(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2本の延伸部どうしの間隔は、前記夫々の隣接部分のいずれの太さに比べても大きく、かつ、前記夫々の隣接部分どうしが同じ高さにある場合の前記離間寸法に比べて小さな寸法とされていることを特徴とする請求項1に記載の転倒防止具。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して詳しく説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図において付した同じ符号は同様の構成を有している。
先ず、転倒防止具の概要について説明する。
〔転倒防止具10の概要〕
図1は本発明の実施形態に係る転倒防止具10をガス容器2に装着した状態図である。また、
図2は
図1の転倒防止具10付近を拡大した部分拡大斜視図であり、
図2(a)が平常時における装着状態、
図2(b)が地震時における一状態を表した図である。
これらの図に示されるように、転倒防止具10は、複数のガス容器2,2の上部2aに固定されたリング4,4どうしを連結することで、ガス容器2の転倒を防止する留具であり、棒状のものを全体的に螺旋状にして形成されている。
【0013】
この転倒防止具10は、例えば圧縮ガスや液化ガスからなる高圧ガスを充填した容器に使用可能であり、特に、ガスの消費量が多い酸素・窒素・アルゴン等の液化ガスを大量に貯蔵する液化ガス容器に好適に使用され、図でもこの液化ガス容器が例示されている。即ち、ガス容器2である液化ガス容器はLGC(Liquid Gas Container)と呼ばれ、底面積に比べて高さのある大型のものが多く、しかも、その大型さから、取扱いが容易になるようにハンドルと呼ばれる運搬用のリング4が頂部に設けられた可搬式容器とされたタイプのものが多く、この大型可搬式容器に転倒防止具10は好適に使用可能である。
なお、
図1のリング4は、縦断面が円形状であり、上側から見た平面視が直径L2を有する円形状である。直径L2はガス容器2の円柱状胴部2cの直径L1と略同じである。
【0014】
そして、転倒防止具10は、複数のガス容器2,2の上部に固定された複数のリング4,4を連結するようになっている。すなわち、転倒防止具10は全体が螺旋状とされており(
図2参照)、複数基のガス容器2,2どうしを隣接させて、互いに隣接した複数のリング4,4の隣接部分4−1,4−2を当該螺旋状の隙間から入れて内側空間S1に配置し、隣接部分4−1と隣接部分4−2とにかけ渡すように懸けられる。
図の場合、隣接するガス容器2,2どうしの隙間W1(隣接するリング4,4どうしの隙間W3と同様)は使用者の置き方にもよるが、概ね0〜50mmである。
なお、
図1の転倒防止具10は、2基のガス容器2,2のリング4,4どうしを連結しているが、本発明の転倒防止具10はこのような形態に限られるものではなく、3基以上のガス容器の3つ以上のリングを、2つのリング4,4を連結する要領で続けて連結させる方がより好ましい。
また、
図1では、同じ高さのリング4,4に転倒防止具10が使用されているが、本発明はこのような態様に限られるものではなく、
図1の一点鎖線で囲った図に示されるように、リング4と、このリング4とは高さの異なるリング5とを連結するようにしてもよい。この場合、高さの異なり過ぎるリングを連結させようとすると、転倒防止具10は大きくなり過ぎて、それを例えば同じ高さのリング4,4に使用すると、計器類等7,8の余計な個所に当たる恐れが生じる。このため、転倒防止具10は、リング4に対して最大約65mmの高低差Hがあるリング5に使用可能とするようにしている。
【0015】
〔転倒防止具10の詳細〕
次に、転倒防止具10の詳細を
図3〜
図12を適宜参照しながら、
図2を中心に説明する。
転倒防止具10は、2つのリング4,4に架け渡されるようにした懸架部12と、この懸架部12の両端12f,12gから延伸する2本の延伸部15,15とで、全体が螺旋状とされている。
