(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フッ素樹脂が、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、および四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含む請求項1に記載の放熱部材。
前記オイルが、オートマチックトランスミッションフルード、エンジン油、ユニバーサル油、ギヤ油、油圧トランスミッション油、およびシリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の放熱部材。
前記熱伝導フィラーが、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、および酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の絶縁性フィラーである請求項1〜4のいずれか1項に記載の放熱部材。
前記熱伝導フィラーが、グラファイト、カーボンブラック、カーボン繊維、金属繊維、および金属粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性フィラーである請求項1〜4のいずれか1項に記載の放熱部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載の方法では、冷却性能は未だに不十分であった。それに対し、車両用モータのようなオイル環境下において使用可能な、優れた放熱特性を有する放熱部材があれば、車両用モータの冷却性能の向上のための有力な手段となり得ると考えられる。
【0006】
そこで本発明は、優れた放熱特性を有し、オイル環境下での使用に好適な放熱部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フッ素樹脂、および熱伝導フィラーを含む多孔質母材と、
前記多孔質母材の孔内に含まれるオイルと
を含む放熱部材であって、
前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレンを含む放熱部材である。
【0008】
前記フッ素樹脂は、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、および四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。
【0009】
本発明の放熱部材は、前記オイルを1質量%以上含むことが好ましい。前記オイルは、オートマチックトランスミッションフルード、エンジン油、ユニバーサル油、ギヤ油、油圧トランスミッション油、およびシリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
本発明の放熱部材の好ましい一実施態様においては、前記熱伝導フィラーは、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、および酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の絶縁性フィラーである。本発明の放熱部材の別の好ましい実施態様においては、前記熱伝導フィラーは、グラファイト、カーボンブラック、カーボン繊維、金属繊維、および金属粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性フィラーである。
【0011】
本発明の放熱部材は、その保管時および流通時においては、酸素バリアフィルムによりパック包装されていることが好ましい。
【0012】
本発明はまた、上記の放熱部材を用いることを特徴とする車両用モータの冷却方法である。
【0013】
本発明はまた、ポリテトラフルオロエチレンを含むフッ素樹脂、熱伝導フィラー、および成形助剤を含む複数のシート状成形体を重ね合わせて圧延して圧延積層シートを得る工程(1)、
得られる圧延積層シートから前記成形助剤を除去して多孔質母材を得る工程(2)、および
得られる多孔質母材にオイルを含浸させる工程(3)を含む放熱部材の製造方法である。
【0014】
本発明の製造方法は、前記工程(2)と前記工程(3)の間に、多孔質母材を加圧成形する工程(4)をさらに含んでいてもよい。
【0015】
