(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、例えばバックホー等の作業車には、キャノピーを備えるものがある。キャノピーを備える作業車においては、キャノピーを構成するキャノピーフレームとして、例えば、作業車の走行部上に設けられる機体本体の後部となる、運転座席の後側の部分にて機体本体上に立設される支柱を備えるものがある。具体的には、旋回作業機であるバックホーの場合、例えば次のような構成が備えられる。
【0003】
バックホーは、走行部として、左右一対のクローラ等により構成される走行装置を備え、この走行装置上に、回動可能に構成される旋回体が設けられる。旋回体上には、エンジン等を収容するボンネットが設けられ、このボンネット上に、運転部を構成する運転座席が設けられる。運転座席の前方には、各種レバー等が配設される運転操作部が設けられる。これらの運転座席や運転操作部等を囲むように、キャノピーが設けられる。
【0004】
そして、上記のとおりキャノピーフレームとしてキャノピーを構成する支柱は、運転座席の後側において、例えば、旋回体あるいはボンネット部分から立ち上がるように設けられる。キャノピーは、いわゆる2柱キャノピーと称される構成の場合、機体本体の左右両側に立設される2本の支柱と、これら2本の支柱により支持され、運転座席や運転操作部を上方から覆うように設けられるキャノピールーフとを備える。
【0005】
このようにキャノピーを備える構成、特に上述したような2柱キャノピーを備える構成においては、キャノピーを構成する支柱を補強するための構造が備えられる。キャノピーの支柱を補強するための構造としては、例えば、機体本体を構成する旋回体とキャノピーを構成する支柱との間に架設され、キャノピーの支柱を旋回体に対して支持する架設部材が挙げられる。
【0006】
この構造例について詳細に説明すると、前提として、旋回体上に設けられるフレーム状の部材により構成されるキャノピーマウント上に、キャノピーの支柱が立設される構成がある。かかる構成において、キャノピーマウントを構成するフレーム状の部材は、例えば、旋回体上のボンネットの内部に設けられる。そして、このフレーム状の部材は、上述したようなつっかい棒の役目を果たす斜めの架設部材によって旋回体上に支持される。更に、キャノピーの支柱はこのフレーム状の部材の上部に立設される。つまり、この構成においては、キャノピーの支柱は、つっかい棒の架設部材により補強されたキャノピーマウントを構成するフレーム状の部材の上に連設されて間接的に旋回体に支持される。
【0007】
キャノピーの支柱の補強構造に関しては、高い支持強度を得る観点からは、架設部材によるキャノピーの支柱の支持は、上述したようなキャノピーマウントに対する間接的な支持ではなく、支柱に対する直接的な支持であることが好ましい。また、同じく高い支持強度を得る観点からは、架設部材による支柱の支持位置は、より高い位置にある方が好ましい。そこで、例えば、特許文献1に開示されているような構造がある。
【0008】
特許文献1には、バックホーにおいて、キャノピーの支柱を補強するための架設部材として、キャノピーの支柱の中途部と旋回体との間に架設される手すり部材が開示されている。つまり、特許文献1に示されている構造においては、架設部材としての手すり部材の一端がキャノピーの支柱に固定され、手すり部材の他端が旋回体に固定されることで、旋回体上において立設されるキャノピーの支柱の支持が補強されている。特許文献1では、架設部材としての手すり部材は、ボンネット上に立設された支柱に対する固定部から略斜め前方に向けて配され、運転部の床面となる旋回体の上面に固定されている。
【0009】
一方、バックホー等の作業車においては、運転部に対して乗降する作業者により把持される部分として、手すりが設けられている。このような手すりとしては、運転部の左右一側が乗降側となる構成において、運転座席の左右両側のうち乗降側となる側に設けられるものがある。例えば、特許文献2には、運転座席の左側においてボンネット上に設けられた手すりが開示されている。なお、特許文献1に記載の構成では、上述したようにキャノピーの支柱を補強する架設部材が、手すりを兼ねている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
