特許第5753385号(P5753385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベクチュラ デリバリー デバイセズ リミテッドの特許一覧 ▶ ベーリンガー インゲルハイム インターナショナルゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許5753385-吸入器 図000003
  • 特許5753385-吸入器 図000004
  • 特許5753385-吸入器 図000005
  • 特許5753385-吸入器 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753385
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】吸入器
(51)【国際特許分類】
   A61M 13/00 20060101AFI20150702BHJP
【FI】
   A61M13/00
【請求項の数】24
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-543462(P2010-543462)
(86)(22)【出願日】2009年1月14日
(65)【公表番号】特表2011-509777(P2011-509777A)
(43)【公表日】2011年3月31日
(86)【国際出願番号】EP2009050340
(87)【国際公開番号】WO2009092650
(87)【国際公開日】20090730
【審査請求日】2011年11月28日
【審判番号】不服2014-4215(P2014-4215/J1)
【審判請求日】2014年3月4日
(31)【優先権主張番号】08100886.4
(32)【優先日】2008年1月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509351199
【氏名又は名称】ベクチュラ デリバリー デバイセズ リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】500370595
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナルゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ハーマー,クエンティン
(72)【発明者】
【氏名】ミルボジェビック,イバン
(72)【発明者】
【氏名】サーカー,マシュー
【合議体】
【審判長】 山口 直
【審判官】 関谷 一夫
【審判官】 高木 彰
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−533363(JP,A)
【文献】 特表2004−530498(JP,A)
【文献】 特表2003−535656(JP,A)
【文献】 特開昭53−100695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側曲線状表面によって画定されかつ縦軸(A−A)を有する実質的に円形の横断面のチャンバーと、前記チャンバー内への薬物搭載空気の流れのための前記チャンバーの一端にある吸入口であって、前記薬物搭載空気が前記吸入口を通って流れる、吸入口と、前記チャンバーの対向端にある吐出口であって、前記薬物搭載空気が、前記吸入口および前記吐出口の間にある前記チャンバーを通って、その後前記吐出口を通って前記チャンバーの外に流れる、吐出口と、接線方向の前記チャンバー内への清浄空気の流れのためのバイパス空気入口であって、前記バイパス空気入口が、前記バイパス空気入口を通って前記チャンバーに入る空気が、前記薬物搭載空気が前記吸入口と前記吐出口との間を流れる際に、前記薬物搭載空気と相互作用する、前記チャンバー内でのサイクロンを形成するように構成される、バイパス空気入口と、を有するエアロゾル化装置を含む、粉末薬剤の吸入可能なエアロゾルを作り出すための吸入器であって、前記吸入口が前記チャンバーの縦軸(A−A)と同軸であり、前記バイパス空気入口が、前記清浄空気が前記内側曲線状表面に対して接線方向に前記チャンバーに入り、かつ前記チャンバーの縦軸(A−A)の周りに前記サイクロンを形成し、前記薬物搭載空気が前記縦軸(A−A)に沿って前記吸入口と前記吐出口との間を流れるように、前記チャンバーの内側曲線状表面内に形成され、前記吸入器が基部を備え、前記吸入口が前記基部内に形成され、接線方向の前記バイパス空気入口が、前記基部に隣接した前記チャンバーの壁内に位置し、かつ弓形形状の流路から形成される、吸入器。
