特許第5753070号(P5753070)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5753070フォーカルプレーンシャッタ及びそれを備えた光学機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753070
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】フォーカルプレーンシャッタ及びそれを備えた光学機器
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/36 20060101AFI20150702BHJP
【FI】
   G03B9/36 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-271263(P2011-271263)
(22)【出願日】2011年12月12日
(65)【公開番号】特開2013-122541(P2013-122541A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2013年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】396004981
【氏名又は名称】セイコープレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100135622
【弁理士】
【氏名又は名称】菊地 挙人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝志
(72)【発明者】
【氏名】三上 誠
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 翔一
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−035923(JP,A)
【文献】 特開平09−269525(JP,A)
【文献】 特開平07−110509(JP,A)
【文献】 特開2001−075147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板開口を有した基板と、
背面板開口を有して前記基板との間に羽根室を形成する背面板と、
前記羽根室内に収納され、前記基板開口及び背面板開口を開閉する幕と、
前記基板に対して揺動可能に支持された基端を有し前記幕を駆動するアームと、
前記幕と前記アームとを連結する、第1、第2、及び第3連結ピンを含む複数の連結ピンと、を備え、
前記第2連結ピンは、前記第1連結ピンと前記アームの前記基端との間に位置し、
前記第3連結ピンは、前記2連結ピンと前記アームの前記基端との間に位置し、
前記第1連結ピンは、前記複数の連結ピンのうち前記アームの最も先端側に位置し、
前記第1連結ピンと前記アームの先端とは、光軸方向から見て前記基板開口及び背面板開口内に位置可能であり、
前記アームの表面からの前記第2連結ピンの高さは、前記アームの前記表面からの前記第1連結ピンの高さよりも高く、
前記アームの前記表面からの前記第3連結ピンの高さは、前記アームの前記表面からの前記第2連結ピンの高さよりも低く、
光軸方向から見て前記第1連結ピンが前記背面板開口の縁と交差する際には、前記第2連結ピンの少なくとも一部は前記背面板開口以外の前記背面板の部分と重なっている、フォーカルプレーンシャッタ。
【請求項2】
基板開口を有した基板と、
背面板開口を有して前記基板との間に羽根室を形成する背面板と、
前記羽根室内に収納され、前記基板開口及び背面板開口を開閉する幕と、
前記基板に対して揺動可能に支持された基端を有し前記幕を駆動するアームと、
前記幕と前記アームとを連結する、第1、第2、及び第3連結ピンを含む複数の連結ピンと、を備え、
前記第2連結ピンは、前記第1連結ピンと前記アームの前記基端との間に位置し、
前記第3連結ピンは、前記2連結ピンと前記アームの前記基端との間に位置し、
前記第1連結ピンは、前記複数の連結ピンのうち前記アームの最も先端側に位置し、
前記第1連結ピンと前記アームの先端とは、光軸方向から見て前記基板開口及び背面板開口内に位置可能であり、
前記アームの表面からの前記第2連結ピンの高さは、前記アームの前記表面からの前記第1連結ピンの高さよりも高く、