確かに、特許文献1に記載の構成によれば、キャノピーの支柱を支持するための架設部材について、支柱に対して直接的に固定され、また、支柱に対する固定位置もボンネット上の比較的高い位置であることから、高い支持強度が得られると考えられる。また、同じく特許文献1に記載の構成によれば、キャノピーの支柱を補強する架設部材が、運転部に対する乗降の際に用いられる手すりを兼ねるため、架設部材と手すりとが個別に設けられる構成との比較において、部品点数が削減されると考えられる。しかしながら、特許文献1に記載の構成によると、次のような問題がある。
【0012】
キャノピーを備える作業車においては、例えば、低木が植え付けられた果樹園やビニールハウス等の高さが制限される場所での作業に備えて、キャノピーが機体本体に対して取外し可能に設けられる構成が採用されている。このようにキャノピーが取外し可能な構成において、特許文献1に記載の構成が採用された場合、通常とは異なりキャノピーが取り外された特異な状態では、キャノピーの支柱を補強する架設部材として機能する手すり部材は、手すりとしての機能が不十分なものとなる。
【0013】
具体的には、特許文献1に記載の構成において、キャノピーが取り外されると、本来キャノピーの支柱に固定される、架設部材としての手すり部材の一端側は、固定される部分を失う。つまり、この場合、手すり部材は、その他端側のみが旋回体側に固定された状態となる。このため、手すり部材の固定状態が不安定となり、手すり部材において、運転部への乗降に際して作業者により把持されることで受ける荷重に対して十分な支持強度が得られなくなる。
【0014】
したがって、キャノピーの機体本体に対する取外しが前提とされる構成においては、キャノピーの支柱を補強する架設部材に手すりの機能を兼ねようとした場合、架設部材を支柱側に固定する構造を採用することは困難である。つまり、キャノピーが取外し可能な構成においては、手すりは、例えば特許文献2のように、ボンネット等に固定された状態で設けられることで、キャノピーの支柱とは独立して設けられる。
【0015】
しかしながら、キャノピーの支柱を補強する架設部材について高い支持強度を得る観点や、部品点数の削減等を図る観点からは、特許文献1のように、架設部材が、キャノピーの支柱に固定され、しかも、手すりの機能を兼ねる構成が好ましい。
【0016】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、キャノピーの支柱を補強するための構造について、高い支持強度を得ることができるとともに、部品点数の削減およびコストダウンを図ることができ、しかも、キャノピーが機体本体(旋回体)から取り外された特異な状態でも、手すりの機能を維持することができる作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0018】
本発明の作業車は、座席支持台上に運転座席を載置して構成した運転部と、運転部後方に立設した左右支柱の上端に設けたキャノピーと、よりなる作業車であって、
左右支柱の一方と運転部フロアとの間に架設した補強フレームと、補強フレームに前方へ突設した手すりフレームと、補強フレーム上端と支柱の離脱時に片持ち支持を補強するため補強フレームと座席支持台との間に架設した補助フレームと、を備えるものである。
【0019】
また、本発明の作業車においては、好ましくは、補強フレームは、支柱に対する固定部分から旋回体の略前後方向に前向きに延びる水平部と、水平部の前端部から旋回体の前側に斜め下向きに延びる傾斜部と、傾斜部の下端部から略鉛直方向に下向きに延び、下端部が旋回体に固定される垂直部と、を有し、水平部、傾斜部、および垂直部は、一体の棒状の部材の折り曲げ形状の各部であり、手すりフレームは、傾斜部に設けられている。
【0020】
また、本発明の作業車においては、好ましくは、手すりフレームは、傾斜部に対して、旋回体の前側に、傾斜部の傾斜方向に対して略垂直方向に突出するような外形を有するとともに、傾斜部とともに略環状をなすものである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1による発明によれば、キャノピーの支柱を補強するための構造について、高い支持強度を得ることができるとともに、部品点数の削減およびコストダウンを図ることができ、しかも、キャノピーおよび左右支柱が旋回体から取り外された特異な状態でも、手すりの機能を維持することができる。