(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753417
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】気密コンパクト
(51)【国際特許分類】
A45D 33/00 20060101AFI20150702BHJP
B65D 51/16 20060101ALI20150702BHJP
B65D 53/00 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
A45D33/00 640
B65D51/16 B
B65D53/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-64790(P2011-64790)
(22)【出願日】2011年3月23日
(65)【公開番号】特開2012-200281(P2012-200281A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2014年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡一朗
【審査官】
平田 慎二
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−129512(JP,U)
【文献】
実開平03−111213(JP,U)
【文献】
実開昭63−143210(JP,U)
【文献】
実開平01−177161(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3148400(JP,U)
【文献】
特開平08−117021(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0182860(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 33/00
B65D 51/16
B65D 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンパクト本体と、当該コンパクトに開閉自在に設けられる蓋体と、当該蓋体或いはコンパクト本体の収納部側に、該蓋体の閉口状態で上記コンパクト本体の収納部を覆ってその内部を密閉する弾性体からなるシール部を設けた気密コンパクトにおいて、蓋体が、内蓋と外蓋から構成され、該内蓋に空気孔を設け、該空気孔の外周に弁機構を設け、該外蓋に溝部と摘まみ部、該内蓋に溝受け部を設けたことを特徴とする気密コンパクト。
【請求項2】
請求項1記載の気密コンパクトからなる化粧料リフィルケース。
【請求項3】
請求項2記載の化粧料リフィルケースをコンパクトの収納部に収納したコンパクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンパクト、さらに具体的には揮発性成分を含んだファンデーション、おしろい、アイシャドウ等の化粧料を収納するための気密コンパクトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ファンデーション、おしろい等のベースメイク、アイシャドウ、チーク等のポイントメイクにおいては、使用時において、汗や水などで容易に落ちないこと(いわゆる持続性)が求められるようになった。そこで、これら化粧料の持続性を向上させる為に、化粧料に揮発性成分を配合することが試みられている。このような揮発性成分を配合した化粧料を通常のコンパクトに収納すると、経時的に揮発性成分が揮発してしまい、化粧料の品質を損ねていた。
そこで、揮発性成分を含有する化粧料をコンパクトに収納する際には、通常のコンパクトよりも気密性を高める試みがなされてきた。
【0003】
最も一般的には、コンパクト本体の口部若しくは蓋体内面にゴム等のシール部を設け、コンパクト本体と蓋体の嵌合時にシール部を密着させて気密性を得るようにしている(例えば、特開9−56454号公報)。しかしながら、未だ十分な気密が保たれていないのが現状である。一方、使用性について言うならば、気密性を高めたが故に、コンパクトが容易に開口しづらい場合があるという問題点が生じていた。
【0004】
他方、気密性を高める技術としては、食品の鮮度を向上させる為に、蓋体を押すことで容器内の空気を押し出し、弁等の構造を用いて容易に空気が逆流しないようにする食品保存容器等がある(例えば、特開平7−277374号公報)。このような容器では、蓋体の一部に、蓋を開口する為の機構(当該公報でいう回動体)を設ける必要があり、そのままコンパクトに応用する場合には、美観を損ねる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開9−56454号公報
