【実施例】
【0059】
以下に記載される実施例は、本発明のビタミンD化合物が、眼内圧(IOP)を下げ、それに罹った対象において高眼圧(OHT)を下げることができることを示す。これらの実施例は、緑内障のような障害を治療する及び予防するためのビタミンD化合物のさらなる開発のための基礎を提供する。ビタミンDが内因的に合成される「マジック丸薬」であり、又は「サンシャイン」ビタミンが多数の疾患を予防し、治療することができることを考えると、高眼圧症及び緑内障の治療へのその使用はそのほかの肯定的な、有益な副作用を提供してもよい。
【0060】
(実施例1)
【0061】
1,25(OH)
2D
3、AGR及び2MDによるOHTの治療
【0062】
以下の実施例は、霊長類の眼内圧を下げることによってOHTを下げるのに使用される化合物と方法を開示する。
【0063】
(材料及び方法)
【0064】
1,25−ジヒドロキシビタミンD
3(1,25(OH)
2D
3)、AGR及び2MDの化合物は、純度≧98%だった。
【0065】
(動物、麻酔)
【0066】
IOPと局所点眼投与のために、いずれかの性別の体重3〜7kgの正常眼圧成熟カニクイザル(Macaca fascicularis)をケタミンHCl(3〜25mg/kg、1〜10mg/kgで補完した)のi.m.によって麻酔した。サルはすべて測定時のスリットランプ生体顕微鏡によって眼の異常はなかった。サルはウィスコンシン−マジソン大学の霊長類センターから提供された。実験はすべて、眼科及び視覚の研究における動物の使用に関するARVOの声明に従って行った。
【0067】
(処理及びIOPの測定)
【0068】
涙液層の指標としてHALF−AND−HALF(商標)のクリーム溶液(ボーデン)を用いた小型化したゴールドマン圧平眼圧計によって、サルを頭ホルダーに入れて寝かし、眼を心臓より4〜8cm上に位置させて眼内圧(IOP)を測定した。各プロトコールの最初のIOP測定の前にスリットランプですべてのサルを調べた。各眼についてIOPを2又は3回測定して、ベースラインとして平均した。
【0069】
ケタミン(KETAJECT(商標)、ミズーリ州、セントジョセフのフェニックス・ファーマシューティカル、i.m.にて3〜25mg/kg、必要に応じて1〜10mg/kgで補完した)の麻酔下で、普通7:30〜9amの間にベースラインIOPを測定した(5分離して2回読み取り;IOPのベースラインの測定値が互いの2〜3mmHgの範囲内でなければ、5分後に3回目の読み取りを行った)。ベースラインIOPは可能であれば、少なくとも15mmHgであった。ベースラインの血液試料は、大腿動脈又は静脈、又は時には上腕静脈(1〜2mL)から取った。これを凝固させ、遠心して(3000rpm、10分間、Demon/IEC NH−SII遠心分離機)、血清を取り出し、1週間以内で−20℃にて凍結した。腕又は脚に巻いたカフからのDinamapモニターによってベースラインの収縮期、拡張期及び平均の動脈圧、並びに心拍数を記録した。
【0070】
ベースラインの測定後、眼を上に向けてサルを仰臥させ、瞼を開いたままにした。5μLの試験物質又はビヒクルの液滴を相対する眼に送達した。瞼を少なくとも30秒間開いたままにし、さらに30秒間、眼を上の位置に維持させた。次いでサルをケージに戻し、覚醒させた。午後、朝の処理から少なくとも6時間後、別の処理を投与した。第2日目に午前と午後、投与を繰り返した。
【0071】
5回目の処理の前、第3日目に、ベースラインのIOP、生体顕微鏡法及びMAPを決定した。予備試験は、これらの処理の後効果は認められるが、単一の処理後では認められないことを示した。5回目の投与に続いて、1、2、3、4、5、6、7、8、12(できれば)、24時間及び時に48時間にてIOPを測定した。生体顕微鏡法は1、3、6、24時間及び時に48時間にて実施した。3日目のMAP(一部のプロトコール)は、1、2、3、4、5、6、7、8、24時間及び時にできれば48時間にて測定した。5回目の処理の後、血液試料を6、24時間及び時には48時間にて採取した。一部のプロトコールについては、各処理の前にもIOPを測定し、朝の処理の前にMAPを測定し、午後の処理の前に血液を採取した。その後のスクリーニングのプロトコールはMAP及び採血を含まず、ベースライン及び5回目の処理の前、と5回目の処理後1〜6時間にIOPを測定するだけである。
【0072】
(データの解析)
【0073】
応答の信頼できる定量的な、統計的に試験できる推定値を得るために、任意の薬剤用量についておよそ8〜10回の実験が必要とされることを我々は経験的に見つけ出した。本式の試料サイズの算出は、以下で記載されるようにこの印象を確証している。一般的に言えば、我々は、ベースライン値(非薬剤について調整される、又は非刺激に関連するベースラインの浮動)の>25%である平均の生理的応答及び>1.5%の平均応答のSDを同定したかった。試料サイズの算出には以下の標準的な方程式を用いた:N=2(Zα+Zβ)
2/δ/σ)
2、式中、それぞれ片側及び両側の5%の有意性についてZα=1.645又は1.960、それぞれ80%及び90%の検出力についてZβ=0.84又は1.282、パラメータの測定におけるδは集団の標準偏差であり、σは差(すなわち、応答)である(δとσは同じ単位を有さなければならない)。その方程式から、80%の検出力で片側5%の有意レベルでの対応のある検定で1.5標準偏差の差異を検出するには5.5回の実験が必要とされる一方で、90%の検出力で両側5%の有意レベルでのそのような差異を検出するには9.3回の実験を必要とすることが分かった。
【0074】
データは平均値±s.e.m.で表す。1.0に比べた比又は0.0に比べた差異についての両側性の対応のあるt検定によって有意性を判定した。
【0075】
(結果)
【0076】
(眼圧降下剤としてのビタミンD化合物(
図1))
【0077】