懸架部12は、
図7のTRの範囲の部分であり、この範囲は
図2(a)に示すように、2つのリング4,4が互いに隣接した夫々の隣接部分4−1,4−2を内側にして、その隣接部分4−1,4−2に同時に懸けられる部分であり、正面視が略コの字状又は略U字状とされている。
本実施形態の懸架部12は、
図5に示すように正面視が略コの字状であって、
図2(a)に示すように、平常時において、隣接部分4−1,4−2の上に載せられる上部12aと、略コの字状の互いに対向する辺に当たる対向部(正対視した場合の互いに対向する対向部)12b,12cと、上部12aと対向部12b,12cとの間の2個所の屈曲部12d,12eとからなり、垂れ下がった状態となっている。
【0016】
図5に示す上部12aの長さL3は内側空間S1の水平方向の長さと同様であり、
図2(a)に示す互いに隣接する2つのリング4,4の夫々の隣接部分4−1,4−2の太さを含む互いの間隔である離間寸法W2よりも大きく形成されている(離間寸法W2は、隣接部分4−1の太さと、隣接部分4−2の太さと、隣接部分4−1と隣接部分4−2との隙間W3とを加算した寸法である)。即ち、一般的な液化ガス容器のリング4の太さ(直径L4)は28〜34mm、隣接部分4−1と隣接部分4−2との隙間W3は約0〜50mm程度(通常は殆ど0)と想定されるから、同様の高さにあるリング4,4どうしを連結する場合、想定する最大の離間寸法W2は118mmである。また、本実施形態では、
図1の一点鎖線で囲った図のように、高低差のあるリング4,5を連結可能としており、この場合、最大高低差Hは約65mmとしている。従って、高低差のあるリング4,5どうしを連結する場合の最大離間寸法W4は約135mmであり、出来るだけ多くの種類のガス容器に統一して使用できるようにするためには、
図5の上部12aの長さL3は、
図1の離間寸法W4の最大寸法約135mmに対応して135mmとすることが出来る。但し、隣接部分4−1と隣接部分4−2との隙間W3は使用者の努力により0mmとすることも可能で、複数のガス容器どうしを密着させた方が転倒し難いことから、複数のガス容器どうしを密着させるように仕向ける意義を加味して、むしろ、長さL3を約135mmの範囲内に設定するのが好ましい。なお、離間寸法の最少値は、隣接部分4−1,4−2の各直径が28mm、隣接部分4−1と隣接部分4−2の間に隙間がなく、高低差Hが0mmの場合であり、このため、上部12aの長さL3は少なくとも約56mmは必要である(本実施形態は75mmである)。
【0017】
図2(a)に示すように、対向部12b,12cは、同じ高さのリング4,4に懸けられた平常時の懸架状態において、略垂直方向に沿って配置される。この対向部12b,12cの長さL5(
図5参照)については、寝かせて装着する使用方法(
図13参照)を考慮すると、少なくとも、高低差のないリング4,4どうしを連結する場合の離間寸法W2よりも大きく、好ましくは、高低差のあるリング4,5どうしを連結する場合の離間寸法W4より大きいのがよい。但し、対向部12b,12cの長さL5は、長過ぎると、転倒防止具10を寝かせて着脱する際に、バルブや計器類に当たったり、転倒する際の容器の傾きを抑え難くなったりする恐れがあるため、所要の長さが好ましい。本実施形態では約115mmとされている。
【0018】
2個所の屈曲部12d,12eは大きく屈曲した個所であり、
図5に示すように、正面視において上部12aと対向部12b,12cとが略直角になるように湾曲している。これにより、
図2(a)の懸架状態において、懸架部をC字状にする場合と比べて、隣接部分4−1,4−2が軸になって回転するような事態が少なくなる。従って、転倒防止具10は回転をするとリング4から脱落する状態が生じる恐れがあるが、その回転自体を可及的に阻止して、リング4からの脱落を防止できる。
また、転倒防止具10は、