【特許文献2】特開平7−277374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであって、十分な気密性を有しながら、使用時においては、簡易にコンパクトを開口出来る気密コンパクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の気密コンパクトは、化粧料を収納するコンパクト本体と蓋体とを蝶番部等で接合するコンパクト容器において、コンパクト本体の口部若しくは蓋体内部にゴム、シリコンゴム等の弾性体からなるシール部を設け、二重構造にした蓋体に空気孔を設け、その周囲に弁機構を設けることで、上記課題を解消した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、十分な気密状態と優れた使用性を両立させ、更には審美性に優れた気密性コンパクトを提供することが可能になる。また、本発明の実施品をそのまま気密コンパクトとして使用することは勿論のこと、大きさを調節することにより、コンパクトの収納部にはめ込む形で使用することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1における蓋体側から見た平面図である。
【
図3】実施例1における使用方法を示した断面図である。
【
図4】実施例2における蓋体側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る気密コンパクトを実施する為の最良の形態に関し、図面を参照して詳細に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことは、言うまでもない。
【実施例1】
【0011】
図1は、本願発明の気密コンパクト1を閉じた状態で蓋体側から見た平面図である。実施例1においては、コンパクト1の蓋体内部中央部よりやや摘み部10寄りに弁機構5が設けられている(点線円部分)。尚、点線円は、弁機構5の位置を目安として示しているだけであり、外観に現れるわけではない。言い換えれば、通常の使用シーンにおいては、弁機構5は、外観に現れることはなく、美観が保たれている。
【0012】
図2は、実施例1のコンパクト1におけるA−A断面図である。外蓋3と内蓋4からなる蓋体30とコンパクト本体2とは結合部40で、ヒンジ構造で結合している。コンパクト1には、蓋体30の内周部にシリコンゴム等でシール部7を設けているので、気密時に空気が漏れることを防止出来る。本シール部7を設けること自体は、公知の技術である。
図2では、蓋体30の内周部にシール部7を設けているが、コンパクト本体2の内周部に設けることも可能である(図示せず)。
ここで言う、蓋体内周部とは、蓋体30の内側面の外周より内側を指す。収納部50をどのように設けるかにもよるが、少なくとも当該収納部50を囲むようにして設ける必要がある。
蓋体30は、一体の蓋ではあるが、外蓋3と内蓋4の2層構造になっている。内蓋4には空気孔6があり、当該空気孔6を囲むようにして弁機構5が設けられている。外蓋3には溝部8、内蓋4には溝受け部9が設けられている。外蓋3には、更に摘まみ部10が設けられている。実施例1のコンパクト1においては、本摘まみ部10によってコンパクト1を開閉する為、コンパクト1に通常設けられているフックピースや、開口フックは存在しない。
【0013】
図3は、実施例1のコンパクト1の使用方法を示したA−A断面図である。使用者は、外蓋3に設けられた摘まみ部10を持って、通常通り閉めた後(白抜き矢印X)、コンパクト1の外蓋3を指の腹等で押す(白抜き矢印Y)。この行為により、コンパクト本体2の収納部50上部の空間に存在する空気が押し出され、内蓋4に設けられた空気孔6及び弁機構5を通って、コンパクト1外部に排出される。本コンパクト1の外蓋3には、特段空気孔は設ける必要はない。なぜなら、外蓋3開口部60の樹脂間の隙間から容易に空気を排出可能であるからである。
もっとも、空気の排出のみに関して言えば、収納部50上部に存在する空気は、内蓋4に設けられた空気孔6からだけではなく、蓋体30内周部に設けられたシール部7より排出されていく場合もある。
使用者は、コンパクトの外蓋3を押した後は、指等を離し、鞄や化粧台などに保管する。
使用者が指等を離すと、弁機構5や蓋体内周のシール部7は、シリコンゴム等の弾性体で作られているので、弾性体の復元力により、容易に気密状態が設定される。また、弁機構5においても、弁部5aと、吸着受け部5bが、シリコンゴム等の弾性体で作られているので、シール部7同様に弾性体の復元力により、用意に気密状態が設定される。
【0014】
コンパクト1を使用する際には、使用者は、外蓋3に設けられた摘まみ部10に、例えば指の腹をあて、摘まみ部10を外蓋3の中心方向に倒すようにしながら上方に持ち上げる。