前記アームの前記表面からの前記第3連結ピンの高さは、前記アームの前記表面からの前記第2連結ピンの高さよりも低く、
光軸方向から見て前記第1連結ピンが前記基板開口の縁と交差する際には、前記第2連結ピンの少なくとも一部は前記基板開口以外の前記基板の部分と重なっている、フォーカルプレーンシャッタ。
【請求項3】
前記幕は、前記基板開口及び背面板開口を露出作動時に開放する先幕である、請求項1のフォーカルプレーンシャッタ。
【請求項4】
前記幕は、前記基板開口及び背面板開口を露出作動時に閉鎖する後幕である、請求項2のフォーカルプレーンシャッタ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかのフォーカルプレーンシャッタを備えた光学機器。
【請求項6】
前記基板は、被写体側に配置されている、請求項5の光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカルプレーンシャッタ及びそれを備えた光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板に形成された開口を開閉する幕を備えたフォーカルプレーンシャッタが開示されている。このようなフォーカルプレーンシャッタは、基板に対して揺動可能に支持され幕を駆動するアームを備え、アームと幕とは複数のピンにより連結されている。
【0003】
光学機器の一例であるカメラでは、被写体側から見て光軸方向にレンズ、シャッタ、撮像素子の順に配置された構成となっている場合が多い。ここで、カメラを光軸方向に薄型化しようとすると、シャッタとシャッタに隣接するカメラの構成部品である、撮像素子若しくは撮像素子前面のフィルタ又はレンズ等とは極力近づけて配置する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−235352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
幕が移動する場合、幕及びアームが撓むおそれがある。幕が移動の際に撓むと、幕が開口から飛び出すように撓み、アームと幕とを連結しているピンが開口の縁に当接するおそれがある。ピンが開口の縁に当接すると、幕の移動に影響を与え、所望の幕の移動速度が得られないおそれがある。
【0006】
最近では、撮像素子の性能向上に伴いシャッタスピードの高速化が求められている。高速化されたシャッタをシャッタに隣接するカメラの構成部品と近づけて配置した場合、シャッタ羽根のアームの撓みによって幕を枢支しているピンがシャッタ外形から飛び出す恐れがあり、その結果、幕やピンがカメラの構成部品と接触して傷を付けてしまうおそれがあった。この課題を解決するためにはシャッタとシャッタに隣接するカメラの構成部品との隙間をあけて配置しなければならず、カメラを小型化することができない。
【0007】
そこで本発明は、幕の移動速度のばらつきが抑制され、光学機器の構成部品に近接して配置することが可能なフォーカルプレーンシャッタ及びそれを備えた光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、基板開口を有した基板と、背面板開口を有して前記基板との間に羽根室を形成する背面板と、前記羽根室内に収納され、前記基板開口及び背面板開口を開閉する幕と、前記基板に対して揺動可能に支持された基端を有し前記幕を駆動するアームと、前記幕と前記アームとを連結する、第1、第2、及び第3連結ピンを含む複数の連結ピンと、を備え、前記第2連結ピンは、前記第1連結ピンと前記アームの前記基端との間に位置し、前記第3連結ピンは、前記2連結ピンと前記アームの前記基端との間に位置し、前記第1連結ピンは、前記複数の連結ピンのうち前記アームの最も先端側に位置し、前記第1連結ピンと前記アームの先端とは、光軸方向から見て前記基板開口及び背面板開口内に位置可能であり、前記アームの表面からの前記第2連結ピンの高さは、前記アームの前記表面からの前記第1連結ピンの高さよりも高く、前記アームの前記表面からの前記第3連結ピンの高さは、前記アームの前記表面からの前記第2連結ピンの高さよりも低く、光軸方向から見て前記第1連結ピンが前記背面板開口の縁と交差する際には、前記第2連結ピンの少なくとも一部は前記背面板開口以外の前記背面板の部分と重なっている、フォーカルプレーンシャッタによって達成できる。