図4に示すように、少なくとも内側側面(内側空間S1側)に、螺旋状の螺旋方向Pに所定の間隔をおいて列設した複数の凸部20を有しており、これにより、転倒防止具10の回転を防止している。なお、本実施形態の凸部20は内側側面だけでなく外側側面にも列設され、握ったときの滑り止めにもなっている。
【0019】
延伸部15は、
図2乃至
図4に示すように、懸架部12の両端12f,12gの夫々から、隣接部分4−1,4−2の太さを含む互いの間隔である離間寸法分(本実施形態の場合は
図1のW4に相当する)が凡そ延びた棒状であり、螺旋状の螺旋方向Pに略沿って形成されている。このため、
図2(b)に示すように、地震の縦揺れでガス容器が上下運動をしたとしても、隣接部分4−1,4−2が延伸部15に当たって、転倒防止具10がリング4,4から脱落する事態を有効に防止できる。なお、ここにいう「凡そ延びた」とは、地震の縦揺れで上下運動をした際、
図2(b)に示すように隣接部分4−1,4−2と延伸部15とが衝突可能なように、懸架部12の両端12f,12gの夫々から延伸するという意味である。従って、本実施形態の延伸部15は
図1の離間寸法W4に相当する分だけ延伸しているが、本発明はこれに限られず、ガス容器毎に異なる高低差Hや隙間W3による変動を考慮し、離間寸法W4より約0〜50mm程度長く延伸しても構わない。
また、本実施形態の延伸部15は回転を防止するために直線状とされているが、本発明はこれに限られず湾曲していても構わない。
延伸部15の内側にも複数の凸部20が形成されて、転倒防止具10の回転が防止されている。
【0020】
この2本の延伸部15,15どうしの間隔S2は、リング4の太さL4(つまり、隣接部分4−1,4−2の直径)に比べて大きくなっており、この間隔S2に対して隣接部分4−1,4−2を挿入して、転倒防止具10の内側空間S1に隣接部分4−1,4−2を入れられるようになっている。
また、2本の延伸部15,15どうしの間隔S2は、2つの隣接部分4−1,4−2が同じ高さにある場合の離間寸法W2に比べて小さな寸法とされている。従って、間隔S2に対して2個所の隣接部分4−1,4−2を同時に通すことはできず、それだけ転倒防止具10はリング4から外れ難い構造となっている。なお、
図1の一点鎖線で囲った図のように、2つのリング4,5に高低差がある場合の離間寸法W4を基準にしてしまうと、同じ高さの2つのリング4,4に装着した場合、地震で転倒防止具10が回転して間隔S2から抜け落ちる恐れがあるため、間隔S2は隣接部分4−1と隣接部分4−2とが同じ高さにある場合の離間寸法W2に比べて小さいことが好ましい。
なお、内側空間S1に隣接部分4−1,4−2を入れるためには、2つのリング4,4を結ぶ連結方向(
図2の左右方向)に略沿って転倒防止具10を寝かせ、2本の延伸部15,15どうしの間隔S2に対して、隣接部分4−1,4−2を一つずつ連続して通していけばよい(
図13参照)。
【0021】
そして、この2本の延伸部15,15の夫々の端部15aには、螺旋状の螺旋方向Pに略沿って突出する突出部30が設けられている。本実施形態の場合、
図2(a)の平常時の懸架状態において、延伸部15の端部15aから上側に向かって立ち上がるような立ち上がり部とされている。
このため、
図2(b)に示すように、転倒防止具10が地震で上に押し上げられ、その状態で2つのリング4,4が互いに離間する方向(図の矢印+R,−Rの方向)に動こうとしても、隣接部分4−1,4−2が突出部30,30の内側30a,及び懸架部12の対向部12b,12cの内側側面12b−1,12c−1に当たって、当該離間する方向+R,−Rの拡がりを規制することになる。具体的には、突出部30は単に当該離間する方向+R,−Rの障害になるだけではない。例えば、
図2(b)の左側の突出部30−1が−R方向に引っ張られると、右側の対向部12cも延伸部15を介して−R方向に引っ張られる。また、右側の突出部30−2が+R方向に引っ張られると、左側の対向部12bも延伸部15を介して+R方向に引っ張られる。このようにして、突出部30,30は懸架部12の開口部M側が当該離間する方向+R,−Rに向かって拡がろうとする力をキャンセルする。