【請求項2】
前記チャンバーが、前記薬物搭載空気流が前記吸入口から前記吐出口へ流れる際に前記薬物搭載空気流にらせん状の経路をとらせるように、前記サイクロンが前記薬物搭載空気流と相互作用するように構成される、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記チャンバーが先細りになっている、請求項1または2に記載の吸入器。
【請求項4】
前記チャンバーが、前記吐出口から前記吸入口に向かって伸びる方向に先細りになっている、請求項3に記載の吸入器。
【請求項5】
前記チャンバーが、前記吸入口から前記吐出口に向かって伸びる方向に先細りになっている、請求項3に記載の吸入器。
【請求項6】
前記基部がメッシュ部分を含み、前記吸入口が前記メッシュ内の開口部によって形成される、請求項1乃至5のいずれかに記載の吸入器。
【請求項7】
前記吸入口が、前記基部内に少なくとも1つの開口部を備える、請求項1乃至6のいずれかに記載の吸入器。
【請求項8】
前記チャンバーが、前記基部に対向する前記チャンバーの他端にある1つの端壁を備え、前記吐出口が前記端壁内に形成される、請求項乃至のいずれかに記載の吸入器。
【請求項9】
前記端壁がメッシュを備え、前記吐出口が前記メッシュ内の開口部から形成される、請求項に記載の吸入器。
【請求項10】
前記チャンバーが、前記吸入口から離れる方向に、前記端壁を越えて伸びる部分を有する、請求項またはに記載の吸入器。
【請求項11】
前記部分が、前記端壁から離れて外向きに先細りになり、ディフューザを形成する、請求項10に記載の吸入器。
【請求項12】
前記基部が、接線方向の前記バイパス空気入口の側壁を形成している、請求項1乃至11のいずれかに記載の吸入器。
【請求項13】
清浄バイパス空気の前記チャンバー内への流れのための少なくとも2つのバイパス空気入口を備える、請求項乃至12のいずれかに記載の吸入器。
【請求項14】
前記チャンバーがマウスピースの中に形成される、請求項1乃至13のいずれかに記載の吸入器。
【請求項15】
前記チャンバーが前記マウスピースの中に受け入れられる別個の構成要素である、請求項14に記載の吸入器。
【請求項16】
前記別個の構成要素が前記マウスピースから分離可能である、請求項15に記載の吸入器。
【請求項17】
前記チャンバーの吐出口が別個のマウスピースに接続される、請求項1乃至13のいずれかに記載の吸入器。
【請求項18】
1用量の薬剤を含むブリスターの蓋に穴をあけ、使用者が前記チャンバーを通して前記用量を吸入することを可能にするように動作可能なブリスター貫通要素を備える、請求項1乃至17のいずれかに記載の吸入器。
【請求項19】
前記ブリスター貫通部材が、表面からまっすぐ伸びた貫通要素と、各々の貫通要素の近くにある前記表面から前記ブリスター貫通部材を通って伸びる清浄空気吸入流路および薬物搭載空気吐出流路と、を備え、前記貫通要素が、前記ブリスター内に清浄空気吸入開口部および薬物搭載空気吐出開口部を設けるように動作可能であり、それによって、使用者が吸入するときに、清浄空気が前記ブリスター貫通部材内の1つまたは複数の前記清浄空気吸入流路および前記ブリスター内の1つまたは複数の前記清浄空気吸入開口部を通って流れ、前記ブリスターに含まれる前記用量を取り込み、前記薬物搭載空気が前記ブリスター内の薬物搭載空気吐出開口部および前記ブリスター貫通部材内の薬物搭載空気吐出流路を通って前記ブリスターの外に流れる、請求項18に記載の吸入器。
【請求項20】
前記薬物搭載空気流出路が前記チャンバーの吸入口と連通している、請求項19に記載の吸入器。
【請求項21】
前記清浄空気吸入開口部が、前記薬物搭載空気吐出開口部を囲む複数の清浄空気吸入開口部を備える、請求項19または20に記載の吸入器。
【請求項22】
前記清浄空気吸入開口部が、前記薬物搭載空気吐出開口部の周りに対称に配置される、請求項21に記載の吸入器。
【請求項23】
複数のブリスターを有するストリップを受け入れるように構成されたハウジングであって、各々のブリスターが穿刺可能な蓋を有し、かつ使用者による吸入のための1用量の薬剤を含む、ハウジングと、前記ストリップを駆動させて各々のブリスターを順次動かして前記ブリスター貫通部材と一直線にするように動作可能な手段と、前記ブリスター貫通部材に一直線になった前記ブリスターの蓋に穴をあけさせるように動作可能な作動手段と、を備える、請求項18乃至22のいずれかに記載の吸入器。
