(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リトラクタ取付部材は、前記リトラクタを取付ける部位を下方に膨出させた膨出部を有し、前記第2連結部材を前記膨出部の下端部に取付けて前記リトラクタ取付部材と前記第1連結部材とを連結させたことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両用シートでは、左右のサイドフレーム間の下方に架設された連結フレーム上にシートベルトの巻取り用リトラクタが固定されている。連結フレームは所定の幅を有する板材によって形成されており、巻取り用リトラクタはその連結フレームの上面に載置された構成となっている。
【0005】
しかし、連結フレームに対する巻取り用リトラクタの取付強度が低い場合には、車両走行時等に振動による異音が発生する虞がある。したがって、車両用シートを構成するシートフレームに対し、リトラクタの取付強度の向上、すなわちリトラクタの支持部の剛性の向上が望まれている。
【0006】
本発明の目的は、シートベルト一体の車両用シートにおいて、シートベルト巻取り用リトラクタを取付ける部位の剛性を向上させた車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、請求項1の車両用シートによれば、左右一対のサイドフレームを有するシートフレームと、前記左右一対のサイドフレーム間を連結し、シートベルトの巻取り用リトラクタを取付けるリトラクタ取付部材と、を備え、前記リトラクタ取付部材のシート幅方向の両端部には折曲部が形成され、前記折曲部が前記サイドフレーム
の外側の面に取付けられたこと、により解決される。
【0008】
上記構成のように、リトラクタ取付部材の両端部に形成された折曲部を、左右に設けられる一対のサイドフレームに取付けたので、リトラクタ取付部材のねじれ剛性が大幅に向上し、リトラクタの支持剛性が向上する。またリトラクタ取付部材の剛性が強くなるため、リトラクタの振動による異音の発生も抑制できる。
【0009】
さらに、サイドフレームの外側の面に折曲部を取付けると、サイドフレームの折曲部が取付けられた部位の剛性が向上し、サイドフレームが変形するのを抑制できる。また、左右両側のサイドフレームの外側の面に取付けるので、リトラクタ取付部材の取付け作業性が向上する。
【0010】
また、
前記課題は、本発明に係る車両用シートによれば、左右一対のサイドフレームを有するシートフレームと、前記左右一対のサイドフレーム間を連結し、シートベルトの巻取り用リトラクタを取付けるリトラクタ取付部材と、を備え、前記リトラクタ取付部材のシート幅方向の両端部には折曲部が形成され、前記折曲部が前記サイドフレームに取付けられ、前記左右一対のサイドフレームを連結する第1連結部材と、前記リトラクタ取付部材と前記第1連結部材とを連結する第2連結部材と、を備える
こと、により解決される。
このような構成により、リトラクタ取付部材と第1連結部材とが第2連結部材で連結されるので、リトラクタの支持剛性が一層向上する。
さらに、前記折曲部は、前記サイドフレームの外側の面に取付けられると好適である。
【0011】
さらに
、前記リトラクタを前記車両用シートのロアーレールの上端部よりも下方に設けると好ましい。
このように構成すると、ロアーレールの上端部から下方のスペースを有効に活用してリトラクタを配置できるので、コンパクト化が可能となりシートの大型化を抑制できる。
【0012】
また
、前記リトラクタ取付部材は、前記リトラクタを取付ける部位を下方に膨出させた膨出部を有し、前記第2連結部材を前記膨出部の下端部に取付けて前記リトラクタ取付部材と前記第1連結部材とを連結させるとよい。
このように、リトラクタ取付部材の膨出部の下端部と第1連結部材とを連結すると、リトラクタ取付部材が安定してシートフレームに固定され、リトラクタの取付けが安定する。また、リトラクタをリトラクタ取付部材の前面に取付けた場合において、リトラクタ取付部材と第2連結部材とによってリトラクタを後方及び下方から保護することができ、後部座席の乗員の脚蹴り等からの保護が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両用シートによれば、リトラクタ取付部材のねじれ剛性が大幅に向上し、リトラクタの支持剛性が向上する。またリトラクタ取付部材の剛性が強くなるため、リトラクタの振動による異音の発生も抑制できる。
