(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特願2011−97278号の構成では、ばねの付勢力に抗して収納カードを押し下げるためにソレノイドの駆動電流を大きくして押圧力を大きくする必要があり、消費電力が多くなってしまっていた。また、ばねの付勢力とソレノイドの押圧力との力関係の設定が難しいという問題点があった。
【0009】
また、特許文献1のようにカード押圧板によってカード搬送路面側にカードを押し付けて収納しておく構成では、カードスタッカにカードが送り込まれる毎にカードを押し下げる動作を行って、カードを挿入するための隙間を形成する必要がある。従って、カードが送り込まれる毎にソレノイドやカード保持爪を駆動して収納カードを退避させる必要があり、駆動源であるモータの制御が面倒であると共に、消費電力も多くなってしまうという問題点があった。
【0010】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、消費電力が少なく、設定が容易で、且つ、簡単な制御でカードの出し入れを行うことができる機構が組み込まれているカードスタッカを備えたカード処置装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明のカードスタッカを備えたカード処置装置は、
カード挿入排出口と、
カードを厚さ方向に積層状態で収納可能なカードスタッカと、
前記カード挿入排出口から前記カードスタッカに至るカード搬送路と、
前記カード搬送路に沿ってカードを搬送するカード搬送機構とを有し、
前記カード搬送路は、カードを1枚ずつ搬送可能な間隔で対峙している第1搬送路面および第2搬送路面によって規定される直線状の搬送路であり、前記第1搬送路面は前記第2搬送路面の後端よりも後方に延びている後側搬送路面部分を備えており、
前記カードスタッカは、
前記第1搬送路面の前記後側搬送路面部分に対して接近および離れる方向に移動可能なカード押し上げ部材と、
当該カード押し上げ部材を前記後側搬送路面部分に向けて付勢している第1付勢部材と、
前記後側搬送路面部分の側に後退した後退位置から、当該後側搬送路面部分から前記カード押し上げ部材の側に向けて少なくともカード1枚の厚さ分だけ突出したカード押し下げ位置までの間を移動可能なカード押し下げ部材と、
当該カード押し下げ部材を前記カード押し下げ位置に向けて付勢している第2付勢部材と、
前記カード押し下げ部材を、前記第2付勢部材の付勢力に逆らって前記後退位置に移動させて当該後退位置に保持するための押し下げ解除手段とを備えることを特徴としている。
【0012】
本発明のカード処理装置は、カード押し下げ部材を第2付勢部材によって常時付勢しているため、収納カードが常時押し下げられており、収納カードと後側搬送路面部分の間に少なくとも1枚のカードを差し込むことができる隙間を常時形成している。このようにすると、カードをカードスタッカ内に挿入するタイミング毎に収納カードの押し下げ動作を行う必要がない。その代わり、必要なタイミングで押し下げ解除手段によってカード押し下げ部材を後退させて収納カードを押し上げることができるため、カードの挿入および送出を簡単な制御で行うことができる。また、押し下げ力として第2付勢部材の付勢力を用いるため、従来のように押圧力の大きいソレノイドを用いる必要がなく、消費電力が少なくて済む。更に、第1付勢部材の付勢力に逆らってソレノイドで押し下げる構成は付勢力とソレノイドの押圧力の設定が難しいが、本発明では、第1付勢部材と第2付勢部材の付勢力の釣り合いのみを考慮すればよいため、付勢力の設定が容易である。
【0013】
すなわち、本発明において、前記押し下げ解除手段は、前記カード搬送路から前記カードスタッカにカードが挿入されるときには、前記カード押し下げ位置への前記カード押し下げ部材の移動を妨げない第1状態となっており、前記カードスタッカから前記カード搬送路にカードを送出するタイミングで、前記カード押し下げ部材を前記後退位置に保持する第2状態に変位し、前記カード搬送路へのカード送出が完了すると、前記第1状態に復帰するように構成することができる。このようにすると、収納カードを送出するタイミングを除き、収納カードが常時押し下げられているため、カードをカードスタッカ内に挿入するタイミング毎に収納カードの押し下げ動作を行う必要がない。収納カードの送出タイミング毎に押し下げ解除動作を行う方が、カードをカードスタッカ内に挿入するタイミング毎にカード押し下げ動作を行うよりも動作回数が少なく、押し下げ解除手段の駆動源であるモータなどの消費電力が少なくて済む。また、制御も簡単である。
【0014】
本発明において、前記カード押し下げ部材として、前記後側搬送路面部分を横断する方向に延びている回転軸を中心として回転自在に支持されている押圧ローラーを用い、前記第2付勢部材により、前記回転軸を介して前記押圧ローラーを前記カード押し下げ位置側に付勢する構成にすることができる。このようにすると、カードを押し下げている押圧ローラーがカードの挿入・送出方向に回転可能であるため、押し下げた収納カードと後側搬送路面部分との隙間に進入するカードによって押圧ローラーが回転し、進入するカードを収納カードの最上層に積層することができる。
【0015】
この場合に、前記カード押し下げ位置まで突出した前記押圧ローラーによって押し下げられている前記カードスタッカ内の収納カードの積層方向の最上面と、前記後側搬送路面部分との間に形成される隙間の幅が、前記押圧ローラーの直径の4分の1以下となるように構成されていることが望ましい。このようにすると、カードスタッカ内の収納カードと後側搬送路面部分との隙間に挿入されたカードの先端が押圧ローラーに当たる際に、ローラー面に対してカードが45°以下の角度で当たる。このようにローラー面との角度が小さいと、カードの先端がローラー面に沿って進入しやすく、押圧ローラーと収納済みカードとの間にカードを進入させるための搬送機構の搬送負荷を小さくすることができる。
