特許第5753149号(P5753149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753149
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】木質系硬質セメント板
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20150702BHJP
   C04B 18/26 20060101ALI20150702BHJP
   B32B 13/00 20060101ALI20150702BHJP
   C04B 16/02 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   C04B28/02
   C04B18/26
   B32B13/00
   C04B16/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-244751(P2012-244751)
(22)【出願日】2012年11月6日
(65)【公開番号】特開2014-91667(P2014-91667A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2012年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】391044801
【氏名又は名称】興亜不燃板工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】三枝 康晃
(72)【発明者】
【氏名】三枝 輝壹郎
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−095553(JP,A)
【文献】 特開2007−007876(JP,A)
【文献】 特開2000−016854(JP,A)
【文献】 特開2002−011825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 28/02
B32B 13/00
C04B 16/02
C04B 18/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木片と、セメントペーストとを混ぜ合わせ、圧縮変形により形成した木質系硬質セメント板において、
前記木片は、繊維方向に長い木毛と、木質材料を破砕機で破砕して形成した木材チップとを備え、
前記木材チップと前記セメントペーストとが混合されて形成された内側混合層と、この内側混合層の厚さ方向の両面にサンドイッチ構造で積層され、前記木毛と前記セメントペーストとが混合されて形成された一対の外側混合層とを備えていることを特徴とする木質系硬質セメント板。
【請求項2】
前記外側混合層は、前記木毛及び前記セメントペーストとともに、プレナーチップが混合されて形成されていることを特徴とする請求項1記載の木質系硬質セメント板。
【請求項3】
前記木片は、建築用などの廃材から出た未利用材や、森林の間伐材から形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の木質系硬質セメント板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質原料とセメントペーストとを混合し圧縮変形してなる木質系硬質セメント板に関する。
【背景技術】
【0002】
木質系セメント板は、例えば特許文献1、或いは、JIS A 5404にも規定されているように、主原料として木毛、木片などの木質原料とセメント(セメントペースト)とを用いて圧縮成形し、混合した後に圧縮成形してなる板材である。
この木質系セメント板は、かさ比重が0.5〜0.6程度の軽さにもかかわらず強靱である。耐火性に優れるとともに、断熱性にも優れ、建築材料として使用することで夏は涼しく、冬は温かい室内となる。しかも、外部の騒音を遮断し、室内の反響音も吸収して優れた音響特性を有する。
ところで、天井材、床下材などの建築材料として木質系セメント板を使用するには、木質系セメント板に打ち込まれたビスや釘など止着部材の引き抜き保持力を高めるとともに、曲げ強度が高い強靱性の部材を製造しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−7876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
止着部材の引き抜き保持力を高め、強靱性の木質系セメント板を製造するには、セメントペースト内で木質原料が密に絡み込むように混合作業に十分な時間を費やすことや、所定長さの木質原料を生成するために特殊な木質原料製造装置を使用することが考えられる。
しかし、このようにすると、木質系セメント板の製作に多くの手間と時間がかかり、製造単価が高騰してしまうおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、製造単価を抑制しつつ、止着部材の引き抜き保持力を高め、曲げ強度が高い強靱性を有した木質系硬質セメント板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、一の実施形態に係る木質系硬質セメント板は、木片と、セメントペーストとを混ぜ合わせ、圧縮変形により形成した木質系硬質セメント板において、前記木片は、繊維方向に長い木毛と、木質材料を破砕機で破砕して形成した木材チップとを備え、前記木材チップと前記セメントペーストとが混合されて形成された内側混合層と、この内側混合層の厚さ方向の両面にサンドイッチ構造で積層され、前記木毛と前記セメントペーストとが混合されて形成された一対の外側混合層とを備えている。
【0007】