IOPに対するプロピレングリコールビヒクルのみの効果を処理していない反対側の眼にて昼間のIOPと比較した。最初の処理に先立って、処理眼と対照眼のベースラインIOPはそれぞれ18.8±1.2mmHgと19.3±1.3mmHgであった(n=8)。5回目の処理に先立って、ベースラインと比較したいずれかの眼にIOPの差異はなかった。5回目の処理後、双方の眼で次の8時間にわたってIOPは4〜15%徐々に低下した。処理眼のIOPはほぼすべての時点で一貫しているが、有意ではなく対照眼より低かった。IOPの昼間の低下は以前報告されている[Gabelt, 1994]。どの時点においても眼の炎症はなかった。
【0078】
(1,25−ジヒドロキシビタミンD
3(
図2Aと2B))
【0079】
最初の処理に先立って、処理眼と対照眼のベースラインIOPはそれぞれ18.9±0.7mmHgと18.5±0.9mmHgであった(n=8)。5回目の処理に先立って、処理眼と対照眼の双方におけるIOPはおよそ3〜4mmHg(約17%、p<0.05、n=8)ベースラインより低かった。5回目の処理後、1〜4時間、さらに1〜2mmHg(約20〜30%の全体的な低下、p<0.02)低下し続けたが、その後24〜48時間でベースラインに徐々に戻った。処理眼のIOPはほぼすべての時点で一貫しているが、有意ではなく対照眼より低かった。どの時点においても眼の炎症はなかった。
【0080】
(AGR(
図3))
【0081】
最初の処理に先立って、処理眼と対照眼のベースラインIOPはそれぞれ16.5±1.3mmHgと15.9±1.6mmHgであった(n=4)。5回目の処理に先立って、処理眼と対照眼の双方においてIOPはベースラインと差異はなかった。5回目の処理後、3時間の時点を除いて、IOPは処理眼において有意に低下しなかった。対照眼でのIOPに変化はなく、どの時点でも眼間に差異はなかった。どの時点においても眼の炎症はなかった。
【0082】
(2MD(
図4))
【0083】
最初の処理に先立って、処理眼と対照眼のベースラインIOPはそれぞれ18.9±1.0mmHgと18.8±0.8mmHgであった(n=8)。5回目の処理に先立って、処理眼と対照眼の双方においてIOPはベースラインと差異はなかった。5回目の処理後、ビヒクルのみで見られた昼間の低下に類似して次の8時間かけてIOPは徐々に低下した。6時間と7時間で小さな薬剤効果があった。どの時点においても眼の炎症はなかった。
【0084】
(ビタミンD化合物の眼局所適用後の血清Ca
2+レベル)
【0085】
処理後血清Ca
2+レベルの有意な上昇がなかったということ(
図5〜8)は、ビタミンD化合物がおそらく全身性の循環には入らないことを示している。
【0086】
(考察)
【0087】
サルにおいてプロピレングリコール(ビヒクル)はIOPを変化させなかった。同一用量で適用されたビタミンD
3化合物:5回の単眼局所処理(1日当たり10μgで2回局所処理)は、化合物の構造(1,25(OH)
2D
3>2MD>AGR)によって眼の降圧効果を示した。さらに強い応答(40%までのIOPの低下)は1,25(OH)
2D
3について見られた。IOPの低下は両側性であり、又は一方の眼の処理は未知のメカニズムによって反対側の対側性の眼におけるIOPの低下を引き起こす。
【0088】
片側性の局所投与1,25(OH)
2D
3に続く両側性のIOPを低下する応答は、全身性の吸収又はサルが眼をこすることによる対側性の眼への移動のためであってもよい。投与された体積は小さく(5μL)ても1,25(OH)
2D
3の用量は非常に高いので、全身性の吸収による移動は可能である。IOP実験が行われている間、この投与に続く全時間、サルは麻酔されていたので5回目の投与後の効果を説明できないが、こすることによってサルが物質を反対の眼に移すことも可能である。いずれの化合物の投与も5回の投与の後、血清Ca
2+レベルが有意に上昇しなかったという事実(
図6〜8)は、ビタミンD
3化合物が体系に入ることに反論する。ビタミンD
3化合物は脂溶性が高いので、能血管関門を貫通する可能性があり、CNSを介したそのほかの幾つかの化合物で提案されているように[Gabelt, 1994]、未だ特定されていない中枢のメカニズムによってIOPの効果に介在する可能性がある。別の可能性は、眼の中での求心性から遠心性のメカニズムである。さらに低い用量の1,25(OH)
2D
3を調べることがこれらの可能性を解明するのに役立ってもよい。
【0089】
眼内圧に対する局所投与されたβ−遮断剤の対側性の効果は、1,636人の対象を伴った高眼圧治療試験(OHTS)においてさらに確認された。局所適用されたβ−遮断剤の対側性の効果のメカニズムに関する最も広く受け入れられている理論は、主として鼻涙粘膜を介したβ−遮断剤の全身性の吸収が結果的に、血流を介した対側性の眼へのβ−遮断剤の移動を生じるというものである。或いは、全身性の吸収が結果的に、対側性の眼における眼内圧に対する中枢が介在する効果を生じてもよい。対側性の効果の大きさと最も強く相関する因子は、処理眼におけるIOP低下の大きさである。治療効果が大きければ大きいほど、対側性の眼におけるIOPの低下も大きい。従って、対側性の眼を「対照」として利用すると、治療効果を過少評価する可能性がある。
【0090】
2番目に最も影響を及ぼす因子は対側性の眼におけるベースラインIOPであった。対側性の眼のベースラインIOPが高ければ高いほど対側性の眼におけるIOPの低下は大きく、このことは再び、対側性の眼を「対照」として利用すると、結果的に治療効果の過少評価を生じることになる[Piltz, 2000]。試験眼に入れられた薬物による未処理眼の汚染も示唆されている。あまり広く保持されてはいない別の仮説は、一方の眼の眼内圧の変化が結果的に隣の眼において反射的な眼内圧の変化を生じる同感性眼内反応である[Piltz, 2000]。
【0091】
同じ場合では、対側性のIOPの応答は、部分的に中枢神経系における効果が介在する。放射性標識した8−ヒドロキシ−2−ジプロピルアミノテトラリンの局所投与で示されたように、対側性の眼に対する全身性循環を介した薬剤の再分布は最小であり、それは、対側性の眼圧降下反応の理由としての薬剤の再分布に反論する[Chidlow, 1999]。7−ヒドロキシ−2−ジプロピルアミノテトラリン(7−OH−DPAT)、ドーパミンD
3嗜好性受容体作動薬の局所、片側性の適用は、用量依存性に両側性に眼内圧(IOP)を下げた。7−OH−DPATのD