【請求項24】
穿刺可能な蓋を有し、かつ使用者による吸入のための1用量の薬剤を含む単一のブリスターを受け入れるように構成されたハウジングと、前記ブリスター貫通部材に前記ハウジングに受け入れられている前記ブリスターの蓋に穴をあけさせるように動作可能な作動手段と、を備える、請求項18乃至22のいずれかに記載の吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸入器に関し、特に乾燥粉末薬剤を肺へ送達するための吸入器に関する。
【背景技術】
【0002】
吸入装置を用いる薬剤の経口または経鼻送達は、特に魅力的な薬物投与法である。なぜならば、これらの装置は患者が目立たずに人前で使用することが比較的容易であるからである。気道および他の呼吸器の問題である局所疾患を治療するための薬剤を送達するのと同様に、これらの装置はより最近では、肺を経由して薬物を血流に送達し、それによって皮下注射の必要性を避けるために用いられるようになってきた。
【0003】
微粒子形状の薬剤のために、吸入可能なエアロゾルの供給には繰り返し可能な微小粒子の用量を作り出すことができる吸入器を要する。薬剤の粒子が肺の深部領域(肺胞)に到達し、血流中に吸収されるためには、粒子が約1〜3ミクロンの範囲の有効な直径を有さなければならない。この範囲の粒径を含む発散されるエアロゾルの部分は「細粒分(FPF)」として知られている。粒子が5ミクロンより大きい場合、これらの粒子は肺深部に到達する前に呼吸細気管支中に捕捉されやすいので、吸入気流によって肺の深部まで送達されないだろう。例えば、10ミクロン程度の粒子は、気管より先へ進みづらく、50ミクロン程度の粒子は吸入される際に、咽喉の後ろに堆積する傾向がある。さらに、粒子が有効な直径である1ミクロンよりも小さい場合、粒子は吸入気流とともに肺から排出されるのに十分なほど小さいので、肺の中に吸収されないだろう。
【0004】
乾燥粉末吸入器の効率は、細粒分量(FPD)またはFPFの点から測定することができる。FPDは、定義された限界より小さい空気力学的粒径で存在する、作動の後に装置から発散される活性剤の合計質量である。上述の理由のため、3ミクロン未満の直径を有する粒子が好ましいが、この限界は一般的に、5ミクロンとみなされる。FPDは、2段階インピンジャー(TSI)、多段階インピンジャー(MSI)、アンダーセンカスケードインパクター(ACI)または次世代インパクター(NGI)などのインパクターまたはインピンジャーを使用して測定される。各々のインパクターまたはインピンジャーは、各々の段階の所定の空気力学的粒径収集中断点を有する。FPD値は、有効な定量湿式化学アッセイによって定量化される段階ごとの活性剤の回収を解釈することによって得られ、この場合単なる段階の中断を使用してFPDを決定するか、あるいは段階ごとの堆積のより複雑な数学的内挿法を使用する。
【0005】
FPFは、作動の後に装置から発散される活性剤の合計質量であって、装置の内部または表面上に堆積した粉末を含まない発散量または送達量で割ったFPDとして通常定義される。しかしながら、FPFはまた、問題の吸入装置によって示される計測形中に存在する活性剤の合計質量である計測量で割ったFPDとしても定義されうる。例えば計測量は、ホイルブリスター中に存在する活性剤の質量であってよい。
【0006】
従来の吸入器では、発散量(患者の気道に入る薬剤の量)は、吸入器から排出される量の約80%〜90%である。しかしながら、FPFは、発散量の約50%にすぎず、既知の吸入器の呼吸可能な量の変動は±20〜30%となりうる。このような変動は、一般的に、喘息薬などの場合には容認できる。しかしながら、全身性の小分子薬物、タンパク質薬物およびペプチド薬物の肺送達またはインスリン、成長ホルモンもしくはモルヒネなどの薬物の投与については、呼吸可能な量のこの量の変動は容認できないということが理解されよう。これは、患者が、吸入器を使用する度に、この種の薬物を意図した同じ量受け入れ、予測可能な一貫した治療効果が得られるのを保証することが相当重要であるためというだけでなく、呼吸可能な量が比較的低いことは、高価な場合がある薬物の著しい浪費を意味するためである。
【0007】
