【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.被塗物に向けて塗料を噴射する塗装ガンと、
当該塗装ガンに高電圧を印加する電圧印加装置とを備えた静電塗装装置であって、
前記塗装ガン
に高電圧が印加されているときに前記塗装ガンに流れる放電電流を測定する電流測定装置を有し、
前記被塗物に対して塗料を噴射していない状態において、正常位置に配置された場合の前記被塗物に対して一定の距離となる少なくとも3箇所以上の位置に前記電圧印加装置から高電圧が印加された前記塗装ガンを配置するとともに、前記各位置にて前記電流測定装置により前記塗装ガンを流れる電流を測定し、
前記電流測定装置により測定された複数の電流に基づいて、前記被塗物のアース状態を検査することを特徴とする静電塗装装置。
【0011】
上記手段1によれば、専用の装置を用いることなく、塗装ガンを有する静電塗装装置により被塗物におけるアース状態が検査される。従って、製造設備の小型化や簡素化、設備コストの低減を図ることができる。
【0012】
さらに、上記手段1によれば、電圧印加装置から塗装ガンに電圧を印加した状態で、電流測定装置により塗装ガンを流れる電流が測定され、測定された電流に基づいて被塗物のアース状態が検査される。すなわち、被塗物におけるアース状態の検査に用いられる電流が、塗装ガンに電圧を印加している際に取得されるように構成されており、塗装ガンに対する電圧の印加と塗装ガンを流れる電流の測定とが同時期に(つまり一工程で)行われるように構成されている。従って、被塗物におけるアース状態の検査時間を著しく短縮させることができ、生産性の向上を図ることができる。
【0013】
また、上記手段1によれば、検査時間の短縮を図るにあたり、塗装ガンを複数設ける必要はない。従って、製造設備の小型化や簡素化、設備コストの低減を一層効果的に図ることができる。
【0014】
尚、静電塗装を安定的に行うべく、塗装時において、塗装ガンを流れる電流を測定することがあるが、塗装時において塗装ガンを流れる電流は、塗料や塗装軌跡等の影響により大きく変動する。従って、塗装時に塗装ガンを流れる電流に基づいて被塗物のアース状態を検査すると、検査精度が著しく低下してしまうおそれがある。これに対して、非塗装時において塗装ガンを流れる電流は、塗料や塗装軌跡等の影響による変動がない。従って、上記手段1のように、被塗物に塗料を噴射していない状態において塗装ガンを流れる電流に基づいて被塗物のアース状態を検査することで、良好な検査精度を実現することができる。
【0015】
ところで、被塗物が正常位置からずれて配置された場合には、各位置において被塗物及び塗装ガン間の距離が異なることとなり得るため、距離の相違に伴い測定される電流にバラツキが生じ得る。この点、上記手段1によれば、正常位置に配置された場合の被塗物に対して一定の距離となる少なくとも3箇所以上の位置に電圧の印加された塗装ガンが配置されるとともに、各位置において塗装ガンを流れる電流が測定され、測定された複数の電流に基づいてアース状態が検査される。従って、アース状態の検査精度をより一層向上させることができる。
【0016】
また、上記手段1によれば、測定された複数の電流の態様から、被塗物の配置位置にズレが生じているか否かを確認することができる。従って、配置位置にズレが生じたままの状態で被塗物が塗装工程に供給されてしまうといった事態をより確実に防止でき、塗装時において、被塗物に対する塗装ガンの相対位置をより確実に所定の位置とすることができる。その結果、塗装ムラなどの発生を効果的に防止することができ、塗装品質をより高めることができる。
【0017】
手段2.前記電流測定装置により前記塗装ガンを流れる電流を測定する際における、前記塗装ガンと正常位置に配置された場合の前記被塗物との間の距離が、前記塗装ガンにより前記被塗物を塗装する際における、前記塗装ガンと正常位置に配置された場合の前記被塗物との間の距離よりも小さくされることを特徴とする手段1に記載の静電塗装装置。
【0018】
上記手段2によれば、被塗物のアース状態が正常であるときに塗装ガンを流れる電流と、被塗物のアース状態に異常があるときに塗装ガンを流れる電流との差をより確実に大きくすることができる。従って、被塗物におけるアース状態の正常・異常をより容易に判別することができ、アース状態の検査精度を一層向上させることができる。