また、上記目的は、基板開口を有した基板と、背面板開口を有して前記基板との間に羽根室を形成する背面板と、前記羽根室内に収納され、前記基板開口及び背面板開口を開閉する幕と、前記基板に対して揺動可能に支持された基端を有し前記幕を駆動するアームと、前記幕と前記アームとを連結する、第1、第2、及び第3連結ピンを含む複数の連結ピンと、を備え、前記第2連結ピンは、前記第1連結ピンと前記アームの前記基端との間に位置し、前記第3連結ピンは、前記2連結ピンと前記アームの前記基端との間に位置し、前記第1連結ピンは、前記複数の連結ピンのうち前記アームの最も先端側に位置し、前記第1連結ピンと前記アームの先端とは、光軸方向から見て前記基板開口及び背面板開口内に位置可能であり、前記アームの表面からの前記第2連結ピンの高さは、前記アームの前記表面からの前記第1連結ピンの高さよりも高く、前記アームの前記表面からの前記第3連結ピンの高さは、前記アームの前記表面からの前記第2連結ピンの高さよりも低く、光軸方向から見て前記第1連結ピンが前記基板開口の縁と交差する際には、前記第2連結ピンの少なくとも一部は前記基板開口以外の前記基板の部分と重なっている、フォーカルプレーンシャッタによって達成可能である。
【0009】
これにより、アームが撓んだ場合であっても第2連結ピンが基板に当接して、アームの撓みを抑制することができる。これにより、第1連結ピンが開口の縁に当接することが抑制されるので幕の移動速度のばらつきが抑制される。また、幕や第1連結ピンのシャッタ外形への飛び出しが抑制されるため、シャッタに隣接する光学機器の構成部品に近接して配置することができる。
【0010】
上記目的は、上記フォーカルプレーンシャッタを備えた光学機器によっても達成できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、幕の移動速度のばらつきが抑制され、光学機器の構成部品に近接して配置することが可能なフォーカルプレーンシャッタ及びそれを備えた光学機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施例のフォーカルプレーンシャッタの正面図である。
図2図2は、本実施例のフォーカルプレーンシャッタの正面図である。
図3図3は、半開状態のフォーカルプレーンシャッタを示した図である。
図4図4は、図3のA−A断面図である。
図5図5は、図3のB−B断面図である。
図6図6は、ピンの比較図である。
図7図7は、本実施例とは異なるフォーカルプレーンシャッタの説明図である。
図8図8は、本実施例とは異なるフォーカルプレーンシャッタの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して実施例を説明する。図1、2は、本実施例のフォーカルプレーンシャッタ1の正面図である。図1、2に示すように、フォーカルプレーンシャッタ1は、基板開口11(以下、開口11)を有した基板10、開口11及び後述の背面板開口を開閉する先幕20A、先幕20Aを駆動するためのアーム31a及び補助アーム32a、を有している。尚、図1、2には示していないが、アーム31aを駆動するための駆動源が設けられている。駆動源は、例えば、電磁石とバネとを用いたものである。詳しくは後述する。尚、駆動源はこのような構成に限定されずに、例えば、所定の範囲を回転可能なアクチュエータを利用したものであってもよい。
【0014】
先幕20Aは、複数の羽根21a〜24aから構成される。基板10は合成樹脂製であり、矩形状の開口11を有している。羽根21a〜24aは合成樹脂製であり、薄く形成されている。また、アーム31a、補助アーム32aは薄板状の金属で構成されている。これらアーム31a、補助アーム32aは、それぞれ基板10に揺動自在に支持されている。尚、詳しくは後述するが、基板10には背面板開口11a(以下、開口11a)を有した背面板10aが固定されており、先幕20A、アーム31a、31bは、基板10と背面板10aとの間に形成された羽根室内に収納されている。図1、2、3は背面板10a側から見たフォーカルプレーンシャッタ1を示している。
【0015】