本発明に係る車両用シートによれば、サイドフレームの折曲部が取付けられた部位の剛性が向上し、サイドフレームが変形するのを抑制できると共に、リトラクタ取付部材の取付け作業性が向上する。
本発明に係る車両用シートによれば、リトラクタの支持剛性が一層向上する。
本発明に係る車両用シートによれば、リトラクタをコンパクトに配置することが可能となり、シートの大型化を抑制できる。
本発明に係る車両用シートによれば、リトラクタ取付部材が安定してシートフレームに固定され、リトラクタの取付けが安定する。また、リトラクタを後方及び下方から保護することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることはもちろんである。
【0016】
図1乃至
図9は本発明の一実施形態を示すものであり、
図1は車両用シートの概略斜視図、
図2はシートフレームの概略斜視図、
図3はシートフレームの概略正面図、
図4はシートフレームの概略背面図、
図5はシートフレームの概略側面図、
図6はリトラクタ取付部材の概略斜視図、
図7はリトラクタ取付部の説明図、
図8はリトラクタ取付部材と第2連結部材の説明図、
図9は第2連結部材の中間ブラケットの概略斜視図である。なお、以下の説明における左右方向は、車体前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0017】
本実施形態に係る車両用シートSは、
図1で示すように、シートバックS1、着座部S2、ヘッドレストS3より構成されており、シートバックS1及び着座部S2はシートフレームFにクッションパッド1a,2aを載置して、表皮材1b,2bで被覆されている。なお、ヘッドレストS3は、芯材3(
図2を参照)にパッド材3aを配して、表皮材3bで被覆して形成される。本実施形態の芯材3は、ヘッドレストS3を支持するヘッドレストピラーとしての役割も兼ねているが、芯材とヘッドレストピラーを別体で構成してもよい。
【0018】
本実施形態の車両用シートSは助手席用シートであり、車両用シートSの左側(
図1に向かって右側)が車体外側(車両ドア側)、車両用シートSの右側(
図1に向かって左側)が車体内側(車体中央側)である。車両用シートSは、シートベルトBが取付けられたシートベルト一体の車両用シートであり、シートバックS1の上部の車体外側には、シートベルトBのショルダーベルト部B1が取付けられている。
【0019】
車両用シートSのシートフレームFは、
図2乃至
図4で示すように、シートバックS1を構成するシートバックフレーム1、着座部S2を構成する着座フレーム2から構成されている。また、シートバックフレーム1と着座フレーム2とは、リクライニング装置15を介して回動可能に連結されている。
【0020】
シートバックS1は、シートバックフレーム1に、上述のようにクッションパッド1aを載置して、クッションパッド1aの上から表皮材1bにより覆われており、乗員の背中を後方から支持するものである。本実施形態において、シートバックフレーム1は、金属製の板材又は管材によって両側のサイド部と、サイド部と連結されたアッパー部とを有して略矩形状の枠体となっている。
【0021】
サイド部は、シートバック幅を構成するため、左右方向に離間して配設され、上下方向に延在する一対の背凭れ側サイドフレーム11,12を有している。
つまり、シートバックフレーム1の一部を構成する背凭れ側サイドフレーム11,12は、上下方向に所定の長さで構成されており、左右方向に所定間隔を有して対向して配設されている。そして、シートバックフレーム1内(両側の背凭れ側サイドフレーム11,12の間)でシートバックフレーム1の内側領域には、クッションパッド1aを後方から支える姿勢保持部材としての架設部材61が配設されている。なお、背凭れ側サイドフレーム11,12は、特許請求の範囲に記載の「サイドフレーム」に相当するものである。
【0022】