具体的には、まず、補強フレームが支柱と旋回体の運転部フロアとの間に介設されていることから、本体架設部が支柱を支えるつっかい棒として機能することになり、キャノピーが上端に設けられた左右支柱に発生する前後方向の曲げモーメントを打ち消すことができ、強度の面で有利となる。また、手すりフレームが補強フレームに一体的に突設されているため、別途手すり用のステー等を設けることなく、手すりを形成できる効果がある。更には、補助フレームを補強フレームと座席支持台との間に架設したので、補強フレームの中途を座席支持台で支持することになり、補強フレームの強度を更に強化することができる効果がある。更には、キャノピーを取り外した形態で作業車を使用する場合には、キャノピーと一体の左右支柱を補強フレームと無縁に取り外すことができる。その際、補助フレームが補強フレームの中途を支持するため、補強フレームが運転部フロアに片持ち支持された状態となって不安定となることを防止できる効果がある。
【0022】
また、請求項2による発明によれば、手すりフレームと一体となった補強フレームの構造をシンプルにすることができる。更に、補強フレームは支柱を略前方向から支持するため、キャノピーが上端に設けられた左右支柱に発生する前後方向の曲げモーメントを確実に打ち消すことができる。
【0023】
また、請求項3による発明によれば、運転部に対する乗降の際に把持しやすい手すりフレームとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1〜
図5に示すAは本発明に係る旋回作業車としての作業車である。なお、本明細書における上下前後左右の方向は、
図1〜
図5で立体的に示される作業車Aの上下前後左右と一致する。すなわち、本明細書における上下前後左右の方向は、
図1〜
図5で示される構成において、作業車Aの運転座席36に通常の状態で着座した作業者の視点からの上下前後左右と一致する。
【0026】
[作業車の全体の説明]
作業車Aは、
図1〜
図5に示すように、自走可能な走行機体1と、走行機体1に取り付けた作業部としての掘削部2と排土部3と、走行機体1に立設した左右支柱4a,4b上端に連設したキャノピー5と、から構成されている。本実施形態では作業部の先端部に作業用アタッチメントとして掘削用のバケット15を装着して掘削部2となしている。
【0027】
走行機体1は、左右一対のクローラ式の走行部6,6にそれぞれ油圧モータを設けて、各油圧モータをそれぞれ正逆回転駆動させることで、前後方向に直進走行することも、また、前後左右方向に旋回走行することも、また、左右走行部6,6を相互に反対方向に回転駆動させて急旋回させることも可能となしている。走行部6,6間には基台7を介設し、基台7上に旋回体8を旋回自在に載設して、旋回モータにより左右いずれの方向にも旋回作動可能となしている。旋回体8は走行部6,6の左右側幅(左側走行部6の外側端縁部と右側走行部6の外側端縁部との間隔)内で旋回可能な平面視略円板状に形成している。旋回体8には、前半部に運転部9とタンク部10を配設する一方、後半部にエンジンルーム11を配設している(
図9参照)。旋回体8の前端部の一側寄り(本実施形態では右側寄り)位置にはブーム用ブラケット12を前方へ突設してブーム用ブラケット12に掘削部2の基端部を枢支して取り付けている。基台7には、左右一対の走行部6,6間において、排土部3を取り付けている。
【0028】
掘削部2は、ブーム13とアーム14とバケット15とこれらを回動作動させるスイングシリンダ16とブームシリンダ17とアームシリンダ18とバケットシリンダ19を備えている。
【0029】
旋回体8の前端部の右側寄り位置に突設したブーム用ブラケット12には、枢支体20を上下方向に軸芯線を向けた枢軸21により枢支して、枢軸21を中心にして枢支体20を左右揺動自在に取り付けている。旋回体8の右側中途部と枢支体20の右側前部との間には前後方向に伸縮作動するスイングシリンダ16を介設して、スイングシリンダ16の伸縮作動に連動して枢支体20がスイング(左右揺動)作動するようにしている。
【0030】
枢支体20には、側面視「へ」の字状に屈曲して上下方向に伸延するブーム13の基端部を左右方向に軸芯線を向けた第1枢軸22により枢支して、第1枢軸22を中心にしてブーム13を上下回動自在に取り付けている。枢支体20の前端部とブーム13の前面中途部との間には上下方向に伸縮作動するブームシリンダ17を介設して、ブームシリンダ17の伸縮作動に連動してブーム13が上下回動作動するようにしている。
