(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内層と、その外周に形成される外層とを備えた耐熱エアホースであって、内層が、下記の(a)および(b)成分を含有するアクリル系ゴム組成物を用いてなり、外層が、下記の(A)および(B)成分を含有するエチレン−プロピレン系ゴム組成物を用いてなり、内層と外層とがシラン系接着剤を用いて接着されていることを特徴とする耐熱エアホース。
(a)アクリル系ゴム。
(b)表面に水酸基を有するカーボンブラック。
(A)エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)およびエチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)の少なくとも一方からなるエチレン−プロピレン系ゴム。
(B)架橋剤。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0015】
本発明の耐熱エアホースは、例えば、
図1に示すように、内層1と、外層2との界面に、補強糸層3が形成されて構成されている。
【0016】
本発明においては、上記内層1が下記の(a)および(b)成分を含有するアクリル系ゴム組成物を用いてなり、外層2が下記の(A)および(B)成分を含有するエチレン−プロピレン系ゴム組成物を用いてなり、内層1と外層2とがシラン系接着剤を用いて接着されている。これが、本発明の最大の特徴である。
(a)アクリル系ゴム。
(b)表面に水酸基を有するカーボンブラック。
(A)
エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)およびエチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)の少なくとも一方からなるエチレン−プロピレン系ゴム。
(B)架橋剤。
【0017】
なお、本発明の耐熱エアホースにおいては、耐圧性の点から、補強糸層3を有することが好ましいが、省略しても差し支えない。
【0018】
つぎに、各層の形成材料について説明する。
【0019】
《アクリル系ゴム組成物》
まず、本発明の耐熱エアホースの内層用材料となる、アクリル系ゴム組成物について説明する。
上記アクリル系ゴム組成物は、アクリル系ゴム(a成分)と、表面に水酸基を有するカーボンブラック(b成分)とを必須成分とする。
【0020】
《アクリル系ゴム(a成分)》
上記アクリル系ゴム(a成分)としては、アクリル酸エステル含有量が70〜100重量%、エチレン含有量が0〜10重量%、酢酸ビニル含有量が0〜20重量%であるものが、耐熱性の点から好ましい。
【0021】
上記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸メトキシエチル等のアクリル酸アルコキシアクリル等があげられる。
【0022】
なお、上記アクリル系ゴム(a成分)には、架橋席含有モノマーを0〜5重量%共重合させても差し支えない。上記モノマーとしては、例えば、活性ハロゲン基、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、アミド基、ジエン基等を有するモノマー等があげられる。なかでも、グリシジルメタアクリレート等のエポキシ基、マレイン酸モノブチル等のカルボキシル基が好ましい。
【0023】
《表面に水酸基を有するカーボンブラック(b成分)》
上記カーボンブラックとしては、例えば、HAFカーボンブラック、MAFカーボンブラック、FEFカーボンブラック、SRFカーボンブラック、GPFカーボンブラック等のファーネスブラックや、FTカーボンブラック、MTカーボンブラック等のサーマルブラックがあげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0024】
上記特定のカーボンブラック(b成分)の窒素吸着比表面積は、耐熱性の点から、7×10
3〜125×10
3m
2/kgが好ましく、耐熱・接着性の点から、特に好ましくは35×10
3〜125×10
3m
2/kgである。
【0025】
上記窒素吸着比表面積は、例えば、JIS K 6217−2に記載の方法に準じて測定することができる。
【0026】
また、上記特定のカーボンブラック(b成分)のOH量は、接着性の点から、0.20〜0.65meq./gが好ましく、特に好ましくは0.30〜0.65meq./gである。
【0027】
上記OH量(水酸基量)は、例えば、全酸性基量−強酸性基量で求めることができる。
〈全酸性基量〉
カーボンブラックに水酸化ナトリウム水溶液を加え振とうし遠心分離した後、上澄み液にメチルオレンジを加え塩酸水溶液で滴定することにより求める。
〈強酸性基量〉
カーボンブラックに炭酸ナトリウム水溶液を加え振とうし遠心分離した後、上澄み液にメチルオレンジを加え塩酸水溶液で滴定することにより求める。
【0028】
上記特定のカーボンブラック(b成分)の含有量は、耐熱性の点から、上記アクリル系ゴム(a成分)100重量部に対して30〜80重量部が好ましく、特に好ましくは40〜60重量部である。すなわち、b成分が少なすぎると、層間接着性が悪くなる傾向がみられ、逆にb成分が多すぎると、耐熱性が悪くなる傾向がみられるからである。
【0029】