架設部材61の両端部は、サイドフレーム補強部材30、又は背凭れ側サイドフレーム11と、背凭れ側サイドフレーム12に設けられた軸支部により軸支されている。この軸支部は、架設部材61を回動可能に軸支すればよく、公知の技術を使用できる。なお、軸支部の代わりに、サイドフレーム補強部材30、又は背凭れ側サイドフレーム11と、背凭れ側サイドフレーム12の側板に孔を形成し、この孔に架設部材61の端部を回動可能に挿入し、抜け止めを施すようにしてもよい。
【0023】
本実施形態においては、背凭れ側サイドフレーム11,12間に配設される架設部材61として、ばね性を有するスチール線材から形成されたSばねが用いられている。なお、架設部材61としては、Sばねに限らず、板状の部材など、乗員を後方から支えることができる構造であればどのような部材を配設してもよい。その他、マット、ランバーサポート機能を備えた構成としてもよいのは勿論である。
【0024】
サイド部を構成する背凭れ側サイドフレーム11,12のうち、車体外側(車両ドア側)に配設される背凭れ側サイドフレーム11は、金属製の一枚の板材を矩形に折り曲げて閉断面構造、すなわち、その断面形状が中空矩形状に形成されている(閉断面構造部11a)。そして、この背凭れ側サイドフレーム11の閉断面構造部11aの外側(車両ドア側)の面の下部には、平面状の板材が下方に延長した延長部11bが、閉断面構造部11aの外側の面と一体に形成されている。つまり、板材の一方側中央部分に延出する部分が形成されるように板材を打ち抜いた後、断面が中空矩形状となるように板金加工されている。また、閉断面構造部11aの外側の面には複数の孔11cが形成されている。
【0025】
車体内側(車体中央側)に配設される背凭れ側サイドフレーム12は、金属製の一枚の板材の車両前後方向の両端部をシートフレームFの内側に屈曲させて形成されている。
このように、車体外側に配設される背凭れ側サイドフレーム11は閉断面構造を有しており、車体内側に設けられた背凭れ側サイドフレーム12よりも強度が大きく形成されている。シートベルト一体の車両用シートSでは、車両の衝突などによりシートベルトBに乗員からの大きな荷重が加わり、ショルダーベルト部B1が取付けられる車体外側の背凭れ側サイドフレーム11に大きな荷重が加わるため、このように車体外側の背凭れ側サイドフレーム11の剛性が高くなるような構造としている。
【0026】
背凭れ側サイドフレーム11の閉断面構造部11aの下方に延長した延長部11bのシート内側、すなわち背凭れ側サイドフレーム11の乗員が着座する側には、サイドフレーム補強部材30が固定されている。サイドフレーム補強部材30は一枚の板材を断面が略コ字状となるように折り曲げて、閉断面構造部11aのシート左右方向の幅より若干狭い幅を左右方向の幅とし、延長部11bのシート前後方向の幅と略同じ幅を前後方向の幅として形成されている。
【0027】
サイドフレーム補強部材30は、延長部11bのシート内側に配置されたときの前方及び後方の面と、延長部11bとが略連続するように溶接等により接合されている。また、サイドフレーム補強部材30のシート内側に向く面の上部は、背凭れ側サイドフレーム11の閉断面構造部11aのシート内側の面の下部と所定幅重なるように配置され、連続するように溶接等により接合されている。このように、サイドフレーム補強部材30は背凭れ側サイドフレーム11と略一体となるように取付けられている。ショルダーベルト部B1が取付けられる側の背凭れ側サイドフレーム11を閉断面構造とし、一体に形成した延長部11bを設けてその内側にサイドフレーム補強部材30を固定したので、リクライニング装置15とショルダーベルト部B1の取付け位置の寸法精度が低下するのを抑制しつつ、背凭れ側サイドフレーム11の剛性を向上させることができる。
【0028】
図2乃至
図4で示すように、上部フレーム13は、パイプ材が折り曲げられて形成され、上部フレーム13の側面部13aは、背凭れ側サイドフレーム12の側板と一部が重なるように配設され、この重なり部分において背凭れ側サイドフレーム12に溶接等により接合される。一方、上部フレーム13の他方の端部は、背凭れ側サイドフレーム11の上端に形成された凹部と接合されている。
【0029】
