(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に開示されているのは、キャリア材料および少なくとも1つの蛍光有機ナノ粒子および/または少なくとも1つのナノスケールの蛍光顔料粒子を含有する固体(または相変化)インクである。
【0012】
該固体(または相変化)インクは、また、少なくとも1つの「蛍光有機ナノ粒子」を含有することができる。本明細書で使用される「蛍光有機ナノ粒子」は、1つ以上の架橋樹脂、および該樹脂マトリックス内部に分散された1つ以上の蛍光染料を含有する1つ以上のポリマー樹脂を含むポリマーマトリックスを表わす。該蛍光有機ナノ粒子は、ニコムパーティクルアナライザ(Nicomp Particle analyzer)により測定して、最大サイズが、約500nm未満、例えば約200nm未満、または約100nm未満のものである。
【0013】
本明細書で、「分散する(disperse)」、「分散できる(dispersible)」、および「分散(dispersion)」とは、個々のナノ粒子(1または複数種)が、液体などの別の相中で、集合して個々のナノ粒子(1または複数種)を形成した典型的な個々の分子に完全に解離することなく安定であるか、またはナノスケールの粒子が不安定な塊または凝集体となって沈降するような程度までの凝集を受けることなく安定であることを指す。
【0014】
本明細書中の用語「実質的に無色」とは、液体中に分散したナノスケールの蛍光顔料粒子および/または蛍光有機ナノ粒子の透明性を指す。具体的には、液体中に分散した個々のナノ粒子のかなりの部分が光源として可視光により目視検査する際に検知できないとき、該ナノ粒子は実質的に無色である。
【0015】
一般的にD
50として示される「平均の」蛍光有機ナノ粒子サイズは、分布中の粒子の50%がD
50粒子サイズの値より大きく、分布中の粒子の他の50%がD
50値未満である粒子サイズ分布の50番目の百分順位における中央の粒径の値として定義される。平均粒径は、粒径を推測する光散乱技術、例えばニコムパーティクルアナライザによる動的光散乱などの方法によって測定することができる。
【0016】
幾何学的標準偏差は、母集団の中央値についての与えられた特性(例えば粒径)の母集団の分散を一般的に推測する無次元数であり、対数変換値の標準偏差の累乗値から誘導される。一連の数{A
1、A
2、...、A
n}の幾何平均(もしくは中央値)が、μ
gで表わされる場合、その幾何学的標準偏差は、次式に示すように計算される。
【0018】
本明細書における用語「平均粒径」とは、透過電子顕微鏡法(TEM)によって発生した粒子のイメージから誘導されたナノスケールの蛍光顔料粒子の平均長を指す。
【0019】
本明細書における用語「平均アスペクト比」とは、TEMによって発生した粒子のイメージから誘導されたナノスケールの蛍光顔料粒子の長さを幅で割った平均比(長さ:幅)を指す。
【0020】
本明細書における用語「ナノスケール」とは、約1×10
2nm以下の最大幅に加えて約5×10
2nm以下の最大長さを有する顔料粒子を指す。
【0021】
粒子のアスペクト比は、その長さ寸法対その幅寸法の関係である。一般に粒子のアスペクト比は、その長さ寸法と共に増大し、しばしば、トゲ状(acicular)および/または楕円形状、棒状、小板状、針状(needles)などの不規則な形態を生ずる。
【0022】
該インク組成物は、また、1つのキャリア材料、または2つ以上のキャリア材料の混合物も含有する。固体インク組成物用の適切なキャリア材料としては、ジアミド類、トリアミド類、およびテトラアミド類を含めたアミド類が挙げられる。
【0023】
ワックスは、インク中の相変化剤として作用することができる。そのワックスは、該インクの粘度の上昇を、約75℃から約150℃までの噴射温度から約20℃から約65℃までの基材温度に冷却するときに促進することができる。
【0024】
用語ワックスは、天然ワックス、変性天然ワックス、合成ワックスおよび配合ワックスを含む。
【0025】
該蛍光ナノ粒子は、少なくとも1つの官能部分、およびそれぞれが少なくとも1つの官能基を有する少なくとも1つの立体的にかさ高い(バルキーな)安定剤化合物を含むことができ、顔料上の官能部分は、その安定剤の官能基と非共有結合してナノスケールの大きさの粒子を提供する。これらの「ナノスケールの蛍光顔料粒子」の具体例は、ナノスケールのベンゾチオキサンテン顔料粒子、およびかかるナノスケールのベンゾチオキサンテン顔料粒子を製造するための方法により示される。
【0026】
典型的な条件を用いて適切に合成されたときのベンゾチオキサンテン顔料粒子および本明細書で概説する安定剤は、ナノスケール粒子サイズおよび粒子のアスペクト比(長さ:幅)のより規則的な分布を有することができ、後者は約5:1未満〜約1:1であって、平均粒子長が、TEMイメージで測定して、約500nm未満、例えば約150nm未満、または約100nm未満などであり、平均粒子幅が、TEMイメージで測定して、約100nm未満、例えば約30nm未満、または約20nm未満などである。
【0027】
本明細書に開示のプロセスおよび組成物の利点は、それらが、ベンゾチオキサンテン顔料の意図した最終用途に適用するための粒径および組成を調整する能力を提供することである。
【0028】
立体安定剤は、ナノ顔料粒子の制御された結晶化が起こるように、それ自体がその顔料のおよび/またはその顔料前駆体の官能部分と、水素結合、ファンデルワールス力、および芳香族πスタッキングを介して結び付く可能性を有し得る。即ち、該立体安定剤は、顔料および/または顔料前駆体の官能部分に対する補足的な部分である官能基を提供する。「安定剤の補足的な官能部分」の語句中で使用される用語「補足的な」とは、該補足的な官能部分が、有機顔料の官能部分および/または顔料前駆体の官能部分との「水素結合」などの非共有化学結合が可能であることを示している。反応物中に入れる該立体安定剤は、顔料に対して、5〜約300モル%、例えば、約10〜150モル%または約20〜70モル%の間で変動し得る。