【0016】
本発明において、前記押し下げ解除手段として、前記回転軸を前記後退位置側に移動させるためのカム面を有するカムスライダを用いることができる。このようにすると、カムスライダの往復動作によって押圧ローラーを移動させることができるため、単純な構成で収納カードの押圧解除および押し下げ状態への復帰を行うことができる。
【0017】
また、本発明において、前記カードスタッカの収納カードを前記カード搬送路に送り出すカード送り出し方向に沿って見た場合に、前記カード押し上げ部材に対する前記第1付勢部材の付勢位置は、前記カード押し下げ部材による収納カードの押圧位置よりも後方の位置にすることが望ましい。このようにすると、押し上げ方向の付勢位置に設定されたカードの後ろ側に対し、押し下げ方向への押圧位置に設定されたカードの前側を確実に押し下げることができる。従って、カード搬送路の側からカードを差し込むための隙間を確実に形成できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、収納カードを第2付勢部材によって常時押し下げて、収納カードと後側搬送路面部分の間に少なくとも1枚のカードを差し込むことができる隙間を常時形成しておくことができるため、カードをカードスタッカ内に挿入するタイミング毎に収納カードの押し下げ動作を行う必要がない。その代わり、必要なタイミングで押し下げ解除手段によってカード押し下げ部材を後退させて収納カードを押し上げることができるため、カードの挿入および送出を簡単な制御で行うことができる。また、押し下げ力として第2付勢部材の付勢力を用いるため、従来のように押圧力の大きいソレノイドを用いる必要がなく、消費電力が少なくて済む。更に、第1付勢部材の付勢力に逆らってソレノイドで押し下げる構成は付勢力とソレノイドの押圧力の設定が難しいが、本発明では、第1付勢部材と第2付勢部材の付勢力の釣り合いのみを考慮すればよいため、付勢力の設定が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して本発明を適用したカード処理装置の実施の形態を説明する。本実施の形態に係るカード処理装置は遊技台用台間機に組み込まれるものであるが、本発明は遊技台用台間機以外の機器に用いるカード処理装置に対しても同様に適用可能なことは勿論である。
【0021】
(遊技台用台間機)
図1(a)は本発明を適用したカード処理装置が組み込まれた遊技台用台間機を示す斜視図であり、
図1(b)は遊技台用台間機の台間機本体を台間機ホルダーから引き出した状態を示す斜視図である。本実施の形態に係るカード処理装置1が組み込まれている遊技台用台間機100は、パチンコ店などの遊技施設において遊技島を構成している遊技台(図示せず)の間に配置されるものであり、遊技島構成枠(図示せず)に固定される台間機ホルダー101と、この台間機ホルダー101に対して前側から取り外し可能な状態で挿入されている台間機本体102とを備えている。
【0022】
台間機本体102は偏平で縦長の直方体形状の板金製のケース103と、この前面に取り付けたプラスチック製の前面パネル104とを備えており、ケース103の内部には、制御ユニット、電源ユニット、金銭処理ユニットと共に、カード処理装置1が組み込まれている。カード処理装置1の前面に位置する前面パネル104の部分にはカード挿入排出用のカードスロット105が形成されており、ここを介して、カード、本例ではRFICチップが搭載されている非接触型ICカードC(以下、単に「カードC」と呼ぶ場合もある。)の挿入、排出が行われる。なお、遊技台用台間機100の構成、動作は一般的に知られているものと同様であるので、これ以上の説明は省略する。
【0023】
(カード処理装置)
図2(a)は
図1の遊技台用台間機100に組み込まれているカード処理装置1を示す斜視図であり、
図2(b)はその分解斜視図である。これらの図を参照して説明すると、カード処理装置1は、全体として前後方向に長い偏平な直方体形状をしており、装置本体ユニット2と、この装置本体ユニット2に取り付けられた着脱式の開閉ユニット3とを備えている。装置本体ユニット2は装置前後方向に長い偏平な直方体形状をしたユニットであり、その一方の側面には前後方向に延びる一定幅で一定深さの凹部4が形成されている。開閉ユニット3は凹部4に丁度嵌り込む大きさの直方体形状をしており、その後端部における装置上下方向に延びる開閉中心軸線5を中心として、当該凹部4に装着された閉じ位置3Aから、凹部4から離れる側に旋回した開き位置までの範囲内で開閉可能であり、不図示のロック機構によって閉じ位置3Aにロックされている。また、開閉ユニット3は装置本体ユニット2から取り外すことが可能である。凹部4の装置前面部分には、装置本体ユニット2に対して入口ガイドユニット6が固定ネジ7によって固定されている。
【0024】
図3(a)はカード処理装置1の内部構造を示す断面図であり、
図3(b)はその装置本体ユニット2の側の搬送路面を示す側面図である。
図2および
図3を参照してカード処理装置1の内部構造を説明する。カード処理装置1の前端面11には、その前端面11における幅方向の中央に上下に延びる一定幅のカード挿入排出口12が形成されている。本例では、装置本体ユニット2と、ここに形成した凹部4の前端部分に取り付けた入口ガイドユニット6との間にカード挿入排出口12が形成されている。カード挿入排出口12を介して、カードCをその長手方向に沿って挿入、排出することができる。
【0025】