3受容体が介在する作用の主な部位は、ウサギの毛様体における節後交感神経末端に位置する。末梢交感神経系の活性の抑制は、7−OH−DPATによる房水の流れの抑制に役割を担っている[Chu, 2000]。
【0092】
対側性の応答はまた、緑内障患者の治療における選択的レーザー線維柱帯形成術の後にも認められた。
【0093】
(実施例2)
【0094】
ビタミンD化合物による処理に続くIOPの低下の測定
【0095】
サルの処理及び眼内圧(IOP)の測定
【0096】
いずれかの性別の成熟カニクイザル(Macaca fascicularis)をケタミンHCl(最初10mg/kg、5mg/kgで補完)の筋肉内注射で麻酔した。涙液層の指標として用いたクリームと共にゴールドマン圧平眼圧計[Kaufman, 1980]によってベースラインの予備処理IOPを測定した[Croft, 1997]。2つのベースラインIOP測定を5分離して取った。次いで、プロピレングリコール中の1,25−ジヒドロキシビタミンD
3(1,25(OH)
2D
3)(0.1〜5μg)を一方の眼に、ビヒクル(プロピレングリコール)を反対の眼に1日2回、5回の処理についてサルを局所処理した。1分離して液滴を角膜の真ん中に投与する一方で、サルを仰臥位に置き、液滴後少なくとも30秒間その瞼を開いたままにした。午後の処理に先立ってIOPを測定した。第3日目に、午前の処理に先立ってIOPを測定した。5回目の処理の後、IOPを8時間にわたって1時間ごとに、及び12、24と48時間に測定した。最初のIOP測定に先立って、及び3時間と6時間(適宜24、48時間)にスリットランプの検査(生体顕微鏡的細胞又は炎症の存在を判定する)を行った。生体顕微鏡法を1回目と5回目の処理に先立って及び5回目の処理後3時間と6時間に行った。試験間でサルを少なくとも2週間休息させた。各処理群に8匹のサルがいた。
【0097】
図9B及び9Cは、サルの眼における5回の局所片側性適用の結果としての異なったビタミンD化合物の最大眼圧降下効果(IOP低下の比率として)の要約を示す。ほとんどの化合物は4匹のサルの群で調べた。群におけるサルの数が異なる場合、棒グラフの横に位置するボックスでそれを示す。一部の化合物は2つの棒グラフで表すが、1つは群で使用したサルすべてについてであり、第2の棒グラフは、元々低いIOPを有した又は実験中何かよくないものを有したサルを排除した後、表される(再び、群の数を棒グラフの横のボックスに示す)。
【0098】
(実施例3)
【0099】
房水の動態を変えることなく眼内圧を下げること
【0100】
(材料及び方法)
【0101】
動物実験はすべて、ウィスコンシン大学IACUC及び米国国立衛生研究所の指針、及び眼科と視覚の研究における動物の使用に関するARVO声明に従って実施した。
【0102】
(動物及び餌)
【0103】
オスのスプラーグ・ドーリー系の離乳したばかりのラットをハーラン(インディアナ州、インディアナポリス)から入手し、0.47%のカルシウム及び0.3%のリン(Pi)を含有し、1週間に3回、0.1mLの大豆油中の500μgのDL−α−トコフェロール、60μgのメナヂオン、及び40μgのβ−カロテンで補完した高度に精製したビタミンD欠乏食で維持した(AEK)[Suda, 1970]。ラットは、吊り下げ式のワイヤケージに収容し、12時間の明暗サイクルで維持した。ビタミンD欠乏食を食べさせたラットは白色光の部屋で維持し、紫外線とビタミンDの可能な供給源をすべて排除した。14週齢にて血清カルシウム濃度を測定するために尾から採血した。重度の低カルシウム血症を用いてビタミンD欠乏を確認した。
【0104】
(動物及び麻酔)
【0105】
IOP、局所液滴投与及び房水の流れの測定のために、いずれかの性別の体重3〜7kgの正常眼圧の成熟カニクイザルをケタミンHCl(3〜25mg/kg、1〜10mg/kgで補完)のi.m.で麻酔した。測定時、サルはすべて、スリットランプ生体顕微鏡法による眼の異常はなかった。房水流出率の測定については、ケタミンのi.m.誘導に続いて動物にナトリウムペントバルビタール(15mg/kg、5〜10mg/kgで補完)の静注を行った。
【0106】
(血清カルシウムの分析)
【0107】
ラットの血液試料は尾動脈から得た。サルの血液試料は大腿動脈から得た。25℃にて1100gで15分間、全血を遠心して血清を得た。血清カルシウム濃度は、3110原子吸光分光光度計(コネチカット州、ノーウォークのパーキンエルマー)を用いて、1g/LのLaCl
3(Halloran and DeLuca, 1981)で1:40に希釈した血清で測定した。
【0108】
(ラットのマイクロアレイ試験の実験設計)
【0109】
ビタミンD欠乏ラットに、エタノールに溶解した体重kg当たり730ngの1,25(OH)
2D
3又はエタノール(対照)を一気に静注した。ラットをイソフルオランで麻酔し、投与又はビヒクルの注射後、1、3、6、10及び24時間に断頭した。各時点の各群にラットは3匹いた。その際、血清カルシウム濃度の変化を判定するために採血を行った。各ラットについて、始めの15cmの腸(十二指腸)を取り出し、縦方向に細かく切り、スライドグラスにこすり付けた。2%のβ−メルカプトエタノール(PolyATractシステム、ウィスコンシン州、マジソンのプロメガ社)で補完したGTC抽出緩衝液と共に粘膜をバイアルに入れ、PowerGen700(ペンシルベニア州、ピッツバーグのフィッシャーサイエンティフィック)による高速でホモジネートし、液体窒素で瞬間凍結し、−80℃に保存した。実験は二つ組で行った。
【0110】
(ラットのmRNAの調製)
【0111】
各時点で、1,25(OH)
2D
3処理した3匹のラット又はビヒクル処理した3匹のラットのプールしたホモジネート粘膜からポリ(A
+)RNAを単離した。PolyATractシステム(ウィスコンシン州、マジソンのプロメガ社)を用いてmRNAを単離した。RNeasyキット(カリフォルニア州、チャッツワースのキアゲン)を用いてmRNAを精製した。アガロースゲル電気泳動、UV吸収分光光度計によって、及びアギレントバイオアナライザー2100(カリフォルニア州、パロアルトのアギレントテクノロジーズ)の使用によって、ポリ(A
+)RNAの質、整合性及び量を判定した。
【0112】