それゆえ、全身性の肺送達については、吸入可能なエアロゾルの供給には、薬物を高効率で、正確かつ繰り返し可能な方法で送達し、患者にとってのあらゆる潜在的に有害な副作用も最小化するより予測可能で一貫した治療効果を導くのはもちろん、治療量を送達するのに必要とされる高価な薬物の量を減らすことができる吸入器が必要とされる。
【0008】
肺に効率的に吸収されるように正確に調節した粒径範囲で粉末薬剤を確実に送達させるために、粒子が患者の気道の中に入る前に装置を流れる際に、粒子を脱凝集する(deagglomerate)ことが必要である。
【0009】
例えば、粒子に実質的な速度勾配を与えることにより、粒子間にせん断力を発生させることによって、薬剤粒子を分離することが知られている。これを達成するための1つの方法は、吸入器に、軸方向の出口および接線方向の入口を備えたサイクロンチャンバーを供給することである。薬物は、気流に取り込まれ、接線方向の入口を通ってサイクロンチャンバーに入ることが可能になる。粒子が気流中、チャンバーを回る際に粒子間で発生する高いせん断力は、粒子が出口を通ってチャンバーの外へ出る前に粒子の凝集を破壊するのに十分である。サイクロンチャンバーを備える吸入器は、出願人自身の先願である特許文献1から既知である。粉末吸入薬剤の粒子または凝集体を粉砕するための装置も特許文献2から既知である。この文献に開示されている装置は、吸入口および吐出口を備えた回転対称な渦チャンバーを含む。吸入口は、薬物搭載空気を渦チャンバー内のチャンバーの接線または接線に近い方向に向ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第1191966号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0477222号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、薬剤が患者の肺に送達され、吸収されるのに十分小さい、有効な粒径を持つ粉末薬剤の吸入可能なエアロゾルを確かに発生させることができる吸入器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、実質的に円形の横断面を持つチャンバーと、それらの間のチャンバーを通して薬物搭載空気を流すためのチャンバーの対向端にある吸入口および吐出口と、清浄空気をチャンバーの中に流すためのバイパス空気入口とを備えるエアロゾル化装置を含み、前記バイパス空気入口が、前記入口を通ってチャンバーに入る空気がチャンバー内でサイクロンを形成し、吸入口と吐出口との間を流れる薬物搭載空気と相互作用するように形成される、粉末薬剤の吸入可能なエアロゾルを作り出すための吸入器が提供される。
【0013】
好ましくは、バイパス空気入口は、空気がチャンバーの壁に実質的に接した前記入口を通ってチャンバーに入るように配置される。
【0014】
好ましい実施形態では、チャンバーは、サイクロンが薬物搭載空気流と相互作用して、薬物搭載空気流が吸入口から吐出口に流れる際にらせん状の経路をとるようにするように形成される。
【0015】
バイパス空気流入入口を備える吸入器を提供することは既知であるが、この入口または、より具体的にはこの入口を通って装置の中に流れるバイパス空気の唯一の目的は、装置内の全体的な圧力降下を減少させ、患者が吸入するのをより容易にすることである。バイパス空気入口は、バイパス気流と薬物搭載空気の2つの気流が出会ったときに、バイパス気流が薬物搭載空気と同じ方向に流れて、結果としてバイパス空気と薬物搭載空気の間の相互作用が限られるようになるように配置される。
【0016】
一実施形態では、チャンバーは先細りになっている。しかしながら、チャンバーの壁はまっすぐ、すなわちチャンバーの縦軸に平行であってもよい。
【0017】
チャンバーは、吐出口から吸入口に向かって伸びる方向に先細りになっていてよい。しかしながら、チャンバーは、反対方向に先細りになっていてもよい。
【0018】
本発明の吸入器は、好ましくは、基部を備え、吸入口が前記基部に形成される。
【0019】
基部中にメッシュを形成することができ、吸入口はこのメッシュの開口部から形成することができる。メッシュは、基部中の開口内に取り付けられるまたは挿入される別の構成要素中に形成することができ、あるいは基部中に一体的に形成ことができる。
【0020】
吸入口は、チャンバーの縦軸と同軸とすることができる。あるいは、吸入口は、チャンバーの縦軸から中心を外してよい。
【0021】
吸入口は、前記基部中に少なくとも1つの開口部を備えるのが好都合である。
【0022】