本発明で使用するアクリル系ゴム組成物には、アクリル系ゴム(a成分)および表面に水酸基を有するカーボンブラック(b成分)に加えて、架橋剤、多官能性モノマー、補強材、白色充填材、可塑剤、加硫促進剤、加工助剤、老化防止剤、難燃剤等を必要に応じて配合しても差し支えない。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0030】
《架橋剤》
上記架橋剤としては、例えば、アミン架橋剤、酸無水物架橋剤、尿素架橋剤、ルイス酸架橋剤等が、単独でもしくは併用される。これらのなかでも、耐熱性の点で、アミン架橋剤が好ましい。
【0031】
上記アミン架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタミン、N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4′−メチレンジアニリン、4,4′−オキシフェニルジフェニルアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4′−メチレンビス(o−クロロアニリン)、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2′−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4′−ジアミノベンズアニリド、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミノメチル、ヘキサメチレンジアミン−シンナムアルデヒド付加物、ヘキサメチレンジアミン−ジベンゾエート塩等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0032】
上記架橋剤の含有量は、上記アクリル系ゴム(a成分)100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、特に好ましくは0.3〜5重量部である。
【0033】
本発明で使用するアクリル系ゴム組成物は、例えば、アクリル系ゴム(a成分)および表面に水酸基を有するカーボンブラック(b成分)に、必要に応じて、架橋剤等を配合し、これらをニーダー,バンバリーミキサー,ロール等の混練機を用いて混練することにより、調製することができる。
【0034】
《エチレン−プロピレン系ゴム組成物》
つぎに、本発明の耐熱エアホースの外層用材料となる、エチレン−プロピレン系ゴム組成物について説明する。
上記エチレン−プロピレン系ゴム組成物は、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)と、架橋剤(B成分)とを必須成分とする。
【0035】
《エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)》
上記エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)としては
、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)
およびエチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)
の少なくとも一方が用いられる。
【0036】
上記エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)としては、高温高圧下での安定性に優れる点で、ヨウ素価が6〜30の範囲、エチレン比率が48〜70重量%の範囲のものが好ましく、特に好ましくはヨウ素価が10〜24の範囲、エチレン比率が50〜60重量%の範囲のものである。
【0037】
上記EPDMに含まれるジエン系モノマー(第3成分)としては、炭素数5〜20のジエン系モノマーが好ましく、具体的には、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン(DCP)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネン等があげられる。これらジエン系モノマー(第3成分)のなかでも、ジシクロペンタジエン(DCP)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が好ましい。
【0038】
《架橋剤(B成分)》
上記架橋剤(B成分)としては、例えば、硫黄、過酸化物架橋剤(パーオキサイド架橋剤)等が、単独でもしくは併用される。これらのなかでも、耐熱性の点で、過酸化物架橋剤が好ましい。
【0039】
上記過酸化物架橋剤としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類や、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類や、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トリオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類や、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウリレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類や、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0040】