(マウスのマイクロアレイ試験のための実験設計とRNAの調製)
【0113】
マウス胎児の一次頭蓋冠細胞を単離し、記載されたように[Shevde, 2002]10%FBSを含有するαMEMで培養した。細胞を2×6ウエルのプレート(5×10
5個/ウエル)に入れ、1日目と4日目に培養液を交換して培養した。4日目に一方のプレートを1,25(OH)
2D
3(最終濃度10nM)で処理した。2番目のプレートは対照として用いた。1,25(OH)
2D
3と共にインキュベートして24時間後、細胞を回収して、Trizol試薬(カリフォルニア州、カールズバッドのインビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ)によって全RNAを単離した。RNeasyキット(カリフォルニア州、チャッツワースのキアゲン)を用いてmRNAをさらに精製した。アガロースゲル電気泳動及びUV吸収分光光度計によって全RNAの質、整合性及び量を評価した。実験は三つ組みで行った。
【0114】
(マイクロアレイのプローブの調製)
【0115】
すべてアフィメトリクス遺伝子発現マニュアル(カリフォルニア州、サンタクララのアフィメトリクス社)に従って、スーパースクリプトチョイスシステム(カリフォルニア州、カールズバッドのインビトロゲン・ライフ・テクノロジーズ)を用いて、3μgのラットのポリアデニル化ポリ(A
+)RNA又は13μgのマウスの全RNAから二本鎖cDNAを合成した。フェノール/クロロホルム抽出とエタノール沈殿に続いて、cDNA鋳型とバイオアレイハイイールドインビトロ転写キット(ニューヨーク州、フェーミンデールのエンゾライフサイエンシズ)を用いてビオチン標識の試験管内の転写反応を行った。1×断片化緩衝液(40mMのトリス酢酸塩、pH8.1、100mMの酢酸カリウム、30mMの酢酸マグネシウム)にて最終濃度0.7〜1.1μg/μLでcRNAを断片化した。断片化前(0.5kb以上)及び断片化後(35〜200塩基の断片)のcRNAのサイズをアガロースゲル電気泳動によって確認した。
【0116】
(マイクロアレイのハイブリッド形成手順)
【0117】
記載されたように(Kutuzova, 2004)、ウィスコンシン−マジソン大学のバイオテクノロジーセンターの遺伝子発現センターによってハイブリッド形成反応及び自動ハイブリッド形成手順が実施された。アフィメトリクステスト3アレイにて各プローブを調べ、cDNA及びcRNAの質をアレイ内のハウスキーピング遺伝子(ユビキチン、ラットのグリセアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素、β−アクチン及びヘキソキナーゼ)の3’/5’の比によって判定した。試料がアフィメトリクステスト3アレイの品質管理を通過すれば、それをアフィメトリクス高密度ラットオリゴヌクレオチドアレイ(ラットの発現アレイ230.2.0)又はマウスのアレイ(マウスゲノム430。2.0アレイ)とハイブリッド形成させた(アフィメトリクスのGeneChip(登録商標)発現解析技術マニュアル;http://wΛvw.affyme1rix.com/support/technical/manuayexpressionmanual.affx)。アフィメトリクスのマイクロアレイスイートソフトウエアのバージョン5.0(MAS5.0)を用いて発現データを解析した。ビヒクル処理したラットに対して1,25(OH)
2D
3処理したラットの各時点についての比較の表はエクセル(マイクロソフト)で生成した。各比較については、対照(ビヒクル処理)に比べた1,25(OH)
2D
3処理を計算し、及びアレイで示される各cDNAについては、比(たとえば、1,25(OH)
2D
3/対照)と処理された1,25(OH)
2D
3及びビヒクルについての強度の絶対的差異を計算した。マイクロアレイのデータは、以前記載されたように定量的リアルタイムPCR(Q−PCR)によって検証した(Kutuzova, 2004)。
【0118】
(サルの処理及び眼内圧(IOP)の測定)
【0119】
涙液層の指標として用いたクリームと共にゴールドマン圧平眼圧計[Kaufman, 1980]によってベースラインの予備処理IOPを測定した[Croft, 1997]。2つのベースラインIOP測定を5分離して取った。次いで、プロピレングリコール中の1,25−ジヒドロキシビタミンD
3(1,25(OH)
2D
3)(0.1〜5μg)を一方の眼に、ビヒクル(プロピレングリコール)を反対の眼に1日2回、5回の処理についてサルを局所処理した。1分離して液滴を角膜の真ん中に投与する一方で、サルを仰臥位に置き、液滴後少なくとも30秒間その瞼を開いたままにした。午後の処理に先立ってIOPを測定した。第3日目に、午前の処理に先立ってIOPを測定した。5回目の処理の後、IOPを8時間にわたって1時間ごとに、及び12、24と48時間に測定した。最初のIOP測定に先立って、及び3時間と6時間(適宜24、48時間)にスリットランプの検査(生体顕微鏡的細胞又は炎症の存在を判定する)を行った。試験間でサルを少なくとも2週間休息させた。各試験群に8匹のサルがいた。
【0120】
(房水形成試験)
【0121】
以前記載されたように眼科走査蛍光光度分析(フルオロトロンマスター、カリフォルニア州、マウンテンビューのオクマトリクス社)によって房水形成率を測定した。ビタミンD又はビヒクルによる4回目の処理(上記参照)の後少なくとも30分にフルオレセインの液滴を投与した。5回目の処理の前、3日目にIOPを測定し、生体顕微鏡法を実施した。5回目の処理後、処理の1時間後に始めて6回の二つ組走査を回収するまで1時間ごとに走査を行った。ベースラインの走査は、処理試験の前2週間以内と処理試験後少なくとも2週間に6時間得た。1.0からの差異の比率についての対応のあるt検定によって処理後の房水形成率を、前後のベースライン走査の平均及びビヒクル処理の眼と比べた。各処理群についてサルは8匹だった。
【0122】
(房水流出率試験)
【0123】
Braranyのパーフサンド液[Barany, 1964]を伴った前房の2レベルの定圧潅流によって、ペントバルビタールで麻酔した[Gabelt, 2004]サルにおいて房水流出率を測定した(n=8)。4匹のサル(A群)について、1μgの1,25−ジヒドロキシビタミンD