【0029】
有機顔料/顔料前駆体の官能部分は、該安定剤の補足的官能部分との非共有結合が可能な任意の適当な部分であり得る。顔料についての例示的官能部分としては、以下のもの:カルボニル基(C=O)、スルフィド類、スルホン類、スルホキシド類のようなさまざまな硫黄含有基類、および置換アミノ基類、が挙げられるがこれらに限定されない。顔料前駆体についての官能部分としては、カルボン酸基類(COOH)、エステル基類(COOR、ただしRは任意の炭化水素である)、酸無水物基類、およびアミド基類が挙げられるがこれらに限定されない。
【0030】
典型的な前駆体としては、下のスキーム1に示されているような置換ナフタレン無水物類およびアニリン類が挙げられる。官能部分R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8は、ナフタレンおよびアニリン芳香環の任意の位置、例えば、オルト位、メタ位またはパラ位などに存在することができ、それらは互いに異なるかまたは同一であることができ、以下の官能基:水素、メチル、メトキシおよびカルボニル、の任意の組合せが挙げられるがこれらに限定されない。
【0031】
該顔料は、以下に示すスキーム1に従って調製される。
【0033】
かかる官能部分を説明するための例としては、R
1=R
2=R
3=R
4=R
5=R
6=R
7=R
8であって、H、任意のアルキル、任意のアリールのいずれかであるもの;R
1が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=Oのいずれかであって、R
2=R
3=R
4=R
5=R
6=R
7=R
8=Hであるもの;R
2が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=Oのいずれかであって、R
1=R
3=R
4=R
5=R
6=R
7=R
8=Hであるもの;R
3が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=Oのいずれかであって、R
1=R
2=R
4=R
5=R
6=R
7=R
8=Hであるもの;R
4が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=Oのいずれかであって、R
1=R
2=R
3=R
5=R
6=R
7=R
8=Hであるもの;R
5が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリールのいずれかであって、R
1=R
2=R
3=R
4=R
6=R
7=R
8=Hであるもの;R
6が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリールのいずれかであって、R
1=R
2=R
3=R
4=R
5=R
7=R
8=Hであるもの;R
7が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリールのいずれかであって、R
1=R
2=R
3=R
4=R
5=R
6=R
8=Hであるもの;R
8が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリールのいずれかであって、R
1=R
2=R
3=R
4=R
5=R
6=R
7=Hであるもの;R
1とR
2が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=Oのいずれかであって、R
3=R
4=R
5=R
6=R
7=R
8=Hであるもの;R
1とR
4が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=Oのいずれかであって、R
3=R
2=R
5=R
6=R
7=R
8=Hであるもの;R
1とR
3が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=Oのいずれかであって、R
4=R
2=R
5=R
6=R
7=R
8=Hであるもの;R
2とR
3が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=Oのいずれかであって、R
1=R
4=R
5=R
6=R
7=R
8=Hであるもの;R
3とR
4が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=Oのいずれかであって、R
1=R
2=R
5=R
6=R
7=R
8=Hであるもの;R
1とR
2とR
3が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=Oのいずれかであって、R
4=R
5=R
6=R
7=R
8=Hであるもの;R
1とR
3とR
4が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=Oのいずれかであって、R
2=R
5=R
6=R
7=R
8=Hであるもの;R
1とR
2とR
3とR
4が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=Oのいずれかであって、R
5=R
6=R
7=R
8=Hであるもの;R
1とR
2とR
3とR
4が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=Oのいずれかであり、R