前記工程(3)を、前記多孔質母材の孔内の空気を除去した後、前記多孔質母材をオイル中に浸漬し、当該オイルを加圧することによって行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、優れた放熱特性を有し、オイル環境下での使用に好適な放熱部材が提供される。従って車両用モータ用の放熱部材等として極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の放熱部材は、フッ素樹脂、および熱伝導フィラーを含む多孔質母材と、当該多孔質母材の孔内に含まれるオイルとを含む。
【0019】
本発明の放熱部材は、フッ素樹脂を含む多孔質母材を用いることにより、高い耐オイル性が付与されている。
【0020】
フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。フッ素樹脂がPTFEを含むことにより、熱伝導フィラーを高い含有率で含む多孔質母材を作製することが容易となる。フッ素樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲で、PTFE以外のフッ素樹脂を含んでいてもよい。PFTE以外のフッ素樹脂としては、溶融性フッ素樹脂が挙げられる。フッ素樹脂が、溶融性フッ素樹脂を含む場合には、熱伝導フィラーを高い含有率で含む多孔質母材を作製することがより容易となり、例えば、フッ素樹脂および熱伝導フィラーを含む材料をシート化するのが容易となる。当該溶融性フッ素樹脂としては、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、および四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。なお、PFAおよびFEPには融点が異なる様々な製品が存在するが、多孔質母材への加工方法およびその加工条件に応じて適宜選択すればよい。
【0021】
フッ素樹脂に占める溶融性フッ素樹脂の割合に関し、下限については、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、上限については、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0022】
本発明の放熱部材は、熱伝導フィラーによって高い熱伝導性が付与される。ここで、熱伝導フィラーとは、熱伝導率が1W/mK以上、好ましくは100W/mK以上のフィラーのことをいう。熱伝導フィラーは、放熱部材の用途に合わせてその種類を適宜選択すればよい。例えば、放熱部材に高い絶縁性を付与したい場合には、体積抵抗率が10
14Ω・cm以上の絶縁性フィラーを用いればよく、好適には、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、および酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の絶縁性フィラーが用いられる。ハイブリッド車用モータ、発電機内などにおいては高電圧であり大きな過渡電流が発生するような部位があり、絶縁性フィラーを用いて高い絶縁性が付与された放熱部材は、このような部位での使用に有利である。
【0023】
一方、放熱部材に高い導電性を付与したい場合には、体積抵抗率10
6Ω・cm以下の導電性フィラーを用いればよく、好適には、グラファイト、カーボンブラック、カーボン繊維、金属繊維(例、アルミ繊維、銅繊維等)、および金属粒子(例、金、銀、銅、パラジウム、白金等の粒子)からなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性フィラーが用いられる。
【0024】
熱伝導フィラーの形状は、特に限定されず、球状および非球状のフィラーを用いることができ、圧延によって面内方向に整列させることによって熱伝導異方性を付与することができることから、平板状および鱗片状が好ましい。また、同様の理由から、熱伝導フィラー自体が熱伝導異方性を有している方が好ましい。また、厚み方向の熱伝導率を向上させる場合には、各社から販売されている凝集形状の熱伝導フィラーを用いてもよい。
【0025】
熱伝導フィラーは、脱落することなくフッ素樹脂マトリックスに担持され、かつ、得られる放熱部材に十分な熱伝導性を付与することができればよいため、その粒径は特には限定されないが、例えば粒径0.2〜500μmのものが好ましく、0.2〜50μmのものがより好ましい。ただし、熱伝導フィラーは、高熱伝導化においては、粒径が大きい方が好ましい。これは、熱伝導フィラーの含有量が同じであっても、粒径が大きい方が界面の数が少なくなり、熱抵抗を低くできるためである。なお、ここでの粒径とは、レーザ回折・散乱式粒子径・粒度分布測定装置(例、日機装株式会社製「マイクロトラック」)によって測定される値のことである。
【0026】
