(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該低熱膨張性樹脂層がポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂の1種以上を含有する層である請求項1又は2に記載の面状ヒータ。
2つの互いに熱融着可能な該フッ素樹脂層Aの少なくとも1つ、及び/又は、該熱拡散材料層のそれぞれの表面に設けた熱融着可能な該フッ素樹脂層Bの少なくとも1つは、複数の熱融着可能なフッ素樹脂フィルムを積層し熱融着して形成されてなる層である請求項1〜3のいずれかに記載の面状ヒータ。
該フッ素樹脂層A及びBは、それぞれ同一の材料又は異なる材料からなってもよく、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)及び/又はPFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)からなる請求項1〜6のいずれかに記載の面状ヒータ。
低熱膨張性樹脂層、フッ素樹脂層A及びBのうちの1層以上の間、低熱膨張性樹脂層とフッ素樹脂層Aの間に、1つ以上の温度センサを埋設してなる請求項1〜9のいずれかに記載の面状ヒータ。
低熱膨張性樹脂層を構成する複数の層、フッ素樹脂層A及びBを構成する該複数の熱融着可能なフッ素樹脂フィルムの間のいずれかに、1つ以上の温度センサを設けてなる請求項10に記載の面状ヒータ。
所望により予め該端子部にリード線が接続された箇所が予め熱融着材料によって被覆された、導電性発熱体に接続した端子部にリード線が接続されてなるシート状発熱体に対して、
該導電性発熱体の少なくとも片面の全面、又は該導電性発熱体と該端子部を含む該シート状発熱体の少なくとも片面の全面に、熱膨張係数が8×10−5/℃以下である低熱膨張性樹脂層を設け、
両面から互いに熱融着可能なフッ素樹脂層Aにより挟持して熱融着し、
さらに、両面の熱融着可能な該フッ素樹脂層Aのそれぞれの表面にグラファイト、及び、無機物質を多量に含有した樹脂から選ばれたシート又は箔からなる熱拡散材料層を設け、
この熱拡散材料層のさらに表面に熱融着可能な別のフッ素樹脂層Bを設ける工程を有する、
面状ヒータの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のヒータによれば、ポリイミドを使用する場合には、ポリイミドが有する耐酸性、耐アルカリ性、及び耐溶剤性が良好ではなく、特に加熱条件下にてこれらに関する性質として耐久性に劣るため、ヒータ全体が短寿命となることが懸念される。
加えて、ポリイミドが有する不純物が被加熱液体中に溶解、又は分散する(Contamination)可能性があり、特に半導体製造関連、医薬・バイオ関連、血液や薬液の直接加熱等、不純物の混入に敏感な被加熱液体を得る場合には、ポリイミドを使用するヒータを使用することができない。
加えて、そのシート状のヒータの表面は、通電する発熱体の形状のパターン、つまり、該発熱体を構成する電熱線等の配置を反映した高温に加熱されたムラがあるパターンが形成され、特に局所的に温度が高い場所、つまりヒートスポットが形成される。
このようなヒートスポットが形成されることは、ヒータ表面の加熱温度にムラが生じることを意味している。そうすると、使用するにつれて、面状ヒータの表面層等の加熱温度が高い表面の樹脂部分は局所的に熱劣化が進展したり、部分的に溶融する。また、その樹脂部分等が熱膨張をすることによって、低温の部位との熱膨張率の違いに起因して、繰り返し使用するとヒータ全体が波を打ってしまう。加えて被加熱材料によっては、部分的に加熱温度が高くなり、被加熱材料自身が変質する等の支障が生じることが懸念されている。
またこのように表面温度のムラが大きく、使用時において部分的にでも被加熱物を変性させるほどの温度にまで加熱されるときには、被加熱物を均一に加熱するどころか、加熱することによる目的を達成できない可能性がある。特に比較的低温かつ均一に被加熱物を加熱する必要があるときに、このような支障を生じることになる。
したがって、これらの支障を回避するために、局所的に高温になる箇所の加熱温度が溶融する温度に達しないように、あるいは、ヒータに供給する電力を抑制して、加熱温度を低下させたり、加熱時の温度上昇速度を小さくする等の使用上の工夫を必要としていた。
尚、特許文献2に示すように、フッ素樹脂によるモールド中に発熱体を入れると、モールドにより形成された樹脂層は厚く、この樹脂層の厚み方向には伝熱しにくいので、発熱した熱がモールドの外に放熱されにくく、低い加熱温度となり、結果的にエネルギー効率が良くない加熱装置となる。また必要以上に面状ヒータが大型化することになる。