5が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリールのいずれかであって、R
6=R
7=R
8=Hであるもの;R
1とR
2とR
3とR
4が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=Oのいずれかであり、R
6が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリールのいずれかであって、R
5=R
7=R
8=Hであるもの;R
1とR
2とR
3とR
4が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=Oのいずれかであり、R
7が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリールのいずれかであって、R
5=R
6=R
8=Hであるもの;およびR
1とR
2とR
3とR
4が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=Oのいずれかであり、R
8が、CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリールのいずれかであって、R
5=R
6=R
7=Hであるもの、が挙げられる。
【0034】
該安定剤の補足的官能部分は、該安定剤の該官能部分との非共有結合が可能な任意の適当な部分であり得る。補足的な官能部分を含有する例示的な化合物としては、フェニル、ベンジル、ナフチルなどの大きな芳香族部分、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルなどの約5〜約20個の炭素を有するような、直鎖の、または分枝した長い脂肪族鎖を含有するβ−アミノカルボン酸類およびそれらのエステル類;ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルなどの5〜約60個の炭素を有するような直鎖、環式または分枝した長い脂肪族鎖を含有するβ−ヒドロキシカルボン酸類およびそれらのエステル類;ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの長鎖脂肪族カルボン酸とのソルビトールエステル類;ポリビニルピロリドン、ポリ(1−ビニルピロリドン)−グラフト−(1−ヘキサデセン)、ポリ(1−ビニルピロリドン)−グラフト−(1−トリアコンテン)、およびポリ(1−ビニルピロリドン−co−アクリル酸)などのポリマー化合物が挙げられる。
【0035】
該安定剤の立体的にかさ高い基は、ナノサイズ粒子への粒子の自己集合の程度を制限する任意の適当な部分であり得る。「立体的にかさ高い基」は、前駆体/顔料の大きさと比較することを要する相対的な用語であり、特定の基は、その特定の基と該前駆体/顔料の間の相対的な大きさによって「立体的にかさ高い」か、またはそうでないかもしれないことは当然である。本明細書で使用する語句の「立体的にかさ高い」は、分子に結合している大きな基の空間的配置を指す。
【0036】
ナノサイズの粒子を可能にする典型的な安定剤としては、以下のもの:ソルビトールのモノおよびトリエステル類(SPAN(登録商標)類)で、酸の脂肪族鎖が立体的にかさ高いと考えられるパルミチン酸(SPAN(登録商標)40)、ステアリン酸(SPAN(登録商標)60)およびオレイン酸(SPAN(登録商標)85)によるもの;シクロヘキサン部分およびIsofolの分枝鎖が立体的にかさ高いと考えられるシクロヘキサノールとIsofol20による酒石酸エステル類;ポリマー鎖それ自体が立体的にかさ高いと考えられる、ポリビニルピロリドン、ポリ(1−ビニルピロリドン)−グラフト−(1−ヘキサデセン)、ポリ(1−ビニルピロリドン)−グラフト−(1−トリアコンテン)、ポリ(1−ビニルピロリドン−co−アクリル酸)などのポリマー類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
該前駆体/顔料の官能部分と該安定剤の補足的官能部分の間の非共有化学結合は、ファンデルワールス力、イオン結合、水素結合、および/または芳香族πスタッキング結合によって提供される。その非共有結合は、主に水素結合であり得るか、または主に芳香族πスタッキング結合であり得、そして用語「主に」とは、この場合、安定剤の顔料粒子との結合の支配的な性質を示す。
【0038】
顔料の酸溶解に対しては、任意の適当な作用物質を、顔料を完全に溶解するために使用し、その溶液を、溶解した顔料をナノサイズの粒子に再沈殿させる条件にさらすことができる。典型的な例としては、硫酸、硝酸、モノ−、ジ−、トリ−ハロ酢酸類、例えばトリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸など、ハロゲン酸類、例えば塩酸など、リン酸およびポリリン酸、ホウ酸、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0039】
ナノスケールの粒子を提供するためには任意の適当な液状媒体を使用してベンゾチオキサンテン顔料の再沈殿を行うことができる。適当な液状媒体の例としては、以下の有機液体、例えば、特にN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ヘキサメチルホスホルアミドなどが挙げられる。
【0040】
顔料を溶解しない任意の液体を、場合によっては沈殿剤として使用することができる。
【0041】