【0022】
このような突出部30は、
図5及び
図6に示される長さL6が隣接部分4−1,4−2の半径r(
図2(b)参照)に比べて大きいことが好ましいが、あまり長過ぎると、転倒防止具10を装着するのが困難になってしまう。このため、突出部30の長さL6は、懸架部12の形状を考慮しながら決められる。
具体的には、
図6に示すように、螺旋状の内側空間S1における、突出部30の先端30bと、懸架部12の2箇所の大きな屈曲部12e,12dのうち先端30bから最も離れた屈曲部12dの内側周辺との間の距離L7は、離間寸法W4より大きくなっている。なお、「屈曲部12dの内側周辺」とは、
図6の破線のように、屈曲部12dの内側に隣接部分4−2を寄せた場合において、概ね、隣接部分4−2と接触する上部12aの位置P1から対向部12bの位置P2までの範囲をいう。
本実施形態の距離L7は離間寸法W4より少し大きく設定しており、突出部30の先端30bと屈曲部12dとの間に隣接部分4−1,4−2を配置した際、屈曲部12d側の隣接部分4−2と上部12aとの間に隙間S3を有している。
但し、螺旋状の内側空間S1における、突出部30の先端30bと、2箇所の大きな屈曲部12d,12eのうち先端30bに最も近い屈曲部12eとの距離L8は、離間寸法W4より小さく形成されている。これにより、転倒防止具10を隣接部分4−1,4−2に着脱するためには、実質、突出部30の先端30bとそこから最も離れた屈曲部12dの内側周辺当たりとの間に、隣接部分4−1,4−2を配置する方法のみとなる。
【0023】
また、
図9及び
図10に示すように、突出部30と、懸架部12のうち最も当該突出部30に近接する部分12c−1又は12b−1とは略平行である。そうすると、後述する使用方法で説明するように、2本の延伸部15,15どうしの間隔S2に続けて、突出部30とこれに隣接する懸架部12との間にリング4の隣接部分を通す際、略平行な部分がガイドになってリングを通し易くなる。
図9の突出部30と懸架部12のうち最も突出部30に近接する部分12c−1との距離、及び,
図10の突出部30と懸架部12のうち最も突出部30に近接する部分12b−1との距離は、共にリング4の直径L4より僅かに大きい45mmである。
また、
図5及び
図6に示すように、突出部30は延伸部15と一体的に形成された折り返し形状であり、懸架部12を正対視した場合において、突出部30の先端30bは、懸架部12の互いに対向する対向部12b,12cの内側側面12b−1,12c−1よりも外側に配置されている。具体的には、2つの突出部30,30は根元(延伸部15の先端15a)から先端30bに向かうに従って除々に互いに離間し、対向部12b,12cに沿った方向Zに対して所要の角度θをもって傾いている。これにより、地震の縦揺れにより転倒防止具が押し上げられても、
図2(b)に示すように、隣接部分4−1,4−2を内側空間に入れた状態を維持し、隣接部分4−1,4−2が突出部30の外側に出てしまう事態を有効に防止できる。なお、この所要の角度θはリングの曲がり方が大きければ大きな角度を、曲がり方が小さければ小さな角度とされるのが好ましい。
【0024】
〔転倒防止具の強度について〕
次に、転倒防止具10の強度について説明する。
以上の転倒防止具10は、N=α×M/xの式により導きだされる力が加わった場合に耐えられるようにされている。なお、Nは転倒防止具に加わる力(kgf)、αは2011年3月11日の東日本震災時の仙台の最高加速度である約15m/s
2(1515gal)、Mは質量(kg)、xは容器の高さ/底面から重心位置CLまでの高さである。
上述した実施形態に係る一般的な液化ガスの大型可搬式容器(LGC)では、液体ガスを充填した状態の質量が約300kgであり、