また、アッパー部を構成する上部フレーム13の上方には、ヘッドレストS3が配設されている。ヘッドレストS3は、前述のように芯材3の外周部にパッド材3aを設け、パッド材3aの外周に表皮材3bを被覆して構成されている。上部フレーム13に取付けられた芯材3(ヘッドレストピラー相当部分)の下方には、ガイドロックが取付けられており、高さ位置が調節可能になっている。
【0030】
そして、補強が施された背凭れ側サイドフレーム11側の上部フレーム13上には、シートベルトBを挿通させるためのショルダーアンカー部14が固着接合されている。ショルダーアンカー部14は、手前側の面と左右両側の面、上面及び裏面で囲まれた箱型の部材であり、手前側の面は、正面視略逆U字状で中央部に空間が形成された形状を有している。ショルダーアンカー部14の左右両側の面の下端部が上部フレーム13に溶接等により接合され、上部フレーム13とショルダーアンカー部14の裏面との間には空間が形成されている。ショルダーベルト部B1は、上部フレーム13とショルダーアンカー部14の間の空間の下方から挿通され、さらに手前側の面の中央部に形成された空間を通って手前側に挿通されて取付けられる。
ショルダーアンカー部14は、車体外側(車体ドア側)に位置する背凭れ側サイドフレーム11と略同じ位置又は背凭れ側サイドフレーム11より外側に寄せて配設されている。
【0031】
シートバックフレーム1の下方(着座フレーム2側)において、連結部材としてのメンバーパイプ40によって背凭れ側サイドフレーム11,12間が連結されている。メンバーパイプ40は、リクライニング装置15の回動軸方向に沿って左右方向に渡って配設され、一端が背凭れ側サイドフレーム11の下方に背凭れ側サイドフレーム11と一体に固定されたサイドフレーム補強部材30に接合されて、このサイドフレーム補強部材30を介して背凭れ側サイドフレーム11と連結され、他端が背凭れ側サイドフレーム12の下方に溶接等により接合されている。
【0032】
そして、メンバーパイプ40は、着座フレーム2に干渉しない範囲で凹凸状に曲げられている。本実施形態では、乗員の腰部がシートバックS1側へ沈み込んだ際に、乗員の後方移動を阻害しないように、メンバーパイプ40の略中央部分は下方に向かって折り曲げられ、凹部を備えた形状となっている。凹状に折り曲げられた部分には、パイプ補強部材42,43が接合されている。
【0033】
メンバーパイプ40において、乗員の腰部に対応する位置が乗員腰部の下方に位置するように折り曲げられていることにより、乗員が後方へ移動する際、メンバーパイプ40によって押し止められることがない。したがって、後方移動を抑制することがなく、乗員の上体をシートバックS1に沈み込ませると共に、メンバーパイプ40を乗員の下方へ沈み込ませることができる。また、メンバーパイプ40にはパイプ補強部材42,43が備えられた構成とすることにより、メンバーパイプ40の剛性を向上させることができる。
【0034】
着座部S2は、着座フレーム2に、上述のようにクッションパッド2aを載置して、クッションパッド2aの上から表皮材2bにより覆われており、乗員の臀部を下方から支持するものである。本実施の形態において、着座フレーム2は、
図2で示すように、着座側サイドフレーム21,22と、着座側後方フレーム28と、着座側前方フレーム29とを有して構成されている。
【0035】
着座側サイドフレーム21は、下部着座側サイドフレーム21aと、上部着座側サイドフレーム21bと、から構成されている。また、着座側サイドフレーム22は、下部着座側サイドフレーム22aと、上部着座側サイドフレーム22bと、から構成されている。上部着座側サイドフレーム21b,22bは、それぞれリクライニング装置15を介して背凭れ側サイドフレーム11の延長部11bと、背凭れ側サイドフレーム12とに回動可能に連結されている。なお、着座側サイドフレーム21,22は、上記背凭れ側サイドフレーム11,12と同じく、特許請求の範囲に記載の「サイドフレーム」に相当するものである。
【0036】
上部着座側サイドフレーム21b,22bはそれぞれ、下部着座側サイドフレーム21a,22aとの連結部分において下部着座側サイドフレーム21a,22aと連続した形状となるように形成され、下部着座側サイドフレーム21a,22aの上端部を覆うようにして取付けられている。