また、モールド成型によるために、加熱装置の小型化が困難で、かつ発熱体の配線パターンも限定されるために均一な発熱も困難であった。
【0006】
特許文献3〜5に記載された手段によれば、被加熱物が均一に加熱されるものの、ヒータの外表面上には金属等の放熱のための面が形成されることになり、被加熱物質によっては、その金属表面が劣化することが懸念される。
また発熱体を挟む樹脂は温度安定性が良好であっても、上記特許文献1に記載の発明と同様に、ポリイミドを使用する場合には、ポリイミドが有する耐酸性、耐アルカリ性、及び耐溶剤性が良好ではなく、特に加熱条件下にてこれらに関する性質として耐久性に劣るため、ヒータ全体が短寿命となることが懸念される。加えて、ポリイミドが有する不純物が被加熱液中に溶解、又は分散する(Contamination)可能性があり、特に半導体製造関連、医薬・バイオ関連、血液や薬液の直接加熱等、不純物の混入に敏感な被加熱液体を得る場合には、ポリイミドを使用するヒータを使用することができない。
さらに、セラミック層を使用することにより、必要以上に厚みがあるヒータになる可能性がある。
また、シート状発熱体の両面のそれぞれに2層からなるフッ素樹脂層を設け、その2層のフッ素樹脂層の間に熱拡散材料層を設けて面状ヒータとすることも考えられる。この場合には、該シート状発熱体の熱膨張係数に対して該フッ素樹脂の熱膨張係数が比較的大きいために、温度の変動によってフッ素樹脂層が伸縮しても該シート状発熱体が同様の伸縮をせず、結果的に、該シート状発熱体と該フッ素樹脂層との間で剥離が発生したり、又は該フッ素樹脂層の伸縮につれて、該シート状発熱体にも伸縮する方向に力が加わり、面状ヒータに皺が発生したりする可能性がある。
特に300℃近くの高温での液体加熱にこの面状ヒータを使用する場合には、発熱体近傍のフッ素樹脂層が軟化し、膨張・収縮量が大きくなり、その結果として、当初の発熱線の配置(パターン)が崩れ、発熱線同士や発熱線とリードとの接触等によるショートの可能性があった。
さらに高温に発熱させると、該シート状発熱体に直接接する該フッ素樹脂が溶融し始めて、該シート状発熱体と熱拡散層とが接触することにより、ショートする可能性があった。
加えて、発熱開始後にシート状発熱体表面から外部に速やかに放熱させることが困難であって、シート状発熱体自体が過度に加熱されるものの、すぐに外部を十分に加熱することが困難となる可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解消するためのものであり、具体的には以下の通りである。
1.導電性発熱体に接続した端子部にリード線が接続されてなるシート状発熱体と、
該導電性発熱体の少なくとも片面の全面、又は該導電性発熱体と該端子部を含む該シート状発熱体の少なくとも片面の全面に、熱膨張係数が8×10
−5/℃以下である低熱膨張性樹脂層を設け、
その両面から互いに熱融着可能なフッ素樹脂層Aにより挟持して熱融着し、
さらに、両面の熱融着可能な該フッ素樹脂層Aのそれぞれの表面に熱拡散材料層を設け、
この熱拡散材料層のさらに表面に熱融着可能な別のフッ素樹脂層Bを設けてなる、
面状ヒータ。
2.該低熱膨張性樹脂層が融点200℃以上の樹脂を含有する請求項1に記載の面状ヒータ。
3.該低熱膨張性樹脂層がポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂の1種以上を含有する層である1又は2に記載の面状ヒータ。
4.2つの互いに熱融着可能な該フッ素樹脂層Aの少なくとも1つ、及び/又は、該熱拡散材料層のそれぞれの表面に設けた熱融着可能な該フッ素樹脂層Bの少なくとも1つは、複数の熱融着可能なフッ素樹脂フィルムを積層し熱融着して形成されてなる層である1〜3のいずれかに記載の面状ヒータ。
5.該導電性発熱体に接続した端子部にリード線が接続された箇所は、予め熱融着材料によって被覆されている1〜4のいずれかに記載の面状ヒータ。
6.シート状発熱体や熱拡散材料層の端面までフッ素樹脂層A及びBにより封止されてなる1〜5のいずれかに記載の面状ヒータ。
7.該フッ素樹脂層A及びBは、それぞれ同一の材料又は異なる材料からなってもよく、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)及び/又はPFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)からなる1〜6のいずれかに記載の面状ヒータ。
8.該熱拡散材料層が、金属、グラファイト、セラミックス及び樹脂から選ばれたシート又は箔からなる1〜7のいずれかに記載の面状ヒータ。
9.該熱拡散材料層の両面及び全周の全てが該フッ素樹脂層A及びBにより被覆される構造を有する1〜8のいずれかに記載の面状ヒータ。