【0031】
ブーム13の先端部には、上下方向に伸延するアーム14の基端部を、左右方向に軸芯線を向けた第2枢軸23により枢支して、第2枢軸23を中心にしてアーム14を前後回動自在(上下回動自在)に取り付けている。ブーム13の上面中途部に取り付けた第1シリンダ取付体24と、アーム14の前面基端部に取り付けた第2シリンダ取付体25との間には前後方向に伸延作動するアームシリンダ18を介設して、アームシリンダ18の伸縮作動に連動してアーム14が前後回動作動するようにしている。
【0032】
アーム14の先端部には、バケット15の基部を左右方向に軸芯線を向けた第3枢軸26により枢支して、第3枢軸26を中心にしてバケット15を前後回動自在(上下回動自在)に取り付けている。アーム14の先端部とバケット15の基部との間にはバケットリンク27を介設して、バケットリンク27とアーム14の第2シリンダ取付体25との間には上下方向に伸延作動するバケットシリンダ19を介設して、バケットシリンダ19の伸縮作動に連動してバケット15が前後回動(上下回動)作動するようにしている。
【0033】
排土部3は、左右一対の走行部6,6間において、基台7に前後方向に伸延する左右一対の排土アーム28,28の基端部を昇降可能に取り付け、両排土アーム28,28の先端部間に左右方向に伸延する排土板(ブレード)29を架設して構成している。排土板29は走行部6,6の左右側幅と略同一幅に形成している。
【0034】
このように構成して、走行機体1は、運転部9で走行部6を操作することで前後直進走行並びに左右旋回走行が適宜行えるようにしている。そして、運転部9で掘削部2を操作することで掘削作業が行えるようにしている。また、運転部9で排土部3を操作することで排土作業が行えるようにしている。
【0035】
[旋回体の説明]
図6〜
図8は走行機体1の骨格構造を示す図であり、
図9は旋回体8の内部構成を説明するための平面図である。すなわち、
図9は、タンク部10やエンジンルーム11の平面配置を図示している。
【0036】
旋回体8は、
図6〜
図9に示すように、平面視略円板状に形成したターンテーブル30上には、左右二列の機体フレーム32を縦板状に配設し、機体フレーム32の先端をブーム用ブラケット12としている。右側の機体フレーム32の中途には、支持杆114を立設している。ターンテーブル30の略前半部には、ターンテーブル30の右前端縁に立設したスペーサー片33a、ターンテーブル30の左前端縁に立設したスペーサー片33b、ターンテーブル30の左端縁に立設したスペーサー杆35、および支持杆114を介して、一定の間隙を保持しながらフロア支持板31b,31cを張設し、フロア支持板31b,31c上に運転部フロア31を敷設している(
図10参照)。機体フレーム32上で運転部フロア31の後方には箱状の座席支持台34を配設し、ターンテーブル30と座席支持台34との間の空間はエンジンルーム11としている。座席支持台34の上面には、運転部9に対向した運転座席36を載置固定している。なお、座席支持台34は箱状のケースとしており、その内部がエンジンルーム11を構成している。
【0037】
旋回体8の周面には、ブーム用ブラケット12の左側部から平面視で反時計廻りに、順次、ランプカバー体37、コントロールバルブカバー体38、操作パターン切替カバー体39、工具等収容部カバー体40、カウンターウエイト41、及び、第1・第2タンクカバー体42,43を取り付けて、旋回体8の周面を閉塞している。そして、各カバー体37〜40,42,43は旋回体8の周壁の一部を形成しており、各カバー体37〜40,42,43により外側方を閉塞している(
図1〜
図5参照)。ターンテーブル30の後端には左右方向に長手状のフレーム支持台46が載置固定されており、フレーム支持台46は後述の門型フレーム110を立設して固定するための土台となる。工具等収容部カバー体40の上方かつ座席支持台34の左後方には左側壁体44を設けると共に、カウンターウエイト41の上方かつ座席支持台34の後方にはボンネット45を設け、工具等収容部カバー体40と、カウンターウエイト41と、第1タンクカバー体42と、左側壁体44と、ボンネット45とでエンジンルーム11の後方を閉塞している(
図1〜
