(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一の取付部材と環状の第二の取付部材が本体ゴム弾性体で弾性連結されていると共に、壁部の一部が該本体ゴム弾性体で構成されて非圧縮性流体を封入された流体室を有する防振装置本体を備えている流体封入式防振装置において、
前記防振装置本体では、前記第二の取付部材に仮止用部材が係止されて軸方向に仮連結されていると共に、該仮止用部材に設けられた環状の封止部が該第二の取付部材に対してシールゴムを挟んで軸方向に重ね合わされて仮シールされている一方、
該防振装置本体の該第二の取付部材に封止用連結部材が装着されており、該第二の取付部材と該仮止用部材とに対して重ね合わせ方向の押圧力が該封止用連結部材によって及ぼされて該シールゴムの圧縮率が高められて本シールされていることを特徴とする流体封入式防振装置。
前記第二の取付部材と前記封止用連結部材の何れか一方に嵌合凸部が設けられていると共に、該第二の取付部材と該封止用連結部材の何れか他方に嵌合孔が設けられており、該嵌合凸部が該嵌合孔に嵌め合わされて固定されている請求項1に記載の流体封入式防振装置。
前記嵌合凸部と前記嵌合孔の複数組が設けられて、それら嵌合凸部と嵌合孔の複数組が前記防振装置本体の中心軸を挟んだ両側に配置されている請求項2に記載の流体封入式防振装置。
前記防振装置本体の前記封止用連結部材への装着時に前記第二の取付部材と該封止用連結部材を相対的に位置決めして案内するガイド手段が設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
前記仮止用部材には、前記封止部から軸方向一方に突出して前記第二の取付部材に係止される係止部と、該封止部から軸方向他方に突出して前記封止用連結部材によって該第二の取付部材への接近方向に押し込まれる被押圧部とが、周上で交互に設けられている請求項1〜4の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
前記封止用連結部材が前記第二の取付部材の外周を部分的に覆う装着部を備えていると共に、該封止用連結部材の該装着部には周方向に延びる挟持溝が形成されており、該第二の取付部材と前記仮止用部材が該挟持溝に差し入れられることで相対的に接近変位せしめられてそれら第二の取付部材と仮止用部材の間が前記シールゴムで本シールされている請求項1〜5の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
前記封止用連結部材に筒状の装着部が設けられて、該装着部から外周側に広がる取付部が形成されていると共に、該装着部から内周側に広がる押圧部が形成されており、前記防振装置本体が該装着部に対して軸方向一方側から差し入れられて、該防振装置本体の前記第二の取付部材が該取付部に固定されていると共に、前記仮止用部材が該押圧部への当接によって押圧されることで該第二の取付部材に対して相対的に接近変位せしめられて、それら第二の取付部材と仮止用部材の間が前記シールゴムで本シールされている請求項1〜5の何れか1項に記載の流体封入式防振装置。
前記第二の取付部材と前記可撓性膜との間に仕切部材が配されて、該仕切部材により前記流体室が受圧室と平衡室に仕切られていると共に、それら受圧室と平衡室を連通するオリフィス通路が設けられている一方、
前記仮止用部材により押し付け力が、該第二の取付部材と該仕切部材との間に配されたシール部材に加えて該仕切部材の外側に重ね合わされた該可撓性膜の外周縁部にも及ぼされて、それらシール部材と可撓性膜の外周縁部とが何れも前記係止手段で仮シールされると共に前記封止用連結部材で本シールされるようになっている請求項1〜9の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
前記一対の挟持溝の溝底面には、該一対の挟持溝の対向方向における離隔距離が前記差入口に向かって次第に大きくなる傾斜が付されていると共に、前記一対の固定部の外周面において、各該一対の挟持溝の溝底面に対応した傾斜が付されている請求項11に記載の流体封入式防振装置。
前記一対の固定部における各外周面が、前記一対の挟持溝に対する差入方向で凹部を介して分断された複数の当接突部によって構成されており、それら各当接突部がそれぞれ該挟持溝の溝底面に対して当接されている請求項12に記載の流体封入式防振装置。
前記封止用連結部材における前記差入口の開口端面において前記潰しカシメ加工によって形成された凹状の潰し部が、最深位置を前記挟持溝の溝底面側へ偏倚せしめた非対称の内面形状とされている請求項11〜13の何れか一項に記載の流体封入式防振装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、流体室への非圧縮性流体の封入を容易に行うことができると共に、防振装置本体の封止構造を簡略化することができる、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0012】
すなわち、本発明の第一の態様は、第一の取付部材と環状の第二の取付部材が本体ゴム弾性体で弾性連結されていると共に、壁部の一部が該本体ゴム弾性体で構成されて非圧縮性流体を封入された流体室を有する防振装置本体を備えている流体封入式防振装置において、前記防振装置本体では、前記第二の取付部材に仮止用部材が係止されて軸方向に仮連結されていると共に、該仮止用部材に設けられた環状の封止部が該第二の取付部材に対してシールゴムを挟んで軸方向に重ね合わされて仮シールされている一方、該防振装置本体の該第二の取付部材に封止用連結部材が装着されており、該第二の取付部材と該仮止用部材とに対して重ね合わせ方向の押圧力が該封止用連結部材によって及ぼされて該シールゴムの圧縮率が高められて本シールされていることを、特徴とする。
【0013】
このような第一の態様に従う構造とされた流体封入式防振装置によれば、防振装置本体におけるシール構造が第二の取付部材と仮止用部材の仮連結による仮シールとされることで、防振装置本体の組立てが容易になると共に、防振装置本体のシール構造を簡潔にすることができて、防振装置本体の軸方向寸法を小さくすることができる。
【0014】
さらに、封止用連結部材を装着する前の防振装置本体において流体室が仮シールされることから、例えば、非圧縮性流体を満たした水槽中での組立てによって非圧縮性流体を流体室に封入する場合にも、封止用連結部材を水槽中に入れる必要がなく、水槽中での組立作業が容易になる。
【0015】
また、非圧縮性流体を流体室に封入された防振装置本体に対して、封止用連結部材が取り付けられることにより、第二の取付部材と仮止用部材が本シールされて、例えば振動入力時にも非圧縮性流体の漏れが防止されることから、防振特性の安定化が図られて、充分な信頼性を得ることができる。
【0016】
本発明の第二の態様は、第一の態様に従う構造とされた流体封入式防振装置において、前記第二の取付部材と前記封止用連結部材の何れか一方に嵌合凸部が設けられていると共に、該第二の取付部材と該封止用連結部材の何れか他方に嵌合孔が設けられており、該嵌合凸部が該嵌合孔に嵌め合わされて固定されているものである。
【0017】
第二の態様によれば、嵌合凸部が嵌合孔に嵌め合わされることで、封止用連結部材をマウント本体に対して簡単に固定することができる。特に、封止用連結部材をマウント本体に対して外嵌固定する構造に比して、封止用連結部材や第二の取付部材の形成材料や形状を高い自由度で選択することができると共に、寸法精度を高度に要求されることもなく、容易に製造することが可能になる。
【0018】
本発明の第三の態様は、第二の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記嵌合凸部と前記嵌合孔の複数組が設けられて、それら嵌合凸部と嵌合孔の複数組が前記防振装置本体の中心軸を挟んだ両側に配置されているものである。
【0019】
第三の態様によれば、嵌合凸部と嵌合孔の複数組によって中心軸を挟んだ両側で防振装置本体に封止用連結部材が固定されていることから、防振装置本体の中心軸方向への荷重入力時に作用するモーメントが低減されて、封止用連結部材を介した防振装置本体の安定した支持が実現される。
【0020】
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか一つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記防振装置本体の前記封止用連結部材への装着時に前記第二の取付部材と該封止用連結部材を相対的に位置決めして案内するガイド手段が設けられているものである。
【0021】
第四の態様によれば、防振装置本体と封止用連結部材の装着時に、ガイド手段によって防振装置本体と封止用連結部材が相対的に位置決めされて案内されることから、防振装置本体と封止用連結部材の装着作業が容易になる。特に、嵌合凸部と嵌合孔を嵌め合わせて固定する場合などには、ガイド手段によって防振装置本体と封止用連結部材が相対的に位置決めされることで、嵌合凸部が嵌合孔に対して簡単に嵌め合わされることから、防振装置本体と封止用連結部材の固定作業の容易化が図られる。
【0022】
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか一つの態様に記載の流体封入式防振装置において、前記仮止用部材には、前記封止部から軸方向一方に突出して前記第二の取付部材に係止される係止部と、該封止部から軸方向他方に突出して前記封止用連結部材によって該第二の取付部材への接近方向に押し込まれる被押圧部とが、周上で交互に設けられているものである。
【0023】
第五の態様によれば、係止部が形成された部分において封止部が被押圧部を備えることなく薄肉とされていることから、封止部の弾性変形が容易に生じて、係止部の第二の取付部材への係止が容易に実現される。一方、係止部を外れた被押圧部の形成部分に封止用連結部材の押圧力が及ぼされることで、封止部が第二の取付部材への接近方向に押し込まれて、第二の取付部材と封止部の間が流体密に本シールされる。特に、係止部と被押圧部が周上で交互に設けられることで、仮止用部材の第二の取付部材への安定した仮連結が実現されると共に、第二の取付部材と仮止用部材の間に重ね合わせ方向の押圧力が周上でバランス良く作用せしめられて、流体密性を全周に亘って安定して得ることができる。
【0024】
本発明の第六の態様は、第一〜第五の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記封止用連結部材が前記第二の取付部材の外周を部分的に覆う装着部を備えていると共に、該封止用連結部材の該装着部には周方向に延びる挟持溝が形成されており、該第二の取付部材と前記仮止用部材が該挟持溝に差し入れられることで相対的に接近変位せしめられてそれら第二の取付部材と仮止用部材の間が前記シールゴムで本シールされているものである。
【0025】
第六の態様によれば、第二の取付部材と仮止用部材が挟持溝に軸直角方向で差し入れられることにより、第二の取付部材と仮止用部材が軸方向で接近せしめられて本シールされることから、シールゴムの圧縮率を容易に且つ安定して設定することができて、目的とするシール性や耐久性を実現することができる。
【0026】
