(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753379
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】冷却貯蔵庫の扉装置
(51)【国際特許分類】
F25D 21/04 20060101AFI20150702BHJP
F25D 23/02 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
F25D21/04 E
F25D23/02 305A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-289014(P2010-289014)
(22)【出願日】2010年12月25日
(65)【公開番号】特開2012-137221(P2012-137221A)
(43)【公開日】2012年7月19日
【審査請求日】2013年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】ハイアールアジア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109368
【弁理士】
【氏名又は名称】稲村 悦男
(72)【発明者】
【氏名】片貝 清
【審査官】
河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−353943(JP,A)
【文献】
特開2010−249491(JP,A)
【文献】
特開2007−147090(JP,A)
【文献】
特開2008−096008(JP,A)
【文献】
特開2008−116161(JP,A)
【文献】
特開2009−042947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02
F25D 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱箱体の前面開口を閉塞するように観音開き式の一対の扉を設け、これら一対の扉のうちの一方の扉の非枢支側裏面に回転可能に支持される仕切り装置を設け、この仕切り装置を前面が開口した断面コ字状の仕切り装置本体と、この仕切り装置本体の前面開口を閉塞する前面板と、前記仕切り装置本体内に内蔵された断熱材及び露付き防止ヒータとで構成し、前記一対の扉を閉めた状態では前記一対の扉の裏面に設けられたシール部材が前記仕切り装置の前記前面板に当接するようにした冷却貯蔵庫の扉装置であって、前記仕切り装置本体の両側面にそれぞれ断熱材を設けると共に、前記仕切り装置本体の両側面のうち前記仕切り装置が設けられていない他方の扉に近い一方の側面に一方の前記断熱材の前方及び側方を遮蔽する第1の断熱材カバーを設けると共に前記他方の扉に近くない他方の側面に他方の前記断熱材の前方を遮蔽する第2の断熱材カバーを前記仕切り装置本体に形成したことを特徴とする冷却貯蔵庫の扉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱箱体の前面開口を閉塞するように観音開き式の一対の扉を設け、これら一対の扉のうちの一方の扉の非枢支側内面に回転可能に支持される仕切り装置が設けられた冷却貯蔵庫の扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の冷却貯蔵庫の扉装置は、センターピラーレス方式のものとして知られており、回転式の仕切り装置を、前面が開口した断面コ字状の仕切り装置本体と、この仕切り装置本体の前面開口を閉塞する前面板と、仕切り装置本体内に内蔵された断熱材及び露付き防止ヒータとで構成し、一対の扉を閉めた状態では一対の扉の非枢支側内面に設けられたガスケット等のシール部材が仕切り装置の前面板に当接するようにし、仕切り装置のある一方の扉を開いたときには仕切り装置が冷却貯蔵庫の庫内側に回転して食品の出し入れの邪魔にならないようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−46459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一対の扉の閉塞時に一対の扉のガスケット等のシール部材が当接する仕切り装置の前面板は鉄板等の金属製で、扉の閉塞時には冷却された庫内温度(冷蔵室で5°C前後)と同程度の温度になりやすく、冷却貯蔵庫が設置される室内の温度(夏場で30°C程度)との温度差が大きいので露が付きやすくなることから、前面板を消費電力が、例えば10W以上の露付き防止ヒータで常時26°C程度に維持されるように加熱しているため、露付き防止ヒータの電力消費量が大きくなる問題があった。