3(1,25(OH)
2D
3)1μLを一方の眼(処理眼)の前房に与え、又は1μLのプロピレングリコールを隣の眼(対照眼)の前房に与えた。4匹のサル(B群)には、5μLのプロピレングリコール中5μgのビタミンD又はビヒクル(5μLのプロピレングリコール)によって1日2回、2日間局所で処理した。
【0124】
3日目のベースラインの房水流出率の測定に続いて、5回目の処理は、1μgの1,25−ジヒドロキシビタミンD
3(1,25(OH)
2D
3)1μLを一方の眼(処理眼)の前房に、又は1μLのプロピレングリコールを隣の眼(対照眼)の前房に、単回ボーラス注射として投与した。注射に続いて、リザーバからの流れによって処理ボーラスを5分間洗った。角膜に冷風を吹きつけ対流を創ることによって前房の内容物を混合した。75分間リザーバを閉じ、次いで再び開いて、房水流出率を60〜90分間測定した。データは、60〜90分間全体について及び30分間の区間について平均し、次いでベースライン及びビヒクル処理された眼と比較した。1.0からの差異の比についての両側性の対応のあるt検定によって比を比較した。
【0125】
(結果)
【0126】
ビタミンDはIOPの調節に関与する遺伝子の発現を調節する
【0127】
我々は、[Kutuzova, 2004]で記載したように我々が選択した新規のビタミンD標的遺伝子を特定するためにラットとマウスのマイクロアレイを用いた。包括的なマイクロアレイのデータ解析は、IOPの調節に関与することが知られている遺伝子の発現を1,25−ジヒドロキシビタミンD
3(1,25(OH)
2D
3)が変化させることを示した。見い出された関連した最大の変化には、炭酸脱水素酵素(CAI)、アンギオテンシンI変換酵素(ACE)及びアクチンα(ACTAI)のmRNA発現の強い抑制が挙げられた(
図10A)。1,25(OH)
2D
3のよる有意な下方調節は、アクチンγ(ACTG2)、Na+/K+ATP分解酵素α1(ATP1A1)、アクアポリン1(AQP1)、癌胎児性抗原に関連する細胞接着分子1(CEACAM)、フィブロネクチン1(FN1)、CD44及びメタロプロテイナーゼ3の組織阻害剤(TIMP3)であった(
図10A)。有意な低下は、PGE2に対するプロスタグランジンE受容体4(PTGER4)並びにマトリクスメタロプロテイナーゼ3(MMP3)、11(MMP11)及び13(MMP13)の発現において見い出された。我々の試験では、圧誘導の恒常性の応答の間にヒト線維柱帯(TM)にて一貫して上方調節されることが見い出された幾つかのほかの遺伝子(血管活性腸管ペプチド、トポイソメラーゼI、MMP2)の発現をビタミンDは低下させた[Vittitow, 2004]。
【0128】
1,25−ジヒドロキシビタミンD
3の局所適用は非ヒト霊長類にてIOPを両側性に強く下げる
【0129】
1日目(d1)での予備処理IOP(平均±SEM)は、5μgのビタミンDで処理される眼において18.9±0.7mmHgであり、対照の眼において18.5±0.9mmHgであった。3日目(d3)の5回目の処理に先立って、IOPは両方の眼でおよそ20%(3mmHg)有意に低下した(p<0.05)(
図11Aと11B)。本発明のビタミンD化合物又はビヒクルによる5回目の局所処理に続いて、次の1〜4時間にわたって対照眼ではさらに7%(1.5mmHg)及びビタミンD処理眼では10%(2.5mmHg)IOPは両側性に低下し、その後、48時間後の予備処理ベースライン近くまで徐々に戻った(
図11)。対照に比べて5μgのビタミンD処理眼のIOP低下がやや大きいと思われる(27%対30%)が、12時間以上の時間を除いて2つの眼の間に有意差はなかった(
図11)。別の実験では、処理されていない対側の眼ではビヒクル(プロピレングリコール)のみはIOPにほとんど又はまったく効果を有さなかった(データは示さず)。
【0130】
ビタミンDによるIOPの低下は用量依存性であった
【0131】
1μgのビタミンDによる片側の局所処理はIOPを両側性に低下させるが、さらに強くIOPを下げる5μgの1,25(OH)
2D
3による処理よりも少ない程度に、処理眼より少なく隣の対照眼で低下させる(30%対20%)(
図11)。0.1μgの1,25(OH)
2D
3はいずれの眼でもIOPに有意な効果を有さなかった(
図11)。
【0132】
ビタミンDはサルにおいて血清カルシウムのレベルを変化させない
【0133】
ビタミンDは血清カルシウムのレベルを維持するように機能するので[DeLuca, 2008]、我々は、局所で適用したビタミンDが十分なレベルに達して全身性の効果を生じるかどうかの指標としてサルにおける血清カルシウムのレベルをモニターした。一方の眼に片側性に局所適用することによって5μgの1,25(OH)
2D
3で3日間処理した(合計5回の局所適用)サルにおいて、血清カルシウムのレベルが変化しなかった(
図6)ということは、1,25(OH)
2D
3が、血清カルシウムのレベルの上昇を特徴とする全身性の効果を引き起こすほど十分なレベルで全身性の循環に入らなかったことを示している。
【0134】
ビタミンDはサルにおける房水の動態に影響を有さない
【0135】
IOPが両側性に強く低下させられた場合、ベースライン又は処理後のどの時間間隔と比べても、ビヒクル対照眼又は5μgのビタミンD処理眼における房水形成率に変化はなかった(表1、
図11)。
【0136】
【表1】
【0137】
5μgの1,25(OH)
2D
3又はビヒクル(プロピレングリコール)の局所適用後のカニクイザルの眼における房水形成(AHF)(μL/分)
【0138】
房水形成は、ビタミンD又は反対の眼に対するビヒクルの1日2回の局所処理5回目の後1〜6時間の区間の間で蛍光光度分析によって測定した(材料及び方法を参照のこと)。房水形成の単位は、μL/分である。データは平均値±SEMである。Rxは処理(ビタミンD又はビヒクル)、n=6。
【0139】
ベースライン房水流出率をサルの2つの群(A及びB)で調べた(材料及び方法を参照のこと)。A群(n=4)は、一方の眼におけるプロピレングリコール1μL中の1μgの1,25(OH)