また、封止用連結部材と第二の取付部材の固定構造を、装着部を外れた位置に設けることによって、装着部の構造が固定構造によって制限されるのを防いで、第二の取付部材や仮止用部材の形状を高い自由度で設定することも可能である。
【0027】
本発明の第七の態様は、第一〜第五の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記封止用連結部材に筒状の装着部が設けられて、該装着部から外周側に広がる取付部が形成されていると共に、該装着部から内周側に広がる押圧部が形成されており、前記防振装置本体が該装着部に対して軸方向一方側から差し入れられて、該防振装置本体の前記第二の取付部材が該取付部に固定されていると共に、前記仮止用部材が該押圧部への当接によって押圧されることで該第二の取付部材に対して相対的に接近変位せしめられて、それら第二の取付部材と仮止用部材の間が前記シールゴムで本シールされているものである。
【0028】
第七の態様によれば、防振装置本体と封止用連結部材が軸方向に装着される構造であっても、防振装置本体と封止用連結部材の装着による本シールが有効に実現される。
【0029】
本発明の第八の態様は、第一〜第七の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記封止用連結部材が、アルミニウム合金のダイキャスト成形品であるものである。
【0030】
第八の態様によれば、アルミニウム合金の型成形品からなる封止用連結部材を採用することで、封止用連結部材の形状や構造,強度の設計自由度が大きく確保されると共に、潰しカシメ加工によるカシメ係合部での防振装置本体の封止用連結部材からの抜け止めも、一層容易に且つ確実に実現可能とされ得る。
【0031】
本発明の第九の態様は、第一〜第八の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記第二の取付部材に対する前記封止用連結部材による押圧部分が、該第二の取付部材の周上で部分的に設けられている一方、前記仮止用部材に対する前記封止用連結部材による押圧部分が、該仮止用部材の周上で全周に亘って設けられているものである。
【0032】
第九の態様によれば、流体封入式の防振装置本体を採用するに際して、防振装置本体において簡易な構造をもって流体封入領域の外部空間に対するシール性を確保した後、封止用連結部材へ防振装置本体を組み付けることで封止用連結部材を利用して流体封入領域のシール性を確実にすることが可能になる。それ故、防振装置本体の単独でのシール構造の簡略化とそれに伴う製造の容易化等を図りつつ、封止用連結部材に対する防振装置本体の組み付けに際しての嵌合力等を巧く利用して、防振装置本体単独では実現できない程に高度なシール性を付与することができるのである。
【0033】
本発明の第十の態様は、第一〜第九の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記第二の取付部材と前記可撓性膜との間に仕切部材が配されて、該仕切部材により前記流体室が受圧室と平衡室に仕切られていると共に、それら受圧室と平衡室を連通するオリフィス通路が設けられている一方、前記仮止用部材により押し付け力が、該第二の取付部材と該仕切部材との間に配されたシール部材に加えて該仕切部材の外側に重ね合わされた該可撓性膜の外周縁部にも及ぼされて、それらシール部材と可撓性膜の外周縁部とが何れも前記係止手段で仮シールされると共に前記封止用連結部材で本シールされるようになっているものである。
【0034】
第十の態様によれば、受圧室および平衡室を備えた流体室における複数箇所の封止部分について、防振装置単体での仮シールおよび封止用連結部材組付状態での本シールを、一つの仮止用部材を利用して効率的に実現することが可能になる。
【0035】
本発明の第十一の態様は、第六の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記防振装置本体の前記第二の取付部材の外周部分において軸直角方向で対向位置する部位に一対の固定部が設けられている一方、該封止用連結部材の前記組付スペースの内面で対向位置する部位には、該防振装置本体の該一対の固定部が嵌合される一対の前記挟持溝が、それぞれ一対の該固定部の差し入れ方向に開口する差入口をもって形成されており、該一対の固定部が該一対の挟持溝の各該差入口から差し入れられて、該各固定部の外周面が該各挟持溝の溝底面に当接されることにより、該各固定部が該各挟持溝に対して嵌合されている一方、該封止用連結部材における該各差入口の開口端面にはそれぞれ該挟持溝の該溝底面側の周縁部分が潰しカシメ加工で溝内方へ塑性変形されて該固定部の該挟持溝への差入方向の後部に係合されることにより該固定部の該挟持溝からの差入方向後方への抜出しを阻止するカシメ係合部が設けられているものである。
【0036】
第十一の態様によれば、封止用連結部材の挟持溝へ嵌合された防振装置本体の固定部の抜け出しを、封止用連結部材の挟持溝の溝底面側の周縁部分に対する潰しカシメ加工で形成されたカシメ係合部によって阻止することができる。特に、潰しカシメ加工で形成されたカシメ係合部では、曲げ加工されるカシメ片に比べて、固定部への係合部分の部材厚さを大きくして部材強度や耐久性を格段に大きくすることができる。また、曲げ加工されるカシメ片のようにプレス成形品の封止用連結部材に限定されることがなく、例えばダイキャスト成形品等からなる封止用連結部材も採用することが出来て、封止用連結部材の形状や強度等に関する設計自由度が十分に大きく確保され得る。
【0037】
しかも、封止用連結部材に設けられたカシメ係合部が、封止用連結部材の挟持溝に対する防振装置本体の固定部の差し入れ方向と同じ方向で、封止用連結部材に対して潰しカシメの加工外力を及ぼすことで形成され得る。それ故、例えば封止用連結部材を支持せしめて固定部の差し入れや潰しカシメ加工に際して及ぼされる外力を受けるための装置として、封止用連結部材の挟持溝へ防振装置本体の固定部を差し入れて嵌合させる際と、その後に封止用連結部材へ潰しカシメ加工を施してカシメ係合部を形成する際とにおいて、共通して採用することが可能となり、製造設備の簡略化も図られ得る。また、例えば封止用連結部材の挟持溝へ防振装置本体の固定部を差し入れて嵌合させる際と、その後に封止用連結部材へ潰しカシメ加工を施してカシメ係合部を形成する際とにおいて、差し入れや潰しカシメに必要な外力を及ぼすアクチュエータや伝動機構等を共通して採用することも可能になり、製造設備の更なる簡略化も可能となる。
【0038】
本発明の第十二の態様は、第十一の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記一対の挟持溝の溝底面には、該一対の挟持溝の対向方向における離隔距離が前記差入口に向かって次第に大きくなる傾斜が付されていると共に、前記一対の固定部の外周面において、各該一対の挟持溝の溝底面に対応した傾斜が付されているものである。
【0039】
第十二の態様によれば、一対の開口溝の溝底面に対する一対の固定部の外周面の当接嵌合構造を確保しつつ、一対の開口溝の溝底面において相互に拡開する傾斜を付することが可能になる。それ故、例えば封止用連結部材をダイキャスト成形品とする場合にも、型抜き用の勾配を開口溝の溝底面に付して製造を容易にすることも可能になる。
【0040】
なお、一対の開口溝において、溝幅方向両側の壁内面に対しても、溝幅方向の対向面間距離が差入口に向かって次第に大きくなる傾斜を付することも可能である。これにより、開口溝の両側壁内面に対しても、型抜き用等の勾配を付することができる。また、その際、各固定部に対しても、挟持溝の両側壁内面に対応した傾斜を付することが好ましい。
【0041】
本発明の第十三の態様は、第十二の態様に記載された流体封入式防振装置において、前記一対の固定部における各外周面が、前記一対の挟持溝に対する差入方向で凹部を介して分断された複数の当接突部によって構成されており、それら各当接突部がそれぞれ該挟持溝の溝底面に対して当接されているものである。
【0042】
第十三の態様によれば、相互に拡開する略平坦な傾斜面をもって形成された一対の挟持溝の各溝底面に対して、一対の固定部の各外周面を、複数の当接突部により差入方向で離隔した複数領域で当接させて嵌合させることが可能になる。即ち、差入方向で実質的に独立形成された各当接突部の突出高さを適切に設定することで、挟持溝に対する固定部の嵌合面を、より安定して確実に広い領域で確保することが可能になるのである。
【0043】
本発明の第十四の態様は、第十一〜第十三の何れか1つの態様に記載された流体封入式防振装置において、前記封止用連結部材における前記差入口の開口端面において前記潰しカシメ加工によって形成された凹状の潰し部が、最深位置を前記挟持溝の溝底面側へ偏倚せしめた非対称の内面形状とされているものである。
【0044】
第十四の態様によれば、非対称な内面形状をもった凹状の潰し部を採用したことにより、固定部の後部に係合されて抜出しを阻止するカシメ係合部が一層安定して形成することが可能になる。即ち、かかる凹状の潰し部は、例えばポンチ状のジグ等を用いて封止用連結部材の差入口の開口端面に潰しカシメ加工を施すことで形成されるが、潰し部の最深位置を前記挟持溝の溝底面側へ偏倚せしめたことで、潰し部の深さを抑えて封止用連結部材の割れ等の不具合を回避しつつ、潰し部による偏肉を挟持溝の溝底面側へ効率的に生ぜしめて、固定部の後部に係合するカシメ係合部を形成することができるのである。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、防振装置本体では、第二の取付部材に対して仮止用部材が係止によって容易に仮連結されることで、第二の取付部材と仮止用部材がシールゴムを挟んで軸方向に重ね合わされて仮シールされると共に、防振装置本体に対する封止用連結部材の装着によって及ぼされる押圧力によって、第二の取付部材と仮止用部材が重ね合わせ方向に押圧されることで、シールゴムの圧縮率が高められて本シールされている。これにより、防振装置本体の構造を簡単にすることができると共に、防振装置本体の組立て作業が容易化される一方、防振装置本体に対する封止用連結部材の装着状態では、流体室の流体密性が充分に確保されて、高い信頼性が実現される。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0048】
図1〜6には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、防振装置本体としてのマウント本体12に封止用連結部材14が装着された構造とされており、マウント本体12が第一の取付部材16と第二の取付部材18を本体ゴム弾性体20によって相互に弾性連結した構造を有している。なお、本実施形態においては、封止用連結部材14にブラケット部が一体形成された構造とされている。また、以下の説明において、上下方向とは、原則として、マウント軸方向である
図3中の上下方向を言う。
【0049】
より詳細には、第一の取付部材16は、中実の略円形ブロック形状とされており、鉄やアルミニウム合金、硬質の合成樹脂等で形成された高剛性の部材とされている。更に、第一の取付部材16には、上面に開口するねじ穴22が形成されており、図示しないインナブラケットがボルト固定されることで、第一の取付部材16がインナブラケットを介して図示しないパワーユニットに取り付けられるようになっている。