カード処理装置1の内部には、カード挿入排出口12から後方に直線状に延びる一定幅のカード搬送路13が形成されている。カード搬送路13はカードCをその長手方向に1枚ずつ搬送可能な幅の通路であり、入口側カード搬送路13Aと、この入口側カード搬送路13Aの後端から後方に延びるカード搬送路13Bとを備えている。カード搬送路13Bの後端13bは、装置前後方向の中程の位置において、当該カード搬送路13Bよりも広幅のカードスタッカ14に繋がっており、当該後端13bがカードスタッカ14のカード送り出し口となっている。カードスタッカ14はカード搬送路13Bから送り込まれるカードCをカード搬送路13の搬送方向に直交する装置幅方向に重ねた状態、換言するとカードCの厚さ方向に重ねた状態で収納可能である。
【0026】
入口側カード搬送路13Aは装置本体ユニット2と入口ガイドユニット6の間に形成されており、後側のカード搬送路13Bは装置本体ユニット2と開閉ユニット3の間に形成されている。すなわち、入口側カード搬送路13Aは、装置本体ユニット2の凹部4の底面を規定している全体として平坦な第1搬送路面15の前側部分と、これに装置幅方向において一定の間隔で対峙している入口ガイドユニット6の内側側面によって規定される平坦な第2搬送路面部分16との間に形成されている。カード搬送路13Bは、装置本体ユニット2の側の第1搬送路面15と、これに対峙している開閉ユニット3の内側側面によって規定される平坦な第2搬送路面部分17との間に形成されている。第1搬送路面15の後側部分は第2搬送路面部分17の後端13b(カードスタッカ14のカード送り出し口)よりも後方に延びている後側搬送路面部分15aとなっている。この後側搬送路面部分15aには、開閉ユニット3の側に形成されているカードスタッカ14の矩形輪郭のスタッカ開口部14aが対峙している。
【0027】
カード搬送路13Bおよびカードスタッカ14にはカードCを搬送するためのカード搬送機構20が配置されている。カード搬送機構20は、第1搬送ローラー21および第2搬送ローラー22と、第1搬送ローラー21に押し付け可能なアイドラローラー23と、第1、第2搬送ローラー21、22を駆動するための駆動モーター24と、駆動モーター24の駆動力を第1、第2搬送ローラー21、22に伝達するための歯車列25とを備えている。駆動モーター24によって第1、第2搬送ローラー21、22が同期して回転駆動されるようになっている。また、第1搬送ローラー21はカード搬送路13B上に配置されているが、第2搬送ローラー22は、カードスタッカ14に対峙している後側搬送路面部分15aにおいて、カード搬送路13Bの後端13bの後側近傍位置に配置されている。また、第1、第2搬送ローラー21、22の間隔はカードCの搬送方向の長さよりも短い寸法に設定されている。カード搬送機構20の構成部品のうち、アイドラローラー23は開閉ユニット3の側に搭載されているが、それ以外は装置本体ユニット2の側に搭載されている。
【0028】
装置本体ユニット2において、入口側カード搬送路13Aにおけるカード挿入排出口12と第1搬送ローラー21の間には、ソレノイド駆動式の入口シャッター26が配置されている。入口シャッター26が開くとカードCの挿入が可能になり、挿入されたカードCにおける搬送路搬入方向の先端側の端面Caが第1搬送ローラー21およびアイドラローラー23のニップ部に押し込まれると、カード搬送機構20によるカード搬送が可能になる。
【0029】
装置本体ユニット2における第1搬送路面15の背面側には、これと平行に回路基板27が配置されている。回路基板27には、カード処理装置1の駆動制御を司る制御回路が搭載されていると共に、カードCに対して非接触状態で情報のリードライトを行うためのRFアンテナ28(リードライト部)が搭載されている。このRFアンテナ28は、
図3(b)において想像線で示すように、カード搬送路13Bにおける第1、第2搬送ローラー21、22の間の部位に対峙している回路基板27の表面に搭載されているループ状のアンテナである。
【0030】
ここで、回路基板27にはカードCの搬送制御を行うために用いる複数のカード検出器が搭載されている。主に
図3(b)を参照して、これらのカード検出器によるカード検出位置を説明する。まず、入口側カード搬送路13Aにおけるカード挿入排出口12の近傍位置には、フォトインタラプタ方式のカード検出器の入口レバー31が配置されている。入口レバー31は入口側カード搬送路13A内に突出した状態に付勢されており、カード挿入排出口12に挿入されるカードCによって装置幅方向に押されて入口側カード搬送路13Aから退避する方向に押し込み可能となっている。入口レバー31の動きによって、回路基板27に実装されているフォトインタラプタは、入口側カード搬送路13AにカードCが挿入されたこと、および、当該カード挿入排出口12からカードCが完全に引き抜かれたことを検出できる。
【0031】
入口側カード搬送路13Aにおける入口シャッター26と第1搬送ローラー21の間の部位には、入口側カード搬送路13Aにおける上端および下端に、一対のフォトセンサ32、33が配置されている。これらのフォトセンサ32、33は、カードCがRFアンテナ28によるカードリードライト位置に位置したことを検出するためのものである。本例では、カードCがカードリードライト位置に位置決めされると、リードライト対象のカードC(28)における搬送路搬入方向の後端縁部分が、上側のフォトセンサ32の検出位置に位置し、下側のフォトセンサ33の検出位置からは搬入方向に外れた位置になる。これら双方のフォトセンサ32、33の検出信号に基づき、カードCがカードリードライト位置に位置決めされたことを検出できる。
【0032】