10.該フッ素樹脂層A及びBの厚さが互いに独立して0.025〜3.0mmである1〜9のいずれかに記載の面状ヒータ。
11.低熱膨張性樹脂層、フッ素樹脂層A及びBのうちの1層以上の間、低熱膨張性樹脂層とフッ素樹脂層Aの間に、1つ以上の温度センサを埋設してなる請求項1〜10のいずれかに記載の面状ヒータ。
12.低熱膨張性樹脂層を構成する複数の層、フッ素樹脂層A及びBを構成する該複数の熱融着可能なフッ素樹脂フィルムの間のいずれかに、1つ以上の温度センサを設けてなる請求項11に記載の面状ヒータ。
13.所望により予め端子部にリード線が接続された箇所が熱融着材料によって被覆された、導電性発熱体に接続した端子部にリード線が接続されてなるシート状発熱体に対して、
該導電性発熱体の少なくとも片面の全面、又は該導電性発熱体と該端子部を含む該シート状発熱体の少なくとも片面の全面に、熱膨張係数が8×10
−5/℃以下である低熱膨張性樹脂層を設け、
両面から互いに熱融着可能なフッ素樹脂層Aにより挟持して熱融着し、
さらに、両面の熱融着可能な該フッ素樹脂層Aのそれぞれの表面に熱拡散材料層を設け、
この熱拡散材料層のさらに表面に熱融着可能な別のフッ素樹脂層Bを設ける工程を有する、
面状ヒータの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の面状ヒータによれば、熱拡散材料層を有するので、導電性発熱体が極めて薄いものであっても、製造時の樹脂の加熱による熱融着工程時において、樹脂の収縮による変形する力が、樹脂と圧着されている該熱拡散材料層によって抑制されるので、導電性発熱体自体に伝わることがない。そのため、面状ヒータが波状に変形したり反ったりすることがないため、正確に平面の面状ヒータとすることができる。そのため安定した一定の形状とすることができ、被加熱液体中に浸漬をした場合であっても、面状ヒータを確実に完全に浸漬することが可能になる。
また、熱拡散材料層を有することによって、シート状発熱体で発生した熱が速やかに一旦熱拡散材料層に吸収されて、熱拡散材料層自身を均一に加熱する。そして加熱された熱拡散材料層から面状ヒータの表面に対して放熱されるので、結果的に面状ヒータ表面を均一に加熱できる。その結果、熱拡散材料層を使用せずにムラがある加熱のときよりも、面状ヒータを構成する各層、特に樹脂からなる層に対して加熱温度を過剰に高くすることを防止できる。
そして、被加熱液体に対してもムラなく加熱でき、より高い電力を加えて速やかな加熱速度とすることや、より低電力での穏やかな加熱速度による加熱等の所望の加熱条件による加熱を行うことができる。このとき、面状ヒータの樹脂部分が過剰な高温での加熱により劣化したり、溶融したりすることがない。
熱融着可能なフッ素樹脂層A及びBを採用することによって、より確実に各層を固着できると共に、最外層をフッ素樹脂層Bとすることによって、被加熱液体の酸性、アルカリ性、水性溶液、有機溶媒溶液等の各種の性質に対して直接浸漬して使用した場合であっても安定し、劣化することがないので、結果的に面状ヒータの寿命を長くすることができる。
これらの効果に加えて、製造時又は使用時においてフッ素樹脂層が熱膨張及び熱収縮する際に発熱線に作用する外力を著しく低減できるため、発熱線のパターン崩れを防止でき、ひいては発熱線の配線や接続するリード線がショートすることを防止することができるため、300℃を超える高温においても長時間、安定して使用できるようになる。
また、高温加熱時において、仮にフッ素樹脂が溶解してもシート状発熱体は熱拡散材料に接触することがないので安全である。
さらにシート状発熱体の外部に速やかに放熱することができるので、加熱開始後にシート状発熱体自体が過度に加熱されることがなく、面状ヒータの抵抗値が大きく上昇することがないので、安全に、安心して、安定的に被加熱物を長時間加熱することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の面状ヒータは、被加熱物中に投入する等して被加熱物を加熱するためのヒータであり、熱拡散材料層を有することによって、フッ素樹脂層を熱融着することによる製造時にフッ素樹脂自体の不規則な収縮による変形や変質などを防止でき、また、加熱によりフッ素樹脂が仮に溶解しても低熱膨張性樹脂層の耐熱性が十分であれば、シート状発熱体が直接熱拡散材料層に接触することを防止できる。
加えて面状ヒータとして均一に発熱できるので、被加熱物を部分的に過剰な高温で加熱することがない。かつ内部に温度センサを埋設できるために、精密に被加熱物の加熱温度を制御することが可能である。
以下に本発明の面状ヒータの構成部材及び構造について説明する。
【0011】
(シート状発熱体)
本発明におけるシート状発熱体は、導電性発熱体と、該導電性発熱体に接続した端子部と、端子部に接続されたリード線の接続部からなる。