【0050】
第二の取付部材18は、第一の取付部材16と同様に高剛性の部材とされて、略円環形状を呈していると共に、内周面が上方に向かって拡径する傾斜面とされている。更に、第二の取付部材18は、外周面に開口して周方向環状に連続して延びる係止溝24が形成されており、係止溝24を挟んだ下側の壁部が係合突起26とされている。
【0051】
さらに、第二の取付部材18には、一対のガイド部28,28が一体形成されている。このガイド部28は、
図1〜3に示すように、軸直角方向に広がる厚肉板状とされており、第二の取付部材18の上部において外周側に突出している。更にまた、ガイド部28の前面(
図1中の上面)が第二の取付部材18の略前後中央に位置しており、ガイド部28の前面から前方に向かって小径円柱形状の嵌合凸部30が突出している。本実施形態では、一対の嵌合凸部30,30がマウント中心軸を挟んで両側に配置されている。
【0052】
そして、第一の取付部材16が第二の取付部材18と略同一中心軸上で上方に配置されて、本体ゴム弾性体20によって相互に弾性連結されている。本体ゴム弾性体20は、厚肉大径の略円錐台形状とされており、小径側の端部に第一の取付部材16が加硫接着されていると共に、大径側の端部の外周面に第二の取付部材18の内周面が加硫接着されている。なお、本体ゴム弾性体20は、第一の取付部材16と第二の取付部材18を備えた一体加硫成形品として形成されている。
【0053】
さらに、本体ゴム弾性体20には、大径凹所32が形成されている。大径凹所32は、逆向きの略すり鉢形状を呈する凹所であって、本体ゴム弾性体20の大径側の端面に開口している。
【0054】
更にまた、大径凹所32の外周側には、シールゴム34が形成されている。シールゴム34は、第二の取付部材18の下面を覆うように固着された薄肉のゴム層であって、本実施形態では本体ゴム弾性体20と一体形成されている。
【0055】
また、本体ゴム弾性体20の一体加硫成形品を構成する第二の取付部材18には、可撓性膜36が取り付けられている。可撓性膜36は、略薄肉円形のゴム膜であって、外周部分が上下に弛んだ形状とされている。更に、可撓性膜36の外周端部には、上方に突出する固定部38が設けられている。この可撓性膜36は、固定部38を含む外周端部が、第二の取付部材18に取り付けられる仮止用部材40と後述する仕切部材60の間で挟持されることにより、第二の取付部材18に取り付けられている。
【0056】
仮止用部材40は、上部が大径とされた薄肉大径の段付き円筒形状を有する部材であって、金属や硬質の合成樹脂によって形成されている。より詳細には、仮止用部材40は、略軸直角方向に広がる段差状の封止部42が設けられている。この封止部42は、内周端部が全周に亘って連続する環状とされていると共に、外周部分が周方向で隙間をもって複数に分割されている。また、封止部42の外周端部には、上方に向かって延び出す複数の係止部44と複数の位置決め部46とが、周上で交互に設けられている。
【0057】
係止部44は、
図4,5に示すように、上端部に内周側に向かって突出する仮止爪48を備えている。仮止爪48は、上方に向かって次第に大径となる断面形状を有していると共に、下面が略軸直角方向に広がっている。なお、仮止爪48の内周端が係止部44の外周端よりも小径となっていると共に、仮止爪48を外れた係止部44の基端部分が係止部44の外周端よりも外周側に位置している。
【0058】
位置決め部46は、
図6に示すように、係止部44よりも厚肉とされて、周方向で隣り合う係止部44,44の間に所定の長さで設けられている。また、封止部42の周上で位置決め部46が設けられた部分には、封止部42の外周端部から下方に向かって突出する被押圧部50が形成されている。この被押圧部50が封止部42の下面に一体形成されることで、封止部42が周上で部分的に厚肉となっている。
【0059】
一方、封止部42の内周端部には、下方に向かって延び出す保持筒部52が設けられている。保持筒部52は、全体として略円筒形状とされており、下端部から内周側に突出する内フランジ状の押え部54を備えている。なお、押え部54の内周端部には、略円形断面を有して上下に突出する狭圧部56を一体で備えている。
【0060】
そして、複数の係止部44が第二の取付部材18の係合突起26に外挿されて、各係止部44の仮止爪48が第二の取付部材18の係止溝24にそれぞれ差し入れられて係合突起26に対して軸方向に係止されることにより、仮止用部材40が第二の取付部材18に対して仮止めされている。また、第二の取付部材18に仮止用部材40がシールゴム34を挟んで重ね合わされることで、第二の取付部材18と仮止用部材40の封止部42との間が仮シールされており、少なくとも荷重の非入力状態において第二の取付部材18と仮止用部材40の間が流体密に封止されている。なお、位置決め部46が第二の取付部材18の係合突起26に外挿されることにより、第二の取付部材18と仮止用部材40が軸直角方向に位置決めされている。
【0061】
さらに、仮止用部材40の押え部54が可撓性膜36の外周端部に下方から重ね合わされており、可撓性膜36の外周端部が押え部54と後述する仕切部材60との間で挟持されることによって、可撓性膜36が第二の取付部材18に取り付けられている。このように可撓性膜36が第二の取付部材18に取り付けられることにより、マウント本体12における本体ゴム弾性体20と可撓性膜36の軸方向間には、外部空間から隔てられて非圧縮性流体が封入された流体室58が形成されている。なお、流体室58に封入される非圧縮性流体としては、水やアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、シリコーン油、或いはそれらの混合液等が、何れも採用され得る。また、後述する流体の流動作用に基づく防振効果を有利に得るためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体が望ましい。
【0062】
また、流体室58には、仕切部材60が収容配置されている。仕切部材60は、蓋部材62と仕切部材本体64を備えている。蓋部材62は、薄肉の略円板形状を有しており、外周部分には、上方に突出する当接突起66が一体形成されている。
【0063】
仕切部材本体64は、厚肉の略円板形状を有しており、外周部分には上面に開口しながら周方向に所定の長さで延びる周溝68が形成されている。更に、仕切部材本体64の径方向中央部分には、上方に向かって開口する円形の収容凹所70が形成されており、収容凹所70に可動膜72が配設されている。可動膜72は、略円板形状のゴム弾性体であって、外周端部が上下に突出して厚肉とされている。なお、仕切部材本体64の外周部分には下方に開口する凹溝74が形成されており、可撓性膜36の固定部38が差し入れられて軸直角方向で位置決めされる。
【0064】
そして、蓋部材62が仕切部材本体64の上面に重ね合わされることによって仕切部材60が構成されて、流体室58に配設されている。仕切部材60は、外周端部が第二の取付部材18と仮止用部材40の押え部54との間で軸方向に挟み込まれて支持されており、流体室58内で軸直角方向に広がっている。これにより、流体室58は、仕切部材60を挟んで上下に二分されており、仕切部材60の上方には、壁部の一部が本体ゴム弾性体20で構成されて、振動入力によって内圧変動が惹起される受圧室76が形成されていると共に、仕切部材60の下方には、壁部の一部が可撓性膜36で構成されて、容積変化が容易に許容される平衡室78が形成されている。
【0065】
また、仕切部材60の周溝68が上側開口を蓋部材62で覆われてトンネル状の流路とされており、両端部が受圧室76と平衡室78の各一方に連通されている。これにより、受圧室76と平衡室78を相互に連通するオリフィス通路80が、周溝68を利用して形成されている。オリフィス通路80は、流体室58の壁ばね剛性などを考慮しながら通路断面積(A)と通路長(L)の比(A/L)を適宜に設定することにより、流動流体の共振周波数であるチューニング周波数がエンジンシェイクに相当する10Hz程度の低周波数に設定されている。
【0066】
また、収容凹所70に配された可動膜72の上面には、蓋部材62に貫通形成された上透孔82を通じて受圧室76の液圧が及ぼされていると共に、可動膜72の下面には、仕切部材本体64に貫通形成された下透孔84を通じて平衡室78の液圧が及ぼされている。これにより、受圧室76と平衡室78の相対的な圧力変動によって、可動膜72が厚さ方向に弾性変形せしめられて、受圧室76と平衡室78の間で液圧が伝達されるようになっている。
【0067】
かくの如き構造とされたマウント本体12には、封止用連結部材14が取り付けられている。封止用連結部材14は、鉄やアルミニウム合金などで形成された高剛性の部材であって、
図1〜8に示すように、第二の取付部材18の外周面を部分的に覆う装着部86を備えている。装着部86は、略半円筒形状とされており、
図7,8に示すように、内周面に開口して周方向に延びる挟持溝88が形成されている。この挟持溝88は、装着部86の周方向端部から溝形断面をもって突出するガイド手段としての案内部90によって、更に周方向外側にまで延び出して形成されている。また、溝形とされた案内部90には、突出先端に開口して底壁部を貫通する切欠き92が形成されている。
【0068】
さらに、装着部86の周方向両端部には、それぞれ締結板部94が
図7中の左右外側に広がって一体形成されている。これら締結板部94,94には、嵌合凸部30と対応する孔断面形状の嵌合孔96がそれぞれ貫通形成されている。更にまた、装着部86および締結板部94の下端部には、取付板部97が一体形成されており、取付板部97には厚さ方向に貫通形成するボルト孔98が形成されている。
【0069】
このような構造とされた封止用連結部材14の挟持溝88に、マウント本体12の第二の取付部材18と仮止用部材40の上部とが差し入れられることで、封止用連結部材14が案内されてマウント本体12に対して位置決めされながら側方から接近せしめられる。そして、第二の取付部材18のガイド部28が封止用連結部材14の切欠き92に差し入れられると共に、ガイド部28の嵌合凸部30が締結板部94の嵌合孔96に嵌め合わされて固定されている。これにより、封止用連結部材14が第二の取付部材18の外周を部分的に覆うように配置されて、封止用連結部材14がマウント本体12に装着されている。本実施形態では、相互に嵌め合わされる嵌合凸部30と嵌合孔96の二組が、マウント本体12の中心軸を挟んで両側に配置されている。
【0070】
ここにおいて、
図10に示すように、第二の取付部材18と仮止用部材40の封止部42および被押圧部50が挟持溝88に差し入れられることにより、第二の取付部材18と仮止用部材40とに対して重ね合わせ方向の押圧力が封止用連結部材14によって及ぼされて、封止部42が第二の取付部材18に対して相対的に接近変位せしめられる。これにより、第二の取付部材18と封止部42の間に挟まれたシールゴム34の圧縮率が高められることから、第二の取付部材18と封止部42の間が本シールされて、振動荷重の入力時にも流体密性が保持される。
【0071】