図1に示すように、転倒防止具10をガス容器2のリング4(頂部)に装着し、重心位置CLをガス容器2の中心と仮定した場合、重心にかかる力Mαと、転倒防止具10にかかる力Nについて、ガス容器2の底部の転倒防止具10とは反対側のPA点回りのモーメントを考えると、底面から重心位置CLまでの高さH2と底面から転倒防止具10の上端(略リング4上面)までの高さが1:2であることから、以下の式1及び式2の関係が成り立つ。
Mα=2N・・・(式1)
Mα=300〔kg〕×15〔m/s
2〕・・・(式2)
このため、式1及び式2から、N≒230〔kgf〕であり、本実施形態の場合、転倒防止具10は約230kgfの力が加わっても耐えられるようになっている。具体的には、転倒防止具10は、直径10mmの炭素鋼で形成されている。
【0025】
〔転倒防止具10の使用方法〕
次に、本実施形態の転倒防止具10の使用方法を説明する。
図13は転倒防止具10の使用方法の説明図であり、
図14は転倒防止具10の
図13に続く使用方法の説明図である。
本転倒防止具10で2つのリングを連結させるためには、先ず、
図13(a)に示すように、複数のガス容器を密着させるように近接させ、複数のリング40,41どうしを隣接させる(勿論密着させてもよい)。そして、転倒防止具10を2つのリング40,41の連結方向Xに略沿って寝かせ、延伸部15,15どうしの間隔S2に対して、リング40,41の隣接した隣接部分4−1,4−2の内、一方の隣接部分4−1を挿入する。
この際、隣接部分4−1は間隔S2を通った後、続けて突出部30,30と懸架部12の側部12b,12cとの間を通ることになる。この点、突出部30,30と懸架部12のうち最も突出部30,30に近接する部分12c−1,12b−1とは略平行である(
図9及び
図10参照)。そうすると、突出部30とこれに近接する懸架部12との間に隣接部分4−1を通す際、略平行な部分がガイドになって隣接部分4−1を通し易くなる。
【0026】
続いて、
図13(b)に示すように、延伸部15,15どうしの間隔S2に対して、リング40,41の隣接した隣接部分4−1,4−2の内、他方の隣接部分4−2を挿入する。
この際、対向部12b,12cの長さL5は、ガス容器のバルブや計器類の位置、
図1の一点鎖線で囲った図に示すリング4,5の高低差、離間寸法W2,W4を加味して設定しており、
図13(b)に示すように、延伸部15,15どうしの間隔S2に対して他方の隣接部分4−2が通過し終えた際、一方及び他方の隣接部分4−1,4−2が内側空間S1に確実に入ると共に、バルブや計器類に転倒防止具10が衝突することを防止している。
そして、転倒防止具10を水平方向に回転させる等して、内側空間S1において、突出部30の先端30bと、懸架部12の2箇所の大きな屈曲部のうち先端30bから最も離れた屈曲部12eの内側周辺との間に、隣接部分4−1,4−2を配置する。本実施形態では、先端30bと屈曲部12eとを結ぶ仮想線KRと連結方向Xとを合わせる。そうすると、平面視において、突出部30は他方の隣接部分4−2のリング41の内側に配置される。なお、リング41の内側に配置されるのは2つの突出部30,30の内いずれか一つでよい。
【0027】
次いで、
図13(b)のリング41の内側に配置された突出部30がリング41の内側を通過するように移動させると同時に(図の場合、突出部30がリング41内を潜って下側に移動)、懸架部12の上部12aをリング40の内側を通過するように移動させ(図の場合、上に持ち上げる)、
図14(c)に示すように、転倒防止具10を立たせる。
そして、手を離せば、転倒防止具10は落下し、
図14(d)に示すように、隣接部分4−1,4−2に懸架部12が懸けられ、転倒防止具10は隣接部分4−1,4−2どうしを連結する。
【0028】
このように、本実施形態の転倒防止具10は、寝かせて隣接部分4−1,4−2に挿入し(
図13(a))、仮想線KRと連結方向Xとを略合わせ(