2D
3又は対照眼における1μLのビヒクル、プロピレングリコールの単回ボーラス前房内注射によって処理した。B群(n=4)は、プロピレングリコール5μL中の5μgのビタミンD又はビヒクル(5μLのプロピレングリコール)によって1日2回2日間、局所で処理した。次いで、3日目のベースライン房水流出率の測定に続いて、5回目の処理を1μgの1,25−ジヒドロキシビタミンD
3(1,25(OH)
2D
3)1μLを一方の眼(処理眼)の前房に、又は1μLのプロピレングリコールを隣の眼(対照眼)の前房に、単回ボーラス注射として投与した。
【0140】
【表2】
【0141】
ビタミンD(1,25(OH)
2D
3)(処理眼)又はビヒクル(プロピレングリコール)(対照眼)の局所及び/又は前房内の適用後のサルの眼における90分間の累積房水流出率
【0142】
データは平均値±SEMである。房水流出率の単位はμL/分/mmHgであり、比には単位がない。ベースラインの測定に続いて、前房内の1μgのビタミンDを一方の眼に、ビヒクル(1μL)を反対の眼に投与した。処理後の房水流出率の測定は、ビタミンDの投与後75分で開始し、90分間継続した。3日目におけるA群と同様の前房内処理を伴った5μgビタミンD又はビヒクル2日間(4回の処理)の局所処理(材料及び方法を参照のこと)。90分間全体のデータを解析した場合、又は30分間の増分を解析した場合、眼の間に有意差は見られなかった。両側性の対応のあるt−検定による1.0からの有意な差:*p<0.05。
【0143】
我々は、各処理のA群及びB群(表2)におけるビタミンDで処理した眼とビヒクルで処理した眼の間で累積90分間の房水流出率を比較し、それらをベースラインの房水流出率と比較した。各処理群における双方の眼について90分間全体の房水流出率には増加があったが、ビタミンDとビヒクル処理の眼の間(表2)にも、双方の群間にも、又は我々が双方の群のデータ(表2)を組み合わせた場合にも有意差は見られなかった。90分間全体のデータを解析した場合も、30分間の増分を解析した場合も、眼の間に有意差は見られなかった。
【0144】
房水流出率の比(30分区間としての)の時間的経過については、応答に明白な差異がなかったので(表2、
図12)、サルの双方の群の結果を合わせた(n=8)。ボーラス注射後の最初の30分間で双方の眼で房水流出率の軽い有意ではない上昇があり(対照眼で33%、ビタミンD処理眼で11%)、その後それぞれ、ビヒクル処理の眼とビタミンD処理の眼にて60分で80〜60%及び90分で110〜115%の有意な差異があった(
図12)。双方の眼(ビヒクル処理の眼とビタミンD処理の眼)における房水流出率は同じ程度にベースラインを超えて上昇したので(前房内注射後90分で約100%)、[Rasmussen, 2007]で記載されたことに類似して、我々は、これらの両側性の房水流出率の上昇を非ヒト種で起きることが知られている単なる「洗い流し」現象[Scott, 2007]とみなす。それは真の両側性の房水流出率の上昇にせいであり、それが、我々が発見したビタミンDによる強い両側性のIOPの低下(
図12)を刺激したという幾らかの可能性は依然としてあってもよい。ブドウ膜強膜の流出がIOP−ビタミンDの低下効果に関与するかどうかに関する見識を提供する追加の実験は当然である。IOPの応答の両側性の性質のために、ほとんどの有望なアプローチはピロカルピンによって毛様筋を抑制することに含まれ、ビタミンD処理の前にブドウ膜強膜の流出経路を遮断する[Crawford, 1987] 。
【0145】
(考察)
【0146】
かねて、マイクロアレイ試験によって、ラットの腸においてCa
2+の吸収と免疫調節に関与する多数の新規のビタミンD標的遺伝子が特定されたということは、ビタミンDが誘導するCa
2+吸収の新規の経路を示唆している[Kutuzova, 2004]。本明細書で提示したラットとマウスにおける包括的なマイクロアレイのデータ解析は、IOPの調節に関与することが知られている、新規のビタミンDが調節する遺伝子を示している。我々がビタミンD処理後に認めた遺伝子発現における多数の変化は房水の形成及び排出の調節に関係する。我々のマイクロアレイ試験はまた、ビタミンDが調節する遺伝子発現は、線維柱帯細胞のデキサメタゾン処理に関連する事象を否定してもよく、それによって感受性の個体におけるステロイドで誘発された緑内障の治療を提供する。
【0147】
上述のマイクロアレイ試験に加えて、我々は、局所投与及び/又は前房内投与後の非ヒト霊長類においてIOP、房水形成及び房水流出率に対するビタミンDの効果を検討した。
【0148】
眼の排出経路の細胞外マトリクス(ECM)構成要素が房水の流れへの抵抗性、それ故IOPへの抵抗性の重大な決定因子であることは長い間示唆されている[Kaufman, 1984]。その代謝、合成、及び環境を変えることに対する応答に影響するECMの分子及び因子は、高眼圧に対する感受性の重要な構成要素である。アクチンの細胞骨格を崩壊させることによって線維柱帯での流出を高めることを達成することができる。細胞骨格効果を持つ化合物は、実質的に長期間のIOP低下についての治療の可能性を提供する。現在のIOP低下剤はほとんど、房水の産生を抑制するか、又は毛様筋を介して流出を高めるので、TMを介して房水の流れを低下させる。現在知られているIOP低下剤はすべて多かれ少なかれ、重篤な副作用を有する[Kaufman, 2006]。
【0149】
ベタガン(登録商標)(レボブノロール)又はキサラタン(登録商標)(ラタノプロスト)のようなIOPを下げる従来の治療は、一過性の眼の焼けるような感じ及び刺すような痛み、眼瞼結膜炎、心拍数及び血圧の低下、虹彩毛様体炎、頭痛、一過性の運動失調、目眩、無気力、蕁麻疹、黄斑浮腫、掻痒感、角膜感受性の低下、上気道感染/感冒及び/又は発疹又はアレルギー反応を含む副作用を起こすことができる。これらの副作用のいずれも本発明の化合物では見られていない。
【0150】
