特許第5753455号(P5753455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753455
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】タイヤ更生判定方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20150702BHJP
【FI】
   B60C19/00 H
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-159235(P2011-159235)
(22)【出願日】2011年7月20日
(65)【公開番号】特開2013-23062(P2013-23062A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 清人
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−076549(JP,A)
【文献】 特開2006−240384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 15/00、19/00
G01M 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経時変形前の重荷重用タイヤを用いて、そのタイヤ更生性を判定するタイヤ更生判定方法であって、
リム組み前の前記重荷重用タイヤに対し、タイヤ赤道面を介して向かい合う両側のビード部のビードトウ間のタイヤ軸方向距離L1、及びタイヤ軸心を中心としたビードトウの半径R1を測定する第1の測定工程、
前記重荷重用タイヤを正規リムにリム組みし、かつ正規内圧よりも高い規定内圧を充填した高圧充填タイヤを、温度60〜80℃の高温雰囲気中に、7〜14日の範囲の放置期間で放置するタイヤ変形促進工程、
前記タイヤ変形促進工程後に前記正規リムから取り外した重荷重用タイヤに対し、ビードトウ間のタイヤ軸方向距離L2、及びビードトウの半径R2を測定する第2の測定工程、
並びに前記ビードトウ間のタイヤ軸方向距離L1、L2の変化率ΔL={(L2−L1)/L1}と、ビードトウの半径R1、R2の変化率ΔR={(R2−R1)/R1}とに基づき、タイヤ更生性を判定する判定工程を具えることを特徴とするタイヤ更生判定方法。
【請求項2】
前記規定内圧は、前記正規内圧の1.1〜1.3倍の範囲であることを特徴とする請求項1記載のタイヤ更生判定方法。
【請求項3】
前記判定工程は、次式(1)で定める指標値Kに基づいて、タイヤ更生性を判定することを特徴とする請求項1又は2記載のタイヤ更生判定方法。
K=ΔR+a×ΔL −−−−(1)
(aは、1.0より小な係数
【請求項4】
前記判定工程は、前記指標値Kが、予め設定された基準値以下の時、タイヤ更生性を有するタイヤと判定することを特徴とする請求項3記載のタイヤ更生判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用タイヤが摩耗寿命を終えたときにタイヤ更生が可能かどうかのタイヤ更生性を、例えばタイヤ形成時に事前に判定しうるタイヤ更生判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック・バス用等の重荷重用タイヤでは、摩耗寿命となった使用済みのタイヤのトレッドゴムを貼り替えて、更生タイヤとして再利用することが広く行われている。
【0003】
このタイヤ更生方法として、所謂プリキュア方式が広く採用されている。前記方式では、まず使用済みのタイヤのトレッドゴムを削り取ってバフ研磨した台タイヤのバフ面に、未加硫のクッションゴムを介して加硫済みのプリキュアトレッドゴム体を貼り付けしてトレッド貼付台タイヤを形成する。そして、このトレッド貼付台タイヤをリム組みし、かつ内圧を充填した後、例えばオーブン釜(蒸気釜等)内で加熱処理することにより、台タイヤとプリキュアトレッドゴム体とを一体化させた更生タイヤを形成している。
【0004】
他方、重荷重用タイヤでは、高内圧、高荷重の過酷な条件下で使用されるため、図4に示すように、カーカスプライaには大きなテンション力Fが作用する。このとき、前記カーカスプライaの両端部がビードコアbの周りで折り返して係止されている。そのため、前記テンション力Fによって、ビードコアb廻りに強い回転モーメントMが発生し、ビードコアbを、コア中心廻りで回転する向きに変形せる。又これに引きずられて、ビード部cもビードトウBTがリムシートJ1から浮き上がる向きに変形する。