背面板10aは合成樹脂製であり、矩形状の開口11aが形成されている。被写体光は、開口11、11aを介して撮像素子に入射する。本実施例の場合、光軸側からみて開口11aは、開口11に対して若干、幕の移動方向とは直交する方向に延長した矩形状となっている。ここで、開口11aの形状は、隣接する撮像素子の形状や幕の移動軌跡と開口11aの縁部との関係によって決まるものであり矩形状とは限らない。また、本実施例において、開口11や開口11aを開閉するとは、被写体光が開口11、11aを介して撮像素子に入射するのを許容するか否かの動作を行うことをいう。
【0016】
フォーカルプレーンシャッタ1は、図示を省略してあるが、開口11及び開口11aを開閉する後幕、後幕を駆動するためのアーム及び補助アーム、アームを駆動するための駆動源が設けられている。後幕も、先幕同様、複数の羽根から構成されており、後幕、後幕を駆動するためのアーム及び補助アームは、基板10と背面板10aとの間に形成された羽根室内に収納されている。
【0017】
図1は、先幕20Aが開口11を閉鎖した全閉状態のフォーカルプレーンシャッタ1を示している。図2は、先幕20Aが開口11から退避して開口11を開放した全開状態のフォーカルプレーンシャッタ1を示している。先幕20Aが開口11を閉鎖している場合には、先幕20Aの羽根21a〜24aは展開状態にある。先幕20Aが開口11から退避した場合には、羽根21a〜24aは開口11から退避した位置で重畳状態にある。
【0018】
先幕20Aは、複数の連結ピンP1〜P4によりアーム31aに連結されている。連結ピンP1〜P4は金属製である。羽根21aとアーム31aとは、連結ピンP1によって回転可能に連結されている。羽根22aとアーム31aとは、連結ピンP2によって回転可能に連結されている。羽根23aとアーム31aとは、連結ピンP3によって回転可能に連結されている。羽根24aとアーム31aとは、連結ピンP4によって回転可能に連結されている。図示は省略してあるが、羽根21a〜24aも上記のピンと同様の機能を有した複数のピンにより補助アーム32aと回転可能に連結されている。従って、羽根21a〜24aと、アーム31a、補助アーム32aは、平行リンク機構として機能する。アーム31aが揺動することにより、先幕20Aが移動して開口11を開閉する。
【0019】
連結ピンP1〜P4は、アーム31aの先端側から基端側に順に設けられている。換言すれば、連結ピンP1はアーム31aの最も先端側に位置し、連結ピンP4はアーム31aの最も基端側に位置している。連結ピンP2〜P4は、連結ピンP1とアーム31aの基端との間に位置している。アーム31aの基端は、基板10に形成された軸13に回転可能に嵌合した孔が設けられている。即ち、アーム31aの基端は、アーム31aの揺動の支点となっている。連結ピンP1は、複数の連結ピンP1〜P4のうちアーム31aの基端から最も離れた位置にあり、連結ピンP2は、複数の連結ピンP1〜P4のうち連結ピンP1に最も近い位置にある。尚、不図示の後幕も先幕と同様の構成を有している。
【0020】
基板10には、アーム31aを駆動するための不図示の先幕駆動レバーが設けられている。先幕駆動レバーは、基板10に形成された軸13を中心にして揺動可能に支持されている。また、先幕駆動レバーは、アーム31aに形成された嵌合孔36に嵌合した突起部を有している。基板10に形成された円弧状の逃げ溝16内をこの突起部が移動するように先幕駆動レバーは揺動する。突起部が逃げ溝16の端部に当接することにより、先幕駆動レバーの揺動範囲が制限されている。
【0021】
基板10上には先幕駆動レバー用の不図示の電磁石が固定されている。先幕駆動レバーは、鉄片を保持し、鉄片が電磁石に当接する位置から退避する位置の間を揺動する。先幕駆動レバーは、鉄片が電磁石から離れる方向にバネにより付勢されている。従って、例えば不図示のセット部材により、先幕駆動レバーの鉄片が電磁石に当接するまでバネの付勢力に抗して移動させられる。電磁石が通電されると電磁石は鉄片を吸着し、バネの付勢力に抗して先幕駆動レバーは鉄片が電磁石に当接した位置に維持される。この状態で、先幕20Aは開口11を閉鎖する。その後に電磁石への通電を切ると、先幕駆動レバーはバネの付勢力に従って電磁石から退避する。このようにして、先幕駆動レバーは揺動する。この揺動に伴って、アーム31aが駆動し、先幕20Aは開口11から退避する。このように、先幕20Aは露出作動時に開口11及び11aを開放する。
【0022】