ビタミンDは、たとえば、くる病、癌、糖尿病及び自己免疫疾患のような広いスペクトルの疾患を予防し、治療することができる[DeLuca, 2004, 2008]。ビタミンDの別の生物学的機能は、生体内物質及び生体異物の解毒作用に関与する遺伝子を調節することである[Kutuzova, 2007]。ビタミンDの活性型は、高親和性ビタミンD受容体(VDR)との会合及びそれに続くレチノイドX受容体とのヘテロ二量体形成においてリガンド活性化転写因子として作用し、特定のDNA−ビタミンD応答エレメント(VDRE)と結合して多種類の遺伝子を転写活性化する又は転写抑制する1,25−ジヒドロビタミンD
3、又はカルシトリオール(1,25(OH)
2D
3)、セコステロイドホルモンである[Jones, 1998]。活性型ビタミンD(1,25(OH)
2D
3)によって処理したラット(生体内)[Kutuzova, 2004] 及びマウス(試験管内)での我々のマイクロアレイ試験から、我々は、ビタミンDが調節する細胞骨格、細胞外マトリクス、細胞接着の遺伝子、及びそのほかのタンパク質及び酵素の遺伝子は、IOPの調節に関与することが知られていることを発見した(
図10)。
【0151】
アクチン脱重合化薬が房水流出率を高め、IOPを下げるので、細胞骨格の動態は線維柱帯の機能及び房水流出の調節に関係するとみなされている。アクチンの細胞骨格を崩壊させる薬剤は生体内でIOPを下げ、房水流出率を高める。我々はここで、ビタミンDが、主な細胞骨格タンパク質(アクチンα及びγ)の発現を強く下方調節し、細胞接着に関与するタンパク質(CEACAM及びCD44)及びフィブロネクチンI−ECMの組織化と細胞の相互作用に関与する主なECMタンパク質の1つの発現を低下させることを初めて示している(
図10A)。アクチンの崩壊は細胞接着に変化をもたらし、結果的に線維柱帯の弛緩を生じ、流体流出に利用できる領域を増やすことができる[Tian, 2008]。CEACAMは流出経路で検討されていないが、一般に細胞接着分子の減少は線維柱帯を介した流出を高めることが期待される[Kuespert, 2006]。ビタミンD処理後に我々が認めたフィブロネクチンI及びCD44の減少も、細胞接着の崩壊及び収縮性分子の減少の結果として流出抵抗性を低下させることによって高い流体流出をもたらす可能性がある[Wordinger, 2007; Acott, 2008; Tan, 2006]。
【0152】
ビタミンDはマトリクスメタロプロテイナーゼの発現を高め(
図10B)、その阻害因子の発現を低下させた(
図10A)。マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)とその阻害因子はECM物質を作り直す。高いレベルのマトリクスメタロプロテイナーゼは細胞外マトリクスを作り直すことができ、結果的に流体流出の向上及びIOPの低下を生じる[Tan, 2006]。
【0153】
我々がここで初めて提示する、IOPの低下に関与することも知られている、ビタミンDによって下方調節されるほかの部類の遺伝子は、トランスポーター及びチャンネル:アクアポリン1(AqP1)及びナトリウム−カリウムATP分解酵素(ATP1A1)である(
図10A)。Aqp1は、水のチャンネルであり、房水の産生及び流出の部位で発現される。アクアポリン水チャンネル遺伝子を欠損したマウスは、正常対照よりも低い房水流入と低いIOPを有する[Zhang, 2002]。従って、アクアポリンを阻害することは緑内障治療で利用されてもよい。色素沈着のない毛様上皮におけるATP1A1は房水形成に関与する[Riley, 1986]。強心配糖体(たとえば、ウアバイン)又はバナジウム酸塩によって毛様体突起のATP1A1を阻害することは、実験動物[Podos, 1984; Dismuke, 2009]及びヒト[Podos, 1989]において房水の形成及びIOPを有意に低下させる。
【0154】
以前[Kutuzova, 2004]、我々はビタミンDによってその発現が劇的に抑制され、IOPの低下に関係する、アンギオテンシン1変換酵素(ACE)及び炭酸脱水素酵素(CAI)を含むほかの遺伝子を特定した(
図10A)。炭酸脱水素酵素阻害剤は緑内障治療に広く採用され、房水形成を抑制することによってIOPを下げる[Mincione, 2007; Supuran, 2008]。
【0155】
ACEは、アンギオテンシンI(AngI)をアンギオテンシンII(AngII)に変換し、次いでバソプレシンの放出を高めることによって血圧を調節するレニン・アンギオテンシン系の重要な部分であることが知られている。ACEはまた血管拡張剤、ブラジキニンを不活化する。これらの効果双方が動脈血圧を上昇させる。ACE阻害剤は高血圧の治療に広く使用されている。眼がレニン・アンギオテンシン系を含有し、それがIOPの調節に関与するという証拠もある。眼の組織及び流体におけるACE活性の存在、アンギオテンシノーゲンとアンギオテンシンIIの濃度、及びアンギオテンシンIIAT1受容体の密度がヒトを始めとする幾つかの種で明らかにされている[Wallow, 1993; Cullinane, 2002; Vaajanen, 2008]。高血圧ラットにおける最近の試験は、血圧とIOPの強い正の相関を示唆した[Vaajanen, 2008]。
【0156】
血圧とIOPの強い相関は、眼及び血管系の双方で圧力を制御していてもよい共通するメカニズムと共通する遺伝子を示唆しているヒトの包括的試験でも立証された[Klein, 2005; Duggal, 2007]。ACE阻害剤の局所投与及び経口投与は、動物モデル及びヒトでIOPを下げることが示されており;それらは現在、緑内障治療剤として開発中である[Constad, 1988; Costagliola, 1995]。長年の疫学試験及び臨床試験によってヒト集団におけるビタミンDと血圧の逆相関が確立された(Li, Y.C., 2003)。ビタミンDはレニン・アンギオテンシン系の強力な抑制剤であり、血圧を低下させることができる[Li, 2004]。以前記載されたビタミンDによるACE発現の強い阻害[Kutuzova, 2004]は、動脈血圧及びIOP双方のビタミンDによる低下効果に関与する多数の遺伝因子の1つであってもよい。
【0157】