熱伝導フィラーの含有量は、多孔質母材の全質量に対し、50〜95質量%の範囲にあることが好ましく、70〜90質量%の範囲にあることがより好ましく、80〜90質量%の範囲にあることがさらに好ましい。フッ素樹脂の含有率は、多孔質母材の全質量に対し、5〜50質量%の範囲にあることが好ましく、10〜30質量%の範囲にあることがより好ましく、10〜20質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0027】
多孔質母材は、フッ素樹脂、および熱伝導フィラー以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、フッ素樹脂以外の樹脂などが挙げられ、当該樹脂としては、例えば、一般的に用いられている、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂を用いることができる。当該成分の含有量は、多孔質母材の全質量に対し、10質量%以下であることが好ましい。
【0028】
本発明に用いられる母材では、フッ素樹脂マトリックス内に熱伝導フィラーが分散しており、この母材は、多孔質構造を有する。母材の有する多孔質構造については特に制限はない。多孔質構造は、例えば、後述のように、フッ素樹脂、熱伝導フィラーおよび揮発性材料(成形助剤)を含む成形体を作製し、揮発性材料を除去することによって得ることができる。
【0029】
本発明の放熱部材は、オイル環境下での使用が想定されており、環境下にオイルが存在することを逆手にとり、本発明の放熱部材においては、オイルが、多孔質母材の孔内に入り込んでいる。多孔質母材の孔内の空気がオイルにより置換されることにより、多孔質母材単体よりも高い放熱特性が得られる。
【0030】
オイルは、空気よりも熱伝導率が高いものである限り特に制限なく用いることができ、使用環境のオイルと同種または類似のオイルを用いることが好ましい。例えば、車両用モータ用途においては、オイルは、潤滑オイルとして使用可能なものを好適に用いることができる。具体的には、ATF、エンジン油、ユニバーサル油、ギヤ油、油圧トランスミッション油、およびシリコーンオイルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好適に用いられる。このようなオイルを含む通気部材を用いた場合には、車両用のモータ内で使用した場合に、通気部材に含まれるオイルによって、車両用のモータの潤滑が阻害されることがないようにすることができる。また上記のうち、オイル自体の冷却性能が高いことから、ATF、エンジン油が特に好ましい。
【0031】
オイルは、放熱部材の全質量に対し、1質量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは1〜80質量%、さらに好ましくは5〜80質量%含まれる。
【0032】
本発明の放熱部材の形状には特に制限はないが、ハンドリング性の高さから、シート状であることが好ましい。このとき、本発明の放熱部材の厚みは、例えば、0.05mm〜3mmの範囲であり、好ましくは、0.1mm〜1mmの範囲である。
【0033】
次に、本発明の放熱部材の製造方法について説明する。本発明の放熱部材は、PTFEを含むフッ素樹脂、熱伝導フィラー、および成形助剤を含む複数のシート状成形体を重ね合わせて圧延して圧延積層シートを得る工程(1)、得られる圧延積層シートから前記成形助剤を除去して多孔質母材を得る工程(2)、および得られる多孔質母材にオイルを含浸させる工程(3)を含む方法によって好適に製造される。
【0034】
工程(1)で用いられるPTFEを含むフッ素樹脂、熱伝導フィラー、および成形助剤を含む複数のシート状成形体は、PTFEを含むフッ素樹脂、熱伝導フィラー、および成形助剤を混合して、ペースト状の混合物をまず作製し、これをシート状に成形することによって得ることができる。
【0035】
PTFEを含むフッ素樹脂、熱伝導フィラー、および成形助剤の混合は、PTFEの繊維化を極力抑制する条件で行うことが望ましい。具体的には、PTFEにせん断を加えないように混合装置の回転数を小さくし、混合時間を短くして、混錬せずに混合することが望ましい。材料を混合する段階でPTFEに繊維化がおこると、圧延する際に、既に形成したPTFEの繊維が切断されてPTFEの網目構造が破壊されてしまう可能性があり、シート形状を保つことが困難になる場合がある。
【0036】
成形助剤には、例えばドデカンやデカンなどの飽和炭化水素を使用できる。成形助剤は、混合物の全質量に対して20〜55質量%となるように添加すればよい。
【0037】