次に、カード搬送路13Bにおける第1搬送ローラー21およびアイドラローラー23のニップ位置に対応するカード搬送路13Bの下端の部位には、1個のフォトセンサ34が配置されている。このフォトセンサ34の検出信号に基づき、カード挿入排出口12から挿入されたカードCの先端が第1搬送ローラー21、アイドラローラー23のニップ部にくわえ込まれたこと(搬送開始時点)、および、排出されるカードCが当該ニップ部を通過し終えたこと(搬送終了時点)を検出できる。
【0033】
カード搬送路13Bの後端13bには、その下端部分に1個のフォトセンサ35が配置されている。このフォトセンサ35の検出信号に基づき、カード搬送路13Bに沿ってカードスタッカ14に送り込まれるカードCが当該カードスタッカ14内に収納され終わったことを検出できる。
【0034】
これらのフォトセンサ32〜35は同一構成のプリズム回帰式の透過型センサであり、各センサには、発光素子および受光素子と、発光素子からの射出光を受光素子に向けて反射する直角プリズムを備えている。発光素子および受光素子は、装置本体ユニット2に配置されている単一の回路基板27に搭載されている。これに対して、フォトセンサ32、33の直角プリズムは入口ガイドユニットの側に搭載されており、フォトセンサ34、35の直角プリズムは開閉ユニット3の側に搭載されている。各発光素子からの射出光は、第1搬送路面15に形成されている透過窓からカード搬送路13(13A、13B)を横切って各直角プリズムの一対の反射面で反射される。反射光は、再びカード搬送路13を横切って各受光素子に入射する。カード搬送路13における各フォトセンサ32〜35の検出位置にカードCが存在しない場合には、検出光が受光素子で受光され、検出位置にカードCが存在する場合には検出光がカードCによって遮断されるので、受光の有無によってカードCの有無を検出できる。
【0035】
各フォトセンサ32〜35は、発光素子と受光素子を、カードCの搬送方向に対して直交する方向に並設している。また、直角プリズムもこれに倣ってカードCの搬送方向に対して直交する方向に一対の反射面が並ぶように配置されている。これにより、カードCの端面をライン状に検出することができ、カードCの位置をより正確に検知することができる。
【0036】
(カードスタッカ)
次に、主に
図3(a)を参照してカードスタッカ14の構造を説明する。開閉ユニット3に形成されているカードスタッカ14は、その第2搬送路面部分17の後側に形成されており、1枚のカードCを厚さ方向に挿入して積層状態で収納可能な矩形形状をした一定深さの凹部である。このカードスタッカ14のスタッカ開口部14aが装置本体ユニット2の側の第1搬送路面15の後側搬送路面部分15aに対峙している。カードスタッカ14には、後側搬送路面部分15aに対峙する状態で、カード押し上げ機構40Aが設けられている。カード押し上げ機構40Aは、カードスタッカ14の底面を規定している矩形のカード押し上げ板41(カード押し上げ部材)と、カード押し上げ板41を背面側から後側搬送路面部分15aに向けて押し上げている円錐台状の圧縮コイルバネ42(第1付勢部材)を備えている。圧縮コイルバネ42による押し上げ位置42A(付勢位置)は、カード搬送方向に沿って見た場合に、カード押し上げ板41の中心位置あるいは当該中心位置よりも後方側の位置とされ、本例では中心位置に一致している。
【0037】
これに対して、後側搬送路面部分15aにおいては、カード搬送路13Bの後端13b(カード送り出し口)の近傍位置に第2搬送ローラー22が露出しており、この第2搬送ローラー22よりも後側の位置には、カード押し下げ機構40Bが設けられている。カード押し下げ機構40Bは、後側搬送路面部分15aに露出している樹脂製の押圧ローラー43、44(カード押し下げ部材)と、押圧ローラー43、44を回転自在に支持する回転軸45と、回転軸45と後側搬送路面部分15aとの間に配置されたカムスライダ46(押し下げ解除手段)と、回転軸45を後側搬送路面部分15aに向けて付勢している圧縮コイルバネ47(第2付勢部材)を備えている。押圧ローラー43、44は、
図3(b)に示すように、カードスタッカ14の上下方向(収納されているICカードCの短辺方向/後側搬送路面部分15aを横断する方向)において対称の位置に配置されている。
【0038】
回転軸45は、後側搬送路面部分15aを横断する方向に延びており、不図示のガイド機構によって装置幅方向に移動可能に支持されている。回転軸45は、背面側から圧縮コイルバネ47によって付勢され、カムスライダ46の前端部分に形成されたカム面46aに押し付けられている。カム面46aは、カード押し上げ板41の側に凹んだ前端面46bと、前端面46bの後端に接続された傾斜面46cと、傾斜面46cの後端からさらに後方に向かって延びている後端面46dを備えている。後端面46dは、前端面46bに対し、カード押し上げ板41から離れる側に後退した位置に設けられている。
【0039】
カムスライダ46は、後側搬送路面部分15aの背面部分に沿って、装置本体ユニット2に対し、装置前後方向(カード搬送方向)にスライド可能に取り付けられており、装置前後方向に一定の範囲内で往復移動可能となっている。カムスライダ46を後側搬送路面部分15aの後方の退避位置46A(
図3(a)、
図6(b)参照)まで後退させた状態(第1状態)では、圧縮コイルバネ47の付勢力によって回転軸45がカム面46aの前端面46bに押し付けられる。このとき、押圧ローラー43、44は、後側搬送路面部分15aからカードスタッカ14内に向けて、少なくともカードCの1枚分以上の厚さ寸法だけ突入したカード押し下げ位置43A、44Aまで移動する。これにより、圧縮コイルバネ42の付勢力に抗して収納カードC(14)が押し下げられて、後側搬送路面部分15aと収納カードC(14)の最上位のカードC1との間に、カード搬送路13BからカードCを送り込むための隙間が形成される。
【0040】