同様に、基板10には後幕を駆動するアームを駆動する後幕駆動レバー、後幕駆動レバー用の電磁石が設けられている。後幕駆動レバー、後幕駆動レバー用の電磁石も、先幕駆動レバー、先幕駆動レバー用の電磁石と同様の機能を有している。尚、後幕駆動レバーが電磁石に吸着された状態では、後幕は開口11から退避している。後幕駆動レバーが電磁石から退避した状態では、後幕はバネの不勢力に従って開口11を閉鎖している。先幕20Aと異なり、後幕は開口11を閉鎖するように移動する。このように、後幕は露出作動時に開口11及び11aを閉鎖する。
【0023】
図3は、半開状態のフォーカルプレーンシャッタ1を示した図である。図1の全閉状態では連結ピンP1は開口11から露出しており、図2の全開状態では連結ピンP1は開口11から退避しており基板10の開口11以外の部分に重なっている。同様に、図1の全閉状態では連結ピンP1は開口11aから露出し、図2の全開状態では開口11aから退避し、背面板10aの開口11a以外の部分に重なっている。図3は、光軸方向から見て、連結ピンP1の外縁が開口11及び開口11aの縁に重なった状態を示している。ここで、開口11及び開口11aの縁とは、先幕20Aの移動方向とは直交する方向に延びた縁である。
【0024】
図4は、図3のA−A断面図である。図5は、図3のB−B断面図である。尚、図4図5においては、補助アーム32aは省略してある。基板10には背面板10aが固定されており、基板10と背面板10aとの間に先幕20A、アーム31a等が収納されている。基板10、背面板10aとの間には不図示の中間板が配置されており、背面板10aと中間板との間に先幕20A、アーム31a、補助アーム32aが収納されている。また、基板10と中間板との間に、後幕、後幕を駆動するためのアームが配置されている。従って、先幕を駆動するためのアーム31aは背面板10a側に配置され、後幕を駆動するためのアームは基板10側に配置される。
【0025】
図4に示すように、本実施例のフォーカルプレーンシャッタ1を、背面板10aが撮像素子等を有する撮像素子側に、基板10がレンズ等を有する被写体側に配置された、光学機器の一例であるデジタルカメラを例にして説明する。
【0026】
図4に示すように、軸13は、大径部13a、小径部13bを含んでいる。アーム31aは、小径部13bに回転可能に嵌合している。小径部13bが貫通したアーム31aの孔は、大径部13aよりも径が小さい。このため、アーム31aは、大径部13a側に移動することは規制され、小径部13bの軸方向にある程度移動可能に小径部13bと嵌合している。このため、アーム31aは、図4に示した以上に基板10に接近することはない。
【0027】
図4に示すように、連結ピンP2は、連結ピンP1よりも厚く形成されている。詳細には、アーム31aの表面からの背面板10a側への連結ピンP2の軸方向の高さは、アーム31aの表面からの基板10側への連結ピンP1の軸方向の高さよりも高く形成されている。換言すれば、連結ピンP1のアーム31aからの高さは、連結ピンP2のアーム31aからの高さよりも低く形成されている。アームの表面からの連結ピンの軸方向の高さとは、当該アームと羽根とが連結ピンによって連結された状態での連結ピンの高さを意味する。尚、連結ピンP1、P3、P4は、形状が同一であり、大きさも同一である。
【0028】
連結ピンP1と連結ピンP2との形状の相違について説明する。図6は、連結ピンP1と連結ピンP2との比較図である。連結ピンP1は、フランジ部P11、P14、嵌合部P12、P13を有している。フランジ部P14は、背面板10a側に位置し、フランジ部P11は基板10側に位置している。嵌合部P12は、フランジ部P11よりも径が小さい。嵌合部P13はフランジ部P14よりも径が小さい。フランジ部P11、P14の間に、嵌合部P12、P13が形成されている。嵌合部P12は、嵌合部P13よりも径が小さい。嵌合部P13がアーム31aに形成された孔と嵌合し、嵌合部P12が羽根21aに形成された孔と嵌合した状態で連結ピンP1を羽根21a側からカシメ加工することによりフランジ部P11が形成される。羽根21a及びアーム31aはフランジ部P11とP14の間に挟まれて保持される。
【0029】
連結ピンP1と同様に、連結ピンP2も、フランジ部P21、P24、嵌合部P22、P23を有している。嵌合部P23がアーム31aに形成された上記の孔とは別の孔と嵌合し、嵌合部P22が羽根22aに形成された孔と嵌合した状態で連結ピンP2を羽根22a側からカシメ加工することによりフランジ部P21が形成される。羽根22a及びアーム31aはフランジ部P21とP24の間に挟まれて保持される。連結ピンP1、P2は、それぞれ第1及び第2連結ピンの一例である。
