特許第5753364号(P5753364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5753364半導体基板のクリーニング方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753364
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】半導体基板のクリーニング方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20150702BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   H01L21/304 647Z
   H01L21/304 642F
   H01L21/30 503G
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-236092(P2010-236092)
(22)【出願日】2010年10月21日
(65)【公開番号】特開2011-91403(P2011-91403A)
(43)【公開日】2011年5月6日
【審査請求日】2013年4月15日
(31)【優先権主張番号】09173658.7
(32)【優先日】2009年10月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591060898
【氏名又は名称】アイメック
【氏名又は名称原語表記】IMEC
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】ポール・メルテンス
(72)【発明者】
【氏名】ステフェン・ブレムス
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−216209(JP,A)
【文献】 特開2009−098270(JP,A)
【文献】 特開2007−311756(JP,A)
【文献】 特開2005−093733(JP,A)
【文献】 特開昭61−073333(JP,A)
【文献】 特開2002−093765(JP,A)
【文献】 特開2009−011879(JP,A)
【文献】 特開2004−197145(JP,A)
【文献】 特開平03−171727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又はそれ以上の半導体基板(1)をクリーニングする装置であって、
・クリーニングされる表面を有する基板(1)を保持するための手段と、
・洗浄液と接触した状態で、キャビテーション泡形成のための核生成部を有する核生成表面を含む核生成構造()と、
・核生成表面が、クリーニングされる前記表面に面するように、前記核生成構造を搭載するための手段と、
・洗浄液を供給し、クリーニングされる表面と核生成表面の間のスペースに充分に充填するための手段と、
前記核生成部位から離隔して配置されたトランスデューサ(6)であって、前記洗浄液を、前記スペースに存在している状態で、振動音響力に曝して、核生成部において過渡的キャビテーションを発生するためのトランスデューサ(6)と、を備え、
前記核生成部位は、非貫通空洞(3)ある装置。
【請求項2】
1つ又はそれ以上の半導体基板(1)をクリーニングする装置であって、
・クリーニングされる表面を有する基板(1)を保持するための手段と、
・洗浄液と接触した状態で、キャビテーション泡形成のための核生成部を有する核生成表面を含む核生成構造(20)と、
・核生成表面が、クリーニングされる前記表面に面するように、前記核生成構造を搭載するための手段と、
・洗浄液を供給し、クリーニングされる表面と核生成表面の間のスペースに充分に充填するための手段と、
前記核生成部位から離隔して配置されたトランスデューサ(6)であって、前記洗浄液を、前記スペースに存在している状態で、振動音響力に曝して、核生成部において過渡的キャビテーションを発生するためのトランスデューサ(6)と、を備え、
前記核生成部位は、孔性膜(20)の開口(22)である装置。
【請求項3】
該装置を特定の洗浄液との組合せで使用した場合、少なくとも核生成部位は、前記洗浄液と接触した状態で、クリーニングされる表面より大きな接触角を示すようにした請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記核生成部位は、電極(10)を備え、前記電極は、前記空洞(3)の底部を形成したり、あるいは前記空洞の底部と電気接続されており、