【0005】
このビード変形は、タイヤの使用期間の増加に伴って大きくなるとともに永久変形となり、リムから取り外された後も、元の形状に戻らなくなる。そのため、このビード変形が特に大きいタイヤでは、前記プリキュア方式にてタイヤ更生をする場合、リム組時に充填するエアーがビードトウBT側から洩れ出してリム組みが困難となり、タイヤ更生ができなくなるという問題が生じる。
【0006】
そこでタイヤを設計開発する場合、開発したタイヤが更生可能なタイヤかどうか、即ちタイヤ更生性に優れるか否かを判定することが重要となる。しかし従来においては、開発したタイヤを、実際の使用条件にて摩耗寿命近くまで実車走行させ、しかる後、再リム組みさせてタイヤ更生性を評価していた。そのため、例えば1〜2年という長期に及ぶ開発期間が必要となる。
【0007】
なおタイヤの開発期間短縮のため、下記の特許文献1には、タイヤの耐久試験方法において、耐久試験に先駆けて所定条件の劣化促進行程を行うことが提案されている。しかし、従来の劣化促進行程では、ゴムの強度、ゴムとコードの接着性、およびゴム間の接着性の低下を促進させるものであり、タイヤ更生性の判定に使用することはできない。さらにまた実際にリム組みし、そのときのエアイン性にてタイヤ更生性を判定する場合、リム組み作業が煩雑であり、かつ作業バラツキにも影響を受けるため数値化して明確に判定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−337100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、所定条件にてタイヤの永久変形を促進させるとともに、永久変形の前後におけるビードトウ間の距離の変化率、及びビードトウの半径の変化率に基づいてタイヤ更生性を判定することを基本として、タイヤ更生性を早期にかつ明確に数値化して判定することができるタイヤ更生判定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本願請求項1の発明は、経時変形前の重荷重用タイヤを用いて、そのタイヤ更生性を判定するタイヤ更生判定方法であって、リム組み前の前記重荷重用タイヤに対し、タイヤ赤道面を介して向かい合う両側のビード部のビードトウ間のタイヤ軸方向距離L1、及びタイヤ軸心を中心としたビードトウの半径R1を測定する第1の測定工程、前記重荷重用タイヤを正規リムにリム組みし、かつ正規内圧よりも高い規定内圧を充填した高圧充填タイヤを、温度60〜80℃の高温雰囲気中に、7〜14日の範囲の放置期間で放置するタイヤ変形促進工程、前記タイヤ変形促進工程後に前記正規リムから取り外した重荷重用タイヤに対し、ビードトウ間のタイヤ軸方向距離L2、及びビードトウの半径R2を測定する第2の測定工程、並びに前記ビードトウ間のタイヤ軸方向距離L1、L2の変化率ΔL={(L2−L1)/L1}と、ビードトウの半径R1、R2の変化率ΔR={(R2−R1)/R1}とに基づき、タイヤ更生性を判定する判定工程を具えることを特徴としている。
【0011】
また請求項2では、前記規定内圧は、前記正規内圧の1.1〜1.3倍の範囲であることを特徴としている。
【0012】
また請求項3では、前記判定工程は、次式(1)で定める指標値Kに基づいて、タイヤ更生性を判定することを特徴としている。
K=ΔR+a×ΔL −−−−(1)
(aは、1.0より小な係数)
【0013】
また請求項4では、前記判定工程は、前記指標値Kが、予め設定された基準値以下の時、タイヤ更生性を有するタイヤと判定することを特徴としている。
【0014】
なお前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"を意味する。前記「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE"を意味するが、乗用車用タイヤの場合には200kPaとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は叙上の如く、正規内圧よりも高い規定内圧を充填した高圧充填タイヤを、温度60〜80℃の高温雰囲気中に、7〜14日の範囲の放置期間で放置するタイヤ変形促進工程を行う。この行程により、タイヤ変形を促進させ、摩耗寿命近くまで使用した時のタイヤの永久変形状態を再現させることができる。