反応物に入れる立体安定剤は、顔料に対して、約5〜約300モル%、例えば約10〜約150モル%、または約20〜約70モル%の間で変化し得る。場合によって、最終の沈殿した混合物中のナノスケールの顔料粒子の固体濃度は、0.5重量%から約20重量%まで、例えば約0.5重量%から約10重量%まで、または約0.5重量%から約5重量%まで変化し得る。
【0042】
粗製ベンゾチオキサンテン顔料は、最初に酸性液体中、例えば濃硫酸などに溶解し、それを次に適切な溶媒および立体安定剤化合物ならびに適宜少量の界面活性剤またはその他の通常の添加剤を含む第2の溶液に強烈な撹拌下でゆっくりと加える。加える間、その温度は、0℃から約40℃までのどこかに維持するが、ナノスケール粒子を形成するベンゾチオキサンテン顔料の再沈殿は、この温度範囲の内または外に等温的に保持することができ、ナノスケール粒子を形成するベンゾチオキサンテン顔料の再沈殿の間の温度は、また、この温度範囲の内または外を周期的に上下するままにすることもできる。
【0043】
第1の溶液は、強酸中に溶解または分散した顔料粒子を含むものを調製または用意することができる。
【0044】
この第1の溶液は、例えば顔料粒子の望ましい溶解または分散を可能にするように任意の望ましい量または濃度の強酸を含むことができる。その酸溶液は、重量で約0.5%〜約20%、例えば約1%から約15%まで、または約2%から約10%までの濃度で顔料を含んでいる。
【0045】
第2の溶液は、立体安定剤を含むものを調製または提供することができる。適切な液状媒体は、水とN−メチル−2−ピロリドンとの混合物である。上記の混合物は水とN−メチル−2−ピロリドンとを約1:6〜約1:3、例えば約1:4などの比率で含むことができる。
【0046】
沈殿剤もその第2の溶液に組み込むことができる。その沈殿剤は、その混合物の全体の体積中の約10体積%〜100体積%、または約20%〜約80%、あるいは約30%〜約70%の範囲で加えることができる。
【0047】
ナノスケール顔料粒子を形成する顔料の再沈殿は、第1の(溶解した顔料)溶液を第2の(立体安定剤)溶液に加えることによって実施することができる。加える方法としては、適当な容器からの滴下方式、あるいは噴霧ガスの使用ありまたはなしでの吹き付けを挙げることができる。
【0048】
その再沈殿プロセスは、第1と第2の溶液の溶解性を維持すると同時にナノスケールのベンゾチオキサンテン顔料粒子の形成を可能にする任意の望ましい温度で行うことができる。
【0049】
その再沈殿が完了したら、該顔料のナノスケールの粒子は、常法のいずれかによってその溶液から分離することができる。
【0050】
ベンゾチオキサンテンのナノスケール粒子への再沈殿は、この温度範囲の内または外で等温的に保持することができるか、またはその温度はこの温度範囲の内または外を周期的に上下するままにすることもできる。
【0051】
該立体的にかさ高い安定剤は、ワックスに似た性質をその分子に与えるもう1つの末端の長鎖の炭化水素に結合している水素結合基を1つの末端に有することができ、ワックスとの分子ブレンドをもたらすが、結晶化の際に水素結合基が球晶の外側に向かって位置するようにそれ自体を向ける(即ち、共結晶化(co-crystallization))効果を有する。
【0052】
該立体的にかさ高い安定剤の水素結合基は、自己相補的であるか、それ自体が相補的である複数基の組合せであり得る。
【0053】
インクビヒクル分子中またはインクビヒクルを成す分子の混合物中の水素結合基は、互いに同じか、異なるものであり得る。
【0054】
適当な水素結合基は、2つ、3つまたは4つの部分の水素結合域を有することができる。これらの部分は、水素結合が起こり得る分子上の場所である。
【0055】
該立体的にかさ高い安定剤は、アンカー鎖を有することができる。その鎖は、約2〜約60のメチレン単位を有し、約10から約40まで、または約12から約40までのメチレン単位からなる、線状、分枝、または不飽和炭化水素を含み得る。そのアンカー鎖は、ワックスとして一般的な型の分子と同じものであり得、ワックスがポリエチレンである場合はオレフィン鎖を含み、ワックスがウレタンである場合はイソシアネート鎖を含むなどである。
【0056】
該立体的にかさ高い安定剤は、球晶の冷却/形成の際、該インクのワックス中に共結晶化することができる。該立体的にかさ高い安定剤の官能化面は、球晶内領域(即ち、増大し隣接する球晶間の領域)にはみ出し、改良された自己接着特性をもつ材料を生ずる。この反応は、該インクが冷却する際の温度、約30℃〜約100℃、または約70℃から約100℃までの温度で起こり得る。
【0057】
該固体インクまたは相変化インクは、蛍光有機ナノ粒子を含むことができ、該有機ナノ粒子は、1つ以上の架橋性樹脂および1つ以上の蛍光染料を含むポリマーラテックスまたはエマルジョンを調製し、そのポリマー樹脂を架橋して、ポリマーマトリックス中に分散した1つ以上の蛍光染料を含む有機ナノ粒子を形成することによって調製され、該蛍光有機ナノ粒子は、約500nm未満、または約200nm未満、あるいは約100nm未満の大きさのものである。
【0058】
使用することができる蛍光染料としては、ポリマーラテックスまたはエマルジョン中に溶解できるかまたは分散できる任意の蛍光染料が挙げられる。該1つ以上の蛍光染料は、該ナノ粒子の全体重量に対して、約0.01重量パーセントから約50重量パーセントまで、または約1重量パーセントから約40重量パーセントまで、あるいは約3重量パーセントから約20重量パーセントまでを構成する。適当な蛍光染料の例としては、アリール−アセチレン類、2,5−ジアリール−オキサゾール類、1,2,3−オキサジアゾール類、アリール置換2−ピラゾリジン類、キサントン類、チオキサントン類およびアクリドン類、ベンザゾール類、ベンゾトリアゾール類、ベンゾキノリン類、フルオレセイン誘導体類、フェノチアジンの誘導体類、フェノキサジン、キニン誘導体類(縮合芳香環を有するキニン誘導体を含む)、クマリン類、インジゴ誘導体類、ナフタル酸無水物およびナフタルイミドの誘導体類、ペリレン類が挙げられる。