【0019】
手段3.前記電流測定装置により前記塗装ガンを流れる電流を測定する際において、前記塗装ガンと正常位置に配置された場合の前記被塗物との間の距離が40mm以上100mm以下とされることを特徴とする手段1又は2に記載の静電塗装装置。
【0020】
上記手段3によれば、塗装ガンと正常位置に配置された場合における被塗物との間の距離が40mm以上とされている。従って、被塗物の配置位置にずれが生じた場合などにおいて、塗装ガンが被塗物に接触してしまったり、塗装ガンと被塗物の周囲に位置する治具等との間でスパークが生じてしまったりすることをより確実に防止できる。その結果、アース状態の検査をより精度よく行うことができる。
【0021】
また、上記手段3によれば、前記距離が100mm以下とされているため、アース状態が正常であるときに塗装ガンを流れる電流と、アース状態に異常があるときに塗装ガンを流れる電流との差を一層大きくすることができる。これにより、アース状態の検査精度をより高めることができる。
【0022】
手段4.前記電流測定装置により前記塗装ガンを流れる電流を測定する際において、前記塗装ガンと正常位置に配置された場合の前記被塗物との間の距離が60mm以上80mm以下とされることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の静電塗装装置。
【0023】
上記手段4によれば、塗装ガンと正常位置に配置された場合における被塗物との間の距離が60mm以上とされている。従って、被塗物に対する塗装ガンの接触や塗装ガン及び治具等間におけるスパークの発生を極めて効果的に防止することができる。
【0024】
また、上記手段4によれば、前記距離が80mm以下とされているため、アース状態が正常であるときに塗装ガンを流れる電流と、アース状態に異常があるときに塗装ガンを流れる電流との差をより一層増大させることができる。その結果、検査精度の更なる向上を図ることができる。
【0025】
手段5.被塗物に向けて塗料を噴射する塗装ガンと、当該塗装ガンに電圧を印加する電圧印加装置とを備えた静電塗装装置により、前記被塗物のアース状態を検査するアース状態検査方法であって、
前記被塗物に対して塗料を噴射していない状態において、正常位置に配置された場合の前記被塗物に対して一定の距離となる少なくとも3箇所以上の位置に前記電圧印加装置から電圧が印加された前記塗装ガンを配置した際に、
前記塗装ガンに高電圧が印加されているときに前記塗装ガンを流れる
放電電流を前記各位置にて測定し、
測定された電流に基づいて前記被塗物のアース状態を検査することを特徴とするアース状態検査方法。
【0026】
上記手段5によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0027】
手段6.前記塗装ガンを流れる電流を測定する際において、前記塗装ガンと正常位置に配置された場合の前記被塗物との間の距離が、前記塗装ガンにより前記被塗物を塗装する際における、前記塗装ガンと正常位置に配置された場合の前記被塗物との間の距離よりも小さくされることを特徴とする手段5に記載のアース状態検査方法。
【0028】
上記手段6によれば、上記手段2と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0029】
手段7.前記塗装ガンを流れる電流を測定する際において、前記塗装ガンと正常位置に配置された場合の前記被塗物との間の距離が40mm以上100mm以下とされることを特徴とする手段5又は6に記載のアース状態検査方法。
【0030】
上記手段7によれば、上記手段3と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0031】
手段8.前記塗装ガンを流れる電流を測定する際において、前記塗装ガンと正常位置に配置された場合の前記被塗物との間の距離が60mm以上80mm以下とされることを特徴とする手段5乃至7のいずれかに記載のアース状態検査方法。
【0032】
上記手段8によれば、上記手段4と同様の作用効果が奏されることとなる。