図13(b))、回転させて立ち上げ(
図14(c)、手を離す(
図14(d))という少ないステップで、転倒防止具10をリング40,41に装着することができる。そして、転倒防止具10を取り外すためには、この装着方法と逆のステップを踏むことになるが、地震でこの逆のステップが踏まれることは極めて考え難く、転倒防止具10が地震でリング40,41から脱落することはない。
なお、上記装着方法と逆のステップを踏まないでも、何らかの力が働いて、懸架部12の対向部12bと対向部12cとの間隔が拡げられれば、転倒防止具10はリング40,41から脱落する。しかし、屈曲部12e,12dの近くでは、2つのリング40,41が互いに離間する方向+R,−Rの力に強い。また、リング40,41が、
図2(b)のように、懸架部12の開口部M側が開き易い位置になってしまった場合であっても、突出部30,30が当該離間する方向+R,−Rの拡がりを規制するため、開口部Mの開きを防止できる。
また、突出部30の先端30bは、懸架部12を正対視した場合において、懸架部12の対向部12b,12cの内側側面よりも外側に配置されている(
図5参照)。これにより、地震の縦揺れにより転倒防止具10が押し上げられて、懸架部12の対向部12b,12cに沿って相対的にリングが延伸部15に近寄ってきても、
図14(d)の二点鎖線のリング40のように、リング40が突出部30の外側に出てしまう事態を防止できる。従って、突出部30と対向部12bとの間にリング40が入ることを防止し、延伸部15,15どうしの間隔S2が拡がって、落下する恐れが高まることも防止している。
【0029】
〔実験〕
本実施形態の転倒防止具10は以上のように構成され、その効果を確認するため、以下の実験を行った。
A.実験の条件
上述した転倒防止具10を複数のガス容器のリングに装着して、これを三次元振動台の上に載置し、人工的に2011年3月11日の東日本大震災の仙台の振動を再現した。但し、東日本大震災では第一波と第二波とを合わせて約140秒間の振動があり、第一波ではガス容器は転倒していないことが分かったため、第二波で実験を行った。
図15はこの第二波の加速度を表す図で、
図15(a)の縦は南北方向の加速度、
図15(b)の縦は東西方向の加速度、
図15(c)の縦は上下方向の加速度であり、いずれの図も横方向は時間を表している。
ガス容器は、底面の直径(
図1のL1)が約500mm、高さが約1500mmであり、上部に上述したリングが固定されている。そして、ガス容器の中には水を満たした約300kgのものを用いた。
【0030】
B.実験の結果
図16はその実験結果である。
この図に示されるように、3基のガス容器を三角形の中に収めるように互いに隣接させて配置し、隣接する全てのリングを連結した実験(1)、4基のガス容器を四角形の中に収めるように互いに隣接させて配置し、隣接する全てのリングを連結した実験(2)、縦横4基ずつ計16基のガス容器を碁盤目状に密集させるように並べ、外周のガス容器の全てのリングを外周方向に沿って連続して繋げて、12基のガス容器を環状に連結した実験(3)では、いずれもガス容器の転倒は見られなかった。
このような実験結果から、底面の直径に対する高さが約3倍以下の液化ガス容器については、3基以上の連結固定(実験(1))、環状連結による固定(実験(2)(3))は、転倒防止対策として有効であることが分かった。
なお、この実験の前、出願人は、
図2の延伸部15と突出部30がない懸架部12だけの転倒防止具を作り(懸架部12の開口部Mを
図2よりも少し窄ませている)、これを用いて上記実験と同様の実験を行ったが、すべての実験でガス容器が転倒した。その転倒原因を調査したところ、懸架部12の開口部M側(即ち、装着口)が拡がって、転倒防止具が脱落していることが分かった。しかし、
図3乃至
図12の転倒防止具10では、懸架部12の開口部M側の拡がりを規制し、突出部30が隣接部分4と引っかかることにより転倒防止具の脱落はなかった。このようなことからも本実施形態の転倒防止具10の優位性が分かる。