【0005】
そこで本発明は、断熱箱体の前面開口を閉塞するように観音開き式の一対の扉を設け、これら一対の扉のうちの一方の扉の非枢支側内面に回転可能に支持される仕切り装置が設けられた冷却貯蔵庫の扉装置において、仕切り装置の前面板の露付き防止を行うための露付き防止ヒータの電力消費量を極力低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため
本発明は、断熱箱体の前面開口を閉塞するように観音開き式の一対の扉を設け、これら一対の扉のうちの一方の扉の非枢支側裏面に回転可能に支持される仕切り装置を設け、この仕切り装置を前面が開口した断面コ字状の仕切り装置本体と、この仕切り装置本体の前面開口を閉塞する前面板と、前記仕切り装置本体内に内蔵された断熱材及び露付き防止ヒータとで構成し、前記一対の扉を閉めた状態では前記一対の扉の裏面に設けられたシール部材が前記仕切り装置の
前記前面板に当接するようにした冷却貯蔵庫の扉装置であって、前記仕切り装置本体の両側面にそれぞれ断熱材を設けると共に、
前記仕切り装置本体の両側面のうち前記仕切り装置が設けられていない他方の扉に近い一方の側面に一方の前記断熱材の前方及び側方を遮蔽する第1の断熱材カバーを設けると共に前記他方の扉に近くない他方の側面に他方の前記断熱材の前方を遮蔽する第2の断熱材カバーを前記仕切り装置本体に
形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、仕切り装置本体の両側面に断熱材が
それぞれ設けられているため扉の閉塞時において冷却された庫内の冷熱が仕切り装置本体を介して前面板に伝達しにくくなり、前面板の温度と冷却貯蔵庫が設置される室内の温度との温度差を小さくするための露付き防止ヒータの電力消費量を極力低減
でき、しかも第1及び第2の断熱材カバーにより前記各断熱材が露出して外観を損なうことが防止できる。
この場合、前記第1の断熱材カバーを前記仕切り装置本体の両側面のうち仕切り装置が設けられていない他方の扉に近い一方の側面に前記断熱材の前方及び側方を遮蔽するように設けたから、前記仕切り装置がない他方の扉を開放したときに前記仕切り装置本体の側面に設けた前記断熱材が露出しないようにでき、外観を損なわないようにできるばかりでなく、食品等の出し入れに際に食品等が前記断熱材に接触してこの断熱材が剥がれたり、損傷するのを防止できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】冷却貯蔵庫の扉を開放した状態の斜視図である。
【
図4】冷却貯蔵庫の冷蔵室上部の案内突起の取り付け状態を説明するための斜視図である。
【
図5】左側断熱扉と仕切り装置の取り付け状態を説明するための斜視図である。
【
図8】扉と仕切り装置の当接状態を示す横断面図である。
【
図9】冷却貯蔵庫の扉を開放した状態の要部斜視図である。
【
図10】左扉を開放した状態での仕切り装置と案内突起との関係を示す説明図である。
【
図11】(A)は仕切り装置の係合溝に案内突起が係合を開始する状態を示す説明図で、(B)は仕切り装置の係合溝に案内突起が係合を開始する状態における仕切り装置下部の横断面図である。
【
図12】(C)は仕切り装置の係合溝の中間部に案内突起が係合した状態を示す説明図で、(D)は仕切り装置の係合溝の中間部に案内突起が係合した状態における仕切り装置下部の横断面図である。
【
図13】(E)は仕切り装置の係合溝の最深部に案内突起が係合した状態を示す説明図で、(F)は仕切り装置の係合溝の最深部に案内突起が係合した状態における仕切り装置下部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明における冷却貯蔵庫の実施の形態を、
図1乃至
図16を用いて説明する。
図1乃至
図3に示すように、冷凍貯蔵室及び冷蔵貯蔵室を備えた冷却貯蔵庫の本体は、前面が開口している断熱箱体1で構成されている。この断熱箱体1は断熱壁で形成され、内箱2と外箱3との間の空間内に発泡ウレタン等の断熱材4を充填したものである。
【0012】
そして、前記断熱箱体1の内部空間、即ち庫内となる貯蔵室は、略水平な3個の断熱材が充填された水平仕切壁で上下4つの空間に仕切られ、最上部空間が冷蔵室5、上から2段目の空間が断熱材が充填された垂直仕切壁により左右に仕切られて製氷室6及び第1冷凍室7、上から3段目の空間が温度切替室8、また最下部空間が第2冷凍室9となっている。