【0037】
下部着座側サイドフレーム21a,22aは、着座幅を構成するため、左右方向に離間して配設され、前後方向に延在して形成されている。下部着座側サイドフレーム21a,22aは金属製の板材によって形成されており、その後方側が上方、すなわちシートバックフレーム1側に延出して形成されている。下部着座側サイドフレーム21a,22aの表面には、下部着座側サイドフレーム21a,22aの形状に対応して、滑らかな溝(ビード)が形成されている。そして下部着座側サイドフレーム21a,22aは、上述した上部着座側サイドフレーム21b,22bと接合されており、さらに上部着座側サイドフレーム21b,22bがそれぞれ背凭れ側サイドフレーム11,12と接合されてシートフレームFを形成している。
【0038】
下部着座側サイドフレーム21a,22aは、それぞれ下方で支持されており、下部着座側サイドフレーム21a,22aには、アッパーレール25,25が取付けられている。そしてアッパーレール25,25は、車体フロアに設置されるロアーレール26,26との間で、前後に位置調整可能なスライド式に組み立てられている。
【0039】
前後方向に離間して延設される下部着座側サイドフレーム21a,22a間の後方にはパイプ状の着座側後方フレーム28が、前方には着座側前方フレーム29が、下部着座側サイドフレーム21a,22aを連結して取付けられている。また、着座側後方フレーム28の下方位置に、下方連結部材51が下部着座側サイドフレーム21a,22aを連結して配設されている。これらの着座側後方フレーム28、着座側前方フレーム29、下方連結部材51は金属製の管材によって構成され、それぞれの端部は下部着座側サイドフレーム21a,22aに溶接等により固着接合される。
【0040】
そして、着座フレーム2内(両側の着座側サイドフレーム21,22の間)で着座フレーム2の内側領域には、クッションパッド2aを下方から支えるクッション支持部材27が配設されている。クッション支持部材27は、略矩形状の板材からなり、対向する前後一対の辺が、それぞれ着座側後方フレーム28及び着座側前方フレーム29に架設されることにより、固定される。
【0041】
このクッション支持部材27は、金属製の板材によって構成されており、この板材には滑らかな凹凸が形成されている。なお、本実施形態ではクッション支持部材27として板材が配設された例を示したが、乗員及びクッションパッド2aを下方から支えることができる構造であれば、形状、材質はこれに限定されない。
【0042】
さらに、
図3乃至
図7で示すように、シートベルトBの引き出し及び巻き取りを行うリトラクタ54を取付けるためのリトラクタ取付部材としてのリトラクタ取付ブラケット50が、下部着座側サイドフレーム21a,22aの後端部を連結して取付けられている。リトラクタ取付ブラケット50は金属製の略矩形の板材からなり、長手方向の両端部を同一方向に折り曲げた折曲部50a,50bが形成されている。この折曲部50a,50bをそれぞれ左右の下部着座側サイドフレーム21a,22aの外側の面に溶接等で接合して、リトラクタ取付ブラケット50をサイドフレーム(本実施形態においては着座側サイドフレーム21,22)に固定している。なお、本実施形態では、折曲部50a,50bをそれぞれ下部着座側サイドフレーム21a,22aの外側の面に取付けたが、いずれか一方又は両方の折曲部50a,50bを下部着座側サイドフレーム21a,22a(または、背凭れ側サイドフレーム11,12)の内側の面に取付けて固定してもよい。
【0043】
そして、折曲部50a,50bは、下部着座側サイドフレーム21a,22a(または、背凭れ側サイドフレーム11,12)のフランジを避けた位置に固定されると好ましい。すなわち、折曲部50a,50bは、下部着座側サイドフレーム21a,22a(または、背凭れ側サイドフレーム11,12)の平面状の部分に固定されていると好ましい。折曲部50a,50bが平面部に取り付けられることにより、折曲部50a,50bを安定して取り付けることができ、また、取り付け作業時の作業性が向上する。
【0044】