【0031】
本発明の実施形態は以上のように構成され、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、上記実施形態において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、本発明の範囲は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、
図17〜
図22の変形例に係る転倒防止具35,36,37,38,39であってもよい。以下、
図17〜
図22の転倒防止具35,36,37,38,39について説明する。
図17は本発明の実施形態の第一の変形例に係る転倒防止具35の斜視図である。
この図の転倒防止具35は、懸架部12の上部12aに持ち手40が設けられている。持ち手40は筒状であって、クッション性を有するのが好ましい。
【0032】
図18は本発明の実施形態の第二の変形例に係る転倒防止具36の斜視図である。
この図の転倒防止具36は、懸架部12の外側に小さな輪状部42を有している。輪状部42は、紐やワイヤー等を通すことができる貫通孔43を有し、これにより、紐やワイヤー等を介して、ガス容器に繋げておくことができる。従って、転倒防止具36はガス容器と一体で管理でき、特に、複数種のガス容器に対応して複数種の転倒防止具36を使用する場合、対応したガス容器に繋げて管理できる。なお、
図18の転倒防止具36は輪状部42が屈曲部12eの外側に配置されている。
【0033】
図19は本発明の実施形態の第三の変形例に係る転倒防止具37の正面図である。なお、
図19では
図4等の凸部20が省略して図示されている。
この図の転倒防止具37は、突出部30−1,30−1がリングの隣接部分4−1,4−2の外周面に対応して湾曲している。突出部30−1の先端30−1aと突出部30−1の先端30−1bとの距離は、少なくとも離間寸法W2より大きく形成されている。このため、地震で転倒防止具37が押し上げられ、隣接部分4−1,4−2が延伸部15側に来て、互いに離間する方向+R,−Rに移動しようとしても、突出部30−1,30−1と隣接部分4−1,4−2とが確実に係止される。
なお、この図のように、懸架部12の対向部12ba,12caは外側に膨らんで丸みを帯びてもよいが、
図3のように直線状であってもよい。
【0034】
図20は本発明の実施形態の第四の変形例に係る転倒防止具38の正面図である。
この図に示されるように、突出部30−2,30−2は、
図3乃至
図10のように延伸部15が折り返されたような形状でなくてもよく、別部材を延伸部15の先端に接続するようにしてもよい。
また、この図に示されるように、突出部30−2,30−2は、螺旋状の螺旋方向に完全に沿っていなくてもよく、
図19のような湾曲も含めて全体的に略沿っていればよい。即ち、
図3乃至
図10の突出部30、
図19の突出部30−1、
図20の突出部30−2に必要な構成である「螺旋方向に略沿って」とは、地震時に隣接部分4−1,4−2が延伸部15側にあって互いに離間しようとした際、突出部30,30−1、30−2と隣接部分4−1,4−2とが係止可能であることを意味する。
【0035】
図21及び
図22は、本発明の実施形態の第五の変形例に係る転倒防止具39であって、
図21はその正面図、
図22はその右側面図である。
この図に示されるように、突出部30,30の先端30b,30bからさらに延伸した脚部45が形成されてもよい。脚部45は突出部30の先端30bから反転するように屈曲して図の下側に向かい、延伸部15の外側15bまで伸びている。これにより、転倒防止具39を床に安定して立てて置くことができ、床に寝かせた場合に比べて、持ち上げることが容易になる。なお、脚部45は、転倒防止具39を装着する際の邪魔にならないように、先端30aから可及的に直ぐに屈曲するのが好ましい。