これらの混合物を、押出成形、ロール成形等により成形することにより、シート状成形体を得ることができる。シート状成形体の厚みは、例えば0.5〜5mmである。このようなシート状成形体を複数枚準備する。
【0038】
続いて、これら複数のシート状成形体を重ね合わせ(積層し)、圧延して圧延積層シートを得る。用いるシート状成形体の枚数は、2枚以上であれば特に限定はなく、多孔質母材となる最終的な圧延積層シートを構成するシート状成形体の層の数を考慮して適宜決定すればよく、例えば、2〜10枚程度とする。このように当該製造方法は、積層体の圧延を含むが、この積層および圧延によって、シート強度を向上させるとともに、熱伝導フィラーをフッ素樹脂マトリックスへ強固に固定することができ、熱伝導フィラーの配合率が高く、かつ可撓性のあるシートを作製することができる。
【0039】
当該製造方法においては、当該工程(1)の後に、シート状成形体の圧延積層シートを複数重ね合わせて圧延する、または、シート状成形体の少なくとも1枚の圧延積層シートとフッ素樹脂、熱伝導フィラーおよび成形助剤を含む少なくとも1枚のシート状成形体を重ね合わせて圧延する工程(1’)をさらに行うことが好ましい。この工程は、繰り返し行うことが好ましい。圧延初期(含まれるシート状成形体の層数が少ない段階)は、シートの強度が低く高倍率の圧延に耐えることが困難であるが、積層および圧延を繰り返すにしたがって圧延倍率は上がり、シート強度がより高くなり、また、熱伝導フィラーがフッ素樹脂マトリックスへより強固に固定される。高い強度を実現するために、シート状成形体およびシート状成形体の圧延積層シートは、2枚ずつ圧延することが望ましい。
【0040】
工程(1)および工程(1’)の実施形態の例を以下に説明する。まず、複数(例えば2〜10枚)のシート状成形体を準備する。次に、この複数のシート状成形体を積層し、この積層体を圧延して圧延積層シート(第1の圧延積層シート)を得る(工程(1))。このようにして得られる第1の圧延積層シートをさらに複数(例えば2〜10枚)準備して積層し、この積層体を圧延して、圧延積層シート(第2の圧延積層シート)を得る(工程(1’))。このようにして得られる第2の圧延積層シートをさらに複数(例えば2〜10枚)準備して積層し、この積層体を圧延して、圧延積層シート(第3の圧延積層シート)を得る(工程(1’)の繰り返し)。さらに、複数の第3の圧延積層シートを準備し、同様に積層および圧延を行い、目的とする多孔質母材となる圧延積層シートが含むシート状成形体の構成層数になるまで、工程(1’)を繰り返す。この実施態様では、シート状成形体の積層数が同じである圧延積層シート同士(第1の圧延積層シート同士、第2の圧延積層シート同士など)を重ね合わせて圧延している。別の実施態様では、工程(1’)で、シート状成形体の積層数が互いに異なる圧延積層シート同士を重ね合わせて圧延する。さらに別の実施態様では、工程(1’)で、圧延積層シートにシート状成形体を重ね合わせて圧延する。
【0041】
工程(1’)を行う際には、圧延方向を変更することが好ましい。このとき、工程(1)の圧延方向と、工程(1’)の圧延方向が直交していることが好ましい。さらに、工程(1’)を繰り返す際にも、圧延方向を変更(特に90°変更)することが好ましい。このように方向を変えながら圧延することによって、PTFEのネットワークが縦横に伸び、シート強度のさらなる向上および熱伝導フィラーのフッ素樹脂マトリックスへのより強固な固定が可能となる。
【0042】
多孔質母材となる最終的な圧延積層シートの構成層数を、当該圧延積層シートに含まれるシート状成形体の層数で表すとき、構成層数は、例えば2〜5000層とすることができる。シート強度を向上させるためには、構成層数は200層以上が好ましい。一方、薄膜化(例えば1mm以下のシートとする)のためには、構成層数は1500層以下が好ましい。なお、構成層数を多くするほど、得られるシートの強度は高くなるが、界面剥離の可能性も高くなる。
【0043】
以上のようにして、最終的に厚みが好ましくは0.05mm〜3mm程度の圧延積層シートを得る。
【0044】
工程(2)は、使用する成形助剤に応じ、公知方法に従って実施することができる。例えば、圧延して得られるシートを加熱して、成形助剤を乾燥除去すればよい。これによって、多孔質母材が得られる。
【0045】
工程(3)は、例えば、多孔質母材をオイル中に浸漬することによって行うことができる。工程(3)は、多孔質母材にオイルを短時間で高い含浸率で含浸させることが容易であることから、多孔質母材の孔内の空気を除去した後、多孔質母材をオイル中に浸漬し、オイルを加圧することによって行うことが好ましい。このような操作は、真空高圧含浸装置を用いて行うことができる。