図5参照)。コントロールバルブカバー体38、操作パターン切替カバー体39、工具等収容部カバー体40、カウンターウエイト41、及び、第1・第2タンクカバー体42,43は、旋回体8の周端縁に沿わせて平面視円弧状に湾曲させて形成している。コントロールバルブカバー体38と操作パターン切替カバー体39と工具等収容部カバー体40は、旋回体8の周縁方向に伸延する横長四角形板状に形成するとともに、平面視円弧状に形成して、旋回体8に前後端部のいずれか一方の端部(本実施形態では前端部)を上下方向の軸線廻りに枢支して、その枢支部を中心に他方の端部(本実施形態では後端部)を横方向(本実施形態では前方側)に開閉自在となしている。左側壁体44およびボンネット45は、工具等収容部カバー体40およびカウンターウエイト41の上端縁に沿わせて平面視円弧状に湾曲させて形成している。左側壁体44は側面視略扇形に形成すると共に、左側壁体44の上側湾曲部は座席支持台34上部の左後方から運転部フロア31の左側後端部に向けて傾斜させて形成している。
【0038】
[タンク部およびエンジンルームの説明]
図9に示すように、タンク部10は、エンジン52を駆動するための燃料を収容する燃料タンク53と、作動油を収容する作動油タンク54を前後に隣接させて配設している。これらのタンク53,54は、ターンテーブル30の右側部から立設した前端壁55と、ターンテーブル30の右側周縁部に配設した第1・第2タンクカバー体42,43と、これらの前端壁55及び第1・第2タンクカバー体42,43の上端縁部上に配設した上面カバー体56とにより閉塞している(
図2、
図3、
図5参照)。上面カバー体56は、エンジンルーム11に配設した後述の門型フレームの右側上部に後端縁部を枢支して取り付けて、両タンク53,54の上方を開閉自在となしている。両タンク53,54上にはグリスガンを載置して、グリスガンを上面カバー体56により閉蓋している。したがって、上面カバー体56を開蓋すればグリスガンを簡単に取り出すことができる。
【0039】
エンジンルーム11は、ターンテーブル30の後半部上におけるタンク部10の左側に形成している。エンジンルーム11には、左右方向に軸線を向けて配置したエンジン52、エンジン52を冷却するラジエータ59、エンジン52およびラジエータ59を冷却するファン60などを収納している。また、エンジンルーム11の後部には、エンジンルーム11の基本フレームとなる門型フレーム110が立設されている。
【0040】
[門型フレームの説明]
図6〜
図9に示すように、エンジンルーム11の後部、すなわち、ターンテーブル30の後部には左右方向に長手状のフレーム支持台46が載置固定されており、フレーム支持台46上にキャノピー5を上端に有する左右支柱4a,4bを支持するための門型フレーム110が立設されている。門型フレーム110は、左右縦フレーム111,112の上端間に細板状の天板113を架設して構成している。門型フレーム110の一方の縦フレーム(右縦フレーム112)上端と、エンジンルーム11の前部において旋回体8の機体フレーム32に立設した支持杆114との間には、前方向につっかい棒の機能を果たす斜めフレーム115を介設している。斜めフレーム115は、ファン60の上方を跨いで、右縦フレーム112上端と支持杆114との間に介設している。なお、門型フレーム110の一方の縦フレーム(右縦フレーム112)上端と、斜めフレーム115上端との間は、門型フレーム110の一方の縦フレーム(右縦フレーム112)上端に設けた支持ステー116を介設している。
【0041】
門型フレーム110の左縦フレーム111の下端にはフランジ111aを設けており、左縦フレーム111は、フレーム支持台46の左端部上面にフランジ111aを介してボルト等の締結具によって固定されている。門型フレーム110の右縦フレーム112の下端にはフランジ112aを設けており、右縦フレーム112は、フレーム支持台46の右端部上面にフランジ112aを介してボルト等の締結具によって固定されている。
【0042】
このように、門型フレーム110をフレーム支持台46上に立設することにより、門型フレーム110、および門型フレーム110上に立設されるキャノピー5および左右支柱4a,4bの荷重を、ターンテーブル30の後端に載置固定したフレーム支持台46に加算できるため、カウンターウエイト41の質量を減らして作業車の燃費を向上させることができる。
【0043】