【0059】
ナノ粒子中に使用することができるその他の蛍光染料としては、本明細書では「目に見えない蛍光染料」と呼ぶ裸眼には見ることができない蛍光化合物または染料が挙げられる。かかる化合物の例としては、近赤外線放射性化合物および染料、例えば、米国特許第5,435,937号および米国特許第5,093,147号に記載されているような有機ランタニド類の配位化合物類などが挙げられる。
【0060】
適当な樹脂としては、約180℃を超えるか、約200℃を超えるか、約220℃を超えるガラス転移温度(Tg)を有する非結晶性樹脂または非結晶性樹脂の混合物、Tgが約180℃より低いか、架橋剤が存在し、得られるその樹脂のTgが約180℃より高いか、あるいは約200℃を超えるか約220℃を超えるTgである限りは、約200℃を超えるか、約220℃を超える非結晶性樹脂または非結晶性樹脂の混合物、およびポリマーバインダーの融点が、約180℃より高いか、約200℃より高いか、約220℃より高い限りは結晶性ポリマーまたは結晶性ポリマーの混合物が挙げられる。該樹脂は、また、カルボキシル化、スルホン化など、あるいはナトリウムスルホン化などの官能化をすることもできる。
【0061】
該樹脂または複数の樹脂は、該ナノ粒子の全体重量に対して、該有機ナノ粒子中に約50重量パーセントから約99.99重量パーセントまで、または約60重量パーセントから約99重量パーセントまで、あるいは約80重量パーセントから約97重量パーセントまでの量で含有される。
【0062】
架橋樹脂エマルジョンの形成は、溶液が形成されることを可能にする条件下の適切な有機溶媒中で不飽和ポリエステル樹脂と開始剤とを溶解することによって達成することができる。使用することができる適切な溶媒としては、該樹脂および任意のその他の随意的な成分(ワックスなど)がその中で溶解可能であり、その樹脂成分を溶解してエマルジョンを形成するが、その溶媒をその後そこから蒸発させてその樹脂をエマルジョン中、例えば水中などに特定の粒子の大きさで残すことができるものが挙げられる。
【0063】
樹脂と有機溶媒に加えて、その後その樹脂を架橋する開始剤を含める。任意の適切な開始剤、例えば有機過酸化物およびアゾ化合物のような遊離ラジカルまたは熱開始剤などを使用することができる。
【0064】
その開始剤は、溶媒には可溶であるが水には不溶性である有機開始剤であり得る。さらに、その開始剤は、約65℃〜約70℃までの温度では、該樹脂−溶媒相が水相中に十分に分散した後まで「実質的に架橋が起こらない」ように、「実質的に反応しない」ことが必要である。本明細書で用いる「実質的に反応しない」とは、ポリマーまたは樹脂材料の強度特性に影響を及ぼすようには該ポリマーまたは樹脂材料と開始剤の間で「実質的に架橋が起こらない」ことを指す。本明細書で用いる「実質的に架橋しない」とは、約1パーセント未満、または約0.5パーセント未満、あるいは約0.1パーセント未満の該樹脂中のポリマー鎖間の架橋を指す。
【0065】
該粒子の改良された構造安定性および硬度を提供するために適切な量の架橋性モノマーを添加することができる。
【0066】
実質的にすべての開始剤が、該混合物を溶媒のほぼ沸点より上、例えば約80℃以上まで上げて残留溶媒をフラッシュオフする溶媒フラッシングステップの間に反応しなければならない。したがって、開始剤の選択は、その半減期/温度特性によって管理することができる。Vazo(登録商標)52(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、アメリカ合衆国、デュポン社(E.I.du Pont de Nemours and Company))についての半減期/温度特性プロットは、65℃で90分を超え、80℃で20分未満の半減期を示しており、それはその開始剤が、樹脂と溶媒の65℃における最初の混合段階の間は実質的に架橋が起こらず、80℃までいく温度での溶媒フラッシングステップの間に実質的にすべての架橋が起こるために、本溶媒フラッシングプロセスにおいて架橋を行うのに特に適していることを示す。
【0067】
該開始剤は、ある特定の度合いの架橋を提供するために、不飽和樹脂の約0.1重量パーセントから約20重量パーセントまで、または、約0.5重量パーセントもしくは約1重量パーセントから約10重量パーセントもしくは約15重量パーセントまでの量で含めることができる。約3重量パーセントから約6重量パーセントまでの開始剤を加えることができる。
【0068】
該樹脂および開始剤を溶媒に溶解した後、その樹脂および開始剤の溶液をエマルジョン媒体、例えば、安定剤、および場合によっては界面活性剤を含有する水または脱イオン水など、の中に混合する。適切な安定剤の例としては、水溶性アルカリ金属水酸化物類、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、または水酸化バリウムなど;水酸化アンモニウム;アルカリ金属炭酸塩類、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸リチウム、重炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムまたは炭酸セシウム;およびそれらの混合物が挙げられる。それらは、該樹脂の約0.1重量パーセントから約5重量パーセントまで、または約0.5重量パーセント〜約3重量パーセントのレベルで存在し得る。かかる塩を安定剤として該組成物に添加するとき、非相溶性の金属塩はその組成物中に存在することはできない。これらの塩は、亜鉛およびその他の非相溶性の金属イオン類、例えば、水不溶性の塩を形成するCa、Fe、Baなどが完全にまたは基本的にないものであり得る。用語「基本的にない」とは、該ワックスおよび樹脂の約0.01重量パーセント未満、または約0.005重量パーセント未満あるいは約0.001重量パーセント未満で存在する該非相溶性の金属イオン類を指す。