【0046】
真空高圧含浸装置を用いて含浸を行う場合の一例を
図1に示す。真空高圧含浸装置1は、耐圧チャンバー2、試料カゴ4、容器6、および昇降ユニット7を有している(
図1(a))。まず、試料カゴ4に多孔質母材3、および容器6にオイル5を入れ、真空高圧含浸装置1を減圧する。減圧することによって、耐圧チャンバー2内の空気が除去され、多孔質母材3の孔内の空気が除去される。続いて、昇降ユニット7を降下させることにより、試料カゴ4を容器6内に投入し、多孔質母材3をオイル5中に浸漬する(
図1(b))。浸漬後、真空高圧含浸装置1に圧縮空気を送り込み、耐圧チャンバー2内を加圧する。これによりオイルが加圧されて、オイル5の多孔質母材3への含浸が促進される。その後、昇降ユニット7を上昇させ、試料カゴ4から、オイル5が含浸した多孔質母材3を取り出す。
【0047】
工程(2)と工程(3)の間に、多孔質母材を加圧成形する工程(4)をさらに実施してもよい。工程(2)を実施した後の多孔質母材の気孔率は、通常、50〜80%程度であるが、工程(4)を実施することにより、多孔質母材の気孔率が40%以下にまで下がり、また、熱伝導フィラー同士がより密に存在するようになり、放熱部材の熱抵抗をさらに小さくすることができる。
【0048】
加圧成形は、例えば、温度320〜400℃、圧力0.05〜50MPaで1〜15分間、プレスすることにより行うことができる。
【0049】
以上のようにして、本発明の放熱部材を得ることができるが、本発明の放熱部材の製造方法は上記に限られるものではない。
【0050】
本発明の放熱部材は、優れた放熱特性を有する。例えば、25cm
2・K/W以下の熱抵抗値を達成することができ、熱伝導フィラーの種類および含有量を調節することによって、5cm
2・K/W以下、さらには1cm
2・K/W以下の熱抵抗値を達成することも可能である。
【0051】
本発明の放熱部材は、耐オイル性が高いフッ素樹脂、およびオイルを使用しているため、オイル環境下での使用に好適である。従って、車両(例、ハイブリッド自動車、電気自動車等)用モータ用の放熱部材に最適であり、当該放熱部材を用いることによって、車両用モータを長期にわたって高効率で冷却することができる。車両用モータ用の放熱部材として使用する場合には、車両用モータ内の空気層を本発明の放熱部材で置き換えればよい。例えば、ステータとケースの間、ステータとコイルの間、ケースとコイルの間、ステータとステータの間等に空気層があった場合には、これらの間に本発明の放熱部材を挟持させればよく、車両用モータ内での使用形態はこれに限られない。また、本発明の放熱部材は、車両用モータ以外(例、発電機、電子機器等)にももちろん使用可能である。
【0052】
なお、本発明の放熱部材は、オイルを含んでいるため、その保管時および流通時においては、酸素バリアフィルムによりパック包装されている形態とすることが好ましい。酸素バリアフィルムとしては、公知のものを用いることができ、放熱部材に含まれるオイルに対する耐性を有するものを適宜選択すればよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0054】
実施例1
窒化ホウ素粉末(水島合金鉄株式会社製、品番「HP−40」)と、PTFE粉末(ダイキン工業社製、品番「F104U」)と、PFA粉末(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、品番「MP−10」)とを、質量比80:10:10の割合で混合した。この混合物100質量部に対してデカン60質量部をさらに加えて混練することによって、ペースト状の混合物を得た。材料の混合には、V型ミキサーを用い、回転数10rpm、温度約25℃の条件で1分間混合を行った。
【0055】
このようにして得られたペースト状の混合物を圧延ロールで圧延することによって、厚みが3mmのシート状成形体を2枚形成した。次に、2枚の当該シート状成形体を重ねて圧延することによって、積層数が2である第1の積層シートを形成した。次に、第1の積層シートを切断して2つに分け、それらを重ね合わせて圧延することによって、積層数が4である第2の積層シートを形成した。これらの切断、重ね合わせ、および圧延という一連の工程を、圧延方向を90°ずつ変更しながら5回繰り返した。その積層シートを複数回圧延することによって、厚みが約0.5mmの圧延積層シートとした。
【0056】
次に、得られた圧延積層シートを150℃で20分間加熱して、成形助剤を除去し、シート状多孔質母材を得た。
【0057】