リトラクタ取付ブラケット50の両端の折曲部50a,50bの折曲位置には、それぞれ複数の凹部50c,50dが形成されている。凹部50c,50dを設けることで、リトラクタ取付ブラケット50の両端部の剛性が向上し、着座側サイドフレーム21,22との取付強度が向上する。
【0045】
さらに、リトラクタ取付ブラケット50の後方(
図6において手前側)の面には、上下方向に延びる複数の縦ビード(溝)50e、及び左右方向に延びる横ビード50fが形成されている。この縦及び横ビード50e,50fにより、リトラクタ取付ブラケット50の剛性をさらに上げることができる。
【0046】
リトラクタ取付ブラケット50の前方の面には、シートデバイス部としてのリトラクタ54が取付けられる。リトラクタ54は、シートフレームFの左右方向(リトラクタ取付ブラケット50の長手方向)中央よりショルダーベルト部B1が取付けられる背凭れ側サイドフレーム11側に設けられ、着座側後方フレーム28と接触しない位置で取付けられる。リトラクタ54は、シートベルトBを引き出したり、巻き戻したりする構成を備えており、公知の技術を用いることができる。なお、
図3は、リトラクタ54を図示するためクッション支持部材27を一部切り取った状態を示している。
【0047】
リトラクタ取付ブラケット50の上方は、折曲部50a,50bが折り曲げられた方向と同方向に折り曲げられており、その一部には、リトラクタ54から引き出されるシートベルトBをガイドするための切り欠き部50hが形成されている。そして、リトラクタ取付ブラケット50の上方に形成された切り欠き部50hに対して架設された架設部50iが備えられている。
【0048】
架設部50iは、略コ字状に形成された金属製の板材からなり、リトラクタ取付ブラケット50の上面に溶接等の手法により固着接合されている。なお、架設部50iは必ずしも固着接合されている必要はなく、リトラクタ取付ブラケット50のその他の部位と一体に設けられていても良い。
【0049】
架設部50iは、折曲部50a,50bが折り曲げられた方向と同方向、且つ略水平に延設されており、架設部50iと切り欠き部50hとの間は、少なくともシートベルトBが挿通可能な程度の空間が形成されている。
【0050】
架設部50iの前方端部には、突片部50jが設けられており、突片部50jは下方に折り曲げられている。そして、突片部50jの略中央部分には孔が形成されている。
【0051】
一方、リトラクタ54は、リトラクタ取付ブラケット50に係止される係止部54aを備えている。係止部54aは板片によって構成されており、ボルト等の固着具が挿通可能な孔が形成されている。
そして、上記突片部50jに形成された孔と、係止部54aに形成された孔とを連結するようにボルト等の固着具を挿通させ、ナット等の固着具によって締結することによってリトラクタ54がリトラクタ取付ブラケット50に取り付けられる。
【0052】
さらに、リトラクタ54は、リトラクタ取付ブラケット50において、下方に膨出するように形成された膨出部50gにも係止される。膨出部50gにおいてもまた、ボルト等の固着具を挿通するための孔が設けられており、ナット等の固着具を締結することにより、リトラクタ54を強固に取り付けることができる。
【0053】
そして、リトラクタ取付ブラケット50のリトラクタ54が取付けられる部位、すなわち膨出部50gには、リトラクタ取付ブラケット50と下方連結部材51(第1連結部材)とを連結する連結ブラケット53(第2連結部材)が取付けられる。このように、リトラクタ54の取付部位には下方に膨出する膨出部50gが形成されており、膨出部50gの両側は切り欠かれているため、リトラクタ54の取付部位の剛性を確保すると共に、軽量化が可能となる。また、膨出部50gには連結ブラケット53、リトラクタ54が集中して取り付けられる構成であるため、作業箇所が集中し、効率よく各部材の取付けを行うことができる。
【0054】
また、膨出部50gは、その下方の一部の面がリトラクタ取付ブラケット50全体の後方(
図6において手前側)の面より前方へ隆起して、段差形状を有している。このように、リトラクタ54の取付部位近傍に段差が形成されており、リトラクタ取付ブラケット50の剛性が高くなっている。なお、このリトラクタ54の取付部位には、上述した縦ビード50eが複数形成されており、さらなる剛性の向上が図られている。