導電性発熱体は、銅、ステンレス、ニッケルとクロムの合金等の金属、炭化ケイ素等のセラミックス、カーボン等の、公知の電気抵抗により発熱する材料からなるシートや薄膜のパターン、あるいは細線から構成することもでき、その導電性発熱体の全体の形状、パターンや発熱する線の太さ、若しくはパターンの幅等は、目的とする加熱温度や面状ヒータの大きさ等に基づいて適宜調整できる。
特に薄膜として形成する場合には、所望に応じて、本発明中のフッ素樹脂層Aとなるフッ素樹脂シートの片面に予め該パターンを設けておくこともできる。
【0012】
端子部はリード線を導電性発熱体に接続するためのものであり、導電性発熱体と一体に形成したり、導電性発熱体の端部に接合されて接続されていたりしても良い。いずれにしてもリード線と接続するための形状及び構造を有することが必要である。
通常、リード線は絶縁材料で被覆されているが、該端子部との接続箇所は該絶縁材料が剥離されている。そのため、本発明おけるシート状発熱体の該端子部及び該リード線の特に絶縁材料が剥離された箇所を予め、フッ素樹脂層Aと同じ材料で被覆しておくこともできる。この場合には、その後にフッ素樹脂層Aで再度被覆する必要はない。
【0013】
(低熱膨張性樹脂層)
本発明における低熱膨張性樹脂層としては熱膨張係数が8×10
−5/℃以下、より好ましくは5×10
−5/℃以下である樹脂層であり、耐熱性に優れた材料から成ることが好ましい。その結果、面状ヒータの製造時又は使用時においてフッ素樹脂層が膨張及び収縮することによって、直接的にシート状発熱体に伸縮に伴う力が加えられ、シート状発熱体に曲げや皺が発生することを防止できる。
特に300℃近くの高温での液体加熱にこの面状ヒータを使用する場合には、発熱体近傍のフッ素樹脂層が軟化し、膨張・収縮量が大きくなり、その結果として、生じる当初の発熱線の配置(パターン)の崩れ、ひいてはショートすることを防止することができる。
また仮にシート状発熱体とフッ素樹脂層Aとの密着性が十分でなくても、低熱膨張性樹脂層としてこれらに対して密着性が良好な層を採用することによって、この密着性を向上させ、高温加熱時においてもシート発熱体がフッ素樹脂Aから分離することがない。
このような低熱膨張樹脂層とするために、例えば、ポリオレフィン等の樹脂に非導電性無機フィラーを多く配合することによって、無機フィラー含有樹脂層として絶縁性を維持すると共に、熱膨張率を低くすることができるが、樹脂材料自体を熱膨張率が低いものを選択して使用することもできる。
さらに、これらの熱膨張率が低い樹脂の中でも、耐熱性に優れて、より高温での加熱が可能で、フッ素樹脂層との密着性に優れたものとするためには、フッ素樹脂よりも高融点、好ましくは融点200℃以上であるポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂の1種以上を含有する樹脂材料を採用することが好ましい。 このような耐熱性に優れる樹脂を採用することによって、面状ヒータで高温に加熱する際に、シート状発熱体からの熱により、直接フッ素樹脂層Aが溶融することなく、仮に溶融してもシート状発熱体が直接熱拡散材料層に接することがなく、熱伝導性の向上を図ることができる。
また低熱膨張性樹脂層はそれぞれ1層以上からなる層であっても良く、複数層からなる場合には、同じ組成の材料であっても異なる組成の材料であってもよい。
低熱膨張性樹脂層は導電性発熱体の片面又は両面の全面、又は該導電性発熱体と該端子部を含む該シート状発熱体の片面又は両面の全面に設けるものであり、特に高温に加熱する用途に使用するものである場合には、シート状発熱体が熱拡散材料層に直接接することがないように、両面に設けることが必要である。
【0014】
(フッ素樹脂層A及びB)
本発明におけるフッ素樹脂層Aとは、上記シート状発熱体と熱拡散材料層との間に形成される層であり、フッ素樹脂層Bとは該フッ素樹脂層Aに対して熱拡散材料層を挟んで積層される層である。
本発明にて使用可能なフッ素樹脂層A及びBは、それぞれ、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)等を、被加熱物の種類、加熱温度等の用途に応じて適性を検討して選択・使用することができる。中でもFEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)及びPFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)からなることが好ましい。
但し、本発明においては、フッ素樹脂を熱融着させるために、熱融着可能である性質を有するフッ素樹脂を採用することが必要である。