カムスライダ46を前方に向けてスライドさせると、カム面46aにより、回転軸45が圧縮コイルバネ47の付勢力に逆らってカード押し上げ板41から離れる方向に後退する。カムスライダ46を押し下げ解除位置46B(
図7(b)参照)まで前進させると、この状態(第2状態)では、回転軸45がカム面46aの後端面46dに押し付けられ、押圧ローラー43、44が後側搬送路面部分15aの背面側に後退した後退位置43B、44Bまで後退するため、押圧ローラー43、44による収納カードC(14)の押し下げ状態が解除され、収納カードC(14)が後側搬送路面部分15aまで押し上げられる。
【0041】
カード押し下げ機構40Bは、このように、圧縮コイルバネ47の付勢力によって押圧ローラー43、44および収納カードC(14)を押し下げて、後側搬送路面部分15aと収納カードC(14)の最上位のカードC1との間に、カード搬送路13BからカードCを送り込むための隙間を形成できる。その一方で、カムスライダ46を前方にスライドさせることによって押圧ローラー43、44を後退させて収納カードC(14)の押し下げ状態を解除し、収納カードC(14)を後側搬送路面部分15aまで押し上げることができる。カムスライダ46による押し下げ解除動作は、後述する収納カード繰り出し機構90によるカード送り出し動作に連動して行われる構成となっている。
【0042】
図4はカード押し下げ位置43A、44Aにある押圧ローラー43、44の部分拡大図である。この図に示すように、本例では、押圧ローラー43、33の直径をD、押圧ローラー43、44の前方に形成されている隙間の幅(最上位のカードC1と後側搬送路面部分15aとの隙間の幅)をdとした場合に、4d≦Dとなるように、押圧ローラー43、44の寸法およびそのカード押し下げ位置43A、44Aを設定している。このように設定すると、隙間に送り込まれたカードC2が後方に進んで押圧ローラー43、44の外周面に突き当たるとき、外周面とカードC2とのなす角度θが45°以下となる。このため、押圧ローラー43、44と最上位のカードC1との間に新たなカードC2を進入させるための第1、第2搬送ローラー21、22の搬送負荷を小さくすることができる。
【0043】
ここで、本例では、押圧ローラー43、44による収納カードC(14)の押圧位置47Aは、カード搬送方向に沿って見た場合に、圧縮コイルバネ42による押し上げ位置42Aよりも装置前方側にオフセットした位置であり、且つ、第2搬送ローラー22の収納カードC(14)に対する当接位置22Aよりも装置後方側の位置となっている。この結果、収納カードC(14)における装置前側の部分が圧縮コイルバネ42による押し上げ位置42Aを支点にして押し下げられる。よって、収納カードC(14)の全体を押し下げる場合に比べて、小さな押し下げ力で確実に、後側搬送路面部分15aと収納カードC(14)の最上位のカードC1との間に、カード搬送路13BからカードCを送り込むための隙間を形成できる。
【0044】
次に、カードスタッカ14における装置前後方向の後端部には、カードスタッカ14に収納されている収納カードC(14)のうち最も上に積層されている最上位のカードC1を、そのカード厚さ方向に直交する押し出し方向、本例では後側搬送路面部分15aに沿ったカード搬送方向に押し出してカード搬送路13Bに送り出す収納カード繰り出し機構90が配置されている。収納カード繰り出し機構90は、後側搬送路面部分15aの後端部分から突出している一対のカード係合爪91、92と、これらのカード係合爪91、92を圧縮コイルバネ93、94を介して支持しているスライダ96とを備えている。
【0045】
カード係合爪91、92は、後側搬送路面部分15aにおいて上下方向の対称位置に配置されており、最上位のカードC1の後側の端面に対して後側から係合可能である。また、カード係合爪91、92およびスライダ96は、装置前後方向に一定の範囲内で往復移動可能となっている。この構成の収納カード繰り出し機構90と、カード搬送機構20の第2搬送ローラー22とによって、カードスタッカ14に積層状態で収納されている収納カードC(14)から、その最上位のカードC1を確実に分離し、当該カードC1をカード搬送路13Bに向けて送り出すことが可能である。
【0046】
(カード搬送路の長さ寸法)
上記構成のカード処理装置1において、RFアンテナ28によるカードリードライト位置に位置決めされたリードライト対象のICカードC(28)は、
図3に示すように、その搬送路搬入方向の先端部分がカードスタッカ14のカード送り出し口(カード搬送路13Bの後端13b)から所定の距離だけ奥に入り込んだ状態になる。このカードリードライト位置では、ICカードC(28)の搬送路搬入方向の先端側の端面Caが一対の押圧ローラー43、44の直前に位置し、その後端側の端面Cbが一対のフォトセンサ32、33の間に位置している。したがって、カードリードライト位置にあるICカードC(28)の搬送路搬入方向における先端部分は、カードスタッカ14に収納されている収納カードC(14)の最上位のカードC1の搬送路搬入方向における後端部分に所定長さ分だけ重なった状態になる。また、リードライト位置にあるカードC(28)には双方の第1、第2搬送ローラー21、22が当接した状態となる。
【0047】
これらのカードの重なり寸法ΔLは、カードリードライト位置にあるカードC(28)をRFアンテナ28によってリードライトする際に、収納カードC(14)との間でコリジョンが発生しない最大寸法に設定されている。本例では、重なり寸法ΔLは、フォトセンサ32、33からカード挿入排出口12までの長さ寸法L(12)よりも大きい。したがって、カード搬送路13(13A、13B)の全長L(13)は、カードCの長手方向の長さ寸法L(C)よりも短い。また、カード挿入排出口12からカードスタッカ14の後端までの長さ寸法L(14)はカードCの長さ寸法L(C)の2倍よりも短く、装置前後方向の全長L(1)もカードCの長さ寸法L(C)の2倍あるいは、それよりも短い。