前記または各々の開口部は、チャンバーの縦軸に対してある角度に伸びていてよい。しかしながら、好ましい実施形態では、各々の開口部の縦軸は、チャンバーの縦軸と平行または同軸である。
【0023】
好ましくは、チャンバーは、チャンバーの他端にある基部に対向する1つの端壁を備え、吐出口が前記端壁に形成される。
【0024】
端壁は、メッシュを備えてよく、吐出口はメッシュの開口部から形成されうる。
【0025】
マウスピースは、吸入口から離れる方向に、端壁を越えて伸びる部分を備えてよい。この部分は、前記端壁から離れて外向きに先細りになり、ディフューザを形成してもよい。
【0026】
好ましい実施形態では、バイパス空気入口は、チャンバーの基部に位置する。基部は、バイパス空気入口の側壁を形成するのが好都合である。
【0027】
他の実施形態では、バイパス空気入口は端壁により近い基部から間があいている。一実施形態では、バイパス空気入口は端壁と隣接して、部分的に端壁から形成されうる。
【0028】
接線方向のバイパス空気入口は、弓状の形態の流路から形成されて良い。
【0029】
他の実施形態では、2以上の接線方向のバイパス空気入口があってもよい。好ましくは、チャンバーの直径方向の対向する側に少なくとも2つの入口がある。
【0030】
好ましい実施形態では、チャンバーはマウスピースの中に形成される。しかしながら、他の実施形態では、チャンバーの吐出口は、分離したマウスピースと接続されている。チャンバーがマウスピースの中に形成される場合、チャンバーはマウスピースの中の別の構成要素である。この構成要素は、マウスピースから分離することができるだろう。
【0031】
好ましくは、吸入器は、1用量の薬剤を含むブリスターの蓋に穴をあけ、使用者が前記チャンバーを通して前記用量を吸入できるようにすることが可能なブリスター貫通要素を備える。
【0032】
一実施形態では、ブリスター貫通部材は、表面からまっすぐ伸びた貫通要素と、各々の貫通要素の近くにある前記表面からブリスター貫通部材を通って伸びる清浄空気吸入流路および薬物搭載空気吐出流路とを含み、前記貫通要素はブリスター内の清浄空気吸入開口部および薬物搭載空気吐出開口部に穴をあけ、使用者が吸入したときに、清浄空気がブリスター貫通部材内の清浄空気吸入流路およびブリスター内の清浄空気吸入開口部を通って流れて、ブリスターに含まれる用量を取り込み、薬物搭載空気がブリスター内の薬物搭載空気吐出開口部およびブリスター貫通部材内の薬物搭載空気吐出流路を通ってブリスターの外に流れるようにすることができる。
【0033】
好ましくは、薬物搭載空気流出路は、チャンバーの吸入口と連通している。
【0034】
好ましい一実施形態では、清浄空気吸入開口部は、薬物搭載空気吐出開口部を囲む複数の周辺の清浄空気吸入開口部を備える。清浄空気吸入開口部は、薬物搭載空気吐出開口部の周りに対称に配置されるのが好都合である。
【0035】
一実施形態では、吸入器はさらに、複数のブリスターを備えるストリップを受け入れるよう構成され、各々のブリスターが穿刺可能な蓋を備え、かつ、使用者が吸入するための1用量の薬剤を含むハウジングと、ストリップを駆動させて各々のブリスターを順次動かしてブリスター貫通部材と一直線にすることができる手段と、ブリスター貫通部材が前記一直線になったブリスターの蓋に穴をあけるようにすることができる作動手段とを備える。
【0036】
他の実施形態では、吸入器は穿刺可能な蓋を備え、かつ、使用者が吸入するための1用量の薬剤を含む単一のブリスターを受け入れるよう構成されたハウジングと、ブリスター貫通部材がハウジングに受け入れられている前記ブリスターの蓋に穴をあけるようにすることができる作動手段とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施形態による吸入装置の一部の単純化した横断面側面図である。
図2】線X−Xに沿った、図1に示す装置の横断面図である。
図3図1に示す吸入器のブリスター貫通ヘッドの斜視図である。
図4図1または図2に示す吸入装置の、マウスピースなしのサイクロンチャンバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
ここで、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、単なる例として説明する。
【0039】