【0016】
そしてこの永久変形によるタイヤのビードトウ間の距離の変化率ΔL、およびビードトウの半径の変化率ΔRを求め、これに基づきタイヤ更生性を判定している。
【0017】
永久変形においてタイヤ更生の妨げとなるのは、主に、ビードコア廻りの回転モーメントに起因してビードトウがリムシートから浮き上がる変形である。そして、この変形量が大きいほど、リム組み時に充填するエアーがビードトウ側から洩れ出してリム組みが困難となり、タイヤ更生ができなくなる。また、前記ビードトウ側からのエアーの洩れは、前記ビードトウ間の距離の変化率ΔLと、ビードトウの半径の変化率ΔRとの双方に関わり、この変化率ΔL、ΔRを用いることにより、エアーの洩れ性をとらえることができ、タイヤ更生性を数値化して判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のタイヤ更生判定方法によって判定される重荷重用タイヤの一例を示す断面図である。
図2】ビード部を拡大して示す断面図である。
図3変化率ΔR、ΔLによる評価を横軸、実際の再リム組みによる評価を縦軸としてプロットしたグラフである。
図4】タイヤ更生に関わるビード部の変形を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図1は、本発明のタイヤ更生判定方法によってタイヤ更生性が判定される重荷重用タイヤの一例を示す断面図である。
【0020】
図において、重荷重用タイヤ1は、周知のごとく、タイヤ踏み面2Sを有するトレッド部2と、そのタイヤ軸方向両端からタイヤ半径方向内側にのびる一対のサイドウォール部3と、各サイドウォール部3の半径方向内端部に位置するビード部4とを具える。また重荷重用タイヤ1は、前記トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、その半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されるベルト層7とを含むコード補強層によって補強される。
【0021】
前記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ周方向に対して例えば75〜90゜の角度で配列したラジアル構造の1枚以上、本例では1枚のカーカスプライ6Aにより構成される。このカーカスプライ6Aは、その両端部がビードコア5の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返され、これによって該ビードコア5に係止される。
【0022】
前記ビードコア5は、図2に拡大して示すように、例えばスチール製のビードワイヤ5wを多列多段に巻回したリング状をなし、断面六角形状のものが広く採用される。本例では、ビードコア5は、半径方向内周面SLが、正規リムJのリムシートJ1と略平行に傾斜した断面偏平六角形状をなし、これによりビード部4とリムシートJ1との間の嵌合力を広範囲に亘って高めている。前記正規リムJは、本例では、チューブレスタイヤ用の15°深底リムであって、ビードコア5の半径方向内周面SLおよび外周面SUは、いずれもタイヤ軸方向線に対して略15°の角度θ1で傾斜している。
【0023】
また本例のビード部4は、ビード底面4aが実質的に直線状をなすとともに、タイヤ軸方向線に対して例えば20〜30゜程度の角度θ2で傾斜している。この角度θ2は、前記リムシート面J1の角θ1よりも大であり、リム組み時、ビードコア5とビード底面4aとの間のゴムが強く圧縮することで、リムシート面J1との嵌合圧を高めうる。
【0024】
前記ビード底面4aは、要求により角度θ2を違えた2つの面で形成することもできる。またビード底面4aのタイヤ軸方向外端は、円弧状のビードヒール部BHを介してビード外側面4bに連なるとともに、ビード底面4aのタイヤ軸方向内端は、ビードトウBTを介してビード外側面4cに連なる。
【0025】
なお図中の符号8は、前記ビードコア5から立ち上がるビードエーペックスゴム、符号9は、カーカス6に沿って配されるビード補強コード層であって、それぞれビード部4を補強し、ビード耐久性および操縦中安定性を向上させる。また前記ベルト層7は、スチールコードなどの高強度のベルトコードをタイヤ周方向に対して例えば10〜75゜の角度で配列した2枚以上、本例では4枚のベルトプライ7A〜7Dから構成され、トレッド部2を補強する。