【0048】
このように、カード搬送路13(13A、13B)が短くて済むので、カード処理装置1の前後方向の長さ寸法を小さくすることができる。また、短いカード搬送路13に沿ってカードCを搬送すればよいので、搬送ベルトの代わりに、一対の搬送ローラー21、22を用いてカードCを搬送することができる。すなわち、一対の搬送ローラー21、22をカードCの搬送方向の長さL(C)よりも狭い間隔に配置してカード搬送を確実に行うことができる。搬送ベルトを使用する場合には長期使用によってベルトの伸びなどに起因して搬送不良、カード詰まりなどが発生するおそれが高いが、搬送ローラーを用いることにより搬送機構の耐久性を高めることができる。
【0049】
さらに、第2搬送ローラー22はカードスタッカ14に対峙している後側搬送路面部分15aに配置されている。したがって、第2搬送ローラー22は、
図3に示すように、リードライト位置にあるカードC(28)における後側の部分に当接する。また、リードライト位置にカードC(28)が無い場合には、収納カードC(14)の最も上に位置している最上位のカードC1の前側の部分に当接する。したがって、第2搬送ローラー22を用いて、リードライト位置にあるカードC(28)をカードスタッカ14内に送り込むことができ、また、カードスタッカ14内のカードC1をカード搬送路13に向けて送り出すことができる。
【0050】
(収納カード繰り出し機構およびそのカード送り出し動作)
図5は収納カード繰り出し機構90のカード係合爪の分解斜視図である。また、
図6〜
図8は、それぞれ、(a)は収納カード繰り出し機構90およびカード押し下げ機構40Bの斜視図であり、(b)はカード処理装置1の断面図であり、(c)はカード処理装置1の側面図であり、
図6はカード送り出し前の状態、
図7はカード送り出し動作の途中状態、
図8はカードが送り出された状態を示している。先に述べたように、収納カード繰り出し機構90は、収納カードC(14)の最も上に積層されている最上位のカードC1の後端面(カード搬送路搬入方向の先端面)に対して、その上下方向に離れた対称位置(カード短辺方向に離れた対称位置)において後側から係合可能な複数のカード係合爪、本例では、上下一対のカード係合爪91、92を備えている。カード係合爪91、92は、それぞれ、圧縮コイルバネ93、94を介してスライダ96に支持されている。
【0051】
収納カード繰り出し機構90は、スライダ96と、このスライダ96をカード押し出し方向(カード搬送方向)に沿って、
図6に示す後退位置から、
図8に示す前進位置までの間をスライドさせるためのDCモーター97(共通の駆動源)と、DCモーター97の駆動力をスライダ96のスライド運動に変換する動力伝達機構98とを備えている。
【0052】
一対のカード係合爪91、92は、圧縮コイルバネ93、94を介して、スライダ96に形成されている爪取り付け部96a、96bに対して装置幅方向(カード積層方向)に移動可能な状態で取り付けられている。カード係合爪91、92は、
図3、
図5から分かるように、装置本体ユニット2の後側搬送路面部分15aの後端部分に形成した開口を介して、カードスタッカ内に突出している。各カード係合爪91、92の先端面には、収納カードC(14)の最上位のカードC1のカード表面の後端縁側の部分にバネ力によって押し付けられる当接面部分91a、92aが形成されている。
【0053】
動力伝達機構98は、DCモーター97の回転を減速するウォームギアなどの減速機構を内蔵するギアボックス98aと、ギアボックス98aの出力側に設けられたカムギア98bと、カムギア98bの正回転に基づいて装置前後方向に一定の旋回角度範囲で揺動する揺動リンク98cと、揺動リンク98cの一端とスライダ96とを遊びのある状態で連結している上記のカムスライダ46と、カムスライダ46の前端側に向けてスライダ96を付勢するための圧縮コイルバネ99を備えている。スライダ96は装置本体ユニット2に対して前後方向にスライド可能な状態で取り付けられている。また、揺動リンク98cには、カムギア98bに連結される側の端部に長孔98dが形成されており、この長孔98dを介してカムギア98bに連結されている。
【0054】
カムスライダ46は、上述したカム面46aの後端から後方に延びるスライダ本体部46eを備えている。スライダ本体部46eの前端部分に、揺動リンク98cの先端が回転自在に連結されている。一方、スライダ本体部46eの後端には矩形開口46fが形成されており、ここに、スライダ96の前端部分に形成された突起96aが挿入されている。矩形開口46fの装置前後方向の開口寸法は突起96aの前後方向の厚さよりも大きいため、カムスライダ46とスライダ96が装置前後方向に遊びのある状態で連結されている。スライダ96の前端面には、スライダ本体部46eの前端寄りの位置から後方に向かって延びている圧縮コイルバネ99の後端が固定されている。圧縮コイルバネ99は、スライダ96を装置後方に向けて付勢している。
【0055】
次に、カード送り出し動作を行うときの各部の動作について説明する。
図6に示すカード送り出し前の状態において、揺動リンク98cの先端が装置後方に向かって傾く位置でカムギア98bが停止し、カムスライダ46が装置後方側の退避位置46Aまで後退している。これが、カムギア98b、揺動リンク98c、およびカムスライダ46のホームポジションである。このとき、スライダ96は、その後端が装置本体ユニットの筺体の後端面に突き当たっているため、圧縮コイルバネ99の付勢力に逆らって、矩形開口46fの前方の縁に突起96aが当接した位置で停止している。また、このとき、カード押し下げ機構40Bは、カムスライダ46が退避位置46Aまで後退しているため、回転軸45がカム面46aの前端面46bに押し付けられて、押圧ローラー43、44が収納カードC(14)を押し下げた状態になっている。このため、後側搬送路面部分15aと収納カードC(14)の最上位のカードC1との間に隙間が形成され、カードC1が第2搬送ローラー22から離れている。