すると、外蓋3に設けられた溝部8が、内蓋4に設けられた溝受け部9にスライドし、V字状になる。このことにより、弁機構5の弾性体同士の密着状態が解除される。密着状態が解除されると、内蓋4に設けられた空気孔6から空気がコンパクト本体2の収納部50上部の空間に空気が流れ込むと共に、蓋体内周に設けられたシール部7の弾性体の密着状態も解除されるので、コンパクト1が開口する。
言い換えると、使用者が摘まみ部10の操作をするだけで、コンパクト1の気密状態の解除と、コンパクト1の開口がほぼ同時に行うことが出来る。
なお、
図3においては、使い方と構造との関係を分かり易く説明する為、外蓋3開口部60が大きく開いた状態を示しているが、コンパクト1の気密状態を解除する為には、弁機構5の弁部5aと吸着受け部5bの弾性体同士の密着状態が緩めば十分であるので、
図3の状態にまで、外蓋3をV字にしなくても、コンパクト1の気密状態を解除することは可能である。
【実施例2】
【0015】
実施例2は、外蓋3の溝部8と、内蓋4の溝受け部9を蓋体30の端部まで設けた場合において、蓋体側から見た平面図である。実施例1と同様の方法で使用することが出来る。実施例2の方が、外蓋3の外観に現れる構造が少ないので、より審美性に優れる。尚、点線円は、弁機構5の位置を目安として示しているだけであり、外観に現れるわけではない。
【実施例3】
【0016】
実施例3は、実施例1のコンパクト1を従来のコンパクトに設置した状態を示している。イメージとして捉えるならば、実施例1、2のコンパクト1を、通常のコンパクト20のリフィル容器の変わりに使用することが出来、そのリフィル容器をそのままコンパクト20に使用した場合を示している。
図5では、実施例1を使用した場合を示しているが、実施例2を設置することも可能である。
実施例3では、実施例1、2のコンパクト1をそのまま、コンパクト収納部50に収納して使用する。この場合、外側のコンパクト20は、通常のコンパクトで良く、気密コンパクトである必要はない。
勿論、従来のコンパクト20に安定的に収納する為に、公知の方法で、適宜接合部を設けることも可能である(図示せず)。
【0017】
ここで、弁機構5に関し、詳述する。
弁機構5は、内蓋4に設けられた空気孔6の外周を囲むようにして設けられる。当該弁機構5は、弁部5aと吸着受け部5bからなり、ゴム、シリコン等の弾性体で作られている。弁部5aは、シルクハットから帽子天頂部を切り離したような形をしている(
図6)。吸着受け部5bは、平板状をしている。弁部5a上部を覆う大きさであれば良い。
図6において、吸着受け部5bの外周に縁取りのような凸部を示しているが、この凸部は、必須ではない。単に平板であっても差し支えない。
弁機構5そのもの大きさは、コンパクト1の大きさ、収納部50上部の空間の大きさ、空気孔6の大きさにより適宜調整される。弁部5a筒状部の内径の直径は、0.2cm以上である事が好ましい。
図6では、シルクハット状の弁機構を示したが、この筒状部分が、楕円、長方形などの形であっても差し支えない。もっとも、気密状態を保持する為には、円柱、楕円柱であることが好ましい。
弁機構5を設ける位置は、必ずしも
図1のようにコンパクト1の中央部付近である必要はない。効果的に空気を排出出来る位置にあれば良く、コンパクト1の収納部50の位置や大きさによって適宜調整される。
【0018】
上記図面においては、図面中に鏡を記載していないが、内蓋4の収納部50側に鏡を設けることも可能性ある。通常、蓋(本願では内蓋4)の収納部50側に鏡を収納する凹部が設けられ、その凹部より小さく鏡を作成し接着する。接着部分を適宜調節することにより、空気が流れるスペースを確保出来るので、気密状態を設定する場合、解除する場合においても支障はない。蓋体30の内周部にシール部7を設けていれば、気密状態に影響しない。
【0019】
実施例1〜3における本願コンパクト1においては、コンパクト本体2と蓋体30とは、結合部40でヒンジ構造で結合している場合の図面のみを開示しているが、通常のコンパクト同様に、蝶番部を設けても支障はない。もっとも、ヒンジ構造にした方が、一体成形が可能であるので、コスト削減の面で好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によると、揮発性成分を含有した化粧料を収納する気密コンパクトとして使用することが出来るだけでなく、通常のコンパクトにリフィルケースとしてそのまま設置することも出来る。
【符号の説明】
【0021】
1.
コンパクト
2.
コンパクト本体
3.
外蓋
4.
内蓋
5.
弁機構
5a.弁部
5b.吸着受け部
6.
空気孔
7.
シール部
8.
溝部
9.
溝受け部
10.
摘まみ部
20.従来のコンパクト
21.パフ
22.鏡
30.蓋体
40.結合部
50.収納部
60.開口部