フッ素樹脂層AとBの間で異なる樹脂を使用することもできるし、同じ樹脂を使用することもできる。同様に2つのフッ素樹脂層Aや2つのフッ素樹脂層Bをそれぞれ複数の樹脂から構成することもできる。但し、全てのフッ素樹脂層を同じ樹脂とすることが、融着時の密着性と加熱時の寸法安定性が優れる点において好ましい。
また本発明は2つのフッ素樹脂層A及び2つのフッ素樹脂層Bを有するのであり、2つのフッ素樹脂層Aは同じ樹脂であることが好ましく、また2つのフッ素樹脂層Bは同じ樹脂であることが好ましい。
【0015】
本発明にて使用できるフッ素樹脂層A及びBは、それぞれの層が1つのフィルムから構成されていても良いが、同じ樹脂または異なる樹脂からなる複数のフィルムを熱融着することにより一体となった層として構成されていてもよい。各層の厚さは0.025〜3.0mmであり、好ましくは0.03〜2.0mm、さらに好ましくは0.05〜1.0mmである。0.025mm未満では、十分な強度を有する面状ヒータを得ることができず、又は面状ヒータの取り扱い中に導電性発熱体や熱拡散材料層が表面に露出する可能性があり、また導電性発熱体と熱拡散材料層間の電気的な絶縁が不十分となる可能性があり好ましくない。3.0mmを超えるとシート状発熱体から熱拡散材料層への伝熱や、熱拡散材料層から面状ヒータ表面への放熱が阻害されやすくなり好ましくない。
また、フッ素樹脂層A及びBの大きさ(厚さではなく縦横のサイズ)は同一でもよく、またフッ素樹脂層Aよりも、フッ素樹脂層Bの縦と横のいずれかが長い、さらに縦横の両方とも長いほうが、2つのフッ素樹脂B層に挟まれる面状ヒータの各構成材料を確実に密閉し、面状ヒータの側面を確実に封止する点において好ましい。
またフッ素樹脂層AとBはそれぞれシート状発熱体や熱拡散材料層よりも大きいことが望ましい。その場合には本発明の面状ヒータの端部からシート状発熱体や熱拡散材料層がはみ出ることなく、シート状発熱体と低熱膨張性樹脂層や、熱拡散材料層の端面までフッ素樹脂層AとBにより熱融着や接着等の手段により封止されることになり、使用時において被加熱液体とシート状発熱体や熱拡散材料層が反応したり、シート状発熱体や熱拡散材料層により被加熱液体が汚染したりすることがない。
2つのフッ素樹脂層A及び/又は2つのフッ素樹脂層Bが複数のフィルムからなる場合には、2つのフッ素樹脂層Aを構成するフィルムの層構成は導電性発熱体を中心に対象となるような材料からなることが好ましい。これは2つのフッ素樹脂層Bについても同様である。
【0016】
フッ素樹脂層A及びフッ素樹脂層Bが共に2枚以上のフィルムからなる場合には、それぞれ2枚以上のPFAフィルム、2枚以上のFEPフィルムを重ねることや、PFAフィルムとFEPフィルムを重ねる際にいずれかを導電性発熱体側にして積層させることもできる。
さらにフッ素樹脂層A及びフッ素樹脂層Bが共に3枚のフィルムからなる場合には、例えばPFA、FEP及びPFAからなるフィルムを順に、又はFEP、PFA及びFEPからなるフィルムを順に重ねることもできる。
フッ素樹脂層A及びBの熱伝導率が高いほうが、シート状発熱体からの熱をより伝達するので、必要に応じて、絶縁性及び耐薬品性等を考慮して、マイカ、シリカ等の無機物質をフッ素樹脂層A及びBに含有させることができる。
【0017】
(熱拡散材料層)
本発明における熱拡散材料層には、導電性発熱体から発熱した熱を速やかに熱拡散材料層全面に伝導・拡散して、さらに面状ヒータの加熱面全面から熱を吸収し、これを放熱させる機能と共に、面状ヒータの製造時にフッ素樹脂層AやBを熱融着する際に生じるこれら樹脂の収縮力に抗して、面状ヒータを所定の形状に維持させて、波状になったり、反ったりすることを防止する機能が求められる。
そのような熱拡散材料層としては、熱伝導率が高い材料、つまり、金、銀、銅、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属、グラファイトやセラミックスの粉体、繊維状、シート状、箔状、板状あるいは焼結状の材料、加えて、例えば酸化チタン、シリカ、アルミナ等の金属化合物や金属粉等の無機物質を多量に含有した樹脂からなるシートを採用することができる。このときにも、面状ヒータの用途、加熱能力等に合わせて採用することができる。そしてこれらの中でも、金属やグラファイトからなるものが好ましい。
【0018】
熱拡散材料層は、導電性発熱体から発生した熱を十分に吸収しかつ、フッ素樹脂層Bを介して外部に放熱させるために必要な大きさであることが求められる。それに加えて、フッ素樹脂層A及びBが熱拡散材料層を挟んで熱融着する際に十分な接着強度を確保できる範囲の大きさであることが必要である。