該装置は、前記電極とクリーニングされる表面との間に電位差を供給するように、電圧源(11)または該装置を電圧源と接続する手段をさらに備え、前記スペースは前記液で充填されている請求項1記載の装置。
【請求項5】
・前記洗浄液(5)で充填可能なタンク(4)と、
・前記基板(1)および前記核生成構造(2)を前記タンク(4)内に搭載するための手段と、を備え、
前記トランスデューサ(6)は、前記タンク(4)の底面または側壁に配置されている、請求項1または2記載の装置。
【請求項6】
前記核生成構造(2)は、前記基板(1)に対して静止した状態で構成され、前記基板は前記音響力に曝されるようにした請求項記載の装置。
【請求項7】
前記核生成構造(2)を前記基板に対して移動させるための手段(8)をさらに備え、前記液体は前記音響力に曝されるようにした請求項記載の装置。
【請求項8】
洗浄を用いて半導体基板(1)をクリーニングする方法であって、
・クリーニングされる表面を備えた基板(1)を用意し保持するステップと、
・前記洗浄と接触した状態でのキャビテーション泡形成用の核生成部を有する核生成表面を備える核生成構造(2,20)を用意するステップと、
・核生成表面が、クリーニングされる表面に面するように、前記核生成構造を搭載するステップと、
・基板と核生成表面の間のスペースに充分に充填することによって、前記核生成表面およびクリーニングされる前記表面を前記洗浄と接触させるステップと、
前記核生成部位から離隔して配置されたトランスデューサ(6)を用いて、前記洗浄液を振動音響力に曝して、前記洗浄液中に過渡的キャビテーションによる泡(7)を生じさせ、前記泡は、核生成構造の表面に核生成を生じさせ、前記泡は、クリーニングされる表面に作用する抗力を生じさせるようにしたステップと、を含み、
前記核生成部位は、非貫通空洞(3)または多孔性膜(20)の開口(22)である方法。
【請求項9】
少なくとも前記核生成部位(3,22)は、前記洗浄液と接触した場合、クリーニングされる表面より大きな接触角を示すようにした請求項8記載の方法。
【請求項10】
クリーニングされる前記基板(1)および前記核生成構造(2,20)は、前記洗浄液(5)で充填されたタンク内に浸漬され、続いて液体を前記音響力に曝すようにした請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記トランスデューサ(6)は、トランスデューサ表面に対して垂直な伝搬方向に液体中を伝搬する音響波を生成するものであり、
前記基板および核生成構造は、前記伝搬方向に対してある角度で配置され、前記角度は、クリーニングされる基板を通る音響エネルギーの伝送を最大化するように選択されるようにした請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を洗浄液に接触させ、音響エネルギーを洗浄液に印加することによって基板、特に、半導体基板のクリーニング方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波(ultrasonic)およびメガソニック(megasonic)ウエハクリーニング方法は、特に、シリコンウエハのクリーニング用として半導体産業で知られている。一般原理は、基板を洗浄液に接触させ、通常はウエハを液体充填タンクの中に浸漬し、そして、電気機械トランスデューサを用いて音響エネルギーを洗浄液に印加することである。多く知られている応用では、超音波(<200kHz)またはメガソニック(1MHz前後)の周波数範囲の音響波を使用する。音響エネルギーは、キャビテーションの生成、即ち、振動したり崩壊する泡の生成を引き起こす。泡は、泡の形成、振動によって生ずる抗力(drag force)あるいは、泡が不安定になり崩壊した時に生成される抗力に起因して、ウエハ表面から粒子の除去を支援する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、現在の技術は、多くの問題を抱えている。超音波の周波数では、泡が大きくなってより重く崩壊する傾向があり、基板およびその上にある構造を損傷するリスクが高くなる。メガソニッククリーニングは、より小さな泡で、より低い損傷リスクをもたらす。しかしながら、集積回路に存在する構造は、新しい技術の世代ごとにより小さく製作されているため、損傷リスクが現存している。一方、泡が小さすぎると、ウエハ表面からの粒子除去に対して充分に寄与しくなくなる。
【0004】
本発明の目的は、音響エネルギーの影響下でキャビテーション泡の活動によって、半導体基板をクリーニングする方法および装置を提案することであり、これにより基板を損傷するリスクが減少して、良好な粒子除去能力を確保する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、添付の請求項に開示されたような方法および装置に関する。