プロスタグランジンE2(PGE2)類似体の眼圧降下効果には眼に存在する複数のプロスタグランジン受容体が介在するので、プロスタグランジンE2のプロスタグランジンE受容体4(EP4)の発現におけるビタミンDが誘導する有意な上昇もIOPの低下に寄与してもよい[Takamatsu, 2000]。プロスタグランジンは、TMにおけるECMを分解して流出を高めるマトリクスメタロプロテイナーゼを誘導する。従って、ビタミンDによって刺激されたEP4受容体の高い発現もIOPの低下に寄与してもよい。
【0158】
現在の試験は、局所に適用されたビタミンDが実際に非ヒト霊長類で実質的にIOPを下げることができるので、ビタミンDとその全部類の化合物は緑内障治療剤として使用される可能性を有することを明らかにしている。ビタミンDを使用してIOPを下げる可能性を支持する以前の唯一知られた試験は50年以上も前に行われ、ビタミンD
2(ビタミンD
3ではない)の単回筋肉内注射を数人の緑内障患者に投与した場合、一部の患者にIOPの低下が認められた[Guist, 1953]。
【0159】
しかしながら、これらのデータは統計的に有意ではなく、繰り返されたことがないので、結果の再現性に関する疑問は未解決のままだった。さらにビタミンD
2又はエルゴカルシフェロールは、植物が供給源であることが多く、ビタミンDの内因性のヒト型(ビタミンD
3)ではなく、生体内での効果ははるかに低い。ビタミンDがIOPの調節において、だからPOAGにおいて役割を担うという我々の考えを支持するほかの間接的な証拠は、白人集団に比べてアフリカ系集団のPOAGに対する優勢な感受性を示す疫学試験に由来する[Miao, 2008; Lucas, 2008]。色素沈着が皮膚でのビタミンDの産生を低下させるという事実のために、ヨーロッパ家系の個人に比べてアフリカ家系の個人はおよそ2倍低い血清ビタミンD(25(OH)D)のレベルを有することが知られている [Harris, 2006; Zadshir, 2005]。ビタミンDが低い状態は、高血圧症、糖尿病にさらに罹り易い[Harris, 2006]、及び末梢動脈性疾患のさらに高い罹患率[Reis, 2008]のこの集団を説明してもよい。
【0160】
我々は、1,25−ジヒドロキシビタミンD
3又はカルシトリオールの局所適用後、用量依存性に非ヒト霊長類にてIOPを有意に低下させ、12時間を超えて続く長い効果を持つことを示した(
図11)。低い用量でさえ片側に局所適用した後、IOPの低下は両側性に生じた(
図11A)。一部の作用剤による両側性のIOPの低下のメカニズムは明瞭には理解されていないし、説明されていない。対側性効果についての可能性のあるメカニズムの1つは、鼻涙粘膜を介した局所適用された薬剤の血液循環への対側の眼への全身性吸収であり(Piltz, 2000)、たとえば、検出可能なレベルのカルシウムチャンネル遮断剤、フルナリジンがその局所投与後のウサギで報告された[Maltese, 2003]。
【0161】
別の可能性は、化合物がCNS又は末梢神経系を介して作用するということである[Trzeciakowski, 1987]。一部の治験担当医師は、IOPの変化が、知覚神経線維、交感神経線維及び副交感神経線維(視神経及び顔面の双方で)の刺激後に記録されたので、IOPの最も重要な調節因子として神経系を考慮しなければならないと強調している[tenTusscher, 1994]。カンナビノイド、オピオイド、及びプロスタグランジンも両側性にIOPを低下させるが、ビタミンDと同程度ではない[Rasmussen, 2007; Kaufman 2008]。Ca
2+チャンネル遮断剤、α
2−及びβ−アドレナリン作用性拮抗剤も両側性のIOPの低下を生じるが、普通、処理眼に比べて対照眼ではさほど顕著ではない[Wang, 2008; Gabelt, 1994; Piltz, 2000]。このことは、本発明の化合物が、うつ病、脳腫瘍、アルツハイマー病、パーキンソン病などのような神経系(CNS/PNS)の障害を治療するのに有用であることを示唆している。
【0162】
検討の第1段階として、我々は房水形成過程を調べた。ビタミンDは房水形成を変化させないことが我々の実験から明瞭に明らかになった(表1)。次に我々は、ビタミンD処理したサルの眼において房水流出率を調べ、ビヒクルで処理した眼及びビタミンDで処理した眼の双方が房水流出率で同一の上昇を経験していることを示した(表2、
図12)。ビヒクルで処理した眼及びビタミンDで処理した眼の双方におけるビタミンDによって刺激された適度な房水流出率の上昇は、ヒトを除くあらゆる種に共通する「洗い流し」現象の結果であると思われ、その際、生理学的眼圧での眼の潅流は結果的に測定された房水流出率における体積依存性の上昇を生じる[Scott, 2007]。カッパオピオイド作動薬、ブレマゾシンで処理したサルにおける「洗い流し」とみなされた房水流出率の両側性の上昇について類似の結果が認められた[Rasmussen, 2007]。
【0163】
我々の試験では、ビタミンDは房水の流れも房水流出率も変化させなかったので、非ヒト霊長類において房水の動態を達成しなかった。このことは、ほかの既知の眼圧降下剤すべてと全く対照的であり、IOPを下げるビタミンDのメカニズムがほかの眼圧降下剤とは異なりうることを示唆している。IOPの調節に関与するここで提示された種々のビタミンD標的遺伝子を考えると、ビタミンDが幾つかのメカニズムを介してIOPを下げる可能性を有することを示唆する強い証拠がある。
【0164】
上記の記載、添付の図面及びその説明は本発明の限定ではなく説明を意図するものであることが言及されるべきである。本発明の多数の主題と変化が、この中で、及び開示の観点で熟練者に示唆されるであろう。そのような主題と変化のすべては、本明細書の熟考の範囲内である。たとえば、本発明が上記で概説された種々の例となる実施態様と併せて記載されている一方で、既知であれ、稀であれ、又は現在のところ予期されなくてもよい種々の代替物、改変、変化、改善及び/又は実質的な同等物が当業者に明らかになってもよい。種々の変更は、本発明の精神と範囲から逸脱することなく行われてもよい。従って、本発明は、これら例となる実施態様の既知の又は後で開発された代替物、改変、変化、改善及び/又は実質的な同等物のすべてを包含するように意図される。
【0165】
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