また、後述するように、門型フレーム110の細板状の天板113上にはキャノピー5を上端に有する左右支柱4a,4bが立設され、いわゆる二柱型キャノピーを構成している。二柱型キャノピーは、上部のキャノピー5が左右支柱4a,4bに対して前方に突出した構成となっており、側面視略逆L字状の形状となっている。そのため、キャノピー5の重量により、門型フレーム110には前後方向の曲げモーメントが発生する。従って、この曲げモーメントを打ち消して、より効果的に門型フレーム110を補強するためには、斜めフレーム115の上端は右縦フレーム112のできるだけ上方に取り付けると共に、斜めフレーム115の下端は機体フレーム32のできるだけ前方に取り付けることが好ましい。
【0044】
支持ステー116と斜めフレーム115の上端とは、ボルト等の締結具によって着脱可能に固定されている。斜めフレーム115の下端にはフランジ115aを設け、フランジ115aは機体フレーム32の支持杆114上端に設けたフロア受板114aとボルト等の締結具によって着脱可能に固定する。
【0045】
このように、斜めフレーム115の上端および下端を、門型フレーム110の支持ステー116および機体フレーム32の支持杆114に対してそれぞれ着脱可能としたことにより、門型フレーム110のみの二柱フレーム構造と、門型フレーム110に斜めフレーム115を取り付けた三柱フレーム構造の二種類のフレーム構造を、エンジンルーム11内で適宜選択可能としている。
【0046】
このように、二柱フレーム構造または三柱フレーム構造を適宜選択可能としたことには、以下のような理由がある。すなわち、従来、作業車の構造的な要求に応じて、作業車毎に二柱フレーム構造または三柱フレーム構造をそれぞれ専用に設計し、製作していた。そのため、それぞれのフレーム構造のための専用の部品が発生し、設計や製作のコストが増加する上、生産効率が悪くなるという問題があった。
【0047】
かかる二柱および三柱フレーム構造の違いは、運転部のキャビン構造やキャノピー構造の違いに応じて使い分ける。例えば、後述する本件発明のキャノピー構造、すなわち、左右縦フレーム111,112の上端に前方への片持ち支持でキャノピー5を取り付けた二柱型キャノピー構造を備える作業車の場合には、門型フレーム110に前屈みの荷重、すなわち、前後方向の曲げモーメントが発生する。従って、この場合は、この前屈みの荷重を支持するための斜めフレーム115を取り付けた三柱フレーム構造を採用するのが良い。
【0048】
他方、運転部の構造をキャビン構造とした場合や、平面視略矩形のキャノピー5の各頂点近傍を4本の支柱で支持する四柱型キャノピー構造とした場合などは、上記した二柱型キャノピーのような前後方向の曲げモーメントが門型フレーム110に発生しない。従って、キャビン構造や四柱型キャノピー構造を備える作業車の場合は、門型フレーム110に斜めフレーム115を取り付ける必要が無いため、二柱フレーム構造を採用すれば良い。二柱フレーム構造を採用した場合は、斜めフレーム115を外すことにより生じる空きスペースを有効利用し、例えば、燃料を送給するための燃料ホースや、コンプレッサーの冷媒を循環させるための冷媒管等の配管を配設させることができる。
【0049】
このように、門型フレーム110を両フレーム構造に共用の基本フレームとし、作業車の構造的な要求に応じて二柱フレーム構造および三柱フレーム構造から適切なフレーム構造を選択できるよう構成したことにより、設計や製作のコストを低く抑え、生産性を向上させている。
【0050】
[キャノピーの説明]
図6〜
図8に示すように、門型フレーム110の天板113の左右端には、左右支柱ブラケット130,131を介して、キャノピー5取付のための左右支柱4a,4bを立設している。左右支柱4a,4bを立設するための左右支柱ブラケット130,131は、天板113にボルト等の締結具で着脱可能に固定する底板132,133と、底板132,133に立設しパイプ状の左右支柱4a,4bの下端を嵌入して固定した断面半円弧状あるいは断面コの字状の左右ブラケット本体134,135と、左右ブラケット本体134,135の開口部を閉塞した状態で底板132,133に立設した当板136,137とより構成している。特に、左支柱4aを保持する左ブラケット本体134の外側面には、前方に向けて略コの字状のフレーム取付ブラケット138を突設している。
【0051】