【0006】
本発明は、1つ又はそれ以上の半導体基板をクリーニングする装置に関する。該装置は、
・クリーニングされる表面を有する基板を保持するための手段と、
・洗浄液と接触した状態で、泡形成のための核生成(nucleation)部位を有する核生成表面を含む核生成構造と、
・核生成表面が、クリーニングされる前記表面に面するように、前記核生成構造を搭載するための手段と、
・洗浄液を供給し、クリーニングされる表面と核生成表面の間のスペースに充分に充填するための手段と、
・前記液を、前記スペースに存在している状態で、振動音響力に曝すための手段と、を備える。
【0007】
好ましくは、該装置を特定の洗浄液との組合せで使用した場合、少なくとも核生成部位は、前記洗浄液と接触した状態で、クリーニングされる表面より大きな接触角を示す。洗浄液が水である場合、核生成部位は、好ましくは、クリーニングされる表面より大きな疎水性を有する。核生成構造の材料は、洗浄液に関して無孔性でも多孔性でもよい。核生成構造は、多孔性基板でもよく、基板表面の孔は前記核生成部位を形成する。
【0008】
一実施形態によれば、前記核生成構造は、核生成基板であり、以下、前面および後面を有する「テンプレート(鋳型)」と称しており、核生成表面は前面にあり、前記核生成表面は空洞パターンを備え、前記空洞は泡核生成部位を形成する。
【0009】
前記テンプレートは、電極を備えてもよく、前記電極は、前記空洞の底部を形成したり、あるいは前記空洞の底部と電気接続されており、該装置は、前記電極とクリーニングされる表面との間に電位差を供給するように、電圧源または該装置を電圧源と接続する手段をさらに備え、前記スペースは前記液で充填されている。
【0010】
一実施形態によれば、核生成構造は、チャネルを備え、各チャネルは、テンプレートの後面と前記空洞の1つの底部との間に延びており、該装置は、ガス状物質を供給するための供給手段をさらに備え、前記物質は、テンプレートの後面からチャネルを通って空洞に流れ、前記スペースは前記液で充填されている。
【0011】
他の実施形態によれば、前記核生成構造は、核生成部位として機能する孔または開口(22)を有する膜(membrane)である。
【0012】
一実施形態によれば、本発明に係る装置は、
・前記洗浄液で充填可能なタンクと、
・前記基板および前記核生成構造を前記タンク内に搭載するための手段と、
・前記タンクの底面または側壁に配置され、前記音響力を生成するためのトランスデューサと、を備える。
【0013】
他の実施形態によれば、本発明に係る装置は、
・クリーニングされる表面を有する単一の基板を保持するための手段と、
・洗浄液を、クリーニングされる表面に供給するための供給手段と、
・核生成表面とクリーニングされる表面との間に液体膜が形成できように、前記核生成構造を搭載するための手段と、
・核生成構造と接触して配置され、前記音響力を生成するためのトランスデューサと、を備える。
【0014】
後者の実施形態に係る装置は、クリーニングされる基板のための回転可能ホルダをさらに備え、クリーニングされる表面に対して垂直な中心軸の周りに基板を回転させ、前記供給手段は、クリーニングされる表面に液体を供給しながら、基板が回転するように配置される。
【0015】
本発明に係る装置において、前記核生成構造は、前記基板に対して静止した状態で構成され、前記基板は前記音響力に曝される。
【0016】
本発明に係る装置は、前記核生成構造を前記基板に対して移動させるための手段をさらに備え、前記液体は前記音響力に曝される。
【0017】
本発明は、同様に、洗浄液を用いて半導体基板をクリーニングする方法に関する。前記方法は、
・クリーニングされる表面を備えた基板を用意し保持するステップと、
・前記洗浄液と接触した状態での泡形成用の核生成部位を有する核生成表面を備える核生成構造を用意するステップと、
・核生成表面が、クリーニングされる表面に面するように、前記核生成構造を搭載するステップと、
・基板と核生成表面の間のスペースに充分に充填することによって、前記核生成表面およびクリーニングされる前記表面を前記洗浄液と接触させるステップと、
・前記洗浄液を振動音響力に曝して、前記液体中に泡を生じさせ、前記泡は、核生成構造の表面に核生成を生じさせ、前記泡は、クリーニングされる表面に作用する抗力を生じさせるようにしたステップと、を含む。
【0018】
方法の一実施形態において、少なくとも前記核生成部位は、前記洗浄液と接触した場合、クリーニングされる表面より大きな接触角を示す。