【0030】
ここで、連結ピンP2のフランジ部P24は、連結ピンP1のフランジ部P14よりも厚く形成されている。従って、アーム31aの表面からの連結ピンP2の高さは、アーム31aの表面からの連結ピンP1の高さよりも高くなっている。このような形状により、連結ピンP2のフランジ部P24は、詳しくは後述するが背面板10aの内側面に当接しやすくなっている。尚、連結ピンP1、P2の形状はこれに限定されない。アーム31aの表面からの連結ピンP2の高さが、アーム31aの表面からの連結ピンP1の高さよりも高くなっていればよい。
【0031】
図7、8は、本実施例とは異なるフォーカルプレーンシャッタ1xの説明図である。図7、8は、それぞれ図4、5に対応している。図7に示すように、連結ピンP1、P2x、P3、P4は、全て同一形状、同一の大きさであり、アーム31aからの高さは同じである。このように全てのピンがアーム31aからの高さが同じであると、以下のような問題が生じるおそれがある。羽根21a〜24a、アーム31aはそれぞれ薄く形成されているため、先幕20Aの移動途中でこれらが撓むおそれがある。ここで、軸13により支持されているアーム31aの基端側よりも、アーム31aの先端側の方が撓みやすい。従って、図7、8に示すように、先幕20Aの移動途中に連結ピンP2xが背面板10aの内側面に当接すると、アーム31aの先端側の連結ピンP1は、連結ピンP2xよりも開口11aから背面板10a側に突出する位置にあるため、その後の先幕20Aの移動途中で、連結ピンP1や先幕20Aが開口11aから背面板10a側のフォーカルプレーンシャッタ1xの外形から飛び出すように撓むおそれがある。これにより、フォーカルプレーンシャッタ1xの外形から飛び出した連結ピンP1や先幕20Aが、フォーカルプレーンシャッタ1xの背面板10a側に隣接して配置された、撮像素子又は撮像素子前面のフィルタと接触して傷を付けてしまうおそれがある。
【0032】
また、図8に示すように、アーム31aの先端にある連結ピンP1が開口11aから背面板10a側に突出して、先幕20Aの移動途中で連結ピンP1が開口11aの縁に当接するおそれがある。連結ピンP1が開口11aの縁に当接すると、アーム31aの移動スピードが低下して先幕20Aの移動速度のばらつきの原因となり、これにより所望の安定したシャッタスピードを確保できないおそれがある。
【0033】
しかしながら、本実施例のフォーカルプレーンシャッタ1では、アーム31aの表面からの連結ピンP2高さは、アーム31aからの表面からの連結ピンP1の高さよりも高くなっている。このため、図4、5に示すように、先幕20Aの移動途中でアーム31aが撓んで連結ピンP2が背面板10aの内側の面に当接した場合、前述の連結ピンP2xを用いた場合と比べてアーム31aの先端側の連結ピンP1は、開口11aから背面板10a側の突出が制限される。これにより、連結ピンP1や先幕20Aが、開口11aから背面板10a側のフォーカルプレーンシャッタ1の外形から飛び出すことが抑制される。これにより、フォーカルプレーンシャッタ1の外形から飛び出した連結ピンP1や先幕20Aが、フォーカルプレーンシャッタ1の背面板10a側に隣接して配置された、撮像素子又は撮像素子前面のフィルタと接触して傷を付けてしまうことを防止できる。このため、フォーカルプレーンシャッタ1と撮像素子又は撮像素子前面のフィルタを極力近づけて配置することができる。このように連結ピンP2がアーム31aの撓みを規制する機能を有している。
【0034】
さらに、本実施例のフォーカルプレーンシャッタ1では、図3に示すように、光軸方向から見て、連結ピンP1が背面板10aの開口11aの縁と交差する際に、連結ピンP2は開口11a以外の背面板10aと重なっている。このため、図5に示すように、連結ピンP1が開口11aから光軸方向に突出して連結ピンP1が開口11aの縁に当接することを防止することができる。したがって、アーム31aの移動スピードの低下を防止でき、先幕20Aの移動速度のばらつきを抑制できる。これにより所望の安定したシャッタスピードを確保できる。
【0035】