ここで、図面を参照すると、図1には、チャンバー壁3a、薬物搭載空気吸入口4、吐出口5およびバイパス空気入口6を備えるチャンバー3を画定するマウスピース2を備える、本発明の実施形態による吸入装置の部分1が示されている。図1の線X−Xに沿った横断面図を図2に示す。
【0040】
「バイパス」という用語は、これらの入口6を通って入る空気が清浄空気、すなわち、中に薬物を取り込んでいない、装置1の外側からの空気であることを意味する。
【0041】
装置は、マウスピース2の下端に伸び、チャンバー3を閉じる基部7を含む。薬物搭載空気吸入口4は基部7中に形成され、基部7を貫いて伸びている。薬物搭載空気吸入口4は縦軸から中心が外れているまたは間があいていてもよいということが理解されるだろうが、図示した実施形態では、薬物搭載空気吸入口4はチャンバー3の縦軸(図1中A−A)と同軸である。好ましい実施形態では、薬物搭載空気吸入口4はチャンバー3の縦軸と平行であるが、薬物搭載空気吸入口4の軸は、チャンバー3の縦軸に対して曲がっていてもよい。基部7が、チャンバー3の縦軸の周りに配置された多数の薬物搭載空気吸入口4を備えることも可能である。
【0042】
基部7はマウスピース2と一体的に形成することができるが、好ましくは、組み立ての間にマウスピース2に取り付けられる別の構成要素として形成される。マウスピース2および基部7は、チャンバー3の内側の洗浄を容易にするために、使用者によって互いに分離できるようにすることもできる。
【0043】
基部7のないマウスピース2の底面の斜視図を示す、図2および図4からもっとも明らかに分かるように、バイパス空気入口6はマウスピース2の側面に形成されるチャネルであり、基部7は最下部壁を形成し、チャンバーの下端を取り囲む(薬物搭載空気吸入口4を除いて)が、基部7はまたチャネル6の下表面を形成し、チャネル6が各々の端でのみ開いているようにする。図示した実施形態では、清浄空気をチャンバー3の中へ向けるための2つのバイパス空気入口6がある。しかしながら、1つだけまたはいくつかのバイパス空気入口6があってよい。バイパス空気入口6を、チャンバー3に正確に接するのではなく、チャンバー3から中心が外れているように配置した結果として、所望の空気流を得られることも理解されるだろうが、バイパス空気入口6は好ましくはチャンバー3に接している。
【0044】
バイパス空気入口6は直線状であってもよいが、図示した実施形態では、バイパス空気入口6は弓状の形態をしている。バイパス空気入口6は、横断面が円形であり、かつ/またはいずれかの方向の長さに沿って先細りであってもよい。
【0045】
バイパス空気入口6は接線方向に配置されて、バイパス空気をチャンバー3内で実質的に接線方向に向けているので、これらの入口6を通ってチャンバー3の中に流れる清浄空気は、チャンバーを回ってサイクロンまたは渦を形成する(図1中、矢印「B」によって示されるように)。
【0046】
吐出口5はチャンバー3の端に伸びるメッシュの形状とすることができ、ここを通って、取り込まれた薬物がチャンバー3から出て患者の気道へ流れるだろう。好ましくは、マウスピース2は、吐出口5を越えて伸び、マウスピース2の先端縁2aに向かって徐々に増加する横断面積を持つ、フローディフューザ5aを組み込む。この領域のディフューザ5aの壁2bは曲線状の形態をしていてよい。
【0047】
チャンバー3は直線状である、すなわちチャンバー3の内側曲線状表面3aが、チャンバー3の縦軸と平行に伸びていてよい。しかしながら、他の実施形態では、チャンバー3はいずれかの方向に先細りであってよい。特に、チャンバー3は、薬物搭載空気吸入口4から吐出口5に向かって伸びるにつれて広がってよい。
【0048】
チャンバー3の直径および高さが、エアロゾル化性能に影響することが示された。好ましくは、チャンバー3の直径は15mmと25mmの間で、高さは20mm以上である。しかしながら、装置を便利なボリュームにおさめることができるようにするため、あまり治療を要せずに性能の十分な向上を得るためにより小さな直径および高さも用いられてきた。これらの場合、9.5mmまでの直径および5.5mmまでの高さが、サイクロンのバイパス空気なしの装置に対してエアロゾル化において著しい向上を与えることが示された。
【0049】
驚いたことに、エアロゾル化性能は、性能にほとんど影響しない、特定の治療/患者群に適する装置の抵抗を修正するために好都合に変えることができる空気入口6の横断面積にあまり感受性がないが、直径3.7mm、高さ5.6mmの空気入口6がよく働くことが分かってきた。
【0050】