本実施形態では、マウント本体12に対する封止用連結部材14の装着によって、第二の取付部材18と仮止用部材40の押え部54に重ね合わせ方向の押圧力が及ぼされて、第二の取付部材18と仕切部材60の間でもシールゴム34の圧縮率が高められると共に、仮止用部材40と仕切部材60の間では可撓性膜36の外周端部の圧縮率が高められる。これらによって、受圧室76と平衡室78の何れにおいても、流体密性の向上が図られている。なお、本実施形態の仮止用部材40の押え部54には、先端部に狭圧部56が設けられており、仮止用部材40と仕切部材60の間における可撓性膜36の圧縮率が効率的に高められて、シール性が有利に確保されるようになっている。
【0072】
なお、本実施形態では、蓋部材62の当接突起66が本体ゴム弾性体20の大径凹所32に差し入れられて、大径凹所32の内周面に重ね合わされている。これにより、シールゴム34の内周側への膨出変形が当接突起66への当接によって防止されて、シールゴム34の圧縮率を高めることによるシール性の向上が有利に図られる。
【0073】
このような本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント10では、マウント本体12が第二の取付部材18に仮止用部材40を係止させる簡単な仮連結構造によって組み立てられると共に、第二の取付部材18と仮止用部材40の封止部42との間にシールゴム34が挟装されることで、仮シールされるようになっている。これにより、マウント本体12の組立作業が容易であると共に、例えば非圧縮性流体を満たした水槽中でマウント本体12を組み立てることにより、流体室58に非圧縮性流体を容易に封入することができる。このように、マウント本体12単体において、仮シールによる非圧縮性流体の封入が実現されることから、非圧縮性流体の封入工程を封止用連結部材14への装着前に行うことができて、作業効率の向上が図られる。
【0074】
仮止用部材40は、封止用連結部材14による本シール及び結合を行う前の各部材(本体ゴム弾性体20と仕切部材60と可撓性膜36)の位置決め用であり、仮止用部材40によって位置決めされた各部材の組付状態では、使用環境を考慮していない実用性の低いレベルのシール状態となっている。
【0075】
このように、仮止用部材40では使用環境を考慮していない実用性の低いレベルのシール性能とし、シール性能を満足する結合構造はあくまでも封止用連結部材14で実現されるようにしたことで、仮止用部材40を小型で低強度にすることができ、本来の目的とする各部材の位置決めという中間作業に際して、仮止爪48を変形可能な低強度とすることで、製造作業を容易に行うことが可能となっている。
【0076】
また、マウント本体12に封止用連結部材14が取り付けられることにより、シールゴム34の圧縮率が高められて、第二の取付部材18と仮止用部材40の間が本シールされている。これにより、振動が入力される車両装着状態においても、流体室58から非圧縮性流体が漏れ出すのを防止することができて、信頼性の向上が図られる。
【0077】
さらに、本実施形態では、封止用連結部材14の挟持溝88にマウント本体12の第二の取付部材18と仮止用部材40の上部とが差し入れられることで、それら第二の取付部材18と仮止用部材40の間に重ね合わせ方向の押圧力が及ぼされるようになっている。これにより、封止用連結部材14の装着によるシールゴム34の圧縮率の変化量を安定させることができて、過剰な圧縮によるシールゴム34の損傷を防ぎながら、充分なシール性を確保して、非圧縮性流体の漏れを有効に回避することができる。
【0078】
さらに、マウント本体12の第二の取付部材18と封止用連結部材14が、第二の取付部材18に一体形成された嵌合凸部30と、封止用連結部材14の締結板部94に貫通形成された嵌合孔96との嵌め合わせによって、相互に固定されている。これにより、マウント本体12と封止用連結部材14の固定が、部品点数の少ない簡単な構造によって実現されている。
【0079】
更にまた、マウント本体12と封止用連結部材14が相互に固定されて、マウント本体12と封止用連結部材14の側方への相対変位が制限されていることにより、第二の取付部材18が封止用連結部材14の挟持溝88から抜けるのが防止されている。これにより、マウント本体12と仮止用部材40が相互に位置決めされた状態に保持されて、シールゴム34の圧縮による本シールが安定して維持される。
【0080】
しかも、本実施形態では、第二の取付部材18と封止用連結部材14が、封止用連結部材14の装着部86を外れた位置で、嵌合凸部30と嵌合孔96の嵌め合わせによって相互に固定されている。これにより、相互に重ね合わされる第二の取付部材18の外周面と装着部86の内周面との各形状を高い自由度をもって設定することができる。
【0081】
加えて、嵌合凸部30と嵌合孔96は、マウント本体12の中心軸:lを挟んだ左右両側に各一組が設けられている。これにより、マウント本体12の中心軸方向の荷重入力時に生じるモーメントが低減されて、耐久性の向上や目的とする防振性能の有効な発揮などが実現される。
【0082】
また、マウント本体12に封止用連結部材14が装着される際に、マウント本体12の第二の取付部材18および仮止用部材40が封止用連結部材14の挟持溝88に差し入れられて案内されることで、マウント本体12に対して封止用連結部材14が所定の位置に容易に装着されるようになっている。特に、本実施形態の封止用連結部材14では、装着部86の周方向外側に突出する案内部90が設けられており、案内部90に形成された切欠き92に第二の取付部材18のガイド部28が差し入れられることで、案内作用がより効果的に発揮される。
【0083】
また、本実施形態の仮止用部材40では、第二の取付部材18に係止される係止部44と、第二の取付部材18の外周面に重ね合わされる位置決め部46とが交互に設けられており、位置決め部46の形成部分において封止部42から下方に突出する被押圧部50が形成されている。これにより、係止部44の形成部分において薄肉の封止部42が弾性変形することで、第二の取付部材18に対して軸方向の押込みによる組付けが容易に実現される一方、封止用連結部材14の装着状態では、被押圧部50が封止用連結部材14の挟持溝88で押圧されることによって、第二の取付部材18と封止部42との重ね合わせ面間が本シールされる。なお、本実施形態では、封止部42の外周部分は周上で複数に分割されて隙間が設けられているが、該隙間が充分に小さくされていると共に、内周部分が周方向に連続していることから、封止用連結部材14の装着によって全周が本シールされている。
【0084】
以上のことから明らかなように、「本体ゴム弾性体20と仕切部材60と可撓性膜36を相互に結合して流体室58構造を完成する」のは、あくまでも「封止用連結部材14」であり、仮止用部材40は、封止用連結部材14でシール構造を実現するに際して、本体ゴム弾性体20と仕切部材60と可撓性膜36の相対的な位置合わせを確実に精度良く実現し、使用環境を考慮していない実用性の低いレベルのシール状態としている。そして、「封止用連結部材14」によって「本体ゴム弾性体20と仕切部材60と可撓性膜36が相互に結合された本発明の流体封入式防振装置」では、「仮止用部材40」における仮止爪48は係止突起26から浮いていて隙間があり(
図22(b)参照)、係止機能を発揮しておらず、即ち連結機能も有していないことが明らかである。
【0085】
また、シールのための結合力は封止用連結部材14による結合力だけで及ぼされており、このことは仮止用部材40の仮止爪48が、封止用連結部材14の組付後には機能していないことからも明らかである。しかし、封止用連結部材14は、その製造及び組付けに際しての作業上の理由から全周に満たない周長とされていることから、仮止用部材40を全周に亘って環状とし、この仮止用部材40を介して、封止用連結部材14の結合力を本体ゴム弾性体20(第二の取付部材18)と仕切部材60と可撓性膜36の重ね合わせ部分に伝達するようになっている。尤も、この場合でも、本体ゴム弾性体20(第二の取付部材18)と仕切部材60と可撓性膜36の結合力は封止用連結部材14によって及ぼされているのであり、そのことは仮止用部材40の仮止爪48に隙間が発生して機能していなことから明らかである。
【0086】
図11〜15には、本発明の第二の実施形態としてのエンジンマウント100が示されている。エンジンマウント100は、マウント本体102に封止用連結部材104が装着された構造とされている。また、マウント本体102は、第一の取付部材16と第二の取付部材108が本体ゴム弾性体20で弾性連結された構造を有している。以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0087】
より詳細には、第二の取付部材108は、
図16,17に示すように、略長円環形状とされており、外周面に開口する係止溝24が形成されている。また、本実施形態の第二の取付部材108では、上端部から外周側に突出する固着部としての固定フランジ110が一体形成されて、特に大きく突出する短軸方向(
図14の左右方向)の両側部分には、各2つの嵌合孔112,112が形成されている。なお、本実施形態では、第二の取付部材108の略長円環形状に合わせて、第一の取付部材16、本体ゴム弾性体20、仕切部材60、仮止用部材40が何れも軸方向視で略長円形状とされている。
【0088】
このような第二の取付部材108を備えて構成されたマウント本体102には、封止用連結部材104が装着されている。封止用連結部材104は、
図11〜15に示すように、略長円筒形状の装着部114を備えている。この装着部114の下端部には、内周側に向かって突出する内フランジ状の押圧部116が全周に亘って一体形成されている。なお、本実施形態の封止用連結部材104は、例えば鉄やアルミニウム合金などのダイカストによって形成されている。
【0089】
さらに、封止用連結部材104は、一対の取付部118,118を備えている。取付部118は、装着部114と一体形成されて、装着部114から短軸方向の外側に向かって突出しており、突出先端部分には厚さ方向に貫通するボルト孔120が形成されている。これら取付部118,118が各ボルト孔120に挿通される図示しないボルトによって、図示しない車両ボデーに取り付けられるようになっている。更にまた、取付部118には、上方に突出する2つの嵌合凸部122,122が一体形成されている。なお、装着部114と取付部118との境界部分が下方に開口する凹状に肉抜きされることにより、軽量化が図られている。
【0090】
そして、
図18に示すように、マウント本体102が封止用連結部材104に対して上方から軸方向に挿入されて、第二の取付部材108の固定フランジ110が封止用連結部材104の上面に重ね合わされると共に、封止用連結部材104の嵌合凸部122が固定フランジ110の嵌合孔112に挿通される。本実施形態では、嵌合孔112に挿通された嵌合凸部122が軸方向に圧縮されて軸直角方向に膨出変形されて、嵌合凸部122の外周面が嵌合孔112の内周面に押し付けられることにより、嵌合凸部122と嵌合孔112が相互に嵌合されて、第二の取付部材108が封止用連結部材104の一対の取付部118,118に固定されている。なお、第二の取付部材108の外周面と封止用連結部材104の装着部114の内周面は、隙間なく当接していても良いが、隙間をもって配置されることで、部材寸法や組付けの誤差などが許容されるようになっていても良い。
【0091】