以上、先幕20Aについて述べたが、先幕20Aと同様の構成を有する後幕についても同様である。すなわち、後幕を駆動するアームの表面からの第2連結ピンの高さは、後幕を駆動するアームからの表面からの第1連結ピンの高さよりも高くなっているため、後幕を駆動するアームの先端側の第1連結ピンは、基板10の開口11から基板10側の突出が制限される。これにより、後幕の移動途中で第1連結ピンや後幕がフォーカルプレーンシャッタ1の外形から飛び出すことが抑制される。この場合、フォーカルプレーンシャッタ1の外形から飛び出した第1連結ピンや後幕が、隣接して配置されたレンズと接触してレンズに傷を付けてしまうことを防止できる。このため、フォーカルプレーンシャッタ1とレンズを極力近づけて配置することができる。
【0036】
また、光軸方向から見て、第1連結ピンが基板10の開口11の縁と交差する際に、第2連結ピンは開口11以外の基板10と重なっている。これにより、第1連結ピンが開口11から光軸方向に突出して第1連結ピンが開口11の縁に当接することを防止することができる。したがって、後幕を駆動するアームの移動スピードの低下を防止でき、後幕の移動速度のばらつきを抑制できる。これにより所望の安定したシャッタスピードを確保できる。
【0037】
尚、本実施例において、連結ピンP2のフランジ部P24の軸方向での高さは、連結ピンP1のフランジ部P14の軸方向での高さの1.3倍程度であるが、これに限定されない。
【0038】
一般的にデジタルカメラでは、被写体側から見て光軸方向にレンズ、シャッタ、撮像素子の順に配置された構成となっている場合が多い。最近では、さらに撮像素子の前後にゴミ取り機構や手振れ補正機構を配置することが提案されており、このような機構をすべて光軸方向に配置すると光軸方向にデジタルカメラが大型化してしまっていた。
【0039】
一方、最近ではファインダー光学系へ光を導くミラーがシャッタ前面にない、所謂ミラーレスのデジタルカメラが提案されている。このようなデジタルカメラにおいてはシャッタ前面にミラーを有する従来の一眼レフデジタルカメラと差別化するべく、カメラを薄型化しようとすると、シャッタと撮像素子又は撮像素子前面のフィルタを極力近づけて配置する必要がある。
【0040】
本実施例のフォーカルプレーンシャッタ1では、連結ピンP1や先幕20Aが開口11aから背面板10a側のフォーカルプレーンシャッタ1の外形から飛び出すことが抑制されているため、連結ピンP1や先幕20Aが撮像素子又は撮像素子前面のフィルタと接触して傷を付けてしまうおそれがない。このため、フォーカルプレーンシャッタ1と撮像素子又は撮像素子前面のフィルタを極力近づけて配置することができる。
【0041】
連結ピンP1の開口11aの縁への当接を防止するためには、連結ピンP1が開口11aの縁へと当接する直前の状態で背面板10aの開口11a以外の部分に重なるピンのアーム31aの表面からの高さを、アーム31aの表面からの高さよりも高くすればよい。これにより、このように高さを変更したピンが背面板10aの内側面に当接してアーム31aの撓みを抑制することができるからである。従って、連結ピンP1、P2、P4を同一形状、同一の大きさとし、連結ピンP3のみをアーム31aからの高さを高くしてもよい。また、連結ピンP1、P2、P3を同一形状、同一の大きさとし、連結ピンP4のみをアーム31aからの高さを高くしてもよい。
【0042】
尚、連結ピンP3、P4のアーム31aからの高さについても、連結ピンP2のアーム31aの高さと同じにすることが考えられる。しかしながら、このような構成の場合には、連結ピンP3、P4の重量が増し、先幕20A及びアーム31aの重量全体が増すおそれがある。本実施例の場合、連結ピンP3、P4のアーム31aからの高さは、連結ピンP2のアーム31aからの高さよりも低い。これにより、連結ピンP3、P4の軽量化が確保されている。これにより、先幕20A、アーム31aを含む全体の重量の軽量化が図られている。連結ピンP3、P4は、第3連結ピンの一例である。
【0043】
最近のデジタルカメラにおいては、撮影画像のデータが電子化されたことにより撮影枚数が増えて撮影者がシャッタを作動させる回数が増加している。このため、デジタルカメラに搭載されるシャッタの性能には高耐久性が必要とされている。この場合、高速化されたシャッタの作動回数を多くしていくと、幕が撓むことによりアームと幕を連結しているピンが開口の縁と繰り返し当接し、この当接部から摩耗粉が発生する。この摩耗粉が撮像素子前面及びフィルタに飛散すると、撮像画像に写りこんでしまい画質に悪影響を及ぼすおそれがある。さらにはピンが開口の縁と繰り返し当接することにより作動時の負荷が増えて撮影枚数が増すごとに所望のシャッタスピードが得られなくなってしまうおそれがある。