貫通装置8は、マウスピース2の下の基部7の反対側に配置され、基部7から伸びる、または基部7に接続されてもよい。図3からもっとも明らかに分かるように、貫通装置8はそれらに依存する貫通要素10を備える貫通ヘッド9を含む。貫通ヘッド9は、中心の薬物搭載空気吐出流路12のまわりに間をあけて清浄空気吸入流路11を備える(図3参照)。一実施形態では、吸入器1は、ブリスター貫通要素10の下に位置する、1用量の薬剤を含む単一のブリスター13を受け入れるように構成される。ブリスター貫通要素10は、上記ブリスター13の蓋13aに穴をあけ、患者がマウスピース2を通して吸入したときに、清浄空気が空気吸入流路11を通してブリスター13に入り(図1中、矢印「C」の方向)、ブリスター13に含まれる用量を取り込むように構成される。次いで、薬物搭載空気は、中心の薬物搭載空気吐出流路12を通ってブリスター13の外に流れる(矢印「D」の方向)。薬物搭載空気吐出流路12は、チャンバー3の薬物搭載空気吸入口4に接続されており、薬物搭載空気はチャンバー3の中を軸方向に流れる(矢印「E」によって示す方向)。同時に、清浄バイパス空気が、接線方向のバイパス空気入口6を通ってチャンバー3に入り、チャンバー3を回って(矢印「B」の方向)、渦またはサイクロンを形成する。
【0051】
図3から、空気吸入流路11および薬物吐出流路12は対称に配置されており、発散される薬物量は、吸入時のチャンバー軸まわりの吸入器の向きに依存しないことが理解されよう。ブリスター貫通要素10は、空気吸入流路11および薬物吐出流路12の上に伸びるまたは橋をかける。薬物吐出流路12は、流面積を増加させ、可能な限り多くの量を気流に取り込み、ブリスター13から取り除くのを保証するため、空気吸入流路の総合計面積よりも大きくてよい。
【0052】
一度に1つのブリスター13のみを受け入れる単一用量装置について言及がなされているが、本発明は多用量乾燥粉末吸入器に等しく適用可能である。例えば、装置は、その長さに沿って間をあけた複数のブリスターを備えるストリップを受け入れるよう構成されるハウジングと、ストリップを駆動させて各々のブリスターを順次動かしてブリスター貫通部材と一直線にすることができる手段とを備えてよい。このような装置は、ブリスター貫通部材に一直線に並んだブリスターの蓋に穴をあけさせるアクチュエーターも備えてもよい。この種の装置は、例えば、国際公開WO05/037353として公表されている出願人自身の先願から既知である。
【0053】
サイクロンは、吸入口4と吐出口5の間で概して軸方向に流れる薬物搭載空気と相互作用し、薬物搭載空気流を吐出口5に向かってねじれさせる、またはらせん状の経路をとらせる。出願人によって、チャンバー3を回るバイパス空気から形成される渦の、チャンバー3の中を軸方向に流れる薬物搭載空気との相互作用が、吸入器の性能を顕著に向上させることが発見された。実験結果は、薬物搭載空気がチャンバー3を流れるときに加速され、経験がさらに粒子を脱凝集させて発散量の細粒分を向上させるせん断力および差別的速度を増加させることを示した。
【0054】
以下のグラフは、サイクロンバイパス空気発明装置と、バイパス空気と薬物搭載空気との間で限られた相互作用しかもたない、バイパス気流が薬物搭載空気と同じ方向に流れている別の同様の装置との、典型的な薬物および充填量でのエアロゾル化性能を比較している。
【表1】
【0055】
このグラフは、サイクロンバイパス装置で、細粒分の約200%の増加を示している。
【0056】
図示の実施形態では、チャンバー3はマウスピース2の中に供給されている。これには、使用者に送達するため、マウスピースの中に脱凝集した薬物を運ぶための追加の気流がないので、装置と薬物量の間の接触面積が最小化され、装置が小型であるという利点がある。しかしながら、マウスピース2がチャンバー3と分離していてもよく、その場合、さらなる流路がチャンバー3の吐出口5から、分離したマウスピースの吸入口まで伸びるということが理解されよう。チャンバー3はマウスピース2に挿入される別の構成要素であってもよく、そこから取り外しができてもよい。図4に分離したチャンバーユニットが示されており、これは図1および図2に示されるように、マウスピース2の中に位置する。
【0057】
以下の特許請求の範囲の用語の範囲に入る、本発明の多くの修正形態および変形形態は、当業者にとって自明であり、前述の詳細な説明は、単なる本発明の好ましい実施形態の説明とみなされるべきである。
図1
図2
図3
図4