つまり、金属やグラファイトシート等からなる熱拡散材料層は、その材料からみて、特別な前処理を施さない限り、フッ素樹脂層AやBとの間で十分に高い接着力を発揮できるものではない。そのため、フッ素樹脂層A及びBが熱拡散材料層を挟んで熱融着する際に十分な接着強度を確保するには、該熱拡散材料層の両面及び全周の全てが該フッ素樹脂層A及びBにより被覆される構造であることが好ましい。このような構造を有することによって、該熱拡散材料層を介しても、フッ素樹脂層AやBが十分な接着力で熱融着され、同時に、該熱拡散材料層の一部が面状ヒータの表面に露出することがないので、非加熱物質による腐食等の変質を生じる恐れがない。
【0019】
(温度センサ)
本発明にて使用される温度センサとしては、各種熱電対や各種測温抵抗体等の公知の温度センサを使用でき、測定範囲としては、本発明の面状ヒータの各種の用途に従って予定される範囲とすることが必要である。
但し低熱膨張性樹脂層を構成する複数の層、フッ素樹脂層A及び/又はB内に埋設させることから、本発明の面状ヒータの形状を面状とするためにも薄い形状のものが好ましい。これらの層内に埋設させる際には、これらの層を構成する複数のフィルムの間に1つ以上の温度センサの温度検知部を挿入しておき、その後にこれらのフィルムを一体化させてフッ素樹脂層A及び/又はBとすることが好ましい。また、低熱膨張性樹脂層とフッ素樹脂層Aの間に1つ以上の温度センサを設けることもできる。
本発明において使用する温度センサとしては、格別のことがない限り1つで良い。
さらに設ける場所としては、被加熱物に近い箇所が被加熱物の温度制御をより正確に行う点において好ましく、そのためフッ素樹脂層B内に埋設させることが必要になる。一方、導電性発熱体の発熱状況を監視する点からはフッ素樹脂層A内に埋設させることが必要になる。よって、本発明において温度センサを設ける場合には、本発明の面状ヒータを製造する段階において、予めフッ素樹脂層A及び/又はB内に埋設させておくことが必要になる。
【0020】
(用途)
本発明の面状ヒータは、低熱膨張性樹脂層、フッ素樹脂層A又はBを軟化させない温度の範囲で任意の温度まで加熱する用途に使用できる。このような用途としては、化学工業の薬液反応プロセス、食品工業での製造プロセス、飲食品の保温、血液の保温、薬品や水の加熱、薬品製造、電子材料や半導体の製造プロセスでの薬液や洗浄剤の加熱、室内や車内での暖房、融雪、畜産での保温、水槽内の保温、椅子やシート等、これまで、加熱や保温等を行ってきた用途に使用することができる。なお、フッ素ガス、三フッ化塩素や酸化剤等のフッ素樹脂を変質・分解させる気体や液体中では使用することはできない。
このとき、液体中に浸漬させて該液体を加熱したり、雰囲気中に置いて雰囲気を加熱したりすることができる。また、面状ヒータを2枚の板状物の間に挟むことによって、該2枚の板状物を加熱することもできる。
なかでも、本発明の面状ヒータを使用する際に、面状ヒータ自体が変質せず、ガスや不純物を生じないので、不純物の混入を防止することが必要な用途において、雰囲気、水、薬液、血液、洗浄剤を直接的に保温や加熱できる。
本発明の面状ヒータは、一部のみが加熱されるヒートスポットが発生することなく、ヒータの面を均一に加熱するので、温度管理を厳密に行い、特に予定する温度よりも高温に加熱されることを防止しなくてはならない、医療等の用途においても有効に使用することができる。
【0021】
(実施例)
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。
図1には、本発明にて使用される導電性発熱体1と、該導電性発熱体1に接続した端子部1a、及びリード線2とリード線2の端子部との接続箇所2aからなるシート状発熱体3が破線にて記載されている。このシート状発熱体3の片面に低熱膨張性樹脂層Pが積層されている。
この図では低熱膨張性樹脂層Pをシート状発熱体3の片面に積層させたが、両面に積層させても良い。両面に積層させるときには、2枚の低熱膨張性樹脂層間にシート状発熱体を挟んだ状態にて、熱融着や接着等の公知の手段によって一体化させることができる。
また低熱膨張性樹脂層がポリアミド等である場合、その前駆体を用いてシート状発熱体を挟んでもよい。
【0022】
図2には、本発明にて使用される導電性発熱体1と、該導電性発熱体1に接続した端子部1a、及びリード線2とリード線2の端子部との接続箇所2aからなるシート状発熱体3が破線にて記載されている。また
図1で示した低熱膨張性樹脂層Pが破線にて記載されている。
このシート状発熱体3は、該低熱膨張性樹脂層Pを含めてその両面にフッ素樹脂層A4を配置しこれらを互いに熱融着して一体化させることにより、外面に露出することなく全てフッ素樹脂層A4中に配置することになる。この
図2ではシート状発熱体全部を、1枚の低熱膨張性樹脂層Pと、2枚のフッ素樹脂層A4で被覆しているので、フッ素樹脂層A4の形状は略逆凸状のような形状であるが、導電性発熱体1、端子部1a、接続箇所2a及びリード線2が被覆される限り任意の形状でも良い。