また、この一の実施形態に係る木質系硬質セメント板は、前記外側混合層が、前記木毛及び前記セメントペーストとともに、プレナーチップが混合されて形成されていることが好ましい。
さらに、この一の実施形態に係る木質系硬質セメント板は、前記木片が、建築用などの廃材から出た未利用材や、森林の間伐材から形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る木質系硬質セメント板によれば、木材チップとセメントペーストとが混合されて形成された内側混合層と、この内側混合層の厚さ方向の両面にサンドイッチ構造で積層され、木毛と前記セメントペーストとが混合されて形成された外側混合層とを備えた構成としているので、製造単価を抑制しつつ、ビス、釘などの止着部材の引き抜き保持力を高め、曲げ強度が高い強靱性を有した木質系硬質セメント板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る第1実施形態の木質系硬質セメント板の内部組織を示す概略図である。
図2】本発明に係る第1実施形態の木質系硬質セメント板にビスを打ち込んだ状態を示す図である。
図3】本発明に係る第1実施形態の木質系硬質セメント板に曲げ荷重を作用した状態を示す図である。
図4】本発明に係る第2実施形態の木質系硬質セメント板の内部組織を示す概略図である。
図5】本発明に係る第3実施形態の木質系硬質セメント板の内部組織を示す概略図である。
図6】本発明に係る第4実施形態の木質系硬質セメント板の内部組織を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明に係る第1実施形態の木質系硬質セメント板を示すものである。
本実施形態の木質系硬質セメント板1は、木片2と、セメントペースト3とを混合し、これを圧縮して固化することにより製造された部材である。
【0011】
本実施形態の木片2は、木毛4、木材チップ5とで構成されている。
木毛4は、木材を繊維方向に細長く形成し、3〜5mm程度の幅で、20〜400mm程度の長さを有する木質材料である。なお、木材は、森林の間伐材である。
木材チップ5は、木の角材をハンマークラッシャーなどの破砕機で砕いて形成したものであり、長さが10〜30mmの方形であり、1〜5mm程度の厚さを有し、大小様々な形状の木質材料である。ここで、木の角材は、建築用などの廃材から出た未利用材である。
【0012】
そして、本実施形態の木質系硬質セメント板1は、木材チップ5とセメントペースト3とが混合されて形成された内側混合層6と、この内側混合層6の厚さ方向の両面にサンドイッチ構造で積層され、木毛4とセメントペースト3とが混合されて形成された外側混合層7とで構成されている。
本実施形態の木質系硬質セメント板1のセメントペースト3及び木片2(木毛4、木材チップ5)の重量%は、セメントペースト:木片=60:40に設定され、かさ比重が0.9〜1.2程度の部材である。
【0013】
次に、本実施形態の木質系硬質セメント板1の作用効果について述べる。
本実施形態の木質系硬質セメント板1によると、外側混合層7を構成する繊維方向に略直線状に延びた木毛4がセメントペースト3内に混合されているので、隣接する木毛4どうしが互いに密に絡み合った状態となる。そして、本実施形態の木毛4はカール形状となっていないので、外側混合層7に大きな空隙部などが生じない。したがって、本実施形態の木質系硬質セメント板1は、製造した木質系硬質セメント板毎に、曲げ、引っ張り強度、吸湿性、断熱性及び遮音性のばらつきが生じない。
【0014】
また、図2に示すように、木質系硬質セメント板1の板厚方向にビス8を打ち込むと、ビス8の先端部は、内側混合層6を構成する木材チップ5を貫通する。そして、ビス8の先端部が貫通して容積が拡大した木材チップ5は、これに隣接する他の木材チップ5から押し付け反力(図2の矢印H)が作用する。
これにより、本実施形態の木質系硬質セメント板1の内側混合層6まで打ち込んだビス8は、木材チップ5が保持力を作用しているので、大きな引き抜き荷重を加えないと引き抜くことができない。したがって、本実施形態の木質系硬質セメント板1は、ビス8が木材チップ5を混合した内側混合層6に打ち込まれることで、ビス8の引き抜き保持力を高めることができる。
【0015】
また、図3に示すように、本実施形態の木質系硬質セメント板1の幅方向中央部に対して板厚方向の上方及び下方か曲げ荷重Fを加えると、外側混合層7にサンドイッチ構造で挟まれている内側混合層6の隣接した木材チップ5同士が当接することで曲げ荷重Fに抗する反力を発生する。したがって、本実施形態の木質系硬質セメント板1は、板厚方向の曲げ力に対して木材チップ5を混合した内側混合層6が曲げ補強部として作用するので、曲げ強度が高い部材となる。
したがって、本実施形態の木質系硬質セメント板1は、ビス8など止着部材の引き抜き保持力を高めることができるとともに、曲げ強度が高い強靱性の部材とし、天井材、床下材などの建築材料として使用することができる。
【0016】
そして、本実施形態の木質系硬質セメント板1は、木材チップ5とセメントペースト3とが混合されて形成された内側混合層6と、この内側混合層6の厚さ方向の両面にサンドイッチ構造で積層され、木毛4とセメントペースト3とが混合されて形成された外側混合層7とで構成されており、セメントペースト内で木質原料が密に絡み込むように混合作業に十分な時間を費やすことや、所定長さの木質原料を生成するために特殊な木質原料製造装置を使用する必要がないので、製造単価を抑制することができる。
さらに、木毛4は森林の間伐材から形成され、木材チップ5は建築用などの廃材から出た未利用材で形成されているので、原料コストの低減化を図ることができるとともに、資源の有効利用を行うことができる。
【0017】
[第2実施形態]