【0044】
しかしながら、本実施例のフォーカルプレーンシャッタ1では、アーム31aの表面からの連結ピンP2高さは、アーム31aからの表面からの連結ピンP1の高さよりも高くなっている。また、光軸方向から見て、連結ピンP1が背面板10aの開口11aの縁と交差する際に、連結ピンP2は開口11a以外の背面板10aと重なっている。このため、アーム31aの先端側の連結ピンP1は、開口11aから背面板10a側の突出が制限されるため、連結ピンP1が開口11aから光軸方向に突出して開口11aの縁に当接することを抑制することができる。したがって、連結ピンP1と開口11aの縁との当接部からの摩耗粉の発生を抑制することができ、この摩耗粉が撮像素子や前面及びフィルタに飛散することによる撮像画像の画質の低下を抑えることができる。また、連結ピンP1が開口11aの縁と繰り返し当接することにより作動時の負荷が増えて撮影枚数が増すごとに所望のシャッタスピードが得られなくなってしまうことを防止することができる。
【0045】
尚、連結ピンP1の開口11aの縁への当接を防止するために、背面板10aの開口11aの端部を光軸方向への折り返し形状を設けることが考えられる。しかしながらこの場合、光軸方向へ折り返した量だけフォーカルプレーンシャッタ1の形状が大きくなってしまう。本実施例の場合、フォーカルプレーンシャッタ1の光軸方向の厚みを変更することなく連結ピンP1が開口11aの縁へ当接するのを防止することができる。すなわち、小型化された状態で幕速のばらつきを抑制することができる。
【0046】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0047】
本実施例のフォーカルプレーンシャッタは、スチールカメラやデジタルカメラなどの光学機器に採用できる。
【0048】
上記実施例では、アーム31aに対して、高さの相違するピンを設けた場合を例に説明した。しかしながら、補助アーム32aに対して、このような高さの相違するピンを設けてもよい。
【0049】
上記実施例では、先幕20Aと後幕を設けたフォーカルプレーンシャッタを例に説明したが、先幕20Aと後幕のいずれかを設けたフォーカルプレーンシャッタでもよい。
【0050】
上記実施例では先幕を駆動するアームに対して、高さの相違するピンを設けた場合を例に詳細に説明した。しかしながら、上述したように後幕を駆動するためのアームに、このような高さの相違するピンを設けても後幕を駆動するためのアームの撓みを抑制できる。尚、この場合、後幕を駆動するアームは上述したように基板10と中間板との間に配置されるため、後幕を駆動するアームにピンを設ける場合には、アームの表面からの基板10側の高さが異なっているピンを設ける必要がある。これにより、後幕を駆動するアームが撓んだ時に、このアームに設けられたピンの一部が基板10の内側面に当接することにより、このアームの撓みを抑制することができる。
【0051】
また、本実施例においては、羽根は薄く形成された合成樹脂製である場合を説明したが、薄く形成された金属製であってもよい。上記実施例において、アームは薄く形成された金属製である場合を説明したが、薄く形成された合成樹脂製であってもよい。上記実施例において、先幕は4枚の羽根から構成されるが、これに限定されない。先幕及び後幕は、それぞれ2枚〜5枚の何れであってもよい。
【0052】
上記実施例では、フォーカルプレーンシャッタの基板10を被写体側に配置した光学機器を例に説明したが、背面板10aを被写体側に配置してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 フォーカルプレーンシャッタ
10 基板
10a 背面板
11、11a 開口
13 軸
20A 先幕
21a〜24a 羽根
31a アーム
32a 補助アーム
P1〜P4 連結ピン
P11、P14、P21、P24 フランジ部
P12、P13、P22、P23 嵌合部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8