【0056】
この状態から、DCモーター97を駆動してカムギア98bを正回転させ、
図7に示す位置まで揺動リンク98cを旋回させると、カムスライダ46が押し下げ解除位置46Bまで移動して、押圧ローラー43、44が後退位置43B、44Bまで後退する。これにより、カードスタッカ14内の収納カードC(14)がカード押し上げ板41によって第1搬送路面15の後側搬送路面部分15aの側に押し上げられて、収納カードC(14)の最も上側に位置する最上位のカードC1が、後側搬送路面部分15aと、ここからカードスタッカ14内に僅かに外周面が露出している第2搬送ローラー22に押し付けられる。また、最上位のカードC1の搬送路搬入方向の先端側の端面Caには一対のカード係合爪91、92が付勢されており、これらが、カード先端側の端面Caに後側から係合する。
【0057】
一方、スライダ96は、カムスライダ46に対して前後方向に遊びのある連結状態となっており、且つ、圧縮コイルバネ99によって後方に付勢されているため、矩形開口46fの後方の縁に突起96aが当接するまではスライダ96は停止したままであり、カムスライダ46のみが前方側に移動する。
【0058】
矩形開口46fの後方の縁に突起96aが当接した後、更にDCモーター97を駆動してカムギア98bを正回転させると、揺動リンク98cが更に旋回し、その先端に連結されたカムスライダ46は、押圧ローラー43、44を後退位置43B、44Bに保持したまま、
図8に示すように、更に前方側の保持位置46Cに移動する。このとき、矩形開口46fの後方の縁に突起96aが当接しているため、スライダ96およびこれに支持されているカード係合爪91、92がカムスライダ46と共に前方にスライドしている。これにより、スライダ96が第2位置96Bまで移動し、カード係合爪91、92が係合している最上位のカードC1が前方に押し出される。これと同時にカード搬送機構20を駆動して、第1、第2搬送ローラー21、22を反時計回りに回転させると、最上位のカードC1が、それ以外の収納カードC(14)から分離されてカードスタッカ14からカード搬送路13に送り出される。
【0059】
揺動リンク98cは、長孔98dを介してカムギア98bに連結されているため、カムギア98bを正回転させると、揺動リンク98cが所定の旋回角度だけ前方に旋回した後、旋回方向が逆向きに切り換わる。そして、カムギア98bが1回転したときには、揺動リンク98cが
図5に示すホームポジションに戻る。従って、カムスライダ46およびスライダ96は、カードC1を所定距離だけ送り出した後、前進動作から後退動作に切り換わり、ホームポジション(退避位置46A/
図6の位置)に戻る。本例では、このように、DCモーター97およびカムギア98bの回転方向を切り換える必要がなく、DCモーター97およびカムギア98bを1方向に回転させるのみで揺動リンク98cを一定の旋回角度範囲で往復運動させ、カムスライダ46およびスライダ96を往復運動させて元の位置に戻すことができる。
【0060】
ここで、カード処理装置1は、カムスライダ46がホームポジションに戻ったことを検出するための不図示のフォトセンサを備えている。カムスライダ46には、ホームポジションにおいてこのフォトセンサによる検出位置に位置決めされる不図示の遮光部が設けられている。カード処理装置1は、カード送り出し動作において、カムスライダ46がホームポジションに戻ったことをフォトセンサの出力に基づいて検出して、DCモーター97を停止させる。その一方で、第1、第2搬送ローラー21、22の回転は継続することにより、カードC1を継続して送り出すことができる。
【0061】
このように、収納カード繰り出し機構90は、カード押し下げ機構40Bを押し下げ解除状態に切り換えるためのカムスライダ46を用いてカード係合爪91、92を支持するスライダ96をスライドさせており、収納カード繰り出し機構90によるカード送出動作に連動してカード押し下げ機構40Bを押し下げ解除状態に切り換えている。具体的には、カムスライダ46を退避位置46Aから保持位置46Cまでの範囲で往復移動させ、これに連結されたスライダ96を、押し出し前のカードに係合可能な第1位置96Aから、カード搬送路13Bの側にカードを押し出した第2位置96Bまでの範囲で往復移動させている。従って、DCモーター97を共通の駆動源として用いることができ、押圧ローラー43、44の押し下げ解除のために専用の駆動源を設ける必要がない。よって、個別に駆動源を配置する場合に比べて、シンプルで廉価な構成にすることができると共に、小型化にも有利である。
【0062】
また、本例では、カムスライダ46とスライダ96を遊びのある状態で連結し、且つ、スライダ96を遊びの範囲の一端側(装置後方側)に付勢することにより、カード送り出し動作と押し下げ解除動作が適切なタイミングで行われるように構成している。すなわち、最初はカムスライダ46のみを押し下げ解除位置46Bまで動かして収納カードC(14)を押し上げ、この間はスライダ96を停止させておき、その後にスライダ96を移動開始させてカード係合爪91、92によるカード送出動作を開始させることができる。よって、最上位のカードC1を確実に送出することができる。また、カード送り出し動作を行うにあたって、DCモーター97を正回転させ、カムスライダ46がホームポジションに戻ったときにDCモーター97を停止させるだけで良いため、制御が簡単である。
【0063】
