも有利であると言える。
【0079】
また、参照アライメントマークの点数が多くなると、描画ブロックから配置位置(bxi、byi)から各参照アライメントマークまでの距離計算に要する時間が増大するが、この場合ボロノイ図を利用してもよい。というのも、ボロノイ図を用いることで、複数の参照アライメントマークがある平面に任意の点を配置し、どの参照点が最も近いかを高速に求めることができるからである。
【0080】
また、上記実施形態では、本発明の「描画データ」、「ブロックデータ」としてランレングスデータを用いているが、これ以外にビットマップデータなどのラスター形式のデータを使用してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、パターン描画装置は描画エンジンとデータ処理部92とを一体的に備えているが、描画エンジンと同等の機能を有する既存のパターン描画装置に対し、データ処理部92と同等の機能を有するデータ処理装置を有線または無線により接続し、データ処理装置によりストリップデータD21を生成し、既存のパターン描画装置に出力して描画させるようにしてもよい。
【0082】
また、本発明の適用対象はウエハなどの半導体基板Wを本発明の「描画対象物」として当該基板に対して光を照射して描画する装置に限定されるものではなく、下地パターンが形成されたプリント配線基板等の描画対象物に利用することができる。
【0083】
さらに、上記実施形態にかかる位置検出方法を実行するプログラムを、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光ディスク、光磁気ディスク、不揮発性メモリカードなどの記憶媒体に記憶させ、この記憶媒体からプログラムをコードとして読み出し、コンピュータにおいて実行してもよい。つまり、上記プログラムを記憶した記憶媒体、コンピュータプログラム自体も本発明の一実施形態に含まれる。