ここにおいて、封止用連結部材104の押圧部116が仮止用部材40の被押圧部50に下方から押し当てられることによって、仮止用部材40が第二の取付部材108に対して軸方向で相対変位せしめられる。これにより、第二の取付部材108と仮止用部材40の封止部42との間に重ね合わせ方向の押圧力が及ぼされることから、シールゴム34の圧縮力が高められて、第二の取付部材108と封止部42の間が本シールされている。すなわち、封止用連結部材104による結合力だけで本シールが完成されており、仮止用部材40は、文字通りの仮止めに過ぎず、封止用連結部材104の組付後には、実質的にその作用を失うのである。
【0092】
本実施形態においても、第一の実施形態と同様に、マウント本体102に対する封止用連結部材104の装着によって、第二の取付部材108と仕切部材60の間でもシールゴム34の圧縮率が高められると共に、仮止用部材40と仕切部材60の間では可撓性膜36の外周端部の圧縮率が高められる。これにより、受圧室76と平衡室78の何れにおいても、流体密性の向上が図られている。
【0093】
このような本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント100に示すように、マウント本体102と封止用連結部材104は、軸方向で相互に組み付けられるようになっていても良い。
【0094】
また、エンジンマウント100では、筒状とされた封止用連結部材104の装着部114にマウント本体102の第二の取付部材108および仮止用部材40を差し入れることにより、マウント本体102と封止用連結部材104を軸直角方向で相互に位置決めして軸方向に案内するガイド手段が構成される。これにより、嵌合凸部122と嵌合孔112が簡単に位置決めされて、マウント本体102と封止用連結部材104を容易に固定することができる。
【0095】
さらに、嵌合孔112に挿通された嵌合凸部122が軸方向に圧縮されて拡径変形されることにより、嵌合凸部122の外周面が嵌合孔112の内周面に押し当てられて、嵌合されている。それ故、嵌合凸部122を嵌合孔112よりも僅かに小径とすることも可能であり、嵌合凸部122と嵌合孔112の位置決めが一層容易になると共に、嵌合凸部122と嵌合孔112の寸法誤差が許容される。
【0096】
図19,20には、本発明の第三の実施形態としてのエンジンマウント130が示されている。エンジンマウント130は、マウント本体132に封止用連結部材134が取り付けられた構造とされている。マウント本体132は、第一の取付部材16と第二の取付部材135が本体ゴム弾性体20によって弾性連結された構造を有している。
【0097】
第二の取付部材135は、外周面に開口する係止溝24を備えた略円環形状とされていると共に、外周側に突出する固定フランジ136を備えている。更に、突出寸法を部分的に大きくされた固定フランジ136の左右両側部分には、下方に向かって突出する各2つの嵌合凸部138,138が一体形成されている。
【0098】
一方、封止用連結部材134は、薄肉大径の略円筒形状を呈する装着部140を有している。更に、装着部140の下端部には、内周側に突出する内フランジ状の押圧部142が一体形成されている。更にまた、装着部140の上端部には、取付片144が一体形成されている。この取付片144は、周上の左右両側(
図20中の左右方向両側)で特に大きく突出しており、左右両側にそれぞれボルト孔146と2つの嵌合孔148,148が形成されている。なお、本実施形態の封止用連結部材134は、例えば、金属平板をプレス加工することで、容易に形成することができる。
【0099】
そして、
図21に示すように、封止用連結部材134の装着部140にマウント本体132が上方から軸方向に差し入れられて、第二の取付部材135の固定フランジ136が封止用連結部材134の上面に重ね合わされて、第二の取付部材135の嵌合凸部138が封止用連結部材134の嵌合孔148に挿通される。嵌合凸部138の先端部分が拡径変形されて嵌合孔148の開口部に係止されることにより、第二の取付部材135が封止用連結部材134に固定されている。
【0100】
ここにおいて、
図22(a)のように、マウント本体132においてシールゴム34が挟装されることで仮シールされた第二の取付部材135と仮止用部材40の間が、マウント本体132に対する封止用連結部材134の装着によって、
図22(b)に示すように本シールされる。
【0101】
すなわち、マウント本体132に封止用連結部材134が装着されると、仮止用部材40の保持筒部52および押え部54の下面に対して、封止用連結部材134の押圧部142が軸方向に重ね合わされており、第二の取付部材135と仮止用部材40の間には重ね合わせ方向の押圧力が封止用連結部材134によって及ぼされている。これにより、マウント本体132に封止用連結部材134が装着されることによって、第二の取付部材135と仮止用部材40の封止部42との間でシールゴム34の圧縮率が高められて、第二の取付部材135と封止部42の間が本シールされている。
【0102】
本実施形態においても、第一,第二の実施形態と同様に、マウント本体132に対する封止用連結部材134の装着によって、第二の取付部材135と仕切部材60の間でもシールゴム34の圧縮率が高められると共に、仮止用部材40と仕切部材60の間では可撓性膜36の外周端部の圧縮率が高められる。これにより、受圧室76と平衡室78の何れにおいても、流体密性の向上が図られている。
【0103】
このような本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント130によれば、封止用連結部材134の押圧部142が仮止用部材40の押え部54に軸方向で重ね合わされることにより、第二の取付部材135と仮止用部材40の封止部42との間に接近方向の押圧力が及ぼされている。これにより、第二の取付部材135と仮止用部材40の連結部分に直接的に外力を及ぼすことなく、本シールが実現される。しかも、押圧部142と押え部54が全周に亘って重ね合わされていることから、押圧力が全周に亘って及ぼされて、流体密性をより有利に得ることができる。
【0104】
また、本実施形態に係る封止用連結部材134は、プレス加工によって簡単に形成することができて、軽量化や生産性の向上、コストの低減などを実現することができる。
【0105】
また、本実施形態では、嵌合孔148に挿通された嵌合凸部138の先端部分が拡径変形されて、嵌合孔148の開口周縁部に対して軸方向に係止されることにより、嵌合凸部138の嵌合孔148からの抜けが防止されて、第二の取付部材135と封止用連結部材134が固定されている。このような構造によっても、マウント本体132の封止用連結部材134からの抜けが防止されて、装着状態が安定して保持される。
【0106】
図23〜28には、本発明の第四の実施形態としてのエンジンマウント150が示されている。このエンジンマウント150は、
図29〜30に示されている防振装置本体としてのマウント本体152に対して、
図31〜32に示されている封止用連結部材154が装着された構造とされている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則としてマウント軸方向である
図23中の上下方向を言う。
【0107】
より詳細には、マウント本体152は、
図29〜30に示されているように、第一の取付部材156と第二の取付部材158とが、本体ゴム弾性体160で相互に弾性連結された構造となっている。
【0108】
第一の取付部材156は、ストレートに延びる中空孔162を備えた略矩形の筒形状とされており、鉄やアルミニウム合金、硬質の合成樹脂等で形成された高剛性の部材が用いられている。そして、第一の取付部材156は、マウント軸方向に対して略直交する方向に延びる中心軸をもって配されている。また、第一の取付部材156の内周面には、嵌着ゴム層164が全周を覆うように被着形成されている一方、第一の取付部材156の外周面には、被覆ゴム層166が全周を覆うように被着形成されている。更に、第一の取付部材156の上壁部分には、マウント軸方向の上方に向かって突出する上部緩衝ゴム層168が、被覆ゴム層166と一体的に形成されている。
【0109】
そして、かかる第一の取付部材156には、
図23〜28に示されているように、インナブラケット170が側方から圧入状態で組み付けられて嵌着固定されるようになっており、かかるインナブラケット170を介して、第一の取付部材156がパワーユニットに取り付けられるようになっている。即ち、インナブラケット170の基端部分には、パワーユニット側への固定用ボルトの挿通孔172が複数形成されている一方、インナブラケット170の先端部分は、略H形断面形状とされており、第一の取付部材156の中空孔162に対応した外周寸法をもって直線的に延びている。
【0110】
また、第二の取付部材158は金属製の高剛部材とされており、中央部分をマウント軸方向に貫通する大径の透孔174が設けられた厚肉の略円環形状とされている。なお、第二の取付部材158の内周面は、上方に向かって拡径するテーパ状の傾斜面とされている。また、第二の取付部材158の外周面には、軸方向の上端から下端に向かって所定長さで延びる陥状凹部176が、周方向で所定間隔を隔てて複数形成されており、周方向で隣り合う陥状凹部176,176間が、外周面上に突出する凸部178とされている。そして、これら陥状凹部176の下端部分には、陥状凹部176の下端を行き止まり状態で塞くようにして、周方向で隣り合う凸部178,178間にわたって軸直角方向に広がる板状の係止部180が形成されている。
【0111】
さらに、第二の取付部材158には、外周面上に突出して一対の固定部182,182が一体形成されている。これら一対の固定部182,182は、それぞれ第二の取付部材158の外周面上で軸直角方向に広がる厚肉の略ブロック状とされており、第二の取付部材158の外周部分において軸直角方向で対向位置する部位に設けられている。そして、これら一対の固定部182,182のそれぞれは、第二の取付部材158の径方向一方向で対向位置する一対の外周部位からそれぞれ接線方向で略平行に延び出した外周面184,184を有している。なお、本実施形態では、かかる一対の固定部182,182における外周面184,184が、第二の取付部材158の径方向一方向での対向部位から接線方向に向かって延び出すに従って、相互に次第に拡開する方向に数度以下の僅かな傾斜角が付された傾斜面とされている。
【0112】
また、各固定部182の外周面184には、軸方向の全長に亘って連続して延びる凹部としての溝状凹部186が、接線方向に向かう延び出し方向で互いに所定間隔を隔てて複数設けられている。これらの溝状凹部186により、固定部182の外周面184が、延び出し方向、換言すれば、後述する固定部182の挟持溝254への差入れ方向、で所定距離を持って分断された複数の当接突部188によって構成されており、本実施形態では、それぞれの外周面184上において、3つの溝状凹部186,186,186と3つの当接突部188,188,188が形成されている。
【0113】
そして、第二の取付部材158の中心軸上で上方に所定距離を隔てて、第一の取付部材156が配置されており、これら第一の取付部材156と第二の取付部材158が、本体ゴム弾性体160によって相互に弾性連結されている。本体ゴム弾性体160は、厚肉大径の略円錐台形状とされており、小径側の端部に第一の取付部材156が加硫接着されていると共に、大径側の端部の外周面に第二の取付部材158の内周面が加硫接着されている。