【0069】
場合によっては、さらなる安定剤、例えば界面活性剤などを、特にワックスも該エマルジョン中に通常のワックスエマルジョンと比較して削減されたレベルで含まれている場合には、該樹脂粒子に対するさらなる安定化を提供するために該水性エマルジョン媒体に加えることができる。
【0070】
次に、該混合物を撹拌し、該溶媒を蒸発除去またはフラッシュオフする。その溶媒フラッシングはその溶媒をフラッシュオフする水中のその溶媒のほぼ沸点以上の任意の適切な温度、例えば、約60℃〜約100℃、または約70℃〜約90℃もしくは約80℃など、で行うことができる。
【0071】
その後、その架橋したポリエステル樹脂粒子は、ニコムパーティクルアナライザにより測定して、約20nmから約500nm、または約75nmから400nmまで、あるいは約100nmから約200nmまでの範囲の平均粒径を有することができる。
【0072】
該ポリエステル樹脂ラテックスまたはエマルジョンは、任意の適切な手段によって調製することができる。
【0073】
ある実施形態は、乳化重合によって製造された少なくとも1つの「蛍光有機ナノ粒子」を含有する蛍光放射線硬化性組成物を使用する。乳化重合により生じた蛍光体を含有するポリマー粒子を含んでなるラテックスエマルジョンは、次のように調製される。アニオン界面活性剤溶液と脱イオン水とを、ステンレススチールの貯蔵タンク中で混合する。その貯蔵タンクを次いで窒素によりパージした後、反応器に移す。その反応器を次に100RPMで撹拌しながら継続的に窒素をパージする。その反応器を次に80℃まで制御された速度で加熱し、そこで保持する。別に、過硫酸アンモニウム開始剤と脱イオン水の溶液を用意する。
【0074】
別に、メタクリル酸メチル、ジエチレングリコールジメタクリレート、および蛍光顔料からなるモノマーエマルジョンを用意する。このモノマー溶液にアニオン界面活性剤および脱イオン水を組み合わせてエマルジョンを形成する。上記エマルジョンの1%を次に水性界面活性剤相を含有する80℃の反応器に窒素をパージしながらゆっくり供給して「シード」を形成する。開始剤溶液を次にその反応器にゆっくり加え、10分後そのエマルジョンの残りを、計量ポンプを用いて0.5%/分の速度で継続して供給する。モノマーエマルジョンのすべてを主反応器に仕込んだ時点で、その温度を80℃でさらに2時間保持してその反応を完了させる。フル冷却をそのときにかけ、その反応器温度を35℃に下げる。その生成物を貯蔵タンク中に集める。
【0075】
連鎖移動剤を、形成されるポリマーのMw特性を制御するためにモノマーエマルジョンに添加することができる。適当な連鎖移動剤としては、ドデカンチオール、ブタンチオール、イソオクチル−3−メルカプトプロピオネート(IOMP)、2−メチル−5−t−ブチルチオフェノール、四塩化炭素、四臭化炭素が挙げられるがこれらに限定されない。連鎖移動剤は、任意の有効量、例えば、モノマーエマルジョン中のモノマーの約0.1重量パーセントから約10重量パーセントまで、で使用することができる。
【0076】
本発明の1つの利点は、該有機ナノ粒子が適切な熱劣化特性を有することである。したがって、本明細書に開示の蛍光有機ナノ粒子は、インクの製造を含めたさまざまな目的に対して使用することができる。
【0077】
該固体(または相変化)インクは、また着色剤を含むこともできる。顔料も該固体(または相変化)インクに対する適切な着色剤である。該着色剤は、該固体(または相変化)インク中に該インクの少なくとも約0.1重量パーセント、または約35重量パーセント以下で存在させることができる。
【0078】
該インクは、従来型の添加剤、例えば、殺虫剤、消泡剤、スリップ剤およびレベリング剤、可塑剤、顔料分散剤、粘度調整剤、酸化防止剤、吸収剤などを含むことができる。
【0079】
インク中の随意的な酸化防止剤は、イメージを酸化から保護することができ、またインク容器中の加熱融液として存在しながらインク成分を酸化から保護することもできる。該酸化防止剤は、該インク中に該インクの約0.25重量パーセントから約10重量パーセントまで、または約1重量パーセントから約5重量パーセントまで存在させることができる。
【0080】
該インクは、また、場合によっては、発生したイメージを紫外線劣化から守る紫外線吸収剤を含むことができる。その紫外線吸収剤は、該インクの約1重量パーセントから約10重量パーセントまで、または約から約5重量パーセントまでのいずれかで存在させることができる。
【0081】
該インクは、粘度調整剤も含むことができる。その他の随意的な添加剤としては、粘着付与剤および可塑剤が挙げられる。
【0082】
インク組成物に加えて、該ナノスケールの蛍光顔料粒子は、組成物に蛍光色を提供することが望まれるさまざまなその他の用途で使用することができる。
【0083】
本明細書に開示の材料を以下の実施例を用いてここでさらに説明する。すべての部および百分率は、別段の指示がない限りは重量による。
【実施例】
【0084】
[実施例1]ナノスケール蛍光顔料粒子の調製
蛍光顔料−ベンゾ[k,l]チオキサンテン−3,4−ジカルボン酸無水物の合成