上記架橋剤(B成分)として硫黄を使用する場合、その含有量は、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して、0.5〜15重量部が好まし、特に好ましくは1〜5重量部である。また、上記架橋剤(B成分)として過酸化物架橋剤を使用する場合、その含有量は、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、特に好ましくは3〜15重量部である。すなわち、架橋剤(B成分)が少なすぎると、加硫が不充分で、ホースの強度に劣り、逆に架橋剤(B成分)が多すぎると、硬くなりすぎ、ホースの柔軟性に劣る傾向がみられる他、スコーチタイムが短くなり、加工性が悪化する傾向がみられるからである。
【0041】
本発明で使用するエチレン−プロピレン系ゴム組成物には、上記エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)および架橋剤(B成分)に加えて、加硫促進剤、カーボンブラック、加硫助剤、プロセスオイル、共架橋剤、老化防止剤等を、必要に応じて適宜に配合しても差し支えない。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0042】
《加硫促進剤》
上記加硫促進剤としては、例えば、チアゾール系,スルフェンアミド系,チウラム系,アルデヒドアンモニア系,アルデヒドアミン系,グアニジン系,チオウレア系等の加硫促進剤があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、加硫反応性に優れる点で、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0043】
上記加硫促進剤の含有量は、エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、特に好ましくは0.5〜3重量部である。
【0044】
上記チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩(NaMBT)、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(ZnMBT)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、加硫反応性に優れる点で、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)が好ましい。
【0045】
上記スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NOBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド(BBS)、N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0046】
上記チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0047】
《カーボンブラック》
上記カーボンブラックとしては、押出加工性や補強性に優れたものが好ましく、例えば、SAF級、ISAF級、HAF級、MAF級、FEF級、GPF級、SRF級、FT級、MT級等のものがあげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0048】
上記カーボンブラックの含有量は、上記エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して、20〜140重量部が好ましく、特に好ましくは60〜120重量部である。すなわち、カーボンブラックが少なすぎると、補強性の効果が乏しく、逆にカーボンブラックが多すぎると、電気抵抗が低くなり、電気絶縁性が悪くなる傾向がみられるからである。
【0049】
《加硫助剤》
上記加硫助剤としては、例えば、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、酸化マグネシウム等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0050】
上記加硫助剤の含有量は、上記エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して、1〜25重量部が好ましく、特に好ましくは3〜10重量部である。
【0051】
《プロセスオイル》
上記プロセスオイルとしては、例えば、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマ系オイル等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0052】
上記プロセスオイルの含有量は、上記エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して、5〜100重量部が好ましく、特に好ましくは20〜80重量部である。
【0053】
《共架橋剤》