【0114】
なお、本体ゴム弾性体160には、第一の取付部材156の内外周面に被着された嵌着ゴム層164と被覆ゴム層166および上部緩衝ゴム層168が、一体的に形成されている。そして、本体ゴム弾性体160は、第一の取付部材156と第二の取付部材158を備えた一体加硫成形品として形成されている。
【0115】
また、本体ゴム弾性体160には、小径側端部付近において第一の取付部材156の一方の開口縁部における下壁部分から軸方向外方に向かって所定厚さの舌片状または平板状に延び出す下部緩衝ゴム層190が一体的に形成されている。更にまた、本体ゴム弾性体160には、大径凹所192が形成されている。大径凹所192は、逆向きの略すり鉢形状を呈する凹所であって、本体ゴム弾性体160の大径側の端面に開口している。また、本体ゴム弾性体160には、内外に貫通して延びる注入用孔194が設けられている。この注入用孔194は、本体ゴム弾性体160の弾性主軸上を一定の円形断面で直線的に延びており、大径凹所192の上底部の中央に設けられた内側開口部から、第一の取付部材156を貫通して中空孔162内に設けられた外側開口部にまで延びている。
【0116】
さらに、本体ゴム弾性体160の大径凹所192の外周側には、シール部材としてのシールゴム196が形成されている。シールゴム196は、第二の取付部材158の下面を覆うように固着された薄肉のゴム層であって、本実施形態では本体ゴム弾性体160と一体形成されており、第二の取付部材158の下面において係止部180の内周側の略全面を覆っている。
【0117】
更にまた、本体ゴム弾性体160の被覆ゴム層166には、第一の取付部材156の外方に突出する一対の側方緩衝ゴム層198,198が形成されている。これらの側方緩衝ゴム層198,198は、第一の取付部材156の中空孔162の延出方向(
図26中の左右方向)に直交する方向(
図23中の左右方向)に、それぞれ反対向きに突出している。かかる側方緩衝ゴム層198,198は略台形の断面を有する山型とされており、
図23に示されているように、エンジンマウント150の単体状態では、側方緩衝ゴム層198,198の突出先端面と後述するマウントホルダ部248の周壁内面246との対向面間に所定距離の隙間が形成されている。
【0118】
また、本体ゴム弾性体160の一体加硫成形品を構成する第二の取付部材158には、その下側に仕切部材200と可撓性膜202が、重ね合わされて配設されている。換言すれば、第二の取付部材158におけるマウント中心軸方向で、本体ゴム弾性体160が配設される側と反対の側に仕切部材200と可撓性膜202が、重ね合わされて配設されている。
【0119】
仕切部材200は、全体として厚肉の略大径円板形状とされており、金属や硬質の合成樹脂等で形成されている。また、仕切部材200には、外周部分を周方向の略一周弱の長さで延びる周溝204が上面に開口して形成されている。そして、仕切部材200の上面に薄肉の円板形状の蓋板206が重ね合わされて、周溝204の開口が覆蓋されることにより、周方向に延びるオリフィス通路208が形成されている。なお、このオリフィス通路208の周方向一方の端部は、仕切部材200を貫通して下方に開口せしめられていると共に、周方向他方の端部は、蓋板206を貫通して上方に開口せしめられている。
【0120】
一方、可撓性膜202は、全体として薄肉の略円板形状を有するゴム弾性膜や変形容易な樹脂膜等によって構成されており、径方向の中間部分に所定の弛みが設けられることで弾性変形が容易に許容されるようになっている。また、可撓性膜202の外周縁部には、厚肉とされた環状シール部210が一体的に形成されている。そして、仕切部材200の外周部分の下面に対して環状シール部210が密着状態で重ね合わされることによって、可撓性膜202が、仕切部材200の下面を全体に亘って覆うようにして配設されている。なお、仕切部材200の外周部分には、下面に開口して周方向に延びる環状の位置決め溝212が形成されており、この位置決め溝212に環状シール部210の上端が入り込むようにしてセットされている。
【0121】
そして、このように互いに重ね合わされた仕切部材200と可撓性膜202には、更にそれらの外周面を覆うようにして仮止用部材214が組み付けられている。
【0122】
かかる仮止用部材214は、全体として略円筒形状を有しており、硬質の合成樹脂や金属等によって形成されている。仮止用部材214の円筒状部216は、仕切部材200の軸方向長さと略同じか僅かに小さくされており、下端開口部には内周側に広がる内フランジ状の環状当接部218が一体形成されている。
【0123】
また、仮止用部材214の円筒状部216の上端開口部には、外周側に広がる外フランジ状の封止部220が形成されている。更にまた、かかる封止部220の外周縁部には、周上の複数箇所において、上方に向かって突出すると共に、突出先端近くの内周面に係止突起222が設けられたフック状の係止部224が形成されている。
【0124】
そして、仮止用部材214の円筒状部216が仕切部材200に対して外挿されており、仮止用部材214の環状当接部218の上には、載置された仕切部材200の下端面との間で可撓性膜202の環状シール部210が挟まれて保持されている。また、仮止用部材214の封止部220が、第二の取付部材158における係止部180の下端面に重ね合わされていると共に、各係止部224が、第二の取付部材158の外周面上を上方に突出せしめられている。更に、各係止部224は、第二の取付部材158の周上で陥状凹部176にそれぞれ位置合わせされており、各係止部224の係止突起222が、第二の取付部材158の係止部180に対して、それぞれ係止されている。
【0125】
このように係止部224の係止部180への係止作用で仮止用部材214が第二の取付部材158に組み付けられることにより、仮止用部材214の内部に収容状態で位置決めされた仕切部材200と可撓性膜202が、第二の取付部材158の下側に重ね合わされて組み付けられている。そして、本体ゴム弾性体160の大径凹所192と可撓性膜202との軸方向対向面間には、外部空間に対して流体密に封止されて非圧縮性流体が封入された流体室226が画成されている。これにより、本実施形態のマウント本体152は、流体封入式の防振装置とされている。
【0126】
また、かかる流体室226は、仕切部材200によって仕切られており、仕切部材200の上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体160で構成されて、第一及び第二の取付部材16,18間への略マウント軸方向への振動入力時に本体ゴム弾性体160の弾性変形に基づいて圧力変動が直接的に惹起される受圧室228が形成されている。一方、仕切部材200の下側には、壁部の一部が可撓性膜202で構成されて、可撓性膜202の可撓変形に基づいて内部の圧力変動が吸収軽減され得る平衡室230が形成されている。
【0127】
更にまた、これら受圧室228と平衡室230は、仕切部材200に形成されたオリフィス通路208を通じて相互に連通されており、受圧室228と平衡室230の相対的な圧力変動に基づいてオリフィス通路208を通じて封入流体が流動せしめられるようになっている。而して、オリフィス通路208を流動する流体の共振作用等を利用して、入力振動に対する防振効果が発揮されるようになっている。
【0128】
なお、流体室226への非圧縮性流体の注入は、例えば本体ゴム弾性体160の一体加硫成形品に対する仕切部材200や可撓性膜202、仮止用部材214の組み付けを非圧縮性流体中で行うこと等によっても実現可能であるが、本実施形態では、それら各部材の組付後に、注入用孔194を通じて非圧縮性流体を注入し、その後に、かかる注入用孔194に封止用の球体を圧入固着することによって為され得る。
【0129】
ここにおいて、本体ゴム弾性体160の一体加硫成形品に対して仕切部材200や可撓性膜202、仮止用部材214を組み付けた状態、即ち封止用連結部材154の下側部分へ組み付けられる前のマウント本体152単体の状態では、流体室226の外部空間に対する封止が、第二の取付部材158に対する仮止用部材214の係止作用を利用した仮シールによって実現されている。
【0130】
すなわち、仮止用部材214は、その環状当接部218に対して可撓性膜202の環状シール部210を挟んで仕切部材200が重ね合わされており、それら環状当接部218と仕切部材200との間で環状シール部210に軸方向の押圧力を及ぼし得るようになっている。また、仮止用部材214の封止部220は、係止部180よりも内周側の第二の取付部材158の下端面に対して、シールゴム196を挟んで重ね合わされており、それら封止部220と第二の取付部材158との間でシールゴム196に軸方向の押圧力を及ぼし得るようになっている。
【0131】
これにより、これら環状シール部210とシールゴム196とを軸方向に押圧する反力が、仮止用部材214の軸方向下方に向かって及ぼされている。そして、かかる押圧反力に抗して、仮止用部材214の係止部224が第二の取付部材158の係止部180に係止されて、仮止用部材214が第二の取付部材158に対して軸方向の接近位置に保持されている。その結果、仮止用部材214の第二の取付部材158に対する係止力をもって、環状シール部210とシールゴム196とに対して軸方向のシール圧力が及ぼされているのであり、これら各シール部196,210によって第二の取付部材158と仕切部材200の間および仕切部材200と仮止用部材214との間が、それぞれ流体密に仮シールされて、流体室226の流体密性が保持されるようになっている。従って、本実施形態では、係止部180および係止部224により、仮止用部材214を第二の取付部材158に係止する係止手段が構成されており、かかる係止手段により流体室226が流体密に仮シールされる。
【0132】
なお、本実施形態では、仕切部材200および蓋板206の外周縁部における第二の取付部材158との重ね合わせ面間にも、シールゴム196が挟まれることにより、仕切部材200に対する蓋板206の密着した重ね合わせ状態が保持されると共に、シール性の向上が図られている。
【0133】
かくの如き構造とされたマウント本体152には、封止用連結部材154が取り付けられており、封止用連結部材154の略中央に形成された組付スペース内にマウント本体152が側方から差し入れられるようにして組み付けられている。なお、封止用連結部材154は、鉄やアルミニウム合金などで形成された高剛性の部材であって、軽量で且つ部材厚による剛性確保も容易であって設計自由度も大きい等の理由から、アルミニウム合金製のダイキャスト成形品が好適に採用される。
【0134】
詳細には、
図23〜28および
図31〜32に示されているように、封止用連結部材154は、組付スペースを跨いで設けられた門形部232を有しており、この門形部232の両脚下端には、相互に離隔する方向に広がる平板形状をもって一対の取付部234,234が設けられている。これらの取付部234,234のそれぞれには、固定ボルトを挿通する挿通孔236が形成されており、この挿通孔236に挿通される固定ボルトにより、封止用連結部材154が車両ボデーに対してボルト固定可能とされている。なお、門形部232の両脚部分と各取付部234との間には、部材幅方向の両縁をつなぐ補強リブ238,238がそれぞれ一体形成されている。即ち、本実施形態では、第二の取付部材158を防振連結対象の1つである車両ボデーへ取り付けるためのブラケット金具によって封止用連結部材154が構成されている。