マグネチックスターラ、還流冷却器およびオイルバスを取り付けた200mLの3つ口丸底フラスコに、4g(0.016モル)の4−ニトロナフタレンテトラカルボン酸無水物、3mL(0.03モル)の2−アミノベンゼンチオールおよび40mLのN,N−ジメチルホルムアミドを投入した。暗褐色の溶液が得られた。3.2mL(0.024モル)のイソアミルニトリルを、そのフラスコ中にシリンジによりゆっくり加えた。その反応混合物の温度は80℃に上がり、オレンジ色の沈殿が形成された。その添加が終わった時点でそのフラスコの温度をそのまま60℃まで下げた。その反応混合物を、次にこの温度で3時間撹拌し、その反応を確実に完了させた。その固体をガラス濾過器により濾過し、N,N−ジメチルホルムアミドで2回とN,N−ジメチルホルムアミド:蒸留水の重量比1:1で1回洗浄すると、その洗液は透明であった。そのオレンジ色の固体を100℃の真空オーブン中で一晩乾燥した。KBrペレットを用いる赤外分光光度法により次のデータ、即ち、1758cm
−1および1721cm
−1の2つの無水物のC=Oピークがもたらされた。透過電子顕微鏡法による平均粒径は、長さが2μmを超え、その粒子の多くが500nmを超える粒子幅を有した。
【0085】
SPAN(登録商標)40によるナノスケール蛍光顔料粒子の形成
機械的撹拌、滴下漏斗および氷/水冷却槽を取り付けた500mLの樹脂ケトルに300mLのN−メチル−2−ピロリドンおよび2.6g(0.006モル)のSPAN(登録商標)40を投入した。この溶液に、0.5g(0.002モル)のベンゾチオキサンテンおよび0.050g(0.0001モル)のペリレンテトラカルボン酸二無水物を含む30mLの硫酸の溶液を15分間にわたって滴下して加えた。その添加中に、該樹脂ケトル中の温度は40℃に上昇した。その添加が終了したところで、その反応混合物を、室温で30分間そのまま撹拌した。その濃厚な混合物を、500mLの重量比が2:1のイソプロパノール:蒸留水で希釈した。得られた混合物を、ガラス濾過器を用いて濾過した。その顔料を、20mLのイソプロパノールで2回と20mLのイソプロパノールで1回、そのガラス濾過器上で洗浄した。KBrペレットを用いる赤外分光光度法により次のデータ、即ち、1758cm
−1および1721cm
−1の2つの無水物のC=Oピークがもたらされた。透過電子顕微鏡法による粒径(ウェットケーキ)は、100〜500nmの長さおよび100nm未満の幅であった。
【0086】
オレイン酸によるナノスケール蛍光顔料粒子の形成
SPAN(登録商標)40に代えて4.9g(0.02モル)のオレイン酸を使用することを除き、実験条件は、上記SPAN(登録商標)40によるナノスケール蛍光顔料粒子の形成と同様である。得られた混合物を、遠心分離機を用いて分離し、その顔料粒子を、遠心分離を通して蒸留水で1回とアセトンで1回洗浄した。KBrペレットを用いる赤外分光光度法により次のデータ、即ち、1758cm
−1および1721cm
−1の2つの無水物のC=Oピークがもたらされた。透過電子顕微鏡法による粒径(ウェットケーキ)は、100〜500nmの長さおよび100nm未満の幅であった。
【0087】
その製造されたナノスケール蛍光顔料粒子は、長さが100〜500nmと幅が100nm未満の針状の形を有していた。それらは紫外光の下で緑黄色の蛍光を発した。最初の顔料の融解温度は約320℃である。その結果、固体インクプリンタにおいて120℃で長時間にわたって加熱されるとき、その蛍光ナノ粒子の漏れまたは融解が起こることは予想されない。
【0088】
[実施例2]エマルジョン凝集ラテックスプロセスにより得られる蛍光有機ナノ粒子
(1)ポリエステルラテックスの調製
190グラムの非結晶性プロポキシル化ビスフェノールAフマル酸樹脂(重量平均分子量Mw=12,500、ガラス転移開始温度(Tg onset)=56.9、酸価=16.7;ライヒホールド・ケミカルズ社(Reichhold Chemicals, Inc.)からSPAR(登録商標)樹脂、レザーナ社(Resana S.A.)からのRESAPOL HT樹脂、として市販)を10グラム(g)のDFKY−C7(リスク・リアクタ(Risk Reactor))蛍光染料と一緒に1Lの反応釜中に秤取した。100gのメチルエチルケトンおよび40gのイソプロパノールを別々に秤取し、ビーカー中で混合した。その溶媒を、該樹脂を含む1Lの反応釜中に注いだ。ガスケットの上の蓋、コンデンサおよび2つのゴム栓を備えたその反応釜を48℃に設定したウォーターバスの内側に1時間置いた。そのアンカー翼インペラーを反応釜中にセットし、スイッチを入れてほぼ150RPMで回転させた。3時間後、樹脂のすべてが溶解したとき、8.69gの10%NH
4OHを、使い捨てのピペットによりゴム栓を通してその混合物に滴下して加えた。その混合物をそのまま10分間撹拌した。次いで8.0gのVazo52熱開始剤をその混合物に加え、その混合物を48℃でさらに10分間撹拌した。次に600gの脱イオン水をポンプによりゴム栓を通してその反応釜に加える必要があった。最初の400gは、4.44g/分の速度にセットしたポンプにより90分で加えた。最後の200gは、6.7g/分にセットしたポンプにより30分で加えた。その装置を分解し、その混合物をガラス製の型に注ぎ、それをドラフト中に一晩保ち、溶媒を蒸発除去するために磁性撹拌棒により撹拌した。ブラックライトにさらしたとき、そのラテックスは赤い光を発した。ニコムパーティクルアナライザにより測定した粒径は、170nmであった。このラテックス溶液に「ラテックスA」のラベルをつけた。
【0089】
(2)ラジカル開始による架橋による硬い粒子の調製