【0026】
次に、前記重荷重用タイヤ1におけるタイヤ更生性を判定するタイヤ更生判定方法を下記に説明する。
【0027】
このタイヤ更生判定方法は、
(ア)リム組み前の重荷重用タイヤ1に対し、タイヤ赤道面Coを介して向かい合う両側のビード部4、4のビードトウBT間のタイヤ軸方向距離L1、及びタイヤ軸心を中心としたビードトウBTの半径R1を測定する第1の測定工程、
(イ)前記重荷重用タイヤ1のタイヤ変形を促進するタイヤ変形促進工程、
(ウ)タイヤ変形促進工程後の重荷重用タイヤ1に対し、ビードトウBT間のタイヤ軸方向距離L2、及びビードトウBTの半径R2を測定する第2の測定工程、並びに、
(エ)前記タイヤ軸方向距離L1、L2の変化率ΔLと、半径R1、R2の変化率ΔRとに基づき、タイヤ更生性を判定する判定工程、
を具える。
【0028】
前記第1の測定工程では、タイヤに経時変形が生じる前のビードトウBT間の距離L1、及びビードトウBTの半径R1を、非リム組み状態にて測定する。このとき、タイヤを横置き状態(タイヤ軸心を上下に向けた状態)にて測定した場合、タイヤの自重によって、サイドウォール部3からビード部4かけてが変形し、正確な測定値が得られない。従って、前記第1の測定工程では、タイヤ軸心を水平に向けた縦置き状態にて測定する。また前記測定は、タイヤの周方向の複数位置で行い、その平均値にて、前記ビードトウBT間の距離L1、及びビードトウBTの半径R1を求めるのが好ましい。
【0029】
次に、前記タイヤ変形促進工程では、重荷重用タイヤ1を正規リムJにリム組みし、かつ正規内圧よりも高い規定内圧を充填した高圧充填タイヤを、温度60〜80℃の高温雰囲気中に、7〜14日の範囲の放置期間で放置する。これにより、タイヤ変形を促進させ、摩耗寿命近くまで使用した時のタイヤの永久変形状態を再現させる。
【0030】
前述したごとく、永久変形においてタイヤ更生の妨げとなるのは、主に、ビードコア廻りの回転モーメントに起因してビードトウBTがリムシートJ1から浮き上がる向きの変形である。従って、正規内圧よりも高い規定内圧を用い、大きな回転モーメントを作用させることで前記ビードトウBTの変形を促進させる。前記規定内圧としては、正規内圧の1.1〜1.3倍の範囲が好ましく、前記1.1倍以下では、変形促進が達成されなくなる。逆に1.3倍を超えると、前記回転モーメントが過大となり、ビードコア5の断面形状が変形したり、またビードワイヤの配列が乱れてコア崩れを招くなど、通常のタイヤ使用では生じない態様の変形が起きて、タイヤの永久変形状態を再現させることができなくなる。このような観点から、規定内圧の上限は、1.2倍以下がより好ましい。
【0031】
また前記高温雰囲気が60℃を下回ると、永久変形に至らず、タイヤ変形促進工程後にリムから取り外したとき、変形が回復してしまう傾向を招く。逆に80℃を超えると、サイドウォールゴムやビードゴムが熱で変質して硬質化してしまい、タイヤをリムから取り外ず際にビードトウBTにゴム欠けや変形を招いて、適切な評価が行えなくなる傾向となる。
【0032】
また放置期間が7日未満の場合にも、変形促進が不十分となって永久変形に至らず、タイヤ変形促進工程後にリムから取り外したとき、変形が回復してしまう傾向を招く。逆に放置期間が14日を超えても、永久変形の大きな進行は見られず、時間とコストの無駄を招く。特に、本発明者の実験の結果、偏平率が小さいタイヤほどタイヤが変形しにくくなるため、前記範囲内で放置期間を長く設定するのが好ましいことが判明した。そのため、偏平率が90%以上のタイヤでは、放置期間は7〜14日(より好ましくは7日)、偏平率が80%以上90%未満のタイヤでは、放置期間は10〜14日(より好ましくは10日)、また偏平率が80%未満のタイヤでは、放置期間は14日とするのが望ましい。
【0033】
また、前記第2の測定工程では、前記タイヤ変形促進工程後、前記正規リムJから取り外した重荷重用タイヤ1に対し、ビードトウ間の距離L2、及びビードトウの半径R2を測定する。この第2の測定工程では、前記第1の測定工程と同様、タイヤの自重による悪影響をさけるため、タイヤ軸心を水平に向けた縦置き状態にて測定する。
【0034】
次に、前記判定工程では、前記ビードトウBT間のタイヤ軸方向距離L1、L2の変化率ΔL={(L2−L1)/L1}と、ビードトウBTの半径R1、R2の変化率ΔR={(R2−R1)/R1}とに基づき、タイヤ更生性を判定する。