【0135】
また、門形部232の下端開口部分には、一対の取付部234,234間に跨がって広がる押圧部240が一体形成されている。押圧部240の中央部分には、円形の透孔242が形成されており、この透孔242の内径寸法が、マウント本体152の仮止用部材214の環状当接部218の内径寸法と略同じとされている。
【0136】
更にまた、門形部232には、一方の側方開口の下側部分を覆うように装着部244が一体形成されている。この装着部244は、押圧部240の透孔242と略同心的に略円弧状に湾曲しており、門形部232の一方の側方開口から外方に向かって突出されている。
【0137】
そして、かかる装着部244が設けられることで、門形部232の下側部分には、周方向に半周以上の長さで延びる略円弧状の周壁内面246と、透孔242を有する押圧部240とを備えた組付スペースとしてのマウントホルダ部248が形成されている。かかるマウントホルダ部248は、装着部244と反対側に向かって開口しており、かかる開口部が、マウント本体152を差し入れられて組み付ける差入口となっている。
【0138】
また、マウントホルダ部248の周壁内面246には、門形部232の一対の脚部250,250の対向内面において、押圧部240の上面と上下方向に対向する段差状の押圧天面252が形成されている。そして、これら押圧部240上面と押圧天面252との対向面間において、差入口に向かって開口する挟持溝254,254が形成されている。
【0139】
なお、本実施形態では、マウントホルダ部248における一対の脚部250,250の内面において、高さ方向中間部分を脚部250の幅方向(
図28中の上下方向)の略全長に亘って延びる段差256が形成されており、段差256より下方の押圧部240側が、段差256より上方の押圧天面252側に比して大径の内周面形状とされている。
【0140】
また、門形部232の一対の脚部250,250の対向内面に形成された挟持溝254,254の溝底面258,258は、マウントホルダ部248におけるマウント本体152の差入口側に向かって次第に対向面間距離が大きくなるように拡開する傾斜面とされている。また、これら傾斜した溝底面258,258の傾斜角度が、マウント本体152における第二の取付部材158の一対の固定部182,182における外周面184,184の傾斜角度に対応して、略同じとされている。
【0141】
そして、
図33に示されているように、このような構造とされた封止用連結部材154に対して、マウント本体152が、マウントホルダ部248の側方から差し入れられて組み付けられている。そして、マウント本体152の第二の取付部材158よりも軸方向下側部分が、差入口から挟持溝254に嵌め入れられて嵌合固定されている。
【0142】
すなわち、第二の取付部材158における一対の固定部182,182が、挟持溝254,254に対して差入口から差し入れられることにより、各固定部182,182の外周面184,184が挟持溝254,254の各溝底面258,258に当接せしめられる。これにより、各固定部182,182が各挟持溝254,254に対して圧入状態で嵌着固定されている。特に本実施形態では、それぞれの固定部182,182が3つの当接突部188,188,188を備えており、各当接突部188のそれぞれが溝底面258,258に当接して嵌着固定領域が設定されている。これにより、マウントホルダ部248に対するマウント本体152の嵌着固定力を安定して得ることができるようになっている。
【0143】
また、本実施形態では、挟持溝254,254の各溝底面258,258が傾斜面とされており、封止用連結部材154の型成形時における脱型に際して、型抜テーパとして利用され得る。これにより、封止用連結部材154のダイキャスト成形の作業が一層容易とされ得る。
【0144】
さらに、マウント本体152は、封止用連結部材154の挟持溝254に嵌め入れられることにより、第二の取付部材158と仮止用部材214とに対して、軸方向で相互に接近する方向の押圧力が及ぼされている。即ち、
図29,30に示されている如きマウント本体152の単体においては、第二の取付部材158の係止部180に対して、仮止用部材214の係止部224が、仮シール状態のシールゴム196と環状シール部210の押圧反力に抗して係止作用を発揮している。かかる仮シール状態下での第二の取付部材158の上端面と仮止用部材214の下端面との間のマウント軸方向距離L1(
図29参照)に比して、封止用連結部材154の挟持溝254における押圧部240上面と押圧天面252との対向面間距離L2(
図31参照)が小さく設定されている。
【0145】
これにより、仮シール状態のマウント本体152が封止用連結部材154の挟持溝254に嵌め入れられると、
図34に拡大図示されているように、第二の取付部材158と仮止用部材214とが、マウント軸方向で更に相互に接近方向へ相対変位せしめられ、その分だけシールゴム196と環状シール部210に対して更なる圧縮がおよぼされる。この状態でマウント本体152の第二の取付部材158が封止用連結部材154に組付固定されることで、本シール状態とされて流体室226に高度な流体密性が設定されている。
【0146】
ここにおいて、本実施形態では、仮止用部材214の環状当接部218に対して、封止用連結部材154の押圧部240が、仮止用部材214の下面において周上で全周に亘って押圧している。一方、第二の取付部材158の上面に対して、挟持溝254の押圧天面252が、第二の取付部材158の周上で部分的に押圧している。
【0147】
なお、
図34からも明らかなように、本シール状態では、係止部180と係止部224との係止作用は機能する必要がない。それ故、かかる係止部180と係止部224との係止構造は、仮シール状態で要求されるシール性能を一時的に満足し得るだけの強度等の性能を有していれば足りる。
【0148】
そして、上述の如く封止用連結部材154にマウント本体152を側方から差し入れた後、封止用連結部材154の挟持溝254の底壁部分に対して、マウント本体152の第二の取付部材158に対するカシメ係合部260が形成されて、第二の取付部材158の固定部182,182が封止用連結部材154の挟持溝254,254から抜け出すことが防止されている。
【0149】
かかるカシメ係合部260は、
図35,36に拡大図示されているように、封止用連結部材154における門形部232の両脚部250,250において、挟持溝254,254の差入口の溝底面258,258の外側で近接する位置に潰しカシメ加工を施すことによって形成されている。なお、潰しカシメ加工は、例えば目的とする凹状の潰し部262に対応した先端形状を有するポンチを用いて、衝撃力や押圧力を及ぼすことによって行われ得る。
【0150】
すなわち、潰しカシメ加工で凹状の潰し部262が形成されることで、かかる潰し部262に対応するボリュームが近接する挟持溝254の溝底面258側へ膨らんで塑性変形せしめられる。その結果、挟持溝254に圧入嵌合された第二の取付部材158における固定部182の後端面に対して、それを外方から覆うように張り出したカシメ係合部260が、封止用連結部材154における差入口の開口部分に一体形成されている。
【0151】
このカシメ係合部260の固定部182への係合作用により、固定部182の挟持溝254からの差入方向後方への抜出しが阻止されて、マウント本体152をマウントホルダ部248内において確実に組付状態で保持することができる。
【0152】
特に本実施形態では、
図35に示されているように、潰しカシメ加工で形成された凹状の潰し部262において、溝底面258に沿った上下方向に延びる谷線が最深位置として設定されている。かかる谷線の位置が、潰し部262の
図35中の左右幅方向において、潰し部262の中央よりも挟持溝254の溝底面258側へ偏倚せしめられた非対称の内面形状とされている。
【0153】
これにより、潰しカシメ加工に伴う塑性変形により、固定部182の後端部分が挟持溝254側へ効率的に偏肉せしめられて、カシメ係合部260が十分な大きさで効率的に形成可能とされている。
【0154】
特に、マウント本体152の保持の際にこのような潰しカシメ加工を採用することにより、例えば曲げカシメのようにブラケット等を折り曲げたり縮径したりする必要がないことから、係合部分の部材厚さを十分確保することができて、ブラケット、ひいては防振装置の耐久性の向上が図られ得る。また、曲げカシメ等に比してカシメ操作が簡単に実行され得て、防振装置の製造効率の向上が図られている。
【0155】
このような構造とされたマウント本体152が封止用連結部材154におけるマウントホルダ部248に対して、差入口側から差し入れられて、マウント本体152が封止用連結部材154に組み付けられる。そして、これらの組付体における第一の取付部材156の中空孔162に対してインナブラケット170が先端側から挿入されて、エンジンマウント150が構成されている。
【0156】
より詳細には、第一の取付部材156の中空孔162に対して、封止用連結部材154へのマウント本体152の差入方向と反対の方向から、インナブラケット170の先端側が挿入される。この中空孔162の内面には嵌着ゴム層164が被着形成されており、インナブラケット170の先端部分の外周寸法が中空孔162の寸法と略等しくされていることから、インナブラケット170は中空孔162に対して、嵌着ゴム層164に当接して、または嵌着ゴム層164を僅かに圧縮して挿入される。これにより、インナブラケット170と第一の取付部材156が嵌着ゴム層164を介して密着状態で当接しており、インナブラケット170と嵌着ゴム層164との摩擦作用により、インナブラケット170の第一の取付部材156からの抜出しが効果的に防止され得る。
【0157】
そして、
図23にも示されているように、マウント本体152と封止用連結部材154とインナブラケット170とが組み付けられたエンジンマウント150では、第一の取付部材156の上側に形成されている上部緩衝ゴム層168が圧縮されて、封止用連結部材154における門形部232内面の天面に対して押し付けられている。
【0158】
上記の如き構造とされたエンジンマウント150は、インナブラケット170の挿通孔172にボルトが挿通されてパワーユニットに固定される一方、封止用連結部材154の挿通孔236にボルトが挿通されて車両ボデーに固定される。これにより、パワーユニットと車両ボデーがエンジンマウント150により弾性連結される。なお、かかる車両装着状態では、エンジンマウント150に対してパワーユニット重量の分担荷重が及ぼされて、本体ゴム弾性体160が弾性変形せしめられる。これにより、第一の取付部材156と第二の取付部材158がマウント中心軸方向で相対的に接近方向へ変位せしめられて、所定の離隔距離をもって対向位置している。また、例えば、エンジンマウント150は、
図23中の上下方向が車両の上下方向、
図23中の左右方向が車両の前後または左右方向となるように、車両に装着される。