【0019】
一実施形態によれば、クリーニングされる前記基板および前記核生成構造は、前記洗浄液で充填されたタンク内に浸漬され、続いて液体を前記音響力に曝す。
【0020】
他の実施形態によれば、前記音響力は、トランスデューサによって生成され、トランスデューサ表面に対して垂直な伝搬方向に液体中を伝搬する音響波を生成する。前記基板および核生成構造は、前記伝搬方向に対してある角度で配置され、前記角度は、クリーニングされる基板を通る音響エネルギーの伝送を最大化するように選択される。
【0021】
本発明に係る方法の一実施形態によれば、前記核生成構造は、クリーニングされる前記表面に接近して配置され、前記洗浄液の膜が、核生成構造とクリーニングされる表面との間に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係るクリーニング装置を示す。
図2】本発明に係る装置でのクリーニング機構を示す。
図3】泡核生成膜を有する、本発明に係る装置を示す。
図4】核生成膜を用いた泡形成を示す。
図5】可動式の泡核生成構造を有する、本発明に係る装置を示す。
図6】電極を備えた核生成構造を有する装置を示す。
図7】基板および核生成構造がある角度で搭載されている、本発明に係る装置を示す。
図8】基板の配向と音響反射係数との関係を示す。
図9】クリーニングされる基板上での液体膜形成を伴う、本発明の他の実施形態に係る装置を示す。
図10】核生成構造に形成されたマイクロチャネルを有する、本発明の一実施形態に係るクリーニング装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の方法および装置において、基板は、洗浄液と接触し、例えば、前記洗浄液を収容したタンク内に浸漬され、公知の方法で、振動する音響力が液体に印加され、音響波を液体中を通過させる。本発明の特徴は、クリーニングされる表面に(好ましくは平行に)面した核生成表面を備えた核生成構造の存在であり、前記核生成表面は、液体中を進行する音響波の影響下でキャビテーション泡形成のための核生成部位を備える。
【0024】
核生成部位は、後述の実施形態に基づいて説明するように、表面の地形形状に起因して、例えば、孔(hole)や細孔(pore)の結果、泡形成のために高い親和性を示す場所である。好ましくは、核生成表面または、少なくとも核生成部位に対応した表面の部分の材料は、洗浄液と接触したとき、基板表面よりも大きな接触角を示す。洗浄液が水である場合、これは、該構造が基板よりも疎水性であることを意味する。
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態を示し、構造が「泡テンプレート」2の形態で設けられ、クリーニングされる基板1に極めて接近して、これとほぼ平行に配置される。このパターンは、複数の小さな空洞3からなり、テンプレート表面において、例えば、エッチングによって実現され、前記空洞は、泡形成のための核生成部位として機能する。空洞3は、テンプレート表面の全体または一部に渡って存在してもよい。テンプレートは、適切な保持手段(不図示)によって基板に対して一定の距離で保持される。図1の実施形態において、基板−テンプレートアセンブリは、洗浄液5で充填可能なタンク4の中に搭載され、電気機械トランスデューサ6がテンプレートの空洞から離隔するようにタンクの底部に取り付けられる。トランスデューサは、タンクの側面に取り付けてもよく、あるいはテンプレート2と直接接続してもよい。トランスデューサは、公知のタイプのものでもよく、例えば、米国特許第6904921号、米国特許第5355048号に記載されたようなものでもよい。



【0026】
音響波が進行する際、洗浄液中の圧力が増加(または減少)する量は、圧力振幅と称される。音響波の圧力振幅は、過渡的キャビテーションを生じさせる。即ち、泡が最大サイズまで成長して、基板表面からある距離で崩壊する。これにより強い微視的な流動(streaming)を引き起こし、これが基板表面に作用する抗力を生じさせる。シミュレーションは、水中の酸素の泡の場合、1MHzの周波数で3barの圧力振幅が印加されると、直径約500nmの初期直径を持つ泡が、崩壊する前に直径約3.5ミクロンに成長することを示している。代替として、安定した振動泡形成が得られるように、その圧力振幅はより小さくてもよく、泡は、印加される音響力の周波数で最小サイズから最大サイズへ成長したり戻ったりする。
【0027】