【0013】
そして、前記冷蔵室5の前面開口は観音開きの断熱扉11、12で開閉自在に閉塞され、製氷室6、第1冷凍室7、温度切替室8、及び第2冷凍室9の前面開口は、それぞれ引き出し式の断熱扉13乃至16で開閉自在に閉塞されている。
【0014】
前記冷蔵室5後方の断熱箱体1内奥部には、この冷蔵室5内に冷気を供給する冷蔵室用通風ダクト17、送風機18及び冷却器19が設けられている。また、前記製氷室6、第1冷凍室7、温度切替室8、及び第2冷凍室9の後方の断熱箱体1内奥部にも、送風機を備えると共に冷却器が配設され、かつ冷気ダクト及び戻りダクトを有するファンダクト組立体(何れも図示せず)が配置されている。
【0015】
また、前記両冷却器19(他方は図示せず)は圧縮機、凝縮器、キャピラリーチューブ等の減圧装置、及びアキュムレータ等の気液分離器などとともに順次冷媒配管で接続された冷凍サイクルユニットを構成するものであり、この冷凍サイクルユニットにおいて減圧装置と気液分離器の間に接続され、蒸発器として作用するものである。そして、圧縮機及び凝縮器等は断熱箱体1の後部下側に形成されている機械室に冷却器からのドレン水を回収する蒸発皿(何れも図示せず)とともに配置されている。
【0016】
そして、上方の冷却器19で生成された冷気は送風機18により冷蔵室用通風ダクト17を介して前記冷蔵室5内に供給され、冷蔵室用通風ダクト17下部を介して戻り、また下方の前記冷却器で生成された冷気は送風機の運転により冷気ダクトを介して製氷室6、第1冷凍室7、温度切替室8及び第2冷凍室9に供給され、これらの貯蔵室内を冷却した後に、戻りダクトを介して冷気ダクトの下部に戻る構成である。
【0017】
そして、前記冷蔵室5は冷気量をダンパー等で調節することにより室温が、例えば5°C前後に維持され、第1冷凍室7は室温がマイナス7°C程度に維持され、温度切替室8はダンパーの開度切換えにより室温がマイナス20°C〜プラス5°Cの範囲で切り換えて使用され、第2冷凍室9は室温がマイナス20°C程度に維持されるようにしてある。
【0018】
図4に示すように、前記冷蔵室5の前面開口中央部に位置する天壁21には、その下面に楕円状の案内突起22を有する取り付け板23がビス止めにより固定されている。また、観音開き式の一対の断熱扉11、12の内側(裏面)にはペットボトル等を収納する複数の食品ラック24が設けられると共に、内側周縁部(裏面周縁部)にはシール部材としてのガスケット(マグネット・パッキング)25が設けられている。
【0019】
また
図5に示すように、断熱扉11、12のうち、左側の断熱扉11の非枢支側内面(裏面)には保持板26が一体形成され、この保持板26に回転可能に仕切り装置27が取り付けられている。
図6及び
図7に示すように、この仕切り装置27は断面がコ字状の合成樹脂製の仕切り装置本体28と、この仕切り装置本体28の前面開口を覆う鉄板製の前面板29と、仕切り装置本体28内に収納される断熱材30と、この断熱材30と前面板29との間に配設される露付き防止ヒータ31と、仕切り装置本体28の頂部と底部にそれぞれ嵌め込まれる上キャップ32及び下キャップ33と、仕切り装置本体28の上部と下部にそれぞれ組み込まれて上キャップ32及び下キャップ33と連携して仕切り装置27を回転自在に支持する上ヒンジ装置34及び下ヒンジ装置35と、下ヒンジ装置35と下キャップ33に係合されて仕切り装置27に反時計方向の回転力を付与するトグルバネ36と、仕切り装置本体28の両側面に接着により取り付けられた断熱材37、38とを備えている。そして、仕切り装置27はこれらを一体に組み立てたものであり、上ヒンジ装置34及び下ヒンジ装置35を介して前記保持板26に回転自在に保持されている。
【0020】
前記上キャップ32上面には前記案内突起22と係合可能な円弧状の案内溝39が設けられている。また、仕切り装置本体28の両側には左側の断熱材37の前方を遮蔽するフランジ状の断熱材カバー40と右側の断熱材38の前方及び側方を遮蔽する断面L字状の断熱材カバー41とが一体形成されている。
【0021】
次に、断熱扉11、12の開閉に伴う仕切り装置27の回転動作を、
図8乃至
図16を参照して説明する。まず、
図8は断熱扉11、12が閉じた状態を示している。このとき、断熱扉11、12のガスケット25、25の磁石42、42が仕切り装置27の前面板29に吸着し、ガスケット25、25が前面板28に密着した状態で当接するため、冷蔵室5が密閉された状態にある。