【0159】
かかるエンジンマウント150に対して、インナブラケット170を介してエンジンシェイク等の振動が入力されると、オリフィス通路208を通じて非圧縮性流体が流動することによる共振作用等により、入力振動に対する防振効果が発揮され得る。
【0160】
ここにおいて、エンジンマウント150に対して下方への過大な振動が入力されると、インナブラケット170が下部緩衝ゴム層190を介して封止用連結部材154の装着部244の上端面に当接する。これにより、第一の取付部材156と第二の取付部材158のマウント中心軸方向における相対的な接近方向での変位量を緩衝的に制限する、バウンドストッパ機能が発揮され得る。
【0161】
一方、エンジンマウント150に対して上方への過大な振動が入力されると、第一の取付部材156が上部緩衝ゴム層168を介して封止用連結部材154における門形部232の天面に当接する。これにより、第一の取付部材156と第二の取付部材158のマウント中心軸方向における相対的な離隔方向での変位量を緩衝的に制限する、リバウンドストッパ機能が発揮され得る。
【0162】
さらに、エンジンマウント150に対して車両前後または左右方向での過大な振動が入力されると、第一の取付部材156が両側方緩衝ゴム層198,198を介して封止用連結部材154における周壁内面246に当接する。これにより、第一の取付部材156と第二の取付部材158の車両前後または左右方向における相対的な変位量を緩衝的に制限する、軸直角方向ストッパ機能が発揮され得る。
【0163】
上記の如き形状とされたエンジンマウント150では、マウント本体152の固定部182,182が挟持溝254,254に差し入れられて、門形部232の両脚部250,250に対して潰しカシメ加工が施されることにより、固定部182,182の後端面を覆うカシメ係合部260,260が形成されている。これにより、マウント本体152がマウントホルダ部248内に簡単な構造で、且つ安定した抜け抗力をもって組み付けられる。また、このように、カシメ加工を製造工程の最後に行うことができることから、エンジンマウント150の製造工程を簡略化することができて、製造効率の向上が図られ得る。
【0164】
特に、かかる潰しカシメ加工は、封止用連結部材154に対して局所的に施されることから、封止用連結部材154の形状や強度等が大きく変わることが回避されて、封止用連結部材154は高い設計自由度を確保し得る。
【0165】
また、本実施形態では、一対の挟持溝254,254における溝底面258,258の対向面間距離が、挟持溝254の差入口に向かって次第に拡開するように傾斜していることから、マウントホルダ部248内にマウント本体152を差し入れることも容易に可能とされる。
【0166】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記第一〜第三の実施形態では、マウント本体12(102、132)と封止用連結部材14(104、134)がマウント本体12(102、132)の中心軸を挟んだ両側で固定された構造が例示されているが、必ずしもこのような構造には限定されず、中心軸を挟んだ片側で固定されていても良い。また、マウント本体12(102、132)と封止用連結部材14(104、134)を固定する構造は、必ずしも嵌合凸部30(122、138)と嵌合孔96(112、148)の嵌め合わせ構造に限定されるものではない。
【0167】
また、前記第一〜第三の実施形態では、封止用連結部材14(104、134)の装着状態で第二の取付部材18(108、135)と仮止用部材40の間が本シールされると共に、第二の取付部材18(108、135)と仕切部材60の間および可撓性膜36と仕切部材60の間も本シールされている。しかしながら、例えば、封止用連結部材14(104、134)が装着される前のマウント本体12(102、132)単体において、第二の取付部材18(108、135)と仮止用部材40の間が仮シールされていると共に、第二の取付部材18(108、135)と仕切部材60の間および可撓性膜36と仕切部材60の間が本シールされており、封止用連結部材14(104、134)の装着によって第二の取付部材18(108、135)と仮止用部材40の間だけが本シールされるようにしても良い。
【0168】
また、前記第一〜第三の実施形態では、第二の取付部材18(108、135)を仮止用部材40に対して軸方向に挿し入れることによって、係合突起26に仮止爪48が軸方向で係止されて仮連結されるようになっているが、例えば、第二の取付部材18(108、135)と仮止用部材40を軸方向に挿入してから周方向に相対回転させることで軸方向に係止する、所謂ツイストロック構造によって仮連結されるようになっていても良い。この場合には、第二の取付部材18(108、135)と仮止用部材40の一方に設けられる突起が他方に設けられる溝に差し入れられて軸方向に係止されることで、第二の取付部材18(108、135)と仮止用部材40が軸方向に仮連結されるが、軸方向で溝の寸法を突起の寸法よりも大きくすることにより、封止用連結部材14(104、134)の装着による本シールが実現される。
【0169】
一方、前記第四の実施形態において、マウント本体152単体の状態で流体室226の本シールが施されるようにしてもよい。
【0170】
または、前記第四の実施形態において、例えば、環状シール部210の本シールが予め施されている態様が採用されてもよく、かかる場合には、第二の取付部材158と仮止用部材214間の封止構造のみを、前記第四の実施形態のように、仮シールの段階を経て本シールが施されるようにしてもよい。或いは、シールゴム196の本シールが予め施されている態様が採用されてもよく、かかる場合には、仕切部材200と仮止用部材214間の封止構造のみを、仮シールの段階を経て本シールが施されるようにしてもよい。
【0171】
さらに、インナブラケット170および封止用連結部材154の具体的な構造は何等限定されるものではない。例えば、封止用連結部材154において、門形部232の頂部を有しない構造が採用されてもよい。かかる構造の封止用連結部材が採用される場合においてリバウンドストッパ機能が必要とされる場合には、別構造のリバウンドストッパを別途採用する等してもよい。
【0172】
更にまた、第一の取付部材156は、前記実施形態の如き筒状に限定されず、ブロック形状等の構造が適宜採用可能である。
【0173】
加えて、前記第四の実施形態では、第二の取付部材158の係止部180に仮止用部材214の係止部224の係止突起222が係止する係止手段により、流体室226が流体密に仮シールされていたが、係止手段はこれに限定されるものでは勿論ない。例えば、
図37に示すように、第二の取付部材264に第二の取付部材264の外周側の底面から下方に向かって棒状に延び出す係止部266が形成されている一方、仮止用部材268の封止部220に係止部266よりもやや小径とされた円形断面形状の圧入孔270が貫設されていてもよい。これにより、仮止用部材268の圧入孔270に第二の取付部材264の係止部266が圧入されることで、仮止用部材268が第二の取付部材264に係合されて、流体室226を流体密に仮シールすることが可能となるのである。
【0174】
ここで、
図38に示すように、圧入孔270は、仮止用部材268の周縁部に距離を隔てて複数個(本実施形態では8個)設けられている。圧入孔270には、圧入孔270の内壁及び封止部220の上下方向に開口し且つ圧入孔270の周方向で等間隔に離隔する4つの切欠部272が形成されており、底面視において全体として十字形状を呈している。かかる切欠部272により、圧入孔270の内壁が封止部220の上下方向に対して撓み変形が容易に行えるようにされていることから、仮止用部材268の圧入孔270に第二の取付部材264の係止部266を圧入する際の挿入力を低減することができる。なお、圧入孔270の形状はこのような十字形状に限定されず、
図39に示す花びら形状(切欠部272が6つ)ものや星形形状のもの等、任意の形状のものが採用可能である。
【0175】
また、
図40に示すように、仮止用部材274の封止部220には係止部266よりもやや大径とされた円形断面形状の挿通孔276が貫設されており、仮止用部材274の挿通孔276に第二の取付部材264の係止部266を挿入後に、係止部266の先端を潰し加工してもよい。これにより、フランジ状の潰し部278が形成され、潰し部278が挿通孔276の周縁部に係合されることにより、流体室226を流体密に仮シールすることが可能となるのである。
【0176】
さらに、
図41に示すように、第二の取付部材280の外周面282に、仮止用部材284の係止部224の内周面が圧入されることにより、仮止用部材284が第二の取付部材280に係合されて、流体室226を流体密に仮シールするようにさせてもよい。その場合は、第二の取付部材280の外周面282の径寸法を仮止用部材284の係止部224の内周面の径寸法よりも大きくさせている。
図41では、理解を容易とするために、仮止用部材284が取り付けられる第二の取付部材280を仮想線である2点鎖線で示している。仮想線で示された第二の取付部材280の外周面に対して仮止用部材284の内周面が、両者に設定された径寸法関係により、圧入状態で固定されるようになっている。なお、第二の取付部材280の外周面282及び仮止用部材284の係止部224の内周面の形状はストレート形状に限定されるものではなく、第二の取付部材280の外周面282については、外周面282の抜きテーパ程度のテーパ状の傾斜面とされていてもよく、その際には仮止用部材284の係止部224の内周面の形状もそれに沿うテーパ状の傾斜面として、仮止用部材284が第二の取付部材280に圧入により係合されていてもよい。勿論かかる例示に限定されるものではなく、第二の取付部材280の外周面あるいは仮止用部材284の係止部224の内周面に、仮止用部材284を第二の取付部材280に圧入するための突部が設けられていてもよい。
【0177】
また、前記第一〜第四の実施形態に示された防振装置本体の具体的な構造は、あくまでも例示であって、仕切部材の構造などは特に限定されないし、アクチュエータによって能動的な加振力を及ぼして入力振動を相殺する能動型の防振装置本体や、アクチュエータによって防振特性を入力振動に応じて切り替えることができる切替型の防振装置本体なども採用され得る。
【0178】
本発明の適用範囲は、エンジンマウントに限定されるものではなく、例えば、サスペンションメンバマウントやボデーマウント、デフマウントなどにも適用され得る。また、本発明は、自動車用に用いられる流体封入式防振装置にのみ適用されるものではなく、自動二輪車や鉄道用車両、産業用車両などに用いられる流体封入式防振装置にも適用可能である。
防振装置本体(12)では、第二の取付部材(18)に仮止用部材(40)が係止されて軸方向に仮連結されていると共に、仮止用部材(40)に設けられた環状の封止部(42)が第二の取付部材(18)に対してシールゴム(34)を挟んで軸方向に重ね合わされて仮シールされている。防振装置本体(12)の第二の取付部材(18)に封止用連結部材(14)が装着された防振装置(10)では、第二の取付部材(18)と仮止用部材(40)とに対して重ね合わせ方向の押圧力が封止用連結部材(14)によって及ぼされてシールゴム(34)の圧縮率が高められて本シールされている。