図2は、クリーニングが生ずる方法を示している。泡7が非貫通空洞内に存在し、または、核生成部位の存在に起因してテンプレート上で核生成を行い、基板上ではない。テンプレート上の泡形成は、疎(水)性に差異がある場合、さらに増強される。過渡的な泡の挙動は、強い微視的な流動を誘発し、基板表面に作用する抗力を生じさせる。泡がテンプレート上で核生成を行うため、大多数の泡は基板上で崩壊しなくなり、これにより基板を損傷するリスクを低減できる。こうしてより大きな音響力/エネルギーを印加することが可能になり、基板表面を損傷することなく、粒子を効率的に除去できる。安定した振動泡領域が(過渡的でなく)テンプレート上で得られる場合、泡と基板表面との間の距離の結果、クリーニングされる表面に作用する抗力が減少して、基板を損傷することなくより大きな振幅/エネルギーが印加できる。
【0028】
テンプレートと基板との間の距離a(図2)は、泡の最大サイズに依存して、1から数百マイクロメータのオーダーである。前記距離は、前記最大泡直径の約1から10倍であることが好ましい。これにより、距離aの調整によって、抗力を調整することが可能になる。最大泡直径は、圧力の振幅および周波数に依存する。距離aの何れかの値で、泡が崩壊前の最大泡サイズに到達するときの共振周波数を定義する。クリーニング効果を最大化するためには、こうした共振領域の範囲内で作動することが好ましい動作モードである。但し、本発明はこうした動作モードに限定されない。
【0029】
空洞3のサイズは、図1では実際のスケールで描写しておらず、空洞の形状は、図1に示した実施形態に限定されない。空洞は、円錐台、円柱、角錐台または角柱の形状を有してもよい。その材料および形状は、発生する泡にとって効率的な核生成部位として機能するように最適化される。空洞は、生成される泡のサイズおよび印加される圧力振幅に依存して、ナノメータまたはマイクロメータのオーダーの直径を有する円形断面を有してもよい。例えば、4μm直径を持つ孔を、3barの振幅で1MHzの音響力との組合せで用いてもよい。テンプレート表面での孔3同士の距離は、空洞直径と泡半径の10倍の間で変化してもよい。
【0030】
テンプレート2は、添付の請求項1で言及している核生成構造の一例である。パターン化した構造の代わりに、泡形成用の核生成部位を含む表面を有する任意の構造が使用できる。例えば、高い粗さ(roughness)を有する表面を備えた基板(例えば、ブラックSi基板)が、粗さプロファイルの山と谷が核生成部位を構成する場合、使用可能である。さらに、かなりの粗さ自体が、滑らかな表面と比べて表面をより疎(水)性にすることが判明している。中実の基板の他に、適当な粗さを有する層を備えた基板、例えば、多孔性の低誘電率(low-K)材料の層を備えたSi基板を使用してもよい。
【0031】
核生成構造を製作する材料は、無孔性材料、即ち、洗浄液にとって無孔性でもよい。代替として、核生成構造は、多孔性材料、例えば、多孔性テフロン(Teflon)で製作してもよい。基板およびテンプレートを液体中に浸漬した場合、多孔性材料では、より多量の水がテンプレートと基板の間のスペースに入り込むことができ、着実な泡形成を確保できる。また、溶解ガスが、泡形成を支援することが予想され、多孔性材料を介して供給できる。多孔性材料を用いた場合、構造表面に位置した細孔自体が核生成部位を構成でき、即ち、多孔性核生成構造が平坦な基板の形態を取ることができ(空洞パターンを設けていない)、細孔自体が泡核生成部位を形成している。
【0032】
核生成構造は、中実の基板の代わりに多孔性の膜であってもよい。図3を参照して、フレーム21に搭載された膜20を示している。多孔性の膜とは、層厚を通して開口を有する材料の薄い層を意味する。それは、多孔性材料で製作した膜でもよく、開口が材料の有孔性の結果であってもよく、または網状パターンの開口を備えた膜でもよい。図4に示すように、開口は、泡形成用の核生成部位として機能する。GORE(登録商標)膜は、本発明での用途に適している。
【0033】
テンプレート2(または請求項1に係る任意の核生成構造)は、基板に対して静止していてもよく、または可動式でもよい。静止したテンプレートは、基板表面より小さいか、等しいか、あるいは大きい表面を有してもよい。1つのケースでは、テンプレートは、丸いウエハ表面と同心円状に配置された円形表面を有する。可動式テンプレートの表面は、基板表面より小さい(図5を参照)。それは、駆動手段8と連携して構成され、好ましくは基板表面に対して平行な状態で、テンプレートを基板表面に渡って移動させる。
【0034】
他の実施形態によれば、核生成構造は、図6に示すように、電極10を備えた泡テンプレートであってもよく、泡核生成空洞の底部は前記電極で形成される。電極10および基板1を電源11と接続し、適切な組成を有する洗浄液中に浸漬した場合、電気分解が発生し、ガス泡が前記空洞内に生成される。こうしてガス泡がその場(in situ)で発生して、泡形成が促進される。