仮にシート状発熱体3から、端子部1a及びリード線2を除く部分である導電性発熱体1のみをフッ素樹脂層Aで被覆するのであれば、端子部1a、接続箇所2a及びリード線2を別に用意したフッ素樹脂層Aと同様の材料により、フッ素樹脂層Aと一体になるようにして被覆することになる。
【0023】
図2で示された、シート状発熱体をフッ素樹脂層A4にて被覆されてなる部材の厚さ方向の断面は
図3で示される。この
図3にて明確なように、シート状発熱体3及び低熱膨張性樹脂層Pはフッ素樹脂層A4の外にはみ出ることなく、確実にフッ素樹脂層A4の内部に存在させることが必要である。
【0024】
シート状発熱体とフッ素樹脂層Aの積層構造の一例を
図4に示す。
図4では端子部1aは導電性発熱体1に連続して形成された幅広の平面部であり、この上にリード線2から伸びた端子部1aとの接続箇所2aが重ねられる。この重ねられた状態でハンダ付け等により端子部1aと該接続箇所2aを接続してもよい。
もちろん、
図4に示す構造に限定されることはなく、端子用の金属部材を導電性発熱体1に対してハンダやカシメ等の公知の手段により接続し、リード線2の接続箇所2aを端子部1aに挿入する等して接続させることができ、そのようにして、リード線2を導電性発熱体1に接続する。
【0025】
導電性発熱体1とリード線2の接続構造の一例を
図5に示す。
導電性発熱体1に接続された端子部1aと、リード線2の絶縁被覆2bが剥離された接続箇所2aが接続される。ここで、端子部1aと接続箇所2aは共にシート状であって、これらが重なることで電気的に接続されても良く、あるいは厚くなりすぎない程度に互いに嵌合できる端子形状であってもよい。
ここで、リード線2の絶縁被覆2bがフッ素樹脂層A及び低熱膨張性樹脂層との相溶性に優れた樹脂であれば、フッ素樹脂層A及び低熱膨張性樹脂層を熱融着させる際に該フッ素樹脂層A及び低熱膨張性樹脂層と該絶縁被覆2bとが隙間を生じること無く気密に融着させることが可能になり、使用時において、被加熱物が該リード線2とフッ素樹脂層A及び低熱膨張性樹脂層との隙間から面状ヒータ内に侵入することがない。
【0026】
このような構造を基本にした本発明の面状ヒータの構造を
図6を基に説明する。
導電性発熱体1には端子部1aが設けられ、ここにリード線2の接続箇所2aが接続されている。シート状発熱体の上側に低熱膨張性樹脂層Pを配置し、さらにシート状発熱体の上下それぞれにフッ素樹脂フィルムA4aを配置し、さらに両面のフッ素樹脂フィルムA4a面の上に、フッ素樹脂フィルムA4bに担持された熱拡散材料層5の2枚をそれぞれ設ける。さらに両面の該熱拡散材料層の上にフッ素樹脂層B6を設けてなる構造を有する。
なお、ここで熱拡散材料層5を担持したフッ素樹脂フィルムA4bは、フッ素樹脂フィルムA4aと共に一つのフッ素樹脂層Aを構成する。
ここで、本発明において使用するフッ素樹脂層A及びBは互いに熱融着されており、この結果として、本発明の面状ヒータは導電性発熱体により発生した熱を熱拡散材料層によって均一化した上で、非加熱物質の加熱に使用されることができる。
【0027】
図6には、温度センサTが設けられており、その温度センサTはフッ素樹脂フィルム4aと4bの間に設置され、これらのフィルムが互いに融着されることによって固定される。
温度センサTの設置箇所は面状ヒータの両面でも片面でもよいが、通常は片面でよい。
温度センサTによる測定結果は図示しない装置に表示したり、演算したり、加熱制御用のデータ等として使用される。
【0028】
この
図6に示す面状ヒータは、導電性発熱体1を対象にフッ素樹脂Aにより両面を被覆するが、端子部1a、及び接続箇所2a、リード線2に対しては別のフッ素樹脂部材7によって被覆されてなるものである。
このとき、この別のフッ素樹脂部材がフッ素樹脂層A及び/又はBとも熱融着され、かつ、リード線2の絶縁被覆2bとも熱融着されることによって、例えば液体中に本発明の面状ヒータを浸漬したときにおいても、該液体が面状ヒータ内に侵入することがないので、劣化や反応することなく安定して液体を加熱することができる。
図7に、この別のフッ素樹脂部材7を使用して導電性発熱体1を被覆してなる場合の模式図を示す。このときには別のフッ素樹脂部材7により導電性発熱体1とリード線2が接続している場所を確実に被覆できるので、面状ヒータを使用する際に面状ヒータに無理な力がかかっても、その接続している箇所を破損や断線することを防止できる。
【0029】
(本発明の面状ヒータの製造方法)
本発明の面状ヒータは、面状ヒータを構成する各部材を順に重ねて、逐次フッ素樹脂層を熱融着させることによって製造される。
具体的な製造例としては以下の通り。