左右支柱4a,4bの上端には前方に向けて左右支持板(図示せず)を水平に突設し、左右支持板の上面に、キャノピー5を載置架設している。このように、いわゆる二柱型キャノピーはキャノピー5が左右支柱4a,4bの上端に取り付けられた構成を有しており、二柱型キャノピーは側面視略逆L字状の形状となっている。
【0052】
左右支柱4a,4b間の距離と、門型フレーム110の左右縦フレーム111,112間の距離とは、略同一としている。そして、キャノピー5は運転座席36の上方を覆うように構成されている。従って、キャノピー5を備える左右支柱4a,4bは、運転座席36のオフセットのため、左右縦フレーム111,112それぞれの位置に対して、背面視左側に寄って配置されている。
【0053】
[補強フレームの説明]
上述のように、門型フレーム110上にはキャノピー5を支持する左右支柱4a,4bが立設されているが、左支柱4aと運転部フロア31との間には補強フレーム150を架設しており、補強フレーム150の中央には前方に向けて手すりフレーム152を突設し、更には、補強フレーム150の中途と座席支持台34との間には補強フレーム150支持のための補助フレーム153を介設している。
【0054】
図6〜
図8、
図10および
図11に示すように、補強フレーム150の上端は、左支柱ブラケット130、フレーム取付ブラケット138、およびフランジ150aを介して左支柱4aに連接する。補強フレーム150下端は、運転部フロア31の下面に立設したスペーサー杆35の上端にフロア受板35aを連設し、フロア受板35aにフランジ150bを介して固定する。このように、補強フレーム150を左支柱4aと運転部フロア31との間に介設した状態とする。
【0055】
補強フレーム150は、左支柱4aに対する固定部分から旋回体8の略前後方向に前向きに延びる水平部154と、水平部154の前端部から旋回体8の前側に斜め下向きに延びる傾斜部155と、傾斜部155の下端部から略鉛直方向に下向きに延び、下端部が旋回体8に固定される垂直部156とを有している。水平部154、傾斜部155、および垂直部156は、一体の棒状の部材の折り曲げ形状の各部である。手すりフレーム152は、傾斜部155に設けられている。
【0056】
このように構成した補強フレーム150は、左右支柱4a,4bのつっかい棒として機能する。すなわち、前述の通り、二柱型キャノピーは、上部のキャノピー5が前方に突出しており、キャノピー5と左右支柱4a,4bとで側面視略逆L字状の形状としている。従って、キャノピー5の重量により、左右支柱4a,4bには前後方向の曲げモーメントが発生するため、補強フレーム150によって、左右支柱4a,4bに発生する曲げモーメントを低減させて、左右支柱4a,4bを補強する。補強フレーム150の上端は左支柱4aのできるだけ上方に取り付けると共に、補強フレーム150の下端は旋回体8の運転部フロア31のできるだけ前方に取り付けることが好ましい。
【0057】
補強フレーム150の下端、すなわち、垂直部156の下端は、平面視略円板状の旋回体8の左側縁近傍の運転部フロア31に固定している。すなわち、運転部フロア31は、座席支持台34の左下端部と旋回体8の左側縁との間まで伸延してフロア伸延部31aを形成しており、補強フレーム150の下端は、このフロア伸延部31aに固定されている。これは、旋回体8上に座席支持台34等を配設するための充分なスペースを確保するためであり、補強フレーム150は、左支柱4aに対する固定位置から、平面視略円板状の旋回体8の左外周縁を沿うように、前方向に対して約20°左側に傾けて設置されている。手すりフレーム152は、補強フレーム150の架設方向の仮想直線上にあるように一体に連設している。従って、平面視において、補強フレーム150より突出した手すりフレーム152が旋回体8上に収まるよう構成し、手すりフレーム152が旋回体8の旋回の際に旋回体8の周辺に存在する物と干渉しないようにしている。
【0058】
また、前述の通り、キャノピー5を備える左右支柱4a,4bは、門型フレーム110の左右縦フレーム111,112に対して左側にオフセットして配置されている。従って、左支柱4aを補強フレーム150により運転部フロア31に対して前方左側より支える構成とすることにより、キャノピー5を上端に有する左右支柱4a,4bのバランスを良好とし、同支柱4a,4bの補強をより機能的としている。
【0059】