図1に示すタイプの真空高圧含浸装置(ミカドテクノス株式会社製)の容器内にATF(トヨタ純正オートフルードWS 08886−02305)を加え、試料カゴに50mm角のシート状多孔質母材をセットした。真空高圧装置内を約0.0073MPaまで減圧し5分間保持した後、シート状多孔質母材をATFに浸漬した。真空高圧装置内に圧縮空気を送り込み、2.9MPaまで加圧し、5分間保持することによって、ATFをシート状多孔質母材に含浸させ、放熱部材を得た。放熱部材の厚みは0.5mm、オイルの含有量は、放熱部材の全質量に対し、42質量%であった。
【0058】
実施例2
実施例1と同様にして得られたシート状多孔質母材を、温度380℃、圧力5MPaで5分間プレスしてから含浸操作を行った以外は実施例1と同様にして実施例2の放熱部材を得た。実施例2の放熱部材の厚みは0.25mm、オイルの含有量は、放熱部材の全質量に対し、16質量%であった。
【0059】
実施例3
窒化ホウ素粉末をカーボンブラック粉末(東海カーボン株式会社製、品番「#4500」)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例3の放熱部材を得た。実施例3の放熱部材の厚みは0.75mm、オイルの含有量は、放熱部材の全質量に対し、56質量%であった。
【0060】
比較例1
オイルの含浸操作を行わなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1の放熱部材を得た。比較例1の放熱部材の厚みは0.5mmであった。
【0061】
比較例2
オイルの含浸操作を行わなかった以外は実施例2と同様にして、比較例2の放熱部材を得た。比較例2の放熱部材の厚みは0.25mmであった。
【0062】
比較例3
オイルの含浸操作を行わなかった以外は実施例3と同様にして、比較例3の放熱部材を得た。比較例3の放熱部材の厚みは0.75mmであった。
【0063】
以上のように作製された実施例および比較例の放熱部材について、熱抵抗および絶縁破壊電圧を以下の方法により測定した。測定結果を表1に示す。
【0064】
(熱抵抗)
熱抵抗の測定は、
図2に示す熱特性評価装置10を用いて行った。当該熱特性評価装置は、上部に、発熱体(ヒーターブロック)11と下部に放熱体(冷却水が内部を循環するように構成された冷却ベース板)12を有しており、発熱体11および放熱体12は、それぞれ1辺が20mmの立方体となるように形成されたアルミニウム製(A5052、熱伝導率:140W/m・K)のロッド13を有している。一対のロッド13の側部には、発熱体11および放熱体12を貫通する一対の圧力調整用ネジ14が備えられている。圧力調整用ネジ14と発熱体11の間には、ロードセル15が備えられており、これにより、圧力調整用ネジ14を締めこんだ際の圧力が測定される。放熱体12側のロッド13の内部には、接触式変位計17の3本のプローブ16(直径1mm)が設置されている。プローブ16の上端部は、試料(放熱部材)がロッド13間に配置されていないときには、上側(発熱体11側)のロッド13の下面に接触した状態になっており、上下のロッド13間の間隔(試料の厚み)を測定可能に構成されている。発熱体11および上下のロッド13の背面側には、温度計19の温度センサー18が取り付けられている。具体的には、発熱体11の1箇所と、各ロッド13の上下方向に等間隔で5箇所に、温度センサー18が取り付けられている。
【0065】
測定はまず、一対のロッド13で上下から、各実施例及び比較例の放熱部材20(20mm×20mm)を挟み込んだ。圧力調整用ネジ14を締めこんで、放熱部材20に圧力を加え、発熱体11の温度を150℃に設定するともに、放熱体12に20℃の冷却水を循環させた。そして、発熱体11および上下のロッド13の温度が安定した後、上下のロッド13の温度を各温度センサー18で測定し、上下のロッド13の熱伝導率(W/m・K)と温度勾配から放熱部材20を通過する熱流束を算出するとともに、上下のロッド13と放熱部材20との界面の温度を算出した。そして、これらを用いて当該圧力における熱抵抗(cm
2・K/W)を熱伝導率方程式(フーリエの法則)を用いて算出した。なお、放熱部材20に125、250、および500kPaの圧力を加えた場合について熱抵抗を求めた。
Q=−λgradT
R=L/λ
Q:単位面積あたりの熱流速
gradT:温度勾配
L:試料(放熱部材)の厚み
λ:熱伝導率
R:熱抵抗
【0066】
(絶縁破壊電圧:B.D.V)
JIS K 6245に準拠して求めた。
【0067】
【表1】
【0068】
以上の結果より、本発明の放熱部材は、優れた放熱特性を有することがわかる。また、熱伝導フィラーとして絶縁性フィラーを用いた場合には、高い絶縁性を有することがわかる。