次に、図4に示すものは、本発明に係る第2実施形態の木質系硬質セメント板を示すものである。なお、図1から図3に示した構成と同一構成部分には、同一符号を付して説明は省略する。
本実施形態の木質系硬質セメント板1は、木片2を、木毛4と木材チップ5とプレナーチップ9とで構成している。
【0018】
プレナーチップ9は、電動カンナにより形成される薄いカンナ屑であり、縦横の寸法差が小さい大体において方形をなす。
そして、本実施形態の外側混合層7は、木毛4と、プレナーチップ9と、セメントペースト3とが混合されて形成されている。
また、本実施形態の木質系硬質セメント板1のセメントペースト3及び木片2(木毛4、木材チップ5、プレナーチップ9)の重量%は、セメントペースト:木片=60:40に設定され、かさ比重が0.9〜1.2程度の部材である。
【0019】
本実施形態の木質系硬質セメント板1によると、外側混合層7を構成する木毛4及びプレナーチップ9が絡み合って密になる。これにより、木質系硬質セメント板1の表面を研磨すると凹凸の少ない平坦な面に仕上げることができるので、木質系硬質セメント板1の品質を向上させることができる。
そして、第1実施形態と同等に、製造した木質系硬質セメント板毎に、曲げ、引っ張り強度、吸湿性、断熱性及び遮音性のばらつきが生じない。
【0020】
また、本実施形態の木質系硬質セメント板1は、ビス8など止着部材の引き抜き保持力を高めることができるとともに、曲げ強度が高い強靱性の部材とし、天井材、床下材などの建築材料として使用することができるとともに、木材チップ5とセメントペースト3とが混合されて形成された内側混合層6と、この内側混合層6の厚さ方向の両面にサンドイッチ構造で積層され、木毛4、プレナーチップ9及びセメントペースト3が混合されて形成された外側混合層7とで構成されており、セメントペースト内で木質原料が密に絡み込むように混合作業に十分な時間を費やすことや、所定長さの木質原料を生成するために特殊な木質原料製造装置を使用する必要がないので、製造単価を抑制することができる。
【0021】
[第3実施形態]
次に、図5は、本発明に係る第3実施形態の木質系硬質セメント板を示すものである。
本実施形態の木質系硬質セメント板1は、木毛4とセメントペースト3とが混合されて形成された外側混合層7と、この外側混合層7の裏面に積層され、木材チップ5とセメントペースト3とが混合されて形成された内側混合層6との2層構造である。
本実施形態の木質系硬質セメント板1のセメントペースト3及び木片2(木毛4、木材チップ5)の重量%も、セメントペースト:木片=60:40に設定され、かさ比重が0.9〜1.2程度の部材である。
【0022】
次に、本実施形態の木質系硬質セメント板1の作用効果について述べる。
本実施形態の木質系硬質セメント板1の外側混合層7から板厚方向にビス8を打ち込むと、ビス8の先端部は、内側混合層6を構成する木材チップ5を貫通する。ビス8の先端部が貫通して容積が拡大した木材チップ5は、これに隣接する他の木材チップ5から押し付け反力が作用する。
【0023】
これにより、本実施形態の木質系硬質セメント板1も、内側混合層6まで打ち込んだビス8に対して木材チップ5が保持力を作用し、大きな引き抜き荷重を加えないと引き抜くことができない。したがって、本実施形態の木質系硬質セメント板1も、ビス8が木材チップ5を混合した内側混合層6に打ち込まれることで、ビス8の引き抜き保持力を高めることができる。
【0024】
また、本実施形態の木質系硬質セメント板1の幅方向中央部に対して板厚方向の上方及び下方か曲げ荷重を加えると、内側混合層6の隣接した木材チップ5同士が当接することで曲げ荷重に抗する反力を発生する。したがって、本実施形態の木質系硬質セメント板1は、板厚方向の曲げ力に対して木材チップ5を混合した内側混合層6が曲げ補強部として作用するので、曲げ強度が高い部材となる。
したがって、本実施形態の木質系硬質セメント板1は、ビス8など止着部材の引き抜き保持力を高めることができるとともに、曲げ強度が高い強靱性の部材とし、天井材、床下材などの建築材料として使用することができる。
【0025】
そして、本実施形態の木質系硬質セメント板1は、木材チップ5とセメントペースト3とが混合されて形成された内側混合層6と、この内側混合層6の厚さ方向に積層され、木毛4とセメントペースト3とが混合されて形成された外側混合層7とで構成されており、セメントペースト内で木質原料が密に絡み込むように混合作業に十分な時間を費やすことや、所定長さの木質原料を生成するために特殊な木質原料製造装置を使用する必要がないので、製造単価を抑制することができる。
【0026】
[第4実施形態]
次に、図6に示すものは、本発明に係る第4実施形態の木質系硬質セメント板を示すものである。
本実施形態の木質系硬質セメント板1は、内側混合層6とで2層構造とした外側混合層7が、木毛4と、プレナーチップ9と、セメントペースト3とが混合されて形成されている。
【0027】
本実施形態の木質系硬質セメント板1によると、外側混合層7を構成する木毛4及びプレナーチップ9が絡み合って密になる。これにより、木質系硬質セメント板1の表面を研磨すると凹凸の少ない平坦な面に仕上げることができるので、木質系硬質セメント板1の品質を向上させることができる。
そして、第3実施形態と同等に、製造した木質系硬質セメント板毎に、曲げ、引っ張り強度、吸湿性、断熱性及び遮音性のばらつきが生じない。そして、本実施形態の木質系硬質セメント板1も、製造単価を抑制しつつ、止着部材の引き抜き保持力を高め、曲げ強度が高い強靱性を有することができる。
【符号の説明】
【0028】
1…木質系硬質セメント板、2…木片、3…セメントペースト、4…木毛、5…木材チップ、6…内側混合層、7…外側混合層、8…ビス、9…プレナーチップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6