【0022】
前記冷蔵室5は5°C程度に冷却されているが、仕切り装置本体28には断熱材30が内蔵されているばかりでなく。仕切り装置本体28の両側面には断熱材37、38が設けられているため、冷蔵室5内の冷熱が仕切り装置本体28を介して前面板29に伝達しにくくなるため、露付き防止ヒータ31による僅かな加熱で前面板29を常温程度に維持することができ、夏場のように冷却貯蔵庫が設置された部屋の室温と冷蔵室5の室温との温度差が大きい場合でも僅かな消費電力で断熱扉11、12開放時の前面板29への露付きを防止することができる。
【0023】
また、右側の断熱扉12を開放した時でも断熱材38は断熱材カバー41で覆われているため、断熱材38が露出して外観を損なったり、食品等の出し入れの際に食品等が断熱材38に接触して断熱材38が剥がれたり、損傷するのを防止できる。
【0024】
図9及び10は、左側の断熱扉11を開放した状態であり、この状態では仕切り装置27の上キャップ32の案内溝39は冷蔵室5の天壁21に設けられた案内突起22から外れて、断熱扉11に対して仕切り装置27の長手方向が垂直方向となっている。このとき、仕切り装置27は内蔵するトグルバネ36の付勢力によって
図8に比べて90°反時計方向に回転しており、この状態でも仕切り装置本体28の左側(断熱扉11が閉じられている状態での左側)に設けられた断熱材37の前方が断熱材カバー40で覆われているため、断熱材37が露出して外観を損なうことがないようにしてある。
【0025】
左側の断熱扉11を閉める際には、
図11の(A)(B)に示すように、上キャップ32の案内溝39と冷蔵室5の天壁21の案内突起22との係合が開始する。この時点では、
図12に示すように、仕切り装置27はトグルバネ36の付勢力によって断熱扉11に対して仕切り装置27の長手方向が垂直方向となっており、断熱扉11の上下に固定された上ヒンジ装置34の軸体43A及び下ヒンジ装置35の軸体43B(ともに仕切装置本体28の上下部の支持溝28A(他方は図示せず)内に回動可能に挿入されている。)を支点として仕切り装置27は回転することはない。
【0026】
そして、左側の断熱扉11が閉まるにつれて上キャップ32の案内溝39と冷蔵室5の天壁21の案内突起22との係合が進み、これに伴ってトグルバネ36の付勢力に抗して前記軸体43A,43Bを支点として仕切り装置27は時計方向に回転する。
図12の(C)、(D)は、仕切り装置27が45°時計方向に回転した状態を示す。
【0027】
そして、左側の断熱扉11が完全に閉じると、
図13の(E)、(F)に示すように、上キャップ32の案内溝39の奥部に前記案内突起22が当接係合し、仕切り装置27は
図10に比べて90°時計方向に回転し、
図8に示す状態に戻る。
【0028】
本実施形態のものでは、仕切り装置本体28の両側面に断熱材37、38が設けられているため、冷蔵室5の室温が5°C前後となる断熱扉11、12の閉塞時において冷却された冷蔵室5の冷熱が仕切り装置本体28を介して前面板29に伝達しにくくなり、前面板29の温度と冷却貯蔵庫が設置される室内の温度との温度差を小さくするための露付き防止ヒータ31の電力消費量を小さくでき、大幅な節電効果が期待できる。
【0029】
また、仕切り装置本体28の両側面に設けられた断熱材37、38を被覆する断熱材カバー40、41が設けられているため、仕切り装置27がない右側の断熱扉12を開放したときに仕切り装置本体28の右側面(断熱扉11が閉じられている状態での右側面)に設けた断熱材38が露出したり、左側の断熱扉11を開放したときに仕切り装置本体28の左側面に設けた断熱材37が露出しないようにでき、外観を損なわないようにできるばかりでなく、食品等の出し入れに際に食品等が断熱材38に接触して断熱材38が剥がれたり、損傷するのを防止できる。但し、断熱材37の露出は少なく、断熱材37が食品等と接触する心配もないので、断熱カバー40は省略可能である。
【0030】
なお、仕切り装置27を左側の断熱扉11に設けたが、右側の断熱扉12に設けても良い。
【0031】
以上のように本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0032】
1 断熱箱体
11 断熱扉
12 断熱扉
25 ガスケット(シール部材)
27 仕切り装置
28 仕切り装置本体
29 前面板
30 断熱材
31 露付き防止ヒータ
37 断熱材
38 断熱材
40 断熱材カバー
41 断熱材カバー