【0055】
この膨出部50gの下端部は、ロアーレール26の上端部よりも下方に設けられている。すなわち、シートフレームFにおいて、ロアーレール26の上端部から下方のスペースを有効に活用してリトラクタ54を配置できるので、車両用シートSが高さ方向に大型化するのを抑制できる。
【0056】
図8で示すように、リトラクタ取付ブラケット50の下方に膨出した膨出部50gには、リトラクタ取付ブラケット50と第1連結部材としての下方連結部材51とを連結する第2連結部材としての連結ブラケット53が取付けられている。本実施形態の連結ブラケット53は、リトラクタ取付側ブラケット53aと、中間ブラケット53bと、パイプ側ブラケット53cの3つの部材から構成されている。
【0057】
本実施形態のリトラクタ取付側ブラケット53aは、板材を断面L字状に折り曲げて形成されている。上下方向の平面部は膨出部50gの後方の面と当接してリトラクタ取付ブラケット50に取付けられ、下側の平面部は中間ブラケット53bと接合されて膨出部50gの下方に配置される。そして、リトラクタ側ブラケット53aは、中間ブラケット53bに当接する面において、孔が設けられている。この孔には、後述の中間ブラケット53bに形成された爪部53xが挿通される。
【0058】
本実施形態の中間ブラケット53bは、
図9で示すように、矩形の板材の一対の端辺を略直角に折り曲げて形成され、折り曲げられていない他方の一対の端辺にそれぞれリトラクタ取付側ブラケット53aとパイプ側ブラケット53cとがボルトナット等の固着具で取付けられる。そして、中間ブラケット53bは、リトラクタ54が設置される位置の近傍に、一部を切り起こして形成された爪部53xを備えている。この爪部53xを、リトラクタ54の一部(本実施形態では線状部材)に係合させることにより、リトラクタ54をより安定して取り付けることができる。
【0059】
本実施形態のパイプ側ブラケット53cは、板材を所定の高さを有する箱型に成形して、上部2箇所にパイプ状の後方連結部材51と接合可能なように上端部を曲面に形成した支持部が形成されている。そして、上部2箇所の支持部で後方連結部材51と当接して溶接等で連結され、下部の平面部で中間ブラケット53bと固着具で接合される。
【0060】
連結ブラケット53はこのように、中間ブラケット53bの折り曲げ部分と、リトラクタ取付側ブラケット53a及びパイプ側ブラケット53cとで四方が囲まれた箱型形状に形成されているため、剛性が高く、リトラクタ取付ブラケット50と下方連結部材51とを強固に連結することができる。また、膨出部50gの下端部が連結ブラケット53を介して下方連結部材51と連結されているので、リトラクタ取付ブラケット50が安定して固定され、リトラクタ54を安定して取付けることができる。さらに、リトラクタ取付ブラケット50と連結ブラケット53とにより、リトラクタ54を後方及び下方から保護することができる。
【0061】
なお、リトラクタ取付側ブラケット53a、中間ブラケット53b、パイプ側ブラケット53cの形状は上述したものに限定されず、各ブラケットを接続してリトラクタ取付ブラケット50と下方連結部材51を連結可能な構成であればよい。さらに、本実施形態の連結ブラケット53は上述のように3つの部材を組合せて構成したが、1つの部材で一体に形成してリトラクタ取付ブラケット50と下方連結部材51とを連結するように構成してもよい。
【0062】
本実施形態では、膨出部50gにシートベルト巻取り用のリトラクタ54を取付けているが、その他のシートデバイスを取付けることも可能である。例えば、パワーシートにおけるリクライニング調節やシートの前後スライド用の駆動装置(モータ)を膨出部50gに取付けることができる。
【0063】
図10及び
図11はそれぞれ他の実施形態を示すものであり、
図10は他の実施形態のリトラクタ取付部材の説明図、
図11は他の実施形態の第2連結部材の説明図である。なお、上記の実施形態と同様部材、配置等には同一符号を付してその説明を省略する。
【0064】