所望により予め端子部にリード線が接続された箇所が熱融着材料によって被覆された、導電性発熱体に接続した端子部にリード線が接続されてなるシート状発熱体を用意し、シート状発熱体の上側又は下側、あるいは上下に低熱膨張性樹脂層Pを配置し、さらにこのシート状発熱体の上下にそれぞれ2枚のフッ素樹脂フィルムからなるフッ素樹脂層Aを重ね、これらを熱融着して一体化する。
その後、両面のフッ素樹脂層Aの面上に、熱拡散材料層の2枚をそれぞれ設け、さらにそれぞれの該熱拡散材料層の上にフッ素樹脂層Bを設け、フッ素樹脂層AとBとで熱拡散材料層を挟んだ状態においてこれらの層を熱融着して一体化させる。
そのとき、導電性発熱体と、端子部、接続箇所及びリード線を一緒にして、これを対象に上記フッ素樹脂層AやBにより熱融着することもでき、また導電性発熱体のみを対象にし、端子部等は別のフッ素樹脂により封止することもできる。
仮に、熱拡散材料層とフッ素樹脂層Bを設けることなく、フッ素樹脂層Aを最上層とした面状ヒータとした場合、本来フッ素樹脂層は熱収縮率が大きいので、フッ素樹脂層Aを熱融着する際に該フッ素樹脂層Aが収縮してシワや反りが発生し易く、製造歩留まりも悪化する。また面状ヒータの昇温特性を向上させるためにフッ素樹脂層Aの厚さを薄くすると、導電性発熱体と接する部分にヒートスポットが発生したり、ヒートスポット部のフッ素樹脂層Aが熱劣化して面状ヒータの製品寿命が短くなる恐れがある。
【0030】
上記の製造例の変形例として、2層のフッ素樹脂層Aをそれぞれ構成する2枚のフッ素樹脂フィルムのうち、いずれか1層のみのフッ素樹脂層Aを構成する2枚のフッ素樹脂フィルムに対して、その間に温度センサを挟んでおくことができる。
その後、2枚のフッ素樹脂フィルムを融着してフッ素樹脂層Aとすることで温度センサを該フッ素樹脂層A内に埋設させることができる。
なお、温度センサを設けることとは関係なく、フッ素樹脂層A及びBを複数のフッ素樹脂フィルム層を融着等で一体化させてもよい。
【0031】
(使用方法)
本発明の面状ヒータは、例えばビーカー、液体撹拌用容器、オイルバス等の投げ込み型のヒータに代えて使用することができる。この場合の使用方法としては、例えば
図8に示すように、容器Y内に液体Lを入れ、容器内の底に面状ヒータを配置して液体中に浸漬して撹拌装置Sによって撹拌しながら、該面状ヒータにより、所定の温度になるように加熱を行う。
もちろん、上記用途の項に記載の用途等のために使用するときには、
図8に示した方法ではなく、他の方法、例えば空間の加熱であればその空間内に置き、固体の加熱であれば、その固体内に埋めたり、板状体等の固体の下又は上等に配置したりする等して、各種の被加熱物を加熱することができる。
【0032】
図9に示すように、低熱膨張性樹脂層を配置しないこと以外は本発明の面状ヒータと同じ構成を設けてなる面状ヒータ(A)、及び本発明に沿って低熱膨張性樹脂層を配置してなる面状ヒータ(B)を作成し、これらの面状ヒータを空中にぶら下げた状態で、これらに対して通電を開始した。
面状ヒータ(A)及び(B)を構成する材料の各層の厚さは表1に示すとおりであり、これらの面状ヒータに通電した結果を表2に示す。
【0033】
【表1】
導電性発熱体は、エッチングで導電路を形成したSUS箔(20μm)を使用した。
フッ素樹脂層AとBには、組成の異なるフッ素樹脂フィルムを使用し、低熱膨張性樹脂層にはポリイミドフィルム(50μm)を使用した。
熱拡散材料層には銅箔(50μm)を使用した。
【0035】
上記の結果によれば、本発明に沿った面状ヒータ(B)(つまり低熱膨張性樹脂層が有りの場合)では、通電開始後、高温時(372℃)にフッ素樹脂層Aの溶融が生じても導電性発熱体の導電路の変形は発生せず、短絡(ショート)は発生しなかった。
一方、低熱膨張性樹脂層がない面状ヒータ(A)では、329℃において、フッ素樹脂の溶融による導電性発熱体の導電路が変形し、短絡(ショート)が発生した。
上記の結果に見られるように、本発明によると、使用に際して面状ヒータの導電性発熱体が変形することがなく、かつより高電圧を印加したときやより高温での使用であってもショートすることなく、被加熱物を加熱することができる。
【解決手段】導電性発熱体1に接続した端子部にリード線2が接続されてなるシート状発熱体3と、該導電性発熱体1の少なくとも片面の全面、又は該導電性発熱体1と該端子部を含む該シート状発熱体3の少なくとも片面の全面に、熱膨張係数が8×10
/℃以下である低熱膨張性樹脂層Pを設け、その両面から互いに熱融着可能なフッ素樹脂層A4により挟持して熱融着し、さらに、両面の熱融着可能な該フッ素樹脂層A4のそれぞれの表面に熱拡散材料層を設け、この熱拡散材料層のさらに表面に熱融着可能な別のフッ素樹脂層Bを設けてなる、面状ヒータ。