また、収納カード繰り出し機構90は、カードC1の後端面に対して異なる位置で係合可能な一対のカード係合爪91、92を備えている。カードC1に反りなどの変形がある場合に、カード係合爪91、92の一方がカード後端面における変形している部分に係合できなくても、他方のカード係合爪をカード後端面における変形していない部分に係合させることができる。したがって、1枚ずつカードC1を押し出す動作を確実に行うことができる。
【0064】
そして、一対のカード係合爪91、92が共通のスライダ96に搭載され、共通の駆動機構(DCモーター97、動力伝達機構98)によって同期駆動される。このようにすると、個別にスライダおよび駆動機構を配置する場合に比べて、スライド機構をシンプルで廉価な構成にすることができる。また、一対のカード係合爪91、92を同期させてスライドさせることにより、カードC1が傾いた状態に押し出されて、カードC1の搬送を円滑に行うことができなくなるという不具合も回避できる。
【0065】
さらに、各カード係合爪91、92はカードC1のカード表面に対して接近および離れる方向に移動可能な状態でスライダ96に取り付けられ、圧縮コイルバネ93、94によってカード表面に押し付けられている。したがって、各カード係合爪91、92は常にカード表面に当接して、カード係合爪91、92とカードC1との相対位置が当該カードC1の変形の有無に拘わりなく常に一定に保持される。これにより、カード係合爪91、92を常にカード後端面に係合した状態に保持でき、カードC1の押し出し動作を確実に行うことができる。
【0066】
これに加えて、一対のカード係合爪91、92は、カード押し出し方向に直交する方向(上下方向)において対称の位置に配置されている。したがって、カードC1が上側あるいは下側に傾くことなく前方に向けて正しい姿勢で押し出されるので、カードを円滑に繰り出すことができる。
【0067】
(カード処理動作)
図9、
図10はカード処理装置1における待機状態からカード取り込み完了までの動作を示す説明図であり、
図9は待機状態から新たなカードの挿入によってカード挿入排出口の入口シャッターが開くまでの動作説明図、
図10はカード取り込み開始からカード取り込み完了までの動作説明図である。カード処理装置1は、電源オフ状態において、カードスタッカ14内に複数枚の収納カードC(14)が収納された状態にあるとき、電源がオンされると、
図6〜
図8に示した上記のカード送り出し動作を行い、送り出されたカードC1をカードリードライト位置に位置決めした待機状態に移行する。すなわち、電源がオンされると、収納カード繰り出し機構90により、カードスタッカ14内の最上位のカードC1を前方に押し出す。これと同時に、第1、第2搬送ローラー21、22を反時計回りに回転させ、カードC1をカード搬送路13に送り出す。カードC1の送り出し側の端面Cbが一対のフォトセンサ32、33の間に位置する状態にまで前進すると、当該カードC1の搬送が止まる。これにより、カードC1はカードリードライト位置に位置決めされる。この結果、
図9(a1)、(a2)に示す待機状態が形成される。この状態では、第1、第2搬送ローラー21、22の双方が、カードリードライト位置にあるカードC1に当接している。
【0068】
待機状態にあるカード処理装置1において、
図9(b1)、(b2)に示すように、カード挿入排出口12から新たなカードC2が挿入されると、当該カードC2の挿入が入口レバー31によって検知される。カード挿入が検知されると、カード搬送機構20が駆動され、カード搬送路13上のカードリードライト位置に保留されているカードC1を第1、第2搬送ローラー21、22によってカードスタッカ14の収納位置まで戻す。
【0069】
フォトセンサ35によってカードC1がカードスタッカ14内に戻ったことが検知されると、
図9(c1)、(c2)に示すように、入口シャッター26が開き、カードC2を第1搬送ローラー21のニップ位置まで挿入可能になる。カードC2を押し込むと、回転している第1搬送ローラー21によってカードC2が取り込まれ、カード搬送路13に沿って後側に向けて搬送される。
【0070】
ここで、カード処理装置1は、収納カード繰り出し機構90によるカード送り出し動作が終わるとカムスライダ46をホームポジション(退避位置46A)に戻し、カード押し下げ機構40Bの押圧ローラー43、44によって収納カードC(14)を押し下げて、後側搬送路面部分15aと最上位のカードC1との間に、カード搬送路13BからカードC2を送り込むための隙間を形成しておく。このため、取り込まれたカードC2を第1、第2搬送ローラー21、22によって後方に搬送すると、カードC2の送り込み側の先端部分は、予め形成されている隙間に進入し、カードスタッカ14内に挿入される。
図10(a1)、(a2)に示すように、カードC2の送り込み方向の後側の端面Cbが一対のフォトセンサ32、33の間に至ると、カード搬送が止まり、カードリードライト位置へのカード取り込みが完了する。このようにしてカードリードライト位置に取り込まれたカードC2に対し、情報のリードライトが行われる。
【0071】
カードリードライト位置に取り込まれたカードC2を更に後方に搬送すると、カードC2の送り込み方向の後側の端面Cbが押圧ローラー43、44の外周面に突き当たる。このとき、
図4に示したように、押圧ローラー43、44の外周面に対してカードC2が45°以下の角度で進入するため、カードC2は、第1、第2搬送ローラー21、22の搬送力により、
図10(b1)、(b2)に示すように、押圧ローラー43、44を圧縮コイルバネ47の付勢力に逆らって押し上げながら、押圧ローラー43、44と最上位のカードC1との間に進入する。その後、
図10(c1)、(c2)に示すように、フォトセンサ35によってカードC1がカードスタッカ14内に収納され終わったことが検知されると、カード搬送機構20が停止し、カードの収納が完了する。