上記共架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好適に用いられ、これらとともに、トリアリルシアヌレート、ダイアセトンジアクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、p−キノンジオキシム、p,p−ジベンゾイルキノンジオキシム、フェニルマレイミド、アリルメタクリレート、N,N−m−フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、1,2−ポリブタジエン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0054】
上記共架橋剤の含有量は、上記エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、特に好ましくは0.5〜5重量部である。
【0055】
《老化防止剤》
上記老化防止剤としては、例えば、カルバメート系,フェニレンジアミン系,フェノール系,ジフェニルアミン系,キノリン系等の老化防止剤や、ワックス類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0056】
上記老化防止剤の含有量は、上記エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、特に好ましくは1〜4重量部である。
【0057】
本発明で使用するエチレン−プロピレン系ゴム組成物は、例えば、上記エチレン−プロピレン系ゴム(A成分)および架橋剤(B成分)に、必要に応じて、加硫促進剤、カーボンブラック、加硫助剤、プロセスオイル等を配合し、これらをニーダー,バンバリーミキサー,オープンロール等の混練機を用いて混練することにより、調製することができる。
【0058】
《シラン系接着剤》
つぎに、内層1と外層2とを接着するシラン系接着剤について説明する。
上記シラン系接着剤としては、加熱によって加硫する熱加硫形のシラン系接着剤であっても、硬化剤の混合または空気の湿気で加硫させる室温加硫形のシラン系接着剤(RTVシリコーン)であってもよく、具体的には、シランカップリング剤を反応させてオリゴマーとしたもので、かつ官能基としてアミノ基、ビニル基等を有するものが好ましい。
【0059】
《補強糸層》
つぎに、内層1と外層2との界面に形成される補強糸層3について説明する。
【0060】
上記補強糸層3を形成する補強糸としては、例えば、ビニロン(ポリビニルアルコール)糸、ポリアミド(ナイロン)糸、アラミド糸、ポリエチレンテレフタレート(PET)糸等があげられる。これらのなかでも、耐熱性の観点から、アラミド糸が好ましい。
【0061】
上記補強糸の編み組み方法としては、例えば、スパイラル編み、ニッティング編み、ブレード編み等があげられる。
【0062】
つぎに、本発明の耐熱エアホースの製法について具体的に説明する。すなわち、前述の方法に従い、内層用材料となるアクリル系ゴム組成物、および外層用材料となるエチレン−プロピレン系ゴム組成物をそれぞれ調製する。つぎに、アクリル系ゴム組成物(内層用材料)をマンドレル上に押出成形し、その上に、シラン系接着剤を、コーティング,刷毛塗り,ディピッグ等の方法により塗布する。続いて、補強糸をスパイラル状に編み組みした後、その表面に、エチレン−プロピレン系ゴム組成物(外層用材料)を押出成形した後、ホースを加硫(例えば、160℃×1時間加熱した後、さらに、150℃×8時間オーブンにて二次加硫)する。これにより、内層1の外周面に補強糸層3を介して外層2が形成されてなる耐熱エアホース(
図1参照)を得ることができる。
【0063】
なお、本発明の耐熱エアホースは、前記
図1に示した構造に限定されるものではなく、外層2の外周に、さらに、ゴム材料からなる補強用の最外層を形成しても差し支えない。また、補強糸層3は、前述した通り省略することも可能である。
【0064】
本発明の耐熱エアホースにおいて、ホース外径は10〜90mmが好ましく、特に好ましくは20〜60mmである。また、内層1の厚みは0.5〜20mmが好ましく、特に好ましくは2〜4mmであり、外層2の厚みは0.5〜5mmが好ましく、特に好ましくは1〜3mmである。
【実施例】
【0065】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0066】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0067】
《アクリル系ゴム組成物の調製》
下記の表1に示す各成分を同表に示す割合で配合し、これらをバンバリーミキサーやニーダーを用いて混練することにより、アクリル系ゴム組成物を調製した。
【0068】
【表1】
【0069】
〔アクリル系ゴム(a成分)〕
日本ゼオン社製、ニポールAR31
【0070】
〔カーボンブラック(i)(b成分)〕
キャボットジャパン社製、ショウブラックN110(窒素吸着比表面積:135×10
3m
2/kg、OH量:0.59meq./g)
【0071】
〔カーボンブラック(ii)(b成分)〕
キャボットジャパン社製、ショウブラックN220(窒素吸着比表面積:122×10
3m
2/kg、OH量:0.61meq./g)
【0072】
〔カーボンブラック(iii) (b成分)〕
キャボットジャパン社製、ショウブラックN330(窒素吸着比表面積:76×10
3m