【0035】
その場(in situ)ガス発生を得る他の方法は、反応性成分を含む組成を持つ洗浄溶液を選択することによる。例えば、NHOHとHを含む溶液では、これらの元素が反応して、NHおよびOをガス状の形態で形成する。この反応は、洗浄液中にガス泡を発生する。こうした反応を増強するために、空洞の底部と、可能ならば側壁に、当該反応のための触媒を設けてもよい。触媒は、コーティングの形態で付着させてもよい。二酸化マンガンコーティングが、HOとOへのHの分解のための触媒として機能する。
【0036】
図7は、基板およびテンプレートが、トランスデューサ表面、即ち、トランスデューサによって出力される音響波の伝搬方向に対して垂直な表面に対して角度αで位置決めされた実施形態を示す。薄いシリコン基板(ここではウエハと称する)の音響反射特性は、音響波の伝搬方向に対するウエハ配向について高い依存性を有することが判った。図8に示すように、反射係数において急峻な低下が観測され、Siウエハを通る音響エネルギー伝送のピークは、印加された波の周波数に依存している。ピークの位置は、ウエハの厚さ、ウエハおよび洗浄液の音響インピーダンスに依存しており、前記インピーダンス自体は、入射角、密度、ヤング率、ポアソン比に依存する。この知識に基づいて、基板およびテンプレートを伝送ピークに対応する角度に配置することが有利であり、その結果、音響エネルギーの最大値がSiウエハとテンプレートの間のスペースに到達するようになる。
【0037】
基板を洗浄液で充填されたタンク内に水没させた装置との組合せで、上記方法を説明した。他の実施形態によれば、一方では、核生成構造と基板とのコンタクト、他方では、洗浄液とのコンタクトは、核生成構造と基板との間に膜状の液体を供給することによって得られる。上述した核生成構造の何れも本実施形態に適用できる。
【0038】
図9は、核生成テンプレートを使用した場合を示し、基板2の表面には空洞3のパターンが設けられる。基板1は、基板ホルダ30に搭載され、基板を所定位置に堅固に保持するように、さらに基板を中心回転軸31の周りに回転させるようにしている。この目的のため、任意の適切なタイプの公知の回転可能基板ホルダが使用できる。液体を基板表面に供給するための洗浄液供給手段、例えば、ノズル32等が設けられる。核生成テンプレート2は、基板表面に対して近接し、ほぼ平行になるように、基板とテンプレートの間に液体膜33の構築を可能にするような基板間距離で配置される。テンプレートは、好ましくは静止しているが、基板表面に対して平行な方向に移動可能でもよい。テンプレートは、任意の適切な形状を有してもよく、例えば、基板表面に対して平行に配置されたビームまたはアームの形状でもよい。基板の回転により、液体が基板から流れ出るとともに、新鮮な液体が液供給部32によって供給される。電気機械トランスデューサ34が泡テンプレートに取り付けられ、所定の周波数の音響波を液体膜に出現させる。泡の発生および前記泡によって生ずるクリーニング動作が、上述した実施形態のように生ずる。
【0039】
他の実施形態によれば、図10に示すように、核生成構造39は基板であり、例えば、パターン化基板には、上述のような空洞3のパターンが設けられ、さらに核生成構造の裏面41と孔の底部とを接続する複数のチャネル40が設けられる。チャネル40は、マイクロチャネルとも称され、図示のように、空洞3の直径より小さい直径でもよく、あるいはこれらは空洞より大きな直径を有してもよく、あるいは空洞と対応していてもよく、その場合、マイクロチャネルはテンプレートの厚さを通じて走行している。
【0040】
さらに、マイクロチャネルは、ガス状物質の供給部42と接続され、これによりガス流が孔の底部に向くようになり、核生成表面は洗浄液と接触している。図10に示す実施形態では、図9と関連して既に説明したように、洗浄液は液体膜として存在している。ガス供給コレクタ43を装着して、マイクロチャネルに向かうガス供給を案内するようにしてもよい。ガス供給は、孔の底部でガス泡の形成を大きく増強し、前記泡は、核生成構造に取り付けられた電気機械トランスデューサ34によって発生した音響力の影響下でさらに発展する。
【0041】
本実施形態は、洗浄液が充填されたタンクとの組合せで使用でき、ガス供給をマイクロチャネルに案内するとともに、基板および核生成構造を液体中に水没させるような適切な手段を採用している。
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9
図10