【0035】
ここで、リム組み時に充填するエアーがビードトウBT側から洩れ出してリム組みが困難となることによりタイヤ更生ができなくなることから、本発明では、タイヤ更生性は、前記エアーの洩れ性に基づいて判断される。また前記エアーの洩れ性は、前記ビードトウの半径の変化率ΔRと、ビードトウ間の距離の変化率ΔLとの双方に関わっている。即ち、前記変化率ΔRが小さいほど、ビードトウBTのリムシートJ1からの浮き上がりが小さくなるためエアーの洩れ性に優れるが、サイドウォール部3のタイヤ軸方向外側への張り出しが小さく前記変化率ΔLが小な場合にも、前記エアーの洩れが少なくなる。
【0036】
従って本発明では、この2つの変化率ΔR、ΔLに基づいて、前記エアーの洩れ性(タイヤ更生性)を判定している。なお前記変化率ΔR、ΔLのうち、変化率ΔRの方がエアーの洩れ性(タイヤ更生性)への影響力が大きい。そのため、次式(1)で定める指標値Kに基づいて、タイヤ更生性を判定することが好ましい。なお符号aは、1.0より小な係数であって、0.3±0.1の範囲がより好ましい。
K=ΔR+a×ΔL −−−−(1)
【0037】
この判定工程では、前記指標値Kが、予め設定した基準値以下の時、タイヤ更生性を有するタイヤと判定することができる。
【0038】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0039】
(1)
本発明の効果を確認するため、図1に示す内部構造を有する重荷重用タイヤ(タイヤサイズ11R22.5)を試作し、表1に示すごとく、規定内圧、高温雰囲気、放置期間の条件を違えてタイヤ変形促進工程を行い、ビードトウ間のタイヤ軸方向距離L1、L2の変化率ΔL={(L2−L1)/L1}、及びビードトウの半径R1、R2の変化率ΔR={(R2−R1)/R1}を測定した。
【0040】
又、タイヤ変形促進工程に代え、前記重荷重用タイヤを、実際の使用条件に近い状態、例えば正規内圧(700kPa)にて、テスト車両(国産10tonトラック2−D4車)に装着し、半積載状態(荷台前方に積載)にて摩耗寿命に至るまで実車走行させ、そのときの変化率ΔL’、ΔR’を測定した。実車走行による変化率ΔL’は0.071、ΔR’は、0.0072であった。
【0041】
表1のごとく、規定内圧が正規内圧の1.1〜1.3倍、高温雰囲気が温度60〜80℃、放置期間が7〜14日の条件でタイヤ変形促進工程を行った場合、摩耗寿命まで実車走行した時のタイヤの永久変形状態をほぼ再現させうるのが確認できる。
【0042】
又、タイヤ変形促進工程を行った比較例A1〜A7、実施例A1〜A5のタイヤを実際に再リム組みし、そのときのビードトウBT側からのエアーの洩れ性(エアーイン性)を、次の4段階(◎、○、△、×)で評価し、前記変化率ΔR、ΔLを用いた評価と比較した。その結果を表1に示す。前記変化率ΔR、ΔLによる評価は、次式(1)で定める指標値K(係数a=0.3とした。)にて行った。又実際の再リム組みによる評価は、再リム組み時の充填内圧を800kPaとしている。
◎−−−エアーの洩れなく、空気が入る。
○−−−タイヤを縦に動かすと、空気が入る。
△−−−タイヤを縦、横に動かすと、空気が入る。
×−−−空気が入らない。
K=ΔR+a×ΔL −−−−(1)
【0043】
【表1】
【0044】
(2)
次に、図1に示す内部構造を有する重荷重用タイヤ(タイヤサイズ11R22.5)を、表2の仕様に基づき試作するとともに、各試供タイヤのタイヤ更生性を変化率ΔR、ΔLを用いて評価した。タイヤ変形促進工程は、規定内圧が正規内圧(700kPa)の1.1倍、高温雰囲気が温度70℃、放置期間が7日の条件にて行った。
【0045】
そして同タイヤを実際に再リム組みし、そのときのエアーイン性を上記4段階(◎、○、△、×)で評価し、前記変化率ΔR、ΔLを用いた指標値K(係数a=0.3とした。)による評価と比較した。
【0046】
図3は、表1、2において、前記指標値Kを横軸、実際の再リム組みによる評価(◎、○、△、×)を縦軸としてプロットしたグラフである。図3のごとく、指標値Kを用いることで、実際にタイヤを再リム組みすることなく、エアーイン性、即ちタイヤ更生性を数値化して評価しうるのが確認できる。
【0047】
【表2】
【符号の説明】
【0048】
1 重荷重用タイヤ
4 ビード部
BT ビードトウ
Co タイヤ赤道面
J 正規リム
図1
図2
図3
図4