図10で示すリトラクタ取付ブラケット150は、略左右対称形状に形成されており、左右2箇所に下方に膨出する膨出部150g,150gが形成されており、膨出部150g,150gの間には、横ビード150fが形成されている。このように、左右に膨出部150g,150gを設けることで、車両用シートSの左右いずれにショルダーベルト部B1が取付けられる場合でもリトラクタ取付部材に同一部材を用いることができ、リトラクタ54の取付の自由度が向上する。なお、リトラクタ54を取り付ける部分の構成は、前述の実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0065】
また、左右に膨出部150g,150gを設けたので、一方の膨出部150gにリトラクタ54を取付けて、他方の膨出部150gにその他のシートデバイスを取付けることができる。例えば、パワーシートにおけるリクライニング調節やシートの前後スライド用の駆動装置(モータ)を他方の膨出部に取付けることができる。
【0066】
図11で示す連結ブラケット153は、後側がリトラクタ取付ブラケット50のリトラクタ54を取付ける部位の上端部に取付けられ、前側が下部着座側サイドフレーム21a,22aを連結している着座側後方フレーム28に取付けられて、リトラクタ取付ブラケット50と着座側後方フレーム28とを連結している。このとき、連結ブラケット153は、シートベルトBを切り欠き部50hに挿通させるため、少なくともリトラクタ取付ブラケット50の切り欠き部50hを覆わない位置に取り付けられる。なお、本実施形態において、連結ブラケット153は、架設部50iの上面に接合されている。本実施形態においては、着座側後方フレーム28が第1連結部材、連結ブラケット153が第2連結部材である。
【0067】
連結ブラケット153の形状や構成は特に限定されないが、上記した実施形態の連結ブラケット53と同様に箱型形状を有していると、剛性が大きく好適である。
このように、リトラクタ取付ブラケット50の上方と、着座側サイドフレーム21,22を連結する着座側後方フレーム28とを連結ブラケット153で連結することで、リトラクタ取付ブラケット50を安定して固定することが可能となり、リトラクタ54の支持剛性が向上する。
【0068】
さらに、リトラクタ取付ブラケット50の上下両方に第2連結部材を設けることも可能である。すなわち、
図8で示したリトラクタ取付ブラケット50の下方と下方連結部材51とを連結する連結ブラケット53と、
図11で示したリトラクタ取付ブラケット50の上方と着座側後方フレーム28とを連結する連結ブラケット153の両方を取付けることもできる。このように、リトラクタ取付ブラケット50の上下両方に第2連結部材を設けることで、リトラクタ取付ブラケット50の固定が一層安定し、リトラクタ54の支持剛性が一層向上するため、好ましい。
【0069】
上記各実施形態においては、リトラクタ取付ブラケット50の両端を着座側サイドフレーム21,22に取付けているが、リトラクタ取付ブラケット50をシートバックフレーム1の背凭れ側サイドフレーム11,12を連結するように設けてもよい。
【0070】
このとき、本発明の車両用シートSにおいて、背凭れ側サイドフレーム11は閉断面構造部11aを備えているため、リトラクタ取付ブラケット50の折曲部50a,50bの何れか一方が閉断面構造部11aに取り付けられると好ましい。閉断面構造部11aに折曲部50a(又は折曲部50b)が固定される構成とすることにより、リトラクタ取付ブラケット50の取付けを強固にすることができ、取付剛性を向上させることができる。
【0071】
上述のように、本発明の車両用シートSでは、シートベルト巻取り用のリトラクタ54をシートフレームFに取付けるためのリトラクタ取付ブラケット50の剛性を向上させると共に、リトラクタ取付ブラケット50と左右のサイドフレーム(本実施形態では着座側サイドフレーム21,22)を連結する部材とを連結する連結ブラケット53,153を設けたので、リトラクタ54を取付ける部位の剛性を向上させることができ、リトラクタ54の取付強度を向上させることができる。
【0072】
なお、上記各実施形態では、具体例として、自動車のフロントシートの助手席側に用いられる車両用シートについて説明したが、これに限らず、運転席側の車両用シート、後部座席の車両用シートについても、同様の構成を適用可能であることは勿論である。