上記のラテックス溶液、ラテックスAを、1Lの3つ口丸底フラスコに入れ、窒素ガスで1時間パージした。その混合物を次に200RPMで撹拌し、80℃に加熱し、その温度を5時間維持した。この温度で該Vazo52開始剤はラジカルを生じ、それがプロポキシル化ビスフェノールAフマル酸樹脂の二重結合間の架橋反応を開始した。そのラテックスを次に冷却し、凍結乾燥して乾燥粒子を得た。ブラックライト(紫外光の下)にさらしたとき、そのラテックスは赤い光を発した。架橋反応後のその粒子の大きさは、145nmであった。
【0090】
これらの粒子(蛍光有機ナノ粒子)は、ポリエステル中に分散した蛍光染料を含有する。粒子バインダを構成するポリエステル材料は、固体インク組成物と混和性ではなく、その結果該染料の粒子の外への浸出は基本的に排除される。これにより固体インクベース成分による相互作用に起因する染料の劣化は防止される。
【0091】
[実施例3]乳化重合法により得られる蛍光有機ナノ粒子
3.0gのNeogen RK(アニオン性乳化剤)と250gの脱イオン水からなる界面活性剤溶液を、ステンレススチールの貯蔵タンク中で10分間混合して調製した。その貯蔵タンクを次いで窒素により5分間パージした後、反応器に移した。その反応器を次いで300RPMで撹拌しながら継続的に窒素をパージした。その反応器を次に76℃まで制御された速度で加熱し、一定に保持した。別の容器中で、2.13gの過硫酸アンモニウム開始剤を22gの脱イオン水中に溶解した。また2番目の別の容器に、モノマーエマルジョンを次のようにして調製した。125gのメタクリル酸メチル、5gのジエチレングリコールジメタクリレート、6.4gのDFKY−C7蛍光染料(リスク・リアクタ)、7gのNeogen RK(アニオン界面活性剤)、および135gの脱イオン水を混合してエマルジョンを形成した。上記エマルジョンの1%を次に水性界面活性剤相を含有する76℃の反応器に窒素をパージしながらゆっくり供給して「シード(seed(s))」を形成した。開始剤溶液を次にその反応器にゆっくり加え、20分後そのエマルジョンの残りを、計量ポンプを用いて0.6%/分の速度で継続して供給した。モノマーエマルジョンのすべてを主反応器に仕込んだ時点で、その温度を76℃にさらに2時間保持してその反応を完了させた。フル冷却をそのときにかけ、その反応器温度を35℃に下げる。その生成物を1μmのフィルターバッグを通して濾過した後、貯蔵タンク中に集めた。そのラテックスの一部を乾燥した後、そのガラス転移開始温度(オンセットTg)は、105.7℃であることが観察された。分離板型遠心沈降機により測定したそのラテックスの平均粒径は73nmであった。その粒子は、紫外光の下で赤の蛍光を発した。
【0092】
[実施例4]蛍光固体インク組成物の調製
600mLのビーカーに99gのXerox Phaser 8400固体インクベース(着色剤なし)を加え、それを次に116℃のオーブンに移して3時間置いた。溶融すると同時にインクベースを含むそのビーカーをグリフィン(Griffin)製のマントルヒーターに移し、オーバーヘッド撹拌機を用いて175RPMで30分間混合した。撹拌中の溶融インクベースに、SPAN(登録商標)40により形成されたナノスケールの蛍光顔料粒子の1.0gをゆっくりと加えた。その溶液をそのままあと4時間撹拌し、その後すぐにそれを6μmのフィルターにより濾過していくらかの大きな凝集体を除去し、続いて1μmのフィルターで濾過した。そのインクの濾液を黒インク用の桶に注ぎ、そのまま冷却して凝固させた。
【0093】
実施例4による顔料粒子材料のほぼ80%は、固体インク組成物に容易に組み込まれた。固体インク組成物中に十分に組み込まれなかったほぼ20%のその顔料粒子材料は、それらが目で容易に見られるような非常に大きい凝集体(>100μm)を含んでおり、その後濾過によって除去した。該蛍光顔料合成プロセスの微調整により、分散がより困難である大きな凝集体の除去がもたらされることが期待される。
【0094】
[比較例]
比較として、該蛍光顔料(それはSPAN(登録商標)40により形成される前であり従ってそれがナノスケールの粒径を有することは不可能)を、実施例4と同じ方法で分散させた。結果として固体インクベース中の顔料粒子の非常に乏しい組み込みが生じ、ポール社(Pall Corporation)から入手できる6μmのフィルターによるその後の濾過は手間取った。
【0095】
[実施例5]蛍光顔料固体インク組成物の印刷
いくつかの印刷物を実施例4により調製した蛍光固体インク組成物を装備したXerox Phaser 8400プリンタから得た。通常の室内用照明の下で、その印刷物は、それが紙の上でわずかな光沢の差を有することによって感知することができる非常に明るい黄色に見えた。紫外線A波(UV A)光源にさらしたとき、その印刷物は、完全に読み取れる印刷物上に蛍光イメージを有する明るい緑黄色の光を発した。実施例4によるインクは、Xerox Phaser 8400プリンタに約2カ月間存在させることが許容され、周期的に作成されたその後の印刷物でも、その期間を通して、すべての印刷ヘッドの噴射が、実施例4によるインクがプリンタに最初に装備されたときに作成された最初の印刷物と比較して印刷品質またはイメージの蛍光活性において識別できる差異がなく持続することを明らかにした。
【0096】
[実施例6]目に見える着色剤を含有する蛍光顔料固体インク組成物の調製
固体インク組成物を、Xerox Phaser 8400イエローインクをインクベースの代わりに使用する以外は実施例4と同じ方法で製造する。
【0097】
[実施例7]目に見える着色剤を含有する蛍光顔料固体インク組成物の印刷
実施例6による蛍光固体インク組成物の印刷は、可視光条件下でのPhaser 8400イエローインクで使用したイエロー着色剤の色特性における識別できる変化が殆どないことを示す以外に紫外線A波光源に当てたときは強い「緑色を帯びた」蛍光を見せる。