更に、補強フレーム150の中途には運転部9に対する乗降の際に利用される手すりフレーム152が一体的に突設されており、従って、補強フレーム150は手すりフレーム152の保持具としても機能している。すなわち、補強フレーム150に手すりフレーム152を一体的に設けることにより、別途手すり用の保持具等を設けることなく手すり部を形成できるため、部品点数を削減してコストダウンを図ることができる。
【0060】
手すりフレーム152は、補強フレーム150の傾斜部155の傾斜方向に対してループ状に略垂直方向に突出するような外形を有する。
【0061】
手すりフレーム152は、金属製の一体の棒状またはパイプ状の部材の折り曲げにより形成され、補強フレーム150の傾斜部155に対して垂直に突出する上下垂直杆157,158と、上下垂直杆157,158の上端間を山形に架設する山形杆159とよりなる。山形杆159は、補強フレーム150の垂直部156よりも前方に突出しており、運転部9に対する乗降の際に把持しやすい形状となっている。なお、上垂直杆157は傾斜部155の上端近傍の前面側に固設されており、下垂直杆158は傾斜部155の下端近傍の前面側に固設されている。
【0062】
補強フレーム150の傾斜部155の上端近傍、すなわち、手すりフレーム152の上垂直杆157との接合部の位置と座席支持台34上面との間には、補助フレーム153を介設している。このように、補助フレーム153を補強フレーム150と座席支持台34との間に介設させることにより、キャノピー5を左右支柱4a,4bと共に作業車Aから取り外した際に補強フレーム150上端がフリーの片持ち支持状態となっても、補強フレーム150を補助フレーム153によって座席支持台34上に固定した安定状態とすることができる。
【0063】
更には、補助フレーム153は、運転座席36の背もたれ36a側に斜め下方向に伸延する補助傾斜杆160と、補助傾斜杆160の下端から座席支持台34に向けて伸延する補助垂直杆161とよりなり、補助垂直杆161の下端は座席支持台34の左側上面にフランジ153aを介して固定されている。すなわち、補助フレーム153は、補助傾斜杆160の伸延方向により、略前後方向に架設された補強フレーム150の仮想直線と伸延方向がずれた構成としている。このように、補強フレーム150の伸延方向と補助フレーム153の伸延方向とを異ならせることにより、補強フレーム150の伸延方向とは異なる方向に作用する負荷、例えば、キャノピー5による左支柱4aへの不用意な負荷や、乗降時に手すりフレーム152を使うことによる人為的負荷等のあらゆる方向からの負荷に対し、強度を高めることができる。
【0064】
本発明の作業車Aは上述のように構成されており、特にキャノピー5の左右支柱4a,4bが門型フレーム110上に立設されて、しかも補強フレーム150によりつっかい棒として補強されていると共に、補助フレーム153により補強フレーム150の補助的な補強を行っている。従って、キャノピー5を左右支柱4a,4bと共に取り外して補強フレーム150上端がフリーとなって下端のみの片持ち支持となっても、補助フレーム153によって座席支持台34に補強フレーム150上端が固定された状態となり、手すりフレーム152もその分強度をもって補強フレーム150に支持されることになる。
【0065】
具体的に説明すれば、かかる作業車Aにおいて、作業車Aの納屋への収納時等においてはキャノピー5が不要となり、かつ、作業車Aの周辺の作業の支障にもなるため、キャノピー5を左右支柱4a,4bごと門型フレーム110から取り外す。取り外しに際しては、門型フレーム110の水平の天板113から左右支柱ブラケット130,131を左右支柱4a,4bごと取り外し、同時に左支柱4a或いは左支柱ブラケット130にフレーム取付ブラケット138を介して連設した補強フレーム150の上端をも取り外す。この状態では、キャノピー5は左右支柱4a,4bと共に作業車Aから取り外されて所期の目的を達しているが、補強フレーム150は、その上端が左支柱ブラケット130から取り外されてフリーの片持ち支持状態となっている。しかし、片持ち支持の補強フレーム150であっても、補助フレーム153が補強フレーム150を座席支持台34上に支持固定しているため、補強フレーム150は強固に運転部フロア31や座席支持台34に固定されていることになり、作業車Aへの乗降時に手すりフレーム152に乗降負荷をかけても充分な強度を保持できる。
【0066】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは言うまでもない。