2/kg、OH量:0.55meq./g)
【0073】
〔カーボンブラック(iv)(b成分)〕
東海カーボン社製、シーストSO(窒素吸着比表面積:35×10
3m
2/kg、OH量:0.31meq./g)
【0074】
〔カーボンブラック(v)(b成分)〕
東海カーボン社製、シーストS(窒素吸着比表面積:23×10
3m
2/kg、OH量:0.18meq./g)
【0075】
〔カーボンブラック(vi)(b成分)〕
キャンカーブ社製、サーマックスN990(窒素吸着比表面積:7×10
3m
2/kg、OH量:0.1meq./g)
【0076】
〔加工助剤(ステアリン酸)〕
日本油脂社製、ビーズステアリン酸さくら
【0077】
〔可塑剤〕
旭電化工業社製、アデカサイザーRS735
【0078】
〔老化防止剤〕
クロンプトン社製、ナウガード445
【0079】
〔アミン系架橋剤〕
大内新興化学社製、バルノックAB
【0080】
《エチレン−プロピレン系ゴム組成物の調製》
下記の表2に示す各成分を同表に示す割合で配合し、バンバリーミキサーおよびオープンロールを用いて混練して、エチレン−プロピレン系ゴム組成物を調製した。
【0081】
【表2】
【0082】
〔EPDM(A成分)〕
住友化学工業社製、エスプレン505
【0083】
〔EPM(A成分)〕
住友化学工業社製、エスプレン201
【0084】
〔加硫助剤〕
酸化亜鉛(三井金属鉱業社製、酸化亜鉛2種)
【0085】
〔加硫助剤(ステアリン酸)〕
日本油脂社製、ビーズステアリン酸さくら
【0086】
〔カーボンブラック〕
SRF級カーボンブラック(キャボットジャパン社製、ショウブラックIP−200)
【0087】
〔パラフィン系オイル〕
日本サン石油社製、サンフレックス2280
【0088】
〔老化防止剤〕
大内新興化学工業社製、ノクラックMB
【0089】
〔加硫促進剤(i)〕
三新化学工業社製、サンセラーTT−G
【0090】
〔加硫促進剤(ii)〕
三新化学工業社製、サンセラーTET−G
【0091】
〔加硫促進剤(iii) 〕
三新化学工業社製、サンセラーCZ−G
【0092】
〔加硫促進剤(iv)〕
大内新興化学工業社製、ノクセラーBZ−G
【0093】
〔架橋剤(B成分)〕
硫黄(鶴見化学工業社製、サルファックスT−10)
【0094】
〔過酸化物架橋剤(B成分)〕
日本油脂社製、パークミルD40
【0095】
〔共架橋剤〕
TAIC(日本化成社製)
【0096】
また、上記アクリル系ゴム組成物からなる内層と、エチレン−プロピレン系ゴム組成物からなる外層とを接着する接着剤として、下記のものを準備した。
《シラン系接着剤(実施例用)》
ロード・ファー・イースト社製、ケムロックAP−133
《ポリオレフィン系接着剤(比較例用)》
ロード・ファー・イースト社製、ケムロック6100
【0097】
〔実施例1〕
アクリル系ゴム組成物(内層用材料)およびエチレン−プロピレン系ゴム組成物(外層用材料)を、下記の表3に示す組み合わせで積層し、シラン系接着剤を用いて両層を接着して、耐熱エアホースを作製した。すなわち、アクリル系ゴム組成物(内層用材料)をマンドレル上に押出成形し、その上に、シラン系接着剤を、コーティングにより塗布した。つぎに、その表面に、エチレン−プロピレン系ゴム組成物(外層用材料)を押出成形し、160℃×1時間加熱し、さらに、150℃×8時間オーブンにて二次加硫することにより、内層(厚み3mm)の外周面に外層(厚み2mm)が形成されてなる耐熱エアホース(内径12mm、外径22mm)を作製した。
【0098】
〔実施例2〜10、比較例1,2〕
アクリル系ゴム組成物(内層用材料)およびエチレン−プロピレン系ゴム組成物(外層用材料)の組み合わせを、下記の表3および表4に示す組み合わせに変更する以外は、実施例1と同様にして耐熱エアホースを作製した。なお、比較例1は接着剤を使用せず、比較例2は、シラン系接着剤に代えて、ポリオレフィン系接着剤を使用した。
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
このようにして得られた実施例および比較例の耐熱エアホースを用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、上記表3および表4に併せて示した。
【0102】
〔耐熱性〕
170℃×600時間老化後の各ホースの内面から採取したJIS5号ダンベルを作成し、JIS K 6251に準じて、破断伸び(EB)を評価した。
〈評価〉
○:伸びが200%以上
△:伸びが100%以上で200%より小さい
×:伸びが100%より小さい
【0103】
〔層間接着性〕
各耐熱ホースから、厚み3mm(内層の厚み1.5mm、外層の厚み1.5mm)、幅25.4mmの試験片を切り出し、その試験片の内層を、引張試験機(JIS B 7721)を用いて、毎分50mmの速度で引き剥がし、その際の層間接着力(N/mm)を測定した。
〈評価〉
○:2.4N/mm以上
△:2.0N/mm以上で2.4N/mmより小さい
×:2.0N/mmより小さい
【0104】
上記表3の結果より、実施例品は、いずれも耐熱性および層間接着性に優れていた。
【0105】
これに対して、比較例1は、接着剤を使用しないため、層間接着性が劣っていた。
また、比較例2は、シラン系接着剤に代えて、ポリオレフィン系接着剤を使用しているため、層間接着性が劣っていた。